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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:25.4.22)
第129巻 第4号/令和7年4月1日
Vol.129, No.4, April 2025
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日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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副腎白質ジストロフィー新生児スクリーニング国内導入の現状,ならびに課題と対策
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下澤 伸行 521 |
日本小児循環器学会推薦総説 |
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植田 由依,他 530 |
日本小児アレルギー学会推薦総説 |
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稲毛 英介 540 |
原 著 |
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三善 陽子,他 551 |
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秋田 千里,他 561 |
症例報告 |
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古賀 雅子,他 567 |
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榊 優希,他 573 |
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安藤 ひかり,他 578 |
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竹元 將人,他 584 |
論 策 |
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勝田 友博,他 589 |
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大坪 善数,他 595 |
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601 |
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604 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 146 グリッターコースター破損に伴う鉱物油の誤飲による化学性肺炎(同)
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621 |
日本小児科学会情報管理委員会報告 |
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2022年度診療報酬改定に伴う病院小児科および全体の影響調査報告書
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624 |
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631 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2025年67巻2月掲載分目次
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【原著】
■題名
小児内分泌科医による小児・思春期若年成人世代がん患者の栄養管理の現状
■著者
大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科臨床栄養発育学研究室1),大阪大学大学院医学系研究科小児科学2),日本小児内分泌学会CCS・内分泌腫瘍委員会3),大阪大学医学部附属病院栄養マネジメント部4),大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科給食経営管理学第一研究室5) 三善 陽子1)2)3) 橘 真紀子2) 長井 直子4) 赤尾 正5) 安達 昌功3) 伊藤 純子3) 鹿島田 健一3) 菅野 潤子3) 佐藤 武志3) 長井 静世3) 堀 友博3) 堀川 玲子3) 室谷 浩二3) 森川 俊太郎3) 岡田 賢3)
■キーワード
小児・思春期若年成人(AYA)世代, がん患者, 晩期合併症, 小児内分泌科医, 栄養管理
■要旨
小児・思春期若年成人(adolescent and young adult:AYA)世代がん患者は,治療後に晩期合併症を発症するリスクがある.合併頻度の高い内分泌代謝異常の予防と治療には,食生活を含む栄養管理が重要である.そこで我々は,小児内分泌科医による小児・AYA世代がん患者の栄養管理について,現状と問題点を知る目的でアンケートを実施した.1次調査は日本小児内分泌学会評議員171名中158名が回答した(回答率92.4%).栄養食事指導の依頼経験あり141名(89.2%),小児・AYA世代がん患者の診療経験あり118名(74.7%)であった.次いで,がん患者の診療経験があり追加調査に同意を得た107名を対象に2次調査を実施し,104名が回答した(回答率97.2%).がん患者の栄養食事指導の依頼経験がある43名(41.3%)において,依頼件数は年間1〜9件,依頼病名は肥満症食,依頼時期は退院1年以後,依頼内容は食事量の指導が多かった.2次調査の回答者104名において,がん患者の栄養管理で困った主な症状は,肥満,成長障害(低身長),食欲不振,体重減少(体重増加不良)であった.栄養管理における主な問題点として,医療者の知識・理解不足,栄養食事指導に対する認知度の低さが挙げられた.小児・AYA世代がん患者の晩期合併症対策として,がん治療後の栄養管理に関する周知啓発と多職種連携が重要である.
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【原著】
■題名
小児専門病院で脳死とされうる状態の患者の発生頻度と脳死下臓器提供に至らない要因
■著者
静岡県立こども病院集中治療科 秋田 千里 佐藤 光則 八亀 健 中野 陽介 相賀 咲央莉 大井 正 佐藤 早苗 川崎 達也
■キーワード
小児脳死下臓器提供, 医学的脳死, 大脳脳幹機能評価, オプション提示, 法的脳死判定
■要旨
国内の小児臓器提供者数は少なく,移植待機患者数との格差は拡大している.小児臓器提供者数が増加に乏しい要因はさまざま報告されているが,それらの要因がどの程度影響しているか明らかではない.今回,改正臓器移植法施行(2011年7月10日)から2022年7月9日までの11年間に,臓器移植に関わらない大脳脳幹機能評価の実施の有無,医学的脳死患者の発生頻度,臓器移植に関わる情報提供いわゆるオプション(Option)提示(以下,OP)の有無と家族が臓器提供を選択しなかった理由から小児脳死下臓器提供数に影響した要因を抽出した.また,臓器提供者数の増加に寄与する改善可能な要因を検討した.大脳脳幹機能評価で医学的脳死と診断した患者は,院内全死亡者の8%(35/435名)であった.大脳脳幹機能評価の実施率は脳死疑い患者のわずか44%であった.疑われながらも大脳脳幹機能評価を実施しなかった患者が43名おり,ICU早期死亡症例14名を除いた29名の未実施理由は不明であった.医学的脳死と診断後に除外条件のためOPがされなかった患者は14名であった.家族が臓器提供を希望しなかった16名のうち,臓器摘出手術への抵抗が最も多く6名であった.本研究では,臓器提供者数に最も影響した要因として大脳脳幹機能評価の未実施が挙げられた.脳死が疑われる患者には大脳脳幹機能評価を行い,臓器提供が可能な場合は必ず家族に情報を提供することで臓器提供者数の増加に繋がる可能性がある.
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【症例報告】
■題名
アデノウイルス感染症の経過中に著明な胆嚢腫大を認め診断に苦慮した川崎病
■著者
国立病院機構九州医療センター小児科1),同 小児外科2) 古賀 雅子1) 宮田 達弥1) 東 加奈子1) 慶田 裕美1) 藤吉 順子1) 松下 悠紀1) 甲斐 裕樹2) 神野 俊介1)
■キーワード
川崎病, 胆嚢腫大, アデノウイルス感染症
■要旨
アデノウイルス感染症の経過中に著しい胆嚢腫大を呈し第8病日に診断に至った川崎病の1例を経験した.症例は3歳男児,高度な炎症反応を伴う発熱のため第6病日に入院した.眼球結膜充血はあったもののアデノウイルス抗原検査が陽性である一方,腹部膨満,黄疸,腹部超音波検査で著明な胆嚢腫大を認めたことから,まずは急性胆嚢炎に準じて抗菌薬静注を開始した.しかし,治療に反応せず,口唇紅潮や四肢末端の変化が顕在化したため,第8病日に川崎病と診断した.アスピリン内服と第8,10病日の計2回の免疫グロブリン大量静注療法により症状は軽快し,発症2か月後の時点まで冠動脈病変は認めていない.発症1か月後の腹部超音波検査で胆嚢は縮小し,MR胆管膵管撮影で胆石や膵胆管奇形を認めず,胆嚢腫大は川崎病の合併症と考えられた.
アデノウイルス感染症は,症状が川崎病の主要症状と類似しており,初期は川崎病の診断が困難となりうる.また,胆嚢腫大は川崎病の診断において参考となる徴候の一つであるが,本症例のような著明な胆嚢腫大を呈することは稀であり,川崎病の診断に時間を要した.川崎病の治療の遅れは冠動脈瘤形成などの臨床的に重大な転帰に繋がるため,本症例のような川崎病との鑑別が困難となる状態について理解を深めることは重要である.
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【症例報告】
■題名
抗PD-1抗体投与後に移植後シクロホスファミド併用ハプロ移植を行ったHodgkinリンパ腫
■著者
徳島大学病院小児科 榊 優希 岡村 和美 中野 睦基 竹本 成美 渡辺 浩良 漆原 真樹
■キーワード
Hodgkinリンパ腫, 同種造血幹細胞移植, 移植後シクロホスファミド, 免疫チェックポイント阻害薬, 小児
■要旨
再発,難治のHodgkinリンパ腫の治療の選択肢として,免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体がある.T細胞の活性化を促し抗腫瘍効果を発揮する薬剤で,同種造血幹細胞移植前の使用は抗腫瘍免疫が増強することが期待される一方,移植片対宿主病(GVHD)の増悪につながる可能性がある.
症例は16歳,女子.結節硬化型Hodgkinリンパ腫(stageIIA)の再々発に対し,抗PD-1抗体であるNivolumabに治療を変更し部分寛解となった.根治を目指し,Fludarabine,Melphalan,全身照射2 Gyによる前処置を用いて,HLA半合致の母から末梢血幹細胞移植を行った.移植後シクロホスファミド(PTCy)を含むGVHD予防を行った.Nivolumab最終投与日から移植までの間隔は80日とした.血球の生着は順調で急性GVHDは認めず.慢性GVHD(皮膚)をきたすも,プレドニゾロン(PSL)内服で軽快した.現在,移植後1年半が経過しているが寛解を維持している.抗PD-1抗体投与後の同種造血幹細胞移植は,投与から移植までの休薬期間を十分に設けること,ドナーに関わらずPTCyを併用することでGVHDの重症化を招くことなく施行可能であり,再発,難治性Hodgkinリンパ腫患者に対し良い選択肢となりえる.
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【症例報告】
■題名
偏食によるビタミンA欠乏が原因と考えられる反復性尿路感染症
■著者
豊川市民病院小児科1),同 泌尿器科2),同 眼科3) 安藤 ひかり1) 守時 良演2) 中田 大介3) 中井 英剛1)
■キーワード
ビタミンA欠乏症, 尿路感染症, 偏食, 自閉スペクトラム症, 角膜潰瘍
■要旨
ビタミンA(VitA)欠乏は全身の臓器に様々な症状をもたらす.特に初期症状として眼症状は重要であり,夜盲・羞明の視覚障害から始まり,眼球乾燥症から角膜軟化症へと進行し,最終的には失明する.また,VitA欠乏状態が長期にわたると,粘膜の角化により各種感染症発症のリスクともなり得る.今回我々は,偏食からのVitA欠乏で眼症状を発症し,尿路感染症(urinary tract infection:UTI)を反復した男児例を経験したため報告する.症例は6歳の男児で,自閉スペクトラム症・知的発達症があり,1歳から極度の偏食が続いていた.入院前の約1年間でUTIに11回罹患し,このうち7回は上部UTIであり3回の入院治療を要した.超音波検査で腎尿路系に異常所見はなく,膀胱尿管逆流も認めなかった.半年前からはドライアイを指摘されていたが原因が不明であり,今回のUTIでの入院時には開瞼障害を伴っていた.眼科診察にて角膜潰瘍を認め,精査の結果,VitA欠乏症が判明した.VitA補充と抗菌薬の投与により眼症状は改善し,UTIも治癒した.知的発達症の児がUTI等の感染症を繰り返す際には,眼症状の訴えが十分でないことを念頭に置いて眼科診療および詳細な食生活の問診を行い,VitA欠乏症を鑑別にあげる必要がある.
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【症例報告】
■題名
乳児のチャイルドシートの前向き使用時の交通外傷による高位頸髄損傷
■著者
鹿児島市立病院小児科 竹元 將人 池田 尚弘 太原 鉄平 森田 康子 櫨木 大祐 楠生 亮 野村 裕一
■キーワード
頸髄損傷, 交通外傷, チャイルドシート, 徐脈, 硫酸アトロピン
■要旨
【症例】11か月乳児.自動車の後部座席に前向きに装着されたチャイルドシートに着座し,自損事故により受傷した.受傷当日に人工呼吸管理下に当院へ転院し,MRIでC1・C2レベルの頸髄損傷を認めた.受傷後5日から高度徐脈が出現し10〜30秒間の心静止が頻発した.硫酸アトロピン定期静注を開始し極端な徐脈の頻度は減少し,受傷後16日以降には見られなくなった.意識は回復し表情筋の動きは改善したが,人工呼吸器管理が必要であり四肢の麻痺は残存した.
【考察】乳幼児は頭部が大きく前面への衝突時に頸部に強い負荷がかかるため,本例のような前向き使用では頸髄損傷の危険があるという認識は重要である.重度の頸髄損傷後に交感神経遮断となり,迷走神経刺激で高度の徐脈をきたす例は多く,徐脈が高度で心停止をきたす例もある.徐脈に対して,ペースメーカー管理やアミノフィリン等での対応も報告されているが,本例では硫酸アトロピンの使用が有用だった.本邦では6歳未満の乳幼児のチャイルドシートの使用が義務化されているのみであるが,海外では乳児は後ろ向きや横向きの使用が勧められており,義務化されている国もある.
【結語】頸髄損傷の予後は極めて重篤でありその予防が重要である.そのためにも年少児におけるチャイルドシートの後ろ向き使用も含めた適切な装着法についての更なる啓発活動が必要である.
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【論策】
■題名
BCGワクチン接種後有害事象能動的解析における診療報酬明細書情報の有用性と課題
■著者
聖マリアンナ医科大学小児科学教室1),長崎大学病院臨床研究センター支援ユニット2),聖マリアンナ医科大学医学情報学教室3),九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座4),同 附属総合コホートセンター5) 勝田 友博1) 佐藤 俊太朗2) 川添 百合香2) 高橋 政樹3) 村田 典子4) 前田 恵4) 福田 治久4)5)
■キーワード
予防接種後有害事象, 能動的解析, 診療報酬明細書, 自己対照ケースシリーズデザイン, BCGワクチン
■要旨
我々はBCG(Bacille Calmette-Guérin)ワクチンを評価対象とし,診療報酬明細書(レセプト)を用いた予防接種後有害事象(adverse events following immunization:AEFI)の能動的解析の有用性と課題を検討した.皮膚結核様病変,化膿性・急性リンパ節炎/リンパ節腫脹・腫大,非特異性・慢性リンパ節炎,全身性播種性BCG感染症,BCG骨炎,髄膜炎,予防接種後副反応を評価対象のAEFIとした.マッチドコホート研究デザインにおいては予防接種後副反応のみが確認され,ワクチン接種群で4例(0.59%),未接種群で0例(0.0%)であった.自己対照ケースシリーズ(self-controlled case series:SCCS)デザインにおいては化膿性・急性リンパ節炎/リンパ節腫脹・腫大の発生率比は2.28(1.33〜3.93),非特異性・慢性リンパ節炎の発生率比は2.76(1.19〜6.37)であった.SCCSデザインにおいて,BCGワクチン接種と一部のAEFIとの関連性は示唆された.国内においてレセプト情報を用いたAEFIの評価をより正確に実行するためには診療録を用いた専門家による評価(chart review)体制の構築,レセプト情報の妥当性(validation)評価,安定した小児調査集団の確保など,複数の課題への対応が重要である.
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【論策】
■題名
診療情報データに基づいた小児診療体制の見直し
■著者
佐世保市総合医療センター小児科 大坪 善数 木住野 美緒 柳 貴文 松田 諒 松村 花奈子 吉岡 佐千佳 江崎 裕幸 橋本 和彦 横川 真理 角 至一郎
■キーワード
小児医療提供体制, 医師の働き方改革, 地域小児科センター, 小児科収益, 年少人口
■要旨
当院は全国に約400ある地域小児科センターのひとつで常勤医数,患者数ともに平均的な規模を持ち,全594床のうち小児病棟35床,NICU 6床,GCU 14床となる.収益はDPCに加えて小児入院医療管理料2,新生児特定集中治療室管理料2を算定している.2008年からは常勤医9〜10人を維持しているが,年少人口減少,新型コロナウイルス感染症流行による入院数減少など大きな影響を受けた.加えて地域医療構想による病院のダウンサイジングの方針もあり,小児科診療体制の縮小が懸念された.新たな診療体制の構築が急務となり,診療情報データに基づいた診療・経営実績の分析をひとつの指標とし,2020年より現状把握,診療体制の見直しを行ってきた.
2018〜2023年度の病院全体に対する小児科の割合として,(1)常勤医数は7.2〜7.9%,(2)延べ患者数は外来5.6〜6.1%,入院5.2〜5.8%,(3)収益は入院5.4〜5.9%,外来が3.5〜4.7%,(4)時間外救急外来受診者数は20.9〜26.1%であった.収益改善策としては現状の小児入院医療管理料の維持,重症児のICU管理による管理料算定などが挙げられた.医師の働き方改革が進むなか,県内中核病院との連携,小児診療看護師の育成を含めた他職種へのタスクシフトを進め,医療的ケア児者への積極的介入など地域医療への貢献も含め小児科の存在価値をアピールしている.
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