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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.1.8)
第113巻 第12号/平成21年12月1日
Vol.113, No.12, December 2009
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総 説 |
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小川 俊一 1769 |
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大薗 恵一 1779 |
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坂爪 悟 1789 |
4. |
全国1〜4歳児死亡小票から見た我が国の小児重症患者医療体制の問題点
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桜井 淑男,他 1795 |
原 著 |
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虫本 雄一,他 1800 |
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田中 香織,他 1805 |
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坂田 宏 1809 |
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青木 一憲,他 1814 |
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西庄 佐恵,他 1820 |
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王 茂治,他 1827 |
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眞山 義民,他 1830 |
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森野 紗衣子,他 1835 |
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高木 真理,他 1840 |
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光藤 伸人,他 1845 |
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虻川 大樹,他 1850 |
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松下 香子,他 1856 |
論 策 |
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野村 裕一,他 1861 |
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地方会抄録(中部・北日本・香川・兵庫・鹿児島・栃木・福岡)
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1867 |
第112回日本小児科学会学術集会分野別シンポジウム |
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現代のいじめ問題に,小児科はどのように取り組むべきか
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1911 |
日本小児科学会脳死臓器移植基盤整備ワーキング委員会 |
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日本小児科学会 脳死臓器移植基盤整備ワーキング委員会(第2次委員会)事業活動まとめ
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1925 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)Follow-up報告 No.1
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1929 |
日本小児科学会国際渉外委員会 |
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第13回アジア小児科学会若手医師参加支援プログラム参加者の印象記
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1931 |
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1932 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2009年51巻6号12月号目次
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1939 |
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1940 |
【原著】
■題名
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症日本人5症例の発症形態の検討
■著者
島根大学医学部小児科1),松山赤十字病院小児科2),高知大学医学部小児思春期医学3),九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野小児科4) 虫本 雄一1) 小林 弘典1) 長谷川 有紀1) 李 紅1) 福田 誠司1) 近藤 陽一2) 脇口 宏3) 藤枝 幹也3) 高杉 尚志3) 山口 結4) 吉良 龍太郎4) 原 寿郎4) 山口 清次1)
■キーワード
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症, 先天代謝異常, 脂肪酸代謝異常症, 新生児マス・スクリーニング, 乳幼児突然死症候群
■要旨
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症はこれまで白人に多く,突然死様の発症形態をとることが多いため注目されてきた.我々は最近4年間に5例の日本人MCAD欠損症を診断した.診断時年齢は1歳4か月から8歳10か月であった.2例は同胞スクリーニングで診断されたが,このうち1例は既に原因不明の脳症で発症していた.5症例のうち4例が発症後に診断されたが,これらはいずれも感冒罹患に伴う飢餓が契機となって発症した.新生児期に一過性の低血糖を認めた症例が2例あった.臨床症状は,繰り返すけいれんが1名,急性脳症様症状が2例,低血糖症状のみが1例で,絶食期間が半日以上続いたあとに発症していた.発症した4例では1例が死亡,3例が中等度から重度の障害を残していた.日本人MCAD欠損症も発症してしまうと予後が不良であることが示唆された.化学診断には尿中有機酸分析に加え,血中アシルカルニチン分析が有用であった.5例中2例で新生児マススクリーニング用血液ろ紙を入手しアシルカルニチン分析を行ったところ,2例ともに診断できることが確かめられた.MCAD欠損症は,食事間隔,補食などの生活指導で,発症を予防しうる疾患である.MCAD欠損症による障害予防,乳幼児突然死症候群の発症予防のため,タンデム質量分析による新生児マス・スクリーニング導入が期待される.
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【原著】
■題名
北海道における水痘,流行性耳下腺炎,肺炎球菌感染症による入院例についての検討
■著者
札幌医科大学医学部小児科 田中 香織 要藤 裕孝 堤 裕幸
■キーワード
水痘, 流行性耳下腺炎, 肺炎球菌感染症, 予防接種
■要旨
水痘,ムンプス,肺炎球菌感染症による入院症例について札幌医科大学小児科と,北海道内の関連機関である23施設を対象として,2004〜2008年の5年間に亘りアンケート調査を行った.年毎の差はあるものの,年間21〜32例の水痘による入院,4〜64例のムンプスによる入院,2〜6例の化膿性髄膜炎を含む侵襲性肺炎球菌感染症を確認できた.これらの入院施設は道内の小児の全入院施設のほぼ3分の1に相当することから,小児科以外の入院も考慮すると,北海道全体においてはこの数倍の入院例があると推測される.以上より,これら疾患の一般小児における重要性は明らかであり,ワクチンの定期接種化による予防を考慮すべきと考えられた.
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【原著】
■題名
近年の小児の溶連菌感染後急性糸球体腎炎の実態調査
■著者
旭川厚生病院小児科 坂田 宏
■キーワード
急性糸球体腎炎, A群溶連菌感染症, 合併症, 尿検査
■要旨
2005年から2007年の3年間の北海道道北・道東地域における15歳未満の小児の溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)の発症頻度について,小児科を標榜する施設にアンケート調査を行った.PSAGNの定義は1)肉眼的血尿や浮腫などの明らかな臨床症状があること,2)一過性の低補体価血症が認められていること,3)溶連菌感染がASOの有意な変動や培養成績で確認されていることの3点すべてを認めた例とした.14の小児の入院施設がある施設すべてと24の小児科診療所のうちの12か所から16名の児が集積された.患者の年齢は4歳から13歳までで,平均年齢は6.9歳であった.小児の人口10万人あたりの1年間の発症率は4.0であった.16名のうち10名に先行感染が認められ,診断は上気道炎が8名,肺炎が1名,溶連菌感染症が1名であった.また,8名で何らかの抗菌薬投与がされていたが,3名は溶連菌に有効な抗菌薬を5日間以上内服していた.16名はすべて8週間以内に回復した.さらに,同じ対象期間に当院小児科における溶連菌感染後の尿検査の異常の頻度を検討した.溶連菌感染症と診断したのべ270名のうち,尿検査のために再診した児はのべ211名で,その中で顕微鏡的血尿や無症候性蛋白尿を認めたのは5名(2.4%)であった.いずれも全身状態良好で,1〜2週間後に尿の異常所見は消失した.
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【原著】
■題名
2歳未満の虐待が疑われる頭部外傷の臨床的特徴
■著者
兵庫県立こども病院総合診療科1),同 脳神経内科2) 青木 一憲1) 澤田 杏子1) 佐治 洋介1) 丸山 あずさ2) 永瀬 裕朗2) 上谷 良行1) 中村 肇1)
■キーワード
虐待, 外傷性脳損傷, 硬膜下血腫, shaken baby syndrome, 網膜出血
■要旨
【背景】乳幼児の頭部外傷では虐待の鑑別が重要であるが,受傷機転や体表外傷が明らかでない例もあり,虐待の有無の判定は極めて困難である.我々は,日本において虐待が疑われる頭部外傷とそれ以外の外傷を分類し,臨床的特徴を比較検討した.【目的】外傷性脳損傷(traumatic brain injury:以下TBI)症例を,問診及び身体所見に基づく客観的指標を用いて非事故群(虐待群)と事故群に分類し,2群間での臨床的特徴の違いを明らかにする.【方法】2000年から2005年に当院に入院した2歳未満のTBI 41例を,問診と身体所見を用いた分類方法に基づき,非事故群(虐待群)と事故群に分類し後方視的に検討した.【結果】非事故群16例,事故群25例に分類した.硬膜下血腫は非事故群で全例,事故群では12例(48%)に認めた.硬膜外血腫は事故群で9例(36%),非事故群で0例であった.眼底検査を行った非事故群13例中10例(77%),事故群6例中2例(33%)に網膜出血を認めた.死亡を含む後遺症例は,非事故群で6例(38%),事故群で2例(8%)であった.【考察】乳幼児の頭部外傷を問診と身体所見という客観的指標で分類すると,米国での報告と同様に虐待が疑われる頭部外傷を抽出することが可能であった.
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【原著】
■題名
多様な病像を呈したIgE非依存性米アレルギーの3例
■著者
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科 西庄 佐恵 田口 智英 王 茂治 木村 光明
■キーワード
米アレルギー, IgE非依存性, パッチテスト, 発育障害, CRP上昇
■要旨
われわれは多様な症状を呈したIgE非依存性米アレルギーの3例を経験した.症例1は5か月の女児.重湯摂取後の血便を2回反復し,米除去により血便のエピソードは消失した.症例2は1歳2か月の男児.離乳食開始後からの体重増加不良があったが,次第に下痢も出現,体重減少をきたすに至った.米除去により体重増加と便性の改善を認めた.症例3は3歳3か月男児.離乳食開始後より下痢が始まり,10か月時米を含むIgE非依存性食物アレルギーと診断された.1歳半で米制限は解除されたが,その後再び便性の悪化を認め,白血球減少やCRP上昇もみられた.米除去により症状は改善し,7歳まで米制限を継続した.本研究から,IgE非依存性米アレルギーは消化管症状に限らず,発育傷害や免疫系の異常反応など全身的な合併症をも引き起こす可能性があることが明らかになった.
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【原著】
■題名
著明な高カリウム血症を来たした重症乳児アトピー性皮膚炎の2例
■著者
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科1),国際医療福祉大学熱海病院小児科2),静岡県立こども病院小児集中治療センター3) 王 茂治1) 松本 麻里花1) 西庄 佐恵1) 勝又 元1) 板倉 敬乃2) 植田 育也3) 木村 光明1)
■キーワード
乳児, アトピー性皮膚炎, 高カリウム血症, 心電図異常
■要旨
高カリウム(以下K)血症のため緊急治療を要した重症乳児アトピー性皮膚炎(以下AD)の2例を経験した.症例1は重症ADのため生後5か月時に入院となった.低ナトリウム(以下Na)血症に加え,著明な高K血症(8.3 mEq/l)を認めた.症例2も同様に重症ADのため生後6か月で前医を受診した.著明な高K血症(8.5 mEq/l)が認められ,当院PICUへ転送された.両症例とも心電図でT波の増高が認められたが,緊急治療により症状をあらわすことなく改善した.高度の高K血症は不整脈により突然死を引き起こす危険があり,乳児期の重症ADの診療に当たっては注意を払う必要がある.
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【原著】
■題名
新生児期発症オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の3例
■著者
千葉県こども病院代謝科1),自治医科大学移植外科2) 眞山 義民1) 村山 圭1) 鶴岡 智子1) 長坂 博範1) 水田 耕一2) 河原崎 秀雄2) 高柳 正樹1)
■キーワード
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症, 新生児期発症, 男児, 神経学的後遺症, 生体肝移植
■要旨
生体部分肝移植を実施した2例と移植を予定している1例,合計3例の新生児期発症の男児オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)の経過を報告した.2例は重篤な高アンモニア血症を呈したため血液浄化療法を受けた.1例は出生前より母体がOTCDと診断されており,充分な周産期対応がなされたこともあり著明な高アンモニア血症は呈さず,神経学的後遺症がない状態で肝移植をうけることができた.新生児期発症の男児OTCDは非常に予後の悪い疾患とされてきたが,出生前からの適切な対応によって,根本的な治療である生体肝移植を検討・実施できるようになってきている.
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【原著】
■題名
B群溶血性連鎖球菌によるcellulitis-adenitis syndromeの1症例
■著者
東京都立清瀬小児病院総合診療科1),独立行政法人国立病院機構埼玉病院小児科2) 森野 紗衣子1) 桑原 功光1) 賀来 卯生子1) 大瀧 潮1) 三浦 大1) 上牧 勇2)
■キーワード
遅発型B群溶連菌感染症, cellulitis-adenitis syndrome, 鼠径部蜂窩織炎, 無呼吸発作
■要旨
Cellulitis-adenitis syndromeは鼠径部,頭頸部の蜂窩織炎,リンパ節炎で発症する遅発型B群溶血性連鎖球菌(GBS)感染症で,ときに敗血症,髄膜炎を併発する.症例は出生時に問題のない生後62日女児.生後39日から,週に数回無呼吸発作を認めていた.発熱,哺乳不良,左鼠径部の皮下出血を伴う発赤腫脹のため入院した.エコーで鼠径部蜂窩織炎を確認し,血液培養からGBSが検出されたことから,GBS cellulitis-adenitis syndromeと診断した.髄膜炎の併発はなく,抗菌薬治療で軽快し無呼吸発作も消失した.文献例と合わせたcellulitis-adenitis syndrome計37例の検討では,1)初発症状が非特異的な場合が多い(22例中不機嫌8例,食欲低下10例),2)初発症状と発熱の時間差が様々である(同時〜3日),3)白血球数正常例が少なくない(25例中11例)といった特徴から診断が困難なことがあると考えた.一方で髄膜炎5例,呼吸障害5例,ショック1例など重症合併症を約3分の1で伴っていた.Cellulitis-adenitis syndromeは遅発型感染症であるため,母体への分娩時の抗菌薬投与では発症を予防できない.乳児期早期に鼠径部,頭頸部の発赤腫脹を認めた際は,GBS重症感染症の可能性を考慮し,迅速な対応が重要である.
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【原著】
■題名
Streptococcus mitisによる重症壊死性筋膜炎の1例
■著者
岐阜市民病院小児科 高木 真理 大西 沙緒理 篠田 邦大 門井 絵美 坂田 顕文 鷹尾 明
■キーワード
壊死性筋膜炎, Streptococcus mitis, 劇症型溶連菌感染症, 水痘
■要旨
4歳女児.発熱と右示指の発赤,出血にて当院へ救急搬送された.40度の発熱と傾眠傾向,右示指の病変の拡大を認めたため,劇症型溶連菌感染症による壊死性筋膜炎を疑い,抗生剤の投与を開始したが,その後も時間単位で病変の拡大を認めた.このため早急に外科的処置が必要と考え,来院8時間後に右示指切断術を施行した.切断された右示指は骨まで全層性に壊死が達しており,さらに病変部よりStreptococcus mitisが検出されたため,これを起因菌とした壊死性筋膜炎と診断した.手術翌日より解熱し,また断端部皮膚の発赤拡大や再発熱,炎症反応の再上昇は認めず,第15病日に退院となった.また入院2日後に患児に水疱が出現し水痘と診断した.劇症型溶連菌感染症による壊死性筋膜炎は進行が早く致死的となりうる稀な疾患であるが,本症例では早期の手指切断にて救命が可能であった.また本症例は術後水痘を発症しており,本症の発症に水痘罹患による免疫異常が関連したと推測された.
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【原著】
■題名
Molar tooth signを認めた姉妹例におけるJoubert症候群の診断基準に基づく検討
■著者
京都第一赤十字病院新生児科 光藤 伸人 林 耕平 木原 美奈子
■キーワード
molar tooth sign, Joubert症候群, 診断基準, 同胞例, 頭部MRI
■要旨
頭部MRIにてmolar tooth sign(大臼歯徴候)を認めた姉妹例を報告した.姉は新生児期に呼吸の異常,筋緊張低下,眼振を認め,特異的な顔貌を呈していた.その後,精神運動発達遅滞を認め,眼球運動失行が出現した.妹は新生児期より眼振を認めたが,呼吸の異常や特異顔貌は見られず,筋緊張低下も軽度であった.その後,精神運動発達遅滞を認めたが,眼球運動失行は認めていない.両症例をこれまでに提唱されているJoubert症候群の4つの診断基準に照らし合わせると,姉は何れの診断基準にも合致していたが,妹は診断基準によって合致する場合と,しない場合がみられた.Joubert症候群はその疾患多様性が問題となっており,より普遍的な診断基準の確立が必要であると考えられた.
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【原著】
■題名
骨髄および肝・脾への浸潤を呈した全身型若年性黄色肉芽腫の新生児例
■著者
宮城県立こども病院総合診療科1),山形済生病院小児科2),山形大学発達生体防御学講座小児医科学分野3),宮城県立こども病院血液腫瘍科4) 虻川 大樹1) 村山 晶俊1) 梅林 宏明1) 稲垣 徹史1) 三浦 克志1) 下風 朋章2)3) 沼倉 周彦3) 早坂 清3) 今泉 益栄4)
■キーワード
全身型若年性黄色肉芽腫, 貧血, 血小板減少, 肝脾腫, 組織球浸潤
■要旨
生直後より骨髄および肝・脾への浸潤による多彩な症状を呈した全身型若年性黄色肉芽腫(juvenile xanthogranuloma;JXG)の新生児例を報告する.症例は男児.日齢0より血小板減少,CRP陽性を呈し,徐々に貧血,肝脾腫,胆汁うっ滞性肝障害,腹部膨満,腹水が出現した.生直後には皮疹は1か所のみだったが,日齢60には頬部・上肢・体幹に黄褐色調の丘疹ないし結節を多数認めた.骨髄検査で空胞を有する大型の細胞を認めたが,先天性代謝異常症,胎内感染症,腫瘍は否定的であった.血小板数および腹水が改善したのち,日齢109に施行した肝生検では門脈域に泡沫状の胞体を有したCD68陽性,factor XIIIa陽性,CD1a陰性,S-100陰性の組織球の浸潤を認めた.日齢121に皮膚生検を施行し,同様の組織球とTouton型巨細胞を認め,全身型JXGと診断した.その後無治療にて経過観察したところ,皮疹はほぼ退縮し,貧血,肝脾腫,肝障害も軽快した.現在2歳で発育・発達は正常である.全身型JXGの多くは新生児例で,特徴的な皮疹を伴わない症例も存在するため,新生児期に汎血球減少と肝脾腫を呈する重要な疾患として認識すべきである.また,一部の症例では致死的な経過をとるが,自然退縮する可能性もあるため,化学療法など積極的な治療の選択には慎重さを要する.
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【原著】
■題名
尿細管間質性腎炎による急性腎不全で発症したSjögren症候群の1例
■著者
山梨大学小児科1),富士吉田市立病院小児科2) 松下 香子1) 東田 耕輔1) 澤登 恵美1) 海野 杏奈1) 矢ヶ崎 英晃2) 三井 弓子2) 前田 優一2) 望月 美恵2) 小鹿 学2) 杉田 完爾1)
■キーワード
急性腎不全, 尿細管間質性腎炎, Sjögren症候群
■要旨
急性腎不全と尿細管機能障害を合併したSjögren症候群の14歳女児を経験した.皮疹,関節痛の出現後,多飲多尿,体重減少を認め,急性腎不全,尿中β2microglobulin高値を伴なうFanconi症候群を認めた.唾液腺,涙腺の分泌低下を認め,Sjögren症候群と診断した.腎組織所見は,びまん性尿細管間質性腎炎であった.腎機能はプレドニゾロン(以下PSL)の内服を開始した後急速に改善し,アザチオプリン(以下AZP)の併用後,約9か月で正常化した.現在PSL2.5 mg/日,AZP50 mg/日の投与で,尿所見や乾燥症状ともに,約4年半寛解を維持している.小児期の原発性Sjögren症候群で,尿細管間質性腎炎と急性腎不全の合併例は,他に報告はない.
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【論策】
■題名
卒後臨床研修における小児科1年目研修は小児医療への興味を高める
■著者
鹿児島大学病院小児科1),鹿児島こども病院2) 野村 裕一1) 江口 太助1) 田邊 貴幸1) 豊島 光雄1) 岡本 康裕1) 溝田 美智代1) 内門 一2) 奥 章三2) 河野 嘉文1)
■キーワード
卒後臨床研修, 小児科研修, 1年目研修, 自己評価, 指導医評価
■要旨
【背景】卒後臨床研修中の研修医の小児医療への興味の維持や意欲向上のために1年目小児科研修が論議されているが,その効果は不明である.また,経験が十分でない1年目の時期に小児科研修を行うことに問題がないことの確認も必要である.そこで,1年目小児科研修の効果について検討した.【対象および方法】鹿児島大学病院小児科で小児科研修を行った研修医を対象とし,小児科研修目標の自己評価と指導医評価,研修の感想についてのアンケートを1年目と2年目研修に分けて比較検討した.【結果】1年目研修が14名で2年目研修が19名だった.経験が求められる各疾患の担当患児数は両群で差を認めなかった.基本的診療態度や基本的診療技術の自己評価や指導医評価は,1年目研修医で自己評価の低い項目が一部見られたが,有意差は認めなかった.研修内容の満足度は1年目が有意に高評価であり(1年目/2年目4.9±0.3/4.4±0.7,P=0.007),小児科研修の楽しみ度の評価も1年目研修医が有意に高評価だった(4.8±0.4/4.4±0.6,P=0.035).【結語】小児科研修を1年目に行うことに研修上の問題はなく,その満足度や感想はむしろ2年目研修より高評価であり,小児医療への興味向上に繋がる可能性が考えられた.卒業時に小児医療に興味を持つ学生に小児科1年目研修を勧めることで,その興味の維持や意欲を高めることが期待される.
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