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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:25.3.18)
第129巻 第3号/令和7年3月1日
Vol.129, No.3, March 2025
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第127回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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小山 典久 409 |
日本小児血液・がん学会推薦総説 |
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石黒 精 417 |
原著総説 |
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吉年 俊文 426 |
原 著 |
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三浦 文武,他 440 |
症例報告 |
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杉谷 雄一郎,他 447 |
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山野 暁生,他 453 |
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郭 昇煥,他 460 |
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山本 朝子,他 467 |
論 策 |
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岡田 賢,他 473 |
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477 |
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493 |
日本小児医療保健協議会栄養委員会報告 |
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494 |
お知らせ |
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497 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 144 エアコッキングガンのエジェクションポートに挟まれたことによる右示指指尖部外傷(同)
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499 |
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502 |
日本小児科学会ダイバーシティ・キャリア形成委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方―私の場合48 |
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505 |
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507 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻12月掲載分目次
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514 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2025年67巻1月掲載分目次
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514 |
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【原著総説】
■題名
小児Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Diseaseの現状と今後の展望
■著者
Division of Gastroenterology,Hepatology and Nutrition,The Hospital for Sick Children (SickKids) 吉年 俊文
■キーワード
metabolic dysfunction associated steatotic liver disease, metabolic dysfunction associated steatohepatitis, nonalcoholic fatty liver disease, nonalcoholic steatohepatitis, スクリーニング
■要旨
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は小児における最も有病率の高い慢性肝疾患である.2023年,この疾患概念は大きな変革を迎え,名称がmetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)に変更された.小児NAFLD/MASLDは診断時に約半数が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)/metabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)に進行している可能性があり,腎疾患,高血圧,2型糖尿病,精神疾患を併存していることがある.本邦の成人MASLDの有病率は2040年までに人口の44.8%に達すると予測され,肝硬変や肝癌,心血管病変に起因する死亡率の増加と関連する.小児においても“沈黙の臓器”が症状を呈する前に早期診断と継続的な介入が不可欠である.小児MASLDのスクリーニングは,肥満を有する9歳以上に対して行うことが推奨されている.確定診断は,肝生検や画像検査により肝細胞の5%以上に脂肪蓄積を認めることであり,通常の超音波検査だけでは早期発見は困難である.治療の基本は減量であり,成人分野では肥満治療薬としても有効なセマグルチドやチルゼパチドのエビデンスが示されている.今後,小児分野の臨床研究の発展が期待される.
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【原著】
■題名
植込み型心臓モニタを導入した成人先天性心疾患患者7例
■著者
榊原記念病院小児循環器科 三浦 文武 中井 亮佑 島田 空知 小林 匠 前田 佳真 齋藤 美香 吉敷 香菜子 上田 知実 濱道 裕二 矢崎 諭 嘉川 忠博
■キーワード
植込み型心臓モニタ, ループレコーダー, 失神, 動悸, 先天性心疾患
■要旨
植込み型心臓モニタ(implantable cardiac monitor:ICM)は原因不明の失神や動悸の診断に有用とされ,またICMの診断に基づいた治療も有効とされている.成人循環器領域ではICMの有用性が示されているが,近年増加している成人先天性心疾患例での検討は少ない.2012年4月から2020年11月までに当院の成人先天性心疾患患者でICMを植込んだ7例について診療録を用いて後方視的に検討し,その経過と有用性について検討した.症例は7例で,年齢は15〜48歳(中央値22歳),性別は男性5例,女性2例.家族歴を認めた症例はなかった.ICM植込みの契機となった症状は失神が6例,前失神が1例だった.症状再発時のICMのデータから2例は不整脈の診断に至り,その中の1例はICMの診断に基づいた治療も有効で,失神の再発を認めなかった.また症状再発時のICMのデータで心イベントを認めなかった2例は,後の精査で神経疾患や精神疾患と診断した.ICMは成人先天性心疾患患者における失神の診断に有用なツールになりうる.
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【症例報告】
■題名
経皮的肺動脈弁形成術により二心室循環を確立した重症肺動脈弁狭窄の超低出生体重児
■著者
地域医療機能推進機構九州病院小児科 杉谷 雄一郎 宗内 淳 横田 千恵 渡邉 まみ江 山本 順子
■キーワード
経皮的肺動脈弁形成術, 純型肺動脈閉鎖, プロスタグランジンE1, 心外合併症, 未熟児
■要旨
先天性心疾患を有する超低出生体重児の治療は,脳出血や壊死性腸炎等心外合併症に留意し管理を行う必要がある.早期の心外合併症を回避し体重増加を得た後,経皮的肺動脈弁形成術を実施して二心室循環を確立した重症肺動脈弁狭窄を伴う超低出生体重児の1例を経験した.
症例:妊娠24週6日に胎児重症肺動脈弁狭窄と診断した.在胎25週3日,出生体重514 g,母体妊娠高血圧症候群及び胎児機能不全のため緊急帝王切開で出生した.経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)90%からプロスタグランデンジンE1持続投与は実施しなかったが,動脈管血流は保たれた.動脈管の狭小化に伴い,生後2か月にチアノーゼ(SpO2 65%),心嚢液貯留および全身性浮腫が出現した.肺血流確保のために日齢86に体重1,570 gで経皮的肺動脈弁形成術を実施した.右室圧は治療前141/19 mmHgであった.肺動脈弁輪径4.6 mmに対して径6 mmのバルーンカテーテルで拡張した.治療後,右室圧は53/15 mmHgへ低下し,SpO2は93%へと回復した.日齢202に2回目の経皮的肺動脈弁形成術を実施し,日齢236に退院した.
重症先天性心疾患を有する超低出生体重児は全身臓器の未熟性と不安定な血行動態から心外合併症の罹患率および死亡率が高い.したがって,心疾患に対する治療を適切な時期にカテーテル治療を併用して実施することにより,心外合併症を回避し救命できる可能性がある.
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【症例報告】
■題名
持続血糖測定器を用いて低血糖管理を行った糖原病Ib型の新生児
■著者
京都第一赤十字病院新生児科1),同 小児科2) 山野 暁生1) 近藤 秀仁2) 木下 大介1) 西村 陽1)2)
■キーワード
糖原病Ib型, SLC37A4, 持続血糖測定器
■要旨
糖原病I型はグリコーゲン代謝異常をきたす常染色体潜性遺伝疾患であり,低血糖を繰り返すことで神経学的予後に影響を与える.
症例は1歳女児.新生児期に高乳酸血症と低血糖を契機に糖原病Ib型と診断し,持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitoring,以下CGM)を用いて血糖管理を行った.計171回の血糖・CGM測定値評価において,血糖値とCGM測定値はBland-Altman分析において良好な一致を示し,正確に評価可能であった.糖原病治療用特殊ミルクを用いて頻回哺乳を行ったが,血糖値70 mg/dL以下の無症候性低血糖を繰り返したため,経鼻胃管による終日持続注入を開始した.血糖値の安定を確認し,日齢75に退院,1歳現在発達は良好で神経学的異常は認めていない.
生後早期は,症状から低血糖を認識することが困難である.糖原病I型など低血糖リスクの高い疾患において,早期よりCGMを用いて血糖管理を行うことは低血糖の予防に有用である.
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【症例報告】
■題名
診断にEpstein-Barrウイルス感染細胞同定検査を使用した重症伝染性単核症
■著者
東京大学医学部附属病院小児科1),国立成育医療研究センター高度感染症診断部2) 郭 昇煥1) 絹巻 暁子1) 田中 裕之1) 梶保 祐子1) 高橋 千恵1) 神田 祥一郎1) 今留 謙一2) 加藤 元博1)
■キーワード
Epstein-Barrウイルス, 伝染性単核症, 慢性活動性Epstein-Barrウイルス病, 感染細胞同定検査
■要旨
Epstein-Barrウイルス(以下EBウイルス)は標的細胞であるB細胞に感染することで伝染性単核症(IM:Infectious mononucleosis)を引き起こすが,T細胞やNK細胞に感染すると慢性活動性EBウイルス病(CAEBV:Chronic active Epstein-Barr virus disease)を発症する.病初期は類似症状をきたすため鑑別が難しいが,適切な治療方針を選択するためには病態の把握が必要である.
症例は7歳男児で,弛張熱,眼瞼浮腫,頸部リンパ節腫大が続き,血清抗体価よりEBウイルス感染症と診断した.その後も症状は改善せず,著しいリンパ節腫大からCAEBVを含めた病態の把握と鑑別を目的に感染細胞同定検査を行った.EBウイルス感染細胞はCD19陽性B細胞でありIMと診断し,プレドニゾロンの投与を開始した.症状や検査値は改善し,その後症状の再燃はなかった.一般的に軽症にとどまるIMだが,自験例は症状が重篤であり,EBウイルスに対して特異的免疫応答欠陥を認めるX連鎖リンパ増殖症候群を考慮し遺伝子検査を行ったが,病的バリアントは認めなかった.
IMやCAEBVなどのEBV関連疾患は症状のみからの鑑別が困難であるが,予後が大きく異なる.感染細胞同定検査は診断の一助となり,適切な治療と管理につなげることができる.
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【症例報告】
■題名
肝腫瘍の合併から先天性門脈欠損症と診断された幼児
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター総合診療科1),札幌厚生病院放射線科2),北海道大学病院放射線診断科3),北海道立子ども総合医療・療育センター小児外科4) 山本 朝子1) 中川 純一2) 工藤 與亮3) 二階堂 弘輝1) 浅沼 秀臣1) 星野 陽子1) 石原 舞1) 縫 明大4) 横山 新一郎4) 稲澤 奈津子1)
■キーワード
先天性門脈欠損症, 肝腫瘍
■要旨
先天性門脈欠損症(congenital absence of portal vein:CAPV)の約半数は,新生児マススクリーニング検査でガラクトース高値を契機に診断される.今回,新生児期には診断されず,後に肝腫瘍が出現し経時的に多発・増大したことから,幼児期にCAPVの診断に至った1例を経験した.症例は6歳女児.遺伝学的背景として環状X染色体Turner症候群とNoonan症候群がある.新生児マススクリーニング検査で異常を認めず,肝機能異常や肝腫瘍などの異常所見も認めなかった.4歳8か月時のMRI検査で肝腫瘍を指摘されたが,造影CTでは腫瘍は判然とせず,経過観察となった.6歳頃から肝腫瘍の急激な増大と多発を認めたため,再度造影MRI検査を施行したところ,CAPVの合併が明らかとなった.小児のCAPVは稀であり,肝腫瘍を契機として診断される例は更に稀である.肝腫瘍を認めた際には,CAPVを合併している可能性があるため,造影画像検査で短絡血管を検索することが必要である.
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【論策】
■題名
日本の小児科における入局者,学位取得者,海外留学者,英語論文数の推移
■著者
小児科チェアパーソンの会1),広島大学大学院医系科学研究科小児科学2),慶應義塾大学医学部小児科3),滋賀医科大学小児科学講座4),京都大学発達小児科学5),九州大学大学院医学研究院成長発達医学/九州大学病院小児医療センター6),杏林大学医学部小児科学教室7),新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野8),北海道大学大学院医学研究院小児科学教室9) 岡田 賢1)2) 鳴海 覚志1)3) 丸尾 良浩1)4) 滝田 順子1)5) 大賀 正一1)6) 成田 雅美1)7) 齋藤 昭彦1)8) 真部 淳1)9)
■キーワード
小児科学, 英語論文数, 学位取得者数
■要旨
小児医学・小児医療分野の研究力向上に向けた課題を抽出し,それに対する対策を議論するための基礎的な資料を提供することを目的に,国内大学の小児科学教室・講座における学位取得状況と英語論文報告数を調査した.全国の計82大学の小児科主任教授で構成される小児科チェアパーソン会議の参加メンバーを対象に質問紙調査を行った.2010年度〜2022年度までの入局者,英語論文数,2010年度〜2020年度までの学位取得者,海外留学者などを調査し,82大学中55大学から回答を得た.2010年度〜2020年度の学位取得者は1,069人であり,そのうち女性は31.7%であった.年度ごとに見ると,学位取得者数は緩やかに増加していた.一方,同期間中の海外留学者は総数231人であり,年ごとの推移では緩やかに減少していた.2010年度〜2022年度の英語論文は総数9,969報であり,年度ごとの推移では増加しており,その推移は日本における臨床医学系論文の数と同様の傾向を示した.2024年度からの医師の働き方改革の本格実施にともなう労働時間の短縮により,研究活動への影響が懸念される.その影響を知る上でも,今後も同様の調査を定期的に行い,小児科学における研究環境の変化を把握しておくことが望ましい.
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