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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:11.9.16)
第115巻 第9号/平成23年9月1日
Vol.115, No.9, September 2011
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原 著 |
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柚木 佐与,他 1411 |
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甘利 昭一郎,他 1418 |
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小泉 沢,他 1423 |
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渡辺 健,他 1432 |
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中村 由紀子,他 1440 |
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松原 康策,他 1445 |
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粟野 宏之,他 1451 |
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田上 幸治,他 1456 |
論 策 |
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江原 朗 1461 |
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地方会抄録(富山・島根・栃木・山形・長野・宮城・静岡・鳥取・福岡・宮崎・佐賀・長崎)
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1464 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.24 しつけ箸による刺傷
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1505 |
平成23年度公益財団法人小児医学研究振興財団 |
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イーライリリー海外留学フェローシップの募集について
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1508 |
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1509 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2011年53巻4号8月号目次
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1510 |
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1511 |
【原著】
■題名
生体肝移植後糖尿病の発症に関与する因子とその予後
■著者
自治医科大学小児科1),同 移植外科2) 柚木 佐与1) 福田 冬季子1) 杉江 秀夫1) 水田 耕一2) 河原崎 秀雄2) 桃井 真里子1)
■キーワード
生体肝移植, 移植後糖尿病, 免疫抑制剤, カルシニューリン阻害薬
■要旨
移植後糖尿病(post-transplant diabetes mellitus:PTDM)は臓器移植の重要な合併症の一つであり,PTDMの発症には多彩な要因の関与が推測されているが,生体肝移植後のPTDM発症の要因やその予後については不明な点が多い.我々は生体肝移植を施行した133例(移植時年齢平均40.9か月)を対象にPTDMの発症率,PTDM発症に関与する要因,PTDM発症例の予後について検討を行った.PTDMの発症率は3.0%(4/133例)であった.PTDM発症群とPTDM非発症群の比較では,PTDM発症群において移植時の年齢と体重が有意に高かったが,BMI(body mass index)や術前の空腹時血糖値,術後14日および28日目までの体重あたりの副腎皮質ステロイド総投与量には有意差はなかった.使用した免疫抑制剤タクロリムスとシクロスポリンの比較ではPTDM発症頻度に有意差はなかった.PTDMの発症時期は4例中3例で移植後4か月以内と早期であり,PTDMのコントロールは全例良好であった.PTDMの予後は良好と考えられたが,今回明らかになった要因に留意し,PTDMの早期診断,適切な治療が必要である.
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【原著】
■題名
中枢神経病変を来したコクサッキーウイルスB4感染症の7例
■著者
公立昭和病院小児科1),国立感染症研究所ウイルス第2部2),同 ウイルス第1部3) 甘利 昭一郎1) 生田 陽二1) 小田 新1) 滝 有希子1) 内山 健太郎1) 吉田 知広1) 大場 邦弘1) 野田 絵理1) 河野 寿夫1) 清水 博之2) 水谷 哲也3)
■キーワード
コクサッキーウイルスB4, 可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症, 髄膜炎, ウイルス分離, ポリメラーゼ連鎖反応
■要旨
コクサッキーウイルスB4(CB4)により中枢神経病変を来した7例(脳炎/脳症1例,髄膜炎6例)を経験した.
脳炎/脳症例は4歳女児で,上気道炎で発熱した翌日に痙攣重積状態となり当院へ紹介された.入院後の経過は良好で,頭部MRIにて脳梁膨大部周辺に一過性の拡散能低下を認めたため可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症(MERS)と診断した.上気道からCB4が同定され,病原ウイルスと考えられた.
髄膜炎例は6例で,全例の髄液からCB4が同定された.有熱期間は中央値56時間であった.髄液検査所見は一般的なウイルス性髄膜炎の所見と概ね相違なかったが,生後2か月以内の5例で髄液糖がやや低かった.
自験例7例の経過は良好であったがコクサッキーウイルス感染症は時に重篤な経過を辿るため,重症化の危険因子の特定,あるいは可能ならばワクチン・治療薬等の開発が望まれる.そのためにはサーベイランスを続け,症例を蓄積していくことが必要である.
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【原著】
■題名
インフルエンザA/H1N1 2009小児重症例の治療経験
■著者
静岡県立こども病院小児集中治療科 小泉 沢 植田 育也 武藤 雄一郎 吉本 昭 小泉 敬一 藤原 直樹 金沢 貴保 川口 敦 野田 あんず 福島 亮介 黒澤 寛史 川崎 達也
■キーワード
インフルエンザA/H1N1 2009, 呼吸不全, 小児集中治療室(PICU)
■要旨
[目的]PICUにて加療を行ったインフルエンザA/H1N1 2009(A/H1N1 pdm)症例の臨床像,治療経過,予後を検討する.[方法]2009年8月1日から2010年1月31日までに静岡県立こども病院PICUに入室したA/H1N1 pdm患者を対象とし,診療録をもとに後方視的に検討した.[結果]患者総数は33例(年齢中央値6歳10か月),入室理由は呼吸窮迫・呼吸不全(呼吸障害群)23例,意識障害・痙攣(中枢神経障害群)10例であった.呼吸障害群においては,17例(74%)が発熱から12時間以内に呼吸障害を呈していた.重篤な低酸素血症を呈することが多く,気管支攣縮を伴う閉塞性呼吸障害と無気肺の合併を多数に認めた.また急性呼吸窮迫症候群1例,気胸あるいは縦隔気腫4例,敗血症性ショックを2例に合併した.治療は,抗インフルエンザ薬に加えて,非侵襲的陽圧換気療法を7例,人工気道下陽圧換気療法を4例に施行した.またβ2刺激薬吸入に効果を認めた患者には気管支喘息発作に準じた治療を行った.死亡例はなく予後は良好であった.中枢神経障害群では,急性脳症を1例に認め,神経学的後遺症を残した.[考察]A/H1N1 pdmによる呼吸障害は,発熱から短時間で著明な低酸素血症を呈する特徴があり,閉塞性呼吸障害と無気肺の合併を多く認めた.諸外国のPICUからの報告と比較し予後は良好であった.
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【原著】
■題名
動脈管依存性先天性心疾患に対するプロスタグランディンE1 αCDの使用実態調査
■著者
国立循環器病センター小児科 渡辺 健 越後 茂之
■キーワード
先天性心疾患, 動脈管, プロスタグランディンE1, 新生児
■要旨
動脈管依存性の先天性心疾患に対するPGE1 αCDの安全性と有効性を評価するため承認後における使用実態調査を実施した.全国の54施設で調査を行い,計254症例を対象とした.安全性解析対象の249例中,副作用は89例(35.7%)にみられた.最も多かったのは無呼吸発作であり,無呼吸発作の有無を確認できない人工呼吸器管理を既に行っていた症例を除く175例を分母とすると,39例(22.3%)にみられた.その他の主な副作用は頻度順に,発熱が21例(8.4%),低ナトリウム血症が8例(3.2%),C-反応性蛋白増加が6例(2.4%),浮腫,低クロール血症および頻呼吸が各4例(1.6%)であった.無呼吸発作について血行動態分類別,使用速度別等の背景別検討を実施したが,影響を与えると考えられる要因は認めなかった.有効性解析対象の240例中,改善は204例(85.0%)にみられ,悪化は2例(0.8%)のみであった.血行動態分類別,使用速度別,使用開始時日齢別等の背景による検討では,日齢が改善に影響を与える因子であり,出生後早期に使用開始された症例の方が改善率が高く,より早期から治療することの重要性が示唆された.以上より,PGE1 αCDは承認後の使用実態下においても,無呼吸発作には注意が必要であるが比較的安全に使用でき,有用性の高い薬剤であることが確認された.
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【原著】
■題名
過去12年間に集中治療を要した被虐待症例の検討
■著者
杏林大学小児科1),同 医療福祉相談室2) 中村 由紀子1) 加藤 雅江2) 保崎 明1) 島崎 真希子1) 小松 祐美子1) 三輪 真美1) 清水 マリ子1) 別所 文雄1) 岡 明1)
■キーワード
児童虐待, 虐待防止委員会, shaken baby syndrome, 改正臓器移植法
■要旨
当院では平成11年より児童虐待防止委員会(以下,委員会)を発足し,虐待が疑われる症例について検討している.今回,平成10年1月から平成21年12月までに当院小児科に入院した被虐待症例55例のうち,集中治療を要した14例について主として社会的な側面を検討した.委員会により虐待もしくはその疑いと診断した11例では,平均5日で虐待通告を行っており,院内委員会の存在が虐待の早期診断に有効と考えられた.しかし,平均約3か月入院しており,関係諸機関との虐待に対する共通理解を得ることや適切な入所施設の確保に時間を要した.また,予後良好2例,重度後遺症10例,死亡2例と重症度も高く,死亡例については2例とも長期脳死の経過から心臓死に至った.現在,虐待については原因解析とその予防を主眼とした報告が多いが,死亡例や重症例についての病態解析や長期予後の評価はほとんど行われていない.これらの症例に対する行政レベルでのデータベース作成が求められる.今回の14例中2例がネグレクトのみであり,ネグレクトによる被虐待児が脳死に至る可能性も十分に考えられる.改正された臓器移植法では虐待が否定された症例のみ臓器提供の対象とされており,一医療機関に対して虐待診断と脳死判定を求められることは過大な負担である.小児の臓器移植を前提とした脳死症例については,第3者機関による虐待評価システムの構築が望まれる.
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【原著】
■題名
3年間のオクトレオチド持続皮下注射により膵手術を回避できた先天性高インスリン血症
■著者
西神戸医療センター小児科1),大阪市立総合医療センター小児代謝・内分泌内科2),社会医療法人厚生会木沢記念病院小児科3),同 放射線科4) 松原 康策1) 和田 珠希1) 依藤 亨2) 増江 道哉3) 西堀 弘記4) 磯目 賢一1) 由良 和夫1) 仁紙 宏之1) 深谷 隆1)
■キーワード
congenital hyperinsulinism, KATPチャネル遺伝子, オクトレオチド, 持続皮下注射ポンプ, 18F-fluoro-L-dihydroxyphenylalanine positron emission tomography(18[F]-DOPA-PET)
■要旨
先天性高インスリン血症(congenital hyperinsulinism,CHI)は膵β細胞からのインスリン過剰分泌による低血糖症が病態で,同定されている原因のうちKATPチャネル遺伝子変異が最も頻度が高い.近年国際的に発表された治療指針では,第1にジアゾキサイドを内服し,反応不良の場合は遺伝子検査と[18F]-fluoro-DOPA PETによって組織型(局所型,びまん型)を区別し,局所型では膵部分切除術を推奨している.しかし術前の組織型正診率は100%でなく,手術には合併症や後遺症もありうる.今回我々はオクトレオチド持続皮下注射により手術を回避でき治療を中止できた症例を経験した.同治療単独の治癒例の報告は稀である.患者は出生直後にジアゾキサイド不応性CHIと診断され,日齢17からオクトレオチド治療を初期量12.5 μg/kg/日で開始した.遺伝子検査でABCC8の父親由来アリルのみにナンセンス変異(c.2506C>T,p.R836X)を認め局所型CHIが示唆された.一方,生後5か月に実施したPET検査ではびまん型が示唆された.オクトレオチドの治療反応が極めて良好で,副作用なく胃ろう造設術や頻回食事摂取も不要であったため,同治療を継続した.その後緩徐に投与量を軽減し,中止3か月前から眠前コーンスターチ追加し,3歳3か月で治療を中止できた.本症例の結果から,少なくとも特定のCHI患者では,仮に局所型が示唆されてもオクトレオチド持続皮下注射は試行する価値のある治療であると言える.
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【原著】
■題名
非侵襲的陽圧換気療法と器械による咳介助を活用し気管内挿管から離脱した脊髄性筋萎縮症I型
■著者
神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学1),同 医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野2) 粟野 宏之1) 李 知子1) 八木 麻理子1) 竹島 泰弘1) 西尾 久英2) 松尾 雅文1)
■キーワード
脊髄性筋萎縮症, 非侵襲的陽圧換気療法, 器械による咳介助, 在宅人工呼吸
■要旨
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:以下SMA)I型は無治療の場合,呼吸不全のため2歳までに死亡するため,これまで気管切開による人工呼吸療法が行われてきた.今回我々は気管内挿管による人工呼吸から離脱する際に,気管切開を選択せず非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:以下NPPV)と器械による咳介助(mechanically assisted coughing:以下MAC)を活用し抜管に成功したSMA I型の1歳児例を経験した.
症例は11か月の女児.咽頭炎を契機に呼吸状態が悪化したため,気管内挿管による人工呼吸が必要となり,1歳1か月よりNPPV,MACを導入して抜管した.乳幼児ではNPPVやMACの理解や協力を得られず導入が困難な場合が多いが,事前にNPPVのインターフェイス装着やMACの練習を行うことにより,順調に導入することができた.NPPVとMACにより,十分な換気と気道クリアランスが確保できたことで呼吸不全が改善され,また発語,短時間の呼吸器からの離脱,腹臥位が可能であり,胸郭変形の進行も認めず,在宅療養を維持している.
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【原著】
■題名
ビタミンK欠乏性頭蓋内出血の2乳児例
■著者
神奈川県立こども医療センター総合診療科1),同 集中治療科2) 田上 幸治1) 松井 潔1) 島 貴史1) 山本 敦子1) 林 拓也2)
■キーワード
ビタミンK欠乏, 頭蓋内出血, 乳児, 予防対策
■要旨
1歳未満の重症の頭蓋内出血の原因の95%以上は虐待によるものとされる.乳児が意識障害,痙攣,無呼吸,頭蓋内圧亢進症状等で受診した場合,まず虐待を考慮することが大切である.しかし,凝固異常,血液疾患,髄膜炎,心内膜炎,高血圧,心肺蘇生後,外傷等でも頭蓋内出血が起こる.今回,我々はビタミンK欠乏性出血症疑いによる頭蓋内出血の2乳児例を経験した.症例1は日齢33に意識障害,呼吸不全で受診し,硬膜下血腫を認めた.ビタミンK2シロップは日齢0での1回のみだった.症例2は日齢42,意識障害で受診し,脳室内出血を認めた.ビタミンK2シロップの投与は無かった.両者とも眼底出血や全身骨レントゲン検査で骨折は認めなかった.凝固異常を認め,検査所見からビタミンK欠乏性出血症が疑われた.現在推奨されているビタミンKの予防投与が遵守されなかったことは憂慮されるべきである.乳児のビタミンK欠乏性出血症はしばしば頭蓋内出血を起こすが予防可能な疾患である.助産師も含め医療者がビタミンK投与について深い理解のもと,ガイドラインを遵守することが重要である.
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【論策】
■題名
病院小児科医・小児人口が少ない二次医療圏での小児科医求人の実態―小児科医不足との相反
■著者
広島国際大学医療経営学部 江原 朗
■キーワード
必要医師実態調査, 住民基本台帳, 二次医療圏, 医療提供体制, 医師求人数
■要旨
地方の医師不足が社会問題化しているが,都市部と地方との間で医師の求人傾向において差異があるのかは十分な検討がなされていない.小児科医や小児人口が少ない地域における医療提供体制に関する議論の資料とするため,平成22年9月に公表された必要医師実態調査および住民基本台帳(平成22年)をもとに,二次医療圏における小児科医の求人の有無とその地域における病院勤務の小児科医師数,小児人口,および,病院勤務の小児科医師数/小児人口との関係を検討した.
病院勤務の小児科医師数が10人未満の二次医療圏における小児科医の求人の実施率は,10人以上の地域と比較して有意に低かった.同様に,14歳以下の小児人口が2万人未満の二次医療圏における小児科医の求人実施率も,2万人以上の地域と比較して有意に低い傾向が見られた.
しかし,病院勤務の小児科医師数/小児人口の多寡により,小児科医の求人実施率に有意な差は認めなかった.
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