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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:24.10.16)
第128巻 第10号/令和6年10月1日
Vol.128, No.10, October 2024
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第127回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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大賀 正一 1257 |
日本外来小児科学会推薦総説 |
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井上 佳也 1264 |
日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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わが国におけるPompe病の新生児スクリーニングの現状と課題
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澤田 貴彰,他 1274 |
原 著 |
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平出 智裕,他 1284 |
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森田 可奈子,他 1295 |
症例報告 |
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上紙 真未,他 1303 |
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東山 望,他 1308 |
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金内 萌葉,他 1314 |
短 報 |
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井上 建,他 1320 |
論 策 |
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金森 啓太,他 1323 |
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地方会抄録(滋賀・宮崎・千葉・青森・佐賀・新潟・京都・静岡・長野・熊本・岩手・福岡・北陸・福井・島根)
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1329 |
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1370 |
日本小児科学会JPLS委員会報告 |
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小児診療初期対応(Japan Pediatric Life Support;JPLS)コース開催100回までの受講者調査からみえる今後の地域医療への展望
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1371 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻8月掲載分目次
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1376 |
令和6年度公益財団法人小児医学研究振興財団 |
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1378 |
【原著】
■題名
急増した基質拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌による尿路感染症の発生動向
■著者
島根県立中央病院小児科1),同 細菌検査部2),松江赤十字病院小児科3),同 感染症科4) 平出 智裕1) 小池 大輔1) 和久利 美帆2) 秋好 瑞希1) 羽根田 泰宏1) 金井 理恵1) 堀江 昭好3) 成相 昭吉4)
■キーワード
基質拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌, 上部尿路感染症, 薬剤耐性菌
■要旨
【背景】基質拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌の増加が世界中で問題となっている.島根県出雲圏域では,2016年に初発の上部尿路感染症(urinary tract infection:UTI)による入院患者が急増し,原因菌の68%をESBL産生大腸菌が占めた.そのため,初発の上部UTI患者に対し,ESBL産生大腸菌を想定してフロモキセフもしくはセフメタゾールで治療を開始した.今回,2017年以降の上部UTIによる入院患者数の年次推移に加え,原因菌別の臨床像を比較検討した.【方法】2017年から2023年の間に初発の上部UTIで当院に入院した小児患者179例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】年間の上部UTIによる入院患者数は,2017年の41例から減少し,2023年に13例となった.原因菌に占めるESBL産生大腸菌の割合は,2017年に71%(29/41例)に達したが,その後は減少し,2023年に23%(3/13例)となった.ESBL産生大腸菌群97例とESBL非産生大腸菌群74例の比較では,臨床的に有意差を認めなかった.【結語】フロモキセフやセフメタゾールはESBL産生大腸菌に有効な抗菌薬であるが,長期使用により新たな薬剤耐性菌を生み出す可能性がある.そのため,地域の流行状況を把握し適切な抗菌薬を選択する必要がある.
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【原著】
■題名
オミクロン株流行期に小児病院に入院したCOVID-19患者の特徴
■著者
大阪母子医療センター集中治療科1),同 感染症科/新生児科2) 森田 可奈子1) 籏智 武志1) 野崎 昌俊2) 竹内 宗之1)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, COVID-19, オミクロン期, 小児入院患者, 臨床的特徴
■要旨
本邦では2022年1月よりコロナウイルス感染症2019(coronavirus disease 2019,COVID-19)オミクロン株が流行し,小児患者が急増した.小児を対象とする医療体制整備に,COVID-19小児患者の実態把握が重要だが情報は少ない.本報告はオミクロン株流行期の小児COVID-19入院患者の臨床経過を明らかにし,2022年1月から12月に当センターに入院したCOVID-19入院患者を後ろ向きに調査し,臨床的特徴,経過,予後を評価した.対象は448件の入院で,男児は60.5%,年齢中央値5[1〜10]歳,入院日数中央値4[3〜8]日であった.軽症患者が多くを占めたが(88.6%),入院患者増加に従って中等症以上の患者も増加した.入院理由は経口摂取不良が25.7%と最も多く,次いでけいれんが14.0%で呼吸器症状以外の入院理由が多かった.49.8%に基礎疾患があった.基礎疾患を有する群と無い群で中等症以上の割合に差はなかった(14.3% vs. 8.4%,P=0.054)が,在院日数は基礎疾患を有する群で延長した(6日 vs. 4日,P<0.001).基礎疾患を有する患者は低酸素血症が入院理由に多く,基礎疾患の無い患者はけいれんが入院理由に多かった.調査期間中のCOVID-19の死亡は1件であった.退院時にCOVID-19後遺症を10人(2.2%)に認めた.基礎疾患の有無は重症度に関連していなかったが入院日数が延長する為,流行期の医療体制と患者に負担を与えた可能性があった.
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【症例報告】
■題名
けいれんを伴う心静止から洞不全症候群と鑑別を要した心抑制型血管迷走神経性失神の児
■著者
亀田クリニック小児科1),千葉県こども病院循環器内科2) 上紙 真未1) 伊東 宏明1) 河村 誠次1) 石井 徹子2)
■キーワード
意識消失, けいれん, 起立試験, 心抑制型血管迷走神経性失神
■要旨
小児の失神では反射性失神のうち血管迷走神経性失神が最多であり,一般的に予後はよい.今回我々は心抑制型血管迷走神経性失神により約11秒間にわたる心静止を呈した症例を経験した.
症例は7歳女児.入浴後立位時に意識を消失し,約10秒間の強直発作を起こした.発作直後より意識清明であり,血液検査,心電図,心エコー,脳波では異常なかった.Holter心電図検査中に,血管迷走神経性失神の評価目的に施行した起立試験で再度意識を消失し,約10秒間の強直発作と約11秒間の心静止を認めた.洞不全症候群の可能性を考慮したが,発作時の状況など病歴の聴取より,最終的にけいれんを伴った心抑制型血管迷走神経性失神と診断した.非心原性疾患か心原性疾患かの鑑別は予後に大きな差があることから,詳細な問診により心原性を強く示唆する身体症状の有無と家族歴の確認等が重要である.
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【症例報告】
■題名
抗体パターンからSARS-CoV-2既感染が示唆された凍瘡様皮疹の乳児例
■著者
市立札幌病院小児科1),同 皮膚科2),同 病理診断科3) 東山 望1) 山崎 健史1) 忠鉢 もも1) 工藤 絵理子1) 伊藤 智城1) 畠山 欣也1) 平野 瑶子2) 清水 聡子2) 辻 隆裕3) 佐野 仁美1)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, COVID toe, 凍瘡様皮疹, 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型, 新型コロナウイルス
■要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)流行中に,COVID-19に関連する皮膚症状として凍瘡様皮疹が指摘されており,足趾の出現頻度が高いことから「COVID toe」と呼称されている.COVID-19に関連するその他の皮膚症状は比較的重症のCOVID-19に伴うのに対し,凍瘡様皮疹を呈する症例はCOVID-19としては無症状から軽症で,皮疹は自然軽快するとされている.北米,欧米での報告が多く,本邦での報告例はごく稀である.今回,凍瘡様皮疹を認め,抗体パターンから重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)の既感染が疑われた乳児例を経験した.症例は8か月男児.四肢末端の血色不良を主訴に受診し,手指,足趾の暗紫色斑と痂皮を認めた.血液検査でD-dimer値の上昇を認め,ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体,SARS-CoV-2抗N抗体および抗S抗体が陽性だった.皮膚生検では真皮浅層から深部の小血管内に血栓を認めた.COVID-19に関連した凍瘡様皮疹の可能性を疑い,保存的加療にて改善した.COVID-19パンデミック中に寒冷曝露のない患者の凍瘡様皮疹を認めた場合,COVID-19に関連した凍瘡様皮疹を鑑別に入れるべきである.
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【症例報告】
■題名
大動脈弁閉鎖不全症を合併した腸管型Behçet病の小児例
■著者
埼玉県立小児医療センター消化器・肝臓科1),同 循環器科2),上尾中央総合病院小児科3) 金内 萌葉1) 南部 隆亮1) 西岡 真樹子2) 須田 亜美3) 宮沢 絢子1) 吉田 正司1) 原 朋子1) 黒沢 祥浩3) 中島 千賀子3) 星野 健司2) 岩間 達1)
■キーワード
Behçet病, 腸管Behçet病, 大動脈弁閉鎖不全症, TNFα阻害薬
■要旨
Behçet病は大動脈弁閉鎖不全症(AR)を合併することが知られているが,小児例の報告は少ない.症例は9歳女児.幼少期より口内炎を繰り返し,陰部潰瘍の既往があった.1か月持続する腹痛・下痢・発熱・炎症反応高値のため来院した.皮膚の被刺激性亢進,大腸内視鏡検査で終末回腸から回盲弁にかけて孤発性類円形潰瘍を認めたため不全型,腸管型Behçet病と診断した.また診断時に心雑音を認め,心臓超音波検査で中等度の無症候性ARが診断された.重症型のBehçet病と判断し,早期にTNFα阻害薬であるアダリムマブを開始すると速やかに消化器症状や炎症マーカーは改善した.ARは増悪なく無症状のまま経過しており,早期の手術を回避できている.既報告によるとBehçet病に合併したARのほとんどが診断後早期に外科的手術に至っている.本症例からARに伴う自覚症状が出現する以前の早期診断,TNFα阻害薬による早期治療介入によりBehçet病に合併するARは外科的手術を延期あるいは回避できる可能性が示唆された.また既報告ではARを合併するBehçet病の病型や臨床的特徴に一定の傾向は認められなかった.Behçet病診療においては,病型や年齢を問わずARなどの心合併症に留意した丁寧な身体診察,検査が求められる.
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【短報】
■題名
Internet Gaming Disorder Scale-Short-Form日本語版の開発および有用性
■著者
獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター1),同 小児科2),慶應義塾大学社会学研究科3) 井上 建1) 森下 菖子1) 椎橋 文子1) 北島 翼1) 松島 奈穂1) 大戸 佑二2) 大谷 良子1) 東 美穂3) 渕上 真裕美1) 村山 美優1) 小木曽 梓1) 岩波 純平1) 吉田 有希1) 黒岩 千枝1) 作田 亮一1)
■キーワード
インターネットゲーム行動症, 質問紙, Internet Gaming Disorder Scale-Short-Form, ゲーム依存
■要旨
Internet Gaming Disorder Scale-Short-Form(IGDS9-SF)を翻訳し,逆翻訳で原版の内容と齟齬がないことを確認して日本語版(IGDS9-SF-J)を作成した.埼玉県内の公立中学校1校の全生徒を対象に,生活状況と質問紙(IGDS9-SF-J,Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ),Questionnaire for triage and assessment with 30 items(QTA30))について,予備調査として横断研究を実施し,340名中278名(81.8%)から回答を得た.IGDS9-SF-J総スコアは16.0±6.30であり,男女間,モニター時間(ゲームやテレビ視聴等),欠席日数のカテゴリについて群間差を認めた.さらに,SDQとQTA30の尺度に相関を認めた.
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【論策】
■題名
男性医師の育児休業取得推進を目指して
■著者
岩手県立磐井病院小児科1),東北大学大学院医学系研究科発達環境医学分野2),東北大学病院小児科3),東北大学大学院医学系研究科環境遺伝医学総合研究センター4) 金森 啓太1)2) 大田 千晴2)3)4)
■キーワード
育児休業, 育児休暇, 男女共同参画, 医師の働き方改革
■要旨
近年,核家族化や共働き世帯が経年的に増加し,男性の育児分担の重要性が強調され,積極的に育児分担を行う男性の割合も増加傾向である.一方で,男性が育児分担を行う上で必要な男性の育児休業の取得率は,女性や世界各国と比較して明らかに低く,取得期間も短い.これは,子どもの健やかな成長に関わる小児科医にとって,大きな問題である.
私は,2023年に長女が誕生し,様々な育児休業制度を長期に利用することで,かけがえのない家族との時間を過ごすことができた.さらに,育児休業取得がもたらす利点は,自分と家族に対してのみならず,小児科医としてのスキルの向上や,必要な休暇を取得しやすい職場や社会づくりに繋がるといった,患者家族や社会に対する利点もある.男性の育児休業取得を普及するためには,対象となる一人一人の男性医師が育児休業を取得しようという気持ちになること,休暇を取得しやすい環境を整えることが重要である.さらに,施設ごとに解決策を講じるだけではなく,欠員が生じる施設の診療応援制度等が整備され,男性医師の育児休業取得がより推進されていくことは,我々日本小児科学会員に課せられた課題である.今回の私の経験が,男性の育児休業取得推進に向けた契機のひとつになれば幸いである.
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