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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:24.7.24)
第128巻 第7号/令和6年7月1日
Vol.128, No.7, July 2024
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原著総説 |
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藤本 耕司,他 911 |
原 著 |
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小林 繁一 920 |
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後藤 研誠,他 930 |
症例報告 |
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菅 敏晃,他 939 |
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上紙 真未,他 944 |
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本間 利生,他 949 |
論 策 |
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寺下 新太郎,他 954 |
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守田 弘美,他 961 |
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地方会抄録(埼玉・千葉・福島・静岡・新潟・香川・岡山)
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968 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 142 腕・胸部一体型浮き輪の誤使用による溺水
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1006 |
日本小児医療保健協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会報告 |
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重症児を対象とした児童発達支援施設と他の福祉施設との連携及び嘱託医の役割に関する調査報告
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1010 |
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1017 |
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1024 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻5月掲載分目次
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1028 |
【原著総説】
■題名
COVID-19ワクチン接種後小児COVID関連多系統炎症性症候群の症例と文献レビュー
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科 藤本 耕司 是松 聖悟 漆原 康子 岩本 洋一 水田 桂子 増谷 聡 森脇 浩一
■キーワード
小児COVID関連多系統炎症性症候群, コロナウイルス感染症2019, COVID-19ワクチン
■要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の続発症として小児COVID関連多系統炎症性症候群(MIS-C)が知られているが,COVID-19ワクチン接種後の報告も少ないながらみられる.
14歳男子.COVID-19の罹患歴はない.発症4週前に3回目のCOVID-19ワクチンを接種した.右頸部に違和感,第3病日より発熱,咳嗽,右頸部リンパ節腫張を来たし,第4〜5病日に下痢,大腿部と手掌などから全身に発疹が拡大し,第10病日に心筋炎を併発した.免疫グロブリン大量療法にて軽快したが,SARS-CoV-2抗体価は抗S抗体592 AU/mL,抗N抗体1.0 AU/mL未満で,COVID-19ワクチンによるMIS-Cの可能性があると判断した.
2023年6月1日までにCOVID-19罹患歴のないCOVID-19ワクチン接種後のMIS-Cが28例,20歳以上の多系統炎症性症候群が13例の既報があり,COVID-19罹患後症例と同様の臨床像を呈していた.小児例では成人例と比較して中枢神経症状がみられた例が散見された.
COVID-19ワクチン後のMIS-Cの臨床像を集積し,因果関係や機序を検討していく必要がある.
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【原著】
■題名
神経発達症の子の親を対象とするペアレント・トレーニングの効果
■著者
静岡県立こども病院発達小児科 小林 繁一
■キーワード
神経発達症, 発達障害, ペアレント・トレーニング, 問題行動, 破壊的行動
■要旨
当科に通院している神経発達症の子の親に,子どもの問題行動の減少とよりよい親子関係の形成を目的にグループ型のペアレント・トレーニング(PT)を行い,PTの効果と参加者のPTに対する有用性認識を調べた.対象は52名の子とその母親で,子の神経発達症の診断には種々の組合せで重複があった.PTに参加した母親に,PT開始前,終了時,終了2か月後,6か月後,1年後に子どものAttention-Deficit/Hyperactivity Disorder症状,子どもの問題行動,親の精神健康度,親の育児自信度に関する質問紙の記入を依頼した.結果は,どの質問紙についてもPT開始前に比べ終了時に有意の改善があり,それは終了1年後まで持続した.参加者のPTに対する有用性認識は,PT全体については終了時から1年後まで極めて高かったが,PT個別技法については技法により違いがあり,今後の検討課題と考えた.
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【原著】
■題名
2008〜2022年度に経験したムンプスワクチン株髄膜炎
■著者
江南厚生病院こども医療センター 後藤 研誠 西村 直子 近藤 耀太郎 杉浦 正宜 梅原 舞 西村 直人 赤野 琢也 安藤 拓摩 落合 加奈代 見松 はるか 竹本 康二 尾崎 隆男
■キーワード
ムンプス, ムンプスワクチン, 副反応, 髄膜炎
■要旨
ムンプスワクチン定期接種化の為にワクチン株髄膜炎の正確な情報が必要である.2008〜2022年度に当院に無菌性髄膜炎で入院した246例を対象とした.全例で入退院時のムンプスウイルスIgM/IgG血清抗体価(EIA法)を測定した.ムンプスワクチン接種後5週以内に発症した24例(ワクチン後髄膜炎)で髄液中のムンプスウイルスRNA検出を行い,RNA陽性例は野生株/ワクチン株の判別(PCR-RFLP法)を行った.無菌性髄膜炎の内訳はムンプス野生株髄膜炎138例,非ムンプス髄膜炎84例,ワクチン後髄膜炎24例で,ワクチン後髄膜炎のうちワクチン株ゲノムを検出した14例をワクチン株髄膜炎(鳥居株5・星野株9)と診断した.ワクチン株髄膜炎の臨床像として,ワクチン接種から発症までの日数中央値22.5日,年齢中央値1.4歳,男女比7:7,各有症率は発熱100%(最高体温/有熱期間の中央値は40.0℃/6.5日),頭痛29%,嘔気・嘔吐71%,項部硬直29%,耳下腺腫脹0%で,髄液細胞数の中央値は337/μLだった.ワクチン株髄膜炎はムンプス野生株髄膜炎(年齢中央値6.1歳,頭痛70%,耳下腺腫脹92%)と較べて有意に低年齢で,頭痛と耳下腺腫脹の有症率が低かった.ワクチン株髄膜炎14例のうち,7例は2020年以降の3年間にみられた.ワクチン株髄膜炎の臨床診断は難しく,ワクチン接種歴の確認が必要である.
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【症例報告】
■題名
小児上室頻拍に対するイバブラジンの使用経験
■著者
大阪市立総合医療センター小児集中治療部 菅 敏晃 三崎 陽太郎 松田 卓也 數田 高生 大場 彦明 芳賀 大樹 赤嶺 陽子 大塚 康義
■キーワード
小児, 頻拍性不整脈, イバブラジン, 先天性心疾患
■要旨
イバブラジンは,心機能を抑制せずに心拍数を減少させることで予後を改善できる慢性心不全治療薬であるが,自動能亢進を機序とする頻拍性不整脈に対する有効性が報告されてきている.既存の抗不整脈薬に抵抗性を示す4例(心臓手術後に発症した異所性接合部頻拍3例と褐色細胞腫による洞性頻脈1例)に対してイバブラジンを使用し,全例で目標心拍数への低下が得られ,静注の抗不整脈薬を減量中止することができた.副作用として,徐脈を1例で認めたが血圧低下を伴わず,内服を減量することで改善した.イバブラジンは,既存の抗不整脈薬に抵抗性を示す小児上室頻拍に対する治療の選択肢になる可能性があるが,副作用の出現に備えて十分なモニタリングが必要である.
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【症例報告】
■題名
歯科的所見を契機にKlinefelter症候群バリアントと診断された5歳男児
■著者
亀田クリニック小児科1),同 臨床遺伝科2),千葉大学大学院医学研究院小児病態学3) 上紙 真未1) 村上 楽1) 大高 理生2) 塩浜 直3)
■キーワード
Klinefelter症候群バリアント, Taurodont teeth
■要旨
Klinefelter症候群は性染色体異常を伴う性分化疾患で男性約660人に1人生じる最も頻度の高い性染色体異常である.その多くは成人期に男性不妊の精査の際に診断されるか,診断されることなく生涯を終える.このため幼少期で診断がつくことは稀である.今回,言語発達遅滞,発達性協調運動障害で外来通院中であった5歳男児が多発性齲歯に対して小児歯科を受診し,Taurodont teeth,エナメル質減形成,永久歯欠如の所見を契機に,Klinefelter症候群バリアント(核型:48,XXYY)の診断に至った1例を経験した.歯科所見以外には,高身長(+3.3 SD)が特徴であったが,その他女性化乳房や睾丸の発育不全は認めなかった.早期診断で合併症対策につながるため,言語発達遅滞に幼少期からの高身長の合併を認めた場合には本疾患を鑑別に挙げることが重要である.またそのような例において小児歯科評価は診断の端緒になる.
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【症例報告】
■題名
嚥下障害で発症した重症筋無力症クリーゼの12歳児
■著者
埼玉県立小児医療センター小児救急救命センター1),同 神経科2),茨城県立こども病院総合診療科3) 本間 利生1) 林 拓也1) 本山 景一3) 久保田 淳2) 松浦 隆樹2) 植田 育也1)
■キーワード
重症筋無力症, クリーゼ, 球麻痺, 嚥下障害, 誤嚥
■要旨
重症筋無力症は重篤な呼吸不全に至ることがあり,救急医療において注意すべき疾患である.しかし症状が非特異的であることや,症状・身体所見の時間単位での変動があることから診断に苦慮することがある.症例は生来健康な12歳女児.梨を摂食中に誤嚥し,呼吸障害をきたした.接触時は呼吸障害と変動する意識障害があり,気管挿管した.入院2日目に呼吸状態と意識状態の改善を確認し抜管したが,直後から唾液の処理ができず誤嚥により呼吸状態が悪化し,再挿管となった.その後改めて聴取した繰り返す誤嚥や日内変動を伴う筋力低下と思われる病歴から重症筋無力症を疑い,各種検査を施行した.反復筋刺激筋電図陽性,テンシロンテスト陽性,抗アセチルコリン受容体抗体陽性が判明し重症筋無力症のMyasthenia Gravis Foundation of America分類V:クリーゼと診断した.小児の重症筋無力症は稀ではあるが,誤嚥や呼吸筋低下に伴う呼吸不全を初発症状として発症することがある.また症状が非特異的で変動があり,閉眼・発語消失などを意識障害やうつ病,転換性障害等と誤認してしまうことがあり注意が必要である.健康な小児において不自然な誤嚥のエピソードがあった場合は重症筋無力症を鑑別に挙げるべきである.
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【論策】
■題名
富山県における小児1型糖尿病患者に関わる保育・教育機関関係者との交流会
■著者
富山大学学術研究部医学系小児科学1),国立病院機構富山病院小児科2),富山県リハビリテーション病院・こども支援センター小児科3),大沢内科クリニック4),富山市教育委員会5),黒部市民病院栄養科6) 寺下 新太郎1)2) 五十嵐 登3) 大澤 謙三4) 辻 元美5) 永田 景子6) 上銘 睦子4) 今井 千速1)
■キーワード
小児思春期糖尿病, 1型糖尿病, 教育機関, アンケート, 低血糖
■要旨
小児1型糖尿病患者が安心して園・学校生活を送る上で保育・教育機関関係者の支援は不可欠である.そのため医療従事者には保育・教育機関関係者と適切な情報共有を行うことが求められている.そこで今回われわれは富山県内の保育・教育機関関係者との連携強化を目的に,富山市教育委員会と協同して「小児1型糖尿病診療を巡る家族・教育機関・医療機関との交流会」(以下,交流会)を企画・実施した.交流会に先立ち現状の問題点抽出を目的に保育・教育機関関係者を対象に行った事前アンケートにおいて,1型糖尿病患者への対応で困ったこととして回答者のうち43%が低血糖,35%が宿泊行事と回答した.交流会当日は低血糖・宿泊行事への対応策として,持続血糖測定器および連動アプリを介した血糖管理・共有方法,および学校給食献立表を活用した血糖管理法を講演会形式で事例を交えて説明した.その後グループディスカッションを実施し,関係者相互の理解・情報共有を促した.交流会来場者アンケートでは92%の回答者が会全体の満足度を,大変満足または満足と回答し,「今後も医療従事者と連携していきたい」「患者に柔軟に対応していきたい」などと回答した.小児1型糖尿病患者の健やかな園・学校生活のために自治体と協調して関係機関の連携強化をはかることは有用と考えられる.
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【論策】
■題名
長期入院児童・生徒に対する学習支援状況
■著者
産業医科大学小児科1),同 血液内科2) 守田 弘美1) 本田 裕子1) 赤尾 健一2) 楠原 浩一1)
■キーワード
長期入院児, 学習支援, オンライン授業, 院内学級, 学習支援コーディネーター
■要旨
2016年4月から2021年7月に,産業医科大学病院小児科・血液内科に年間延べ30日以上入院した児童・生徒,および北九州市内の小・中・特別支援学校(高等部を含む)・高等学校を対象に,長期入院時の学習支援に関してWebアンケートを実施した.有効回答率は児童・生徒が48%,小・中・特別支援学校が23%,高等学校が40%であった.学習支援状況に関して,児童・生徒の約6割が原籍校からの学習支援を受けておらず,小・中・特別支援学校の約4割,高等学校の約6割が学習支援を実施または予定していなかった.また,約7割の児童・生徒に復学後の学習面で問題が生じており,問題が生じなかった群と比較し,院内学級への転籍率や原籍校からの学習支援率が低く,学習支援体制を整備することで,復学後の学習・進学状況が改善する可能性が示唆された.学習支援ツールとしては,多くの学校でオンライン授業が実現可能となり,学習支援の拡充が期待できた一方で,原籍校が入院中の児童・生徒の体調面・心理面を十分に把握できないことが学習支援の障害となっていた.今後,学習支援体制をさらに充実させるためには,学習支援コーディネーターなどの専門職による病院(院内学級)と原籍校との連携強化,教育委員会を中心とした学習支援ガイドラインの作成,児童・生徒が等しくオンライン授業を受けることができる環境整備が必要と考えられた.
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