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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.2.2)
第116巻 第1号/平成24年1月1日
Vol.116, No.1, January 2012
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総 説 |
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船戸 正久 1 |
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伊東 恭子 10 |
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竹中 義人 20 |
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山本 俊至 32 |
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齋藤 伸治 40 |
6. |
災害と子どもの精神保健:震災支援のストラテジー
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塩川 宏郷 46 |
第114回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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桑原 博道 54 |
教育講演 |
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斎藤 博久 61 |
原 著 |
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下村 英毅,他 66 |
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田中 裕也,他 73 |
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浅田 和豊,他 78 |
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藤井 隆成,他 84 |
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林(中田) 麻子,他 92 |
論 策 |
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柳原 剛,他 97 |
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103 |
日本小児科学会 小児救急委員会 重篤小児調査ワーキンググループ報告 |
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日本小児科学会専門医研修認定施設・全国救命救急センターにおける重篤小児と救急室死亡症例の現状調査
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112 |
日本小児科学会予防接種・感染対策委員会 |
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わが国の予防接種後副反応報告制度について〜2011年12月時点〜
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116 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No28. 電気ケトルによる熱傷
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130 |
日本小児科学会生涯教育および専門医育成認定委員会 |
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133 |
小児科医のための医療教育の基本 |
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133 |
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136 |
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141 |
【原著】
■題名
小児の慢性頭痛の診断と起立性調節障害に伴う頭痛の特徴についての検討
■著者
滋賀県立小児保健医療センター小児科1),兵庫医科大学小児科学2) 下村 英毅1)2) 熊田 知浩1) 楠 隆1) 宮嶋 智子1) 小田 望1) 齊藤 景子1) 藤井 達哉1)
■キーワード
小児頭痛, 慢性頭痛, 起立性調節障害, 片頭痛
■要旨
起立性調節障害(Orthostatic dysregulation:OD)と慢性頭痛は小児によくみられる疾患である.ODに頭痛を伴うことは知られているが頻度や詳細な症状についての報告は少ない.我々は慢性頭痛を主訴に来院した小児について頭痛の病型分類と,ODの有無,頭痛の頻度,症状,治療を検討した.対象は2009年5月から1年間に当院頭痛外来を受診した71名とした.結果は一次性頭痛38例(53.5%),二次性頭痛28例(39.4%),分類不能5例(7.0%)であった.一次性頭痛は片頭痛28例(39.4%),緊張型頭痛9例(12.7%),群発頭痛1例(1.4%)であった.二次性頭痛はODに伴う頭痛が最も多く23例(32.4%),その他が5例であった.ODに伴う頭痛は拍動性で,中等度の痛み,症例によって好発時間があることが特徴であり,23例中8例(34.8%)で片頭痛の診断基準を満たした.ODに伴う頭痛の治療は,効果の判定できた20例中13例(65%)で非薬物治療のみで改善した.頭痛発作時の治療は,アセトアミノフェンを使用した7例中1例で有効,イブプロフェンは5例中3例で有効であった.ODに伴う頭痛の治療では鎮痛剤の効果は不十分で,ODの治療,特に非薬物治療が効果を示した.小児の頭痛ではODに伴う頭痛に注意すべきと考えられた.
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【原著】
■題名
川崎病回復期に発症した中毒性表皮壊死症の1例
■著者
兵庫県立こども病院アレルギー科 田中 裕也 安部 信吾 笠井 和子 中岸 保夫 三好 麻里
■キーワード
中毒性表皮壊死症, 川崎病, ステロイドパルス療法, 大量免疫グロブリン療法
■要旨
症例は3歳男児.川崎病に対し近医入院後,大量免疫グロブリン療法が施行され,抗血小板薬(flurbiprofen, aspirin)が投与された.症状は改善しaspirin継続として退院.退院後発熱,発疹,粘膜症状が出現した.川崎病の再燃として大量免疫グロブリン療法と,aspirin増量で対応されたが症状の改善がなく,当院へ紹介入院.臨床所見や病理検査結果より中毒性表皮壊死症と診断した.薬剤(aspirin)の中止,補液・栄養管理,感染対策,疼痛管理等の全身管理と,皮膚,眼などの局所管理を行いながら,特異的治療としてステロイドパルス療法を施行し,後療法としてステロイドを漸減中止した.当院入院後ほぼ全身の表皮剥離を認めたが改善し,第47病日に退院,現在経過良好である.原因についてマイコプラズマ,単純ヘルペスウイルスなどの感染症は否定的であり,薬剤については入院中と退院後に経過中使用した薬剤(aspirinや抗菌薬など)についてdrug lymphocyte stimulation test(DLST)を施行したが原因薬剤は同定できなかった.
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【原著】
■題名
フィリピンからの輸入麻疹患者の発生と臨床ウイルス学的考察
■著者
独立行政法人国立病院機構三重病院小児科1),川崎医科大学附属川崎病院小児科2) 浅田 和豊1) 一見 良司1) 大矢 和伸1) 谷田 寿志1) 田中 孝明2) 菅 秀1) 庵原 俊昭1)
■キーワード
麻疹, 麻疹ウイルス, 輸入感染症, 麻疹移行抗体, Human herpesvirus 6(HHV-6)
■要旨
2010年8月に三重県で,フィリピンからの輸入関連麻疹症例3例を経験した.フィリピンから帰国した9歳女児は,帰国後に麻疹を発症し,その近隣に在住する乳児が麻疹を発症した.その後,乳児の母親が麻疹ウイルス(MV:Measles virus)に感染し,発熱を認めた.フィリピンから帰国した麻疹患者と,麻疹を発症した乳児から,同じ遺伝子型D9のMVが分離され,遺伝子配列は解析できる範囲でN遺伝子が100%一致していた.MVの潜伏期間と遺伝子型より,フィリピンから帰国した麻疹患者から,乳児にMVが伝播したものと推察された.乳児の母親における麻疹IgG抗体は,発症前で5.4 EIA価であり,発症を予防できるレベルであった.実際,母親の症状は,発熱のみで発疹は認めなかった.しかし母親の抗体価から考えると,生後9か月の乳児の抗体価は低値であったと推測され,そのため麻疹を発症したものと考えられた.
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【原著】
■題名
ビタミンB1投与が著効した脚気心の幼児例
■著者
昭和大学小児科1),昭和大学横浜市北部病院循環器センター2),財団法人東京都保健医療公社荏原病院小児科3) 藤井 隆成1) 北條 彰1) 中村 俊紀1) 岩崎 順弥1) 高柳 隆章3) 上村 茂2) 板橋 家頭夫1)
■キーワード
脚気心, ビタミンB1, チアミン, 心不全, イオン飲料
■要旨
脚気はビタミンB1欠乏による炭水化物代謝の障害であり,脚気心と呼ばれる心不全を来たす.今回,乳児用イオン飲料の大量摂取による脚気心に対して,ビタミンB1投与により劇的な改善がえられた1例を経験した.
1歳1か月男児.6か月頃から8か月時にかけて乳児用イオン飲料を一日1,500〜2,000 ml飲むようになった.同時に哺乳量,食事量も激減した.頻回の嘔吐が出現したため前医に入院し輸液を施行され3日間で退院した.退院の翌々日に再度嘔吐が出現し,低ナトリウム血症と痙攣を認め当院に紹介され入院となった.入院後,輸液による改善が乏しい頻脈と低血圧,心収縮能の低下,心電図上の非特異的なST変化などから脚気心が疑われた.経静脈的にビタミンB1を投与したところ臨床症状,心エコー所見,心電図所見で急激な改善が得られ,後に判明した血清ビタミンB1値が7 ng/ml(正常値;28 ng/ml以上)と異常低値であったことから最終的に脚気心と診断した.
本症例ではビタミンB1投与の急性効果を,心エコー,心電図を含めて詳細に観察することができた.低栄養や乳児用イオン飲料の大量摂取に伴う心不全では,脚気を念頭におく必要がある.
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【原著】
■題名
シリコン栓での気管支充填術により救命したFontan術後難治性気道出血の小児例
■著者
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科 林(中田) 麻子 河津 由紀子 稲村 昇 石井 良 浜道 裕二 萱谷 太
■キーワード
気道出血, 動脈塞栓術, 気管支充填術, Endobronchial Watanabe Spigot, Fontan手術
■要旨
症例は5歳女児.先天性心疾患に対し3歳時にFontan手術が行われ,術後経過は良好であった.散歩中に血液の大量嘔吐を認め,救急搬送.気道出血と診断されたが出血を繰り返すため,ヘリコプターで当センターへ緊急搬送となった.側副血管に対しコイル塞栓術を何度も行ったが大量出血が継続したため,救命的にシリコン製のEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)による気管支充填術を施行した.難治性の気道出血であったが,側副血管へのコイル塞栓術およびEWSによる気管支充填術の併用により救命することができた.本症例は小児で初めてのEWSによる気管支充填術施行例である.術後急性期にEWSの脱落および再充填などを要したが以後は明らかな合併症なく経過しており,EWSは難治性の気道出血においてコイル塞栓術との併用も考慮すべき治療法であると考えた.今後はEWSの長期留置に伴う合併症に注意しながら経過観察の予定である.
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【論策】
■題名
乳幼児検尿全国アンケート調査
■著者
日本医科大学小児科1),日本小児腎臓病学会3歳児検尿全国実態調査委員会2),久留米大学医療センター小児科3),駿河台日本大学病院小児科4),東京女子医科大学腎臓小児科5),公立福生病院小児科6),順天堂大学附属練馬病院小児科7),つちや小児科8) 柳原 剛1) 多田 奈緒1) 伊藤 雄平2)3) 高橋 昌里2)4) 服部 元史2)5) 松山 健2)6) 大友 義之2)7) 土屋 正己2)8)
■キーワード
乳幼児検尿, 超音波スクリーニング, 先天性尿路奇形, 腎不全
■要旨
3歳児検尿(乳幼児検尿)は,昭和36年に法制化された検尿システムであるが,現在施行されているシステムには多くの問題が含まれている.今回我々は,より良いシステムの構築を目的として,3歳児検尿の現状を把握するために全国アンケートを行った.全国1,973自治体の乳幼児検尿担当者に対してアンケートを送付し,1,422自治体(全体の73%)より回答を得た.
その結果,検尿内容や方式は自治体毎に様々で統一されておらず,検尿異常者に対しては任意の医療機関を受診するよう勧奨するにとどまり,二次スクリーニングを事実上行っていない自治体が75%を占めた.このため,検尿異常者の最終診断や臨床経過は多くの自治体で把握されておらず,検尿システムを評価することは困難であった.
この様な現状に鑑み,日本小児腎臓病学会評議員を対象として追加アンケートを行ったところ,多くの評議員が「現行のままでは3歳児検尿の意義は少ない」と考えていることが判明した.3歳児検尿の一義的な目的は,慢性腎不全への進行が予見される児に対し,早期介入により腎機能予後やQOLの改善を図ることである.そのためには,先天性腎尿路奇形の早期発見が大変重要な課題であり,従来の検尿に加え腎エコー検査の積極的な導入が望まれる.乳幼児検尿の意義を高めるためには,検尿システムの内容を一から見直し再構築することが急務であると考えられた.
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