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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:14.1.29)
第118巻 第1号/平成26年1月1日
Vol.118, No.1, January 2014
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日本小児心身医学会推薦総説 |
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田中 英高,他 1 |
日本小児リウマチ学会推薦総説 |
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免疫不全児およびダウン症候群におけるRSウイルス感染重症化リスクとその感染予防
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森 雅亮,他 9 |
総 説 |
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内海 雅史,他 17 |
原 著 |
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菊地 雅子,他 23 |
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小俣 優子,他 30 |
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鹿間 芳明,他 35 |
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田中 亮介,他 42 |
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北村 宏之,他 47 |
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田中 聡,他 52 |
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齋藤 広幸,他 57 |
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村田 真野,他 60 |
論 策 |
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石田 也寸志,他 65 |
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75 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 44 助手席に進行方向後ろ向きに設置されたチャイルドシート着座中の頭部外傷(自動車衝突時のエアバッグの展開による)
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96 |
移行期の患者に関するワーキンググループ 委員会報告 |
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小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言
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98 |
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107 |
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113 |
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114 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2013年55巻6号12月号目次
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【総説】
■題名
ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン普及前の小児細菌性髄膜炎の発生頻度
■著者
長野赤十字病院小児科1),厚生連篠ノ井総合病院小児科2),長野県立こども病院総合小児科3),厚生連佐久総合病院小児科4),飯田市立病院小児科5),信州大学医学部衛生学公衆衛生学講座6),同 小児医学講座7) 長野県小児臨床研究グループ 内海 雅史1) 天野 芳郎1) 諸橋 文雄2) 樋口 司3) 牛久 英雄4) 長沼 邦明5) 野見山 哲生6) 稲葉 雄二7) 小池 健一7)
■キーワード
小児細菌性髄膜炎, 発症頻度, ヒブワクチン, 肺炎球菌ワクチン
■要旨
日本では,ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの導入がそれぞれ2008年と2010年と遅れた.両ワクチン普及前の2001年〜2010年に発症した15歳未満の小児細菌性髄膜炎患者について,長野県内の基幹病院小児科にアンケート調査を行い,小児細菌性髄膜炎の発症頻度と臨床像を検討した.長野県に在住し,細菌性髄膜炎と確定診断できた症例が133例,細菌性髄膜炎が疑われた症例が24例で,計157例が集積された.小児人口10万人当たりの細菌性髄膜炎の年間発症頻度は1歳未満では44.6例(95%confidence interval[CI]:31.2〜58.0例),5歳未満では14.4例(95%CI:11.7〜17.1例),15歳未満では5.0例(95%CI:4.1〜5.9例)であった.起炎菌の判明した132例の内訳は,インフルエンザ菌60.6%,肺炎球菌19.7%,B群連鎖球菌9.1%,大腸菌4.5%,リステリア菌0.8%,その他6.1%であった.髄膜炎菌による髄膜炎発症例は認められなかった.生後2か月過ぎからインフルエンザ菌,肺炎球菌による髄膜炎の発症が増加しており,発症年齢の中央値はそれぞれ16か月と9か月であった.今回の検討結果は,今後わが国における両ワクチンの効果を判定するために必要な基礎データとなると思われた.
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【原著】
■題名
筋組織内筋束間の間質性筋炎を伴った全身性炎症性疾患の3例
■著者
横浜市立大学医学部小児科1),横浜市立大学附属市民医療センター小児医療センター2) 菊地 雅子1) 永嶋 早織1) 野澤 智1) 金高 太一1) 木澤 敏毅1) 宮前 多佳子1) 今川 智之1) 森 雅亮2) 横田 俊平1)
■キーワード
interstitial myositis, juvenile dermatomyositis, polymyositis, systemic juvenile idiopathic arthritis, chronic recurrent multifocal osteomyelitis
■要旨
小児期の代表的な慢性炎症性筋疾患は若年性皮膚筋炎juvenile dermatomyositis,多発性筋炎polymyositis,重複性筋炎myositis associated with other autoimmune diseases(overlap myositis)などである.今回,全身性炎症に伴い筋痛を訴え,病理学的に筋組織内筋束間の間質性炎症を認めた3症例を報告した.3症例とも,若年性皮膚筋炎特有の皮疹はなく筋痛を主訴に来院し,MRI画像および筋電図は筋炎を疑う所見を得た.しかし,理学的診察では筋把握痛はあるものの近位筋優位の筋力低下を認めず,血液検査で筋原性酵素の上昇はなかった.筋生検の病理組織学的検索では筋細胞自体の変性・壊死はなく,炎症細胞の浸潤が血管周囲ではなく筋束間間質に存在するなど若年性皮膚筋炎,多発性筋炎,重複性筋炎などの所見に合致せず,病理組織学的に「間質性筋炎‘interstitial myositis’」と診断された.1例目および2例目は全身型若年性特発性関節炎が基盤にあり,3例目は基盤となる疾患として慢性再発性多巣性骨髄炎が診断された.いずれも全身性炎症性疾患であり,全身炎症の一部に間質性筋炎を伴った例と考えられた.今後,症例の蓄積が待たれる.
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【原著】
■題名
食品中のダニによりアナフィラキシーを起こした症例
■著者
千葉メディカルセンター小児科1),千葉大学大学院小児病態学2),国立病院機構相模原病院3),FCG総合研究所環境科学研究室4) 小俣 優子1) 下条 直樹2) 數川 久恵1) 小倉 成美子1) 鈴木 裕子1) 齋藤 明美3) 西岡 謙二3) 福冨 友馬3) 川上 裕司4) 河野 陽一2)
■キーワード
アナフィラキシー, ダニ, 食品
■要旨
小麦粉製品に混入したダニの経口摂取によるアナフィラキシーの症例を経験したので報告する.症例は12歳女児.開封後室温で保存していたパンケーキミックスを自宅で調理し,摂取した約30分後に蕁麻疹,嗄声,気管支喘息中発作を認めた.患者血清総IgE 1,187 IU/ml,2種類のhouse dust mite,および3種類のstorage miteに対する特異的IgE抗体はそれぞれ陽性であり,小麦,グルテン,ω-5グリアジンに対する特異的IgE抗体は陰性であった.プリックテストで実際に摂取した粉は陽性であったが,新品の粉は陰性であった.摂取した粉中にコナヒョウヒダニを0.5 g中15,277匹確認し,アナフィラキシーの原因をパンケーキミックスに混入したコナヒョウヒダニと特定した.ELISA法によるパンケーキミックス中のダニ抗原測定で,Der 1は106 μg/gと多量に検出され,Der 2は17.0 μg/gであった.小麦粉製品は一般家庭では室温で保存している例が多いが,開封後一定期間以上保存する場合にはダニ混入の予防のため冷蔵保存が望ましいと考える.小麦粉製品摂取後のアナフィラキシーの患者では,食品に混入したダニが原因である可能性を考慮するべきである.
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【原著】
■題名
呼吸困難を契機に診断に至った肉芽腫性病変合併分類不能型免疫不全症の1例
■著者
神奈川県立こども医療センター感染免疫科 鹿間 芳明 清水 彰彦 佐々木 元 高橋 英彦 赤城 邦彦
■キーワード
分類不能型免疫不全症(common variable immunodeficiency), 肉芽腫性病変, switched記憶B細胞(switched memory B cell), 可溶性IL-2レセプター, シクロスポリン
■要旨
労作時呼吸困難を主訴に受診し,最終的に肉芽腫性病変を伴うリンパ増殖性疾患合併分類不能型免疫不全症(CVID)と診断した女児例を経験した.反復性中耳炎の既往と血清免疫グロブリン低値からCVIDと診断したが,Tリンパ球低値,T細胞新生能低下など,細胞性免疫の異常も示唆された.胸部CTではびまん性に斑状・小粒状陰影と間質性陰影が混在し,腹部MRIでは縦隔・肺門部から腹部傍大動脈域にかけてリンパ節腫脹と左腎門部腫瘤が認められた.生検を施行したところ腫瘤は腫大したリンパ節で,肉芽腫性病変を伴う多型性のリンパ増殖性変化を認めたことから,本症例の肺病変はCVIDに伴うgranulomatous-lymphocytic interstitial lung disease(GLILD)と考えられた.ステロイド治療に対する反応は良好であったが,減量に伴い血清可溶性IL-2レセプターの再上昇を認めたため,シクロスポリンを併用してステロイドの減量を図っている.CVID患者の中でも肉芽腫性病変合併例はswitched memory B細胞が著減していることが多く,自己免疫疾患やリンパ性悪性疾患など合併症の頻度が高く,平均寿命が短いことが知られている.ステロイドと種々の免疫抑制剤の併用が試みられているが確立された治療法はなく,時機をみた骨髄移植を考慮すべき疾患であると考えられる.
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【原著】
■題名
インフルエンザ菌b型ワクチン接種後にHib肺炎,菌血症を生じた1例
■著者
富良野協会病院小児科1),いんやく小児科クリニック2),旭川厚生病院小児科3),千葉大学大学院医学研究院小児病態学4) 田中 亮介1) 藤保 洋明1) 角谷 不二雄1) 印鑰 史衛2) 坂田 宏3) 石和田 稔彦4)
■キーワード
インフルエンザ菌b型(Hib), Hibワクチン, 菌血症, 抗リボシルリビトールリン酸抗体
■要旨
症例は10か月女児.発熱,咳嗽で抗生剤を処方されるも改善せず,肺炎を生じ当科に紹介入院となった.入院時の静脈血培養でインフルエンザ菌b型(Hib)陽性を認めたが,抗菌薬投与により後遺症を残さず治癒した.本症例はHibワクチン初回3回接種を受けていたが,6か月経過後にHib菌血症を発症した.発症時の抗ポリリボシルリビトールリン酸抗体は0.46 μg/mlで,長期感染阻止レベルには至っていなかった.しかし回復期には19.4 μg/mlと明らかな上昇を認めた.免疫検査でも異常所見を認めないことから,児は免疫不全ではないと考えられた.初回接種だけではHibワクチンの効果は十分ではない可能性があり,追加接種は1歳を過ぎたらできる限り早く接種すべきである.
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【原著】
■題名
本態性血小板血症例の治療経過
■著者
北海道厚生連網走厚生病院小児科1),旭川医科大学病院小児科2) 北村 宏之1) 太田 圭1) 立花 幸晃1) 金田 眞2)
■キーワード
本態性血小板血症
■要旨
小児期における本態性血小板血症は成人と比べ非常に稀な疾患であり,それゆえ経過や予後,治療方針について不明な点も多い.われわれは一過性の視力障害を契機に診断された12歳男児の本態性血小板血症の1例を経験した.アスピリン投与のみで経過をみており,血小板数の改善は認めていないが,症状の再燃はない.小児期発症の本疾患の予後については成人に比し,合併症の発生率は低く,急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群への移行も少ないとされ,成人と同等の治療介入は必要ないと考えられた.今後,小児の本態性血小板血症の症例蓄積による治療方針の確立が待たれるところである.
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【原著】
■題名
Kasabach-Merritt症候群を合併した巨大肝血管腫にビンクリスチンが奏効した早産児例
■著者
兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科 田中 聡 岩谷 壮太 祖父江 俊樹 藤岡 一路 和田 佳子 坂井 仁美 溝渕 雅巳 芳本 誠司 中尾 秀人
■キーワード
新生児肝血管腫, Kasabach-Merritt症候群, 心不全, ビンクリスチン, 早産児
■要旨
症例は,在胎31週5日,出生体重2,145 gの男児,胎児期に腹腔内腫瘤を指摘されていた.生後は肝に一致して巨大な硬性腫瘤を触知,血液検査および腹部造影CT検査により,Kasabach-Merritt症候群(KMS)を合併した新生児巨大肝血管腫と診断した.ステロイド製剤,インターフェロン-α,βブロッカーによる治療を行ったが効果が得られず,ビンクリスチンによる治療を試みたところ,腫瘍縮小効果およびKMSの改善が得られた.新生児肝血管腫はその疾患多様性から標準的治療戦略が確立しておらず,各症例の病態に応じた内科的治療および外科的治療を選択する必要がある.新生児肝血管腫に対するビンクリスチン治療の報告はまだ少ないが,各種内科的治療に抵抗性を示す肝血管腫症例において期待できる内科的治療の一つになりうると考えられたので報告する.
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【原著】
■題名
高度の開口障害に対して生後早期に治療を行ったoral synechiaの1例
■著者
石井記念愛染園附属愛染橋病院小児科 齋藤 広幸 木下 大介 玉置 祥子 川村 彬子 酒井 絵美子 井石 倫弘 甲斐 明彦 前川 周 隅 清彰 塩見 正司
■キーワード
Oral synechia, 口蓋裂, 開口障害, 気道確保
■要旨
Oral synechiaは口腔内の先天的癒合を呈する稀な口腔内奇形である.症例は日齢0の男児,在胎期間39週1日,出生体重3,290 gで出生した.出生時に口蓋と口腔底および上下の歯茎をつなぐ計7本の索状物による口腔内癒合を認め,高度の開口障害と呼吸障害を呈していた.日齢1に覚醒下で口腔内癒合の切除術を施行し,呼吸障害は速やかに改善した.術中に口蓋裂を確認した.開口障害は徐々に改善し,日齢9に経口哺乳が確立した.月齢1か月半頃から舌根沈下・閉塞性無呼吸・哺乳不良が顕在化したため舌固定術を施行した.体重増加を得た後,月齢13か月に口蓋裂の根治術を施行した.本疾患を早期診断し,口腔内癒合切除術の適応判断,気道管理や栄養管理を適切に行うことが重要である.
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【原著】
■題名
胃軸捻転を伴ったBochdalek孔ヘルニアの1例
■著者
市立枚方市民病院小児科1),大阪医科大学泌尿生殖・発達医学講座小児科2) 村田 真野1) 余田 篤2) 井上 敬介2) 松村 英樹1) 柏木 充1) 洪 真紀1) 奥村 謙一1) 岡空 圭輔1) 玉井 浩2)
■キーワード
胃軸捻転, 横隔膜ヘルニア, Bochdalek孔ヘルニア
■要旨
症例は3歳男児であり,特に既往歴はなく,成長および発達に特記事項はない.嘔吐および腹痛を主訴に当院を救急受診した.初診時の腹部単純レントゲン写真で胃泡の拡張を認めた.胃内減圧のために胃管を留置した際に,上部消化管造影検査を施行したところ,前庭部は噴門部より左頭側に存在し,胃は全体として逆α型を呈し,腸間膜軸性の胃軸捻転と診断した.また腹部CT撮影で左Bochdalek孔ヘルニアと診断した.内視鏡にて胃軸捻転を整復した後に,根治術としてBochdalek孔ヘルニア縫縮術および胃固定術を行った.
胃軸捻転は,腹部単純レントゲン写真で胃泡の異常な拡張を認めた場合に,鑑別に挙げる疾患の一つである.その頻度は高くないが,胃軸捻転の死亡率は6.7%とされている.早期の診断のためには,その疾患の存在と初期治療を知っておくことが大切である.小児の胃軸捻転では大部分の症例に横隔膜の異常,胃間膜の異常,無脾症,腸回転異常などの合併症が単独または重複して認められている.胃軸捻転を診断すると同時に,それを引き起こした要因を検索することも重要である.
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【論策】
■題名
小児がん経験者に対する社会的偏見の実態調査
■著者
聖路加国際病院小児科1),新潟県立新潟がんセンター小児科2) 石田 也寸志1) 浅見 恵子2)
■キーワード
小児がん, 小児がん経験者, 社会的偏見, 進学, 就労
■要旨
本邦において小児がん経験者に対する進学・就職時の学校や企業側の意向と小児がん経験者自身の経験の実態を探り,問題点を明確にすることを目的に調査を実施した.
無作為抽出した全国の高校/大学計200校,企業計200社,1975年4月〜2007年3月までに新潟県立がんセンターで治療を終了し,病名告知を受けている18歳以上で同意を得られた小児がん経験者138名へアンケートを郵送して回答を回収した.回収率は,それぞれ54.5%,37%,65.2%であった.
その結果「小児がんは現在では約80%が治癒する疾患である事」は未だ学校の半数および企業の4分の3は認知していなかった.進学時には小児がん既往は特に問題とならないが,むしろ小児がん経験者及び主治医が,この事実を知らず「不利になる」と思い込んでいる可能性が高いこと,就職時も全体的には既往歴は問題にならない傾向であったが,1.8%の学校と5%の企業で不合格とすると答えたものがあり,既往歴と現病歴の違いを広く社会に啓発する必要があると考えられた.病名記載率や上司への説明率,異性との交際経験割合やハートリンク共済の認知度に関して女性の方が有意に高く,経験者本人の調査では恋愛結婚で病気のことを話していれば,特にトラブルは生じていなかった.
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