(最終更新:09.11.25)

目次

   は1カ月以内に追加になった情報です。


過去の情報はこちら

(登録:09.11.25)
■■ 日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会共催
第4回子どもの食育を考えるフォーラム
〜子どもの食はだいじょうぶ?〜開催について

 本フォーラムは、“子どもの食・栄養”に関して、社会の関心が非常に高まっている中、子どもの食育の一層の推進に向けた取り組みの一つとして企画し、平成19年1月13日に第1回のフォーラムを開催し、その後、毎年同時期に開催を続けております。
 今回も前回同様、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会の共催にて第4回フォーラムを開催することといたしましたので、ご案内させていただきます。
 多くの方々のご参加をお待ちしております。

日本小児科学会栄養委員会

日時:平成22年1月23日(土曜日)13時30分〜16時40分
会場
京都市アバンティホール(京都駅八条口前 アバンティ9階)
http://www.kyoto-ongeibun.jp/avanti/map.php
*日本小児科学会専門医研修5単位
参加費:無料(事前登録等不要)

プログラム
開会挨拶(13:30〜13:40)
 日本小児保健協会会長 衞藤  隆
 京都小児科医会会長 竹内 宏一
(1)基調講演「食育の歴史・現状・今後のあり方」(13:40〜14:10)
 座長:国立保健医療科学院生涯保健部部長 加藤 則子
 演者:帝京大学医学部小児科教授 児玉 浩子
(2)「食育の現場での取り組み」(14:10〜14:40)
 座長:京都第一赤十字病院小児科部長 木崎 善郎
 演者:京都府立大学生命環境学部食保健学科教授 東 あかね
(3)「肥満・痩せ児に対する取り組み」(14:40〜15:10)
 座長:藤田医院(京都市伏見区)院長 藤田 克寿
 演者:京都教育大学教育学部体育領域専攻教授 井上 文夫
(休憩)
(4)「メディアの食情報を考える」(15:25〜15:55)
 座長:大阪医科大学小児科教授 玉井  浩
 演者:群馬大学教育学部家政専攻教授 高橋久仁子
(5)特別講演「子どもの食事摂取基準2010年版の見かたと利用法」(15:55〜16:35)
 座長:順天堂大学医学部小児科教授 清水 俊明
 演者:青森県立保健大学健康科学部栄養学科教授 吉池 信男
閉会挨拶 16:35〜
 日本小児科学会理事 遠藤 文夫


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(登録:09.10.29)
■■ 市民公開講座『医療の中で子どもの権利をどう守るか』
―子どもの権利条約採択20周年を迎えて―

気付いていますか?子どもたちの「ちいさなシグナル」

日時:平成21年11月23日(月曜日・勤労感謝の日)13時30分(開場13時)〜18時
会場:パシフィコ横浜 会議センター5F

主催:社団法人 日本小児科学会
後援:財団法人 日本ユニセフ協会、神奈川県、横浜市

開会の辞
 社団法人 日本小児科学会会長 横田 俊平

講演

  1. 私の出会ったいのちの記憶
    〜15年間ミャンマーで戦い続ける小児外科医の願い〜

     吉岡 秀人『情熱大陸』(TBS系)
  2. 母乳が育てる心と体〜最新の母乳科学から〜
     児玉 浩子(帝京大学医学部小児科教授)
  3. すべての子どもたちに、地域の中に居場所を!
     松岡 美子(NPO法人グリーン・ママ 理事長、横浜市緑区地域子育て支援拠点「いっぽ」施設長)
  4. ドクターヘリで救う子どものいのち
    〜小児救命救急医療体制の確立を〜
     岡田 眞人(聖隷三方原病院 院長補佐)
  5. 在宅でみる障害児のケア
     佐々木征行(国立精神・神経センター武蔵病院 小児神経科部長)
  6. 緩和ケアは子どもの権利〜病気の子どもたちが地域で暮らせるために〜
     多田羅竜平(大阪市立総合医療センター 小児内科兼緩和医療科医長)

閉会の辞
 社団法人 日本小児科学会 副会長 山野 恒一

お問い合わせ
社団法人日本小児科学会
〒112-0004 東京都文京区後楽1-1-5 第一馬上ビル4階
TEL:03-3818-0091 FAX:03-3816-6036


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(登録:09.10.21)
■■ 子宮頸がん啓発のための市民公開講座―子宮頸がんを予防しましょう!



(登録:09.10.21)
■■ ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種の普及に関するステートメント



(登録:09.10.16)
■■ 日本小児科学会 女性医師再研修プログラムキャリア継続ミニシンポジウム

主催:日本小児科学会
共催:日本医師会

第一部 日本小児科学会女性医師再研修プログラム
眠れる力、活かそう子どもたちのために
女性医師復帰のための実践講座:明日から役立つ小児科臨床

第二部 女性医師キャリア継続ミニシンポジウム
女性医師が生涯仕事を続けるために

小児科学会は女性医師の方の現場での活躍を支援します。
臨床から少し離れてしまった先生の再研修の一助となるよう、少人数グループでのモデルを使った新生児の蘇生実習と講義のプログラムを用意しました。
先生もぜひ、参加されませんか?

日時:2009年10月24日(土曜日)13時〜17時30分
場所
大阪大学医学部 銀杏会館3階 会議室
http://www.office.med.osaka-u.ac.jp/icho/icho-jp.html

※募集は終了いたしました。



(登録:09.8.20)
■■ 新型インフルエンザ(H1N1 2009)に関連して
インフルエンザ脳症に関する要望書

平成21年8月17日

厚生労働省
新型インフルエンザ対策推進本部御中

社団法人 日本小児科学会
会長 横田 俊平

謹啓
 現在、新型インフルエンザは、静かに感染を拡大させています。夏季に入ったにもかかわらず、インフルエンザ定点からの報告数が増加し、また病原体定点からは現在の流行の大半は新型インフルエンザウイルスによるものであることも明らかになっております。そのようななか、国内において小児のインフルエンザ脳症の報告例もこのところ続いています。平成21年8月13日現在、インフルエンザ脳症は国内で5例報告されており、うち1例は重症例です。私ども日本小児科学会としては、今後、罹患年齢層の低下に伴い、幼児を中心とした小児のインフルエンザ脳症の増加や、海外で報告されているARDSを含む重症肺炎の国内発生を危惧し、地域診療体制の整備を始めたところです。
 以上の状況に鑑み、厚生労働省におかれましては、以下の点について、国民への情報伝達と知識の普及の推進にご協力いただけますようお願い申し上げます。

  1. 今まで国内に重症例が殆ど報告されなかったことから、国内社会においては「新型インフルエンザは軽症である」との認識が拡がっているが、今回、新型インフルエンザに伴う脳症重症例が発生したこと。
  2. 夏季であるにもかかわらず、国内や米国などの北半球において、小児の脳症例の報告が続いていること。
  3. 今後、秋・冬の感染拡大の中、幼児における新型インフルエンザの流行は避けられないものと考えられ、この年齢層を中心とした小児のインフルエンザ脳症の発症数の増加が危惧されること。
  4. 以下の症状は、インフルエンザ脳症の早期の症状として、保護者等一般の方が注意すべき点であり、これらの症状がみられたら医療機関(小児科であることが望ましい)を受診すること:
    インフルエンザ様症状(発熱、気道症状)に加え
    A.「呼びかけに答えない」など意識レベルの低下がみられる
    B.痙攣重積および痙攣後の意識障害が持続する
    C.意味不明の言動がみられる
  5. 強い解熱剤(例:ボルタレン、ポンタールおよびこれらと同様の成分の入っているもの)はインフルエンザ脳症の予後を悪化させるので、必ず解熱剤はかかりつけの医師に相談して用いること。

 以上の5点を国民へ確実に伝達できますよう、厚生労働省に早急な対応をお願いする次第です。
 なお、インフルエンザ脳症は、5類全数届出疾患「急性脳炎」に含まれるものとして届けることになっております。合わせて臨床医への再喚起をよろしくお願いいたします。

謹白



(登録:09.6.8)
■■ 2009年 日本小児科学会賞授賞式

 第112回日本小児科学会学術集会(奈良県立医科大学 吉岡 章会頭)において、日本小児科学会賞を受賞された多田啓也先生(東北大学名誉教授)の授賞式が行われ、横田俊平会長から、賞状、副賞、メダルが手渡されました。
 授賞式の後「高グリシン血症に関する研究―病態を通して生理を知る」と題する記念講演が行われました。

日本小児科学会賞を受賞された多田啓也先生(左)と横田俊平会長(右)
横田会長から賞状授与
日本小児科学会賞受賞記念講演



(登録:09.6.1)
■■ 新型インフルエンザにおける小児科診療に関する提言

(ver. 1 0527)
平成21年5月27日
日本小児科学会

要旨

 今秋―冬の新型インフルエンザの蔓延、とくに予測される小児における感染拡大に対して小児科医は全力で取り組む必要があります。日本小児科学会は、常に情報を整理して時宜を得た提言を行い、わが国の小児科医の取り組みに対して出来る限り賛助していく所存です。その取り組みの要点として

  1. 小児新型インフルエンザの臨床像を把握する。
  2. 今秋〜冬の流行期の診療体制を、今のうちに準備していく必要がある。
    具体的には、全ての小児科診療機関の参加を可能とする簡便な診断体制の確立、夜間診療体制の整備、重症例、中等度入院例、外来診療など地域における重症度による診療体制の整備、などがあげられます。
  3. これらの取り組みを可能とするのは、病院・診療所の枠を超えた小児科医の互いの協力体制の構築であると考えます。

はじめに

 メキシコを発端として拡大した新型インフルエンザ(novel influenza A(H1N1))は、我が国においても、5月以降、関西地方を中心に感染が拡がり、関東地方にも感染者が発生しています。現在、我が国における新型インフルエンザの発生は、10代あるいはそれ以下の年令層が主体であり、まだ少数例ではありますが、0歳児を含む他の年齢層の患者も報告されています。一方、夏季を控え、感染は一旦下火になると予測されますが、その後、今秋―今冬には第2波として、再び大きな流行が起きることが懸念され、その時、全く免疫をもたない小児が流行の主体となってもおかしくありません。全国的な小児科医不足の只中、毎年、インフルエンザ流行期には小児医療は多忙を極めますが、季節性インフルエンザの流行と相俟って、新型インフルエンザの流行により従来をはるかに上回る混乱が生じることが考えられます。
 我が国におけるこうした事態に対応するため、日本小児科学会としては以下のように問題点を整理し提言を行いたいと思います。

1.現在の新型インフルエンザの状況

 メキシコで探知された新型インフルエンザの集団発生は、我が国においても、成田の検疫における発病者の確認、さらに5月中旬以降、関西の高校生から多数の発病者が見つかるなど、国内確定例は352人に達し(5月27日12時現在、厚生労働省)、世界の報告数は12,954人となるなど(5月26日世界標準時6時現在、WHO)拡大の一途を辿っています。ただし、5月下旬になり諸外国や日本などで、患者発生数の増加傾向が縮小となっているようにも見られます。関西各府県では休校措置の解除を決めた学校が大半となっており、今後再び増加するのか、このまま終息に向かうのか動向が注目されています。
 新型インフルエンザウイルスは、季節性インフルエンザと比べ、伝播力が強い可能性がある一方で、重症度は季節性インフルエンザをやや上回る程度との指摘があります。しかし小児、特に乳幼児での重症度については、現時点では症例数が少なく評価はできません。ただし、全年齢層でのWHO発表の確定例での致死率は、5月26日午後3時現在、メキシコを含む全世界で0.7%、各国100例以上の報告がある米国、カナダ、イギリス、スペイン、日本の5カ国で0.13%といずれも季節性インフルエンザの致死率(0.1%)を上回っており、また米国での入院率(9%、CDC)などを併せて考えると、必ずしも低病原性とは言えないとの考えもありますが、米国においては、医療機関を受診していない軽症例も存在することから、入院率は高く見積もられている可能性も否定できません。CDCによれば、レスピレーター管理などICU入院などを必要とした重症肺炎(主にウイルス性)も存在しています。また、基礎疾患を有する者や妊婦等では重症化あるいは死亡する例も報告されています。

2.新型インフルエンザの臨床症状

 国立感染症研究所感染症情報センターおよび大阪府による、大阪府内の新型インフルエンザ集団発生に対する疫学調査から得られた発病者の臨床像を示すと、府内の中高一貫校での新型インフルエンザ確定例64名(高校生59名、中学生2名、教職員3名、年齢中央値16歳)に対する調査では、38℃以上の発熱は82.8%、咳81.0%、熱感・悪寒・38℃未満の発熱71.2%、咽頭痛65.1%、鼻汁・鼻閉60.3%、全身倦怠感58.1%、頭痛50.0%、関節痛32.3%、筋肉痛17.7%、下痢12.9%、腹痛10.3%、嘔吐6.5%、結膜炎4.8%であり、発熱および急性呼吸器症状のうち咳、熱感・悪寒の割合は比較的高くみられました。また、ほとんどすべての症例が季節性インフルエンザに類似した臨床像を呈しており、重篤な状態となった症例はありませんでした。一方、インフルエンザの典型的な症状である突然の高熱で発症する例が多いものの、急性呼吸器症状や嘔吐等の症状が先行し、数日後に38℃以上の高熱を認める例も見られました。また、人数は5名と少ないものの、府内の小学校での集団発生(6年生4名、3年生1名)に対する調査では、咳、発熱、熱感・悪寒は全員が経験していました。全身倦怠感は80%、頭痛80%、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、関節痛はそれぞれ60%に認められました。下痢、腹痛、嘔吐等の消化器症状は認められませんでした。また、2名は急性呼吸器症状が数日間先行した後に38℃以上の高熱を呈していました。以上、中学・高等学校の64名、小学校の5名の計69名は全て臨床的に入院を要するとは評価されず、抗インフルエンザウイルス薬の投与後比較的速やかに諸症状の改善がみられていました。
 一方、WHOのまとめた諸外国の調査では、5月5日現在、米国の41の州から合計642人の検査確定症例が報告されています(NEJM.org)。確定症例の間で、約50%は男性で年齢の中央値は20歳(範囲3か月から81歳)であり、399人の確定例のうち36人(9%)は入院となりました(2009年5月7日NEJM.org)。入院患者22人のうち、12人は慢性疾患、妊娠または5歳未満児といった、季節性インフルエンザの合併症リスクと同じリスク要因がありました(2009年5月7日NEJM.org)。入院の主な理由は重症呼吸器疾患でした。現在のところH1N1ウイルスの全てはアマンタジンおよびリマンタジンに耐性を示していますが、ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビル及びザナミビルに対する耐性遺伝子は認められていません。
 小児、特に幼児のインフルエンザはしばしば重篤となるため、CDCでは5歳未満の乳幼児は入院率の高まるハイリスクグループとされています。我が国においては、さらにインフルエンザ脳症など重篤な合併症が報告されるなど、季節性インフルエンザにおいても重症化のリスクは高いことが知られています。厚生省(2001年より厚生労働省)人口動態調査1998年では、1997-98年シーズンのインフルエンザによる死亡は、1-4歳ですべての死亡原因の第6位となっていました。今回の新型インフルエンザでは、乳幼児の臨床症状はまだ不明です。早期の対策に向け、この臨床像の解明を急がなくてはなりません。

3.今後の、特に今秋―今冬の流行予測

 これまでの新型インフルエンザの歴史からみると、多くは複数回、主に2回の流行の波を起こしています。すなわち、現在(5月27日)関西を含め、新規患者報告数が減少していますが、今秋―今冬において、再びより大きなアウトブレイクが起きる可能性が非常に高いと思われます。一部の年齢層(1957年生以前)では、交差免疫の存在が米国において示唆されています(CDC, MMWR, 58, No.19, 521-524, 2009)が、我が国での成績はまだ無く、地域による過去の小流行の差で、日本が同様である確証はありません。流行の規模は、今シーズン、国民の約1/4が感染するとすれば、約3,000万人となり、季節性インフルエンザと同じ致死率0.1%としても、約3万人の死亡が予測されます。以上から、とくに乳幼児での感染者と重症例の著増が危惧されるところです。すなわち、季節性インフルエンザの数倍の小児患者の発生を想定しなくてはなりません。

4.上記における対策

A.一般診療における問題と対策
 現在、「発熱相談窓口、および発熱外来」が各都道府県単位で設定されています。この措置は地域における新型インフルエンザ発生初期には感染拡大防止に有効な側面もありますが、多くの感染者が発生する「蔓延期」においては機能せず、むしろ一般の小児科診療を阻害する面が多いと考えられます。その理由として、以下の点が上げられます。

  1. そもそも小児科の外来は種々の原因による発熱患者が多い。
  2. 迅速診断キットによっても新型と季節性インフルエンザを鑑別することができない。
  3. 迅速診断キットは、RT-PCR法やリアルタイムRT-PCR法等と比較すると、感度に差があり、検体の採取部位や、発病からの時期により、陽性率に違いがあることから、陰性であっても、必ずしも新型インフルエンザを否定できない。
  4. 季節性インフルエンザ流行期では、小児科診療とくに夜間診療は来院患者が多く、困難を極めており、新型インフルエンザの流行期に両者を区別して診療するのは事実上不可能である。

  以上の理由から、通常の何倍もの患児が受診することが予測される今秋―今冬においては、季節性インフルエンザと新型インフルエンザを小児科診療上区別することは困難であり、可能な限り早期に、両者の診療上の区別を取り除く必要があります。

具体的対策として:

  1. 新型インフルエンザの小児の診療では、できるだけ早期に「新型」「季節性」インフルエンザの区別を無くし、通常のインフルエンザ流行期の診療体制を維持する。「新型」「季節性」ともに、インフルエンザの感染予防策の重要性についてはさらに啓発をすすめる。
  2. 多数の小児罹患者が予測されるため、すべての小児科診療施設が「新型」インフルエンザ診療に参加できるような体制とする。
  3. 地域ごとに、診療所・病院での新型を含むインフルエンザ疑い症例の診療時間・診療場所の区別を実施し、重症例・要入院症例・外来診療対応例など重症度に応じたトリアージを行い、診療施設により対応を分ける。
  4. 時間外診療においては、地域で協力体制を確立する。(現在、日本小児科学会で進めている地域における診療体制の整備のための機構を利用する)

などについて、今から各地域の実情にあわせて、小児科医を中心として議論を深めて、実施可能な状態にしておくことが必要です。

B.夜間救急における問題点と対策
 新型インフルエンザの蔓延期では、小児夜間救急外来への患者の集中が予測されます。日本小児科学会として、昼間の診療時間帯への患者の誘導が必須と考えます、また、夜間診療では、現在、多くの地域で確立している小児夜間時間外診療体制へ、全ての小児科医が何らかの形で協力していく必要性を強調したいと思います。

C.小児重症患者診療上の注意点
 我が国において、インフルエンザの合併症として、インフルエンザ脳症、重症肺炎、けいれん重積、多臓器不全、基礎疾患の悪化などが報告されてきました。新型インフルエンザでは、仮に重症度が季節性インフルエンザと同等だとしても、従来に比べて、患者数の増加に伴いこれらの重症患者も増加する可能性があります。各地域において、合併症を併発した小児重症患者の診療体制の確立は急務です。具体的には、(1)重症患者診療施設、(2)肺炎・脱水などの入院に対応する施設、(3)入院は扱わず外来診療を中心にする施設などの機能分担を、地域ごとにあらかじめ決めておく必要があります。

D.その他の重要な対策
 前述のように、世界的に見ても小児、とくに乳幼児の臨床像は明らかではありません。一方、我が国のインフルエンザ診断体制は、おそらく世界でもトップレベルであり、これを利用して、できるだけ早期に新型インフルエンザの小児の臨床的特徴を明らかにすることが重要です。入院例や重症例では、とくにRT-PCR法やリアルタイムRT-PCR法等による新型インフルエンザの迅速な鑑別診断が必須と考えます。この具体的方法については、今後、国立感染症研究所感染症情報センターと相談して、早急に準備していきたいと思います。

5.新型インフルエンザの治療

 小児科における新型インフルエンザの治療は、季節性インフルエンザに準ずるものです。10代の新型インフルエンザ患者へのオセルタミビルの使用について、季節性インフルエンザに対する使用における異常行動との関連で出されていた使用制限は、現時点でも継続されています。1歳未満を含め、治療の有益性が危険性を上回ると判断された場合、患者・両親の承諾の下、使用することは可能です。今後、新型インフルエンザの小児での重症度が明らかになった時、抗インフルエンザ薬の使用方法については日本小児科学会としてあらためて検討したいと思います。なお、今回の新型インフルエンザの流行に際して、大阪府では、厚生労働省の通知(平成21年5月3日付け「新型インフルエンザの診療等に関する情報について」)に従い、予防投薬が実施されています。薬剤については、オセルタミビルカプセルあるいはザナミビルを、原則として保健所が直接、濃厚接触者に処方しています。但し、10代の濃厚接触者については、ザナミビルが第一優先で勧められています。4歳以下の濃厚接触者については、具体的な経験が少なく、現時点では、厚生労働省に確認の上で医師の判断により自費診療でオセルタミビルドライシロップが処方されている事例はありますが、今後の対応については未定と聞いています。こうした点は早急に現状を明らかにして、日本小児科学会として要望を出していきたいと思います。

おわりに

 日本小児科学会は新型インフルエンザの問題に関して会員からのご意見・コメントをお待ちしています。また、今回の提言は、今後の新たなエビデンスの蓄積などにより、内容をより具体的なものに、また最新のものに変更していきたいと思います。先生方のご協力をあらためてお願いする次第です。

附記
 新型インフルエンザ対策に関する情報が、以下の国立感染症研究所感染症情報センター、日本病院薬剤師会、CDCのサイトで閲覧できます。
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/antiviral2.html
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009cdc/CDC_children_treatment.html
http://www.jshp.or.jp/
http://www.cdc.gov/h1n1flu/breastfeeding.htm

 



(登録:09.5.8)
■■ 今後の臨床研修制度に対する日本小児科学会の意見



(登録:09.4.30)
■■ PASへのASPR会員日本人小児科医の参加自粛について

平成21年4月30日

日本小児科学会
会長 横田 俊平

 報道でご存じのことと思いますが、豚インフルエンザH1N1の感染が、すでに10カ国に広がり、メキシコ、アメリカですでに死亡者が発生しています。アメリカでの感染者も増え続けており、ニューヨークでは約100名の高校生の罹患が報告されました。
 WHOは警戒レベルを3から4へ、さらに本日5へと上昇させ、危機管理の重要性を強調しております。また我が国でも企業およびいくつかの大学やその関連機関では海外渡航の見合わせを公表し始めています。成田空港等では到着機に検査官が乗り込み、機内において発熱者の検索が始められました。さらに帰国後、感染の疑いのある渡航者は10日間ホテルに宿泊を強制されることまで始められると報道され、豚インフルエンザの“水際作戦”が始まっています。
 このような事態に及び、日本小児科学会と致しましては5月2日よりボルチモアで開催されるPAS2009への日本からの小児科医の参加につきまして自粛を呼び掛けたいと思います。最終的には個人の責任でご判断いただければよろしいのですが、学会と致しましては渡航を見合わせていただきたいと考えております。
 以上、ご配慮をいただければ幸甚に存じます。



(登録:09.4.23)
■■ 第13回アジア小児科学会若手医師参加支援プログラム募集のお知らせ

平成21年3月

日本小児科学会
会長 横田俊平

 この度、日本小児科学会ではアジアで開催される国際学会に参加する小児科医を支援するプログラムを設立しました。国内のみならず国外での研究発表の場を支援するとともに、臨床や研究の場において今後の活躍を期待したいと思います。
 多くの申し込みをお待ちしております。

応募条件

  1. 2009年4月1日時点で40歳未満であること
  2. 応募書類を提出した時点で日本小児科学会会員であること
  3. アジア小児科学会に抄録を提出済みであること(抄録提出締め切りは5月15日)
    (アジア小児科学会ホームページ:www.chinamed.com.cn/appa2009

応募要綱および必要書類

  1. 連絡先(メールアドレス、勤務先とその住所、電話番号)と参加支援プログラム支援金の振込先(名義人は上記国際学会参加者本人に限る、金融機関名、口座の種類、口座番号)を明記した用紙(所定の用紙はなし)
  2. 履歴書(日本語可)
  3. 上記、応募条件3の抄録
  4. 平成21年5月29日(必着)までに書類を郵送してください

厳選な選考の上、優秀な演題提出者を数名選択し、各10万円を支給致します。

重要:当選者のみに通知をします。上記学会への参加をキャンセルした場合には支援金をお支払いすることはできませんので、その場合は速やかにお知らせください。

郵送先
〒112-0004 東京都文京区後楽1-1-5 第一馬上ビル4階
社団法人日本小児科学会
国際渉外委員会宛
TEL:03-3818-0091



(登録:09.4.6)
■■ 乳幼児向け7価肺炎球菌ワクチン早期審査の要望

平成21年2月15日

厚生労働省医薬食品局審査管理課 中垣俊郎課長殿
厚生労働省健康局結核感染症課 梅田珠美課長殿
独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査第二部 鹿野真弓部長殿

日本小児科学会会長 横田俊平
日本小児保健協会会長 衛藤 隆
日本小児科医会会長 保科 清

 肺炎球菌(Streptcoccus pnemoniae)による感染症は、世界的に乳幼児および小児における重症疾患として知られており、菌血症性肺炎、菌血症、髄膜炎は、侵襲性肺炎球菌性疾患の中で普遍的かつ重症な病態疾患であり死亡の主要原因ともなる。WHOも、肺炎球菌感染症を予防対策の必要性で重要な疾患として位置づけており、SAGE Meeting (Strategy Advisory Group of Expert for Immunization)でも常に重要課題としてあげられている。

 本邦においても、肺炎球菌は、小児における肺炎、敗血症、細菌性髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎などの主要起炎菌である。中でも細菌性髄膜炎の起炎菌としては、b型インフルエンザ菌(Hib)に次いで報告例が多い。肺炎球菌性髄膜炎の発症頻度の正確な数字はわが国の発生動向調査にないが、インフルエンザ菌性髄膜炎の約1/4〜1/3と推察できるところから5歳未満人口10万人あたり2〜3前後、年間200人前後と推定される。また肺炎球菌は病原性が強く、全身感染症の場合には症状の進行が早く、適切な治療を行ってもその予後は不良であり、死亡例、後遺症残存例は少なくなく、小児科医にとっては警戒すべき感染症の代表的なものである。
 肺炎球菌感染症には抗生剤が適応になることはいうまでもないが、世界的に肺炎球菌のペニシリン低感受性株・耐性株は増加傾向にあり、近年では耐性株と低感受性株の割合はほぼ同じであり、双方あわせて臨床分離株の約65%を占めている。生方らによる耐性遺伝子の有無による肺炎球菌の割合に関する近年の報告では、ペニシリン感受性肺炎球菌は15.5%であるのに対し、ペニシリン低感受性肺炎球菌およびペニシリン耐性肺炎球菌の割合は、それぞれ36.2%および48.3%であるとしている。また今日、肺炎球菌臨床分離株は、ペニシリン以外のβラクタム系、マクロライド系、セフェム系抗菌薬などが用いられているが、これらの抗菌薬に非感受性を示す割合は、それぞれ約65%、80%、50〜60%であると報告されている。

 重症疾患であり、かつ適切な治療薬剤の選択が困難となりつつある肺炎球菌に対しては予防が重要であるが、従来の23価ワクチンは乳幼児に対して免疫原性を有せず効果は低い。一方現在開発されたジフテリア毒素関連交差反応物質と結合させたポリサッカライド7価ワクチンは23価型と異なり乳幼児に対して免疫原性が高い。米国において2000年に本ワクチンが承認されて以降1年間に、米国における侵襲性肺炎球菌性疾患は、人口10万あたり24.3例から17.3例に減少したと報告されている。2001年には、2歳以下における7価ワクチン関連肺炎球菌感染症は78〜50%低下し、2003年5歳未満の小児の同じく関連血清型侵襲性肺炎球菌性疾患は94%低下したと報告されている。また、多くの小児に対し免疫を賦与することによってherd immunityが高まり、高齢者における罹患数も減少したとの報告もある

 わが国においても7価型肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー)は、ワイス株式会社により2007年9月26日に承認申請が出され、2008年1月9日には優先審査品目となっているが、その後の進捗がみられていないことが、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会がワイス社に対して行ったヒヤリングで判明した。

 肺炎球菌感染症はわが国においても小児ことに乳幼児に対して重要な疾患であり、なおかつ治療に難渋し、適切な抗菌薬の選択が困難である。7価型肺炎球菌ワクチンによる予防は、接種を受けた小児本人の件項を守るだけではなく、高齢者の感染症予防にもつながり、また保護者等への負担の軽減や医療経済性の観点からも重要である。日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会は、7価肺炎球菌ワクチンを小児にとって重要なワクチンであると位置づけ、本ワクチンの審査を厳正にかつ停滞することなく進めて頂くよう要望する。



(登録:09.3.19)
■■ アクトヒブ®発売について(見解)

平成21年1月18日

日本小児科学会会員諸氏
日本小児保健協会会員諸氏
日本小児科医会会員諸氏

日本小児科学会理事長 横田俊平
日本小児保健協会会長 衛藤 隆
日本小児科医会会長 保科 清

 私たちが待望し、国に対しても早期導入に関して要望書などを提出していたb型インフルエンザ菌(Hib)ワクチンが、このたび第一三共株式会社より商品名アクトヒブとして販売されることになったのは、歓迎すべきことと考えております。
 アクトヒブは平成19年1月に国による製造承認がなされましたが、わが国におけるワクチンとしての基準を満たした日本向け製品の製造に時間がかかり、今日に至っておりました。そして早期販売を目指した場合アクトヒブの製造スケジュールは、販売当初から需要を満たす量には至らないということが判明し、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会(以下小児科関連三学会)は、その計画等についてそれぞれ第一三共株式会社よりヒアリングを行いました。
 ヒアリングにおける回答は、平成20年12月から平成21年1月にかけて約18万本出荷、平成21年2月からは毎月おおむね7万本出荷予定で、一時に需要を満たせない恐れがあり、計画販売を考慮しているとのことでした。
 小児科関連三学会はこれについてそれぞれが協議を行い、「本来であれば供給体制を整えて発売すべきであるが、このままさらにHibワクチンの使用開始が延びればその分だけ新たなHib感染患者発生の予防ができないこととなるため、現実に供給量が不十分な状態での販売はやむを得ず、混乱を少しでも避けるための計画販売実施を理解をする。しかし、より多くの子どもたちのHib感染予防のため、できるだけ早期に供給体制が十分整うよう、最大の努力をしていただくことを製造販売会社に対して要望する」とし、第一三共株式会社に伝えました。それに対する回答は添付の通りです(平成20年10月25日付け、日本小児科学会予防接種感染対策委員長宛のもの)。
 なお、Hib感染症のサーベイランスが現在わが国では国レベルで行われておらず、またワクチンの効果や安全性に関しては販売会社による市販後調査の他には国レベルでの調査システムはないため、現在厚生労働省科研費による研究班が組織されるところと聞いております。Hib感染症の発生動向やワクチン導入後のモニタリングは、ワクチンの定期接種化に向けて議論を行うにあたり重要な事項であり、研究班調査が動き出した場合には、ぜひご協力下さい。

アクトヒブの発売方針について(第一三共の説明:平成20年10月23日付)(PDF)

アクトヒブの供給について(第一三共の説明:平成21年2月12日付)(PDF)



(登録:09.2.20)
■■ 「学会要望で開発した小児医薬品の病院での採用問題について」の提言

学会要望で開発した小児医薬品の病院での採用問題について

 本学会が開発を要望した医薬品に関しては、医薬品採用時に「一増一減ルール」が適用されないよう、会員各位のご理解とご協力を賜り、医療機関に働きかけていただくことを提言します。

日本小児科学会薬事委員会
薬事委員長 伊藤  進

 本提言の根拠は、適応外使用医薬品の問題解決のために製薬企業に適応追加・剤形追加等の開発を要望した医薬品について、医療機関採用時のアンケート調査を実施し、その課題と対策について検討した結果である。
 小児科領域における適応外使用医薬品の解決と治験推進のために日本小児科学会薬事委員会では年度毎のアクションプランを掲げ、会員皆様のご協力を賜りながら、様々な対策を講じ評価をしています。特に適応外使用されている薬剤については、小児薬物療法根拠情報収集事業においてエビデンスを検討し、開発の優先順位付けを進め、製薬企業や行政に開発や添付文書の改訂の要請を出してきております。
 一方で製薬企業の開発意欲を阻害する要因の一つとして病院における医薬品採用時の いわゆる「一増一減ルール」の問題が取り上げられております。「一増一減ルール」とは、病院内の薬剤管理の効率的に行うため、一つの医薬品を採用する際に、同種同行品や採用を希望する製薬会社の既採用品を一つ削減する等、多くの病院で取り入れている制度です。
 そこで、本薬事委員会は本学会が開発を要望した2品目の医薬品の医療機関への採用実態について、製薬企業の協力を得てアンケート調査を実施した結果、10〜20%の施設において本ルールが厳密に適用され、開発した製薬会社の既採用医薬品を取り下げている実態が我々の調査で明らかになってきました。また、このルールのために採用を控えざるを得なく、現在でも保険適応のない同種薬を用いた適応外使用が継続している状況も確認されています。
 このように本学会が開発を要望した医薬品に対しても「一増一減ルール」が適用されることがあれば、今後とも製薬企業の協力も得られないものと考え、適応外使用医薬品の解決を図る薬事委員会として、医療機関に対して働きかけていく必要があると思い上記提言をいたしました。医薬品の管理業務が大変であることや各医療機関の医薬品の採用について学会が関与する性格のものではないと十分認識しておりますが、今後の小児医薬品の適応外使用の問題解決のために、ぜひ会員各位におかれましては本趣旨をご理解いただき、何卒ご協力いただきたくお願い申し上げます。



(登録:08.10.9)
■■ 2008年 日本小児科学会賞授賞式

 第111回日本小児科学会学術集会(日本医科大学 福永慶隆会頭)において、日本小児科学会賞を受賞された福山幸夫先生(東京女子医科大学)の授賞式が行われ、別所文雄会長から、賞状、副賞、メダルが手渡されました。
 授賞式の後「福山型先天性筋ジストロフィー―その発見から現代的位置づけまで―」と題する記念講演が行われました。

日本小児科学会賞を受賞された
福山幸夫先生(左)と別所文雄会長(右)

別所会長から賞状授与

日本小児科学会賞受賞記念講演

 



(登録:08.8.1)
■■ 予防接種に関する要望書(日本脳炎・百日咳・Hib・水痘)

平成20年7月24日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 梅田 珠美 殿

社団法人日本小児科学会
会長 横田 俊平

 最近日本小児科学会が得た情報によれば、ベロ細胞由来日本脳炎ワクチンの導入と実施が来年度早期に見込まれていること、b型インフルエンザ菌(H. influenzae:Hib)ワクチンの導入が近々に実現すること、厚生労働省予防接種検討会(加藤達夫座長)が近々開催されるということです。
 日本小児科学会はこれまでにも、予防接種に関する要望書を厚生労働省に提出し、重要事項に関して検討頂いております。その中には既に要望を受け入れて頂いている事項もあり、感謝いたします。一方、未だ実現に至っていない事項もあり、近々予防接種検討会が開かれるということを機会に、以下の事項について改めて要望いたします。また、これに関連して新たな提案を述べ、予防接種検討会において議論して頂くことを強く要望します。

  1. 日本脳炎
     日本脳炎ワクチンについては、国による定期接種勧奨中止の後、日本小児科学会としての見解、要望などをこれまでに提出してきております(直近は平成18年7月5日)。ベロ細胞由来の日本脳炎ワクチンによる日本脳炎ワクチンの定期接種が再開されることは、わが国における日本脳炎対策の必要性から強く期待していたものであり、改めて歓迎するものであります。しかし国による定期接種勧奨中止の決定は、事実上定期接種の中止であり、生産量の低下も相まって一部での強い希望者に対する接種が少数行われていたにすぎません。多くの定期接種対象者は、定期接種を受ける機会を失したままになっております。
     仮に来年4月に定期接種が再開されたとしても、予防接種法の規定上、その時点で定期接種年齢を超えた者は、1期、2期接種いずれも定期接種の対象とはならず、定期としての接種機会を失したままになります。したがって国による接種勧奨中止のために感受性者として残ることになり、国民に対する予防機会の提供という感染症に関する公衆衛生対策の観点から著しく外れることになります。
     これに対しては経過措置等で、本来は定期接種として行われていた者に対して定期接種としての接種機会を設置し、感染の可能性を減じておくことを強く要望します。

  2. 百日咳ワクチン
     百日咳につきましては、これまでの乳幼児疾患から次第に高年齢での発症となり、近年では大学生での集団発生など、社会的に問題にもなってきております。成人での慢性呼吸器疾患あるいは重症化することのみならず、新生児早期乳児などのハイリスク感受性者に対して感染源となり、院内感染、家族内感染など危惧されているところです。これについては、日本小児科学会は平成20年3月23日「大学生などにおける百日咳流行についての注意喚起」としてホームページに掲載すると共に全国医学部および看護系大学、専門学校等に手紙を送付し注意喚起を行い、関連学会などにも呼びかけているところです。
     米国では同様の現象を既に経験してきており、その対策として、11-12歳におけるジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン(Tdap)の接種を勧奨しています。DTPは、接種率の低い国では従来の乳幼児の感染症として、接種率の高い国では思春期および成人年齢での疾患としての新たな問題が、国際的に生じてきております。
     わが国においては乳幼児の接種率は良好で、疾患の発生もかなりコントロールされていると言えますが、思春期以降の新たな問題に対する解決策としてこれまでのDTII期接種に百日咳を加えること、さらに成人予防接種の考え方の導入などについて委員会で検討されることを強く要望します。

  3. Hibワクチン、水痘ワクチン
     Hibワクチンの早期承認について平成17年6月26日、水痘ワクチンの定期接種化について平成17年7月24日に、それぞれ要望書を提出しております。Hibについては、薬事法上の認可がおり、現在製品として臨床現場への登場が待たれているところですが、国際的には公衆衛生上重要なワクチンとして位置づけられており、多くの国で定期接種並みの導入が行われております。
     水痘ワクチンには、世界に先駆けてわが国において開発されたワクチンで、世界77ヶ国で採用され、米国、イタリア、フランス等では定期接種並みの扱いになっております。一方わが国では、これまでの予防接種検討会で定期接種としての導入を検討されてきておりますが、依然任意接種の扱いになっており、接種率は35%程度であり、わが国の水痘の疫学状況には全く変化が見られておりません。また最近の厚生科学研究(主任研究者・岡部信彦)においても、免疫異常を伴わない入院例、重症例が少なからずあることが報告されています。

  4. 定期接種の類型について
     現在の定期接種は1類疾病、2類疾病と分けられており、2類疾病は高齢者のインフルエンザのみなっております。この類型化を議論した時の予防接種検討会(神谷齊座長)においては、高齢者のインフルエンザと共に、水痘、ムンプス、Hibなどについては、1類より勧奨の程度を緩めた2類疾病として定期接種にすることが討議されておりますが、インフルエンザを除いては将来の問題として、残されそのままとなっております。
     日本脳炎につきましても、これまでの予防接種検討会(加藤達夫座長)、あるいは日本脳炎に関する専門家会議(岡部信彦座長)などで、結論は得られておりませんが2類相当疾患が妥当ではないかとの議論も行われております。
     世界では感染症の予防について新たなワクチンの開発導入が進んできております。わが国においてHibワクチンの導入、水痘ワクチン等の接種の考え方に関する見直しが必要と考えられる中、これら類型化および予防接種費用の負担などの問題点についても、この機会に議論を尽くされることを強く要望します。



(登録:08.7.14)
■■ 日本小児科学会子どもの生活環境改善員会の提言



(登録:08.5.22)
■■ 要望書「先天性代謝異常等検査事業の廃止に反対します」

大阪府知事 橋下 徹 殿

日本小児科学会
社団法人日本小児保健協会
社団法人日本小児科医会
日本マス・スクリーニング学会

 科学的に確立したすべての出生児を対象としたスクリーニングと治療法により、確実に予防できる先天性代謝異常症およびクレチン症等の検査事業予算を全廃することは、少子化の進展したわが国において出生してくる子どもの尊い生命が健やかに育まれることや府民の生命の尊厳と生活を著しく侵すものであり、断固反対します。



(登録:08.3.31)
■■ わが国の社会への「保育環境の整備に関する」提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会
提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会

 育児は本来親が行うのが基本であり、それを社会が支えるしくみが必要です。しかしながら、核家族化の進行、男女共同参画の推進、子育てに対する親の意識の変化などにより、低年齢児の保育施設での保育が今強く求められています。一方、核家族化した現在の家庭では他者との関わりの機会が減少しており、保育施設では現代の家庭環境では体験できない他者との関わりの機会が増え、子どもが自律性と社会性を学ぶ場になりうることも事実です。さらに、保育施設は親にとっても職場以外の人間関係を構築できる機会となりえます。しかし、このような社会状況の中で重要なことはできるだけ子どもと親が家庭にて接する時間を増やすことです。この目的を達成するために、子育てを担う保護者への、社会・国からの積極的な支援が必要です。

  1. 本来保育は保護者の責任であり楽しみでもあります。また、子育てを通じて、子育てをする側が人間的に成熟することも重要な事実です。但し、子育てをする保護者を社会や国がこれまで以上に積極的に支援することが必要です。
  2. 乳幼児期に温かい人間関係を構築することがその後の人生に大きな影響を与えます。幼い子どもたちの育児はその意味で大変に重要な仕事であることを保護者だけでなく社会全体が認識しなくてはなりません。
  3. 様々な家族構成の事情や社会へのニーズに対応するため、保育施設には以下の4〜10に述べる事項が望まれるべきです。しかしながら子育て、保育の原点に立つとき、子育てを保護者が延長保育、夜間保育、病児保育、病後児保育を利用しなくても済む労働環境の整備や経済的支援について社会をあげて改善することが必要です。
  4. 保育施設には小児保健に関する豊富な経験と知識を持つ看護師を導入することが望まれます。さらに、0歳児が入園する保育施設の園医には子どもの病気と保健に関する知識と経験を有する小児科医が就任することが望まれます。
  5. 保育施設には保育についての豊かな知識と経験を持つ保育士をこれまで以上に配備することが必要です。
  6. 保育施設には6か月までの乳児を他の児から分けて養育することのできる、静かな環境の部屋を確保することが必要です。とりわけ乳児には日中の睡眠時間を十分に確保できる環境整備が不可欠です。
  7. 子どもが栄養学的にも適切な、健康的で愛情にあふれた食事をとること、和やかで楽しい雰囲気のもとで保育者と共に食事をすること、子どもが食事のマナーを修得・実践できる環境を整備することなど、食育の観点から見た総合的な対応が重要です。
  8. 子どもが病気の時は、保護者やそれに代わる親族が病気の子どもをみるのが原則です。しかしながら、病児保育・病後児保育の社会的必要性は今後ますます高くなることが予想され、それらの整備が必要とされます。一方、子どもが病気になった時に保護者が仕事を休んでも、保護者の職場での立場が弱くなったり損になったりしないように、子育てをおこなう保護者への支援制度が整備されていることも必要です。また、家庭内での育児の負担が母親だけに重くならないよう、夫や親族の積極的な協力も必要です。
  9. 今後、長時間保育、休日保育、一時保育などの整備が予定されています。このような保育システムの充実は現代の社会にとって意義がありますが、それを利用する保護者のマナーの育成が同時に必要です。
  10. 保育時間の長時間化は子どもの成育にとって必ずしも望ましくない面があります。特に、乳幼児にとって温かな母子関係が構築されることがその後の人格形成に不可欠なためです。従って、母親の代わりとして、保育施設では特定の保育士と乳幼児との間の愛情にあふれる人間関係を作るため保育施設では担当制を取ることが望ましいと考えます。また、保育を利用する側も、保育の長時間化には問題がある点を認識すべきです。
  11. 保育所の機能を地域に浸透させ、家庭で子育てをしている保護者をも支援する施設にすることも重要です。
  12. 障害児保育は障害児のみならず健常児の成長や発達のために重要な社会資源です。社会全体でこれを支え、さらに広めるためにも人的資源の充実が必要です。



(登録:08.3.31)
■■ わが国の社会への「子どもの性の問題に関する」提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会
提言

日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会

 子どもたちが大人になってから、理想のパートナーを見つけて、産みたくなったときに安全に子どもを産み、幸せに子育てができることが理想であることは言うまでもありません。しかし、現実には、若年妊娠にともなう若年出産や人工妊娠中絶、性感染症による健康被害などの問題が起きています。また、性的虐待や性の商品化などの問題も子どもたちを巻き込んでいます。これはわが国だけの問題ではなく、世界の多くの国々に共通した問題です。私たちには、子どもたちの「健全な性」を育成し、子どもたちの「性の健康」を守り、子どもたちが「将来に安全で幸せな出産・育児」ができるような支援を行うことが求められています。

  1. 自分、パートナー、次の世代の健康を守る責任を持つことが困難な思春期の子どもたちの性交渉は基本的に勧められるべきではありません。しかし、実際には、知識や相談機関が少ないために妊娠したり、性感染症によって健康を損なう子どもたちがいます。また、性的な虐待を受けている子どもたちや金銭などで性を買われている子どもたちもいます。
  2. この様な現状を考えるとき、子どもたちを守るために社会自体もその在り方や子どもたちを大切にするための方策を考えなくてはならない時期に来ています。
  3. 子どもたちの性を守るためには、子どもたちを取り巻く大人が未来を支える子どもたちの権利が守られるように努めてゆくことが基本です。子どもたちにとって将来の目標となるような大人たちを増やしてゆく必要があります。
  4. 例えば性を商品化することを謳っている一部のマスメディア、規範によらないインターネットでの情報氾濫、増加する出会い系サイトなどについては、子どもたちを守るためにも何らかの対策が必要と考えられます。言論は本来自由であるべきですが、自由にはそれを守ってゆくための責任が伴います。
  5. 現在は真偽とりまぜて様々な性の情報があふれています。子どもたちには、命の大切さを考えるという観点からの生命の誕生にいたる知識、性交渉を行った場合に遭遇しうる健康被害としての妊娠や性感染症のリスクについての正確な知識を伝えるための教育が必要です。教育によって防ぎうる「不幸な事態」は決して少なくないと考えます。



(登録:08.3.27)
■■ 大学生などにおける百日咳流行についての注意喚起

平成20年3月23日
社団法人日本小児科学会

 百日咳は乳幼児、小児に好発する感染症ですが、数年来、成人の百日咳が感染症専門家の間で注目されております。一般にワクチンによる感染症の予防効果は生ワクチンではあっても数年〜10数年で減衰することがあり、不活化ワクチンの場合にはさらに短期間であることが多いため、追加接種が行われることがあります。百日咳ワクチン(P)が含まれる三種混合ワクチン(DPT:不活化ワクチン)は、我が国では乳児期に3回(1期)、1年後に追加接種1回を行いますが、11〜12歳の2期接種は、百日咳による直接の危険時期は過ぎたと考えられるところから、2種混合ワクチン(DT)の追加接種が行われています。一部海外では成人層での百日咳、およびそこから乳幼児への感染拡大への警戒のため、我が国の2期(DT)に相当する予防接種をDPT三種混合ワクチンで行っている国もありますが、我が国では今のところその予定はありません。
 2007年に大学生を中心に成人、年長児に麻疹が流行したことは周知の通りですが、四国の2大学では百日咳の流行的多発がみられました。いずれも医学部の学生から拡大したことが考えられ、医学部および付属病院職員にも感染が拡大しました。
 早期検知、治療、予防的投薬および積極的疫学調査などの適切な対応がとられ、2次感染による患者さんの発症者は無く、幸い新生児病棟等への拡大もありませんでしたが、見過ごした場合には、重症者、あるいは最悪では新生児乳児などの死亡者も含む重大な院内感染に進展した可能性は十分にあったと推察されます。このときの疫学調査では、学生に発症する以前より地域で百日咳に感染したと考えられる患者さん、職員も少なからず観察されており、今後も麻疹と同様に大学生を中心に百日咳が多発する可能性は四国のみならず全国同様であることが危惧されます。
 三種混合ワクチン既接種者、あるいは成人の百日咳は、小児百日咳に関して成書に書かれてあるような典型的な臨床症状(レプリーゼあるいはウープ)、検査所見(白血球増加、リンパ球増加)を呈しません。2週間以上続く長引く咳に加えて、突然の咳き込み、咳き込みによる嘔吐など、嘔気、嘔吐を伴うような頑固な咳嗽が遷延することが多いようですが、軽症例も少なくありません。鼻咽腔からの細菌培養は検出率が低く、血清診断は、感染と維持された抗体との鑑別が必ずしも明確ではありません。PCR、LAMP法などによる核酸検出法が利用されることがありますが、健康保険の適応になっておらず、検査可能な施設は限られています。また、核酸検出法は検出感度が高すぎて、必ずしもその診断的意義は確定しておりません。この様な理由で、症状が必ずしも典型的でない成人百日咳の診断は非常に困難で、専門医でも見過ごすことがあるほどです。
 しかし、軽症例であっても感染源となり、医学生、看護学生、その他の教育実習生などが百日咳に罹患すると、実習先の医療機関、施設、学校などで重大な問題が生じることが予想されます。そこで、日本小児科学会は成人、特に大学生における百日咳の存在と学生を介した院内感染、医療機関・学校など実習先への感染拡大を最小限に抑制するために、感冒にしてはしつこいと感じられる2週間以上続く頑固な咳嗽を認める学生、教職員が観察された際には、百日咳を念頭においた対応が必要であることを大学関係者にお知らせします。ご配慮のほど、よろしくお願い申し上げます。

 付記:なお、100%の診断率ではないものの、一般的には血清診断として山口株(流行株)に対する凝集素価の上昇(単一血清でかなりの上昇、あるいはペア血清で4倍以上の上昇)を確認することなども重要です。確定診断前に診断的治療が必要となる場合もあります。
 また国立感染症研究所によってLAMP法を用いた遺伝子キットが地方衛生研究所百日咳レファレンスセンター(秋田県健康環境センター、東京都健康安全研究センター、大阪府立公衆衛生研究所、三重県科学技術振興センター、愛知県立衛生研究所、福岡県保健環境研究所等)に配布され、検査体制の強化/拡充が図られているところです。すべての検体検査に応じられる段階ではありませんが、病原診断の相談先となります。(病原微生物検出情報―IASR― 2008年3月号 特集:百日咳 http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html



(登録:08.1.31)
■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解(3)

平成20年1月27日
社団法人日本小児科学会

 日本小児科学会はインフルエンザにおけるタミフルの使用に関して平成17年11月30日および平成18年3月25日に予防接種・感染対策委員会にて討議した結果の見解を表明している。
 その後厚生労働科学研究によって「インフルエンザに伴なう随伴症状の発現状況に関する調査研究班(主任研究者・横田俊平教授)」が構成されたことにより、さらなる見解についてはそれらの研究成果を見守っていたところであるが、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会(いわゆルタミフル調査会)が平成19年12月25日に開催され開催され、横田班を受けたかたちの廣田班による分析を含め、基礎、臨床ワーキンググループ(WG)におけるそれまでの調査成績などが報告された
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html)ので、ここにその概要を紹介し、日本小児科学会としての見解を述べる。

 調査会は、検討結果基礎WG及び臨床WGから非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査等の結果について報告を受け、現時点において、直ちにタミフルの服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆するような結果は得られていないが、特に、疫学調査及び臨床試験については、十分かつ慎重な検討や分析を進め、可及的速やかに臨床WG及び当調査会に報告することが適当である、としている。
 非臨床試験では、バインディング・アッセイの結果、臨床用量投与時に推定されるタミフルの未変化体及び活性代謝物の脳中濃度では多くの中枢性の受容体やイオンチャネル系への作用を持たないとされたこと等、臨床試験では、睡眠検査室試験の中間解析によるとタミフルについて睡眠異常を起こさないこと、心電図検査において著明な変化が認められないことなどが確認されたこと等が報告された。また疫学調査では、インフルエンザの経過中、重症異常行動がみられた割合は、タミフル服用群で60%と若干高いものの、非服用群での発生は38%にみられており(2%は不明)、いずれも10歳前後の男児に多かったと報告された。

 調査会は、引き続き基礎WG及び臨床WGにおいて、現在実施中又は解析中の非臨床試験、臨床試験及び疫学調査等の結果を含めた更なる調査検討を進め、できるだけ早期に最終的な結論の取りまとめを行うこととする、とし、これまでにタミフルについて現在講じられている以下の措置(注)は、現在も妥当であり、引き続き医療関係者、患者・家族等に対し注意喚起を図ることが適当である、としている。

(注)平成19年3月20日の緊急安全性情報(厚生労働省):10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

 日本小児科学会は、事実関係はまだ明確になってはいないものの慎重を期して一時的に使用を控えるとの厚生労働省の判断を受け入れ、「現在流行中のインフルエンザの10歳代患者に対するタミフルの使用は、ハイリスク群などへの治療を除き原則として当面差し控える。」としたい。
 また、調査会および異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)の調査では、抗インフルエンザ薬を使用していないインフルエンザ患者にも異常行動がみられることが改めて確認されており、インフルエンザ罹患時には回復まで十分経過観察する必要性を以下のように注意喚起するものである。

*インフルエンザにともなって異常行動がでることについてはこれまでも指摘されており、今回の研究班成績(岡部班)でもそれが改めて示されており、タミフル使用制限によって異常行動がまったくなくなるとは考えられない。したがってタミフルなどの服用の有無にかかわらず、特に小児や未成年の(ことに10歳を中心とした前後5歳くらいの男児)インフルエンザについては、症状が出てから2日間程度は、言動、行動等に注意し、その経過をよく見るよう保護者に説明すべきである。

 インフルエンザとタミフル及びリレンザ等の使用、そして異常行動との因果関係については、さらなる科学的な調査研究の継続が必要であり、日本小児科学会は引き続き本事例の科学的な解明に積極的に協力する方針であり、会員ならびに関係機関のご協力をお願いする次第である。

追記:厚生労働科学研究「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)では、重症異常行動については全医師に、軽症異常行動についてはインフルエンザ定点の医師に、情報を提供してもらいことを呼びかけている(情報提供先:国立感染症研究所感症情報センター http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/search.html)ので、学会員は是非ご協力頂きたい。

以上

参考(07.03.27登録に追加):

  • 日本小児科学会HP
    学会からの提言主張(登録:05.11.30, 登録:07.03.27)日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
  • 第39回日本小児感染症学会学術集会抄録 P.112-114 演題 B-7〜B.12
  • 厚生労働省ホームページ 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 平成19年12月25日開催 資料等
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html
  • 同上 検討結果について
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-8.html
    横田俊平他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第1報 薬剤使用および臨床症状発現の臨床的検討 日児誌 111(12): 1545-1558, 2007
    藤田利治他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第2報 薬剤使用と臨床症状発現との関連に付いての統計解析 日児誌111(12): 1559-1567, 2007



(登録:07.12.18)
■■ 小児科医は子ども達が成人するまで見守ります

日本小児科学会では、小児科が診療する対象年齢を、現在の「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げること、そして、その運動を全国的に展開することを、平成18年4月に決定しました。これまで小児科に通院していた15〜20歳の方はもちろん、これまで小児科に通院していなかった15〜20歳の方も、どうぞ、気軽に小児科医に御相談下さい。小児科医は、積極的に診察して参ります。


(画像をクリックするとサイズの大きなサイズで見ることができます)



(登録:07.11.21)
■■ 超重症心身障害児の医療的ケアの現状と問題点―全国8府県のアンケート調査―

日本小児科学会倫理委員会



(登録:07.10.31)
■■ 第1回「子どもの食育を考えるフォーラム」―子どもの食は大丈夫?―講演内容の掲載について

 日本小児科学会栄養委員会では、小児医療・保健従事者がこれらの政策決定や取り組みに積極的に参加し提言することは、真に子どもの栄養・食、ひいては子どもの健全な成長を推進するのに不可欠であると考え、「子どもの食育を考えるフォーラム」を企画し、平成19年1月13日に東京都千代田区砂防会館において開催、多くの方々にご参加いただきました。食育についてより多くの方々に感心を持っていただきたく当日の講演内容を掲載させていただきます。

日本小児科学会栄養委員会



(登録:07.10.30)
■■ 小児集中治療部設置のための指針―2007年3月―



(登録:07.10.12)
(最終更新:07.10.17)
■■ 日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会共催
第2回子どもの食育を考えるフォーラム〜子どもの食を守るのはだれ?〜開催について

日本小児科学会栄養委員会

 本フォーラムは、“子どもの食・栄養”に関して、社会の関心が非常に高まっている中、子どもの食育の一層の推進に向けた取り組みの一つとして企画し、平成19年1月13日に第1回のフォーラムを開催し、多くの方々に参加いただきました。
 これを受けて今後継続的にフォーラムを開催していくこととなり、今回は日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会の共催とし、第2回フォーラムを開催することといたしました。
 多くの方々のご参加をお待ちしております。

日時:平成20年1月26日(土曜日)13時30分〜17時
会場:品川 The Grand Hall(港区港南2-16-4 品川駅港南口下車 徒歩3分)
参加費:無料(事前登録等不要)
後援:厚生労働省・文部科学省・日本医師会・日本栄養士会・日本小児栄養消化器肝臓学会・日本臨床栄養学会・日本臨床栄養協会・日本学校保健会・日本学校保健学会・日本栄養改善学会・日本母乳哺育学会・日本保育園保健学会
無料託児室あり:平成20年1月18日(金曜日)までに(株)アルファ・コーポレーション0120-086-720
担当:小滝宛事前に連絡ください

*日本小児科学会専門医・認定医研修5単位

プログラム

13:30〜開会の挨拶
 日本小児保健協会会長・日本小児科医会会長

  1. 授乳・離乳の支援ガイドラインについて(13:40〜)
    座長:
     清水 俊明(順天堂大学医学部小児科教授)
     玉井  浩(大阪医科大学小児科教授)
    (1)小児科医からみたガイドライン
     順天堂大学プロバイオティクス特任教授 山城雄一郎
    (2)授乳・離乳の支援ガイドラインについて
     厚生労働省母子保健課栄養専門官 清野富久江
    (3)ガイドライン使用の実際
     日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長 堤 ちはる
  2. 食育指導の実践(14:50〜)
    座長:
     南里清一郎(慶應義塾大学保健管理センター教授)
     位田  忍(大阪府立母子保健総合医療センター)
    (1)保育所での実践
     京都府城陽市清仁保育園栄養士 池本 文子
    (2)小学校での実践
     杉並区立三谷小学校 学校栄養職員 江口 敏幸
    (3)養護教諭が食育にどうかかわるか?
     足立区立第五中学校養護教諭:西尾ひとみ
  3. 肥満小児への食生活指導の実際(16:10〜)
    座長:
     大関 武彦(浜松医科大学小児科教授)
     神川  晃(神川小児科クリニック)
    (1)肥満小児への対応
     帝京大学小児科教授 児玉 浩子
    (2)子どもを肥満にしないために
     国立保健医療科学院 加藤 則子
    閉会の挨拶
     日本小児科学会会長



(登録:07.09.21)
■■ 産科医療補償制度に関する意見書

平成19年8月3日

財団法人日本医療機能評価機構
理事長 坪井 栄孝 殿

産科医療補償制度運営組織準備委員会
委員長 近藤 純五郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 現在、貴委員会・機構に於いて、精力的に検討がなされている「産科医療補償制度」につきましては、各種報道や日本医療機能評価機構のホームページから伺ってきました。これは、脳性麻痺で種々のハンディーを背負われている子ども達や家族の経済的救済になるだけでなく、無用な訴訟を減らす効果も期待出来、社会的に大変有意義な事業になることと期待しております。
 一方、想定されている補償対象から早産・低出生体重児を除外するという点に関しましては、日本小児科学会といたしまして、次の理由により、周産期医療および新生児医療への影響を無視しがたいとの観点から、深い憂慮の念を表明せざるをえません。

一.どの程度の早産・低出生体重児をもって補償の対象外とするのかという線引きに合理的説明を与える、あるいは納得を得ることは困難です。
一.早産・低出生体重児の分娩等、ハイリスク妊産婦・新生児を主として取り扱っている全国の周産期医療施設の産科医師や小児科(新生児科)医師にとっては、むしろ訴訟の増加の恐れが高まります。
一.脳性麻痺児の平等な患者救済に繋がらないのみならず、不平等を助長することになります。

 無過失であって周産期に起因する脳性麻痺は、早産・低出生体重児と正期産児でほぼ同数程度発生しており、等しく無過失補償の対象とするべきです。無過失による低出生体重児や早産児の脳性麻痺を補償対象に加えたとしても補償対象は倍増する程度です。日本小児科学会としては、一定の出生体重や在胎期間を満たさない場合を一律に補償対象から除外するのではなく、むしろ脳性麻痺の重症度によって補償対象を制限すること等の方が、社会的にみても公平な救済となり、患者・家族の理解も得やすく、無用な周産期医療訴訟を抑制する効果も期待出来ると考えております。
 ハイリスク妊娠・分娩の医療に日夜献身的に働いてきた医療関係者の努力を裏切ることのないよう、十分のご配慮をいただきたく、よろしくご検討の程をお願い申し上げます。



(登録:07.08.24)
■■ DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

 「DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書」を厚生労働省に提出いたしました。



(登録:07.07.04)


■■ 2007年 日本小児科学会賞授賞式

 第110回日本小児科学会学術集会(京都府立医科大学 杉本 徹会頭)において、日本小児科学会賞を受賞された藤原哲郎先生(岩手医科大学名誉教授)の授賞式が行われ、別所文雄会長から、賞状、副賞、メダルが手渡されました。
 授賞式の後「新生児呼吸窮迫症候群(RDS)に対する人工サーファクタント補充療法」と題する記念講演が行われました。

別所会長から賞状を渡される

記念講演する藤原哲郎先生


(登録:07.06.05)
■■ 麻疹対策に関する見解と要望

日本小児科学会予防接種感染対策委員会

 平成19年5月末現在、関東地方を中心に小児科年齢を若干超えた年齢層での麻疹の流行により、休講(校)、学校行事の中止、順延などが続いております。
  日本小児科学会では、平成18年7月5日「麻疹サーベイランス強化(全数把握)に関する要望」を、厚生労働省に提出しております。
  そこには、
  「平成18年4月1日より法改正により麻疹、風疹の定期予防接種として、MRワクチンによる2回接種法の導入を行い、追って政令附則第2条の削除を行ったなどは、我が国における麻疹及び風疹対策の強化として大いに歓迎すべきことであることは、これまでにも表明してきたところです。
  しかしこれで一気に疾患の排除(elimination)にまですすむわけではなく、残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生、そしてこれらによる感染の循環が当面続くことは、これまでにも海外において経験されているところです。したがってわが国においてはその対応策としてまずサーベイランスを強化し、発生状況を正しく把握し、適切に速やかに感染拡大を予防するための対策をとることが重要であると思われます。」
  と明記してあり、まさに現在の若者の間での麻疹の流行状況は「残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生」であります。ここで今後の対策強化を行わないと「感染の循環が当面続く」ことになり、麻疹による犠牲者の発生、社会的混乱が数年ごとに繰り返され、さらには我が国も加盟国として属するWHO西太平洋地域(WPRO)による2012年までの麻疹排除(elimination)に、わが国は遠く離れることになってしまいます。

 これからとるべき対策として

  1. 麻疹に対する正確な状況把握と対応策を検討し、わが国における麻疹排除の戦略を策定するための公的な麻疹対策委員会を厚生労働省内に速やかに設立する。
  2. 麻疹サーベイランスについて、これまでの定点報告から全数報告性に切り替え、対策に必要な正確な情報を速やかに把握する
  3. 残された感受性者、すなわち定期接種該当年齢から外れるワクチン未接種者未罹患者、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(primary、およびsecondary vaccine failure)における集団発生の予防を行なう。具体的には、定期接種麻疹第二期の徹底とともに小学校、中学校、高等学校、大学など入学時等において学校当局あるいは教育委員会、文部科学省などの理解と協力を得て、麻疹感受性者の把握と該当者への麻疹ワクチン接種の積極的な勧奨を行うシステムを国として構築する。
  4. 定期第1期接種に関しては、さらなる高い接種率(95%以上)を目標とする。
  5. このために必要なワクチンの確保を行なう
  6. 麻疹対策と風疹対策は共通であり、また風疹感受性者に対する対策も合わせて行なうことによって先天性風疹症候群対策も行なえるところから、この時に使用するワクチンは原則的にはMRワクチンとする。

ことなどが早急に行われることを、日本小児科学会として強く要望します。

 なおわが国においてはMRワクチンあるいは麻疹単抗原ワクチンは、国内における通常の定期接種を十分賄うことを目的に生産され、また検査も個別あるいは小集団での診断ないしスクリーニングを想定して検査システムの構築が行なわれているところから、現状のような流行下において緊急ワクチン接種及び緊急スクリーニング検査に支障を来しつつあります。
  ワクチン接種にあたっては出来るだけ接種対象者を絞りワクチン接種量全体を抑制するためにはスクリーニングは有効ですが、接種そのものに抗体測定は不要で、抗体保有者へのワクチン接種は医学的には問題ありません。
  現状のように一時的に限られた量のワクチンを接種する場合には、最優先されるべきは、麻疹ウイルス感染によって重篤化することが容易に想定される未接種未罹患者、および第1期定期接種対象者(1歳代)であると考えられます。1回ワクチン接種の経験があるsecondary vaccine failureの可能性のある者については、感染発症した場合には感染源にはなり得るもののその多くは軽症に終わるので、ワクチンが再び市場に多く出回るようになってから対象にすることも考慮すべき段階であるかと思われます。

以上


 

(登録:07.03.27)
■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
(平成19年3月25日)

平成19年3月25日
社団法人日本小児科学会

 日本小児科学会はインフルエンザにおけるタミフルの使用に関して平成17年11月30日に予防接種・感染対策委員会にて討議した結果の見解を表明している。
 その後厚生労働科学研究によって「インフルエンザに伴なう随伴症状の発現状況に関する調査研究班(主任研究者・横田俊平教授)」が構成されたことにより、さらなる見解についてはそれらの研究成果を待っているところである。また厚生労働省に対しては同見解で「我が国において十分な市販後調査が継続され、その結果が国内においても適切に公表されることを望むものである。」と述べている。

 最近のインフルエンザ及びタミフルに関連した可能性があるとされる転落死を伴う異常行動の事例報告から、厚生労働省は医療関係者への注意喚起(平成19年2月28日)に続いて同年3月20日10歳代のインフルエンザ患者に対するタミフルの使用を差し控えるよう緊急安全情報を発出した。

 日本小児科学会はこれまで「一般診療におけるタミフルの使用については、従来通り投与の適応や症状の経過観察等への注意が必要であるが、現時点ではその使用に対して改めて注意勧告などを行う状況ではないと考える。」としてきたが、事実関係は明らかになってはいないものの慎重を期して一時的に使用を控えるとの厚生労働省の判断を受け入れ、「現在流行中のインフルエンザの10歳代患者に対するタミフルの使用は、ハイリスク群などへの治療を除き原則として当面差し控える。」としたい。
 ただし、インフルエンザとタミフルの使用、そして異常行動との因果関係については、さらなる科学的な調査研究が必要であり、率先して解明を行う環境を早急に整え、調査研究を強く進めることを国に求めるものである。
 日本小児科学会は本事例の科学的な解明に積極的に協力することを改めて表明する。

 インフルエンザにともなって異常行動がでることについてはこれまでも指摘されており、タミフル使用制限によっても異常言動が全くなくなるわけではないと言える。したがってタミフルなどの服用の有無にかかわらず、特に小児や未成年のインフルエンザについては、症状が出てから二日間程度は、言動、行動等に注意し、その経過をよく見るよう患者本人あるいは保護者に説明すべきである。

以上

参考:

  • 日本小児科学会HP
    学会からの提言主張(登録:05.11.30)日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
  • 医薬品・医療用具等「緊急安全性情報」医薬品医療機器総合機構
    http://www.info.pmda.go.jp/kinkyu_anzen/kinkyu_index
  • 日本小児科学会第110回学術集会抄録 p1-071-P1-074
  • 厚生労働科学研究費補助金「ワクチンの安全性向上のための品質確保の方策に関する研究」平成18年度分担研究報告(資料) 分担研究者・横田俊平 平成19年3月
  • 五島典子他:インフルエンザ罹患時の異常言動に関する臨床的検討 小児感染免疫 18(4): 371-376, 2006.
  • 浜 六郎:リン酸オセルタミビルによる突然死、異常言動死:その因果関係の考察(抄録) 小児感染免疫 18(1): 56-57, 2006.
  • 原 啓太他:インフルエンザの経過中に異常言動・行動を呈した症例の検討 日本小児科学会雑誌 111(1): 38-44, 2007.


 

(登録:07.01.10)
■■ ホームを含む駅構内全面禁煙化についての要望書の提出とその回答


 

(登録:06.10.10)


■■ 「わが国の新しい救急蘇生ガイドライン」の掲載お知らせ

財団法人日本救急医療財団ホームページに「わが国の新しい救急蘇生ガイドライン」が掲載されております.
リンク先を以下に掲載いたします.

http://www.qqzaidan.jp/qqsosei/index.htm


(登録:06.08.11)


■■ Pediatrics International編集委員会からのお知らせ

オンライン投稿料の設定について

Pediatrics Internationl編集委員会
編集委員長 柳川 幸重

 2004年からインターネット経由のオンライン投稿を開始し、おかげさまで投稿数は約2倍に増加し、インパクトファクターも増加いたしました。その反面、投稿にかかわる経費がかさみ、日本小児科学会の会計を圧迫する事態となりました。その解決策として、オンライン投稿にかかわる実費として、20米ドルを投稿料として申し受けることといたしました。投稿規程の改正とあわせ、オンライン投稿に際しインターネット上でも公表し、近日中に投稿料をいただく体制を整える予定でおります。本誌の質をさらに向上し、論文採択から発行までの待ち時間を短縮するためにも、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

郵送先:
〒112-0004 東京都文京区後楽1-1-5 第1馬上ビル4階
日本小児科学会
英文誌Pediatrics International
編集委員長 柳川 幸重


(登録:06.07.12)


■■ 日本脳炎についての質問書・要望書

平成18年7月5日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 日本脳炎ワクチンの定期接種における積極的勧奨が中止(以下、勧奨中止)されて(健感発0530001号、平成17年5月30日、全国都道府県衛生主管部(局)長宛、厚生労働省健康局結核感染症課長)、1年を経ております。それによれば、当面の勧奨中止であって、よりリスクの低いと期待される組織培養法による日本脳炎ワクチンの供給が出来た時の供給に応じ、接種勧奨を再開する予定である、とされています。

 質問:勧奨中止による影響と今後の動向について
 勧奨中止による影響について、厚労省Q&Aでは
「Q13 今回の措置により、日本脳炎が流行することはありませんか?
 A13 日本脳炎の感染源は日本脳炎ウイルスを媒介する蚊ですが、媒介蚊に刺されたからといって必ずしも発病するものでもありません。また、わが国では1970年代以降患者数は著しく減少しましたが、その理由としては予防接種の普及の他に、蚊のウイルス保有率の減少、環境改善による蚊に刺される機会の減少など複数の要因の組み合わせの結果と考えられています。
 そのために国内の多くの地域では、予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少し予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少していると考えられます。また、すでに予防接種をうけている年齢層では、ある程度の免疫を持っていると考えられます。これらのことから、本年予防接種をうけるべき年齢の方が予防接種をうけなくても、日本脳炎に感染し発症する機会は極めてまれと考えられます。」
 と説明しておられます。

 これについて日本小児科学会では、会員に対し見解として、日本小児科学会ホームページにて
「日本脳炎は潜在的危険性を持つ重症感染症であることには変わりがなく、日本にとって長い目でみて今後も必要なワクチンであると考えられます。しかし、ヒトからヒトへと感染が次々と広がる可能性はないこと、都会生活者が多いという現在の生活形態から多くの子供たちにとって感染のリスクが高いわけではないこと、急性脳炎としての顕性発症率は低いこと、などから、稀な副反応を危惧するのであれば、短期間(1年前後程度)広汎な接種はすすめずに、次世代ワクチンの出現を待ってもよいのではないだろうかと考えます。」
 と説明しております。

 最近、日本小児科学会が得た情報によれば、現在承認申請中の日本脳炎の組織培養細胞由来ワクチンは、その実用化には3〜5年が必要ではないかということです。
 日本小児科学会においては、日本脳炎予防接種勧奨の中止が短期間(1年前後程度)であれば、日本脳炎発生のリスクが高まることはないという見解を出しておりますが、国は「予防接種を行わなくても直ちに流行する機会は著しく減少していると考えられます」「本年予防接種をうけるべき年齢の方が予防接種をうけなくても、日本脳炎に感染し発症する機会は極めてまれと考えられます」「よりリスクの低いと期待される組織培養法による日本脳炎ワクチンの供給が出来た時の供給に応じ、接種勧奨を再開する予定です」と説明しておられますが、今後さらに3〜5年日本脳炎ワクチンが勧奨中止(実質上定期接種中止としている自治体が多い)の状況が継続した時のリスクはどのように考えておられるのかご説明頂きたいと思います。日本小児科学会はそのリスクは1年前後として会員に説明をしておりますが、感受性者の蓄積はそのリスクを高めるものと危惧しております。

要望:
1. 接種希望者への定期接種としての接種について
2. サーベイランスの強化について

1. 今回の措置は、定期接種の積極的勧奨の一時中止であって、定期接種の中止ではないところから、定期接種としての日本脳炎を希望する人に対しては、国はQ&Aによって
 Q16 組織培養法による日本脳炎のワクチンが承認されるまで、日本脳炎の予防接種は受けられないのでしょうか?
 A16 日本脳炎の流行地域へ渡航する者、蚊に刺されやすい環境にある者など、日本脳炎に感染するおそれが高い場合などで、本人又は保護者が特に希望する場合には、今回の措置と日本脳炎ワクチンの効果及副作用を医師から説明を受け、同意書に署名した上で現行の日本脳炎ワクチンの接種を受けることは差し支えありません。
 として、ことにハイリスクあるいは心配な方に対しては定期接種が可能であることを示しておられます。

 日本小児科学会はこれについて、会員に対して日本小児科学会ホームページにて
 感染リスクの高い生活環境にある子どもである場合(ブタにおける日本脳炎ウイルス感染が高い地域での郊外生活、あるいはそのような地域での長期滞在、アジア地域への長期滞在{ことに雨期}など)には、稀な理論的リスクより感染リスクによる健康障害の可能性が高くなるので、小児科医として個別に接種をすすめるという考え方は妥当であると考えられます。この場合、従来の日本脳炎ワクチン定期接種年齢の範囲であれば、従来通り定期接種として扱われます。それ以外の年齢では、これも従来通り任意接種の扱いです。今回の国の決定は、「国による積極的な勧奨は控える」というものであり、日本脳炎を予防接種法による定期接種対象疾患から外したわけではありません。したがってこれまでの定期接種対象となる年齢の小児に対してinformed consentを得た上での日本脳炎ワクチンの接種は、費用の負担、万一の場合の事故の救済などについて、従来通り定期接種としてみなされることは国からの説明でも明らかです。したがって、定期接種としての年齢にある接種希望者に対しては、予防接種の実施主体である自治体は、これに対応すべき責務があり、適切な方法によって予防接種を行う限りは個々の接種医師の責任ではないことも従来通りであると考えられます。
 と説明しております。

 しかし実態は多くの自治体において、実質上は定期接種中止と同様の扱いになっており、希望者が容易に接種できる状況になっていません。これにつきましては、定期予防接種の積極的勧奨の差し控えの通知にある「定期接種対象者のうち日本脳炎に感染する恐れが高いと認められる者等については、・・・・・同意を得た上で現行の日本脳炎ワクチンを使用した接種を行うことは差し支えない」という点について、再度自治体に対して認識すべきことを促し、希望者への定期接種が速やかに円滑容易に行われるよう求められますよう、強く要望致します。

2. 予防接種勧奨中止により感受性者の蓄積があること、そして再開されたとしても三期接種が中止になっているという点から、これらについての妥当性あるいはリスクが生じるかどうかなどについて、医学的に検証して行く必要があります。それらの基礎的なデーターになるのは、サーベイランスによる疾病の動向あるいは、血清疫学調査、感染源としてのブタ調査であります。疾病の発生動向は、既に4類感染症としての日本脳炎(全数報告)および5類感染症急性脳炎(全数報告)、5類感染症無菌性髄膜炎(基幹病院定点報告)で知ることができ、また血清疫学調査、ブタ調査については感染症流行予測調査事業において行われているところでありますが、現在のような状況では、日本脳炎および急性脳炎、急性髄膜炎そして感染症流行予測調査事業における日本脳炎のサーベイラス強化を行い、より精緻なデーターを入手することがリスクの評価、そしてリスク管理の上で重要であると考えられます。この点から日本脳炎およびその関連についてのサーベイランスの強化が行われることを、強く要望致します。


(登録:06.07.12)


■■ 麻疹サーベイランス強化(全数把握)に関する要望

平成18年7月5日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 麻疹対策は現在世界的規模で取り組まれておりますが、我が国においても1歳児に対する麻疹ワクチン接種率の向上を図ることによって、数年前までは年間推計20〜30万人の発生があったものが、平成17年には年間報告数が545人(推計5000人前後)にまで減少したことは、大変喜ばしいことです。さらに平成18年4月1日より法改正により麻疹、風疹の定期予防接種として、MRワクチンによる2回接種法の導入を行い、追って政令附則第2条の削除を行ったなどは、我が国における麻疹及び風疹対策の強化として大いに歓迎すべきことであることは、これまでにも表明してきたところです。
 しかしこれで一気に疾患の排除(elimination)にまですすむわけではなく、残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生、そしてこれらによる感染の循環が当面続くことは、これまでにも海外において経験されているところです。したがってわが国においてはその対応策としてまずサーベイランスを強化し、発生状況を正しく把握し、適切に速やかに感染拡大を予防するための対策をとることが重要であると思われます。
 今回、茨城県南部、千葉県等で麻疹の集団発生が見られていることは、まさにこれらを示すものと考えられ、適切かつ迅速な対応が望まれるところであります。
 現在の我が国の麻疹のサーベイランスは、全国約3000カ所の小児科医(小児科標榜医療機関)が定点として協力しておりますが、最近のように年間数千例規模になってくると、地域的なアウトブレイクやその波及および拡大については定点のみからの報告では、その詳細な状況の把握は不可能です。茨城県南部、千葉県における麻疹の流行的発生も、全体から見れば少数であり、定点からの報告ではその状況は把握できていません。さらに今回の流行からその後の感染の波及の有無を知ろうとしても、定点のみからの報告では把握ができず、一定規模になって初めて検知できることになり、結果として対策の遅れが生ずることが危惧されます。従って今後の我が国では麻疹のサーベイランスについては、その流行や発生状況の詳細を把握し、効果的な対策を講じるために、これまでの定点報告から全数報告に切り替えて強化する必要があります。今回の茨城県南部・千葉県における麻疹のアウトブレイクは、そのことを如実に示しているものと考えられます。
 我が国が属するWHO西太平洋地域(WPRO)では、2012年を麻疹排除(elimination)の目標としていますが、現在の定点報告では少数小規模発生の把握が出来ず、真の排除が達成されているかどうかの確認も出来ず、また発生の確認が遅れれば対応もさらに遅れ、設定されたeliminationの目標からわが国が遠のくことが危惧されるところです。
 日本の麻疹対策のステージがcontrol phase(コントロール期)からoutbreak prevention phase(発生予防期)に変わりつつある今、以上の点から麻疹対策強化に必須の事として、麻疹サーベイランスの強化、すなわち麻疹については全数把握を行うことを可及的速やかに実現していただくよう強く要望するものであります。


(登録:06.06.21)


■■ 臓器移植関連法案改正についての日本小児科学会の考え方

 臓器移植関連法案改正については、日本小児科学会として、その考え方を度々表明してきたところですが、改正案が国会へ再提出されておりますので改めてその問題点を指摘し、当会の考え方を表明いたします。
 日本小児科学会の臓器移植の考え方は、現時点ではB案(臓器摘出の意思表示を現行法の15歳以上から12歳以上に引き下げるなどの案)に近いものです。もしいきなりA案(本人の臓器提供の意思が不明でも、遺族の書面による承諾があれば臓器摘出が可能などとする案)に沿って、年齢制限も設けず小児脳死臓器移植が行われる場合は、ほとんどの病院で基盤整備(※)が行われていない現状においては、現場で混乱が起こるのは必至であります。したがって、数年間の期限付きでB案を施行する中で、その間に厚労省の責任で基盤整備をすることが望ましいと考えます。そして、基盤整備ができた後に、より低年齢の小児にも脳死臓器移植が行われるような法案整備を進めるべきであると考えます。なお、今回の法案に盛り込まれている親族への優先項目については、公正性から疑問があります。

※基盤整備とは、以下のことを指す。
1.虐待児からの臓器摘出防止に関する基盤整備
2.小児の脳死の判定基準の検証ならびに再検討
3.小児の意見表明権の確保に関する基盤整備

2006年5月21日

日本小児科学会

会 長 別所 文雄
小児脳死臓器移植に関する基盤整備ワーキング委員会

委員長 清野 佳紀


(登録:06.05.09)


■■ 麻疹および風疹の定期の予防接種に係るワクチンについての要望

平成18年4月20日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 平成18年4月1日より麻疹および風疹予防接種について2回接種を導入するとともに、乾燥弱毒生麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を定期接種として採用したことは、我が国における麻疹および風疹の対策の強化として大いに歓迎すべきことであることをこれまでに当学会としても表明してきたところです。
 しかし、省令によって麻疹および風疹の定期接種としてMRワクチンのみが採用されたこと、および政令附則第2条によって「改正政令施行前に麻疹または風疹の予防接種を受けたものおよび任意で当該予防接種を受けたものについては定期予防接種の対象とならない」とされたことにより、以下のように麻疹および風疹に対して定期接種のワクチンによって免疫を付与することができない者が現れることになり、麻疹および風疹対策として大きな制約が出てきました。

・麻疹罹患・風疹ワクチン未接種者への、1期および2期における風疹ワクチン接種
・風疹罹患・麻疹ワクチン未接種者への、1期および2期における麻疹ワクチン接種

・麻疹罹患・風疹ワクチン接種すみ者への、2期における風疹ワクチン接種
・風疹罹患・麻疹ワクチン接種すみ者への、2期における麻疹ワクチン接種

・麻疹ワクチン接種すみ・風疹ワクチン未接種者への、1期におけるMRワクチン、または風疹ワクチン接種。および2期におけるMRワクチンまたは麻疹、または風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)
・風疹ワクチン接種すみ・麻疹ワクチン未接種者への、1期におけるMRワクチン、または麻疹ワクチン接種。および2期におけるMRワクチンまたは麻疹ワクチン、または風疹ワクチン接種(原則はMR)

・麻疹ワクチンと風疹ワクチン接種すみ者への、2期におけるMRワクチンまたは麻疹ワクチン、または風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)
・麻疹ワクチンと風疹ワクチン未接種者への、1期および2期における麻疹ワクチンまたは風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン。現行でも接種可能)
・MRワクチン接種者への、2期における麻疹ワクチンと風疹ワクチン接種(原則はMRワクチン)

 平成18年3月31日、厚生労働省結核感染課から、各都道府県衛生主幹部(局)予防接種担当者宛へ事務連絡として、麻疹単抗原ワクチンおよび風疹単抗原ワクチンを定期接種として行えるようにする可能性があることについて示されました。これに係わり、政令附則第二条の削除、および定期接種としてはMRワクチンを原則としてすすめるが状況に応じて麻疹および風疹の単独抗原ワクチンも使用できるとように省令改正が行われるのであれば、指摘した上記問題点の解決に結びつくものであると考えられます。またそのことは日本小児科学会衛藤義勝会長より平成17年6月26日に厚生労働省健康局結核感染症課牛尾光宏課長あてに提出した要望の主旨にかなうものでもあり、日本小児科学会は、この事務連絡を強く支持し、上記解決に結びつくような政省令改正につながることを強く要望するものです。

 自然感染あるいはワクチンによる免疫既獲得者に対する生ワクチンによる重ねての免疫の投与が安全に行われることは医学的にも正当であり、またこれまでに世界的に広く行われていることでもあります。また、多くの生ワクチンはウイルス抗原以外のワクチン液成分がほぼ同一であり、これまでにも異なる種類の単抗原ワクチン(例:麻しんワクチンと風しんワクチン等)を接種してきたことから、その安全性については既に証明されているところです。平成18年4月1日に行われた制度改正は麻疹および風疹対策を強化する事を目的としているものと考えられますが、一方改正によって免疫が付与される機会を失った子ども達が蓄積される可能性が残されることは、それぞれの子ども達の麻疹および風疹の感染予防、そして両疾患の今後の公衆衛生対策に大きな問題を残すものであり、早急な解決を要望するところであります。

 今回定期接種を1期(生後12〜24ヶ月)、2期(小学校入学前1年間)としたことも、麻疹風疹対策として正当なことと考えるところですが、法改正に関する周知徹底の遅れ、該当ワクチンの不足、その他の疾患罹患などやむを得ない事情により未接種となっている子ども達が、法施行日以降定期接種対象外となりいわゆる接種漏れ者のままとなっており、これらに対する何らかの対策設置が必要であります。施行日時点での年齢別ワクチン接種率は現在不明ですが、この年齢層(2歳以降、小学校入学1年前まで)では麻疹に関して各年齢の5〜10%、風疹に関し同じく20〜30%が、ワクチン未接種のままとなる可能性が国立感染症研究所感染症情報センターより報告されております。
 これらの子ども達に対して、一定期間の間に、麻疹および風疹に関する1回目の免疫を付与し、なおかつこれらの子どもたちを含めて等しく2回目の免疫付与の機会を留保しておくことは、それぞれの子ども達の麻疹および風疹の感染予防、そして両疾患の公衆衛生対策として重要であります。この点についても国あるいは自治体において何らかの措置をとって頂くことを強く要望致します。


(登録:06.05.09)


■■ 麻疹及び風疹の予防接種に使用するMRワクチンの安全性についての見解

平成18年4月20日

厚生労働省健康局結核染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 平成18年4月1日より麻疹及び風疹の予防接種について2回接種を導入するとともに、乾燥弱毒生麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を定期接種として採用したことは、我が国における麻疹及び風疹の対策の強化として大いに歓迎すべきことであることをこれまでに当学会としても表明してきたところです。
 さらに加えて、政令附則第2条の削除による2回接種の早期の実施、及び定期接種としてはMRワクチンを原則として勧めるが、状況に応じて麻疹及び風疹の単抗原ワクチンも使用できることとする省令改正が行われるのであれば、国内での麻疹、風疹及び先天性風疹症候群の排除が一層早まるとともに、各種の課題の解決にも結びつくものであると考えられます。
 2回接種の導入には、科学的知見に基づく既接種者への安全性を確認の上、実施されることとなっていますが、当学会における麻疹及び風疹の定期の予防接種に係るMRワクチンの安全性についての見解は以下のとおりです。

 自然感染あるいは生ワクチンによる麻疹、風疹などの免疫既獲得者(この中には免疫が成立しなかった者が極少数含まれる。)に対し生ワクチンによる重ねての免疫の投与が行われると 1)免疫のない者には免疫の成立 2)免疫の弱い者には免疫の増強 3)免疫を十分持つ者には無反応ないし弱い免疫反応のみが生じ、生体にとって不利な反応が生じることはなく、これらが安全に行われると考えることは医学的にも正当であり、また、これまでに世界的に広く行われていることでもあります。
 多くの生ワクチンはウイルス抗原以外のワクチン液成分がほぼ同一であり、これまでにも異なる種類の単抗原ワクチン(例:麻疹ワクチンと風疹ワクチン等)を接種してきたことから、異なるあるいは同一の生ワクチンを重ねて接種することについての安全性については既に証明されているところです。
 これまでにも学会、論文、あるいは研究班における発表などで生ワクチンを重ねて接種した効果と安全性に関する報告は多く存在します(最近発表された研究報告を代表例として別記します。)。
 したがって、麻疹及び風疹の定期予防接種においても、生後12〜24月及び5歳以上7歳未満の時期に、対象者にMRワクチンを2回接種することについての安全性については十分肯定しうるものと考えます。

別記

1)国内のデータ

  1. 5〜6歳児及び11〜12歳児への麻疹ワクチン、風疹ワクチンの2回接種の有効性と安全性
  • 厚生労働科学研究 新興・再興感染症研究事業「ポリオ及び麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究(H15─新興-21 主任研究者・加藤達夫)」平成16年度報告書(「麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究」高山直秀ら)
 麻疹及び風疹ワクチン接種歴が明らかな5〜6歳児、及び11〜12歳児の麻疹、風疹抗体(HI)を測定し、それぞれ抗体価が16倍以下の者にそれぞれのワクチンを再接種した。使用した麻疹ワクチンは北里研究所及び武田薬品、風疹ワクチンはこれら2社に加えて化血研であった。双方の抗体価の低い児では麻疹ワクチン、風疹ワクチンを同時接種した。
 再接種後1か月目に再度抗体価を検査したところ、麻疹ワクチンを再接種した6歳児34名中24名で、12歳児33名中29名で有意の抗体価上昇が認められ、風疹ワクチンを再接種した6歳児9名の全員、12歳児8名中7名で有意の抗体価上昇がみとめられた。いずれの接種でも発熱、局所反応など軽微な副反応のみ認めた。
  1. 2回目の麻疹ワクチン接種に関しての安全性の報告
  • 沖縄県における乳児への麻疹ワクチンの安全性と有効性の調査(沖縄県小児保健協会知念らによる調査、2006年日本小児科学会沖縄地方会などで発表):
 平成13年の沖縄における麻疹流行時に、月齢6〜11か月において麻疹接種を受けた572人の群(うち80%が1〜3歳の間に麻疹ワクチン再接種)と、受けなかった1438名の群(うち88%が1〜3歳の間に麻疹ワクチンを接種)を3歳児検診の際に比較。これまでの病歴(中耳炎、気管支炎、肺炎、喘息、口腔カンジダ症、下痢・消化不良、免疫不全、その他入院を必要とした疾患)につき比較したが有意差はみられなかった。
  • 厚生労働科学研究 新興・再興感染症研究事業「成人麻疹の実態把握と今後の麻疹対策の方向性に関する研究(H13─新興-8 主任研究者・高山直秀)」平成14年度報告書(「陸上自衛隊における集団麻疹予防接種について」岡部信彦ら):
 平成13年5月沖縄県の陸上自衛隊の部隊で麻疹流行があり、30歳未満の隊員509名が麻疹予防接種をうけた。そのなかの471名が接種前に抗体調査を受け、うち463名(98%)が既接種または既罹患者であったことが確認された。これらを含む接種者476名に接種当日から6週間後までの間副反応の有無の調査が行われたが、確認された副反応は発熱(12人)、接種部腫脹(14名)のみであった。

2)海外のデータ:

  • 先進国で2回接種スケジュールが確立するのは主に1990年代であり、それまでに殆どの先進国がMMRワクチンに移行しており、麻疹・風疹ワクチンの2回接種の安全性と有効性に関する海外の研究は主にMMRワクチンの2回接種の知見に基づく。
  1. 既接種者・既罹患者における安全性
  • カリフォルニアにおけるHMOの大規模データベース(約8500人)を使った研究では、4〜5歳時におけるMMRワクチン2回目の接種後1か月以内の重篤な副反応は確認されなかった(DavisらPediatrics, 1997:“MMR2 Immunization at 4 to 5 Years and 10 to 12 Years of Age: A Comparison of Adverse Clinical Event After Immunization in the Vaccine Safety Datalink Project”)
  • すでに麻疹、風疹に免疫をもっている米国大学生及びオーストラリアの小・中学校生徒に麻疹ワクチンまたはMMRワクチンを集団接種した複数の報告でも、発熱、発疹など通常期待される以上の副反応はみられず、その頻度は1回目の接種で期待されるより少ないことが確認されている(Chen et a. Vaccine 1991“Adverse events following measles-mumps-rubella and measles vaccinations in college students”ほか)。
  • 日本のMRワクチンおよび単抗原ワクチンはゼラチンを含まず、欧米で使われている安定剤としてゼラチンを含んでいるMMRワクチンよりもアナフィラキシーなどのアレルギー症状の出現頻度はより少ないことが推測される。この点からも、麻疹、風疹単抗原ワクチン、及びMRワクチンの2回接種は、海外において広く使用されているMMRワクチンの2回接種と同等あるいはそれ以上の安全性があると考えられる。

有効性:

  • MMRワクチンは既存の3つの単抗原ワクチンの株を単に混合させたものであり、MMRワクチン2回接種の結果から、各単抗原ワクチン及びその組み合わせであるMRワクチン2回接種の有効性は評価できると考えられる。MMRワクチンの2回目接種、及びMMRワクチンに追加したMRワクチンの接種により、集団として麻疹、風疹のいずれも抗体価は有意に上昇することが確認されている(Pebodyら.Vaccine. 2002. “Immunogenicity of second dose measles-mumps-rubella (MMR) vaccine and implications for serosurveillance”)。
  • 学校における麻疹集団発生でも2回接種者の罹患率は1回のみの接種者の罹患率よりも低いことが複数の研究により示されている(Vitekら Pediatric Infectious Disease Journal. 1999.”Increased protections during a measles outbreak of childred previously vaccinated with a second dose of measles-mumps-rubella vaccine”など)。
  • これらの2回接種の効果はMRワクチンにも期待される。


(登録:06.04.25)

■■ 21世紀の小児医療の展望と改革に向けて
2004年〜2006年日本小児科学会理事会活動報告
日本小児科学会
会長 衞藤義勝

 我国の医療界は大きな変革の時代を迎えております。少子高齢化の時代にあり、医療費の大幅な削減、医療制度改革、病院機能の改革、初期研修制度改革など様 々な変革の時代を迎えております。このような状況下で小児医療も大きな変革の波を受け、21世紀の新しい展望が必要であり、且つその改革のスピードは急務 を要します。日本小児科学会は、我国の小児医療の発展の為に大きな責任を持っております。今年度の4月の総会で学会理事会は任期を終了するわけであります ので、2004年〜2006年の2年間の理事会の業務報告をここに報告書としてまとめさせて頂きました。
  私は会長として2期4年間を努めさせて頂き、何とかこの大所帯の日本小児科学会を運営させて頂くことができましたことを、理事、代議員、会員の先生方に深く感謝申し上げます。この小冊子に、私共の理事会がこの4年間で小児医療の展望と改革に向けての事業として行ってきた主な事業20項目を、以下のようにまとめてみました。

  1. 事務局改革:
    事務職員の職制度の整備、意識改革、就業規則の見直し(定年制、給与体系の見直し等)
  2. 学会組織の整備:
    (1)部局制を引く
    (2)部長制度の導入、役割
    (3)委員会組織の見直し、委員会、プロジェクトチームの編成
    (4)医療政策室の設立(常設組織)
    (5)理事会諮問委員制度の導入(3〜4人)
    (6)幹事制度の導入
    (7)会長、副会長選出手順を定める
    (8)代議員の連携を進めるための連絡網の整備
  3. 小児医療提供体制の整備:
    (1)小児救急体制モデル案の作製
    (2)小児救急フォーラムの開催(年2回)
    (3)小児科学会小児救急ホームページの作製
    (4)小児救急連絡協議会の設立
    (2003年より、日本医師会、日本小児科医会、日本小児外科学会、日本小児救急学会、日本小児科学会、厚生労働省との定期会議、年4回)
  4. 診療報酬プロジェクトチーム:
    (1)小児科診療報酬の向上に向け監督官庁と討議
    (2)大学、病院小児科診療報酬プロジェクトチームの編成
    (3)包括医療改善プロジェクトチームの編成
    (4)厚生労働省、国会議員連盟との会合
  5. 少子化対策プロジェクトチームの設立:
    (1)小児科医会、日本保健協会との連携事業、提案書作成
    (2)日本産科婦人科学会との連携フォーラム、理事会の開催(帝国ホテル)
  6. 女性医師の環境改善プロジェクトチームの設立(2002年より)
    (1)女性医師の働く環境作りの為のフォーラムを開催
    (2)厚生労働大臣に要望書を提出
  7. 学術委員会の設立(2003年に立ち上げ):
    (1)学術総会の在り方検討
    (2)日本小児科学会賞の設立(2006年より、第1回川崎富作先生受賞)
    (3)学術セミナーの在り方検討
    (4)データーベースの作成
  8. 初期研修制度の充実プロジェクト:
    (1)初期研修手帳の作成
    (2)初期研修制度への提言
    (3)初期研修病院の指定の見直し
  9. 専門医充実プロジェクトチーム:
    (1)ガイドラインの充実
    (2)専門医研修手帳作成
    (3)認定医から専門医への移行
    (4)更新、認定費用の値上げ
  10. 予防接種、感染対策委員会:
    (1)麻疹撲滅運動(フォーラムの開催)
    (2)名称変更
    (3)ガイドラインの作成
    (4)チメロサールの除去の要望
    (5)ポリオ、インフルエンザワクチンの要望他
  11. 広報委員会:
    (1)ホームページの充実
    (2)記者会見の開催
    (3)作文コンクールの開催
    (4)こども健康週間の開催など
  12. 薬事委員会:
    (1)オーファンドラグへの取り組み
    (2)未承認薬への取り組み その他
  13. こどもの脳死臓器移植プロジェクト:
    こどもの脳死臓器移植への提言
  14. こどもの生活改善良委員会:
    (1)煙害の防止キャンペーン
    (2)テレビメディアへの警告
    (3)チャイルドシートへの提言
    (4)こどもの肥満防止
  15. こどものこころの問題委員会:
    (1)虐待防止委員会の設立
    (2)こどものこころに対するキャンペーン活動、フォーラム開催
    (3)病棟保育士の問題
  16. 国際渉外委員会:
    (1)国際小児科学会の日本誘致運動(メキシコ、2004年、今回2013年に向け努力)
    (2)米国小児科学会への相互参加、日米理事会の開催
    (3)アジア小児科学会との連携事業
    (4)ASPR(Asian Society of Pediatric Research)の設立(第1回日本開催)
    (5)日本―中国―韓国小児科会議開催(2003年)
    (6)米国―アジア小児科研究会議2008年ハワイ開催
  17. 和文誌、欧文誌編集委員会:
    和文誌の表紙の改定(2003年)審査方法の改定
  18. 全国小児医療連合会の開催(年1回)小児医療の連携
  19. 厚生労働省との定期協議開催(年2回、局長、各担当課長参加):
    重要案件の審議
  20. 国会議員との定期会議開催(自民党、民主党、公明党)

 以上、日本小児科学会の理事会がこの2〜4年間に手がけた20の主な項目について記載致しました。抜けている部分もあるかと存じますが、詳細に関しては各章をお読みください。各委員会、プロジェクトチームの理事、委員会委員長、委員、代議員、会員の先生方の絶大な御努力、御指導のお陰で大きな成果が挙がったものと感謝申し上げます。今後新しい理事会で、今回の理事会の積み残した事、多くの小児医療の問題点を改善し、大きな飛躍を願い、更なる期待を致しております。
  多くの会員の皆様の絶大なる御支援、有難うございました。


(登録:06.04.25)


■■ 国会議員との意見交換を開催
 

平成17年2月25日(金曜日)衆議院第二議員会館会議室において、公明党少子社会総合対策本部(本部長:坂口力前厚労相)と「少子化の課題及び小児医療を取り巻く現状と課題」についてのヒヤリング及び意見交換を行った。
 当学会から、衞藤会長、山城副会長、安田理事、中畑理事、藤村理事、五十嵐先生(東京大学)、横田先生(横浜市立大学)が出席し、公明党から神崎代表、浜四津代表代行、冬柴幹事長、坂口本部長ほか多数の衆参国会議員が出席された。
 議題として、(1)日本小児医療の問題点、(2)社会保険診療報酬改定の小児科要望事項、(3)小児医療提供体制の改革ビジョン、(4)小児科初期研修制度の改革の樹立に向けて、(5)(仮称)小児保健法に包含すべき内容、(6)病棟保育士の意義、(7)卒前及び初期研修医教育の現状と改善の方策について、(8)小児医療改善のための要望事項などについて当学会から説明の後、意見交換を行った。2時間にわたり活発に意見交換が行われた。

 平成17年3月10日(木曜日)衆議院第二議員会館会議室において、民主党医療問題プロジェクトチーム(座長:五島正規)、次世代育成支援(少子化対策)プロジェクトチーム(座長:水島広子)の合同会議と「少子化の課題及び小児医療を取り巻く現状と課題」について意見交換を行った。
 当学会から衞藤会長、山城副会長、別所理事、安田理事、大澤先生(東京女子医科大学)、五十嵐先生(東京大学)が出席し、民主党から五島正規衆議院議員、水島広子衆議院議員、足立信也参議院議員、岡本充功衆議院議員、ほか多数の衆参国会議員が出席された。
 2月25日(金曜日)公明党少子社会総合対策本部との意見交換における議題に女性医師の職域での環境改善についての要望を加え、当学会から説明の後、意見交換を行った。2時間にわたり内容のある意見交換が行われた。
  平成17年4月に自民党と同様の会議を予定している。

国会議員との意見交換を開催

 平成18年4月5日(水曜日)衆議院第2議員会館会議室において、自民党子どものこころとからだ危機突破議員連盟(会長:堀内光雄衆議院議員)と「少子化問題及び小児科医療の現状と課題」についてヒヤリングや意見交換を行った。
 当学会から、衞藤会長、山城副会長、安田理事、藤村理事、桃井総会議長、大澤理事会諮問委員が出席し、自民党から堀内会長、根本幹事長、上川政策幹事、佐藤事務局長、他多数の衆議院議員が出席された。
 議題として、
 (1)小児救急問題
 (2)少子化対策
 (3)診療報酬の確保
 (4)小児科医の確保
 (5)初期研修制度の確保
 (6)大学内小児病院&母子センター科への整備
 (7)保育、育児環境の整備
 (8)こどもの心の危機への対策
 (9)子育てへの経済的支援
 (10)思春期問題への支援
などについて当学会から説明の後、意見交換を行った。
 約2時間にわたり内容のある意見交換が行われた。


(登録:06.01.20)


■■ 米国小児科学会(AAP)75周年記念大会に参加して―新しい学会開催の在り方
日本小児科学会
会長 衞藤義勝

 今回米国のワシントンで開催されたAMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS(AAP)の75周年記念大会に招かれた。10月8〜11日の4日間首都ワシントンの国際会議場で約1万人を集めて盛大に開催され、第1日目はAAPのベルコビチ会長が基調演説をされ、子供が現在おかれている様々な問題(子供の心、事故防止など)を、また国際小児科学会会長のグレンジ教授が世界の子供たちのエイズ、結核、栄養障害など悲惨な状況を広く世界に啓蒙する演説をおこなった。非常に多くの演題があり、特に教育講演は充実しており、毎日数10のテーマについて20以上の会場でおこなわれ、それも早朝6時からプログラムがあるのには驚きであった。基調講演も毎朝8時から5つぐらいあり、それも臨床に直結して即利用可能な内容である。開業医を中心とした参加者は極めて熱心で、皆メモをとり討論も活発である。また、症例問題のようなセッションもあり、参加者がコンピュータとやりとりしながら進めている光景も日本では見ない形式である。画像診断の他、発熱、頭痛、痙攣などのありふれた症状から何を考えるかなど、たいへん面白い手法で症例問題を提示している。とにかく各人が真剣である。卒後教育の重要な一貫としての極めて興味深い企画が多い。最新の知見を十分に吸収できるシステムであり、一般的な応募演題がずらりとならんでいるのではなく、現在の小児医療の基礎からトピックスまで、その道の専門家が効率よく教えてくれるシステムなのである。
 第2日目の75周年記念祝賀会では、数千人が大ホールに集まり、記念演説、さらにはコメデイー、音楽など多彩な行事がおこなわれた。アメリカらしい夢にあふれたこの祝賀会には世界主要国の小児科学会会長、米国の著名な小児科医が多数招かれていた。大会3日目には昼食会が催され、AAP 75年間の歩みと役員の業績が紹介され、併せて新旧役員がスピーチされた。私の隣は彼の有名なヌーナン教授、75〜6歳ぐらいか、1968年にヌーナン症候群を報告した方である。優しい感じの女性で、現在もレキシントンのケンタッキー大学で活躍されている。AAPは開業医並びに大学・病院のgeneral pediatricianを中心とした学会で、我が国では日本小児科医会に相当するが、会員数は5万5千人と大変多く、日本小児科学会にあたるPediatric American Society(PAS)とは対象的に大変政治力を持っており、事務職員も400人、この内専任医師も5-6人と組織の巨大さを感じる。このためか学会の参加費も800ドルと日本の約8倍である。今回は米国小児科学会からの招聘で参加したので良かったのだが、もし日本から一般参加するとなると費用はかなり高くつく。話題を大会に戻すが、大ホールでは毎日多数の企業展示がおこなわれ、おそらく80社位か、沢山の人が大きなバッグに資料や記念品を山ほど入れて行き来してイベント会場のようである。ここは夕方になると会員懇親会と化し、和やかな雰囲気の中、メーカーが競ってワイン、ビール、スナックなどを提供している。また、驚いたことにここでは全米の小児病院がブースを出し、自分たちの病院の得意分野、特に肝臓移植、小腸移植、心臓移植などの実績をアピールして参加者に患者紹介を募っている。スタッフは参加者からの問い合わせに対応すべく美しいパンフレットを用意して常にブースで待機している。企業だけでなく、米国の小児病院・医療者間の競争の凄さを見せつけられる光景であった。
 今回のAAP出席はたいへん新鮮な経験となった。米国を模倣する必要はないものの、我が国の現状に即した新しい学会の開催形式を模索すべき時に来ていると思われた。
 今回のAAPの学会は皆大変熱心であり、多くの会員が参加し、特に最近の傾向としては高次脳機能障害(ADHD、LD、自閉症など)が重要な分野となり、こどもの心を如何に育てるかが最近の大きな課題となっている。演題の恐らく4分の1はこの分野の教育講演であり他は感染症、予防接種、アレルギーなどの演題が多い。教育を重視するやり方を日本の小児科学会にも取り入れる必要があると強い印象を受けた。又これからの学会のあり方で、会場の運営、演題の選定には大変細かい検討がなされた後があり、学会事務局が中心となり運営をしており、全米の数箇所(ワシントン、サンフランシスコ、シカゴ、ニューオリーンズ、ボストン)を回りもちで巡回しており、会長は一年の任期であるが、日本のように会頭の大学がお金を集める必要もなく、専任の事務局スタッフが400名以上いるので学会開催は慣れており、何回もプログラム会議が開かれ又事後の一つ一つの演題も会場の会員から評価されて、次回のプログラム造りに利用されている。今回AAPの学会に参加して、これからの日本小児科学会の開催方法に関して極めて重要な方向性を見出した気持ちである。日本小児科学会にも昨年から今後の学会開催のあり方を検討するためにプロジェクトチーム(委員長:杉本京都府立大学教授)を作り検討中である。日本でも他の大きな学会は最近まとめて開催する傾向にある。例えば、Child weekと称して、日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児救急学会、外来小児科学会などが集まり春に、また秋には小児科学会の各分科会、日本小児科学会セミナーなどが同時に1週間ぐらいかけて開催したらどうでしょうか?
 いずれにしても、今後のわが国の学会の方向性を模索する時代となり、今回のAAPの学会から多くのことを学んだ次第である。



(登録:06.01.11)


■■ タミフル(カプセル製剤)の適正使用に関する見解とお願い

2006年1月10日
日本小児科学会会長 衞藤 義勝

タミフル(カプセル製剤)については新型インフルエンザの発生に備えて、国・都道府県で2100万人分を備蓄することとされ、現在準備が進められてきているところです。しかし準備完了は早くても平成19年7〜9月となると見込まれており、この間の備蓄に関しては、一般に流通しているタミフルにも頼らざるを得ない状況となっています。この為、特に今シーズンについては、タミフルの適正使用を徹底し、備蓄を進めることが厚生労働省から要請されています。こうした状況に鑑み、日本小児科学会の会員の皆様にはタミフルの使用に関して下記の項目の遵守にご協力をお願い致します。

  1. できる限り迅速キットでインフルエンザと診断された症例に処方
  2. 発症後48時間以内の症例に使用
  3. 予防投与は適応症例即ち13歳以上のハイリスク者に処方すること。患者の同居家族または共同生活者で65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者、代謝性疾患患者、腎機能障害者にのみ処方

以上宜しくご理解の上御協力をお願い致します。



■■ トルコでの国際小児科学会理事会に参加して

9月11、12日に開催された国際小児科学会において
 左:Schaller総務担当理事(前会長)
 中:Dogramaci教授(国際小児科学会名誉会長)
 右:衞藤

 本年9月10〜13日、トルコのイスタンブールで国際小児科学会の理事会が開催されました。ナイジェリアのGrange会長、Schaller総務担当理事(前会長)Chok-Wan Chan 次期会長を含めた20人余りの理事が参加してイスタンブール郊外のヒルトンホテルで開催され、朝8時から夕方まで世界のこども達の問題、特にエイズ、結核、栄養障害のこども達の救済、戦争の被害を受けたこども達の支援等を含めて討議されました。また、国際小児科学会のこれからの運営方針、学会の規範作りなど細かい討論もされました。
 9月11日には、本会名誉会長でトルコの著名人であるDogramaci教授(91歳)夫妻による会長以下全理事を招聘しての夕食会がイスタンブールでも最高級のホテルで開催され、名誉会長の健在ぶりが印象的でありました。私も老教授とお話ししましたが、91歳には見えない矍鑠たる大人物でありました(写真)。Dogramaci名誉会長は小林登東大名誉教授とも大変御親交があつた方で、現在もなお国際小児科学会の運営に相当の影響力をお持ちのようです。
 さて、2013年の国際小児科学会を日本に誘致することは既に本年の理事会で決定されました。国際学会を誘致するには今後色々と政治的な運動もする必要があるとは思いますが、同学会の誘致が我国の小児医療の益々の発展に少なからず寄与することを願っています。開催国は2007年のアテネでの国際小児科学会において選出される予定です。現在の情報ですと少なくとも5〜6カ国が立候補するとのことで、Dogramaci先生のお膝元トルコも立候補予定と聞き、誘致成功には可成りの努力が必要なものと覚悟しなければなりません。このためにも若い小児科医の強力なエネルギーが必要です。国際的にも通用する人材を学会は率先して養成するべきでしょう。機関銃のように英語が飛び交う中でも語学力は勿論、学問的にも存在感を示せることが大切なのです。世界にアピールできる若い力の必要性は何も小児科学会・医学会に限ったことではなく、大きくは国連安保理常任理事国入りを目指す国際政治の舞台においても不可欠となっているのではないでしょうか。世界で羽ばたく小児科医の育成に、日本小児科学会としても今後更なる努力を惜しまず、一致協力して邁進できることを心から願ってやみません。

日本小児科学会
会長 衞藤義勝


(登録:05.11.30)


■■ 日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
(平成17年11月30日)

平成17年11月30日
社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 日本小児科学会はタミフルに関して予防接種・感染対策委員会にて討議した結果 下記の通りの見解を表明する。

 米国FDA(Food and Drug Administration)が発表した小児死亡例(いずれも日本における発症例で、平成17年11月日本小児感染症学会で報告された例も含まれている。FDAは、タミフルと報告された小児死亡との間に因果関係があるとは結論づけられない、との見解を示している)について、検討を行った。

 得られた資料に記載されている死亡例に生じた事象は、タミフル未使用のインフルエンザにおいても国内外で同様の事象(急性死、精神/神経症状、脳症/脳炎症状、心筋炎、肺水腫、肺炎等)がみられるもの、あるいはインフルエンザによって基礎疾患が悪化した事象と考えられ得るもの、あるいは医学的資料が不十分で検討ができないものなどであり、現時点でタミフルとこれらの死亡についての因果関係が明らかなものはなかった。
 我が国におけるタミフルの添付文書には、重大な副作用として精神・神経症状の記載が平成16年5月より追加されている。添付文書における副作用の記載は、一般に、治験によって得られた有害事象等の検討に基づいたものに加えて、市販後調査によって医師から提供された情報についてその因果関係を否定することが困難であるものも含め、厚生労働省担当部局とメーカーの協議に基づき、予防警告的な意味合いを持って適宜追加記載されているものである。
 従って医学的因果関係が明らかになったものだけが含まれているわけではないという理解のもと、今後も我が国において十分な市販後調査が継続され、その結果が国内においても適切に公表されることを望むものである。

 一般診療におけるタミフルの使用については、従来通り投与の適応や症状の経過観察等への注意が必要であるが、現時点ではその使用に対して改めて注意勧告などを行う状況ではないと考える。

以上

参考:

  1. 米国の小児諮問委員会の提出資料
    http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/oc05.html#Pediatric
  2. 厚生労働省のリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)に関するQ&A
    (新型インフルエンザに関するQ&AのIVとして掲載)
    http://www.mhlw.go.jp/
  3. 医薬品・医療用具等安全性情報 No.202
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0624-2/index.html


(登録:05.09.26)


■■ 予防接種(日本脳炎ワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン)の変更およびそれに関連する麻疹、風疹ワクチン勧奨と接種控えの問題について

 予防接種法施行令の一部を改正する政令、予防接種法施行規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令が、平成17年7月29日に厚生労働省から公布されました。

 主な改正点は
1)平成17年7月29日より、日本脳炎ワクチンの定期接種第3期の中止
2)平成18年4月1日より麻疹ワクチン、風疹ワクチンの接種方法、接種スケジュールの変更(2回接種法の導入、MR混合ワクチンの採用)
です。

 麻疹、風疹の接種は、1期、2期の2回接種となり、いずれも麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)のみが使用されることになります。
 1期の接種期間は「生後12月から生後24月に至るまでの間にある者(すなわち1歳児)」
 2期の接種期間は「5歳以上7歳未満の者であって、小学校就学の始期に達する日の1年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にある者(すなわち小学校入学前年度の1年間(4/1〜3/31))」となります。

 2期のMRワクチン接種を受けられるのは、現時点では1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)であることが原則の考え方となりますが(*)、今後、その安全性・有効性が確認されれば、麻疹単味ワクチン、風疹単味ワクチン既接種者への2期のMRワクチン接種の導入が予定されています(**)。
 なおそれまでに「麻疹ワクチン、風疹ワクチンのどちらも未接種」かつ「麻疹、風疹のどちらも未罹患」の者は2期の対象年齢に1回目の接種として受けることができます。

 「麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができない、との経過措置があります(***)。
 また「麻疹または風疹にかかった者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができないことも明記されています。これについては、今回の改正によるものではなく、予防接種法施行令第1条の2に既に記載されている「当該疾病にかかっている者又はかかったことのある者(インフルエンザにあっては、インフルエンザにかかったことのある者を除く。)その他厚生労働省令で定める者を除く。」ことによるものである、と説明されています。
 これらの対象者には、任意接種の枠組みで、自治体の公費負担で受けられるようにとの自治体への要請(通知)が厚生労働省結核感染症課より出されています。この任意接種によって万一の健康被害が生じた場合、医薬品医療機器総合機構法に基づいて被害救済がなされることになり、担当接種医については故意または重大な過失がない限りその責任を問われるものではありません。

 これまでに麻疹については1歳のお誕生日をすぎたらなるべく早く麻疹ワクチン接種を(生後12〜15ヶ月を標準に)、そして麻疹ワクチンが終わったらそのあとには風疹ワクチンを、というキャンペーンを各方面で熱心に実施して頂いているところです。その効果は最近の麻疹罹患者の著しい減少として現れています(国立感染症研究感染症情報センターホームページ)。麻疹・風疹対策の基本は、幼児早期でのワクチン接種率を高めることであり、これによりこの年齢層の罹患者数を抑えることが先ず第一であることには変わりありません。
 従って平成18年4月1日からの制度改正までは、これまで通り、その間の対象者には、速やかに接種をすすめることが必要です。ことにこれまでに未接種となっている対象者や、平成18年4月1日以降で2歳以上になってしまう子どもたちには、麻疹・風疹の早期予防として、平成18年3月31日までに麻疹、風疹の単味ワクチンをそれぞれ接種しておくべきと考えられます。
 今単味ワクチンの接種を受けてしまうと2期のMRが受けられなくなる、またまもなくMRが実施になるので今2回を接種する必要はなく4月まで接種を控えてはどうか、という考えもあるようですが、現時点で麻疹風疹ワクチンの接種を控えることは、両疾患に対する感受性者が増加することであり、疾患予防の観点からは勧められません。ただし、3月になり4週間間隔の生ワクチンをそれぞれ2回接種する時間がなくなった時には、流行状況などをみながら4月のMR出現を待つのはやむを得ないことと考えられます。

 この時に問題になるのが、(*)2期のMRワクチン接種を受けられるのは、1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)が原則であること、そして(***)麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者は、定期接種として他方のワクチンを受けることができない、との経過措置ですが、これについては厚生労働省による研究班を立ち上げ、なるべく早く単味麻疹、および単味風疹ワクチン接種者へのMRワクチン接種が問題ないことを確認しようとする計画が動いています(**)。これらの研究の結果、この方式による効果と安全性が明らかになれば、経過措置は速やかに外されることが厚生労働省結核感染症課より言明されているので、平成18年3月末までにそれぞれのワクチン接種を受けた人が2期接種の対象年齢になった時にMRワクチン接種ができなくなる可能性は極めて低く、将来の2期接種を考慮して現時点での単独ワクチン接種を控えることは得策ではないと思われます。
 なおこの研究について日本小児科学会予防接種感染対策委員会は全面的に協力する姿勢を表明しています。

 今回の予防接種の変更によって、麻疹・風疹ワクチンの2回接種方式およびMRワクチンの導入が図られたことは高く評価されますが、その詳細については日本小児科学会の意見が反映されていない部分もあり、また実施にあたっての問題点が各方面から指摘されているところです。
 日本小児科学会予防接種感染対策委員会では、麻疹および先天性風疹症候群の制圧(elimination)に向けて、より良い方法への改善について今後も提言を続けて行きますので、会員のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

参考資料:
麻疹および風疹定期予防接種新制度の概要(平成18年4月1日施行)(PDF)
平成18年4月1日からの予防接種スケジュール表(PDF)
(資料作成:国立感染症研究所感染症情報センター)



■■ 水痘ワクチンの定期接種化に関する要望書

平成17年7月24日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人 日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

 水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染により水疱、発熱を主症状とする小児期によく見られる急性疾患である。感染力は麻疹同様に強く、10歳までに約90%の小児に感染する。健康小児では発熱とともに掻痒による不快感が強く我国では多くの例で抗ウイルス薬のアシクロビルが用いられている。成人水痘は重症化しやすく死亡率も高い。合併症として頻度の高いものは、水疱部位の細菌性2次感染症で1〜4%にみられ、劇症型A群連鎖球菌感染症や敗血症などの全身性致死的疾患に進展することもある。中枢神経系の合併症としては、髄膜脳炎や小脳性運動失調症があり、発症頻度は水痘1,000例中1例近くといわれる。約80%は回復するが、後遺症を残す例、死亡例(本邦推計:年間20〜25例、人口動態統計:平成4〜15年103例)も存在する。
 本症は水痘生ワクチンで予防できる。1974年、我国で開発された弱毒ウイルス岡株はWHOに認められ世界で唯一、ワクチン産生用として評価が定まっており、我が国のみならず欧米でもワクチン産生用に用いられ水痘ワクチンとして100カ国以上で認可・使用されている。本ワクチンの有効性、安全性は国内外の報告で確認されており、我国では1987年以降、任意接種として健康小児に用いられている。しかし、任意接種であるがため、これまでのところ接種率は約30%程度にとどまっており水痘の疫学状況を変えるまでに至っていない。一方、米国では1995年以降、岡株ワクチンを定期接種化し2003年には接種率は85%に達し、水痘流行の減少、水痘関連死亡・合併症の減少、水痘による入院・入院費用の減少などの効果が明らかになっている。
 本ワクチンの問題点として、ワクチン被接種者の中で、後に10〜15%で水痘罹患が見られることが挙げられている。しかし、その臨床像は、発疹の数が50個以下の軽症例であり、中等症・重症の水痘は完全に防止することができる。米国ではこのことが重視されている。
 しかし一方、ワクチン接種率が中途半端な程度にとどまると成人における水痘を増加させる恐れがある。また接種率が今より向上し自然水痘が少なくなれば被接種者においてブースターがかからなくなり、ワクチン接種を受けた人が、後に免疫が薄れた頃、水痘に罹患するケースが増加することなどが言われている。これらの点は、まさに麻疹ワクチン、風疹ワクチンなど生ウイルスワクチンに共通の問題で、接種率を90%以上に維持する努力、将来的には2回接種法の導入などで解決される問題である。
 以上のように水痘ワクチンの定期接種化により、1)水痘流行の減少・排除、2)関連死亡・合併症の防止・減少、3)水痘発症者に対する、種々の医療費の減少などによる良好な対費用効果、さらには4)水痘罹患後にみられ、年長者や老人を悩ませる帯状疱疹発症の防止も期待できる。このように水痘ワクチンの定期接種化は小児のみにとどまらず、国民全ての人々に有益であり、公衆衛生的、医療経済的にも意義が高いものである。
 前回の予防接種法改正時ならびに今回の「予防接種に関する検討会」でも定期接種化について委員の合意が得られているワクチンであり、日本小児科学会として改めて水痘生ワクチンの定期接種化を強く要望するものである。


(登録:05.06.30)


■■ 病院小児科医の将来需要について

(登録:05.06.30)


■■ インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書

平成17年6月26日

厚生労働省 医薬食品局
審査管理課長 川原 章 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書

Hib感染症は小児にとって国内外において比較的発生数の多い小児感染症の一つであり、中でもHib髄膜炎および敗血症は重篤な疾患として小児の健康上大きな問題であります。しかし本感染症は海外においてワクチンが開発実用化されており、ワクチンによる予防可能な疾患となってきております。諸外国においてはHibワクチンを導入する国が増加しており、導入した国ではHib感染症は稀な疾患となってきております。

一方、わが国ではHibに関する疫学データーが整い、ワクチンに関する治験も終了しているにもかかわらず、未だHibワクチンが使用できない状況にあり、毎年5歳未満人口10万人あたり少なくとも8.6〜8.9人、すなわち年間500人以上の子どもたちが自然感染としてのHib髄膜炎に罹患しています。抗菌剤による治療にもかかわらず、これらの患児のうち約5%(毎年25人以上)が死亡し、約25%(毎年125人以上)に永続的な神経学的後遺症が残っております。Hib髄膜炎は一度罹患すると予後不良の経過をとる割合が高く、抗菌剤が有効であっても発症後の治療には限界があり、罹患前の予防の重要性が強調されるところです。近年ではさらに、抗菌剤に対するHibの耐性化が急速に進展してきており、Hib感染症が更に難治化する傾向にあります。また、Hibは飛沫感染により伝播することから、早期保育など乳幼児における集団生活機会の増加により、小児がHib感染症に遭遇する機会が増加してきており、感染者の増加が危惧されております。

このようなHib髄膜炎の現況を鑑みますと、小児の健康を守る立場として、当学会はHibワクチンによる感染予防が我が国においても可能となる時が一刻も早く来ることを強く望んでおります。

 Hibワクチンは1980年代後半から海外において広く使われ始め、既に約20年間の使用実績があります。WHOは本ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、1998年に世界中の全ての国に対してHibワクチンを定期接種に組み込むことを推奨しております。その結果、1998年以降、世界各国おいて定期接種化が進み、現在ではアジアやアフリカの国々を含む100カ国以上で広く使用されております。またHibワクチンを導入した国々では、明らかにHib感染症が激減しております。
海外での長年にわたる、そして多くの国々での使用実績、および国内での治験成績から、Hibワクチンの有効性と安全性は現在国内外で使用されているワクチンと比較して遜色のないことが明らかであり、当学会はHibワクチンを安全で優れたワクチンであると評価しております。また、本ワクチンはその製造過程でウシ由来成分が使用されていることからこれに伴うプリオン伝搬の問題が極めて稀ながら理論上のリスクとして他ワクチンと同様にあること、厚労省ワクチン問題検討会に於いて参考人である研究者よりHibワクチンに含まれるエンドトキシン量がDPTワクチン等よりも多かったとするデーターを発表したことなどについては当学会は承知しておりますが、現在の国内小児がおかれているHib感染症のリスクと、プリオン伝搬あるいはエンドトキシンが含まれることによって生ずるかもしれない理論上の稀なリスク、そしてワクチンによって受けるベネフィットを勘案すれば、Hibワクチンの使用によって、小児の受ける利益は遙かに高いものであると考えております。

しかしながら、我が国においてワクチン関連企業による使用認可に関する申請が、国に対してなされてから既に2年以上が経過しているにもかかわらず、その理由が明確ではないまま審査が遅々として進んでいない状況にあると聞き及んでおります。依然Hib感染症が日本に住む小児に与えている健康障害の存在、WHOによるHibワクチン定期接種化の推奨、海外における同ワクチンの使用実績および国内治験成績などから、わが国においても小児に対してHibワクチンが速やかに使用出来るようになる事は、小児の健康を守ろうとする当学会の強い願いであります。一方このままの状態が続き本ワクチンの使用機会を逃すことが今後もさらに続くようでは、新たな社会問題となることも危惧されます。
わが国においてHib感染による健康被害がこれ以上存続しないよう、日本小児科学会はHibワクチンの導入に向けて迅速な審査が執り行われることをここに要望します。




(登録:05.06.30)


■■ 麻疹及び風疹定期予防接種の2回接種の導入および
その接種スケジュールについての要望

平成17年6月26日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

麻疹及び風疹定期予防接種の2回接種の導入および
その接種スケジュールについての要望

 感染症発生動向調査によれば、過去10 年間には年間約1〜3万人の麻疹患者が報告されてきましたが、各方面の理解と努力により平成15 年は8,285 件、平成16 年は1,554 件(暫定値)と、患者報告数は減少傾向にあり、推計値も数年前における年間20−30万人から、年間1−2万人まで減少しております。しかし、すでに麻疹Eliminationをほぼ達成した米国、韓国等と比較すれば、依然として、数多くの患者が発生している状況にあります。このため、今後も麻しん予防接種の一層の推進に各関係機関、関係者が努力すべきであります。一方、患者数減少に伴い野生ウイルスによるブースター効果が弱まり予防接種によって付与された免疫力の低下が今後生ずることが予測されること、及び接種率の増加に伴ってprimary vaccine failure も蓄積されることから、さらなる麻疹発生数の減少のためにはWHOが推奨する高い接種率の維持に加えて複数回のワクチン接種を導入することを、我が国においても実施する段階に達していると考えられます。
 風疹の予防接種は、風疹流行を阻止し、妊婦感染を防ぐという考え方に基づき、現在「生後12 月から生後90 月に至るまでの間にある者」を対象に接種が行われています。この制度への経過措置として、昭和54 年4月2日から昭和62 年10 月1日生まれの者は、平成15 年9月30 日までは定期予防接種の対象とされました。しかし、経過措置対象者を中心に若年成人の間で風疹抗体を持たない者が少なからず存在しており、いったん風疹が流行した場合にはその影響を受けた先天性風疹症候群(CRS)の発生が懸念されています。平成16 年にはCRSが年間10 例報告され、風疹対策の強化が行われているところです。CRSの発生阻止のためには、流行の発生を阻止すること、すなわち風疹の排除が不可欠です。麻疹と同様、わが国においても風疹排除を目標としてさらなる対策の強化を図るべきであり、このため、麻疹と共に風疹予防接種の2回接種を導入し、より強固な集団免疫の獲得を目指す必要があると考えられます。
 これらの点から、当学会は国の提案である麻疹・風疹ワクチンの定期接種としての2回導入について全面的に賛成するものであります。
 しかしその実施に当たり、国の提案される1期月齢12-18ヶ月、2期就学6ヶ月前の短い期間に限定することには、強く反対するものであります。その理由は、極めて狭い範囲のみ定期接種と限定することは、その範囲における被接種者数は現在よりも向上することが期待され、またそのように努力すべきであることは理解されますが、一方では、狭い期間に限定された範囲では医学的理由などから接種できなかった者、うっかりを含めて接種漏れとなった者などの感受性者の集積、そしてその間での麻疹の発生の持続が危惧されるからで「子どもに対して優しい」感染予防対策と言えるものでは到底ありません。またWHOは、elimination達成のためには、免疫保有95%以上の維持が必要であるとしていますが、この目標への到達も国の提案方式では困難になることが予測されます。ことにelimination達成には多くの国ではある時期での一斉投与(catch up campaign)が必要であるとされますが、我が国では制度上これを行うのはおそらく困難であると考えられ、したがってeliminationを目標とする以上、定期接種での高い接種率の維持をいかに実施するか最大限配慮していく必要があります。
これらの点より実施にあたって、国案に代わり以下の提案を致します。

1. 麻しんおよび風しんワクチンの接種においては、予防接種法施行令で定める対象者は、1期月齢12ヶ月-24ヶ月に達するまで、2期月齢60ヶ月-90ヶ月に達するまでとし、1期は12-15ヶ月の間に、2期は就学6ヶ月前から就学までの間に終了することを強く勧める。
2. これらの接種を、何らかの理由で接種し損ねていることが判明した場合、保護者および接種者がこれを受けやすくできるような方策を配慮し、麻疹elimination の方針を尊重する。
3. 接種にあたっては、1)現在承認申請中の麻しん・風しん混合(MR)ワクチンを2回接種、2)麻しんワクチンと風しんワクチンを同時に接種、3)麻しんワクチン接種後27日以上あけて風しんワクチンを接種する などの方法が考えられ、保護者による選択を当面可能にする。
4. 未接種者のチェック、それらに対するワクチン接種機会の提供は、1歳半健診、就学時健診および就学時などを最大限活用する

以上、日本小児科学会は我が国および世界における重要な課題である麻疹、風疹対策の一環として、上記の4点を我が国に於いて実施にあたっての考え方として検討して頂くことを要望いたします。


(登録:05.06.30)


■■ 日本脳炎予防接種第3期の廃止についての要望書

平成17年6月26日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

日本脳炎予防接種第3期の廃止についての要望書

 近年、わが国における日本脳炎患者は、年間報告数は10例以内で、主として50歳以上の中高年齢者が占める割合が高く小児における発症はきわめて少なくなりました。この要因は、これまで広く行なわれてきた小児への日本脳炎予防接種や環境改善によりウイルスを保有した蚊の吸血を受ける機会が激減したなどが考えられています。しかし、日本脳炎は発症した場合重症化することが多い疾患であることに変わりはありません。
今回、国より日本脳炎予防接種第3期の廃止についての提案が行われましたが、その根拠として、現在の日本脳炎の発生状況および予防接種の普及状況の中で、第3期予防接種の接種率は40〜50%と低いこと、多数の第3期予防接種の未接種者が存在しているにもかかわらず10歳代の発症者は過去22年間で1名のみときわめて少ないことがあげられています。また、全国の年齢別抗体保有調査(感染症流行予測調査)では、第3期予防接種による追加免疫効果は明らかではなく、第3期予防接種の効果を積極的に肯定する根拠に乏しいと述べられています。
厚生労働省によって開催された日本脳炎ワクチンに関する専門家ヒヤリング(平成16年)、ワクチン問題検討委員会(平成17年)において、日本脳炎ワクチンの我が国における必要性については基本的にコンセンサスが得られたものと聞いておりますが、当学会もこれに賛同するものであります。一方、3期廃止に関しては後者の委員会において議論が行われたものの、時間的にも内容的にも十分に議論が尽くされたとは言えず、コンセンサスが得られている段階ではないことが中間報告議事録に記されております。
当学会は、日本脳炎ワクチンの必要性を認識しつつも、接種回数が少なくかつその効果が担保されるのであれば、偶発的なものを含め予防接種に伴うことがあり得るとされる事故を少しでも回避する意味で、3期廃止に必ずしも反対意見を述べるものでありませんが、現段階でこれについて決定を下すことは早計であると考え、以下の点について科学的議論を深めた上で最終判断をされることを要望します。
1. 3期接種の有無による抗体の維持、ブースター効果の有無の影響などについて、ワクチン接種群、被接種群における比較データーの明示
2. 3期接種廃止は現行のマウス脳由来ワクチンによる方式に基づいた提案であるが、導入が期待されているベロ細胞由来ワクチンにおいて、共通する問題であるか否かの明示。すなわち現行の3期廃止案はマウス脳由来ワクチンのみの問題であるのか、ベロ細胞由来ワクチンにおいても同じ問題であるか否かの明示
3. 基礎免疫接種者つまり第1期日本脳炎ワクチン接種者、第2期日本脳炎ワクチン接種者の接種率を高く維持するための方策の明示

以上、日本小児科学会は、我が国における重要な課題である日本脳炎対策として提言されたワクチン接種スケジュールの変更案に対して、上記4点を検討された上で判断されることを要望します。



(登録:05.06.27)


■■ 国による日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて
―日本小児科学会コメント

日本脳炎とその流行状況について

日本脳炎は国内では1960年代前半まで年間2000-4000人の報告数がありましたが、日本脳炎ワクチンが導入された1970年代より激減し、1992年からは年間10人以下の報告となっています(感染症法第4類全数把握疾患)。その原因として、日本脳炎ワクチンの普及による免疫保有者の増加の他に、環境要因の変化として多くの人にとって日本脳炎ウイルスを保有するブタを刺した蚊に刺される機会が少なくなった、つまり感染源との接触の機会が減少したことなども要因のひとつと考えられます。
日本脳炎を発症した場合、積極的な治療法はなく、発症者の20-40%が死亡、生存者の 45-70% には精神神経学的後遺症が残り、ことに小児では重度の障害を残しやすい、とされています。一方日本脳炎ウイルスに感染しても日本脳炎を発症する人は少なく(100-1000人に1人)、また人から人へ感染することはありません。
現状のように患者数が少なくなっている状態でかつ多くの人の間で免疫がある程度維持されていれば、感染者数や発症者数が今すぐ容易に増大することはないであろうと予測されていますが、それはこのような要因を考慮してのこと考えられます。
 自然界の中で動物がウイルスを保有し蚊がそれを媒介するため、環境からウイルスを駆逐することは極めて困難です。また予防接種が不活化ワクチンであるため、免疫の持続は長期間に及ぶものではありません。したがって痘瘡(天然痘)やポリオ、麻疹などと異なり、たとえどんなにワクチンの普及に努めても、疾患やウイルスの根絶を目標にすることはほとんど不可能と考えられます。
 水田耕作・蚊(コガタアカイエカ)の存在・ブタ飼育という共通性を持ったアジア地域では、日本脳炎は広範囲に常在する重大疾患とみなされています(急性脳炎の実体は不明の地域が多い)。

日本脳炎ウイルスの生息状況

国内に於いて患者数は減少しましたが、ウイルスの感染を受けているブタは北海道・東北地方を除いては数多く、ことに西日本以南ではブタの感染状況は調査対象の80-90%に達している地域が多いことが明らかになっています。また、ヒトの間で日本脳炎として発病はしていないもののウイルスの感染を受けている不顕性感染者は少なくとも数パーセント存在することも明らかになっています。
したがって日本脳炎は国内においては依然、潜在的な危険性を持つ感染症であり、何もしないままであれば感染者そして発症者がやがて増加する可能性をはらんだ、いぜん油断することは出来ない感染症であると考えられます。

日本脳炎ワクチン

現在使用されている日本脳炎ワクチンは我が国で開発され、WHOにより唯一その安全性と効果が承認されているワクチンで、アジアで広く使用されているものです(中国の一部では生ワクチンが国内で使用されている)。日本脳炎ワクチンは、マウスの脳内に日本脳炎ウイルスを接種しこれを採取、精製しワクチンとしたものですが、現在のワクチン液の中には、マウス脳成分としてのタンパク質は検出限界以下となっています。しかし、マウス脳を原材料としているところから、その微少な成分による脳アレルギー反応すなわち脳細胞に脱髄が極めて稀に生ずるかもしれないという理論的リスクが払拭されないままとなっています。この理論的リスクを回避するために開発されたのが、マウス脳細胞を使用しない組織培養細胞(ベロ細胞)由来の日本脳炎ワクチンです。ベロ細胞由来の日本脳炎ワクチンは、これまでの成績では安全性と効果に関してマウス脳由来のワクチンと同等またはそれ以上とされ、国内ワクチンメーカーにより製造承認の申請が行われていると報道されています。

急性散在性脳脊髄炎(Acute disseminated encephalomyelitis: ADEM)について

急性散在性脳脊髄炎(Acute disseminated encephalomyelitis: ADEM)とは、感染症、あるいはワクチン接種を誘因として自己免疫性の機序で発症するのではないかと考えられている、小児に稀に生じる原因不明の炎症性脱随性疾患です。診断後はステロイドによる治療が行われますが、その予後は比較的良好とされています。
最近の全国レベルでの調査(宮崎、多屋、岡部らによる中間報告)では、我が国に於けるADEMの発症頻度は年間50-60例程度、15歳以下の小児人口100万人あたり年間2-3人の発生であると推計されています。宮崎らによる94-95, 99-01, 01-02年に於けるAND(小児急性神経系疾患)調査では、国内約10地域より59例のADEM(ほとんどは原因不明)の報告があり、発症のピークは6歳前後で、全治19%、軽快66%で死亡例はなかったと報告されています。

日本脳炎ワクチン関連との可能性が疑われワクチン接種後の健康被害救済対象となったADEM例

日本脳炎ワクチンは、マウス脳を原材料とするその製造方法から稀ながらADEMを生ずる理論的リスクがある、といわれているところから、我が国では潜伏期間と考えられるワクチン接種後10-14日(4-21日)後に神経症状が現れ著しい健康被害が生じたとして救済申請がなされた場合には、厚生労働省予防接種健康被害認定審査会において審査が行われ「予防接種と疾病との因果関係について肯定する明確な根拠はないが通常の医学的見地によれれば肯定する論拠がある」にあたるとして、被害救済の対象となっています。
日本脳炎ワクチン関連で生じた可能性が否定できないとして健康被害が認定された例は平成元年度以降これまでに今回の症例(山梨県)を含めて14例(うち重症例5例)であり、年間およそ1例以下の認定となります。ただし、この2年間で救済を求めた件数は、6件に増加しています。
なお、被害救済とは別に、医師等による副反応報告(報告であり、詳細についての医学的評価はされてない。予防接種後の有害事象を広く報告する制度)がありますが、平成6年度からこれまでに21例の報告があります。平成15年度は6例、平成16年度には3例の報告であり、これも近年平均数を上回る傾向にあります。

厚生労働省の今回の「国による日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて」は、新たな科学的根拠が判明したわけではありませんが、理論的リスクとしての疑いが払拭されない中で重症例が出現したということで、より慎重を期するという行政判断から、次世代の日本脳炎ワクチン(ベロ細胞由来:マウス脳由来による神経アレルギーの発現があるかもしれないという理論的リスクは回避される)に切り替えられるまでの間、一時的な措置として積極的な勧奨(ほとんどすべての子供に接種を呼びかける)を控えたものと説明されています。

今後の対応に関する小児科学会のコメント

日本脳炎は潜在的危険性を持つ重症感染症であることには変わりがなく、日本にとって長い目でみて今後も必要なワクチンであると考えられます。しかし、ヒトからヒトへと感染が次々と広がる可能性はないこと、都会生活者が多いという現在の生活形態から多くの子供たちにとって感染のリスクが高いわけではないこと、急性脳炎としての顕性発症率は低いこと、などから、稀な副反応を危惧するのであれば、短期間(1年前後程度)広汎な接種はすすめずに、次世代ワクチンの出現を待ってもよいのではないだろうかと考えます。ただし、蚊に刺されないよう注意をすることはこれまで以上に行うべきです。なお日本脳炎ウイルスの媒介蚊であるコガタアカイエカは、夕方以降ヒトを刺す習性があります。
 一方感染リスクの高い生活環境にある子どもである場合(ブタにおける日本脳炎ウイルス感染が高い地域での郊外生活、あるいはそのような地域での長期滞在、アジア地域への長期滞在{ことに雨期}など)には、稀な理論的リスクより感染リスクによる健康障害の可能性が高くなるので、小児科医として個別に接種をすすめるという考え方は妥当であると考えられます。この場合、従来の日本脳炎ワクチン定期接種年齢の範囲であれば、従来通り定期接種として扱われます。それ以外の年齢では、これも従来通り任意接種の扱いです。
今回の国の決定は、「国による積極的な勧奨は控える」というものであり、日本脳炎を予防接種法による定期接種対象疾患から外したわけではありません。したがってこれまでの定期接種対象となる年齢の小児に対してinformed consentを得た上での日本脳炎ワクチンの接種は、費用の負担、万一の場合の事故の救済などについて、従来通り定期接種としてみなされることは国からの説明でも明らかです。したがって、定期接種としての年齢にある接種希望者に対しては、予防接種の実施主体である自治体は、これに対応すべき責務があり、適切な方法によって予防接種を行う限りは個々の接種医師の責任ではないことも従来通りであると考えられます。



(登録:05.04.01)


■■ 現行法における小児脳死臓器移植に関する見解

日本小児科学会(会長 衞藤義勝)
小児脳死臓器移植基盤整備ワーキング委員会
加藤高志、掛江直子、田辺功、杉本健郎、田中英高、橘高通泰、谷澤隆邦、
太田孝男(学会担当理事)、高田五郎(学会担当理事)、清野佳紀(委員長)

1 小児脳死臓器移植を治療法として評価する。現行法において小児の脳死臓器移植がなされる場合には、成人と同様に自己決定の原則に基づき臓器提供がなされるべきである。
2 疾病を有したり友人の死に接するなどして「生命」について考える機会を得た小児であれば、15歳未満であっても脳死臓器移植についての自己決定をなし得る。その自己決定を尊重することが、ドナーとなることを希望する小児の意見表明権を尊重することになり、また移植を待つ小児の利益にも資する。
3 小児が脳死や臓器移植について正確に理解したうえで、自由な意思に基づきドナーとなる旨の自己決定をなし得るよう、学校内外での教育・講習・小児の自由意思を確認するシステムを検討すべきである。
                                      


はじめに

我々日本小児科学会は、日常的に小児医療に携わる者として、小児であるレシピエントならびにドナーの双方に日常的に接している。それゆえ、小児の権利を擁護する立場から、現行法に基づいて小児脳死臓器移植を適正に進める為、次のとおり意見を述べる。


第1 小児脳死臓器移植の評価

我々は、昨年4月26日に表明した「提言:小児脳死臓器移植はどうあるべきか」において述べたとおり、小児脳死臓器移植を積極的に評価し、わが国においても、小児脳死臓器移植が適切に進められることを望むものである。
しかし同時に我々は、現行臓器移植法が、脳死を死と認める者が社会の半数程度であった法律制定当時の状況を踏まえ、脳死を死であると考えて脳死状態に至ったなら臓器を他人に提供したいと思う者の意思(自己決定)は尊重されるべきだという理念に基づき制定されたという事実を重く受け止めている。それゆえ小児の意見表明権の尊重と適正な小児の臓器移植のあり方について検討を続けるとともに、児童虐待の増加といった今日の社会状況を重視し、ドナーとなる小児の人権が適切に保障される体制整備を進めるべきだと考える。


第2 自己決定年齢について

現行の取扱いが、脳死段階での臓器提供の自己決定をなし得る者を15歳以上であると画一的に判断している点については、再検討すべきだと考える。疾病を有したり、友人の死に接するなどして「生命」について考える機会を得た小児においては、15歳未満であっても、「死」について正確な理解があり、また臓器を他者に提供することの意義や「脳死」についても真摯に考えている場合が多い。他方、15歳以上の者であれば未成年者であっても、常に当該問題について十分自己決定をなし得るという考え方は「フィクション」であり、「脳死」「臓器移植」に対する理解の程度は人によって様々である。
それゆえ、我々は、次項で述べるとおり、脳死や臓器移植についての理解(それは、脳死臓器移植について指摘されている問題点を含めての理解をさす)を図るため学校内外で教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考える。それらが満たされるのであれば、臓器提供を決定できる年齢を15歳以上とする必要はなく、少なくとも中学校に入学した後の児童(12歳以上)が意見を表明した場合には、その意思を尊重しなければならない。


第3 未成年者の自己決定権を尊重するための要件

 未成年者が適正に自己決定をなす為には、脳死臓器移植についての適切な教育と、自由意思の確認システムが必要である。

1 教育システムの必要性
   成人であれば自ら必要な情報を入手し、それに基づき脳死臓器移植のドナーとなる旨決定することは可能である。しかし、未成年者については、必ずしもそうではない。したがって、脳死・脳死臓器移植に関する適切な情報を提供する為、中等・高等教育の中で、死や臓器移植についての教育を行うべきである。またドナーカードに署名する前に脳死臓器移植に関する講習会(臓器移植ネットワークや日本小児科学会などが協力して提供することが望ましい)を受講させるなど、未成年者の自己決定について特段の配慮を払うべきである。
   なお、上記教育(死・臓器移植に関する情報)の内容は抽象的なものでは足りず、脳死については、身体は温かいなどの身体的状況の事実も含めて説明すべきであるし、臓器摘出については具体的にどのようになされるものなのかを説明する必要があると考える。

2 自由意思の確認
   学校教育において必要な情報提供を受け、脳死臓器移植に関する講習会を受講し、ドナーカードに署名をする選択を未成年者が行なった場合には、必ず自由意思によってドナーカードへの署名を希望している点を事前に確認する必要がある。
これは、学校教育という集団の中で判断を焦り、十分に理解をしていないにも拘らずドナーになる旨の判断してしまったり、周囲の意向に流されてドナーとなる旨を希望する可能性を否定できないからである。


第4  そのほか

 1 虐待隠蔽の防止
近時児童虐待が増加しており、小児科医にとっても、当該傷害が虐待によるものか事故によるものかの判別が容易にはつかないケースが多くなっている。そうであるなら、虐待を行った親自身が、当該小児がドナーとなることを希望していた(希望していたと推測される)と説明したり、当該小児の臓器摘出に同意・承諾するという事態が生じることも予測される。
したがって、第三者によるドナーの適切性の判断システムを構築することが不可欠である。この第三者による適切性の判断については、少なくとも小児科の専門医が立会い、小児ドナー候補者の身体的状態のチェック(虐待がなかったことの確認)を行なうことなどが求められる。これらの虐待隠蔽の防止に関しては、別稿にて具体的に提言する予定である。

2 小児レシピエントへの優先措置
小児ドナーから提供された臓器については、医学的適応が明確に否定される場合を除き、でき得る限り、小児レシピエントに対し優先的に移植されるべきである。小児ドナーの臓器が、成人ドナーによる提供臓器の不足を補うために利用されるのではなく、小児ドナーの臓器しか医学的に適応でない小児レシピエントのため優先的に用いられるという特段の配慮が必要である。

3 12歳未満の未成年者の意見表明権について
我々は、小児医療現場での経験から、12歳未満の未成年者であっても、適切な情報提供を行なうことにより、自らの状況を正確に理解し、意見を表明することが可能であると考える。また、わが国が1994年に批准した「子どもの権利条約」第12条に示されている「意見表明権」に鑑みれば、12歳未満の未成年者についても意見を表明する権利が認められているのであって、その意見をどのように尊重するか(当該小児の「脳死段階での臓器提供」意思を尊重し、親権者が承諾することで臓器摘出を認めるべきか)については今後も検討を続けていくべきだと考える。


以上述べたとおり、日本小児科学会は、小児脳死臓器移植を必要かつ正当な医療行為として評価する。同時に、脳死・脳死臓器移植に対する国民の理解を得ることが重要であると認識している。特に、未成年者に対する脳死、臓器移植の理解を深め、そのなかで適切に自己決定を行なっていくための基盤を整備し、その善意を尊重するための努力を続けていく必要があると考える。


(登録:04.12.24)


■■ 結核予防法の改正等に係る乳児へのBCG接種について要望書

平成16年12月19日

厚生労働省健康局
結核感染症課長 牛 尾 光 宏 殿

社団法人日本小児科学会
  会長 衞 藤 義 勝 

結核予防法の改正等に係る乳児へのBCG接種について
要望書

「結核予防法の一部を改正する法律の成立」に基づき平成16年10月6日「結核予防法施行令の一部を改正する政令」(平成16年政令第303号)及び「同法施行規則の一部を改正する省令」(平成16年厚生労働省令第148号)が公布されました。BCG定期接種については「政令で定める定期は、生後六月に達するまでの期間とする。ただし、地理的条件、交通事情、災害の発生その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合においては、一歳に達するまでの期間とする」とされました。BCG接種は生後直後から可能で、生後6カ月までが結核予防法による接種(定期接種)であり、以降は特別な事情を除き任意接種となる、とのことであります。乳児の比較的速い時期におけるBCG接種率を高め、小児における結核予防対策を強化するという点で、基本的に賛成するものであります。
 これまでもBCG接種は、接種開始時期は生直後から可能とされておりますが、我が国では、「免疫不全児への生ワクチン接種を避けるために新生児期は避け、標準接種時期を生後3カ月から1歳までとする」としてきました。
 BCGの早期接種、接種率の向上により結核対策を強力に推進することには異論がありませんが、免疫不全児は出生1-2万あたりおよそ1人と推定され、また最近のデーターでも重症複合免疫不全症の発症月齢は3ヶ月以内が45.8%、慢性肉芽腫症でも発症月齢は3ヶ月以内が37.8%であり(岩田力・厚生省特定疾患「原発性免疫不全症候群」調査研究班)、接種開始時期を生直後を含みより早く行うと言う解釈が生まれることについては、これまでの基本方針をあえて変更するメリットは考えられず、むしろBCGによる副反応発生事例増加のリスクを高める可能性のあることを危惧するものであります。
 一方定期接種年齢の上限に関しては、政令で定期接種は「生後6ヶ月に達するまでの期間」を原則とし,それにより難い場合は「1歳に達するまでの期間」となっておりますが、厚生労働省結核感染症課による同条ただし書きによれば、その他特別の事情によりやむを得ないと認められる場合は、地理的条件、交通事情、災害の発生等被接種者によらない理由のみとなっており、個人の健康状態等は一切考慮されない内容となっています。生後6カ月までに、軽重にかかわらず何らかの疾患に罹患しそのために経過を観察することは多く、これらの子どもたちが定期接種としてのBCG接種機会を失うことは、結果として乳児期におけるBCG接種率の低下を危惧するものであります。
 
 したがって、BCG接種は、
1) 生直後から可能であるが、標準的には生後3カ月検診などを利用することとし、出来るだけ生後6カ月以内に接種が完了することを原則とする
2) 生後6カ月までの接種は、地理的条件、交通事情、災害の発生その他特別の事情によりやむを得ないと認められる場合には1歳に達するまで行い得るとされているが、「その他」の理由には、生後6カ月以内で医学的に不適当であった乳児にもBCG接種機会を留保するため「医師による医学的判断がなされた場合」を解釈の上で加える。

以上、小児科学会は我が国における重要な課題である結核対策の一環として、生後6カ月以内に出来るだけBCG接種率を高める一方乳児に対するより安全なBCG接種を目指し、また生後6カ月以内の接種について医学的に不適当であった乳児にもBCG接種機会を留保するため、以上の2点を実施にあたっての考え方として加えることを要望します。


(登録:04.11.16)


■■ 乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について−日本小児科学会見解−

平成16年10月31日
厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人 日本小児科学会
会 長 衞藤 義勝

乳幼児(6歳未満)に対する
インフルエンザワクチン接種について

−日本小児科学会見解−

 わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える。
その根拠としたものは、主に平成12-14年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症事業)「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者 神谷 齊・加地正郎)」の報告である。
研究班の報告は、
1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
 とまとめられる。

・ 乳幼児は高齢者と同様インフルエンザに対してハイリスクであり、本人のみならずハイリスクを取り巻く周囲の人々、家族、同居者、保育園、学校では保育士、教職員など関係者への接種も合わせて実施することも感染の機会を減らす上で大切であると考えられる。
・ インフルエンザ脳症の発現率を減少させるかどうかについては、「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療および予防方法の確立に関する研究」(主任研究者:森島恒雄)の成績(中間報告)では脳症患者

とインフルエンザ罹患者の間でワクチン接種率に有意な差はなかったとしており、この段階ではインフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエンザワクチンの有効性は低いと考えられる。しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じ、その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はあるものと考えられる。
・ 重篤な合併症の報告はなされておらず、あるとしても極めて稀な範囲であると考えられる。

なお、基礎疾患を有する乳幼児については従来と同様の考え方であり、インフルレンザ感染により重症化が容易に予測されるような場合においては、インフルエンザワクチン接種は健康乳幼児より強く勧められる。


(登録:04.08.20)


■■ 日本小児科学会栄養委員会「朝食は毎日食べよう」

平成15年度栄養委員会
日本小児科学会栄養委員会
委員長   玉井 浩
副委員長  武田英二
専門医員 朝山光太郎
小池通夫
児玉浩子
清水俊明
戸谷誠之
南里清一郎

 我が国の子どもを取り巻く「食」の環境は高度成長時代を経て大きく変化している。食事の問題も単に高エネルギー・高脂肪食という肥満に関連する栄養の問題に留まらず、朝食欠食、夜食、孤食あるいはゲーム・インターネット、夜更かし、睡眠不足など現代社会の生活習慣に子どもたちが巻き込まれた結果というべき複雑なからみ合いの中に置かれた様相として大きくクローズアップされてきた。とくに「子どもの朝食欠食」の問題は1日の始まりとして学校教育現場でも重要な課題として取り上げられるに至った。そこで、当委員会では近年の、日本31件、諸外国421件の朝食に関連する研究論文のすべてについて調査を行い、次のような問題点を明らかにした。

 諸外国の報告からその内容を吟味し解析に耐える対象として60件が残された。その対象はほとんどが低所得者層あるいはその結果として栄養、発育に大きな問題をかかえた者で通学さえ困難な例を多く含むものであった。その欠食率は高く、30%の例もみられた。いわゆるSBP (school breakfast program) という貧困小児に対し学校で朝食給食を行う事業によってその改善をはかることができたという主旨の報告が多かった。日本からの報告の解析対象は英文で日本の事情を述べたものも含めわずか13件にすぎなかった。しかも朝食欠食率は極めて低く、また朝食も与えられないような貧困例ではない。これらは諸外国のそれとはまったく逆で、朝食欠食の原因は夜型生活、夜食など生活習慣の乱れに起因するという報告であった。このように今回の調査は諸外国の報告データ結論だけを現代の日本の状況に当てはめることの危険性を浮きぼりにした結果となった。日本の朝食欠食の現状として、肥満児は非肥満児に比し高率という報告があった。しかし生活習慣上多くの問題点をかかえる日本の現状を考慮すると、肥満解消の目的には朝食を食べるべきだというふうな短絡した指導では、朝食欠食を改めさせることはできないであろう。複雑にからみ合った多くの社会生活・生活習慣の悪癖を改めること、朝食欠食をその一つとして捉えることが重要という結果であった。すなわち、朝食欠食を含めた食習慣と同時に、その原因となる遅い就寝時刻、長いテレビ/ゲーム視聴時間、睡眠不足、運動不足などの生活習慣の改善が朝食欠食ひいては肥満解消のためには必須であることを示している。
 日本の朝食欠食には経済的原因は関係ない。しかし外国と違う日本独自の小児の朝食欠食の原因を探り、また今後の動向を注意深く監視する必要がある。朝食欠食が、小児の学習面、行動面に悪い影響を与えることは確かに考えられるため、注意をする必要がある。



(登録:04.04.05)


■■ 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会

谷村 雅子 高橋 香代 片岡 直樹 冨田 和巳
田辺  功 安田  正 杉原 茂孝 清野 佳紀

 最近,小児科医や発達の専門家から,言語発達や社会性の遅れがある幼児の中に,テレビ・ビデオ(以下,テレビと記す)を長時間視聴しており,テレビ視聴を止めると改善が見られる例があることが報告され,テレビの長時間視聴が発達に悪い影響を及ぼす可能性が指摘されています.
 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会では,乳幼児のテレビ視聴の発達への影響を検討するため,3地域の1歳6ケ月健診対象児計1900名について調査を行い,内外の知見と併せて検討しました.この結果,長時間視聴は1歳6ケ月時点における意味のある言葉(有意語)の出現の遅れと関係があること,特に日常やテレビ視聴時に親子の会話が少ない家庭の長時間視聴児で有意語出現が遅れる率が高いこと,このようなテレビの影響にほとんどの親が気づいていないことが示されました.現代社会は少子・核家族化,携帯メールやインターネットの普及などによって,家庭内でも会話が少なくなり,言語発達に問題をもつ子どもの増加が予想されます.乳幼児期は言語発達に重要な時期であり,テレビ視聴の影響について,親も社会も認識して対処していく必要があり,下記を提言します.

提  言

1.2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう.
内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります.
2.テレビはつけっぱなしにせず,見たら消しましょう.
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう.
見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です.
4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう.
5.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう.
見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと.
6.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう.

解  説

(1)小児科医,発達専門家からの相次ぐ指摘
 言葉の遅れ,表情が乏しい,親と視線を合わせないなどの症状を抱えて受診する幼児の中に,テレビ・ビデオ(以下,テレビと記す)長時間視聴児で,視聴を止めると症状が改善する一群があることが,最近,相次いで報告されている1)〜4).生後早期からテレビを見ていた子どもが多いが,幼児期になってからテレビに子守されたり,ビデオの反復視聴で半年のうちに症状が進んだ例もあり,長時間視聴の影響が危惧されている.
(2)現代の乳幼児家庭のテレビ環境
 乳幼児の発達へのテレビの影響を調べるため,2003年に3地域(首都,中核市,農村地区)の1歳6ケ月健診対象児の親に,子どものテレビとの関わりと発達に関する質問紙調査(無記名式)への協力を依頼し,回答を得た17〜19ケ月児1900名について解析した(回収率は地域によって異なり,平均75.2%).1地域は15年前にほぼ同一の調査を行っている.
 15年前に較べ,核家族化,テレビに親しんで育った親の増加,ビデオや大型テレビの普及,携帯電話やインターネットなどの出現を背景に,家庭や子どものテレビとの関わりは長時間と短時間への2極化が示され,見せ方にも多様化傾向が見られた.テレビ視聴時に親が子どもと一緒に歌ったり話しかけ,子どもが親に質問する家庭が増えていたが,長時間一人だけで見せている家庭もあった.

(3)児と家庭の長時間視聴の発達への影響
 視聴時間別に運動,社会性,言語の発達状況をみると,4時間以上の子ども(長時間視聴児)では4時間未満の児に較べ,有意語出現の遅れが高率であった(1.3倍).また,子どもの近くでテレビが8時間以上ついている家庭(長時間視聴家庭)の子どもで有意語出現の遅れの率が高かった.特に,長時間視聴家庭における長時間視聴児の有意語出現の遅れの率は短時間視聴家庭の子どもの2倍であった(図1).地域によっては,長時間視聴児に言語発達全般の遅れが認められた.
 子どもが4時間以上テレビを見ている家庭,あるいはテレビが8時間以上ついている家庭では,食事中も食事以外のときも子どもにテレビを自由に見せている家庭が多かった.このような長時間視聴家庭では親の生活がテレビに偏って親子の関わりの時間や他の活動が少なく,長時間視聴児は子ども自身がテレビを見たがったり自分で操作したり,消すと怒るなどテレビ好きで,遊びがテレビに偏り易い傾向があると推察された.
(4)児のテレビ視聴時の親の関わりの重要性
 テレビを親と一緒に見ている時,乳幼児は好きなものが登場すると共感を求めたり,動作のまねをしながら親の顔をみたり,指さして質問するなど親によく働きかけ,テレビを契機とした親子のコミュニケーションが生まれる.テレビを見ながら,親が一緒に歌ったり内容について話す家庭の子どもは視聴時の反応行動が活発で,テレビで見た話の絵本を喜ぶなど記憶に残っていることが示唆された(表1).
 しかし,テレビ視聴時には,例え親子で一緒に見ていても,親の話しかけや親子が向き合って長く会話することが少ない.一般に大人はテレビがついていると頻繁にはしゃべらないし,相手の顔をみて話すことも少ないためであろう.従って,テレビが長時間ついていると会話が減少して言語発達の遅れを招き易い.事実,長時間視聴児は視聴時に親が説明するなどの関わりがあっても,視聴時に指さして質問するなどの親への働きかけは減少しないが,有意語の遅れは多かった(図2).視聴時に親が関わっても長時間の視聴は児に悪影響を及ぼす.
 視聴時の親の関わりが少ない長時間視聴児では有意語出現が遅れる率が顕著に高く,そうでない児の2.7倍に達していた(図2).有意語の他,言語理解,社会性,運動能力にも遅れ傾向がみられた.従って,乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せてはいけない.
(5)テレビを見せ始める時から,見たら消す習慣を
 生後早期から見せ始めた子どもの方がテレビやビデオを見たがったり,自分でつけて見る率が高く,長時間視聴児が多かった.見せ始めるときから決まりを決めて見る習慣を身につけさせ,1番組見たら消す,ビデオを巻き戻して反復視聴を続けないようにすることが大切である.
(6)子どもの言語能力は一方的に聞くだけでは発達しないことを認識すべきである
 テレビの健康影響について多くの親は視力への影響を心配しているが,言語発達への影響を心配している親は少なく,むしろ言葉や知識を教えるために見せている親もいた.
 しかし,乳幼児の言語能力は大人との双方向の関わりの中で発達する.赤ちゃんは2ケ月頃から機嫌が良い時によく発声するようになり,3ケ月頃には人の怒りや優しい声などを区別して反応する.やがて喃語(言葉を話す前段階の声)を発するようになり,8〜9ケ月では聞き慣れた特定の言葉に反応したり,何か欲しい時に声を出して大人を呼んだりするようになる.この段階でも人との関わりが少ないと声の頻度や種類が少ないことが知られている.
 10ケ月頃からは大人の行動やものと言葉とを結びつけて理解するようになって言語理解が進み,ものと自分の発する音とも結びついてくる.1歳6ケ月頃から大人の言葉を模倣するようになって語彙が急激に増加し,2歳になる頃から2語文を話すようになり,言語生活が確立していく.実体験を通して言葉を理解すること,子どもに分かり易く話しかけ,子どもの話をゆっくり聞いて応えることが大切である.今回の調査結果は映像メディアからの一方的な働きかけだけでは子どもの言語能力が発達しないことを裏付けている.
(7)米国での対応
 米国の小児科学会は,テレビや映画,ビデオ,テレビ・コンピュータゲーム,インターネットなどの映像メディアが,子どもたちの健康障害を引き起こす危険性を持っていることを指摘し,メディア教育の重要性について勧告を出した5)6).特に,子どもの脳が発達する重要な時期に人と関わりをもつ必要があることを重視し,「小児科医は,親たちが2歳以下の子どもにテレビを見せないよう働きかけるべきである.」としている.また,小児科医に対して,親に子どものメディア歴(メディアの使用時間や見せ方)を質問し,助言するよう勧めている.
(8)臨床現場の危惧と親のテレビ観
 長時間にわたって親の関わりがなく視聴している子どもには有意語出現の遅れの他,言語理解や社会性の遅れ傾向が見られ,親への働きかけが少ない様子が示された.この状態が続けば,親子のコミュニケーションが減退し,ますます親よりテレビへの関心が強まり,言語発達や社会性の遅れが進行して受診に至るのであろう.多くの小児科医がこのような子ども達の臨床経験からテレビと言葉遅れとの関連性を疑い,乳幼児のテレビ視聴に警告を発してきた.今回の調査でこのような危険性がある(子どもが4時間以上放置されてテレビを見ている)家庭は1.6%存在した.
 他方,ほとんどの親はテレビを否定的には考えていなかった.多くの家庭は決まりを決めて親子で一緒にテレビを見ており,視聴時の子どもの反応や親に共感を求める可愛さ,親子の情緒的コミュニケーションの体験を肯定的に記載していた.
 しかし,乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴には危険が伴うことを大人は認識すべきである.テレビ利用に際しては長時間視聴の制限と視聴時の親の関わりの重要性に留意するよう提言する.
 なお,乳幼児期のテレビ視聴の影響に関する研究は十分でない.今回示された言語発達への影響以外にも,さらに重大な悪影響が証明される可能性もあり,今後も検討を進める必要がある.
(9)小児科医,小児の健康に携わる方へ
 a.子どもと家庭のテレビ・ビデオ環境を聞き,利用法を助言して下さい.
 b.長時間視聴の子どもからテレビ・ビデオを突然遠ざけることは難しいので,具体的方法を助言して下さい.
  ・テレビにカバーを掛ける.ビデオソフトはしまっておく
  ・コンセントからはずす
  ・タイムスイッチの利用
  ・玩具や絵本を少し出しておき,テレビ以外のものにも関心を向ける
  ・テレビの無いところで遊ぶ時間を長くする
  ・子どもが部屋に入ってきた時にテレビがついていないようにする
   (起きたとき,外出から戻ったときなど)
 c.子どもに語りかけ,子どもからの働きかけに応えることの重要性を説明して下さい.

文  献

 1) 片岡直樹.新しいタイプの言葉遅れの子どもたち―長時間のテレビ・ビデオ視聴の影響.日児誌 2002;106:1535―1539.
 2)土谷みち子.子どもとメディア―乳幼児早期からのテレビ・ビデオ接触の問題点と臨床的保育活動の有効性.国立女性教育会館研究紀要 5, 2001.
 3)岩佐京子.テレビに子守をさせないで.水曜社,1977.
 4)ジェーン・ハーリー.コンピュータが子どもの心を変える.大修館書店,1999.
 5)American Academy of Pediatrics. Committee on Public Education, Policy Statement Media Education. Pediatrics 1999;104:341―343.
 6)American Academy of Pediatrics. Television and the Family, The media matters Resource Kit, 1999.



(登録:04.02.09)


■■ 日本小児科学会学校保健・心の問題委員会 成長曲線からみた摂食障害、ネグレクト、肥満の早期発見法について

 最近小児科領域のみならず大きな社会問題なっている疾患には、神経性食欲不振症と肥満といった表現型は両極端ですが食事摂取の問題、虐待・ネグレクトといったマルトリートメントがあります。これらの疾患に共通することは、子ども自身が症状を訴えたり、保護者が病院を訪れるといったことがない点です。このため、これらの疾患をより早期に発見するためには、教育機関と医療機関の連携が非常に大切です。このパンフレットは、学校で毎年測定している身長、体重を経年的にプロットすることで、どれだけ重要な情報を引き出すことができるかを、各分野の専門家の先生に解りやすくまとめていただいた
ものです。子どもの教育、発達に携わる方にご利用いただき、悩んだり苦しんでいる子ども達の発見に役立てていただければと作成しました。ご一読いただき、ご意見いただければ幸いです。

日本小児科学会学校保健・心の問題委員会委員長沖 潤一
e-mail: joki@asahikawa-kosei.jp

成長曲線からみた摂食障害、ネグレクト、肥満の早期発見方について(PDFファイルダウンロード:5.6M)


(登録:04.02.09)


■■ 小児救急フォーラムと『こどもの事故と対策』パンフレットについて

 小児救急プロジェクトチーム(座長 中澤誠)では、平成16年1月18日に東京に於いて小児救急市民公開フォーラムを開催しました。約300人余の参加者を得て活発な討論が行われました。第二部としてQ&Aコーナーを設け、会場の参加者からの質問に答えました。会場で、市川委員作成の「こどもの事故と対策」を配布しましたところ好評を得ました。そこで、この度HPを通じて無料配布することと致しました。ご希望の方は下記の要領でお申し込み下さい。

返信用封筒(B5サイズ)に、住所・氏名をご記入の上140円切手を貼って下記住所までお送り下さい。

112-0004
文京区後楽1-1-5-4F
日本小児科学会 小児救急係


(登録:03.10.28)


■■ 「川崎病急性期治療のガイドライン」(日本小児循環器学会)について

「川崎病急性期治療のガイドライン」(日本小児循環器学会)を『分科会へのリンク』ページに掲載いたしました。以下のURLからもダウンロードできます。

http://plaza.umin.ac.jp/~jpeds/pdf/kawasakiguideline.pdf


(登録:03.10.20 更新:03.10.28)


■■ 臨床研究に関する倫理指針の施行等について

「臨床研究に関する倫理指針の施行等について」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」「疫学研究に関する倫理指針」は以下のリンク先をご参照下さい。

「臨床研究に関する倫理指針の施行等について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/07/tp0730-2a.html

「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0329-3.html

「疫学研究に関する倫理指針」

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1211-9e.html


(登録:03.07.30)


■■ 小児脳死臓器移植に関するインターネットによる一般会員からのアンケート結果

 先に公開フォーラム「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」報告書に代議員のアンケート調査結果のまとめと「提言 小児脳死臓器移植はどうあるべきか」を掲載いたしました.
アンケート調査では,一般会員から98名と少数ですがご意見を頂いており,その詳細を公表しておりませんでしたので今回追補資料としてここに掲載いたします.

1) 経過と回答数
 2001年4月上旬から6月上旬までの約2ヶ月間インターネットによるアンケートを行いました。その間4月中旬に学会誌(5月号)に最初の「お願い」を出し、5月5日の小児科学会フォーラムと仙台での学会総会にもアンケートの「お願い」をしました。結果は残念ながら約0.6%の98人の回答でした。この98人は基本的に代議員は含まれていないはずです。
代議員の文書によるアンケート回答が1ヶ月間で63%という比較的高率に対して、何故このように少数回答であったか。
アンケート回答時に打ち込みを完全に行わない限り終了できないという欠陥が指摘されましたが、やはりインターネットを駆使できる医師数が少なく、さらにアンケートに答えるという方式そのものがまだまだ普及していないことが考察されました。しかし、小児科学会員が多数入会しているメイルネットは1000人をはるかに超えていることからみると、脳死・移植そのものが身近な問題として捉えられなかったのかもしれません。国会の関係で、アンケート調査が突然何の前触れもなく実施されたことに会員の違和感があったことや、宣伝が十分に行き届かなかったことも関係しているのかもしれません。
より安価な方法ということでインターネットによるアンケートを実施したのですが、取り組み側の体制不備をお詫びします。

2) 結果
98人の回答を分析します。
[1]所属都道府県
回答の多い順に示します。大阪17,東京9,兵庫と福岡7,京都と北海道が6、神奈川5と続きました。
[2]専門別
「小児科」との記載ないし「記載なし」が多かったのですが、専門性の記載では、多い順に、神経・精神21,アレルギー・感染10,新生児9,腎臓7,循環と血液・腫瘍が5と続きました。
[3]年齢
多い順に列記します。41歳から45歳が最も多く27, 36歳から40歳が19,45歳から50歳が18、51歳から55歳が13,31歳から35歳が8,26歳から30歳が7,61歳以上が5,56歳から60歳が1でした。
[4]性別
男性73,女性25
[5]所属
臨床勤務が44,開業が34,大学研究が18でした。
[6]脳死=死を認めるか
「はい」が69,「いいえ」21,「わからない」8でした。
[7]小児科医が意見を述べる
「はい」が97,「わからない」が1でした。
[8]小児からの脳死移植の必要性
「はい」62,「いいえ」19,「わからない」17
[9]町野教授らの報告への賛否
「賛成」21,「反対」64、「わからない」13
[10]意見表明の年齢
6歳未満が26,6歳から9歳が18,10から12歳が
22、13歳以上が30
[11]今後の方策
チャイルドドナーカードが38,死の教育が62,子ども専門コーディネーター60,専門委員会が65でした。
[12]倫理委員会として継続的な専門委員会設置
  「はい」が91,「いいえ」が7

質問8
要旨を順不同に列記します。
・学会としてこの問題に限らず発言していく必要あり。
・沈黙は金の時代は終わった。存在価値を示す意味でも学会として発言すべき。
・脳死基準は成人と同様とは思わない。学会は医学的、倫理的基準を確定させるべき。
・学会としてインターネットで会員のアンケートをとったことを歓迎します。
・学会が技術専門的見地からリーダシップをとるべき、ただし代表メンバーの偏見でなく広く意見をもとめるべき。
・学会誌に定期的に資料や討論内容を掲載し、外部からの批判ものせていく。
・学会としての社会的責任を果たすべきで、今回のアンケートは泥縄式であった。継続的取り組みを。
・外国で移植を受ける子どもがいることは子どもの移植を容認している。ドナーになる人の討論が必要。
・脳死を死とする宗教観が整っていない。成人でもむつかしいのに子どもにまで適応は早すぎる。
・虐待からの移植の防止が可能でしょうか。
・ドナーもレシピエントも親と独立したこどもの意志を反映するシステムが必要。
・移植の前にまず小児救急の整備だ。
・治療放棄された脳死といわれた新生児仮死児が快復した。脳死は受け入れがたい。
・臓器移植は人の命を踏み台にして生きること。倫理的に危惧がある。
・子どもの出した結論を親が受け入れられない時、主治医はどうする?
・15歳以下の小児の脳死からの移植は人権侵害である。
・ドナー側への配慮がレシピエント側の論理より優先すべき。それが出来ないときは脳死移植をするな。
・オーム真理教の子どもは自分で入信したか?子どもの学校での死の教育が必要。
・小児の自己決定という概念がもっときちんと法的に討論されるべき。
・現法の原則が妥当。15歳以下の臓器提供のための自己決定には無理がある。
・大人の思いこみで子どもの意志が無視されないような活動が必要。
・移植を前提としない脳死判定の普及が必要。
・小児専門の公的コーディネーターが必要。
・脳死としての死を認め、レシピエントの死を認めない矛盾した医療。
・15歳以下は親の判断というのは抵抗がある。
・大脳皮質がなくなっても長期生存例がある。この子をどう取り扱うかが大切。
・死の教育については。「生きること」を問いかける教育がたいせつ。
・小児への目いっぱいの延命治療がある。長期間の集中治療で疲弊した臓器が必要なのか。
・海外へ行く子どもの実態調査をすべき。その家族の声もきくべき。
・臓器移植と脳死判定は別物。
・脳死判定以前に小児の救急体制が不十分。移植を受けた子どものサポート態勢も不十分。
・子どもの親、子ども自身からもっと意見を聞くべき。
・小児の脳死移植をひろく一般に問いかける、さらに子ども自身にもアンケートをとる。
・生物学的な死と子どもの社会的存在の死は異なる。
・ドナーカードをもっていると救命すべき子どもと認められず、ドナーとして見られる危険性あり。高知の場合はすべての手だてが行われたのか。
・親の了解だけで子どもの移植が可能はさけるべき。小児科医の中でも討論も必要。
・小児の脳死は成人とは異なる。脳の可塑性もある。成人同様の取り扱いは絶対反対。
・公正な判定と移植が必要。このごろ情報公開を拒否する傾向は危険な徴候。
・小学校や中学校へ出向き、子ども達の意見を聞いたらどうだろう。
・アメリカをはじめとした海外で何故他国の患者に移植しなければならないかという討論がある。
・移植を必要としない難病の親や宗教、弁護士などと討論必要。
・脳死が本当に死なのか?小児の虐待がふえていることも気になる。
・脳死が実際存在するのか?脳波検査は実にいい加減である。脳波に頼った判定は問題がある。

3) 考察
会員数に対して、回答があまりにもすくないので、十分な比較はできないが、あえて代議員アンケート結果と比較する。

主な相違点は以下の通り。
[1]回答年齢が代議員アンケートよりも10年以上若い層であった。殆ど男性の意見に対して、1/4が女性の意見であった。
[2]専門性や所属は大きな差はないが、近畿地方都市部の回答が多かった。
[3]脳死を死とみとめるかは、70%が容認であり、代議員の80%と差があり、同様に小児の脳死からの移植の必要性の質問でも代議員が73%に対して63%と同じ差がでた。これは同じ小児科医でも年齢により意見が異なる可能性を示唆し、代議員層より若い層の方がより脳死による臓器提供に慎重である可能性も伺えた。
[4]町野案への意見でも、反対が65%で、代議員の50%とは大きな差が見られた。賛成は21%対34%であった。
[5]意見表明可能年齢でも、代議員の結果は13歳以上から低年齢の選択肢へ順に減少したが、アンケート結果は13歳以上と6歳未満がほぼ同率であり、6歳未満で可能とする回答が多くみられた。

質問2と質問7の今後の学会での検討や意見を述べたりする事への支持は両者とも90%を超えていた。この点は、代議員アンケート結果と同様であり、今後の小児科学会での取り組みを期待するものであった。


(登録:03.07.08)


■■ 水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項

                     雇児母発第0603001号
平成15年6月3日

社団法人 日本小児科学会会長殿

厚生労働省雇用均等等・児童家庭局母子保健課長

妊婦等における水銀を含有する魚介類等の
摂食に関する注意事項について

 母子保健行政の推進につきましては、かねてより特段のご配慮をいただいているところであり、深く感謝申し上げます。
 標記について、別添写しのとおり、都道府県、政令市及び特別区の母子保健主管(局)長宛に通知いたしましたので、貴会会員に対する周知方よろしくお願い申し上げます。

(別添)

平成15年6月3日


水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項

薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会
乳肉水産食品・毒性合同部会

多くの魚介類等が微量の水銀を含有しているが、一般に低レベルで人の健康に危害を及ぽすレベルではない。魚介類等は、良質なたんぱく質を多く含み、飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等、重要な食材である。
 しかし、一部の魚介類等では食物連鎖により蓄積することにより、人の健康、特に胎児に影響を及ぽす恐れがある高いレベルの水銀を含有している。
 このため、妊娠している方又はその可能性のある方ついては、魚介類等の摂食について、次のことに注意することが望ましい。
これまで収集されたデータから、バンドウイルカについては、1回60〜80gとして2ヶ月に1回以下、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ及びサメ(筋肉)については、1回60〜80gとして週に1回以下にすることが望ましい。
また、メカジキ、キンメダイについては、1回60〜80gとして週に2回以下にすることが望ましい。
 なお、妊娠している方等を除く方々はすべての魚種等について、妊娠している方等にあっても上記の魚種等を除き、現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念されるようなデータはない。魚介類等は一般に人の健康に有益であり、本日の注意事項が魚介類等の摂食の減少につながらないように正確に理解されることを期待したい。
 今後とも、魚介類等の中の水銀濃度及び摂取状況等を把握するとともに、胎児への影響に関する研究等を行い、その結果を踏まえ、今回の摂食に係る注意事項の内容を見直すものとする。


(登録:03.06.24)


■■ 小児脳死臓器移植はどうあるべきか

日本小児科学会小児脳死臓器移植検討委員会
谷澤隆邦(委員長)  仁志田博司  清野佳紀
河原直人  佐地勉  杉本健郎
武下浩  田中英高  田辺功  田村正徳

2003年4月26日
日本小児科学会

はじめに

 わが国の脳死臓器移植法は1997年7月に成立し,同年10月に発効してから5年以上が経過したが,この間に施行された臓器提供者は20数例を数えるに過ぎない.わが国の脳死臓器移植法は本人の生前の意思表示と家族の同意の両者を必要とする提供者の人権を尊重した法律であり,世界に類をみない.しかし,わが国の民法では15歳未満の小児での生前の意思表示を認めていないことから現在のところ,小児脳死臓器移植は不可能である.現行法の付則に見直しが施行後3年と記載されていることと,成人臓器では対応できない海外渡航による心臓・肺などの小児脳死臓器移植数が増加している現実から脳死臓器移植法案の見直しが検討されている.
 以上の背景から,日本小児科学会理事会では倫理委員会を担当として,小児脳死臓器移植検討委員会を発足させ(以下委員会),小児脳死判定基準や虐待などによる脳死移植の回避など小児の人権擁護の立場から,現状の問題点と今後のあるべき方向について検討を重ねてきたのでここに活動経緯とともに提言する.

小児脳死臓器移植に関する小児科学会
および関連分科学会活動の経緯

 小児臓器移植について日本小児科学会あるいはその分科会が議論を開始したのは1983年,第25回日本小児神経学会(会長 鴨下重彦)であった.この時は『来るべき将来の小児脳死臓器移植問題を考えよ』と提言する内容であった.とくに,脳死臓器移植法改正案(厚生省「臓器移植の法的事項に関する研究班」による町野案)が2000年8月23日に公表されてから小児臓器移植に関する検討が熱心にされるようになった.また,小児循環器学会を中心に小児脳死心臓移植適応基準,待機患児の実態と問題点,公開シンポジウムによる啓発活動がなされてきた.
 (1)近年の活動に至るまで
 日本小児科学会会員の有志がBrain Deathに関する理解を深めるために,UCLA小児神経学Alan Shewmon教授1)を日本に招聘講演を計画したことから始まる(1999年秋).この講演会は在京四私立医科大学合同医局会において開催され(2000年3月6日),大阪においても開催された2).なお,この講演会は2001年9月にも関東,近畿,九州の医学部において開催された.
 同時期に,これとは別に日本小児神経学会では,第42回学術集会のイブニングトークで小児の脳死について議論された3).この中で(1)親権の問題について合意が得られていない,(2)脳幹機能の評価について臨床経験豊かで神経生理検査に精通した医師が不足している,(3)現場で生じる心理的葛藤への対策,小児の救急医療体制,コーディネーターの役割の不明瞭さなど受け入れシステムの問題がある,(4)小児の脳死は家族という視点でとらえられるべきである,と結論された.
 (2)日本小児科学会における活動の経緯
 1.日本小児科学会近畿地区代議員会において脳死臓器移植法改案に関する日本小児科学会員への意見聴取の提案が採択された(2000年10月26日).
 町野案では小児脳死に最も深く関わる小児科医の意見が取り入れられていないことから,上記代議員会において,大阪医科大学小児科玉井 浩教授から提案があり,日本小児科学会理事会の検討事項となった.
 2.上記を受けて,日本小児科学会倫理委員会が中心となり,小児脳死臓器移植に関するアンケート調査が小児科学会代議員を対象に郵送とインターネットを介して施行された(2001年3月).一般会員は日本小児科学会のホームページ(以下HP)で回答した.その結果は大多数の小児科医は小児臓器移植の必要性を認め脳死を死と容認するが,小児臓器移植法改案には小児科医の意見を採り入れること,また,小児科学会として議論の継続が必要とする結果であった(詳細は小児科学会HPを参照).
 3.また,小児脳死臓器移植の諸問題を広く議論するために,日本小児科学会主催の第1回公開フォーラム「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」が開催された(2001年5月5日 東京女子医科大学弥生記念講堂).
 4.わが国では宗教的精神基盤が均一ではなく,また,現代の核家族化による家族体系の変化から成人も小児も身近に死を体験することが少なくなった.死生観を含めた倫理観を培うことは社会生活の上でも重要であり,倫理委員会で討議を重ねた結果,今後「生と死の教育」を継続的に行うため,定期的な公開フォーラム開催を決定した.そして,日本小児科学会第2回公開フォーラム「子どもの死を考えるin Kobe」(2003年1月13日 神戸国際会議場)を開催した.
 (3)日本小児心身医学会における活動
 1.2001年理事会において小児脳死臓器移植の議論を行う必要性が了承された.
 第20回日本小児心身医学会総会においてシンポジウム『子どもの脳死状態における全人医療』が開催された(2002年9月6日 米子コンベンションセンター).
 真の幸福を得るためには,一人一人が「いのち」の尊厳を理解し,それに基づく医療行為が必要である.しかし,多くの病院では小児に限らず死に際して見取りの体制が不十分である現状である.小児の「いのち」「人権」が尊重されない臓器提供はなされてはならないとの結論であった.


年月日 学会 タイトル・内容 発表者など
1983年 25回日本小児神経学会
(会長 鴨下重彦)
(夜間集会)
小児脳死を考える 座長:牧 豊
演者:竹内 一夫、
二瓶 健次、藤田 慎一
2000年
6月8日
第42回日本小児神経学会
(会長 岡田伸太郎)
イブニングトーク
子どもの脳死について(本文参照) 演者:竹内 研三
  (鳥取大学脳神経小児科)
阪井 裕一(国立小児病院)
宮林 郁子
2001年
3月
日本小児科学会 小児臓器移植に関するアンケート調査 日本小児科学会倫理委員
(詳細は日児誌105巻11号,日本小児科学会HP)
2001年
5月5日
日本小児科学会第1回公開フォーラム 小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか
(詳細は日児誌105巻11号,日本小児科学会HP)
座長:中村 肇
演者:柳田 邦男
公開討論会
座長:谷澤 隆邦、仁志田博司
パネリスト:
森岡 正博
 (大阪府立大学倫理学)
杉本 健郎
 (関西医科大学小児科・遺族)
町野 朔
 (上智大学法学部)
恒松由記子
 (国立小児病院)
阪井 裕一
(国立小児病院麻酔・集中治療科)
曽根 威彦(早稲田大学法学部)
鈴木 利廣(弁護士)
田辺 功(朝日新聞論説委員)
掛江 直子
(国立精神・神経センター精神保健研究所)
2002年
9月6日
第20回日本小児心身医学会総会シンポジウム 子どもの脳死状態における全人医療(本文参照) 座長:松石豊次郎、田中 英高
演者:
松石豊次郎(久留米大学)
杉本 健郎(関西医科大学)
安藤 泰至
 (鳥取大学保健学科)
山口 龍彦
 (高知厚生病院ホスピス)
2003年
1月13日
日本小児科学会第2回公開フォーラム 子供の死を考える in Kobe
(詳細は日児誌107巻4号,日本小児科学会HP)
座長:仁志田博司、谷澤 隆邦
演者:
細谷 亮太
(聖路加国際病院小児科部長)
杉本 健郎
(関西医大男山病院小児科部長)
高木 慶子
(兵庫・生と死を考える会)
額田 勲(神戸みどり病院・神戸生命倫理研究会代表)
田中 英高(主催者から)

(4)日本小児循環器学会および関連学会の活動
 1.日本小児循環器学会の移植委員会において,a)小児心臓移植の適応基準の決定,b)小児心臓移植・肺移植適応患者の実態調査,c)日本小児循環器学会評議員の意識調査(日小循誌1997年13巻5号),d)小児心臓移植実施マニュアル・ファクトブックの作成「小児心臓移植・肺移植」(日本医学館,2003. 1. 17)がなされた.

 2.学会活動
[1] 17回日本心臓移植研究会
   パネルディスカッション:特別発言,
   小児心臓移植・肺移植適応患者についての
   アンケート調査 松田 暉
[2] 第35回日本小児循環器学会総会1999. 7 福岡
   特別企画:本邦における小児心臓及び
   肺臓移植の現況 我が国における小児の
   脳死判定の現況と問題点 満留昭久
[3] 第36回日本小児循環器学会総会2000. 7 鹿児島
   特別企画:本邦での小児における心・肺・
   心肺移植の実施に向けて
[4] 第38回日本小児循環器学会総会2002. 7 東京
   特別企画 臓器移植委員会報告小児の心臓移植・
   肺移植の実現に向けて


 3.国際シンポジウム
 2003年1月 小児の心臓移植・肺移植の国際シンポジウム開催

 4.公開シンポジウム
[1] 2000年10月 メディアワークショップ
   日本移植学会広報委員会主催
   法施行後実施された脳死臓器移植の報告 松田 暉
   我が国における小児心・肺移植を必要とする
   患者の実状 小野安生
[2] 2001年10月 市民公開講座 
   臓器移植推進連絡会・日本移植学会主催
   法施行後実施された脳死臓器移植の報告 松田 暉
   我が国における小児心・肺移植を必要とする
   患者の実状 小野安生・佐地 勉
[3] 2001年7月 移植を考える集い 
   日本移植者支援協会主催
   我が国における小児心臓移植の現状と課題 福嶌教偉
[4] 2002年5月 臓器移植決起集会 移植を考える 
   日本移植者協議会主催
   我が国における小児心臓移植の現状と課題 福嶌教偉


 5.要望書提出
[1] 2001年2月衆議院議長・参議院議長への要望書提出
[2] 2001年7月国会議員への説明 
   中山代議士.宮崎代議士,阿部代議士他
[3] 2002年3月日本小児循環器学会からの
   小児心臓移植・肺移植の要望 
   総理大臣小泉純一郎への要望書提出
[4] 2002年2月松田班からの小児心臓移植・
   肺移植の要望 
   総理大臣小泉純一郎・厚生労働大臣・衆議院・
   参議院議長・生命倫理委員会会長への要望書提出

小児海外渡航心臓移植

 国内での小児心臓移植例は2003年1月17日現在で心臓移植施行17例中2例である.とくに,心臓移植は生体肝・腎・肺移植とは異なり生体ドナーからの移植は不可能である.また,成人ドナーからの心臓移植はドナー・レシピエントの体重差が3倍以上となる概ね体重が20kg未満のレシピエントでは困難である.
 以上の状況からわが国の現行法のもとでは低体重児の小児脳死臓器心臓移植は不可能であることと,15歳以上の脳死臓器提供数が少ないため毎年7〜8例の心臓移植待機患児が海外渡航心臓移植を受けているのが実情である.また,心臓移植待機小児例のほとんどが機械的循環補助装置を必要とし,重篤な病状と経済的理由で海外渡航心臓移植ができない小児例も存在することが現状である.

提  言

 上記の経緯と背景を踏まえ,日本小児科学会倫理委員会として小児脳死臓器移植検討委員会を設置してわが国での小児脳死臓器移植の現状と問題点の検討を重ねてきた.
 その結果,わが国では小児脳死臓器移植によってのみ生命の維持が得られる小児が待機し,一部は海外渡航移植を受けている現実を厳粛に受け止め,脳死臓器移植医療のもたらすQOLの改善を考慮すると小児脳死臓器移植の必要性は十分に理解できる.また,小児科学会代議員へのアンケート結果からも大多数の小児科医が脳死を死と認め,小児脳死臓器移植の必要性については認めていることからも日本小児科学会は小児脳死臓器移植を治療法の一つとして容認する.
 しかし,その前提としてドナー・レシピエントとなる小児の人権を損なうことのないように「死を考える授業」などを実践し,自らの命をどう考えるかの教育を通して,例えばチャイルド・ドナーカードによる自己意志表明,小児専門移植コーディネーターの育成,そして被虐待児脳死例の臓器移植を回避する方策の確立など環境整備の諸問題を今後継続して検討していくことを提言する.
 また,後述するようにこの委員会では性格上小児脳死判定基準については多くは議論しなかったが,小児脳死判定基準については重症脳障害患児を扱う機会の多い施設の協力の下に前方視的脳死症例の蓄積が望ましい.また,医学の進歩に即した脳循環,神経生理学的補助的機能検査を採用していくことによって補完的に診断精度を向上させることが望ましい.
 日本小児科学会として上記諸問題についてさらに積極的・継続的に介入することを提言する.
 (1)小児の自己決定権を尊重するために
 わが国の脳死臓器移植法は本人の生前の意思表示と家族の同意の両者を必要とする提供者の人権を尊重した法律であり,世界に類をみない.わが国では1994年に「子どもの権利条約」を批准していることからも小児脳死臓器移植においてもこの原則は尊重されるべきである.
 内閣府の「臓器移植に関する世論調査」によると,小児の脳死臓器移植が現行法では認められていないことについて,「やむを得ない」が2割であるのに対し,「できるようにすべきだ」が6割で,法改正に理解を示す意見が多数を占めている.しかし,本人の意思表示についての考え方は大きく二つに分かれる.「15歳未満は適正な判断ができないので家族などが代わって判断すればいい」と「本人の意思を尊重すべきだ」がほぼ同じである.
 小児の人権を護る立場からは自己決定権を明示するチャイルド・ドナーカードの推進が望ましい.その前提には治験などでの小児自身への説明と承諾の明確化と同様に脳死と死に関する授業教育の実践と自己決定への意図的な誘導を避けるための中立的システムの構築が必要となる.また,民法の規定とは別に表示意思の有効年齢を15歳から引き下げることが求められる.
 さらに,ドナー家族・レシピエント本人と家族両者への橋渡しとなる小児移植専門のコーディネーターの育成が脳死移植医療の世論への理解を深め,本人と家族への医療情報提供のみならず精神的な負担の軽減に必要である.
 (2)被虐待児脳死例を排除するための方策
 小児の自己決定権を侵害する端的な例が親権者による虐待死の場合で,加害者である親権者による代諾によって脳死臓器提供となる事例である.
欧米でのHettler J4)らやLane WG5)の最近の報告によると,0〜3歳までの頭部外傷の30%,骨折の52.9%(minority children)が虐待による.また,わが国では重症頭部外傷の20.4%6),小児科医を対象としたアンケート調査7)によれば頭部外傷の10〜40%は虐待の可能性が指摘され,虐待と診断し得るまでに2週間から1カ月以上の期間を要し,虐待を見逃してしまう症例も存在する.
 これを排除するためには救急医療機関への小児外傷例のなかに虐待例の混入を疑うことの啓発と中立性の高い医療者以外の参加による審査なども必要となる.とくに,親権者による代諾のみによる臓器提供の危険を回避するために,小児脳死臓器提供はあくまで特別な例外であることを法に明示し,厳格な手続き,その違反への罰則規定を含んで対応することや小児の権利擁護の立場に立つ専門的な調査・許可機関を設置し,その機関の許可を義務づける8)ことも大切である.
 (3)小児脳死判定基準9)〜13)
 今回の提言では本委員会の範囲を超えるので多くは議論しなかったが,以下のことが指摘された.前方視的症例が139例中11例に過ぎないことと,成人と比較して小児では遷延性脳死(長期脳死,chronic brain death)といわれる症例が多い傾向があることの2点である.
 前方視的研究は世界的にも報告が少なく,(旧)日本脳波学会基準,厚生省基準,米国NIHの調査があるに過ぎない.厚生省研究班の11例は多いとはいえないので,報告書にもあるように関係施設の協力を得て小児脳死症例が蓄積されることが望ましい.この場合,医学的にも倫理的にも厚生省小児基準を標準として症例を追加することが望ましい.
 遷延性脳死はとくに小児では集中治療の進歩の結果だけとはいえず,可塑性に富む小児脳死状態における脊髄統合機能についても今後考えなくてはならない.このように成人,小児を問わず,遷延性脳死についてはさらに検討を加える必要があるが,厚生省研究班の調査で明らかなことは,これらの症例も脳死判定後に神経所見の変化は認められず,剖検や画像診断所見から脳組織の壊死・融解が示唆あるいは確認されている.
 医学の進歩は日進月歩であり,検査法の進歩もめざましい.脳死判定に脳死判定の骨格をなす神経所見とともに種々の時代に即した国際的に認知された脳循環,神経生理学的補助検査を採用していくことが望まれ,補完的に診断精度を向上させ得ると考えられる.
 日本弁護士連合会は,成人における初期の脳死臓器移植例の検討から今後は判定手順を厳格に順守するよう勧告している.臓器移植法の運用指針などが定めた手順が守られず,患者の人権が侵害された例があるとしている.成人と同様に小児脳死判定の手順を明示したマニュアルを作成し,人権を擁護し,世論の理解と協力を得るためには脳死判定の過程を患児と関係者のプライバシーを配慮した上で,情報の最大限の事後公開をすることが望ましい.

文献

 1) Shewmon AD. Chronic“brain death” Meta-analysis and conceptual consequences. Neurology 1998;51:1538―1545.
 2) 田中英高,玉井 浩,榊原洋一,他.子どもの脳死と死:脳死概念や定義の不整合性について―UCLA小児神経学・アラン・シューモン教授来日記念講演の概要と解説―小児科臨床 2001;54:1935―1938.
 3) 竹下研三,他.第42回日本小児神経学会総会イブニングトーク:子どもの脳死について 脳と発達 2000;32:440―447.
 4) Hettler J, Greenes DS. Can the initial history predict whether a child with a head injury has been abused? Pediatrics 2003;111(3):602―607.
 5) Lane WG, Rubin DM, Monteith R, et al. Racial differences in the evaluation of pediatric fractures for physical abuse. JAMA 2002;288(13):1603―1609.
 6) 高橋義男.頭部外傷を主病態として入院した乳幼児虐待の現状,背景と予防.日本神経外傷学会25回プログラム・抄録集102頁,2002年.
 7) 田中英高,他.小児脳死臓器移植における被虐待児の処遇に関する諸問題.日児誌2003;107:421.
 8) 中島みち.朝日新聞「私の視点」2003年1月9日.
 9) Shewmon DA. Chronic“brain death”, Meta-analysis and conceptual consequences. Neurology 1998;51:1535―1545.
10) 厚生省厚生科学研究費特別研究事業「小児における脳死判定基準に関する研究班」平成11年度報告書.小児における脳死判定基準.日医雑誌 2000;124:1623―1657.
11) 武下 浩.脳死判定基準―本邦ならびに諸外国の現状―.神経内科 2001;54:497―505.
12) Bernat JL. Philosophical and ethical aspects of brain death. In:EFM Wijdicks(ed). BRAIN DEATH, Lippincott William & Wilkins, Philadelphia, 2001:pp. 176―181.
13) Miyasaka K, Takeuchi K, Takeshita H. Paediatric brain death in Japan. THE LANCET 2001;357:1625.


(登録:03.05.07)

■■ 重症急性呼吸器症候群(SARS) に関する情報について

国立感染症研究センター感染症情報センターにリンクいたしました.

http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update.html





(登録:03.04.17)


■■ 日本小児科学会倫理委員会報告
第2回日本小児科学会公開フォーラム「子どもの死を考える in kobe」

日本小児科学会倫理委員会報告
第2回日本小児科学会公開フォーラム「子どもの死を考えるin Kobe」
2003年1月13日,神戸国際会議場

座長まとめ

東京女子医科大学母子総合医療センター・日本小児科学会倫理委員会委員長
仁志田博司
兵庫医科大学小児科・日本小児科学会理事
谷澤 隆邦

 2001年5月5日の「子どもの日」に「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」を主題に第一回のフォーラムが行われたのは,平成9年(1997)10月に施行された臓器移植法の附則第2条第一項に「施行後3年を目途に検討する」の文言が加えられているところから,見直しが近々に行われ,その焦点の一つが対象外とされていた「小児の脳死臓器移植」であると考えられていたからであった.その内容およびそのフォーラムに先立って行われた,小児科学会会員に対するこの問題のアンケート調査の結果を踏まえ,小児の特性及び人権に配慮して,小児も臓器移植法の対象とする事に前向きで対応する全体の意向が小児科学会誌にすでに公開されている(105(11):1250,2001).
 今回のフォーラムは,「小児の脳死臓器移植」の是非を論じる前に,この問題に関して現在の日本における小児の置かれている状況を理解する必要があるところから企画されたものである.特にこれまでの文化的背景から,家族が子供達と自分の死のみならず死そのものに関してどれほど語り合う機会を持っているか,さらには医療現場においても専門家として死に直面する子どもに,どのように対峙しているかさえ心もとないのが現状である.このような背景から,最近の大震災で多くの身近な命を失った体験を持つ方の多い神戸の地で,この問題を論ずることとなり,地元の杉本・田中両先生にその多くの労をお願いした.
 フォーラムでは,本誌に載せられている各演者の抄録にあるように,「小児の脳死臓器移植」云々よりは,死に逝く子どもの姿がそこに立ち会った方々の言葉で切々と語られ,子どもの死が成人のそれと異なった様相を示す事が浮き出されている.それは愛する者を失う慟哭のいわゆる「二人称の死」の死を越え,自分の一部も死んだと感じる「1.5人称の死」だ,と演者の一人が言った言葉のごとく,巷の医療現場で遭遇する淡々と死を見つめている姿ではないものであった.たとえ冷厳な合理的判断を迫られる医療者であっても,この厳粛な事実を忘れてはいけないことを強く認識しなければならない.
 参加者の一致した意見は,子どもの脳死臓器移植の必要性は十分に認識したうえで,現行法が15歳以下であっても十分な意思表示能力を持ちうる児童の自己決定の権利を奪っている問題点を指摘しながらも,その安易な改訂によって親権の名の下に子どもの尊厳が無視される危険に曝されるのに歯止めをかけなければならないという,子どもの権利を守る立場からであった.その為に何をなすべきかを論ずるフォーラムではなかったが,少なくとも「海外に子どもが移植に行くから日本でも」という短絡的な議論ではなく,こどもの権利を尊重しつつ救われるべき命を救う為には,今何をすべきかを真摯に論ずるフォーラムであった事は,たとえ長く苦しい道のりであっても正しい方向に進むべきという理念を再確認するものであった.
 このフォーラムの司会者として,子どもに関する専門集団である日本小児科学会がこの問題に取り組み続ける責務の重要性を新たにした次第である.


1.小児の権利と終末医療

細谷 亮太

 小児がんは治る病気として考えられるようになった.しかし,いまだに2〜3割の患児は生命をおとすことになる.そのような子ども達に,われわれ医療者はできるだけ手厚い緩和ケアを行わなければならない.成人の場合に比べて,小児では本人へのケアのみならず家族に対する心づかいも重要である.そのためにも,医師,ナース,ケースワーカー,保育士,心理士等からなる医療チームの存在が望ましい.
【家族との話し合い】
 治癒は望み得ず,死は避けられないと専門医が考えたら,医療チーム全体で相談し,遅れることなく患児の家族にそのことを伝える.分かり易く,正確に情報を伝え,共感を持ち患児側の気持ちを聞く.その後,医療側が提供できる方策を示す.大切なことは患児側を勇気づけ,絶対に見放したりはしないのだということを伝えることである.そこでひとつのオプションとして緩和ケアが提示される.
【患児との話し合い】
 病名を含めて病気の説明をすることは我が国においても常識になりつつある.しかし終末期において予後の告知をするか否かは,まだ議論のわかれる所である.米国では患児を巻き込んでカンファランスを積極的に行っている施設もある.
【実際の緩和ケアのポイント】
 これを行うのに大切なことは次のことがらである.
 ?適確な出発点
 ?密なコミュニケーション
 ?ペインコントロール
 ?良いバランス感覚にもとづく処置
 ?家族のケア(死後も)
 小児科医,特に小児がん患児を治療している専門医は終末期ケア,緩和ケアについて十分な知識を持つ必要がある.

【略歴】
細谷 亮太(ほそや りょうた)
1948年山形県生まれ.72年東北大学医学部卒業.72〜76年まで聖路加国際病院小児科レジデント.77〜80年テキサス大学MDアンダーソン病院癌研究所,クリニカルフェローとして勤務.80年から聖路加国際病院小児科に復職,94年聖路加国際病院小児科部長.専門は小児血液・腫瘍学,小児保健など.訳書に『君と白血病』(医学書院),『エリー』(保健同人社),『チャーリー・ブラウン なぜなんだい?』(岩崎書店)など.学会活動は,日本小児血液学会評議員,日本臨床血液学会評議員,日本小児がん学会理事,財団法人「がんの子どもを守る会」副理事など.

著書に 『パパの子育て歳時記』(毎日新聞社)
『いのちを見つめて』(岩波書店)
『赤ちゃんとの時刻』(朝日新聞社)
『のびのび育児百科』(法研)
『小児病棟の四季』(岩波書店)など
『川の見える病院から』(岩崎書店)
『はじめての育児百科』(主婦の友社)
『ぼくのいのち』(岩崎書店)
『旬の一句』(講談社)


2.我が子の脳死・親(小児神経医)の気持ちと子どもの権利

杉本 健郎

 古い話と思われるでしょうが,親にとっては昨日の出来事である.1985年3月15日午後当時6歳の長男は交通事故後救急病院へ運ばれ,4日目に親の勝手な判断で人工呼吸器を止め心停止後の腎移植をした.この時の出来事を再現した1987年NHK特集の一部を再放映するなかで親の視点から以下の点を指摘した.?主治医の哲学を患者の終末医療に押しつけないで,?死に逝くものと家族の別れの場と時間を保障して,?移植とは無関係な死に逝く側の気持ちが理解出来る専門コーディネーターが必要,?臓器移植は親の悲しみを和らげる勝手な行為であった.子どもの終末医療を親の意見で決めて良いか,さらに子どもの意向なしに親だけの意見で勝手に子どもの臓器を取り出して良いか,であった.
 上記以外で現時点での子どもの脳死の課題を列記する.
 1)子どもにも自己決定の論理が貫かれるべきである.今「子どもの脳死・移植」を語るとき,「子どもの権利条約」(1994年批准)にもあるとおり,子どもの意見表明権を保障すべきである.ドナーだけでなくレシピエントになる子どもにも.病める子どもを相手にする小児科医からこの視点を訴える時である.
 2)昏睡の一部である脳死状態は確かに存在する.いそがなければ,正確に非可逆的昏睡=脳死状態の診断はできる.死に限りなくちかい「ノー・リターン」という概念で脳死状態があり,その状態での1週間は短いが,3カ月や300日の期間は短くない.さらに,米国での15年以上同状態が続いている事実は1985年の厚生省の討論(1週間で心停止する状態)とは全く異なる.慢性脳死状態(厚労省研究班では「長期脳死」)の病態をどう考えるのか.
 3)広い意味では「植物状態」も同様にノー・リターンである.日常診療でサポートしている中脳以上がほとんどない状態の超重度児者の多くは,確かにノー・リターンである.
 4)1985年の竹内基準(厚生省基準)は再検討の必要がある.小児脳死診断基準案(2001)には精度や症例数に問題がある.検討にたえる症例が前方視的研究ではたった11例にすぎない.もう一度,厚労省研究班で小児脳死の基準案の再検討をすべきである.もしくは診断基準案について小児神経学会や脳死・脳蘇生学会独自で前方視的研究を開始すべきである.

【略歴】
杉本 健郎(すぎもと たてお)
1948年生まれ.篠山市出身,三田学園から関西医大へ.小児科で神経を専門とする.
1985年長男死亡.1996〜1997年カナダ・トロント小児病院神経科留学,同時に北欧・北米の障害児者医療,臓器移植の現状を視察.1987年から関西医大男山病院小児科勤務,兵庫医大小児科非常勤講師.

著書に 『着たかもしれない制服』波書房 1987共著・絶版
『剛亮の残したもの』朝日カルチャーセンター自費出版 1989共著
『北欧・北米の医療保障システムと障害児医療』かもがわ出版 2000
『医療的ケア・ネットワーク』かもがわ出版 2001共編著
『いのちキラキラ重症児教育』かもがわ出版 2002共編著
今春3月に「着たかも」の一部を含めて「子どもの脳死・移植」を出版予定


3.学校現場での「心と命の尊さのための『生と死の教育』」の実践と今後の課題

高木 慶子

1.今,なぜ「生と死の教育」か
 1)「生きている」ことの時間が希薄となった社会
 24時間営業するコンビニエンスストアなどにより空腹を,また冷暖房の完備により暑さ寒さを実感できなくなった.
 2)「死」を看取る体験が少なくなった社会(約90%が家庭外で死を迎える)
 本来は「生と死の教育」は家庭で体験的に学ぶものであったが,このような社会状況の変化により,学校現場での取り組みが必要となったのであろう.
 3)子どもによる犯罪が目立つ社会
 死が仮想的なものとなっている社会の反映でもあろうか.
2.教育現場での「生と死の教育」の実践と今後の課題
 1)1997年,神戸須磨区での小学生連続殺傷事件後,兵庫県と神戸市教育委員会はただちに「心の教育委員会」を立ち上げ,学校現場で「心と命を育てるための『生と死の教育』」を行うことを提言としてまとめた.それを受けて「兵庫・生と死を考える会」は教師たちが教育現場で使用できるための「生と死の教育」カリキュラムを作成し,それが実践されている現場を録画してモデルとなるビデオを製作した.また20002年12月には,第1回「実践事例発表会」を開催した.
 2)今後の課題

? 教育現場で「生と死の教育」を担当できる教師の養成が急務である.
現状は「生と死の教育」をどのように生徒たちに提示してよいのか,皆目理解出来ない教師たちが多い.それも当然である.教師自身が習ったことのない授業であり,今までは「タブー」となっていた内容であるために,きめ細やかな教師達への指導が大事である.
? 学校及び教師達の意識化の問題
例えば,総合学習の授業が教科の時間となってしまう現状で,折角「ゆとりと心の教育」のためにと考えられた授業時間が,そのためには活用されていない.
? 「生と死の教育」が日本中に普及するために,第一に,草の根的な動きとしてネットワークを作るために実践事例を多く発信することが大事なことと考える.第二に,各地の教育委員会及び校長は率先して生徒たちが「心といのちを育てる機会」が教育現場で多く与えられるように,努力する必要があるのではないか.
? 社会の価値観が変化することへの必要性.教育は社会の要求によって行われるものであるから.

【略歴】
高木 慶子(たかぎ よしこ)
熊本県生まれ.聖心女子大学文学部心理学科学.上智大学神学部修士課程修了.大学生リーダー養成所「コスモス会」・恵の園カルチャーセンター「教育相談所」・「キリスト者婦人の集い」を設立し,それらの責任者を勤め,神戸海星女子学院大学の助教授を歴任.現在英知大学教授,「兵庫・生と死を考える会」会長,日本ユニセフ協会兵庫支部評議委員,援助修道会会員.十数年来ターミナル(終末期)にある人々の「心と魂のケア」及び悲嘆にある人々(家族や親しい友人を亡くした人々)の「心のケア」に携わる一方,学校教育現場で使用できる「生と死の教育」カリキュラムとビデオを製作し,大人にも子どもにも理解出来る「いのちの尊さと大切さ」や「生と死の問題」「子育てに関する問題点」「人生の真の意義とはなにか」等幅広い分野で全国的にテレビや講演会などで活躍.また「子育て支援活動」や「男女参画社会支援活動」などでも活動中.
著書に 『死と向き合う瞬間―ターミナル・ケアの現場から―』(学習研究社)
『高木仙右衛門の覚書の研究』(サン・パウロ)<カトリック大学学術研究奨励賞受賞>
『大震災―生かされた命―』(春秋社)  『生きる』(春秋社)
『聖書によるキリスト』(サン・パウロ)  『希望へのかけ橋』(みくに書房)
『母の祈り』(聖母の騎士社)など


4.若きいのちとこころへのメッセージ

額田  勲

 最近,少年Aの問題をはじめ若き世代の凶悪犯罪の多発が社会的不安をかきたてているが,それらは単に個別犯罪者の精神心理の異常を超えて,日本社会の生命軽視の風潮,死生観の揺らぎともいうべき傾向と無関係とは考えられない.日本人の精神的な秩序ともいうべき伝統的な死生観を一言で概括するようなことは容易でないが,少なくとも国際的な趨勢に逆行してなお死刑制度を頑なに支持してやまないこの社会においては,死は独特の重い規範として位置付けられてきたというべきである.しかしながら,
 ?生命の死が簡単に復元されるテレビゲーム感覚が横行する高度情報社会
 ?人の死ぬ場所も効率的な病院に集中,死が人々から次第に隔離された高度管理社会
 ?優勝劣敗の法則下,社会的不適応者の虫けらの死というような市場原理(競争)社会
 ?人間の連帯が極端に脆弱化した少子高齢社会
等々,数多くの要因が相乗して死生観は揺らぎ,いのちの軽さは際立ってきたかと思われる.たとえば昨年11月末,熊谷市での3人の中学2年生によるホームレスへの暴行殺害などは象徴的な事件といえよう.
 当然,こうした社会状況におかれた若き世代に対して「いのちとこころの教育」がキーワードとして頻用される.だが,生と死の人為的操作を可とする高度技術社会の先端医療の多くはそのことと整合しうるだろうか.例えば脳死論争の慎重派の論理には日本社会の死生(価値)観が多面的,重層的に表現されているが,脳死移植はそれらを科学主義的に画一化していくことに他ならず,すなわち前者の「いのちの倫理」が後者の「生命の倫理」に一元化されるにおいて,若い世代の生死観の衰退,分裂は避けようもないであろう.

【略歴】
額田 勲(ぬかだ いさお)
1940年神戸生まれ.京都大学薬学部,鹿児島大学医学部卒業.80年より,神戸みどり病院院長.89年より,神戸生命倫理研究会代表.
終末期医療のあり方,脳死・臓器移植など先端医療のあるべき姿,災害医療と人間疎外,現代日本人の死生観など,今日の生と死をめぐる問題に関して,第一線医療現場の視点から問い続けている.

著書に 『いのち織りなす家族』(岩波書店)
『孤独死』(岩波書店)
『終末期医療はいま―豊かな社会の生と死』(ちくま新書)
『20世紀の定義,生きること/死ぬこと』(共著,岩波書店)
『脳死移植の行方』(共著,かもがわブックレット)
『脳死と臓器移植を考える』(編著,メディカ出版)
『脳死と臓器移植に関する十二章』(共著,兵庫県部落問題研究所ヒューマンブックレット)など


指定発言

1.息子の腎臓は生きていた!

吉川 隆三

 当時5歳だった長男の忠孝が突然,ギャーという大きな泣き声と共に私達は飛び起こされました.その後,激しい嘔吐と発熱に襲われすぐに掛かり付けのホームドクターに見てもらったのでした.そして,そのまま豊橋市民病院へ直行しました.1984年9月3日の朝が白々と明けてきました.私達が救急救命のナースステーションに通されたときに,目に飛び込んできたのは忠孝の「脳動脈瘤破裂」の脳出血を写し出したCT写真でした.
 ICUから一般病棟に移され七日間の闘病生活が始まりました.私自身もショックから熱発,四日目には急性肺炎で入院させられてしまいました.医師からの死の宣告を受けてしまった私はどうしたら息子を救うことが出来るのかをベットの上で頭を巡らしていました.その時に頭を過ぎったのは,その年のお正月に豊橋北ライオンズクラブの献眼・献腎登録の呼びかけに登録をしたのを思い出し「人様の体を借りて忠孝の小さな腎臓を活かしてやれるのではないか?」と私達から臓器提供を申し出ました.その時点では私達の頭には「社会貢献」とか「患者さんを助けたい」とかを考えた訳ではありません.息子の小さな腎臓が何処かで人様の体を借りてでも生きてくれればという気持ちで臓器提供を申し出たのです.
 当時,私達は「美談」として大きくマスコミ取り上げられてしまいました.そのことが後々私達を苦しめることになろうとは思いもしないことでした.なぜなら私達は「善意」で決断をしたわけではないからです.息子にとって「良かれ」と思って決断したからです.息子の「意志」を確認することなく,親の勝手で決断したことに親としての「責任」に心が揺れ動いたのです.果たして子供は受け入れてくれているのかと.このことが自殺しかねないほどまで陥れてしまったのでした.でも,知人により「知る幸せより,知らない幸せ」を教えられ立ち直ることが出来ました.80年代の移植事情は今のようではなく,厚生大臣(当時)からの感謝状一枚で,後のフォローさえなく,ドナー家族が悩んだり,苦しんでも行政からも医療側からも,何のフォローもなく「ほったらかし」状態に置かれていました.最近やっと移植コーディネーターが「サンクスレター」制度がドナー家族を少しは癒しているようです.99年に(社)日本臓器移植ネットワークが「ドナーファミリーの集い」が切っ掛けとなり,2000年ドナー家族がドナー家族を支援する「日本ドナー家族クラブ」を結成し活動を始めました.
 吉川家に転機が訪れたのは99年の春のことでした.臓器移植法成立後,初の脳死判定と移植が高知赤十字病院で行われ,私達は地元のテレビ局の取材を受け,ドナー家族の思いを語ったのでした.そのニュースを見たという視聴者から「十五年前に腎臓の提供を受けたものです.元気でいるとお伝えください」と,テレビ局を通じて連絡して来ました.「忠孝が生きていた!」妻と私は,その一晩中泣きあかしました.99年は吉川家にとって最高の年となりました.
 同じドナー家族であるノンフィクション作家の柳田邦男さんとのおつき合いが息子の生きた証を残してやりたいという思いを何かの形で残せればということから,柳田さんのお力添えを得て手記の執筆に取りかかったのでした.この本を読んだ読者から「ドナー家族の苦しい心情がひしひしと感じられ,感動しました」とお礼の手紙も頂きました.何か,やっと息子に残すものが出来たと思っています.

【略歴】
吉川 隆三(よしかわ りゅうぞう)
1949年瀬戸市生まれ.現在タクシー運転手として福祉タクシーに乗務.1984年当時5歳だった忠孝君が脳死状態になり,心停止後腎臓を提供.ドナー家族の心のケアとサポートを目的とする「日本ドナー家族の会(JDFC)」を設立する.
著書:『あぁ,ター君は生きていた―15年待ち続けた息子との“命の約束”』 河出書房新社2001


2.子どもが生きるということ…

木村 宏美

 守る会の会員の子どもたちの多くは生まれながらに心臓病をもっている,「先天性心疾患」といわれる病気で,少子化といわれる現代でも発症率はほとんど変わっていないそうです.医療技術の進歩はうれしいことで,治療が不可能とされた病気が治療できるようになり,多くの子どもたちが社会生活をおくれるようになりました.子どもの成長とともに生命の尊さを感じるとき,その陰に泣いた子どもや親がいることを忘れないようにしたいと思います.
 平成9年10月に「脳死からの臓器移植に関する法律」が施行されてから,日本でも脳死からの臓器移植ができるようになって,この5年間で23人の方がご自分の意志で臓器移植でしか助からないとされた患者に,いのちのリレーをしてくださいました.おかげで社会復帰をあきらめていた人は生きる希望がわいて,目の前が明るくなるに違いありません.けれども今の日本では15歳以下の子どもたちは臓器提供ができないことになっています.その結果心臓移植でしか助からないという子どもは,毎年何人かが海を渡ってアメリカに行っています.それには何千万円という膨大なお金を必要としますから自分で準備できる人はなく,募金に頼り,危険を冒しての海外渡航になります.もちろん子どもを助けたいと願っても,支援してくれる人たちが動かなければ不幸にして命を落とすことになるかもしれません.それも運命とあきらめなければいけないのでしょうか.
 私たちは子どもたちが生命の危険を背負いながら海外渡航しなくてもいいように「小さな子どもたちが国内で移植が受けられるように,法律の改正してください」と,運動を継続し,一日も早く子どもたちが日本で移植手術が受けられるように願っています.

【略歴】
木村 宏美(きむら ひろみ)
全国心臓病の子どもを守る会 兵庫県支部 支部長
全国心臓病の子どもを守る会は1963年11月発足.初代会長梅崎栄幸夫妻が,こどもの手術目的で訪ソ.手術はできなかったが,その報道をきっかけに,結成された.医療費助成制度を作り上げ,更生医療,小児慢性特定疾患治療研究事業,特別児童扶養手当,障害年金制度などの対象とする.親やこどもたちの思いを理解しあい,生命の大切さを共有し,生きていく元気を分かち合うのが,活動の原点.


3.子どもの死のさきに見えてきたもの

坂下 裕子

 その荒れた公立中学校がしたことは,教科の時間をやりくりし,2年通して生と命を感じるための授業に取り組むことでした.私が頼まれたのは,「我が子の死を通して」の話です.それまでに出会ったご遺族200名くらいの記録を作っていましたので,自分を含む何名かの母たちの死別体験を語ることにしました.ここには「命は大切にしないといけない」という教訓めいた言葉は含みません.短い命をどんなふうに生きた子どもがいたか,その子をどう愛し,その死をどれほど嘆く母がいたのかの実話だけです.生徒たちは,全員が微動だにせず,体で聞くように話を聞いてくれました.どの子が非行しているのか,まったく区別がつきません.このときはっきりと思いました.幼い命がものを語る.もういぬ子たちが人の心を動かしている.子どもの死は個人的な事象に終わるものではないのだと.
 急性脳症の会を作って4年が過ぎようとしています.元気な子が突然亡くなるなどすると,親たちは現実を受け入れることができず,何年も子の名を呼びつづけます.生涯この悲しみを「乗り越える」ことはできないでしょう.こうした会の役割というのは,溺れるように悲しみの底にいる家族を支えることに始まり,その先を生きていく意味を見出す場でもあります.家族にとって子どもの死は終わりではありません.いかにその子と共に生きることができるかが心の回復につながっているのを感じます.けれども長く険しい道のりが立ちはだかっています.支援はネットワークのように存在しなければ機能しないことを感じ,昨年7月,グリーフケア研究会を組織しました.看取りに関わる医療職から遺族と直接接する職業(教師など)まで,現在100名が登録し,情報交換しています.本来の仕事の合間を縫うようにして,子どもを亡くした家族の痛みをおもんばかる人たちの姿に,胸を熱くするとともに,最後に人を救えるのは人しかいないことを教えられています.

【略歴】
坂下 裕子(さかした ひろこ)
1961年兵庫県生まれ.
インフルエンザ・脳症の会「小さないのち」代表.
グリーフケア研究会事務局.
日本小児科学会,日本音楽療法学会会員.

著書に 『小さないのちとの約束―小児救急医療の充実を求めて―』
『天国のお友だち―親と子どもと小児医療―』(コモンズ)


主催者のまとめ

大阪医科大学小児科・日本小児科学会倫理委員会委員
田中 英高

 本日,シンポジストの方々は大変に貴重なご発表を頂いた.心から感謝申し上げる.皆様の発表を聞いて感じたこと述べさせていただきたい.
 それぞれの方が先立たれた子どもに対して,いつまでも尊い思いを持っておられる,そして,それは単に肉体,身体が尊いのではなく,その肉体の奥にあり,目に見えないものではあっても本当に尊い存在を感じておられる,と強く胸に響いた.そしてそれは,単に子どもとの思い出という過ぎ去った過去の出来事ではなく,永遠に生き続けるような存在を,どの方も心の奥深くで実感されているのでないかという思いを持った.その心の奥深いところにある存在,永遠に生き続ける何かを,人によってはspirituality,霊性,と呼んだり,もっと端的に魂と呼んだりする人もいるであろう.あるいは,そのような言葉では言い表すことができないものかもしれない.
 しかしそれが,まさしく,「いのち」と「いのち」のふれ合いであり,人として生まれた私達が最も大切にすべきものであり,尊重すべきものであると思うのは私だけではないであろう.これが子どもの死,いや,人の死を,そして人の生を考える「原点」である.
 今の医学は,これの原点を忘れているように思う.忘れているというよりも,我々医者自身がそのようなトレーニングを受けることがなかった.そして傲慢にも人の命を預かっているのだ.肉体だけしか扱わない,身体だけしかみない唯物論的な医学は,野蛮であり,時代遅れと言わざるを得ない.
 これからの時代は,今までのように医者しか扱えないような古い医学を越えて,「いのちといのちのふれ合い」の中で,人々を本当に幸福にすることができる新しい医療が必要とされている.医学の枠を越え,幅広い分野で多くの人々と交わりながら,人のため,自分のための「死と生の医療や教育」を創り上げていく,まさにその時なのだと強く感じた次第である.
 本日は多くの方々にお集まり頂き,第2回公開フォーラムの世話人を代表してお礼申し上げます.





(登録:03.04.09)


■■ 新生児聴覚スクリ−ニングの現状

 先天難聴および新生児期に発生する聴覚障害の発生頻度は1000出生中に1〜2人と言われている。聴覚障害は、2歳過ぎになっても殆ど意味のある言葉が話せないことで発見されることが多く、診断・療育開始は更に遅くなる。ところが、適切な時期に指導が行われなかった場合には、言語をはじめ、様々な面での発達に影響する。このため、早期に聴覚障害を発見し、発達の援助を行うことが重要であり、早期発見のために新生児聴覚スクリ−ニングが本邦においても実施され始めた。

1.全出生児を対象とした新生児聴覚スクリ−ニングの必要性
 従来、聴覚障害発生のリスクがある場合には、NICU退院時などに聴覚検査として聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response以下ABR)が実施されてきた。しかし、先天難聴の約半数は、これらのハイリスク児であるが、残りの半数は、出生時には何らの異常を示さないwell babyである。これらの児を早期に発見するためには、全出生児を対象とした聴覚スクリ−ニングを行うことが必要である。

2.新生児聴覚スクリ−ニングの方法
 聴覚障害の早期療育のために、生後早期に発見しようとするスクリ−ニングの試みは古くからあったが、聴性反応を用いた従来の検査方法は感度および特異度が共に低く、有効ではなかった。また、ABRは新生児にも正確な検査が可能であるが、防音室での検査、入眠剤投与が必要で、検査所要時間が長く、多数の児を対象としたスクリ−ニングに用いることは困難である。
 ところが、近年、ABRや耳音響放射(Otoacoustic Emission以下OAE)を用いた、自動解析機能を持つ、自動聴性脳幹反応(以下自動ABR)、誘発耳音響放射(TEOAE)、歪成分耳音響放射(DPOAE)などの新生児聴覚スクリ−ニング用の検査機器が欧米で開発された。これらの検査は従来の聴覚生理検査法とは異なり、熟練者でなくとも短時間で検査を実施でき、また自然睡眠下にベッドサイドで行え、解析結果が自動判定される。
 スクリ−ニング検査は、感度および特異度が高いことが望ましいが、これらの検査法の感度はほぼ100%に近く、特異度も従来の方法に比して極めて高い。自動ABRの感度は100%近いとされている。OAEは内耳機能を検査しているので、内耳は正常であるが中枢側の障害がある場合(後迷路性障害等)は関知できないが、well babyにおいては、これらの障害の頻度は極めて低いとされている。本邦での厚生科学研究班による約2万例のスクリ−ニングの追跡調査でも偽陰性例は認めていない。また、OAEは液体貯留により減弱するので、出生直後は鼓室にはまだ羊水が残っているために、十分な反応が得られずに、偽陽性となることがある。このため、要再検(refer)率は自動ABRより高くなる。鼓室の液体は通常4〜5日で気体に入れ替わる。再検査あるいは精密検査を必要とする要再検率は、米国では自動ABRで約3%、OAEでは約7〜8%とされている。本邦の成績では片側耳要再検を含めて要再検率は自動ABR約1%(両側要再検率は全体で0.4%、well babyのみが対象の場合0.2%)、OAE約3%である。

3.スクリ−ニングの実施時期
 新生児聴覚検査は、出生医療機関入院中に自動ABRまたはOAEを用いて聴覚検査を実施する。
 出生後の入院中が望ましいのは、次の理由が挙げられる。まず、医療機関にいる間が、全員を把握するのには最適である。また、検査は、児の自然睡眠下に実施するが、入院中であれば、児の状態を見計らって適切な時間に検査が出来る。再検査の機会も容易に得ることが出来るし、保護者への説明にも十分な時間を取ることが出来る。出生直後に検査を行うと、要再検になった場合に母子関係の確立を損なうという意見もあるが、保護者の納得が得られるよう十分な説明およびフォローを行うことにより、母子関係の確立の支援が可能である。
 もし、スクリ−ニング時期を退院後にした場合には、全員を把握する事は非常に困難になる。更に児が目覚めやすくなってくるため1回の検査の所要時間が長くかかる。例えば、生後3か月の児に自動ABRを行う場合には、外来で自然睡眠下での実施は非常に困難となる。また、要再検となった際には再度来院が必要であり、保護者の負担が大きくなる。また、スクリ−ニングの時期を遅らせるほど、診断、療育の開始時期が遅くなる。

4.わが国に於ける新生児聴覚スクリ−ニングの状況
 平成10年度に開始された厚生科学研究では、自動ABRを用いて新生児聴覚検査に関する検討を行い、約20,000例に対して生後の入院中に聴覚検査を実施し、両側聴覚障害28例および片側聴覚障害31例を検出し、新生児聴覚スクリーニングが有効に行えることを示した。ハイリスク児における発症頻度は、両側聴覚障害2.2%、片側聴覚障害1.7%であり、well babyにおける発症頻度は、両側聴覚障害0.05%、片側聴覚障害0.09%であった。これまで検査の機会がないwell babyにおいて、療育が必要な両側難聴は約2,000出生に1例と、現在マス・スクリーニングが実施されているどの疾患よりも高頻度であった。
 将来のマス・スクリ−ニング実施時の問題点検討のため、平成13年度より岡山県、秋田県、神奈川県、栃木県において新生児聴覚スクリ−ニング試行事業が開始され、平成14年度には北海道、埼玉県、東京都、佐賀県でも開始された。年間約3万人が公費補助を受けて新生児聴覚検査を受けている。また、モデル事業実施地区以外でも、千葉県船橋・鎌ヶ谷市、大阪府、福岡県など医師会が中心に協議会を結成してシステムを整えつつある地域もある。
 一方、日本産婦人科医会の平成14年3月の調査では、分娩取り扱い施設の26%には既に新生児聴覚スクリ−ニング用の機器が整備されていることが明らかにされており、多くは自費診療で新生児聴覚検査が実施されている。

5.欧米に於ける新生児聴覚スクリ−ニングの状況
 米国では従来ハイリスク児のみが聴覚スクリ−ニングを受けていたが、これでは先天難聴の半数しか捉えることが出来ないとして、1994年に米国保健省(NIH)の合同委員会は全出生児対象のスクリ−ニング、生後3ヶ月までの診断、生後6か月までの療育開始を勧告した1)。1998年にYoshinaga-Itanoらにより、スクリ−ニングにより発見された児の言語能力が健聴児に近いことが報告され、新生児聴覚スクリ−ニングの効果が示された2)。米国小児科学会は1999年にNIHの方針を支持し、全出生児の新生児聴覚スクリ−ニングを勧告した3)。現在、46州で聴覚スクリ−ニングが法制化されている。
 また、ヨ−ロッパにおいても、聴覚スクリ−ニング実施国が増加しており、ベルギー、スイス、オーストリア、スペイン、オランダなどでは公費負担で実施されており、昨年から英国でも大規模なモデル事業が開始されている。

6.本邦における難聴児の療育体制
 新生児聴覚スクリ−ニングは、早期に援助することを目的に行うものであるから、スクリ−ニングで異常を認めた場合には、早期に精密検査を実施して確定診断を行い、援助をおこなえる体制が必要である。本邦の難聴乳幼児は、厚労省管轄下の難聴幼児通園施設または、聾学校教育相談で指導を受けている。しかし、難聴幼児通園施設は全国で26か所しかない。また、聾学校では3歳以上は幼稚部の正式定員となるが、3歳未満は教育相談で指導されており、これに対する教員の正規の配置はなされていない。
 今後のスクリ−ニングの普及による療育開始年齢の低下に伴い、家庭への指導者の派遣も含む早期療育への対応、療育内容の充実、指導者の養成、施設の拡充・増設を図ることが急務である。
 平成14年12月に行った難聴幼児通園施設・聾学校幼稚部の調査では、現在すでに200名弱の聴覚障害児がスクリ−ニングにより発見されて指導を受けていることが明らかになった。我が国においてもスクリーニングにより発見された児は、療育の開始が確実に早くなっており、生後4〜6か月頃には補聴器装用が開始されている。

7.スクリ−ニングにおける小児科医の役割
 早期発見された場合は、乳児期の療育は聴能・言語訓練より母子関係の確立が中心になる。このため、乳児の養育についての助言・支援を行える小児科医が大きな役割を持つ。また、「要再検査」例が精密医療機関を受診するまでの保護者の不安が強い時期にも、小児科医の助言・支援が支えになる。聴覚障害有りと診断された場合にも、小児科医が子宮内感染等の内科的な検索の実施、全身的な評価を行い、ハイリスク児として発達の支援を行ってゆくことが求められる。
 また、プレネイタルビジットや母親学級、両親学級などでの小児科医による指導の中に聴覚スクリ−ニングの説明をいれて、妊娠中からの啓蒙を図ることも出来る。
協議会には小児科医の関与が是非とも必要である。

文献

1) Joint Committee on Infant Hearing : Joint Committee on Infant Hearing 1994 Position Statement. Pediatrics 95:313,1995
2) Yoshinaga-Itano C, Sedney AL et al.: Language of Early- and Later-identified Children With Hearing Loss. Pediatrics 102:1161-1171,1998
3) American Academy of Pediatrics. Newborn and infant hearing loss: Detection and Intervention. Task Force on Newborn and Infant Hearing. Pediatrics 103:527-530,1999.





(登録:03.04.08)


■■ ワクチンに含まれる水銀化合物(チメロサール)について

 ワクチンに含まれる水銀化合物(チメロサール)について次のように回答がありましたので掲載いたします。



※下記をクリックすると拡大された回答をご覧いただけます。






(登録:03.02.12)


■■ インフルエンザ等による発熱に対して使用する解熱剤の慎重な使用についての注意喚起の依頼について

厚生労働省医薬局安全対策課


 インフルエンザ流行期にあっては、解熱鎮痛剤等を使用するに際し、患者のインフルエンザ感染の可能性に十分留意し、以下の医薬品の慎重な使用にご配慮願います。

1.サリチル酸系医薬品
1) 平成10年12月、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サザピチン、サリチルアミド及びエテンザミドについて、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする使用上の注意等の改訂を指示し、注意喚起を行った。 
2) 平成13年6月、医薬品・医療用具等安全性情報No.167により、特にサリチル酸系医薬品を配合する総合感冒薬に関して、インフルエンザ流行期における慎重な使用を重ねて呼びかけた。
2.ジクロフエナクナトリウム
1) 平成12年11月、インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究及び病理所見、ならびにジクロフェナクナトリウムの薬理作用から、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させるおそれがある旨を、緊急安全性情報により注意喚起を行った。
2) 平成13年5月、ジクロフェナクナトリウムについてもサリチル酸系医薬品と同様に、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする使用上の注意などの改訂を指示し、注意喚起を行った。
3.メフェナム酸
 平成13年5月、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会における日本小児科学会、研究者等の意見をふまえ、「小児のインフルエンザにともなう発熱に対して基本的に投与しない」旨が合意され、同年6月、使用上の注意などの改訂を指示し、注意喚起を行った。





(登録:03.01.30)


■■ 提言:運動遊びで,子どものからだと心を育てよう


日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
高橋 香代 村田 芳子 田辺  功
片岡 直樹 冨田 和巳 谷村 雅子
杉原 茂孝 安田  正 清野 佳紀

1.生活環境の変化が子どものからだと心に及ぼす影響

 この20年間の生活環境と生活文化の変化は,子どものからだと心に大きな影響を与えている.交通手段の発達や自動化・都市化した生活環境,外遊びや運動遊びの減少,テレビ視聴・テレビゲームなど非活動的な遊び時間の増加,塾通いや夜型生活により,子どもの日常生活における活動量は減少してきた.発育発達期にある子どもの日常生活活動量は,持久力や瞬発力,敏捷性などの体力・運動能力の獲得に影響1)を与えており,文部科学省の体力・運動能力調査報告書2)でも90年代の運動能力の低下が指摘されている.同時に学校の管理下における負傷や骨折の発生頻度も90年代に急増3)図1しており,身のこなしが不器用で,負傷しやすい子どもが増えているといえる.体力・運動能力調査報告書2)4)によるこの20年間の運動実施状況(図2)を比べると,中学生・高校生では週3〜4日以上運動を実施する生徒の率が増加する一方で,しない生徒も増加する二極化現象が認められる.小学生では,2極化現象はなく運動実施頻度は減少する一方といえる.
 食生活の影響も加わって,小児肥満は80年代,90年代と増加し続けている.現在では小学校高学年から中学校1年生をピークに肥満傾向児が10%5)を越え,学童期における高血圧・高脂血症などの生活習慣病6)の出現もまれではなくなった.
 子ども達の生活は,核家族化の進行,少子化,遊び場を失う中で仲間と群れて行う運動遊びが減少し,テレビ視聴(図3)で余暇を過ごし,テレビゲームで友達づきあいをする現状である.児童・生徒の余暇の過ごし方7)の1位はテレビ視聴で7割近く,2位3位はテレビゲーム・漫画で占められている.とりわけ幼児のテレビ視聴時間が,2時間40分余りと長時間化8)しており,現代において活動的な日常生活は幼児期からも失われつつある.この幼児期のテレビ視聴時間の増加やテレビゲームの影響,遠くを見て遊ぶ外遊びの減少により,80年代以降の視力低下の若年齢化や視力低下者の増加を招いている可能性5)が高い.
 一方で児童生徒の心の健康状態については,日常的にいらいら,むしゃくしゃする児童生徒は約2割,時々を加えると8割と報告9)されている.また小学校,中学校,高等学校と学校段階が上がるにつれて日常的に不安を感じると回答した割合が高くなっている.その理由として進路・進学,友だち関係,授業がわからない,時間的ゆとりがないなどが上げられている.東京都教育委員会の調査10)では,児童・生徒が感じるここ1カ月ほどのからだや心の状態で,眠いは6割を超えており,横になって休みたいが5割近く,目が疲れる,体がだるいが3割前後,根気がない,いらいらする,急に立つとめまいがする,肩が凝る,思いっきりあばれたい,腰や手足が痛いなどが4分の1前後と,なにかいらいらして,からだが疲れた子どもが増加している状況といえる.

2.「体ほぐしの運動」の学校体育への導入

 こうした最近の子どものからだと心の実態に対して,平成14年度からの新学習指導要領11)では,「心と体を一体としてとらえる」という観点から,体育の内容として「体ほぐしの運動」を新しく導入している.「体ほぐしの運動」とは,「いろいろな手軽な運動や律動的な運動を行い,体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによって,自分や仲間の体の状態に気づき,体の調子を整えたり,仲間と交流したりする運動」である.「体ほぐしの運動」の特徴は,仲間と触れ合い,直接関わりあいながら行うところにあり,具体的な活動12)として,2人組で行うリラクゼーションやストレッチング,リズムにのって楽しく動く体操やダンス,さらに,仲間と群れて行う運動遊びなど多様な運動が含まれている.このようなからだによるコミュニケーションを通して,子どもの心とからだを解きほぐし,同時に人間関係の緊張も解きほぐして,「もっと運動したい」という状態をつくっていくのが「体ほぐしの運動」といえる.
 学校体育への「体ほぐしの運動」の導入は,これまでの「より速く,より強く,より上手に」といった競争や,技を追及してきた体育・スポーツのあり方を打開し,生涯学習時代の新しい体育・スポーツの創造につながる契機として期待されている.
 すでに多くの学校で「体ほぐしの運動」の実践が始まっており,東京都下では,小学校5年,6年の児童(1625人),教師(207人)を対象にした意識や指導実態調査13)が行われた.その調査結果では,児童が運動をしていて楽しいと思う時の第一位は,友だちと一緒(77%)に運動しているときである.また,体ほぐしの指導を行った教師の約半数が,心とからだをほぐすことと仲間との関わりを大切に指導していると回答し,「体ほぐしの運動」を行うことによって「ほぐれている」「少しほぐれている」を合わせると,約9割の教師が児童の心とからだがほぐれていると感じていた.中には「不登校児に変化が起こった」という事例や「学級崩壊のクラスが変わった」という事例14)も報告されている.
 「いつでも,どこでも,誰とでも」気軽にできる「体ほぐしの運動」は,学校体育の内容だけでなく,家庭での親子の運動の機会に,更には地域での様々な交流の機会に広がっていく可能性が高く,学校週5日制の完全実施を迎え,家庭や地域での新しい運動の内容として注目される.

3.提言

 「体ほぐしの運動」の学校体育への導入は,「時間・空間・仲間」という三つの間(サンマ)が無くなりこれまでの「体によるコミュニケーション」である運動遊びを忘れた現在の子どもたちに,運動の心地よさや楽しさを重視し「体によるコミュニケーション」の重要性と可能性に目を向けて,子どものからだと心を育むことを期待したものである.小学校に入学するまでの幼児についても,最近テレビ視聴やテレビゲーム遊びの時間が増加し,親子でじゃれつくよりもビデオ教材で子育てをする状況であり,「体によるコミュニケーション」の運動遊びの重要性を喚起する必要がある.
 厚生労働省の健康日本2115)も,児童・生徒に対する身体活動・運動の対策として,児童については身体活動をともなった遊びの時間を増加させる必要があり,また不活動な時間を減少させるという視点も重要と指摘している.さらに環境対策として,安全な遊び場や遊び時間を確保できるよう社会環境を整えていく必要があると提言している.
 実際,体力・運動能力調査報告書2)によれば,1日の運動・スポーツ実施時間別に体力テストの合計点(図5)を比較すると,小学校低学年では差がないが,中学校,高等学校ではその差が明確になる.一方でテレビ視聴時間別の体力テストの合計点にはそれほどの差はない.このことは,運動やスポーツをする活発な時間の確保が大切であることを示しており,保護者・家族,友だち,地域の人々との関わりの中での取り組みが要請されている.
 そこで,日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は,幼児期から子どもたちが活動的な日常生活をおくり,からだと心を人との関わりの中で育て,スポーツ文化の享受や健康な生活を身につけるために「運動遊びで,からだと心を育てる」ための提言を行いたい.
 1)子どもたちに
 家族や友だちと運動遊びを楽しみましょう.
 運動遊びは,気持ちがいいし仲間と楽しく交流する機会となって,からだと心を育ててくれます.テレビやテレビゲームは時間を決めて楽しみましょう.
 2)保護者の皆さんへ
 運動遊びや,「体ほぐしの運動」で家族が触れ合う機会や,こどもたちが仲間と遊ぶ機会を増やそう.
 幼児期には,例え1日10分間でも,家族で触れ合って遊ぶ「じゃれつき遊び」をしよう.テレビ・ビデオに子育てをまかせないで,からだと心を,人との関わりの中で育てることの大切さを感じよう.
 地域の色々な人が参加して一緒に運動の心地よさ,楽しさを感じることができる遊びや,イベントの企画をしよう.
 安全な遊び場の確保や,遊ぶ時間のゆとりがある社会環境づくりに取り組んで地域に運動遊びを取り戻そう.
 3)小児科医に
 機会があるごとに,子どもや保護者に,運動遊びをすすめよう.
 地域の色々な人が参加して一緒に運動の心地よさ,楽しさを感じることができる遊びや,イベントの企画をしよう.
 安全な遊び場の確保や,遊ぶ時間のゆとりがある社会環境づくりに取り組んで地域に運動遊びを取り戻すための取り組みをしよう.

文  献

1) 加賀 勝,他.成長期における日常生活活動量の体力・運動能力に及ぼす影響.日小児会誌 2002;106(5):655―664.
2) 文部省体育局.平成12年度体力・運動能力調査報告書,2001.
3) 日本体育・学校健康センター(日本学校安全会).学校の管理下の災害―4から17:1969―1999.
4) 文部省体育局.昭和55年度,体力・運動能力調査報告書,1981.
5) 日本学校保健会.平成13年度版,学校保健の動向,2001.
6) 日本学校保健会.平成10年度児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書,2000.
7) 内閣府.第2回青少年の生活と意識に関する基本調査,2001.
8) 東京都教育委員会.学齢期からの健康づくりのために―東京都公立学校児童生徒の健康実態等調査結果報告書,1997.
9) 白石信子.伸び続ける幼児の教育テレビ視聴率―99年6月幼児視聴率調査から.放送研究と調査,1999.
10) 文部省.国民の健康・スポーツに関する研究,1998.
11) 小学校学習指導要領解説・体育編.
12) 文部科学省.学校体育実技指導資料第7集体つくり運動―授業の考え方と進め方,東洋館出版社,2000.
13) 平成13年度第46期東京都教育研究員(小学校体育)自主報告書,2002.
14) 村田芳子:「体ほぐし」が拓く世界―子どもの心と体が変わるとき.光文書院,2001.
15) 健康・体力づくり事業財団.健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動について),2000.


※各図をクリックすると拡大された図をご覧いただけます。


図1 学校管理下の負傷・骨折発生率の変化



図2 運動実施状況



図3 テレビ視聴時間



図4 視力1.0未満の児童・生徒の増加



図5 運動実施時間とテレビ視聴時間のどちらが体力に影響を与えるか



(2001.4.23 朝日新聞から)




(登録:02.11.20)


■■ 「論文や学会・研究会等で使用される患児の顔写真その他の取扱いについてのガイド ライン」

日本小児科学会倫理委員会

1) 患児の顔写真を取り扱う会員は、患児の人権及びその家族の意志について最大限配慮し、盗難や紛失を未然に防ぐよう留意する。
2) 患児の顔貌の一部あるいは全顔貌を公開が必要な場合は、あらかじめ患児自身及びその親権者の承諾を得ておくべきである。その際、親権者の文書同意があることが望ましい。
3) 個人が同定されることによって生じるリスクが考えられる場合、公開される顔貌の部位は必要最小限にとどめるよう配慮する。


※なお、具体的な事例については下記の附録資料を熟読のうえ判断することが望ましい。

「論文や学会・研究会等で使用される患児の顔写真その他の取扱い」について

 これまで医学研究における患者の権利をめぐって、様々な倫理的問題が世界各国で討議されてきた。例えば、1964年6月の第18回世界医師会で採択された「ヘルシンキ宣言」(1975年・1983年に改訂) などが代表的な国際宣言の一つとして挙げられる。近年の我が国においても、2000年4月に厚生省 (現・厚生労働省) 科学研究費補助金健康科学総合研究事業「疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関する研究と倫理ガイドライン策定研究班」による『疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関するガイドライン』(http://www.jichi.ac.jp/ethics/images/guide.pdf)の策定が記憶に新しい。また、対象を子どもに向ければ、1989年11月20日の 国際連合総会第44会期採択による「子どもの権利条約」(1994年5月22日に我が国においても発効) が代表的である。この度の事案についても、基本的には上述の国際的に承認されているガイドライン、あるいは、国内においては公式に着手されている研究報告書等を参考にすることが有効と考えられる。

 当事者個人の利益が研究対象集団全体の利益に上回らない限り、原則として当事者の顔写真の公開は避けることが望ましい。これは上述のヘルシンキ宣言 (序言) の第5条にある「ヒトを対象とする医学研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない」ということ、また、子どもの権利条約中にある「子どもの最善の利益が第一次的に考慮される」べきことに則る考え方ではある。如何なる学術的根拠があれ、本人の顔写真を公開することにより少なくとも、その子ども自身の最善の利益が図られる事例は稀と考えられるからである。
 しかしながら、学術的・研究的・教育的見地などから、本人と同定され得る顔写真を用いざるを得ない況は確かにある。このような場合、「顔写真」は種々の個人情報の中でも、情報の由来する個人への遡及を可能とする識別力が比較的強いものであると考えられるため、子どもとその家族を含む当事者側の将来に悪影響を及ぼさないための最大限の配慮をもって、幾つかの厳格な条件を設けておく必要がある。

 具体的には、上述の『疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関するガイドライン』の第1部第10章「個人情報保護対策」の各項目に留意することが有効であると考えられる。特に、(10-1) 個人情報保護教育【関係者への個人情報保護に関する教育・啓発活動】を前提として、(10-3) 情報管理【I. 漏洩リスクの最小化、II.匿名化の推進、III. 情報取り違えの世予防】及び、(10-4) 情報廃棄【不要となった情報は不正に利用されないよう十分配慮して速やかに処分すること】は、この事案においても必須であると考えられる。

 したがって、
【個人情報保護対策】
<写真情報を含む個人情報保護教育>
 如何にこの事案についての統一的見解が示されても、学会関係者への個人情報保護に関する教育・啓発活動の実施なくして問題は解決しない。研究デザインの段階から、結果の開示の段階に生じ得る様々な問題について予測し倫理的にも適切な研究計画が自ずから立てられるよう、顔写真についての配慮も含めて全関係者に十分理解してもらうだけの啓発の機会を設けていく必要がある。

<写真情報の漏洩リスクの最小化>
 小児の顔写真を論文や学会・研究会等で用いる場合においても、何らかの理由により学術的枠組外の一般にもたらされるリスクは絶対的には否定し得ない。患者の顔写真がスライドやOHP、テープなどの視聴覚媒体、学術誌等の印刷媒体、あるいはインターネット・プロトコル等のネットワーク流通媒体に記録される場合、不特定多数の閲覧に供されることも考えられ、個人への遡及可能性が高まることが推察される。従
って、公表に際して顔写真を取り扱う関係者を制限し、管理責任者を明らかにすることで盗難や紛失を未然に防ぐよう配慮される必要がある。

<写真情報の非連結化 (匿名化) の推進>
 目線を入れたり、解像度をぼやけさせる等の手法によって顔写真を加工して公開することで、個人が同定されるリスクを最大限回避するよう留意する。特に、人格権やプライバシー権に抵触するリスクが生じやすいことから、少なくとも公開される顔の部位は必要最小限にとどめるよう配慮されるべきである。その統一的基準について明らかにすることは非常に難しいが、適切なインフォームド・コンセントを講じることで、少なくとも顔写真が公表される当事者側の了解を得ておくべきである。特に、学術的・研究的・教育的見地などから全顔貌の表示がやむを得ず必須、または推奨的とする場合、必ず文書で保護者の了解を取っておくことが義務付けられるべきと考えられる (下記インフォームド・コンセントに関する項をご参照)。

<写真情報取り違えの予防>
 上記遵守事項を確実なものにするため、顔写真の公表に際しては当該研究者以外の第三者による確認体制をあくまでも公式なものとして学会側は整えておく必要がある。今回のような倫理的問題を扱う事案では、本倫理委員会が適当であると考えられる。

<写真情報の廃棄>
 研究成果の公表 (開示) 後に不必要になった場合は速やかにこれを処分する。

【小児の顔写真公開に際してのインフォームド・コンセントについて】
<文書による同意の必要性>
 上記遵守事項が決して研究者側からの一方的なものにならないよう適切なインフォームド・コンセントが顔写真が公表される当事者側と交わされることが必要である。上述のヘルシンキ宣言「B. すべての医学研究のための基本原則」の第22条においても「医師は対象者の自由意志によるインフォームド・コンセントを、望ましくは文書で得なければならない。文書による同意を得ることができない場合には、その同意は
正式な文書に記録され、証人によって証明されることを要する (日本医師会訳)」とある。
 また、昨今の国内外のインフォームド・コンセントをめぐる動向を鑑みても、インフォームド・コンセントについては如何なる臨床状況であれ、文書による同意 (文書同意) を最終的に得るべきものと考えられる。それが叶わない場合でも、法的に実効性のある代諾者 (この事案の場合は保護者) による文書同意が求められ、特に、学術的・研究的・教育的見地などから全顔貌の表示がやむを得ず必須、または推奨的とす
る場合、必ず文書で保護者の了解を取っておくことが義務付けられるべきと考えられる。

<小児にインフォームド・コンセントを行う際の遵守事項>
【同意能力が認められないことがある人々が対象の場合 (自律性を認めることが難しい事例の場合)】
顔写真が公表される子どもが15歳以上であるときは、本人の同意能力を認め、成人の場合と同様、本人に対しインフォームド・コンセントの過程を経る。但し、未成年者が対象の場合には、成人の時以上に、分かりやすい説明方法・言葉が選択されなければならない。質問しやすい雰囲気が作られることも重要である。顔写真が公表される子どもが15歳未満のときには、代諾者 (この事案の場合は保護者) となるべき者から同意を得て研究を行うことが出来る。但し、15歳未満の者であっても、研究内容やリスクについて、本人に分かる言葉、分かる方法で十分に説明を受け、本人の意向確認・拒否の機会の保障がなされることは重要である。本人が拒否の意向を示している場合は、たとえ代諾者となるべき者の同意が得られている場合でも、その子どもの写真が公表されることは控えられるべきである。(以上の表現は、前述の『疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関するガイドライン』第1部・第7章に準拠している)

【学会統一見解に著しく背反する行為を行った場合の処置について】
上記の事項に著しく背反するような公表を行った結果、損害が生じた場合は、その研究のスポンサーとなり、またはそれを保証した機関は、公的な謝罪または補償によってその損害を償うべきである (CIOMS : 47, 前掲書掲載の訳文に準拠)。しかしながら、今回は、あくまでも方向性を示すためのガイドライン作成が目的であるため、これについては考慮の対象としない。


【個人と集団との間に生じる倫理的ジレンマについて】
 集団の福利を追究すれば個人の福利に制限が生じ、個人の福利を追究すれば集団の福利に制限が生じることは、如何なる問題においても当然起こり得る倫理的ジレンマと言える。おおよそ医療倫理の諸問題にはこうした力点の不均衡から価値観の対立が生じるケースが多い。顔写真を公開される小児患者個人にとって利益にならない場合でも、それが公開されることにより同様の疾患に苦しむ小児患者たち全体の病理解明につながることもあり得るわけである。自己と他者との利益を如何に両立させていくかという倫理的命題もさることながら、この事案が子ども自身の将来に重大な影響を及ぼすおそれもあるだけに、今後も引き続き慎重に議論されていく必要がある。




(備考)

※現在のところ、我が国では「肖像権」は法律の条文として存在しないが、数々の判例によって法的に認められている。したがって、肖像権の侵害行為を法的に訴えることは十分可能である。

<子どもについての国際条約・宣言など>
子どもの権利に関する宣言 (子どもの権利宣言:Declaration of the Rights of the Child)
国際子ども年 (国際児童年:International Year of Child)
児童の権利に関する条約 (Convention on the Rights of the Child)
子どもの生存、保護および発達に関する世界宣言 (World Declaration on the Survival, Protection and Development of Children)
子どもの権利行使に関する欧州条約 (European Convention on the Exercise of Children's Rights)

<あくまでもご参考まで (抜粋)>
◎日本神経学会 (最終更新日:2002年9月20日)
学会誌『臨床神経学』投稿規定
d) -7:「患者の顔写真を使用する場合は、個人を特定出来ないように目の部分を隠すなど工夫する。患者を特定できる写真が必須のばあいは、患者あるいは親権者より承諾書を添付する。

◎日本小児がん学会
機関誌『小児がん』投稿規定
2) - VII.「患者の顔写真は遠慮下さい。」

<以下抜粋、通常の学校場面での問題を扱ったごく普通のホームページです。当然医療の問題とは分けて考えております。ただ我が国の社会通念において、一般的な子どもの顔写真についての価値観を知るために参照してみた次第です>

◎鎮西町立 加唐小中学校『学校用ホームページ運用要領』(平成10年12月16日)
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13353/rule.html
◎呼子町立 呼子中学校『学校用ホームページ運用要領』(平成10年12月16日)
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13451/unyou.html
<2校とも同文>
「2. 個人情報の保護及び著作権の問題については、下記のような点に十分配慮する。」
I. 特定の子どもの顔写真が大きく出るものは避けるとともに、氏名と顔写真が一致するような掲載方法を避ける。
II. 子どもの写真や名前、作品などを掲載する時は、本人及び保護者の了解を得る。
III. 職員や保護者についても、上記I項、II項に準じて対処し、個人情報の保護については十分な配慮を行なう。

◎静岡教育サークル・シリウス『サイトを作るにあたっての配慮事項』
http://homepage1.nifty.com/moritake/sirius/siriusu.html
・子どもや職員の名前、及び個人情報を載せない。
・個人が特定できるような、子どもの顔写真を載せない。
・児童作品を掲載する場合、名前を臥せる。親・本人の許可をなるべく得る。

◎岐阜県教育センター・田中正己氏『ホームページの作成』
http://www.edu.ipa.go.jp/E-square/gifu/htm35.html
5. 児童生徒のプライバシー(個人情報)を保護したホームページ
児童生徒を犯罪に巻き込まれないように努力することは、大切な子どもを預かる学校の使命です。子どもの顔写真をホームページに掲載することは、効果もありますが大きな危険も伴います。そこで、次のような基準を設けている学校もあります。
・プライバシーに関する情報(個人情報)の掲載は、どうしても必要な場合だけにする。
・児童生徒の作品(著作物)や顔が写った写真を公開するときには、本人とその保護者の了解をとる。
・顔が写った写真を掲載する場合は、その人物の実名を掲載しない。どうしても掲載が必要な場合は、絶対に顔と名前が一致しないようにする。

◎安原 城次氏 (県立岡山養護学校 睦学園学級小学部)『著作権の校内研修』
http://www.jyose.pref.okayama.jp/db/kadaiken/syou/20/
「また,養護学校ということで,特殊学校紹介展のお知らせ等,不特定多数の人たちへ向けての情報の発信などのときは,事前に保護者に子どもの顔写真等を掲載してもいいかどうかの確認の問い合わせをしている (肖像権の保護)。」

◎道後小学校PTA『ホームページについてのアンケート集計結果』
http://www.matsuyama-edu.ed.jp/ptaren/t/psdougo/yomoyama/ankeeto.html
Q:子どもたちの写真をのせてほしい。
A:プライバシーの問題上、子どもの顔写真は鮮明にはのせられません。





(登録:02.10.08)


■■ 「新生児マススクリーニング検査と生命保険」における遺伝情報の取り扱いに関する現状認識とそれに基づいた提書

新生児マススクリーニングと生命保険に関する現状認識

 昭和52年先天代謝異常症の阜期発見・早期治療を日的として開始された新生児マススクリーニングは、一部検査停止になった疾患もあるが、昭和54年に先天性甲状腺機能低下症、昭和63年に先天性副腎過形成の内分泌疾患が追加され現在に至っている。その受検率は100%に近く、わが国の国家事業として位置づけられている。対象となるのは、新生児期に発見し治療を始めなければ生命維持や健常な知能保持が難しい疾患であり、新生児マススクリーニングによる早期発見・早期治療で著しい予後の改善が期待される疾患である。実際に新生児マススクリーニングの導入後、これらの疾患に罹患している患者の牛命予後、および知能予後は著しく改善している。なかでもフェニルケトン尿症、先天性甲状腺機能低下症においては、患児の生活の質を著しく向上させ、健常児と何ら変わらない生活を送ることが可能になり、そのことはスクリーニングで発見された症例の追跡調査で確認されている。私たちは、この30年に満たない経験で、この新生児マススクリーニングが疾患の自然歴を大きく変えてきたことを経験した。
 現在ヒトゲノム計画は、単一遺伝子疾患の解明だけではなく、”ありふれた病気”である生活習慣病の解明へと大きく前進しつつある。我が国においても、平成11年度に、がんや糖尿病、高血圧、喘息などの”ありふれた病気”の関連遺伝子の究明と、それらの治療に必要な新規薬剤の開発を目的とする国家プロジェクトとして、ミレニアムプロジェクトが開始された。われわれはこのプロジェクトに、新生児マススクリーニングと同じような大きな成果を私たちにもたらしてくれることを期待している。”ありふれた病気”は、進行してからでは治療が容易でなく、それだけにこうした病気への易罹患性を予測させる遺伝情報の解明や、疾患の進行を阻止するような薬剤の開発、および生活習慣の予防的改善などに期待が寄せられている。私たちは各個人の遺伝情報をもとに、検査や治療を選択し、有効な薬剤の投与を行うという状況を将来像として描いている。

 現在われわれが最も危倶しているのは、このような個人の遺伝情報が疾患の予防、治療などの医療情報として利用される以外に、雇用や保険などに不適切に使用される危険性である。

 昨年行われたフェニルケトン尿症、先天性甲状腺機能低下症の患児を対錬にした学資保険、生命保険の加入状況調査によって明らかにされた内容は、こうしたわれわれの危倶を裏付けるものであった。国家が運営する郵政事業庁の学資保険において、この2疾患の患児は加入を一律に拒否されていた。個人の健康増進を目的として解明された遺伝情報が不適切に利用されていたのである。このことから、われわれは”ありふれた病気”での個人の遺伝情報が将来同じように扱われる可能性を強く懸念している。個人が遺伝情報に基づいて差別される、遺伝的差別については、これを極力排除するように世界人権宣言にも誕われている。欧米諸国では、遺伝情報を雇用、生命保険などに利用することに規制、ないしは反対する方向で議論が開始されている。残念ながら、われわれは、新生児マススクリーニングで発見され、満足すべき治療結果を得た患児たちの権利が、こうした形で侵害されていた事態に今日まで気づいていなかった。これから検討すべき課題は、単にこの2疾患患児の権利保護について検討することに止まらず、わが国において遺伝情報を適切に利用するルール作りを考えることである。

生命保険契約における遺伝情報使用に対する見解

 1.「人はみな生まれながらの尊厳と権利において平等である」ことは、わが国も批准している世界人権宜言に謡われた基本要綱である.また「何人も遺伝的特徴の如何を問わず、その尊厳と人権が尊重され、互いに平等であって、いかなる差別の対象ともならない」ことがユネスコ「ヒトゲノムと人権に関する世界宜言に謳われている。したがって、この要綱をできる限り尊重した政策がとられるべきである。
 2.新生児マススクリーニングは昭和52年、先天代謝異常症の早期発見、早期治療を目的として開始され、現在ほぼ100%の受検率となっている。少なくともフェニルケトン尿症、先天性甲状腺機能低下症の2疾患にっいては、患児はそれぞれ低フェニルアラニン食、甲状腺製剤の投与により、健常児と変わらない生活を送ることが可能となった。したがって、生命予後、知的予後を理由に保険加入を拒否する医学的根拠はない。 3.現在、わが国のミレニアムプロジェクトを含むヒトゲノム研究において、生活習慣病など"ありふれた病気"の易罹患性に関する遣伝子研究がすすめられている,その結果、近い将来、個々人の遺伝情報を基にこれらの疾患を発症前に予知し、予防する事が可能になると思われる。しかし、この技術進歩を実際の社会で応用するにあたっては、遺伝情報利用に関する社会的に認知されたルールが成立していることが前提である。それは保険加入、雇用、結婚などにおいて重大な差別を招来するようなものであってはならない.

 以上の見解を踏まえて、日本人類遺伝学会理事会、日本先天代謝異常学会理事会、及び日本マススクリーニング学会理事会は、遺伝情報使用に関して検討した結果、以下の提言をおこなう。

提言

1.保険契約における遺伝情報の使用を人権保護の観点から一時保留すること。

2.関係諸官庁は、保険事業、雇用問題などを含む社会・経済政策において、個人の遺伝情報をどのように保護し、どのように利用していくのかを検討する会議を開設し、我が国の実情に沿った方策を検討すること。

*遺伝情報:遺伝子解析による結果だけではなく、遺伝子変異に纂づくと考えられる臨床検査データ、対象者の家族歴などを含む。




日本人類遺伝学会
理事長
倫理審議委員会委員長
松田一郎
新川詔夫
日本先天 代謝異常学会
理事長
倫理委員会委員長
衞藤義勝
松田一郎
日本マススクリーニング学会
理事長
倫理委員会委員長
松田一郎
鈴森 薫
日本小児内分泌学会
理事長 清野佳紀





(登録:02.04.03)


■■ 牛海綿状脳症に関する我が国の牛肉などの安全性についての見解

平成14年2月
日本小児科学会栄養委員会
委員長 小池通夫


 厚生労働省と農林水産省が牛海綿状脳症(BSE)への緊急対策として2001年10月18日に実施をはじめた屠殺牛の全頭BSE検査,および保存中の検査開始前牛食肉全部の買い上げとその焼却処分の決定,さらに屠殺後の牛神経部分による食肉の汚染防止策の徹底,全国で飼育中の牛の番号化によるtraceabilityの確立などの結果,わが国の国産牛肉の安全性は一応確保されたといえる.一方,わが国で食用に供されている牛食肉の70%は輸入品であるが,英国やEU諸国などBSE汚染地域からの輸入もすでに全面禁止されており,輸入牛食肉も現在は一応安全と考えられる.ただし,牛餌としての肉骨粉を排除するなどのBSE感染対策が完全であったとしても,潜伏期を考慮すると今後少なくとも8年はBSEの発生の可能性がある.食肉処理場での高感染性臓器である脳,脊髄などの処理方法の徹底,検査体制の徹底が行われる限り人への感染のおそれは無いと考えて良い.EU諸国と国際獣疫事務局(OIE)が指定する牛の部位とBSE感染危険度の関係を示すと,(1)高感染性:脳,脊髄,眼球,回腸末端部,(2)中感染性(高感染性の1/400):脾臓,扁桃,リンパ節,空腸,近位回腸,胎盤,副腎,脳脊髄液,松果体,硬膜,(3)低感染性(高感染性の1/10万):末梢神経,鼻粘膜,胸腺,骨髄,肺,膵臓,(4)感染性なし:骨格筋,心臓,乳腺,牛乳,血塊,血清,腎臓,卵巣,子宮,精巣,甲状腺,唾液腺,唾液,胆汁,骨,軟骨,結合織,毛,胎児組織,となっている.これらを考慮したとしても,乳幼児の育児用ミルク製品も安全性は保証されている.
 加工食品,医薬品などで牛が原材料として使われているものが多い.医薬品では手術用糸(腸),止血剤,ワクチン安定剤(ゼラチン),カプセル剤(ゼラチンカプセルなど)があり,医薬品外では基礎化粧品のコラーゲン,プラセンタエキス(胎盤)など,またカルシウム栄養剤や健康食品などに用いる骨粉などがある.加工食品には牛脂やゼラチンなどが複雑に用いられている.厚生労働省はBSEの人への感染対策として,医薬品などの製造,輸入業者に対し,2001年3月までに原料の輸入先を確認し,また使用部位が禁止部位を含めば原料切替と承認内容変更を厚生労働大臣に提出することを求めた.厚生労働省が指定した輸入禁止国および項目は(1)BSEの発生国(9か国)とそのリスクの高い国(23か国),(2)これらの国由来の牛のほか,シカ,水牛,山羊,羊に関連する原料,(3)原産国に限らず高感染性,中感染性部位の使用,である.しかし,この禁止項目を定めた時点が2000年12月で,その後僅かの間にBSE発生国が増え,日本を含め22か国になったことから,原材料の厳重な安全確認が引き続き必要と考える.なお,わが国でBSEが発生した後は,国産牛の医薬品原料使用は全ての部位で禁止されている.しかし,その後に起った雪印食品の不正,欺瞞の数々は食肉だけでなく食料品に対する国民の信頼を全面的に損なうものであった.
 日本小児科学会栄養委員会として,現在市販中の牛食肉の安全性は一応保証できるものと考える.しかし,今後も食肉を含める加工食品,医薬品などの安全性の確保のために厳重な監視の目を向けなければならない.本来,食事の安全性は消費者自らが決めるものであり,そのためには広範な情報の公開が不可欠である.





(登録:02.01.09)


■■ こどもの受動喫煙を減らすための提言

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会


1.受動喫煙とは
 たばこの煙には、先端から立ち上がる副流煙、喫煙者の吐き出す煙があります。こどもの喫煙のほとんどは、これらを吸う受動喫煙です。こどもの受動喫煙で、気道アレルギーが悪化して、ぜんそくが治りにくくなったり、乳幼児突然死症候群(SIDS)が増えるなどの健康影響が報告されています。

2.たばこの煙の性質
 たばこの煙は直径1ミクロン以下の非常に小さな粒子です。あまりに小さいため、気流とともに浮遊します。粒子は活性炭や繊維製品、肺、など微小な空間を通る時に多く吸着されますが、壁や天井など平坦な表面にはあまり沈着しません。
 閉鎖された室内では、たばこの煙は数分後には部屋全体に広がって薄められ、見えなくなります。しかし、沈着はごく一部だけで、粒子の大半は長時間にわたって空気中に滞留しています。従って、短時間に室内空気を清浄にするには、気流ごと、たばこの煙を室外に出す、つまり窓を開けて換気するのが最も効果的です。

3.こどもの受動喫煙
 こどもの受動喫煙といえば、家族が吸っているたばこの煙を直接、吸い込むことだけを考えがちです。その結果、こどもの前でたばこを吸わなければ受動喫煙を減らせると誤解されています。しかし、受動喫煙の大半は、室内空気中に滞留している、たばこの煙を知らず知らず、長時間にわたって吸うことによって起きています。閉め切った部屋では、目に見えず、煙たさを感じなくても、たばこの煙は空気中に滞留しています。とくに今日の住宅はエネルギーの節約のため気密性が高く、この状態が長く続きます。こどもが家に帰ってきて、こうした部屋で数時間過ごしたとすると、直接、喫煙者の側にいてたばこの煙を吸ったのと同じ、場合によってはその何倍もの煙を吸うことになります。
 こどもの受動喫煙への影響は、他の家族より母親の喫煙が大きいとの調査結果があります。母親は家庭内にいる時間が長いため、と考えられます。また、こどもが不在の時に吸うたばこの煙に注意が行かず、閉め切ったままでこどもを迎えることも、子どもの受動喫煙量を増やしています。

4.こどもの受動喫煙を減らすための提言
 受動喫煙を減らすには家族の禁煙に越したことはありません。しかし、それができなくても、たばこの煙の性質や家庭の喫煙状況から、こどもの受動喫煙を減らすことができます。私たちは、次の2点を国民の皆さんに提言します。

 (1)受動喫煙を避けるため、こどものいる家庭では、たばこは室内で吸わず、屋外で吸うようにしましょう。
 (2)室内で吸った場合、必ず、窓を開けて換気しましょう。とくに対面する2か所の窓を開けて自然換気するのが効果的です。


 橋本正史,片岡直樹,高橋香代,田中哲郎,田辺功,冨田和巳,村田芳子,谷村雅子(副委員長),杉原茂孝(委員長),安田正(担当理事),清野佳紀(同)

 文献

1) Strachan DP,Cook DG: Health effects of passive smoking,6.Parental smoking and childhood asthma: longitudinal and case-control studies,Thorax 53 ,1998: 204-212.

2) Vinke JG ,KleinJan A,Severijnen LW ,Fokkens WJ: Passive smoking causes an'allergic'cell infiltrate in the nasal mucosa of non-atopic children ,Int J Pediatr Otorhinolaryngol 51 ,1999 :73-81

3) Kilian M ,Husby S ,Host A,Halken S :Increased proportions of bacteria capable of cleaving IgA1 in the pharynx of infants with atopic disease ,Pediatr Res 38,1995: 182-186

4)田中哲郎: 乳幼児死亡の防止に関する研究,平成9 年度厚生省心身障害研究報告書,1998: 35-56

5)浅野牧茂,呂俊民,木村菊二,村松学,楢崎正也: 受動的喫煙の環境,喫煙と健康に関する調査研究−昭和55年度健康づくり等調査研究報告書,1980:55-121

6)大阪府立公衆衛生研究所: 平成5年度都市域における気管支喘息予防対策事業疫学調査報告書−厚生省地域保健推進特別事業,1995: 12





(登録:01.11.08)


■■ 炭疽症に対する緊急対応について

会員各位

日本小児科学会広報委員会

炭疽症に対する緊急対応について


 国立感染症研究所感染症情報センター岡部先生より,ニューヨーク情報,特に臨床向けの資料についてNY Dr.岩田が翻訳した「炭疽症に対する緊急対応」に関する情報の提供がありましたのでお知らせいたします.


炭疽症に対する緊急対応(医療従事者用情報)
翻訳:岩田健太郎(ニューヨーク在住日本人医師)




(登録:01.10.15)

■■ ウシ肺由来のサーファクテンの使用について

平成13年10月10日


会員各位


日本小児科学会新生児委員会


サ−ファクテンの使用について


 狂牛病の本邦での発生のニュース以来,会員各位からウシ肺由来のサーファクテンの使用について種々のご意見を頂き有り難うございます.
ご承知の如く,平成13年10月2日付で厚生労働省医薬局長通知「ウシ等由来物を原料として製造される医薬品,医療用具等の品質及び安全性確保の強化について(医薬発第1069号)」が発出されました.
 また,平成13年10月5日には上記局長通知を補完する意味で,厚生労働省医薬局審査管理課,安全対策課,監視指導・麻薬対策課から薬事関係団体事務局宛に「ウシ等由来物を原料として製造される医薬品,医療用具等の品質及び安全性確保の強化のための報告及び回収についてのQ&A」が事務連絡として出されました.この文書によりますと,「今回の局長通知の記の3による製造・輸入は行わないこととはどのような意味か.回収も含むのか.」との問いに対し,「1.平成12年12月,ウシ等由来原料の原産国にかかわらず,医薬品,医療用具等の原料として,SBEの伝播のリスクが高い部位(脳,脊髄,眼等)の使用を禁止したことにより,狂牛病の発生が確認された現時点においても,医薬品,医療用具等として通常使用される範囲では,公衆衛生上のリスクは回避されていると評価している.2.医薬発第1069号の記の3は,特定危険部位以外の部位についてさらに安全性を確保するために本年10月2日以降に医薬発第1069号の記の2に該当する原料を用いた医薬品,医療用具等が新たに市場に投入されることを防止しようとするための念のための措置である.3.なお,念のための措置ということから,本年10月2日以前に製造された医薬品,医療用具等について,回収は求めないものである(自らすすんで回収することを否定するものではない.)」との答が記載されております.
 これらを受けてサ−ファクテンの製造会社であります三菱ウエルファ−マから当学会宛に別添の如き文書が届いております.
 このような事実を踏まえ,本学会としましては,サ−ファクテンの原料はウシ肺ではあるが,肺は危険度の低いクラス3に属すこと,現時点でも通常使用される範囲では,公衆衛生上のリスクは回避されていると評価されており,念のために措置であること,と理解しております.したがいまして,会員各位におかれましてはrisk/benefitを勘案の上,使用される場合には文書による十分な説明と同意を得て頂くことが肝要と判断しております.



平成13年10月9日


日本小児科学会新生児委員会殿

三菱ウェルファーマ株式会社


サーファクテンのご使用に際してのお願い


謹啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、ご高承のことと存じますが、今般国内におけるBSE感染牛の発生が確定したこと等を踏まえ、ウシ等由来原料を使用する医薬品等に対する一層の安全対策を強化するための予防的な措置として、これらの承認の取り扱いについて平成13年10月2日付厚生労働省医薬局長通知「ウシ等由来物を原料として製造される医薬品、医療用具等の品質及び安全性確保の強化について」(医薬発第1069号)が発出されました。
これによりますと、今後日本を含むBSE発生国及び発生リスクの高い国に加え、リスク評価が不明な国を原産国とするウシ等由来原料を医薬品、医療用具等の製造に使用してはならないこととされております。

つきましては、弊社製品でこれに該当する国内産ウシ肺を原料とする「サーファクテン」は、呼吸窮迫症候群を効能・効果とする国内で唯一の医薬品であり、医療上欠かせないものであると考えられることから、医療上の混乱を回避するため下記の対応を取る所存でございます。
多大なご迷惑をおかけし誠に恐縮に存じますが、何卒ご理解を賜り、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

・ 国内産ウシ肺を原料として本剤を製造することを中止し、BSE発生リスクの低いニュージーランド産ウシ肺の使用に可及的速やかに切り替えるようすでに準備を進めております。
・ しかしながら、原料切り替え製品をお届けできるまでは若干の期間を要しますので、この間におきましては、呼吸窮迫症候群治療剤としては他に代替薬がないことに鑑み、万一止むを得ざる場合に限りご使用頂くことをご徹底願いたく、大変恐縮でございますが、この点に関してご理解を賜りたくご存じます。
・ ご使用に際しましては、BSE問題に関連しまして本剤が置かれている状況を踏まえ、本剤使用のベネフィット/リスクを患者さまのご家族等に十分ご説明頂き、ご納得が得られることにつきまして特段のご配慮をお願い申し上げます。

敬具





(登録:01.10.09)

■■ 公開フォーラム「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」報告書

 平成13年5月5日に東京女子医科大学弥生記念講堂において以下のプログラムで,小児科学会主催の公開フォーラム「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」が行われたので報告する.

1.開催までの経緯
 平成9年7月成立した臓器移植法は,その付記第2条に「施行後3年をめどとしてこの法律の施行の状況を勘案し,その全体について検討が加えられ,」とあるごとく,平成13年に現行法の改定が行われる可能性は極めて高いと考えられている.その中で現行法においては,15歳未満の未成年はその適応の対象外とされているところから,小児における肝臓や心臓の移植が海外で行われ,いわゆる「渡航移植」が国の内外を問わず社会的な問題として取り上げられている.また,厚生科学研究費特別研究事業「小児における脳死判定基準に関する研究班(竹内一夫班長)」が,平成11年度報告書において小児における脳死判定基準を公にし,これまで脳死判定の適応外となっていた6歳未満の児(修正齢12週未満は対象外)においても,脳死判定の対象とされるようになった.それゆえ,小児への脳死移植の枠を広げることが今回の改訂の一つの焦点とされていることは明らかである.
 一方,平成12年に出された厚生科学研究「臓器移植の社会的資源整備に向けての研究」中で,上智大学法学部 町野 朔教授を分担研究者とする「臓器移植の法的事項に関する研究(1)-特に小児臓器移植に向けての法改正のあり方-の報告書(通称町野案)」は,現在最も小児における脳死臓器移植の問題に関する影響力が強いと考えられている.その報告書の中で,死者の生前の意思表示の尊重を条件としながらも,本人の反対意思表示がない時は臓器の提供を認めるべきとしており,年齢に関係なく脳死状態にある人からの臓器移植を可能とする方向を示している.しかし,15歳未満の未成年者の脳死臓器提供については,その啓発が不十分な現在において脳死判定および臓器提供の意志表示が可能な児は例外的と考えられるところから,15歳未満の小児は親の承諾があれば本人の意志に関係なく脳死臓器移植が行なわれうるとの法律改訂に連なる可能性を孕んでいると受け取られ,以下のような問題点が指摘された.

1) 現行法が,15歳未満の小児について一律に有効な意見表示能力が欠如していると見なし,その適応外としていることは不適切である.小児の医療の現場において,癌などの予後不良な疾患に罹患している15歳未満のみならず10歳前後の児でさえ,大人も驚くほどの理知的な死生観に関する意見を表明できることを,小児科医は少なからず経験している.
2) 15歳未満の児が反対の意志表明をしていないという理由で,その脳死臓器移植が親の意志で行われるということは,児が十分な情報および意思表示の機会が与えられていない現状においては,我が国が批准した「児童の権利条約」,特に第6条に記載されている「児童は生命に関する固有の権利を有する」という内容に大きく抵触するものである.
3) 昨今の児童虐待や養育放棄など,親の子どもへの対応の変化を肌で感じている小児科医にとっては,必ずしも親が児の最大の保護者や代弁者であり得ない場合が多々あることを知っている.それゆえ脳死臓器移植の件に関し,なんらかのコントロールがない限りは,親が子どもの生命を左右することを可能とする法律に関しては,大きな危惧の念を抱く.

 これらの点を踏まえ,平成12年10月に行われた近畿地区代議員会において大阪医科大学の玉井教授らから,小児の専門集団である小児科学会として検討を加え,小児の脳死臓器移植に関して意見を述べるべきであるとの意見が小児科学会理事会によせられ,倫理委員会にその任務が託された.倫理委員会は「小児脳死臓器移植に関する検討小委員会」(委員長:仁志田博司,委員:中村 肇(神戸大学小児科)・田辺 功(朝日新聞編集部論説委員)・鈴木利廣(弁護士)・杉本健郎(関西医科大学小児科)・谷澤隆邦(小児科学会倫理委員会担当理事))


2.アンケート調査と結果
 倫理委員会「小児脳死臓器移植に関する検討小委員会」は小児科学会代議員への郵送によるアンケート調査および一般会員向けのインターネットアンケート調査を行った.
小児科学会代議員へのアンケート調査結果は以下のごとくであるが,質問4の『町野案の主旨に関する賛否』は,質問設定が不適切との指摘がありアンケート結果からは省くこととした.
インターネットアンケート調査は,残念ながら各会員への周知徹底を欠き,また,インターネットを介する調査の普及が未だ不十分であり,98名のみと会員の0.5%に過ぎず解析の対象とはなり得ないと判断された.


小児脳死・移植に関する代議員へのアンケート報告


 プロフィール

 送付 592通(ただし,現定数は589名)

 (代議員定数地区別回答数:愛知10/30,青森3/5,秋田5/5,石川6/6,茨城4/9,岩手2/5,愛媛4/7,大分5/5,大阪28/46,岡山9/11,沖縄4/6,香川3/5,鹿児島5/7,神奈川27/37,岐阜5/7,京都11/16,熊本9/10,群馬6/10,高知2/4,埼玉9/19,佐賀2/4,滋賀4/7,静岡7/14,島根3/4,千葉12/20,東京54/93,徳島4/5,栃木8/9,鳥取3/5,富山2/6,長崎3/7,長野5/9,奈良4/6,新潟5/10,兵庫17/26,広島11/14,福井3/4,福岡16/29,福島5/8,北海道18/26,三重4/8,宮城5/10,宮崎3/4,山形3/5,山口5/7,山梨3/4,和歌山4/5)

年齢   平均55.8歳(68〜38歳)

性別  男性363,女性9,不明1

専門分野 感染免疫24,栄養5,アレルギー26,内分泌11,遺伝6,循環器16,精神・心身5,血液腫瘍44,腎臓13,神経38,新生児31,代謝12,消化器6
職種   開業76(20.4%),勤務臨床154(41.3%),大学研究127(34.1%),その他16

結 果

質問1: 脳死を死と認めるか:はい=307(82.3%),いいえ=35(9.4%),わからない=31(8.3%)
質問2: 小児科医が学会として意見を述べる必要:ある=358(96.0%),いいえ=7(1.9%), わからない=7,
質問3: 小児からの脳死移植が必要:はい=270(72.6%), いいえ=47(12.6%),わからない=50(13.4%)
質問4: 削除
質問5: 自己決定・意見表明の可能年齢:6歳未満=39(10.5%),6〜9歳=42(11.3%),10〜12歳=125(33.5%),13歳以上=142(38.1%),15歳以上=8(2.2%),記載なし=15 13歳以上として150(40.3%)
質問6: 方策選択(複数回答可能)
1)チャイルドドナーカード=128(34.4%),2)死の教育=173(46.5%),3)子ども専門コーディネーター=201(54.0%),4)学会の継続的専門委員会=276(74.2%)
質問7: 倫理委員会として専門委員会設置の必要性:はい=354(94.9%),いいえ=17(4.6%)
質問8: 自由意見 (省略)


3.公開フォーラム 「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」の総括
 約250名の参加者のもと,以下のようなプログラムで柳田邦男氏の基調講演に引き続き,4人のパネリスト及び4人のコメンテータの発言の後に参加者を交えた公開討論会が行われた.
基調講演
         座長:中村  肇(神戸大学病院長・小児科学)
         演者:柳田 邦男(ノンフィクション作家)
公開討論会
         座長:谷澤 隆邦(兵庫医科大学小児科教授)
            仁志田博司(東京女子医科大学母子センター教授)
パネリスト:
      *森岡正博(大阪府立大学倫理学教授)
        :生命倫理学的観点から
      *杉本健郎(関西医科大学小児科学助教授・遺族)
        :小児科学会アンケート調査結果
      *町野 朔(上智大学法学部教授)
        :死者の自己決定権と小児の権利
      *恒松由記子(国立小児病院 医長)
        :悪性疾患に罹患した児の意識
 コメンテータ
      *阪井裕一」(国立小児病院麻酔・集中治療科)
        :小児移植医療アンケート調査
      *曽根威彦(早稲田大学法学部教授)
        :町野案に関する法学的批判
      *鈴木利廣(弁護士)
        :患者の立場から
      *田辺 功(朝日新聞論説委員)
        :マスコミの立場から
       *掛江直子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
        :子どもの権利を守る立場から

柳田邦男氏の講演は,御自身の御子息を脳死で亡くされ,臓器移植提供側の家族となった経験を踏まえた,愛する者を失うという2人称の死をキーワードとした深い洞察に満ちた内容であり,まさに今回のフォーラムの基調となるものであった.
公開討論会における論点は,脳死判定および臓器提供の意志表示をしていない場合は,本来,人は善行を基本とした存在であるところから,家族の意志により脳死臓器移植は可能であるとする町野氏の意見に対し,脳死臓器移植に関する啓発の体制がない現状においては,小児が脳死判定および臓器提供の意志表示をあらかじめする事例は皆無に近いと考えられ,小児の権利を守る立場からは受け入れがたいとする意見であった.
今回のフォーラムは脳死や臓器移植の是非を論じる目的ではなく,子どもの権利を考えることに視点をおいたものであった.その点では多少議論の噛み合わなかったきらいはあったが,子どもの権利を考慮したより良い臓器移植法の改正に連なる糧となったと評価される.

4)今後の課題と方針
1. 学会倫理委員会において,この問題に関する検討を継続することを要望する意見が多いことを受け,引き続き「小児脳死臓器移植に関する検討小委員会」の活動を続ける.
2. 小児に対する脳死および臓器移植に関する啓発活動を企画する.
3. 小児用ドナーカードおよび小児臓器移植コーディネータの検討を行う.
4. 小児の意見表明の妥当性,とくにその可能年齢の検討をおこなう.
(なお,再度の学会員の意見・意識の調査に関してはその必要性があると考えられた時点で検討する.)
5. 公開フォーラム会計報告


平成13年7月1日


日本小児科学会倫理委員会
委 員 長  仁志田博司
担当理事 谷澤 隆邦





(登録:01.08.14)


■■ 広報委員会よりお知らせ:人工呼吸器警報基準の制定等について

医薬発第839号
平成13年7月30日


日本小児科学会会長 殿


厚生労働省医薬局長


人工呼吸器警報基準の制定等について



 生命維持装置である人工呼吸器に関する医療事故防止対策について、平成13年3月27日医薬発第250号医薬局長通知「生命維持装置である人工呼吸器に関する医療事故防止対策について」をもって通知したところです。
 今般、医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会及び薬事・食品衛生審議会での検討結果等を踏まえ、別添1のとおり、薬事法第42条第2項の規定に基づき人工呼吸器の警報に関する基準を制定するとともに、別添2のとおり、薬事法施行規則の一部を改正し、日本工業規格「医療用人工呼吸器(T 7204)」に適合するものを承認不要医療用具から除外しましたことにあわせ、別添3のとおり、各都道府県知事あて通知いたしましたので、貴会におかれましても会員への周知方御配慮願います。


別添1


別添2

各画像をクリックすると拡大表示することができます。


 厚生労働省より上記通知が次のとうりありましたのでお知らせいたします。
 なお、全文は日本小児科学会事務局へお問い合せください。





(登録:01.07.30)

■■ 要望書の提出について

(社)日本小児科学会は,(社)日本小児保健協会,(社)日本小児科医会と三者で下記要望書を関係機関へ提出しましたのでお知らせします.


1. 小児救急医療体制整備に関する要望書.
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 宛
厚生労働省医政局長 宛
2. 麻疹の予防接種率向上と麻疹撲滅に関する要望書.
厚生労働省健康局結核感染症課長 宛
文部科学省スポーツ青少年局学校健康教育課長 宛

平成13年7月17日

社団法人日本小児科学会会長 柳澤正義
社団法人日本小児保健協会会長 前川喜平
社団法人日本小児科医会会長 天野 曄
  
 
  

小児救急医療体制整備に関する要望

 われわれは,わが国の小児救急医療の現状とその改善策について検討を重ねてきましたが,少子化が進む中で小児救急医療事業が重要な育児支援策であることを強く認識するとともに,早急にその基盤整備に取り組まなければならないという危機感を強く持たざるをえなくなりました.
 このため,本事業を遂行するにあたり基本的柱となる事項を要望致します.

1)小児初期救急医療体制の整備
 核家族化の中で育児に悩む親が増えるとともに,小児救急外来患者が増えている.さらに子どもの病気は急性疾患が多く,病状が急激に変化するため,何時でも何処でも小児科専門医による医療が求められている.このため地域特性を考えて,人口30万人から100万人に1カ所の小児初期救急を円滑に行える医療センターを設置する.
 小児初期救急医療センターは,地域の小児科開業医が参画することでその主なマンパワーを確保し,すべての休日,夜間外来診療に従事し,必要なら何時でも患者を搬送できる 2 次小児救急医療施設と連携可能な機能を持つことが必要である.
 センターの設置場所は新たに設けるも良し,既存の後方支援病院の中に設けるのも連携やマンパワー,医療設備の相互利用の点を考えるとより具体性があるともいえる.

2)小児救急医療に対する社会保険診療報酬上の改善
 小児科が経済的に構造不況に陥っているといわれて久しい.主な原因は,小児科医の医療技術を正当に評価していないわが国の現在の診療報酬制度にあるといっても過言ではない.
 このため,小児の時間外診療に対する加算を大幅に増やすことと,小児救急医療を真面目に実施している医療機関を特別認定し,その経営を安定化するための国の特別援助または措置が求められる.

3)小児2次・3次救急医療体制の整備
 小児救急医療は専門性が求められるとともに,初期医療から高度医療までを1カ所で行える完結医療への要求が高い.このため,各医療機関の連携をより密にするとともに,マンパワーや空床確保等への国の財政的措置が必要である.

4)小児科勤務医の増員・確保と労働内容の改善
 現在わが国では,小児時間外患者が特定の病院に集中する傾向がある.このため小児科勤務医の労働条件は過酷になり,小児科を希望する医師が明るい未来を持てない現状がある.これを放置すると,小児科医のマンパワーは不足し小児救急医療にもさらに大きな影響を与えることになる.これを改善するためには,小児科勤務医の増員・確保を十分した上で,過度な時間外労働を規制することも必要である.さらに,地域医療活動をより円滑にするために,公務員法で規制されている国立または自治体病院小児科医の活動制限を,小児救急を含む母子保健事業等に限って撤廃されることを強く要望する.

5)女性小児科医師が働きやすい環境整備
 小児科医における女性の比率は近年ますます上昇している.このため女性医師の力が十分発揮できる環境を整備しなければ小児救急も含めた小児医療は成り立たない.このためには子育て支援(産前産後の休業や育児休業の確保,保育施設の確保・充実,0歳児保育,延長保育・夜間保育・病後児保育)が必要である.さらに,育児休業を終えたあと再就職を希望する場合にはその機会を与え,職場復帰が支障なくできる環境整備が必須である.




平成13年7月27日
社団法人 日本小児科学会会長
柳澤正義

社団法人 日本小児保健協会会長
前川喜平

社団法人 日本小児科医会会長
天野 曄


麻疹の予防接種率向上と麻疹撲滅に関する要望書

 わが国においては1978年から小児への麻疹予防接種の導入を開始したにもかかわらず,いまだに小中規模の地域的流行が繰り返されております.特に一昨年の沖縄での流行,本年の大阪府,高知県,北海道,岩手県,千葉県,滋賀県,岡山県,香川県,そして大分県などで地域的流行が問題となっております.その流行の中心は予防接種を受けていない1歳代,6〜12カ月の乳児であり,2歳以降の年齢層でも予防接種を受けていない幼児,学童,さらに成人までもが罹患し,2000年のサーベイランスによれば,その総数は10万人から20万人にのぼると推計されております.また年間で肺炎4,800例,脳炎55例,死亡88例が発生しているとの推計もあります.
 各地からの報告では,罹患者の95.1%が予防接種未接種であり,この流行の実態は接種率の低さに因るものと考えます.わが国の麻疹予防接種率は地域によって差はあるものの76%〜80%と推定されております.現在まで小児科医,保健婦らが接種率向上のため努力をいたしてまいりましたが,これ以上の接種率の向上は現状のままでは困難と考えられ,国の政策の強化が必要と考えます.
 具体的には国,地方自治体による1歳半健診時での麻疹ワクチン接種勧奨の強化,1歳児への麻疹ワクチン接種に向けての個別的再連絡,医師会への接種率向上への依頼,学校の協力の指導,1歳時,3歳時における予防接種率の行政における正確な把握への指導などの施策をご考慮いただきたいと考えます.
 われわれ小児科医が,国内的にも,国際的にも文明国として緊急事態と考えておりますことをご理解いただき,ご高配下さいますよう要望いたします.





(登録:01.06.13)

■■ 新生児医療におけるMRSAに関する日本小児科学会新生児委員会の見解

平成13年5月
日本小児科学会新生児委員会

 近年,いくつかの新聞で新生児のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染(保菌)が取り上げられている.それらの文面からは,臨床的に問題になったことよりも,新生児がMRSAを保菌したことに話題性があるとして捉えられていることが窺える.日本小児科学会新生児委員会では,最新の医学的知識と医療の現状に鑑み,健常新生児管理およびNICU(新生児集中治療室)におけるMRSA対応についての見解を述べる.
 MRSAは,メチシリンが使用されるようになった直後の1960年代からすでに臨床的に遭遇してきたが,セフェム系やアミノグリコシド系などの抗生物質で対応してきた.時代の流れとともに,MRSAは多剤耐性へと変貌し,バンコマイシンなどの少数の薬剤にしか感受性を示さない菌の発生をみている.しかし,MRSAそのものは,その感染力および病原性が通常のブドウ球菌よりも高まっているものではなく,その対応においてはMRSAと一括するのではなく,どのような薬剤耐性を有するMRSAであるかを考慮すべきものである.1)2)我が国の新生児医療の水準は高く,1999年の新生児死亡率は出生1,000に対し1.8と世界のトップレベルとなっている.一方,多くのNICUにおいては施設の過密度などにより,長期に人工換気療法を受けている児を中心に入院児の黄色ブドウ球菌検出率が高く,その多くがMRSAとなっている2)3). しかし,後述する新生児TSS様発疹症以外,MRSA感染そのものがメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)と本質的にその臨床像が異なるものではない.各施設においては保菌者の比率を下げる目的で,種々の菌定着防止対策が行われているが,残念ながらこれまでのところMRSA保菌率を減ずることには成功していない.黄色ブドウ球菌そのものは健康人の常在菌であり,感染のリスクがより高い人の集団である病院の中で,それを皆無にすることは極めて困難であるのが現状である.それ故,現在のNICUにおけるMRSA対策の中心は,「どのような薬剤耐性をもつMRSAであるかをモニタリングするとともに,感染症の場合に薬剤耐性を強めないように適切な抗生物質を使用すること」である.
 NICU退院児においても,当然のことながらある程度のMRSA保菌率が予測される.MRSAはその薬剤感受性が既知であれば,他の黄色ブドウ球菌と同様な対応が可能であることを含め,家族へ正しい情報を提供しなければならない.現在まだNICU退院児において,MRSA保菌者という理由だけで外来受診や入院時に麻疹や水痘と同様に隔離扱いを受ける事例があるが,家族への適切な指導と説明が行われていれば,医療側のいわゆる一般的感染防止対策で対応が可能であり,過剰な対応による家族への無用な不安を避ける配慮が必要である.近年,ほぼ全国的に早期新生児期に黄色ブドウ球菌外毒素(TSST-1)による新生児TSS様発疹症が知られるようになった.これは成熟新生児においては一過性の疾患であるが,未熟児においては稀に無呼吸発作の増加などの臨床像悪化がみられる.その病因病態は微量の外毒素がスーパー抗原としてサイトカイン系を刺激することによることが解明されている4).その発症はほとんどが生後1週以内であることから,発症のほとんどは児が入院中であり,適切な対応がとられ得ると考えられる.
 以上のことから,日本小児科学会新生児委員会では新生児医療におけるMRSAに関しては,次のような対応が適切であると考える.
 1.新生児医療に携わる医療従事者は,MRSA感染(保菌)の予防およびその感染による臨床例の発生を最小限にする努力をしなければならない.
 2.MRSA院内感染防止対策として最も重要なことは,医療従事者が児に触れる前後での手洗いである.それに加え,NICUにおいては各施設の実状に応じたMRSA管理対策を講ずるべきである.
 3.MRSAを保菌する新生児については,その事実とともに正しい医学情報を家族に告げるべきである.その際,家族に無用な不安を与えないように配慮する.
 4.MRSAを保菌する新生児においては,退院後の他科受診において担当医への適切な情報提供を行い,その対応に関して共通の理解をもつよう努力すべきである.
 5.新生児期早期にみられるTSS様発疹症への対応については,未だ検討中であるが,その症例および症状に応じた医学的対応が必要である.しかし,本症は成熟新生児においては自然回復する良性の一過性疾患であり,また早期新生児期を過ぎて退院する児にはほとんどみられていない.
 6.バンコマイシン耐性ブドウ球菌(VRSA)5)6)においては,上記とは全く異なった速やかな対応が不可欠である.患者の隔離と職員を含めた全患者の培養検査,NICUの一時閉鎖など,院内感染対策本部との協力の下で対応する.

文献

1) 厚生省国立病院課・国立療養所課監修.院内感染対策の手引き―MRSAに注目して―.東京:南江堂,1992.
2) 志村浩二.新生児感染症の実態調査 ―超低出生体重児における重症院内感染症についての検討―.平成九年度厚生省心身障害研究報告書 1997: 23.
3) 崔信明,高橋尚人,仁志田博司.全国新生児施設におけるMRSAの保菌に関するアンケート調査.日児誌 2001:105(投稿中).
4) Takahashi N Nishida H Kato H et al. Exanthematous disease induced by toxic shock syndrome toxin1 in the early neonatal period. Lancet 1998; 351: 1614-19.
5) Hiramatsu K. Vancomycin resistance in staphylococci. Drug Resistance Updates 1998;1:135-150.
6) Smith TL Pearson ML Wilcox KR et al. Emergence of vancomycin resistance in staphylococcus aureus. New Eng J Med 1999; 340:493-501.





(登録:01.04.27)

■■ 在宅無呼吸監視装置(ホームアプニアモニタ)に関する意見書

平成13年1月
日本小児科学会倫理委員会
中村  肇 委 員 長
仁志田博司 委   員
田辺  功 委   員
泉  達郎 担 当 理 事

 睡眠中に発生する無呼吸を感知し警報を発するいわゆる無呼吸監視装置は,乳幼児の突然死予防の目的でこれまでいくつかの機種が開発され実際に使用されてきた.しかし最近のアメリカ小児科学会誌(Pediatrics)上でも議論されているごとく,このような無呼吸監視装置が乳幼児の死亡,特に乳幼児突然死症候群による死亡,の予防に有効であったという疫学的なデータはない.
 それにもかかわらず,家庭においても無呼吸監視装置が使用されているのは,前児を突然死で亡くしている家族や突然死に近いエピソード(アルテ,乳幼児突発性危急事態)を経験した家族が,その精神的な不安を軽減する効果のためである.
 欧米においては,乳幼児突然死症候群そのものが理解されているのみならず,蘇生術をはじめとした危急事態発生時の対応が社会常識のように身についているところから,個人の責任のもとに医療者の介入なく無呼吸監視装置が一般の家庭で使用されている場合がある.
 しかし社会的背景の異なる本邦に於いては,そのような目的の無呼吸監視装置は全て医療器具としての認可を受けており,一般家庭向けには医師の指示を前提としたレンタルのみである.また装置は使用後回収されるところから,いつどこでだれが使用しているかが把握されており,トラブルが発生した場合はすぐに対応できるシステムになっている.
 ところが,昨今ベビー用ハイテク・モニターの名称の機具が通信販売や量販店で一般家庭向けに売り出されているが,その機具は「赤ちゃんの呼吸に伴う動きが20秒間停止した場合には,直ちに警報を発して異常を知らせ,お母さまの素早い対応を促すのが特徴です.」と宣伝文に記載されているごとく,実質的には乳幼児の無呼吸監視装置として使用されるものと考えられる.スイッチの入れ忘れなどの過った使用や装置を過信して児を長期間一人にしてしまうことなどが如何に危険かは言うまでない.異常が発生した時の蘇生法などの対応法を考慮しないこのような機具の販売は,医学的観点から認め難いのみならず利用者の危険を顧みない非倫理的な行為と判断される.さらに多くの場合,ある一定期間の使用後に第三者に装置が渡ってしまう可能性がある.このような危険性を孕んだ販売方式では,無呼吸モニターの適切な説明と指導がないままに,乳幼児に対し野放しで使用されることとなり,極めて危険な事態が発生することが懸念される.

 日本小児科学会はこのような乳幼児の命にかかわる状況の速やかなる改善を関係諸子に強く要望するものである.

平成12年3月

日本小児科学会





(登録:01.04.27)

■■ 舌小帯短縮症に対する手術的治療に関する現状調査とその結果

日本小児科学会倫理委員会舌小帯短縮症手術調査委員会
仁志田博司,中村  肇,泉  達郎

 母乳栄養促進などの目的から,新生児および乳児の舌小帯に小切開を加えることは,日本のみならず諸外国においても古くから習慣的に行われてきたが,その医学的意味がないことが示されており,現在はほとんど行われなくなった1)〜4).このような病棟や外来で助産婦や医師によって行われていたレベルの舌小帯の切開とは異なり,一部の医師によって,先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位矯正術の名称で舌小帯に対する本格的な手術が行われている5).高度な舌小帯の短縮が上気道の変異をもたらし,呼吸障害を引き起こすと言う考えの基に,先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症の診断名がつけられ,舌低部を切開し頤舌筋を切断する手術である.その手術の目的は,吸啜障害の矯正のみならず,呼吸障害やそれに伴う低酸素血症を改善して乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生を予防するというものである.
 1994年ノルウエーで行われたSIDS国際学会において,舌小帯を積極的に手術しているグループが,「日本においてSIDSの発生頻度が低いのは,SIDSのハイリスク群である先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症の乳児を我々が手術して治しているからである.」という主旨の発表を行い6),同学会に出席していた本邦のSIDS研究者を驚かせた.
 さらに,助産婦などから子育て中の母親に「舌小帯を切らないと突然死になる.」というコメントが述べられるにおよんで,専門家の間の意見の不一致が子どもを持つ親の育児不安を引き起こしていることが明らかとなった.
 この問題を重くみた日本小児科学会は,舌小帯短縮症手術調査委員会を設け,その現状に関する調査を行った.本論文はその調査結果を報告し解説を加えるとともに,乳幼児の医療および保育に携わる専門分野の各位に,この問題の理解を広めることを目的とした.

調査方法および対象

 平成11年8月から10月にかけ,舌小帯に関する臨床経験および舌小帯手術の適応等に関する質問用紙を郵送し,回収された回答およびコメントを検討した.
 対象は小児科医93名(日本小児科学会役員24名,日本小児科医会役員69名)および日本小児耳鼻咽喉科学会会員100名である.
 回答率は,小児科医において87/93(93%)であり,小児耳鼻咽喉科医において74/100(74%)であった.

小児耳鼻咽喉科医を対象とした調査結果

 1)手術例(過去1年間):19医師(26%)により67例が行われていた.(1例:7医師,2例:2医師,3例:4医師,5例:1医師,6 例:1医師,7例:2医師,9例:1医師,10例:1医師)
 『舌小帯を手術する医師は1/4に過ぎず,その症例の半数は4名の医師によるものであり,小児耳鼻咽喉科専門医師でも舌小帯の手術は稀であった.』
 2)手術適応(複数回答)
 哺乳力不良などの授乳に関する問題:7医師
 チアノーゼなどの呼吸に関する問題:1医師
 撥音などの言葉に関する問題:13医師
 発達や行動に関する問題:1医師
 その他(切歯による):1医師
 『その手術の適応の過半数は言葉に関する問題であり,その他の適応のほとんどは医学的な理由より家族の訴えによるものであった.特に呼吸および発達/行動に関する問題による手術適応は各1例のみと例外的であった.』
 3)手術の範囲(複数回答)
 舌小帯のみ:13医師
 舌小帯および筋層まで:2医師
 『筋層まで含む舌小帯手術はすべて構語障害に対するものであり,子ども病院などの専門施設で行われていた.授乳などの問題に対する手術は外来で舌小帯を切る処置のレベルであった.』
 4)手術年齢
 6カ月未満:2例
 6〜12カ月:12例
 1〜2歳:16例
 2歳以上:37例
 『乳児期特に6カ月未満の手術は2例のみと例外的であった.』
 5)麻酔(複数回答)
 局所麻酔:7医師
 全身麻酔:6医師
 他は無回答または無麻酔
 『舌小帯のみを切る手術のほとんどは無麻酔で行われているようであるが,筋層におよぶ手術ではなんらかの麻酔が行われ,その半数に全身麻酔が行われていた.』

小児科医師を対象とした調査結果

 1)舌小帯のことで親に相談をうけたことがありますか.
 ときどきある:12/87(14%)
 たまにある:46/87(53%)
 ない:29/87(33%)
 『頻度はあまり高くないが,小児科医の2/3が舌小帯に関して親からなんらかの相談を受けていた.』
 2)舌小帯を切った方が良いと思われる児を経験しますか.
 ある:8名の医師(13例)
 『ほとんどの小児科医が母親が舌小帯の異常を訴えても,舌小帯を切る必要のある児を経験していない.経験している医師も極少数例においてのみである.』
 3)舌小帯短縮(癒着)によると思われる臨床的な問題の経験がありますか.
 ある:5名の医師(10例)
   哺乳力の問題:1年間に─1例
   構語障害:1年間に─9例
   呼吸障害:1年間に─0例
   発達行動などの問題:1年間に─0例
 『実際に臨床的な問題を呈する児の経験はさらに稀であり,そのほとんどは構語障害である.舌小帯短縮による呼吸障害例は皆無であった.』
 4)舌小帯を切ったこと,または他医で切ったことによるトラブルを経験したことがありますか.
 ある:2名の医師において治療を要する出血の経験
 『事例は稀であるが,手術的侵襲による問題が経験されている.』
 5)舌小帯を外来等で切ることがあるか.
 全員無し.
(12名の小児科医が20年近く前には舌小帯を切った経験がある.)
 『かつて行われていた小手術としての舌小帯切開は行われなくなっている.』

考  案

 初乳をあらちち(粗乳/荒乳)と称して古い悪くなった乳として,飲ませず捨てる習慣や,こけしの様に巻きおむつをする育児法が赤ちゃんに害あって益無しと改められたのはごく近代になってからである.母乳促進のために舌小帯に小切開を加える処置についても,今村4)が舌小帯の短縮度は年齢にともなって変化するという調査結果を示しているのに加え,根津2)や飯塚ら7)が前方視的調査を行い,舌小帯切開が母乳栄養や吸啜運動を促進する効果は認められないとその必要性を否定している.今回の調査でも,かつて舌小帯に小切開を行っていた小児科医のほとんがすでにそのような処置を行っていないことが示されている.母乳栄養に役立つとの思いから乳児の舌小帯を切ることは,そのような類いの学問的根拠のない習慣であったことがようやく広く理解されるようになり一件落着の感がある.
 本調査で問題にされているのは,そのような外来や新生児室で行われてきた処置のレベルである舌小帯切開を越えた,麻酔下で切開を加え縫合するという手術についてである.現在本邦において,舌小帯の高度な短縮と理解される舌癒着症が上気道の偏位をもたらし呼吸障害や低酸素血症をもたらし,それに伴い発育発達の異常や突然死の危険を高めるという考えから,先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症の診断の基にその矯正手術が一部の医師グループによって積極的に行われている.しかし,大多数の現役の小児科医および小児専門の耳鼻咽喉科医にとっては耳なれない疾患であるところから,その手術適応と医学的根拠について明らかにする目的で調査がなされた.
 今回の調査は第一線で中心的な活動を行っている小児科医および耳鼻咽喉科医を対象に行われた.小児科医の2/3は親から舌小帯に関する相談を受けていたが,臨床的に問題となった事例の経験は5名の医師による10例のみで,そのほとんどは構語障害であり,舌小帯による呼吸障害の経験は皆無であった.
 小児耳鼻咽喉科医を対象とした調査でも過去1年間に舌小帯の手術を行ったのは1/4に過ぎず,さらに5例以上の手術経験は6名の医師のみであり,小児専門の耳鼻咽喉科でも稀な手術であることが明らかであった.また筋層にまで及ぶ本格的な舌小帯手術のほとんどは構語障害に対するものであり,チアノーゼなどの呼吸器症状を適応としたのは1医師のみであった.
 オーストラリアの小児外科医Wright8)は18年間に舌小帯短縮(tongue‐tie)を主訴として受診した287例のうちいわゆる舌硬直症(ankyloglossia)は2例に過ぎなかったと述べている.この疾患に興味を持つ専門家の18年間の経験でも手術の適応となる事例は極めて稀であったことは,今回の調査および筆者ら多くの小児科医および小児耳鼻咽喉科医の経験と一致するものであった.
 これらの結果を踏まえれば,手術を必要とする舌小帯そのものが稀なものであるばかりでなく,呼吸器障害を適応として行う手術はさらに例外的であると判断される.向井他5)が6カ月間に45例の乳児に外科的手術を行った報告との差は余りにも大きすぎるところから,単なる医学的適応の違いを越えた医療に対するphilosophyにまで論点が及ばなければ解決できないと考えられる.
 さらに,筋層に及ぶ舌小帯の手術においては全例なんらかの麻酔が行われ,その半数は全身麻酔であった.また,2例ではあるが治療を要する出血が経験されている.さらに今回の調査対象外の事例であるが,1996年に大阪で生後49日目の乳児が舌小帯切断術で死亡しており,特に乳幼児に行う場合はあるリスクを伴う手技であることは明らかである.
 一方,乳幼児突然死症候群(SIDS)と上気道の異常に関しては,すでに歴史的なTonkinn9)の仮説を始め多くの研究論文があるが,舌小帯の異常との関係に於いては著者らの知るところでは向井他5)6)のもののみである.さらに近年SIDSの基本的な病態が睡眠時無呼吸からの覚醒反応の遅延であることが明らかにされつつあり,これまで報告されてきた上気道の異常による突然死は例外的な別の疾患と考えられている10).
 それゆえ,限られた数の医師のグループがSIDSのハイリスク群とされる舌小帯癒着症の乳児を治療したことが本邦のSIDSの発生頻度を低くしているという向井他の発表6)は,舌小帯の手術がSIDSを予防するという学問的データは示されない限り,到底受け入れ難い意見とみなされる.

結  語

 今回の調査および文献的な考察から,乳幼児の突然死を予防するという目的で舌小帯に手術的侵襲を加えることの正当性を認めることはできなかった.本調査の結果を踏まえ,小児の医療に携わる小児科および耳鼻咽喉科さらには口腔外科や小児外科の専門家により,舌小帯短縮症の手術の適応やその効果等に関し真摯な議論がなされ,受け身である乳幼児を不当な麻酔や手術という侵襲から守るための措置を考えるとともに,子育て中の母親に適切な情報を提供してその無用な不安を軽減をする努力をなすべきである.

引用文献

1) 仁志田博司.出生直後のマイナートラブルへの対応 舌小帯短縮症.周産期医学 1996;26:1217.
2) 根津八紘.舌小帯短縮症.周産期医学 1990;20:63.
3) 赤松 洋.本誌診療メモ,新生児・乳児のTongue tieの治療についての意見に答える―小児科医の立場から―小児耳鼻咽喉科誌 1989;10:74.
4) 今村栄一.舌小帯付着の切断を論考する.小児保健研究 1989;48:593.
5) 向井 将,向井千伽子,浅岡一之.先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症―新生児・乳児の呼吸不全―.耳鼻臨床 1990;83:7.
6) S Mukai, C Mukai, K Asaoka et al. Prevention of SIDS―correction of ankyloglossia with deviation of the epiglottis and larynx. Third SIDS International Conference, Stavanger, Norway 1994(ポスター発表).
7) 飯塚忠史,佐々木美津代,大石 興.舌小帯と母乳哺育―病院をベースにした前方視的検討―.小児保健研究 1999;58:665.
8) Wright Je. Tongue‐tie:Review Article. J Pediatr Child Health 1995;31:276.
9) Tonkinn S. Sudden infant death syndrome;Hypothesis of causation. Pediatrics 55;650:1975.
10) 仁志田博司.乳幼児突然死症候群とその家族のために.東京書籍,東京,1994.




(登録:01.04.25)

■■ 日本小児科学会栄養委員会からの提言

平成12年2月4日
委員長 小池通夫

1.ビタミン類
 「第6次改定日本人の栄養所要量」(1999)で一挙に13種類について所要量と摂取許容上限が定められた.この内,栄養委員会としてVit. B1,D,E,葉酸について以下の問題点を提起したい.

 (1)Vit. B1
1.Vit. B1摂取量について:現行の食品成分表で摂取量の計算に基準となるチアミンを塩酸チアミンで行ったり,調理による損失が見逃されているミスがあり,B1実質摂取量は成人所要量1.1mg/日を既に大きく割っている恐れがある.また,年長児では清涼飲料水,ファーストフードなど食生活の変化から,B1は潜在的な欠乏状態にある恐れもある.
2.Vit. B1の栄養評価は血清B1で行うのが現実的であるが,その評価には小児の基準値が必要である.また,正確を期するには,赤血球トランスケトラーゼ活性測定を併用すべきだが,基準値がなく,測定には技術を要する.
 (2)Vit. D
1.母乳,育児用ミルクで哺乳される乳児では,これらに含まれるVit. Dの生物効力値から考えて,その時期の日光浴は特に必要はない.なお,日光浴,冷気浴にはそれなりの意味があるので,「いけない」ということではない.
2.Vit. Dの栄養評価は血清25(OH)D3値で行うべきで,その健保採用が望まれる.
3.プロビタミンD2の多い乾燥シイタケの値を,ビタミン類の殆ど含まない生キノコ類に引用する栄養士が存在する.注意されたい.
 (3)Vit. E
Vit. Eの必要量は多価不飽和脂肪酸量と相対関係にある.育児用ミルクの脂肪成分は不飽和脂肪酸含量の多い植物性脂肪で置換され,そのn-3/n-6不飽和脂肪酸比やコレステロール添加などは乳業会社の一存で決定されている現状である.その適切さについて十分な科学的評価が必要である.
 (4)葉酸を神経管閉鎖障害の発症リスク低減のため,女性にサプリメントの形で摂取を勧める件について厚生省から学会に申し出があった.会員は周知して欲しい.

2.微量元素
 「第6次改定」で従来のFe以外に, Zn,Cu,Se,Mn, I, Mo, Crの計8種類の微量元素に所要量と許容上限量が定められた.最初の5種類はTPNに使うミネラルミックス製剤に入れられている.普通の食事下での欠乏や過剰症はない.
 (1)育児用のミルクにはFe,Zn,Cuが強化され,フォローアップミルクにはFeが添加されているが,いずれにも残りの5種類の微量元素に関してはデータがない.
 (2)経腸栄養剤は,用いられた原料に含まれる微量元素だけが含まれるだけで,強化は許されていない.調査の結果,製品によって何らかの微量元素の欠乏があり,同一製品の連用は危険である.特にSe,Zn,ビオチン欠乏が起こりやすい.
 (3)TPNで用いるミネラルミックスは長期連用でMn過剰を生ずる.
 (4)微量元素のミルクや食品への添加規制について検討して欲しい.

3.「第6次改定」で採用した0〜5カ月児の平均母乳泌乳量750mlは,その算出の科学的根拠が乏しい.適正数字の算出についての研究が必要である.

4.母乳とダイオキシン類
 WHOではダイオキシン汚染を理由に母乳中止をしなくても良いことになった.
 (1)厚生省調査で第1子と第2子が哺乳した母乳中のダイオキシンを比較したが,一 定の傾向がなくしかも極めて微量であることが示された.
 (2)胎盤・胎児の脂肪含量は低く,脂溶性のダイオキシン類の胎児移行は微量と考えられるが,内分泌攪乱物質では「低容量効果」の報告があり,今後も注意すべきである.

5.ボディイメージの問題
 生活習慣病として肥満が問題とされて来たが,最近は学童でも痩せが目立つ.特に若い女性の痩せ志向は強く,体型については科学的にも広い視野の対応が必要である.他方,肥満の基準として肥満度,BMI,カウプ指数,脂肪厚などが用いられるが,何れも長短があり,科学的理想像から遠いことを認識すべきである.

6.子供が自分自身で適切な食事について意見をもてるように,ライフスキルの能力強化運動を広めたい.その一環として,配布が予定されている中学一年の教科書(食生活の指針)の骨格となる文章について検討し,問題を提起したい.





(01.01.10)

■■ 小児科医確保に関する提言─より良き小児医療実現のために─
        

 近年、わが国の少子高齢化は急速に進行し、大きな社会問題となっている。政府も国家の存亡をかけて少子化対策に乗り出そうとしている。少子社会では、こどもを心身ともにより健康に育てるために社会的にも小児科医の活動がますます必要とされている。しかし、小児科医の数は、一時減少した後最近緩やかな漸増傾向にあるとはいうものの、このような社会の要請に応えるには必要数を満たしているとは到底言いがたい。来世紀の日本を担うこどもの健全な発育のために、日本小児科学会ではこの現状に重大な危機感を抱き、国を挙げてその対策に取り組むべきと考えている。そこで、日本小児科学会は、小児科志望者が減少した理由として考えられることとその対応策を以下のようにまとめた。今後、これらについて具体的な取組を講ずる。
(1)小児科医の需要についての誤解
 少子高齢社会の到来ということで、こどもの数が減り、小児科医の需要が減少してきたかのような誤解が持たれている。しかし、実際には少子社会にあって、少ないこどもを大切に育てるという傾向が強まり、かかりつけ医として小児科専門医を選ぶ親が増えている。また、近年マスコミでもさかんに取り上げられているように、小児医療の充実を希望する声は高く、昨今わが国では住民に対する地方行政サ−ビスの一環として昼夜を問わぬ小児医療の提供が掲げられている。これに対する地域住民の要望も極めて高いものがある。それに加えて、地域保健・学校保健に寄与する小児科医の役割や社会的影響力が医学生にはまだ十分理解されていない。
対策:
 われわれ小児科医は、次世代を担うこどもたちに対して果たすべき小児科医の役割を明示し、欧米にみられるような小児科医への期待度を医学生に伝達する必要がある。
(2)小児科医の仕事が厳しいと思われていること
 小児科は元来総合診療の要素が高い診療科であるが、内科と同様な広範囲の疾患領域を少ない人員で対応しなければならない状況にある。つまり、内科では、呼吸器科、循環器科、消化器科、神経内科、血液科などに細分化されており、それぞれに十分な数の医師が配分されている。それに対して小児科では少ない人員でこれら全てをカバーしなければならない。さらに日常診療では習熟度の高い手技が要求されることも多く、このため医学生には非常に忙しく難しい職場であるという先入観が持たれている。
対策:
 仕事が厳しいと言われる所以は小児科医が不足していることによる構造的な問題であり、小児科を目指す学生が増えればもっと余裕を持った勤務態勢が組めることになる。また小児科が難しいと言われるが、特殊性が高いからこそ、より必要とされるわけであり、誇れるキャリアとなる。小児科はこどもの成長と発達とを総合的・全人的に見守る科であり、小児科医は次代の日本を背負うこどもを健全な成人に育て上げるという使命を担っている。かつて言われた3Kではなく、3Y(夢、喜び、やりがい)で象徴される科であることを、医学生、若い医師らに知ってもらう必要がある。
(3)小児科医師の定員増と研修施設の充実
 大学や総合病院では小児科の医師の定員は多くなく、このことも志望者減少の一因と考えられる。また卒前・卒後教育でも小児科は細分化されて専門化が進み、広範な専門分野を擁しながら、わが国の小児科学教室は先進諸国と比較して教員層が手薄である。優れた小児科医を多数養成するためには、多数の教員が必要となり、同時に病院小児科の定員数を増やし活動性を高く保つことが重要である。また、まもなく実施される卒後臨床研修を含めて研修医に対する指導を十分に行うためにも、大学・一般病院の小児科常勤医の数を増やす必要がある。
対策:
 医学生や研修医がこどもの保健・医療を学ぶためには、諸外国にみられるように総合的なこども病院を教育機関と位置づけて大学内に設置することが望ましい。また総合病院では小児病棟の充実が必要である。また総合診療部、救急医療部にも小児科医の定員確保が必要である。そのためには、大学や病院の理解と、経済的なバックアップが重要である。
(4)小児科特に病院小児科の採算性確保
 小児科志望者が減っている大きな要因のひとつは、経済的な理由である。疾病構造の異なる成人中心の現診療報酬体系下では、小児科の収益性は相対的に低く押さえられている。小児医療の専門性・特殊性は現行の健康保険制度では正当に評価されているとは言いがたい。一部の病院で小児科医の数と小児病床が減っている理由として小児科の利潤効率の低いことが挙げられているが、そもそも他科に比べて採算性が低いこと自体が問題なのである。一般的には現在の診療報酬体系では、こどもの数が減ればますます経済的に苦しくなる。医師も例外ではないが、どの職種であれ最近の若い世代は、経済的安定や個人・家庭の生活を快適に保つことに固執する傾向にある。
対策:
 小児医療の技術・看護の高い専門性を認めて採算性を保障すれば、救急・新生児医療を含めてわが国の小児医療の将来性は豊かなものになることと期待される。このことを訴えて、診療報酬制度の根本的な見直しと、地方自治体、その他公的機関からの小児医療に対する経済的サポート体制を構築していく。
(5)女性小児科医師の労働環境整備
 医師を目指す女性の数は増えており、特に小児科医ではその傾向が顕著である。このため中堅として活躍すべき世代の小児科医で女性の比率は近年ますます上昇している。しかし、これら女性小児科医師のおよそ1/3が育児や家事のために小児科臨床の現場を離れているのが現状である。いまや女性医師の力が十分に発揮できる環境を整備しなければ小児科は成り立たない。
対策:
 このためには子育て支援(産前産後の休業や育児休業の確保、保育施設の確保・充実、0歳児保育、延長保育・24時間保育・病児保育)が必要である。また、休業期間を補てんする意味でも小児科医の増員が必要である。さらに、育児休業を終えたあと再就職を希望する場合にはその機会を与え、職場復帰が支障なくできる環境整備が必須である。

平成12年11月12日
日本小児科学会理事会





(登録:00.11.13)

■■ インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について

理事会より会員へのお知らせ


 インフルエンザに関連しておこる脳炎・脳症に対するジクロフェナクナトリウム及びメフェナム酸の使用について、本学会の見解は以下のとおりである。

 1999、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告では、解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、その死亡者が5分の1を占めているところから非ステロイド系消炎剤が脳炎・脳症を引き起こしていることは証明されていない。
 しかし、1999年のデータに比して2000年のデータではインフルエンザ脳炎・脳症が発症した場合の致命率についてはジクロフェナクナトリウムは有意差を持って高くなっている。一方、メフェナム酸に関しては2000年の調査でははっきりした傾向は認められなかった。
 また、他の非ステロイド系消炎剤の使用については、調査症例数が少なく、現段階でその関連性が明確になっていないので、さらに調査が必要である。
 一般的に頻用されているアセトアミノフェンによる本症の致命率の上昇はなく、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える。
 以上より一部の非ステロイド系消炎剤はインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子ではないが、その合併に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際しては非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである。
 今後も本症の原因を含めてさらに研究班の継続した調査を要望する。



平成12年11月12日
日本小児科学会理事会