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日本小児科学会雑誌 目次 |
第107巻 第10号/平成15年10月1日
Vol.107, No.10, October 2003
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【原著】 |
■題名 |
アトピー性皮膚炎に対する小学校でのシャワー浴の有用性 |
■著者 |
群馬大学医学部小児科1),佐久総合病院小児科2)
望月 博之1) 滝沢 琢己1) 荒川 浩一1) 加藤 政彦1)
徳山 研一1) 森川 昭廣1) 牛久 英雄2) |
■キーワード |
アトピー性皮膚炎,シャワー浴,スキンケア,学童,学校生活 |
■要旨 |
学童のアトピー性皮膚炎はしばしば治療に抵抗性を示し難治化する傾向にあるが,この原因のひとつに患児が学校で体育や遊戯をすることにより,汗や埃による刺激から皮膚の痒みが増し,掻破を繰り返すことが推測される.今回,我々は,平成10年から4年間,汗による悪化が顕著となると考えられる初夏に学内の温水シャワーを利用し,アトピー性皮膚炎に対するシャワー浴によるスキンケアの効果を検討した.シャワー浴は,5月より8週間,ウィークデーの昼休みに行い,シャワー浴開始2週間前から中止後2週間まで,皮膚所見による評価や保護者による評価から定期的な効果判定を行った.シャワー浴は9名,延べ14名が遂行でき,全例にアトピー性皮膚炎の改善がみられたが,シャワー浴ができなかった5名,延べ6名に改善はみられなかった.小学校でのシャワー浴は学童のアトピー性皮膚炎の治療に有意義であると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児科外来を受診した不安障害の患児に対する臨床的検討 |
■著者 |
昭和大学医学部小児科1),青山学院大学文学部教育学科2),公立昭和病院小児科3)
古荘 純一1)2) 市橋いずみ1) 松嵜くみ子1)
根本 芳子1) 菊竹真理子3) 飯倉 洋治1) |
■キーワード |
不安障害,強迫性障害,不登校,DSM-IV,セロトニン再取り込み阻害剤 |
■要旨 |
小児科外来をさまざまな主訴で受診し,DSM-IVにより不安障害と診断した18歳以下の小児24例につき検討した.①診断は,強迫性障害12例,外傷後ストレス障害4例,全般性不安障害3例,などであった.②受診時の主訴は不登校や身体的不定愁訴が多かった.③治療開始時は16例が不登校状態であったが,5例は不安障害の症状出現後にはじめて呈した.④ 16例が他科他施設より紹介受診であった.精神面の心理相談・加療で当科を紹介された小児の中で発達障害・行動障害を除いたのは66例で,24.2%に相当した.心身症や不登校という診断やカウンセリングを含めた加療依頼が多く,不安障害を念頭に置いたのは1例のみであった.⑤症状出現に関係する心理的負担要因として,14例に家族もしくは学校での問題があった.一方強迫性障害などの5例は明らかな誘因がなく症状が出現した.⑥面接の方法としては,医師と臨床心理士が家族,患児とそれぞれに面接を行ったものが6例あった.⑧ 17例に薬物治療を施行した.13例が有効であった.以上より,さまざまな不定愁訴で小児科を受診し,不登校など生活に支障を来している場合には,不安障害,特に強迫性障害を念頭に置く必要があり,また薬物治療が有力な治療法であると認識すべきと思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
新生児期早期における硬口蓋―舌間の圧出圧の発達に関する検討 |
■著者 |
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター新生児部門1),
千葉県こども病院新生児未熟児科2)
相澤まどか1) 水野 克己2) |
■キーワード |
圧出圧,吸啜圧,哺乳行動 |
■要旨 |
新生児期の哺乳行動を評価する際に,口腔内の陰圧同様,硬口蓋と舌により乳首を圧迫する力を測定することは重要である.今回,17名の正常正期産児を対象として新生児期早期の圧出圧の絶対値及び経時的変化に関して検討した.この結果,圧出圧は生後6時間から日齢5にかけて経時的に増加した.出生直後より吸啜圧と圧出圧の調和は1:1の調和のとれたパターンとなっていた.哺乳障害を有する児に対しても圧出圧の測定を行ったが,今回得られた正常正期産児の平均値に比べて低かった.圧出圧測定は①圧出圧と吸啜圧の調和②圧出圧の絶対値評価の2点から哺乳障害を有する児を評価しうると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
Theophylline関連けいれんに対する初期治療効果の検討 |
■著者 |
新潟市民病院小児科
阿部 裕樹 吉川 秀人 山崎佐和子 渡辺 徹
本間 丈成 上原由美子 阿部 時也 |
■キーワード |
theophylline,痙攣,diazepam,midazolam,治療法 |
■要旨 |
Theophylline製剤は頻繁に使用される薬剤であるが,副作用の一つに痙攣が挙げられる.今回我々は新潟市民病院小児科にて経験したtheophylline関連痙攣54例について治療法を中心にtheophylline非関連痙攣と比較検討した.Theophylline関連痙攣は特に3歳以下の乳幼児に多く,発作時のtheophylline血中濃度は多くの症例で治療濃度域内であった.またtheophylline非関連痙攣に比較して自然停止する割合が低く,治療ではdiazepamの有効率が低かった.その結果薬剤の反復投与を行い,呼吸抑制を来して人工呼吸管理を行った症例が多かった.Theophylline関連痙攣においては,diazepamで痙攣を抑制できない場合には速やかにbarbituratesなどの使用を考慮すべきであると考えられた.また同じbenzodiazepine系であるmidazolamの有効性はtheophylline非関連群との間に有意差を認めなかったが,使用経験も少なく今後さらに検討が必要と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
人工乳により誘発される乳児の消化器症状への
遅延型牛乳アレルギーの関与 |
■著者 |
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科
小尾真喜子 岡藤 郁夫 吉田 隆実
齋藤 潤 木村 光明 |
■キーワード |
人工乳,胃腸症状,乳児,遅延型牛乳アレルギー,リンパ球増殖反応 |
■要旨 |
人工乳を摂取した乳児に,下痢や嘔吐,血便などの胃腸症状が見られることがある.病態に遅延型アレルギーの関与が示唆されているが,臨床像や診断法などまだ不明の部分が多い.本研究では,人工乳により胃腸症状が誘発された乳児11例の,臨床上および検査上の特徴をまとめた.症状は下痢6名,嘔吐7名,血便5名であり,発症日齢の中央値は生後18日(範囲1~53日)であった.栄養障害による体重増加不良が顕著にみられ,生後2カ月時の体重は-2SDのレベルであった.検査では,好酸球が多くの症例で増加しており(7/11),γ-GTPの上昇が高率(7/8)かつ明瞭に認められた.牛乳特異的IgE抗体の陽性率は低かったが(3/11),α-カゼイン特異的リンパ球増殖反応は全例で陽性であった.以上から,人工乳摂取により誘発される乳児期の胃腸症状の発生には,遅延型牛乳アレルギーが重要な役割を果たしていることが示唆される. |
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【原著】 |
■題名 |
水痘罹患中に壊死性筋膜炎の経過をたどった
劇症型A群溶連菌感染症の1例 |
■著者 |
山形大学医学部小児科1),米沢市立病院小児科2)
川上 貴子1) 三井 哲夫1) 加藤 光広1) 松永 明1)
本間 友美1) 早坂 清1) 清水 行敏2) 岡田 昌彦2) |
■キーワード |
劇症型A群溶連菌感染症,壊死性筋膜炎,水痘,プロテインC |
■要旨 |
劇症型A群溶連菌感染症(以下,劇症型溶連菌感染症)は,発症頻度は低いものの致命率が高い疾患であり,早期診断と早期外科治療が救命の鍵と言われている.今回我々は,水痘罹患中に,壊死性筋膜炎を伴う劇症型溶連菌感染症を発症した小児例を経験した.入院時,多臓器不全と敗血症性ショックの状態であったため,内科的治療を優先し,抗生剤およびステロイド剤の投与と,低分子ヘパリンによる抗凝固療法を施行した.入院後2日間は急速な病状の悪化を認めたが,3日目から改善傾向となった.13日目,残存した壊死部位の隔清術を施行し,39日目に退院,現在はほぼ機能障害なく回復している.近年,水痘罹患後の壊死性筋膜炎について,その病態はプロテインSの低下による局所の凝固異常であることが報告されている.劇症型溶連菌感染に対しては,抗凝固療法を中心とした内科的治療を優先して行う方法も有効と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
血清型同定に苦慮した腸管出血性大腸菌O165による
溶血性尿毒症症候群の1例 |
■著者 |
日本医科大学小児科1),いがらし小児科内科クリニック2)
小泉 慎也1) 早川 潤1) 早川 真理1) 五十嵐利一2)
前田 美穂1) 村上 睦美1) 福永 慶隆1) |
■キーワード |
溶血性尿毒症症侯群,腸管出血性大腸菌O165,志賀毒素 |
■要旨 |
志賀毒素産生腸管出血性大腸菌O165による溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,以下HUSと略す)の2歳の女児例について報告した.患児は入院後,腎不全,心不全に陥ったが,人工呼吸管理,腹膜透析,血漿交換などの集中治療を行い軽快した.O165は一般の病院にある腸管出血性大腸菌の抗血清のパネルには入っておらず,また入院時のO157迅速検査も陰性だったため,本患児の病原菌の同定に苦慮した.HUSの時は起因菌同定のため,抗生剤投与前の便によるより詳細な大腸菌検索が重要である. |
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【原著】 |
■題名 |
子供の川崎病発症を契機に発見された川崎病親子例 |
■著者 |
和歌山県立医科大学小児科1),紀南総合病院小児科2)
花井 直美1) 鈴木 啓之1) 南 孝臣1) 武内 崇1)
上村 茂1) 渋田 昌一2) 吉川 徳茂1) |
■キーワード |
川崎病,親子例,HLA-DRB1 |
■要旨 |
我々は川崎病の親子例(母親と娘)を経験した.子供は2歳5カ月の女児で,2000年11月に川崎病典型例の診断で入院した.入院後,超大量免疫グロブリン療法(IVIG)と経口アスピリンの投与により治療し,冠動脈後遺症なく軽快した.母親は1972年6月,当時4歳2カ月で,猩紅熱との診断で12日間,入院加療を受けていた.孫の入院を契機に,当時の母親の症状が川崎病主要6症状のうち頸部リンパ節以外5/6症状が合致することが祖母の日記から判明し,母親も川崎病であったと診断した.親子例発見の努力は,両親の世代の見過ごされた川崎病既往者の発見の契機となり得るので,川崎病患児が入院した時には両親のみならず祖父母に対する詳細な問診が大切である.川崎病発症における宿主要因を検討する目的で,今回の親子例のHLA-DRB1を検討したところ,親子共に04051のalleleを有していた.集積する親子例の詳細な検討は,HLAを含む遺伝子要因と川崎病発症との関連性の解明に寄与する可能性がある. |
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【原著】 |
■題名 |
Primary ciliary dyskinesiaを合併した無脾症候群の1例 |
■著者 |
徳島大学医学部発生発達医学講座小児医学分野1),徳島大学医学部附属病院周産母子センター2)
伊藤 弘道1) 森 一博1) 西條 隆彦2)
中川 竜二2) 真鍋 哲也1) 黒田 泰弘1) |
■キーワード |
無脾症候群,primary ciliary dyskinesia(PCD),ダイニン腕,Kartagener syndrome |
■要旨 |
無脾症候群とprimary ciliary dyskinesia(PCD)の合併例を報告した.患児は日齢1の女児で心雑音,チアノーゼを認め,心エコー,胸腹部X線所見などから総肺静脈還流異常(下心臓型)を伴う無脾症候群と診断した.また,難治性の無気肺を認め,日齢36に気管支粘膜生検を施行した.線毛の電顕像で,内側および外側ダイニン腕の欠損を認め,primary ciliary dyskinesia(PCD)と診断した.人工呼吸器からの離脱が困難で総肺静脈還流異常の解除術を日齢85に,hemi-Fontan手術を日齢120に施行したが,術後肺静脈閉塞が進行し,日齢135に死亡した.患児にはZIC3活性の調節と線毛の運動の両方に重要な役割をはたすダイニンサブユニットの異常が存在する可能性がある. |
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