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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:24.12.18)
第128巻 第12号/令和6年12月1日
Vol.128, No.12, December 2024
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日本小児アレルギー学会推薦総説 |
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手塚 純一郎 1505 |
日本小児腎臓病学会推薦総説 |
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半世紀にわたる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の歩みと最新の動向
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服部 元史 1514 |
原著総説 |
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伊藤 はるか,他 1524 |
原 著 |
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齋藤 真理,他 1531 |
症例報告 |
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松永 理,他 1539 |
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花井 葉月,他 1546 |
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朝比奈 真希,他 1551 |
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水元 仁美,他 1557 |
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1562 |
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1571 |
日本小児科学会小児医療提供体制委員会報告 |
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COVID-19流行前後における小児医療の変化に関する調査
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1576 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻10月掲載分目次
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1585 |
【原著総説】
■題名
川崎病様症状を契機に診断した無症候性先天性右冠動脈瘻と既報のまとめ
■著者
大分大学医学部小児科学教室1),国立病院機構別府医療センター小児科2) 伊藤 はるか1) 岸本 慎太郎1) 平江 健二2) 井原 健二1)
■キーワード
冠動脈拡張, 小児, 先天性冠動脈瘻, 川崎病, 心雑音
■要旨
小児の冠動脈拡張の原因として,川崎病はすべての小児科医が念頭に置く疾患である.一方,頻度は稀だが,先天性冠動脈瘻などの先天性冠動脈疾患も冠動脈拡張の原因となる.今回,われわれは,6歳時の健診での心雑音を契機に受診した際には診断にいたらず,7歳時の川崎病様症状を契機に診断にいたった先天性冠動脈瘻の症例を報告する.また,小児期に発見された無症状の先天性冠動脈瘻の既報例をまとめ,先天性冠動脈瘻の発見につながる契機,診察所見,検査所見について考察した.心雑音や川崎病疑いの児の最初の診療を担う一般小児科医においても,先天性冠動脈疾患の存在を認識し,心エコー図検査で冠動脈拡張を認めた場合には鑑別として先天性冠動脈疾患を挙げ小児循環器専門医への紹介を考慮する必要がある.
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【原著】
■題名
COVID-19流行中に地域総合病院と保健機関が連携支援した特定妊婦
■著者
芳賀赤十字病院小児科1),自治医科大学小児科2) 齋藤 真理1) 菊池 豊1) 黒崎 雅典2)
■キーワード
COVID-19, 特定妊婦, 地域総合病院, 地域保健機関
■要旨
2020年以降,コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は本邦の社会・経済活動を停滞させ,妊産婦のメンタルヘルスや家計,家族関係にも影響を与えたと推測された.そこで,当院において子ども虐待リスクのある特定妊婦支援に活用することを目的に,地域保健機関と連携支援した特定妊婦の観点から,COVID-19流行が妊産婦に与えた影響を検証した.
本研究は,2020年1月からの2年間を「COVID-19流行中」と定義し,その間の特定妊婦をそれ以前の2年間と比較した.特定妊婦の割合はCOVID-19流行中に有意に増加した.周産期背景に明らかな変化はなかったが,COVID-19流行中は里帰りの割合が有意に減少した.特定妊婦に抽出された理由として,統計学的な有意差を認めなかったものの「支援拒否」「無職」「生活保護受給」「日本語理解困難」「理解力不足」は増える傾向を認め,それらが相まって特定妊婦の増加につながった可能性があった.保護者の都合で近医に紹介し当科で継続支援できなかった出生児はCOVID-19流行中に増えたが,生後5か月までに明らかな養育問題を認めなかった割合は変わらなかった.
COVID-19流行により支援を要する特定妊婦は増えたが,養育状況の悪化は認めなかった.
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【症例報告】
■題名
Igκ鎖遺伝子再構成断片低値を示した母体アザチオプリン投与による一過性B細胞減少症
■著者
兵庫県立尼崎総合医療センター小児科1),同 小児血液・腫瘍内科2),大阪大学大学院医学系研究科感染制御学3),京都大学大学院医学研究科発達小児科学講座4) 松永 理1) 田中 邦昭1)2) 日馬 由貴3) 岩井 篤1)2) 小林 健一郎1)2) 井澤 和司4) 八角 高裕4) 毎原 敏郎1) 宇佐美 郁哉1)2) 平家 俊男1)
■キーワード
原発性免疫不全症マススクリーニング, KREC, フローサイトメトリー, アザチオプリン, NUDT15遺伝子
■要旨
新生児期の濾紙血を用いたIgκ鎖遺伝子再構成断片(Kappa-deleting recombination excision circle;KREC)PCR定量検査は先天性B細胞減少症のマススクリーニング検査として近年普及しつつある.
今回,SLEに対してアザチオプリン(azathioprine;AZA)内服中の母親から出生した男児がスクリーニングにおいてKREC PCR定量値が感度未満を示したが,最終診断は一過性B細胞減少症であった症例を経験した.AZAは炎症性腸疾患や膠原病疾患の合併妊娠における病勢コントロールに頻用されている免疫抑制薬であり,胎盤移行性を有しているものの,免疫能やKREC値への影響は十分に明らかになっていない.本症例においてAZAの代謝酵素であるNUDT15遺伝子codon139多型について解析を行ったところ,患児が父由来のp.Arg139Cysヘテロ多型を有していた.この多型によりNUDT15酵素活性が低下し,経胎盤移行したAZAによって胎児のB細胞産生が抑制されたことが病態と考えられた.
本症例の経過からは,スクリーニングでKRECが異常低値を示す原因として母親の免疫抑制剤内服による一過性B細胞減少の症例が含まれ注意が必要であること,また,母体のAZA内服が胎児へ与える影響には薬剤代謝活性に関わる遺伝子多型が関連することが示唆された.
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【症例報告】
■題名
気管皮膚瘻閉鎖術後に気道緊急に至った重症心身障害児
■著者
東京都立墨東病院小児科1),東京女子医科大学付属足立医療センター小児科2),同 新生児科3) 花井 葉月1) 有坂 敦子1) 桑原 怜未1) 武井 陽1) 吉橋 知邦1) 鈴木 悠2) 長谷川 久弥3) 大森 多恵1)
■キーワード
気管切開, 気管皮膚瘻, 気管皮膚瘻閉鎖, 気管軟化症, 気道緊急
■要旨
小児の気管切開孔はカニューレ抜去後,多くは4か月までに自然閉鎖するが,6.2〜52.2%で気管皮膚瘻として残存する.気管皮膚瘻は児のQOL(quality of life)低下の原因となり,自然閉鎖が得られない症例では慎重に外科的介入が検討される.また,小児の気管切開においてカニューレを抜去できる割合は約1〜3割程度であり,特に歩行可能な程度の運動能力がない例では難しい傾向にある.今回,カニューレ抜去は行うことができたが,気管皮膚瘻閉鎖術後に気道緊急に至った症例を経験したので報告する.症例はRSウイルス関連急性脳症に罹患し気管切開術が施行された4歳男児.気管切開後,呼吸状態は安定し,5か月後にカニューレ抜去が行われた.気管切開孔は自然閉鎖せず,3か月後に気管皮膚瘻閉鎖術の施行目的に入院した.手術は問題なく終了したが,手術同日夜間と手術翌日に,吸気性喘鳴と陥没呼吸,酸素化低下を認め,挿管管理とした.本症例では気道緊急となった原因として,気管皮膚瘻閉鎖術後に呼吸経路が変更となり解剖学的死腔が増加し気道抵抗が上昇したこと,術中の軟部組織剝離により気管壁の可動性が増加したこと,また,創周囲の浮腫も加わり,もともと存在していた後天性気管軟化症が増悪したことが考えられた.気管皮膚瘻閉鎖術前には繰り返しの気道評価と詳細な問診により気道緊急のリスクを評価し,十分な準備と説明を行う必要がある.
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【症例報告】
■題名
術後十二指腸潰瘍による胃十二指腸動脈仮性瘤に対してコイル塞栓術を行った幼児例
■著者
浜松医科大学小児科1),同 放射線診断科2),同 整形外科3) 朝比奈 真希1) 棚橋 裕吉2) 増永 陽平1) 金城 健一1) 長谷川 智彦3) 織田 海秀1) 藤澤 泰子1)
■キーワード
消化管出血, 出血性ショック, 仮性動脈瘤, 血管内治療
■要旨
胃十二指腸動脈瘤は小児では稀な疾患であり,基礎疾患として慢性膵炎や膵仮性嚢胞,十二指腸潰瘍などが報告されている.今回,環軸椎亜脱臼の後方椎体間固定術後の十二指腸潰瘍に仮性動脈瘤を合併し,コイル塞栓術により救命し得た症例を経験したので報告する.
症例は点状軟骨異形成症の1歳男児.環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫解除のため後方椎体固定術を施行された.術後4日目に経鼻胃管からの吸引にて鮮血様の内容物が確認され黒色便もみられたが,腹部造影CTで明らかな出血源を特定できなかった.その後も,消化管出血を繰り返して貧血が進行した.術後14日目に播種性血管内凝固症候群(DIC)となり,緊急腹部造影CTで胃十二指腸動脈瘤が確認され,十二指腸潰瘍部の仮性動脈瘤と診断した.緊急血管造影検査とコイルによる動脈塞栓術を施行したところ,消化管出血とDICは速やかに改善した.後日施行した上部消化管内視鏡で十二指腸球部前壁に潰瘍瘢痕と塞栓コイルが確認された.
出血性ショックやDICをきたすような上部消化管出血では仮性動脈瘤の可能性を考慮して造影CT検査を施行し,動脈塞栓術を治療の選択肢に入れる必要がある.
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【症例報告】
■題名
急性腹症を契機に腹部超音波検査で診断された傍卵管嚢腫
■著者
熊本赤十字病院小児科1),同 国際医療救援部2),同 小児外科3) 水元 仁美1) 余湖 直紀1) 高木 祐吾1) 杉本 卓哉2) 吉元 和彦3) 平井 克樹1)
■キーワード
傍卵管嚢腫, 卵管捻転, 小児, 妊孕性, 卵巣嚢腫茎捻転
■要旨
傍卵管嚢腫は小児での報告は稀である.傍卵管嚢腫による卵管捻転や卵巣嚢腫茎捻転は腹痛を契機に発見されることが多い.傍卵管嚢腫による卵管捻転は卵巣嚢腫茎捻転と比較し腹痛の程度が軽微にとどまり易い.また,傍卵管嚢腫は超音波検査で卵巣と傍卵管の境界を描出できず,術前診断を行うことは難しい.
症例は生来健康な13歳の女子.受診2日前,突然発症の強い腹痛を自覚し,前医で便秘症と診断された.その後も腹痛が持続したため再診した.超音波検査で骨盤内に約50 mm大の嚢胞性病変を認め,卵巣嚢胞茎捻転が疑われ精査加療目的で転院となった.超音波検査で両側卵巣と左卵管に接する嚢胞性病変を描出し,左卵管周囲の血流速度の亢進を認めた.正常卵巣が描出できたことから傍卵管嚢腫およびそれに伴う卵管捻転を疑い,緊急で腹腔鏡下手術を施行した.左傍卵管嚢腫の他,左卵管の捻転を認めた.捻転の解除後,卵管の伸展やうっ血を認めたが,虚血や壊死所見はなく,嚢腫核出のみで卵管は温存し手術終了とした.経過は良好で術後3日に自宅退院とした.核出した嚢腫は病理組織学検査に提出し,傍卵管嚢腫に矛盾なく悪性所見は認めなかった.
傍卵管嚢腫に伴う卵管の伸展や捻転は妊孕性にも影響するため,早期診断・手術介入が必要であり,急性腹症の鑑別疾患として考慮することが重要である.また,傍卵管嚢腫は悪性化のリスクもあるため捻転がなくとも,摘出の必要性がある.
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