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日本小児科学会雑誌 目次 | 
 
 
 
(登録:08.01.17) 
第111巻 第12号/平成19年12月1日 
Vol.111, No.12, December 2007
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| 総  説 | 
 
 
| 1. | 
新生児胆汁うっ滞―新生児肝炎及びシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞の臨床を中心として 
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| 田澤 雄作  1493 | 
 
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| 田尻 達郎,他  1515 | 
 
| 第110回日本小児科学会学術集会 | 
 
|   会頭講演 | 
 
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| 杉本 徹  1524 | 
 
|   教育講演 | 
 
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| 新実 彰男  1535 | 
 
| 原  著 | 
 
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| 横田 俊平,他  1545 | 
 
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| 藤田 利治,他  1559 | 
 
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| 石和田 稔彦,他  1568 | 
 
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| 福井 聖子,他  1573 | 
 
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| 福井 聖子,他  1580 | 
 
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| 酒井 理恵,他  1586 | 
 
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| 川口 敦,他  1592 | 
 
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| 摺木 伸隆,他  1598 | 
 
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| 岡 ゆかり,他  1603 | 
 
| 論  策 | 
 
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| 桜井 淑男,他  1610 | 
 
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|   1616 | 
 
 
日本小児科学会分科会活動状況 日本小児栄養消化器肝臓学会 
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|   1631 | 
 
| 日本小児科学会倫理委員会報告 | 
 
 
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第5回小児科学会倫理委員会公開フォーラム報告
病気の子供達の命の重さを如何に伝えるか―新生児から子供まで 
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|   1632 | 
 
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|   1640 | 
 
 
第17回「こどもの健康週間」作文コンクール 日本小児科学会会長賞受賞作品 
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|   1641 | 
 
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|   1642 | 
 
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|   1650 | 
 
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|   1652 | 
 
 
 
 
 
 
 
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 【原著】 
■題名 
インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第1報 薬剤使用および臨床症状発現の臨床的検討 
■著者 
横浜市立大学大学院医学研究科・発生成育小児医療学1),統計数理研究所2),横浜市立大学附属市民センター病院小児科3),順天堂大学小児科4),福島県立大学小児科5),新潟大学国際感染症学6),横浜市立大学大学院医学研究科神経内科学7),岡山大学大学院医歯学総合研究科・小児医科学8) 横田 俊平1)  藤田 利治2)  森 雅亮1)  根津 敦夫3)  奥村 彰久4)  細矢 光亮5)  鈴木 宏6)  鈴木 ゆめ7)  黒岩 義之7)  森島 恒雄8)  インフルエンザ随伴症状調査研究班 
■キーワード 
インフルエンザ, インフルエンザ脳症, 辺縁系, 側頭葉けいれん, アセトアミノフェン, オセルタミビル 
■要旨 
 小児期のインフルエンザ随伴症状の実態調査はこれまで行われたことがない.わが国では,乳幼児にインフルエンザ脳症が発生し,社会的にもインフルエンザに関わる調査は重要なものとなってきた.またインフルエンザ脳症では,発熱と痙攣・意識障害の間に特有の異常言動を認めるが,その実態も不明である.そこで全国12都県の小児科医師と患者家族を対象にインフルエンザの随伴症状,使用薬剤,経過などについて調査を実施した.その結果,インフルエンザ随伴症状は,けいれん(0.6%),熱性けいれん(2.6%),異常言動(10.5%),肺炎(1.4%),中耳炎(1.3%)などであり,使用薬剤はアセトアミノフェンとオセルタミビルが多く,抗菌薬や他の抗インフルエンザ薬の処方はごく少ないことが判明した.中枢神経症状の発現時期は第1,第2病日に集中していたが,中耳炎,肺炎などは第5〜7病日に発生していた.薬剤使用と臨床症状とについて検討したところ,アセトアミノフェン使用群では異常言動,けいれん,熱性けいれん,意識障害等の症状が多く発現していた.他方,オセルタミビル使用群と非使用群との間に異常言動,けいれん,熱性けいれん,意識障害の累積発現率の差は認められなかった.しかし肺炎の累積発現率は,オセルタミビル非使用群では,オセルタミビル使用群の約4倍であった.次に異常言動の内容について二次調査を行ったところ,怯え,幻視・幻覚・感覚の混乱,うわごと・歌う・無意味な動き,怒る・泣く・ニヤリと笑う・無表情,口に指などを入れ咬むなど特徴的な所見を得たが,オセルタミビル使用群と非使用群の間で臨床症状に差異は認めなかった.これらの異常言動は,皮質,辺縁系を含む側頭葉刺激症状と考えられ,異常言動を呈する例では側頭葉の興奮を促す何らかの機構が働いている可能性が示唆された. 
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 【原著】 
■題名 
インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第2報 薬剤使用と臨床症状発現との関連についての統計解析 
■著者 
統計数理研究所1),横浜市立大学大学院医学研究科・発生成育小児医療学2),横浜市立大学附属市民センター病院小児科3),順天堂大学小児科4),福島県立大学小児科5),新潟大学国際感染症学6),岡山大学大学院医歯学総合研究科・小児医科学7) 藤田 利治1)  森 雅亮2)  根津 敦夫3)  奥村 彰久4)  細矢 光亮5)  鈴木 宏6)  森島 恒雄7)  横田 俊平2)  インフルエンザ随伴症状調査研究班 
■キーワード 
インフルエンザ, 精神神経症状, アセトアミノフェン, オセルタミビル 
■要旨 
 インフルエンザの迅速診断キットによる診断や抗インフルエンザ薬等の新しいインフルエンザ治療法が導入され,インフルエンザの診断・治療状況は近年大きく変貌した.しかし小児の意識障害,異常行動,譫妄,幻覚,けいれん等の精神神経症状,呼吸器障害,心筋障害等のインフルエンザに随伴する症状や治療薬剤の使用実態についての情報が不足している.そこで2005/06年シーズンにインフルエンザに罹患した約2,800例の全国12都県の小児を対象者として,インフルエンザ経過中に生じた臨床症状,使用薬剤,経過などについて調査を実施した.本報告では,使用頻度の高いアセトアミノフェンとオセルタミビルの使用と臨床症状発現との関連を,比例ハザードモデルを用いて統計学的解析を行った.アセトアミノフェン使用群では,未使用群と比べ意識障害の発現リスク(ハザード比 3.39,p=0.001)が有意に増大していた.異常言動およびけいれんも,有意ではないもののハザード比が増大する傾向にあった.一方,オセルタミビルでは,使用群で有意に発現リスクが増大する臨床症状はみられなかったが,肺炎(ハザード比 0.21)とクループ(ハザード比 0.41)の発現リスクは有意に低下していた.しかし,今回の調査は小児におけるインフルエンザ発熱後の臨床症状,発熱および薬剤使用の時間経過の概要を明らかにすることを主要な目的としていたことから,治療薬剤と臨床症状との時間的関連の精密な解明には限界があり,最終的な結論を得るには至らなかった.今後,適切な研究デザインによる調査研究により,治療薬剤による異常行動,意識障害などの精神神経症状への影響を解明する必要がある. 
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 【原著】 
■題名 
インフルエンザ菌による小児全身感染症罹患状況 
■著者 
千葉県小児感染症懇話会1),千葉大学大学院医学研究院小児病態学2),千葉市立海浜病院小児科3),済生会習志野病院小児科4),千葉市立青葉病院小児科5),順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院小児科6),外房こどもクリニック7),東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科8),千葉労災病院小児科9),まなこどもクリニック10),千葉大学11),埼玉医科大学小児科12) 石和田 稔彦1)2)  黒崎 知道1)3)  寺嶋 周1)4)  石川 信泰1)5)  金子 堅一郎1)6)  黒木 春郎1)7)  久保 政勝1)8)  鈴木 宏1)9)  中村 明1)  原木 真名1)10)  上原 すゞ子1)11)12)  河野 陽一1)2) 
■キーワード 
Haemophilus influenzae, Haemophilus influenzae type bワクチン, 全身感染症, 髄膜炎, 千葉県 
■要旨 
 Haemophilus influenzae(Hi)type b(Hib)ワクチンの本邦への導入にあたり,経時的に人口に基づいたHi全身感染症罹患率を知ることは重要であり調査を行った.調査方法は,千葉県内で小児科入院施設を有する全45病院を対象に,1次調査として2003年〜2005年に診断したHi全身感染症例数を,2次調査として各症例の診断名,年齢,基礎疾患の有無,分離菌の血清型,薬剤感受性,治療,予後についてアンケート調査により検討した.調査票回収率は100%であった.年次別のHi全身感染症例数(千葉県5歳未満小児人口10万人あたりの罹患率)は,2003年23例(8.3),2004年37例(13.4),2005年45例(16.5)であり,Hi髄膜炎は,17例(6.1),24例(8.7),32例(11.7)であった.診断名では髄膜炎が73例と最も多かった.年齢は2歳以下が73.7%を占め,基礎疾患を有するものは2例のみであった.血清型別は63.2%で実施されており1例を除きHibであった.またampicillin低感受性株は55.6%であった.初期治療は第3世代セフェム系薬が最も多く,ステロイドは髄膜炎症例の92.5%で使用されていた.10例が神経学的後遺症を残し1例が死亡した.Hi全身感染症は髄膜炎を中心に3年間で約2倍に急増していた.Hibワクチンの定期接種化は緊急課題である. 
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 【原著】 
■題名 
小児夜間救急に関する保護者の実態と意識調査 第1報 
■著者 
子育て支援グループ『小さな手』研究部門1),富田林医師会・ふじおか小児科2) 福井 聖子1)  後藤 紀子1)  藤岡 雅司2) 
■キーワード 
小児夜間救急, 保護者意識調査, 保護者実態調査 
■要旨 
 夜間救急受診の状況と子どもの病気に対する保護者の考え方を比較検討するため,大阪府内の富田林市において健常幼児の保護者にアンケート調査を行った.1歳,3歳,5〜6歳児を中心に705部配布し520部を回収(回収率72.0%)した.過去に全回答者(520名)の約60%が夜間救急を受診していた.夜間救急受診者のうち1回受診者は34%,2〜4回57%,5回以上9%であった.受診していないか1回のみの受診者は,夜間急病時の対応として『体調を見て必要を感じたら受診』が5割弱を占めたのに対し,2〜4回受診者は『症状により受診』が56%,5回以上では『すぐ受診』が26%を占めた.夜間急病時に『すぐ受診』するのは全回答者(520名)の1割で,その理由として手遅れの不安と家庭でみるより専門家を頼る回答が約半数前後を占めた.また,病気に対して『不安』のある人は『不安なし』に比べて受診率が高く,受診回数が多いほど『不安』の比率が高かった.喘息などの既往症がある場合概して当該する症状で受診していたが,既往症の症状を意識していない場合もあった. 
 子どもが病気のときに保護者が落ち着いて体調を見ることができないことや不安感が強いことは,夜間救急受診増加の重要な要因であることが示唆された. 
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 【原著】 
■題名 
小児夜間救急に関する保護者の実態と意識調査 第2報 
■著者 
子育て支援グループ『小さな手』研究部門1),富田林医師会・ふじおか小児科2) 福井 聖子1)  後藤 紀子1)  藤岡 雅司2) 
■キーワード 
小児夜間救急, 保護者の不安, 支援策 
■要旨 
 夜間救急患者が増加する要因の一つに病気に対する不安感がある.第1報に続き1歳から6歳の健常幼児の保護者に対するアンケート調査から,不安の原因と軽減策について検討した.子どもの病気への不安感に関して,全体では『不安』14%・『少し不安』59%・『不安なし』25%であった.子どもの年齢が高いと『不安なし』の率が高くなるが『不安』の率は変わらなかった.不安の理由として『重症にならないか心配』『手遅れにならない心配』が最も多く,特に『不安』層では74%が『重症』をあげていた.年齢的には1歳の保護者で『経験がない』が相対的に多いのに対し,3歳・5〜6歳では『重症』『手遅れ』『かかりつけ医に夜間や休日に診てもらえない』『救急体制に不安』の理由が多かった.『不安』層は『少し不安』に比べ,不安の理由が多く,相談相手はないか逆に多い場合が多かった.また,希望する医療体制として夜間でも万全を求める傾向が強かった.一方『不安のない』回答者の理由としては『体調は大体分かる』が43%と最も多く『かかりつけ医がいるから』は25%であった.保護者に対する支援策として,医療体制を整えることも重要であるが,医療機関に依存するのではなく保護者が主体的に子どもの体調を把握し受診の必要性を判断できるように支援することが重要と考えられた. 
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 【原著】 
■題名 
在タイ邦人小児の受療疾病構造 
■著者 
順天堂大学公衆衛生学教室 酒井 理恵  高橋 謙造  丸井 英二 
■キーワード 
海外生活, 在留邦人小児, 受療疾病構造, 推計小児外来患者数 
■要旨 
 【目的】平成17年,海外に長期滞在あるいは永住する日本人は100万人を超えた.この長期在留などで家族を帯同する場合,海外での子どもの健康管理は重要な課題の一つとなる.そこで,在タイ邦人小児の疾病構造について検討を行った.さらに,日本に住む小児の疾病構造と比較することにより,在タイ邦人小児の健康問題を明らかにした. 
 【方法】(1)2005年にタイ国のバンコク病院を受診した日本人の診療記録が対象.(2)患者調査を用いて日本人小児の疾病構造を把握. 
 【結果】調査期間中の在タイ邦人小児の受診者数は1,205名.このうち,英語表記があった955名,延べ2,396エピソードをICD-10にしたがって分類.在タイ日本人小児では「呼吸器系の疾患」が最も多く,この中では6割以上が「上気道感染症」であり,「喘息」が少なかった.ついで,「感染症および寄生虫症」,「健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用」が続いた.国内の推計小児外来患者数では「呼吸器系の疾患」が最も多く,この中でも「喘息」が最も多かった. 
 【考察】バンコク病院では感染症による受診者,「健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用」が多かった.日本の医療機関や派遣元企業は現地の医療機関とも協力し,在留邦人のニーズを反映した保健医療サービスや十分な感染症対策を提供するよう努力すべきである. 
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 【原著】 
■題名 
難治性てんかんに対しジアゼパムが著効している新生児型非ケトン性高グリシン血症の1例 
■著者 
倉敷中央病院総合周産期母子医療センターNICU 川口 敦  豊田 直樹  西 恵理子  横山 宏司  澤田 真理子  石崎 裕美子  由良 和夫  藤原 充弘  西田 吉伸  渡部 晋一  脇 研自  桑門 克治  新垣 義夫  馬場 清 
■キーワード 
非ケトン性高グリシン血症, デキストロメトロフェン, 安息香酸ナトリウム, けいれん, ジアゼパム 
■要旨 
 症候性てんかんに対しジアゼパムが著効している新生児型非ケトン性高グリシン血症(Nonketotic Hyperglycinemia)の1女児例を報告する.児は院外出生,日齢1より哺乳力の低下,吃逆様呼吸が出現し当院NICUへ搬入となった.来院時筋緊張低下,原始反射が消失.日齢2には自発呼吸が消失,人工呼吸管理となる.脳波でsuppression burst pattern,頭部CTで脳梁・小脳虫部低形成を認めた.血漿アミノ酸分析によりグリシン高値をみとめ非ケトン性高グリシン血症と診断した.日齢19の髄液検査で髄液グリシン濃度/血漿グリシン濃度=0.21であった.ケタミン,安息香酸ナトリウム,デキストロメトロファン内服を開始した.その後徐々に原始反射,自発呼吸が出現.日齢48に一旦退院となった.その後日齢150頃より複雑部分発作が出現し,フェノバルビタール,カルバマゼピン,ビタミンB6などでコントロールを試みたが,治療に抵抗性であった.経過中,重積発作時にジアゼパムを追加し,同時期より完全に発作は消失している.本疾患による難治性てんかん例に対しジアゼパムが奏効しているものと考えられた. 
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 【原著】 
■題名 
血漿交換,持続血液濾過透析併用療法により救命した重症川崎病心筋炎の1例 
■著者 
鹿児島大学病院小児科1),鹿児島生協病院小児科2) 摺木 伸隆1)  野村 裕一1)  江口 太助1)  田邊 貴幸1)  西 順一郎1)  酒井 勲夫2)  西畠 信2)  河野 嘉文1) 
■キーワード 
川崎病, 免疫グロブリン療法抵抗性, 心筋炎, 血漿交換, 持続血液濾過透析 
■要旨 
 【症例】症例は7歳男児.川崎病の診断で3病日に近医に入院した.免疫グロブリン超大量療法(IVGG)等の加療を行ったが炎症所見は改善せず,著明な浮腫をきたし9病日に当院へ転院した.多呼吸,奔馬調律を認め,肝腫大と著明な浮腫を認めた.白血球数39,400/μl,C-reactive protein 17 mg/dlと高度の炎症所見と低蛋白・低Na血症を認めた.心エコーは左室壁運動低下と右心系の拡大がみられた.胸部エックス線像は心拡大と著明な肺うっ血と胸水を呈していた.鎮静,人工呼吸管理下に血漿交換(PE)3日間と持続血液濾過透析(CHDF)を併用し,炎症所見や浮腫,左室壁運動の速やかな改善がみられた.遠隔期の冠動脈所見は正常だった. 
 【考案】難治性の川崎病の治療としてはIVGG追加,ステロイド投与等が行われる.本例は難治性の川崎病と,重症心筋炎や血管透過性亢進による著明な浮腫・胸水をきたし,通常の治療では不十分な可能性が考えられた.そこで炎症の鎮静化および除水を目的にPEとCHDFの併用療法を行い有効だった. 
 【結語】PEとCHDFの併用療法は,重症の川崎病心筋炎において検討すべき有用な治療法のひとつと考えられた. 
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 【原著】 
■題名 
硬化性縦隔炎の1例 
■著者 
姫路赤十字病院小児科 岡 ゆかり  濱平 陽史  山内 裕美子  大沼 健一  森川 悟  鄭 聡柄  高橋 宏暢  与茂田 愛  五百蔵 智明  久呉 真章 
■キーワード 
硬化性縦隔炎, 不明熱 
■要旨 
 我々は,不明熱から硬化性縦隔炎の診断に至った1例を経験した.症例は14歳,男児.発熱が続き,炎症反応の上昇を認めたため,精査・加療目的で当院へ入院となった.当初は,原因として感染症を疑い抗生物質投与にて治療を開始するも,解熱が得られなかった.感染症以外の原因も考慮し精査をすすめた結果,胸部CT上胸骨の右内側に腫瘤を認め診断・治療目的で胸腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.病理所見の結果より硬化性縦隔炎の診断に至った.術後,残存病変から再発熱をきたしたが,腫瘤が小さく,再度外科的切除を行うのは困難であったため,ステロイドの内服にて治療を開始したところ,症状は消失した.現在,ステロイドの内服中止後も再発は認めていない. 
 小児の発熱の原因としては感染症が最も多いが,原因不明の発熱が持続する場合,腫瘍性疾患も考慮し,CT・シンチなど画像検査も含め全身検索を行う必要があると考えられた. 
 硬化性縦隔炎は小児では非常に症例数も少なく,確立された治療法はない.今回われわれは外科的切除を行った後も残存病変のため症状が持続し,その後の治療法に苦慮したが,ステロイドの内服を開始したところ症状の消失が得られたため,貴重な症例と考え報告する. 
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 【論策】 
■題名 
小児救急を核とする大学病院小児科卒後研修プログラム―大学病院小児科卒後研修プログラム変革の方向性― 
■著者 
埼玉医科大学総合医療センター小児科 桜井 淑男  森脇 浩一  荒川 浩  高田 栄子  山口 文佳  田村 正徳 
■キーワード 
小児救急医療, 卒後研修, 大学附属病院, 小児科, 医学教育 
■要旨 
 小児救急診療は小児医療の原点である.しかし,各subspecialty分野の専門医教育を重視する我国の多くの大学病院小児科では,稀有な疾患を診療・研究対象として救急診療に積極的ではない.小児救急診療の担い手が減少し社会問題化している現状で,我々は大学病院小児科の社会的責務として小児救急診療を重視した新たな卒後研修プログラムを開始したので報告する.目的:H16年度から当科での初期・後期研修プログラムを一新した.各々の目標は,初期研修医には小児1次救急初期診療の担い手となるための基礎的知識・技能・態度を修得させ,後期研修医には外傷を含めたあらゆる小児救急疾患の初期診療に対処できる能力を修得させることとした.方略:初期研修では,病棟診療以外に小児救急に関連した講義・実習プログラムを作成し1か月目には小児蘇生実習などで小児救急診療のアウトラインを理解させ,2か月目に臓器別の小児疾患の講義を行った.後期研修では,Neonatal Life Support, Pediatric Advanced Life Supportのプロバイダー資格取得を義務化し,一般小児科,新生児科研修を各1年行う.残り1年は,小児循環器・集中治療・麻酔などを専門的に研修出来る施設で呼吸・循環管理を中心に重症小児救急患者に対応できる能力を体得させた.考察:卒後研修教育改革が,研修医の意識改革を促し,subspecialty専門医教育偏重の問題を改善できるのではないかと考える. 
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