腸管出血性大腸菌感染症
| 第三種感染症 | |
|---|---|
| 学校教育活動を通じ、学校において流行を広げる可能性がある感染症を規定している。出席停止期間の基準は、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでである。 なお、学校で通常見られないような重大な流行が起こった場合に、その感染拡大を防ぐために、必要性があるときに限り、校長が学校医の意見を聞き、第三種の感染症の「その他の感染症」として緊急的に措置をとることができる。「その他の感染症」として出席停止の指示をするかどうかは、感染症の種類や各地域、学校における感染症の発生・流行の態様等を考慮の上で判断する必要があり、あらかじめ特定の疾患を定めてあるものではない。 | |
| コレラ | |
| 概要 | 東南アジアなどからの帰国者に感染がみられ、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人が感染すると重症化し、死に至る場合もある。最近は、海外旅行歴のない発病者が時々みつかっている。 |
| 病原体 | コレラ菌 |
| 潜伏期間 | 主に1-2日(数時間-5日) |
| 感染経路 | 汚染された水、食物、感染者の便などを介した経口感染 |
| 症状・予後 | 突然激しい水様性下痢と嘔吐ではじまり、脱水をきたしやすい。 |
| 診断法 | 便からの菌分離 |
| 治療法 | 抗菌薬 |
| 予防接種 | 現在、日本国内では接種可能なワクチンが発売されていないが、流行地域への旅行者に対して、希望に応じて個人輸入でワクチンを接種することもある。 |
| 感染拡大防止法 | 流行地では、生水や氷、生の魚介類、生野菜、カットフルーツなどの生鮮食品に注意を払う。 |
| 登校(園)基準 | 治癒するまで出席停止が望ましい。なお、水質管理や手洗いの励行などの日ごろの指導が重要である。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-01.html |
| 細菌性赤痢 | |
| 概要 | 帰国者に感染(旅行者下痢症)がみられ、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人が感染すると重症化し、死に至る場合もある。日本でも、2011年に集団発生がみられ、2014年には幼稚園でも集団発生があった。海外旅行歴のない発病者も時々みつかっている。 |
| 病原体 | 赤痢菌 |
| 潜伏期間 | 主に1-3日(1-7日) |
| 感染経路 | 感染者の便を感染源とする経口感染 |
| 症状・予後 | 発熱、腹痛、下痢、嘔吐などが急激に現れる。 |
| 診断法 | 便の細菌培養 |
| 治療法 | 抗菌薬 |
| 登校(園)基準 | 治癒するまで出席停止が望ましい。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-02.html |
| 腸管出血性大腸菌感染症 | |
| 概要 | ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌による感染症である。全く症状のない人から、腹痛や血便を呈す人まで様々で、うち6-7%は溶血性尿毒症症候群や脳症を併発し、時には死に至ることもある。日本では、1996年に学童を中心とした大規模な集団感染が発生し、その後も2011年の生肉食や2012年の漬物など、さまざまな食材による食中毒が毎年3,000-4,000人前後発生し、死亡例もでている。 |
| 病原体 | 腸管出血性大腸菌(O157、O26、O111などベロ毒素産生性大腸菌)。熱に弱いが、低温条件には強く水の中では長期間生存する。少量の菌の感染でも腸管内で増殖後に発病する。 |
| 潜伏期間 | ほとんどの大腸菌が主に10時間-6日、O157:H7は3-4日(1-10日) |
| 感染経路 (好発時期) | 生肉などの飲食物からの経口感染 少ない菌量(100個程度)でも感染する。夏季に多発する。 |
| 感染期間 | 便中に菌が排泄されている間 |
| 症状 | 無症状の場合もあるが、水様下痢便、腹痛、血便。なお、乏尿や出血傾向、意識障害は、溶血性尿毒症症候群の合併を示唆する症状であり、このような場合は速やかに医療機関を受診する。 |
| 好発年齢 | 患者の約80%が15歳以下で発症し、かつ子どもと高齢者で重症化しやすい。 |
| 診断法 | 便の細菌培養、ベロ毒素(または遺伝子)の検出 |
| 治療法 | 下痢、腹痛、脱水に対しては水分補給、補液など。また下痢止め薬の使用は毒素排泄を阻害する可能性があるので使用しない。抗菌薬は症状を悪化させることもあり、慎重に使うなどの方針が決められている。 |
| 感染拡大防止法 | 手洗いの励行、消毒(トイレなど)、及び食品加熱と良く洗うことが大切である。特に子どもでは生肉・生レバー摂取は避ける(ブタとウシのレバーは禁止されている)。肉などを食べさせる場合は、中まで火が通り肉汁が透き通るまで調理する。加熱前の生肉などを調理したあとは、必ず手を良く洗う。生肉などの調理に使用したまな板や包丁は、そのまま生で食べる食材(野菜など)の調理に使用しないようにする。調理に使用した箸は、そのまま食べるときに使用しない。 |
| 登校(園)基準 | 有症状者の場合には、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。無症状病原体保有者の場合には、トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上の子どもは出席停止の必要はない。5歳未満の子どもでは2回以上連続で便培養が陰性になれば登校(園)してよい。手洗いなどの一般的な予防法の励行で二次感染は防止できる。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-03.html |
| 腸チフス、パラチフス | |
| 概要 | 海外帰国者の感染例と日本国内発生例はほぼ同数であったが、近年は多くの患者が輸入例となっている。 |
| 病原体 | 腸チフス-サルモネラチフス菌、パラチフス-サルモネラパラチフスA菌 |
| 潜伏期間 | 主に7-14日(3-60日) |
| 感染経路 | 経口感染 |
| 症状・予後 | 持続する発熱、発疹(バラ疹)などで発病する。重症例では腸出血や腸穿孔がある。パラチフスは腸チフスより症状が軽いことが多い。 |
| 診断法 | 便と血液の細菌培養 |
| 予防接種 | 2025年6月ごろより、腸チフスワクチンが日本でも発売される。流行地域への旅行者に対して、希望に応じて腸チフスのワクチンを接種する。 |
| 登校(園)基準 | 治癒するまで出席停止が望ましい。トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上の子どもは出席停止の必要はない。5歳未満の子どもでは3回以上連続で便培養が陰性になれば登校(園)してよい。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-04.html |
| 流行性角結膜炎 | |
| 概要 | 伝染性の角膜炎と結膜炎が合併する眼の伝染病。学校ではプール施設内で感染することが多い。 |
| 病原体 | 主としてアデノウイルス8型 |
| 潜伏期間 | 2-14日 |
| 感染経路 | 飛沫感染、プール水、手指、タオルなどを介して接触感染 |
| 感染期間 | ウイルス排出は初期数日が最も多いが、その後、数か月、排泄が続くこともある。 |
| 症状 | 急性結膜炎の症状で、眼瞼が腫れる、異物感、眼脂など。角膜に傷が残ると、後遺症として視力障害を残す可能性がある。 |
| 診断法 | 症状から診断されるが、アデノウイルス抗原の迅速診断キットがある。 |
| 治療法 | 有効な治療薬はないが、多くは自然軽快する。 |
| 感染拡大防止法 | 飛沫感染、接触感染対策として、手洗い、プール前後のシャワーの励行、タオルの共有はしないなどの一般的な予防法が大切である。プール外でも接触感染が成立している場合も多い。アデノウイルスはアルコール消毒が効きにくいため石鹸を用いた流水手洗いが重要である。 |
| 登校(園)基準 | 眼の症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。なお、ウイルスは便中に1か月程度排泄されることもあるので、手洗いを励行する。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-05.html |
| 急性出血性結膜炎 | |
| 概要 | 眼の結膜や白眼の部分にも出血を起こすのが特徴の結膜炎である。 |
| 病原体 | 主としてエンテロウイルス70型 |
| 潜伏期間 | 1-3日 |
| 感染経路 | 接触感染 |
| 感染期間 | ウイルスは咳や鼻汁から1-2週間、便からは数週間-数か月間、排出されることもある。 |
| 症状 | 急性結膜炎で、結膜出血が特徴である。 |
| 診断法 | 症状から診断される。 |
| 治療法 | 有効な治療薬はなく、対症療法が行われる。 |
| 感染拡大防止法 | 接触感染対策として、眼脂、分泌物に触れないことと手洗いの励行。洗面具、タオルなどの共用はしない。 |
| 登校(園)基準 | 眼の症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。登校(園)を再開しても、手洗いを励行する。 |
| リンク | /general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-06.html |
参考文献
- 1. Red Book 2024-2027, 33rd edition. American Academy of Pediatrics.
- 2. Feign and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Disease, 7th edition.
- 3. Nelson Textbook of Pediatrics, 22th edition.
- 4. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases, 14th edition.
- 5. 厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/(参照2025-3-21) - 6. 国立感染症研究所ホームページ
https://www.niid.jihs.go.jp/index.html(参照20225-3-21) - 7. 日本小児科学会ホームページhttp://www.jpeds.or.jp/(参照 2025-3-21)
- 8. 学校において予防すべき感染症の解説.文部科学省.平成 30 年 3 月.
- 9. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版<2023(令和 5)年 10 月一部修正>),こども家庭庁.
- 10. 平成 28 年度厚生労働科学研究費補助金「成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業」 H28-健やか-一般-002「保育所等における感染症対策に関する研究」報告書,研究代表者 細矢光亮.
- 11. 予防接種ガイドライン,2024 年度版.予防接種ガイドライン等検討委員会.
- 12. 2024 予防接種に関する Q&A 集.第 24 版.岡部信彦,多屋馨子.一般社団法人日本ワクチン産業協会
- 13. 日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」(日本版 Vaccine Information Statement).日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
- 14. 蚊媒介感染症診療ガイドライン.第 5 版.国立感染症研究所
- 15. 海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス 2019.日本渡航医学会 海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス 2019 作成委員会.
- 16. 皮膚の学校感染症について.日本臨床皮膚科医会・日本子ども皮膚科学会.平成 25 年 5 月.
- 17. 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン.厚生労働省、集団生活の場における肝炎ウイルス感染予防ガイドラインの作成のための研究班.平成 26 年 3 月.
- 18. 新型コロナウイルス感染症診療の手引き.第 10.1 版.令和 6 年 4 月.
