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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:24.6.18)
第128巻 第6号/令和6年6月1日
Vol.128, No.6, June 2024
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原 著 |
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野崎 章仁,他 803 |
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長沢 晋也,他 812 |
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前田 恵里,他 819 |
症例報告 |
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門田 茉莉,他 828 |
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谷山 雄一,他 833 |
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辻本 美智,他 840 |
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中西 令,他 845 |
論 策 |
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田中 恭子,他 851 |
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松本 昇,他 859 |
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866 |
地方会抄録(徳島・中国四国・甲信・栃木・北陸・石川・岩手・福岡・京都)
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867 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
はじめの一本13 |
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906 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻4月掲載分目次
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907 |
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909 |
【原著】
■題名
小児神経疾患のアドバンス・ケア・プランニング関係者に対する意識調査
■著者
滋賀県立小児保健医療センター遺伝科1),京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学・遺伝医療学分野2) 野崎 章仁1) 春山 瑳依子2)
■キーワード
小児神経疾患, アドバンス・ケア・プランニング, 院内医療者, 患者・家族, 院外関係者
■要旨
【目的】小児神経疾患のアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)に対する本邦での知見は不十分である.本研究の目的は,小児神経疾患のACPに対する関係者(院内医療者,患者・家族,院外関係者)の考えを明らかにすることである.
【方法】ACPに参加した院内医療者16名,患者・家族10名および院外関係者22名の計48名に対して質問紙調査を行った.立場と年齢の3群において回答を比較し,自由記載の質的検討も行った.
【結果】「ACPを知っている」は32名(67%)で,院内医療者と院外関係者で有意差を認めた(p<0.01).「ACPを行うことで,ACPの理解が深まる」,「ACPの理解を深めるために医療者および患者・家族の両方から話を聞く」および「定期的にACPを行うことが良い」との回答が多数(94%以上)であった.群間有意差はなかった.質的検討から,関係者同士での情報・思いの共有や患者に対する理解が深まるというACPの意義や,個別性の高いACPや取り組みの周知が医療者に求められていることが示された.また,課題としてACPの内容を実際の医療に反映する難しさ,およびadvance life planningの必要性が得られた.
【結論】院内医療者,患者・家族および院外関係者が協働し,ACPを行うことが重要である.
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【原著】
■題名
偏食のある自閉スペクトラム症の食事と栄養障害
■著者
神奈川県立こども医療センター総合診療科 長沢 晋也 田上 幸治
■キーワード
自閉スペクトラム症, 栄養障害, 偏食
■要旨
自閉スペクトラム症の児では感覚の過敏性やこだわりから偏食をしばしば認める.時には偏食によって栄養障害を認めることがある.我々は偏食のある自閉スペクトラム症の児の食事を調査した.2014年1月から2020年9月に当センターの児童思春期精神科と総合診療科を受診した偏食の訴えのある自閉スペクトラム症の児を対象とした.平日3日間に児が摂取した食事記録から食品レパートリー数や栄養素を評価した.参加者は46人(男35人,女11人)で,年齢は1歳から19歳(平均年齢:8.9±4.7歳)であり,46人のうち食品レパートリー数が15以下の児は18人であった.栄養素欠乏の割合が高い栄養素はカルシウム(74%),ビタミンA(63%),ビタミンB1(59%),マグネシウム(54%),ビタミンB2(50%),亜鉛(50%),鉄(48%)などであった.食品レパートリー数と栄養素欠乏数の間に有意な負の相関が認められ(r=−0.56;p<0.01),食品レパートリー数が少ないほど栄養素欠乏数が増す結果となった.栄養障害をきたした症例が散見され,自閉スペクトラム症に係る医療従事者は,偏食による栄養不足により身体症状が現れる可能性を配慮しなければならない.
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【原著】
■題名
日本語版「食物アレルギーQOL尺度 児童用」の開発
■著者
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科 前田 恵里 勝沼 俊雄 鈴木 亮平 相良 長俊 青田 明子 赤司 賢一
■キーワード
食物アレルギー, 生活の質, Food Allergy Quality of Life Questionnaire-Child Form, 小児, 学童
■要旨
目的:食物アレルギー(food allergy:FA)児のQOL評価指標としてFood Allergy Quality of Life Questionnaire-Child Form(FAQLQ-CF)が国際的に広く使用されている.国内での利用を可能とするためFAQLQ-CFの日本語版の開発を試みた.
方法:8歳から12歳のFA児,非FA児を対象に,標準的翻訳手続きを経た日本語版FAQLQ-CFおよび日本語版Food Allergy Independent Measure-Child Form(FAIM-CF),さらに小学生版QOL尺度(日本語版Kid-KINDL®)を実施した.再検査法と内的整合性(Cronbachα係数)にて信頼性を評価し,質問紙間の相関によって構成概念妥当性の検証を行った.
結果と考察:FA群99名(9.7歳±1.5歳,男児63名)と非FA群90名(9.6歳±1.4歳,男児45名)の各質問紙の級内相関係数は0.73〜0.87で,高い再現性が確認された.また,日本語版FAQLQ-CFにおいて,FA群の有意なQOL低下が認められた(p<0.0001).また,日本語版FAQLQ-CFと日本語版FAIM-CFでは正の相関がみられた(r=0.57).以上より,FA児のQOL評価に日本語版FAQLQ-CFが有用であることが示唆された.
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【症例報告】
■題名
West症候群を発症したPTEN病的バリアントの女児例
■著者
帝京大学医学部小児科1),昭和大学医学部小児科学講座2),昭和大学病院てんかん診療センター3),慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター4) 門田 茉莉1) 占部 良介1) 中井 まりえ1) 星野 英紀1) 加藤 光広2)3) 宮 冬樹4) 三牧 正和1)
■キーワード
West症候群, 大頭症, PTEN, PI3K/Aktカスケード
■要旨
West症候群(WS)は乳児期に好発する代表的な発達性てんかん性脳症であり,近年多くの原因遺伝子が知られるようになった.我々はWSの原因遺伝子としては一般的ではないPTEN(Phosphatase and Tensin Homolog)にバリアントをもつWSの1例を経験した.周産期歴に特記すべき異常のない女児が,7か月時にシリーズ形成するてんかん性スパズムを発症した.初診時に筋緊張低下と運動発達の遅れおよび頭囲拡大がみられ,発作間欠期脳波検査でヒプサリズミアがみられWSと診断した.頭部MRIでは明らかな構造異常はなく,ACTH療法とその後の抗発作薬内服治療で発作は消失し脳波異常は改善したが,中等度〜重度の精神運動発達遅滞がみられた.遺伝子解析でPTENに既知のde novoの病的バリアントが同定された.PTENは癌抑制遺伝子の一つで,過誤腫を伴う症候群を総称してPTEN Hamartoma Tumor Syndrome(PHTS)と呼ばれている.既報ではPTENバリアントによって脳形成障害をきたした場合でもてんかんを発症する割合は少なく,本症例のように明らかな脳回の構造異常を伴わずWSをきたした報告はこれまでない.大頭症に合併するWSでは,頭部MRIで脳回の構造異常を伴わない場合にもPTENバリアントの可能性を考慮し,合併症の長期管理のためにも積極的に遺伝子検索を考慮すべきである.
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【症例報告】
■題名
難治性疣贅の併存を糸口に診断し骨髄異形成症候群へ適切に介入し得たGATA2欠損症
■著者
金沢大学附属病院小児科 谷山 雄一 伊川 泰広 竹中 みか 坂井 勇太 野口 和寛 藤木 俊寛 黒田 梨絵 和田 泰三
■キーワード
GATA2遺伝子, 骨髄異形成症候群, 難治性疣贅, 免疫不全, 遺伝学診断
■要旨
GATA2欠損症は,骨髄系腫瘍や免疫異常など多彩な臨床症状を呈する常染色体顕性遺伝の疾患である.高率に予後不良の骨髄異形成症候群(MDS)を発症するため,早期に診断と介入が求められる.今回,併存する難治性疣贅が診断の糸口となり骨髄異形成症候群へ適切に介入し得たGATA2欠損症を経験した.症例は17歳男子.患児と父は先天性感音性難聴を認める.12歳時に急性骨髄性白血病を発症し化学療法で寛解に至った.治療後よりIgG低値(500 mg/dL),B細胞欠損を認めたが化学療法の影響を考え経過観察となった.17歳時より血小板数が減少し3万/μLを下回るようになったため骨髄検査が行われ,予後不良なモノソミー7を有するMDSと診断された.患児の手掌と足底部に難治性疣贅を認めたことや同時期に姉もMDSを発症したことから,GATA2欠損症を疑った.遺伝学的検査で患児と父,姉にGATA2遺伝子の病的バリアント(GATA2 c.1021-1024 del,p.A341fs)を同定した.患児は速やかに母をドナーとした造血幹細胞移植を受け経過良好である.GATA2欠損症の早期診断は患児とその家族において,骨髄系腫瘍に対する適切な対応,そして様々な合併症に備えた経過観察に重要である.難治性疣贅や若年期発症のモノソミー7を有するMDSを認めた際はGATA2欠損症を念頭に置く必要がある.
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【症例報告】
■題名
骨折を繰り返し,骨形成不全症I型の合併が判明した先天性複合型下垂体機能低下症
■著者
淀川キリスト教病院小児科1),大阪大学大学院医学系研究科小児科学2),大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科3) 辻本 美智1) 小泉 美紀子1) 小西 恵理1) 北岡 太一2) 三善 陽子2)3) 大薗 恵一2) 西原 正人1)
■キーワード
先天性複合型下垂体機能低下症, 骨形成不全症, 易骨折性, 虐待
■要旨
複合型下垂体機能低下症は,下垂体から分泌される前葉・後葉ホルモンのうち複数のホルモンの産生・分泌が障害される疾患で,発症頻度は約4,000出生に1例である.一方,骨形成不全症はI型コラーゲンの異常により脆弱性骨折を来す疾患であり,発症頻度は約2万出生に1例である.反復する骨折を契機に骨形成不全症I型の合併が判明した複合型下垂体機能低下症の1例を報告する.症例は4歳男児で,生後2か月時に先天性複合型下垂体機能低下症と診断され,甲状腺ホルモン,副腎皮質ホルモン,成長ホルモンの補充療法が行われていた.骨形成不全症の家族歴は同胞も含めてなかった.若年両親のもとで治療アドヒアランス不良があり,過去2回の骨折では身体的虐待が疑われ要保護児童として地域行政の見守りを受けていた.3回目の骨折で当院に入院した際に,X線画像および臨床症状から骨形成不全症と診断し,全エクソーム解析によりCOL1A1にヘテロ接合性の病的バリアントを同定し遺伝学的に確定した.骨形成不全症と複合型下垂体機能低下症の両者を合併する例は極めて稀である.基礎疾患である複合型下垂体機能低下症の治療アドヒアランス不良や不適切な養育といった要素が,骨形成不全症の診断に対し影響を及ぼした.
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【症例報告】
■題名
けいれん重積を含む中枢神経症状に対し集中治療を要した小児COVID関連多系統炎症性症候群
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 感染症科2),同 集中治療科3),同 循環器科4) 中西 令1) 三宅 怜1) 中村 俊貴1) 芝田 明和2) 松島 崇浩1) 鈴木 知子1) 齊藤 修3) 幡谷 浩史1) 三浦 大4)
■キーワード
COVID-19, 小児COVID関連多系統炎症性症候群, TCRレパトア解析, 多臓器障害, 集中治療
■要旨
小児のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)罹患の2〜6週間後に,多臓器に強い炎症を起こす小児COVID関連多系統炎症性症候群(MIS-C)の報告が海外を中心に相次いでいる.海外ではMIS-Cの重症例が多数報告されているが,本邦における報告は少ない.特に気管挿管を要する重症の中枢神経症状をきたしたMIS-Cの症例は,調べ得た範囲では本邦で報告されていない.今回,けいれん重積を始めとする多臓器障害に対し,気管挿管を含む集学的管理を要したMIS-Cの症例を経験した.症例は9歳男児で,COVID-19罹患の1か月後より発熱し,第5病日にけいれん重積,川崎病様症状を認め当院へ救急搬送された.循環不全,意識障害,凝固異常などの多臓器障害をきたしており,集中治療室で人工呼吸器管理,循環作動薬投与を開始した.MIS-Cと診断し,免疫グロブリン静注,ステロイド,アスピリンの投与を行った.第7病日に解熱し,症状や検査所見も経時的に改善した.また,入院後の心臓超音波検査で,右冠動脈起始部と左冠動脈主幹部の拡張を認めたが,その後縮小傾向となった.明らかな神経学的後遺症はなく,入院24日目(第28病日)に退院した.冠動脈拡張に関しては,第30病日の心臓超音波検査で正常化を確認した.けいれん重積を含む重症のMIS-C症例に対する集学的治療が奏功した1例として,経過を報告する.
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【論策】
■題名
心身相関をベースとした子どもの心の診療連携における課題と提言
■著者
日本小児心身医学会理事1),同 医療提供体制検討委員会2) 田中 恭子1)2) 岡田 あゆみ1) 長濱 輝代1) 作田 亮一1)2) 武内 治郎1) 土生川 千珠2) 石崎 優子1) 小柳 憲司1) 藤田 之彦1) 渕上 達夫1) 村上 佳津美1) 山崎 知克1) 芦谷 道子1) 東 佐保子1) 井口 敏之1) 牛田 美幸1) 大谷 良子1) 大堀 彰子1) 岡田 剛1) 奥見 裕邦1) 呉 宗憲1) 小林 穂高1) 桜井 優子1) 識名 節子1) 鈴木 雄一1) 永井 章1) 松島 礼子1) 柳夲 嘉時1) 吉田 誠司1) 永光 信一郎1)2)
■キーワード
心身症, 診療連携, 小児医療, 心身相関, 子どもの心の診療ネットワーク
■要旨
小児科医の立場で行う「子どもの心に関する診療を強化するために必要となる医療連携」に関する対策を検討すべく2022年日本小児心身医学会で実施した調査をもとに考察した.アンケートは郵送およびメール送信で実施し,調査内容は,勤務や診療状況,実際の連携状況,その他の病診連携の要望,などである.結果は各設問に関する単純集計を行い,回答で頻度の高い回答項目順に本文とグラフに示した.回答数は570名(紙媒体399通,WEB媒体171件)で,回収率は47.5%であった.子どもの心の診療において,とくに小児科医が窓口となりやすい心身相関をキーワードとする心身症,身体化,不登校や虐待などの臨床領域を強化する必要がある.そのためにはまず,(1)小児科学会および分科会を通じて医師同士の診療連携の強化,(2)子どもの心に関する予防的取り組みから専門的ケアまでを可能とする連携モデルを構築,(3)各自治体における子どもの心の診療拠点病院を明確に位置付け,相談医,認定医,専門医,などが所属する機関マップを作成し,医療のみならず教育・福祉機関にも発信し,連携に努めること,(4)子どもの心に関する診療の発展を実現するためのインセンティブ(診療報酬加算改定など)の検討と発信,(5)小児科専門医教育において,子どもの心に関する診療を明確に組み入れ小児科専門医のレベルアップを検討すること,などの提言を日本小児心身医学会から行う.
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【論策】
■題名
在宅人工呼吸器使用患者・家族の災害への備えに対する意識調査
■著者
大阪母子医療センター呼吸器・アレルギー科1),同 患者支援センター2),同 小児神経科3),同 新生児科4) 松本 昇1) 錦戸 知喜1) 藤谷 響子1) 奥村 純平1) 江口 奈美2) 最上 友紀子3) 望月 成隆2)4) 鈴木 保宏2)3)
■キーワード
医療的ケア児(者), 在宅人工呼吸器, 大規模災害, 避難場所, 電源確保
■要旨
【背景】近年多発している大規模災害が生じた場合,医療的ケア児(者)とその家族は避難場所や電源確保を始めとした様々な困難に直面する.一方で医療機関の電源供給可能量は限られていることから,全ての医療的ケア児(者)への対応が困難となることが予想される.今回我々は,現状の問題点を共有し今後の指導に役立てるため,医療的ケア児(者)とその家族を対象に,災害への備えについての記名式アンケートを行った.【方法】2020年1月時点で在宅人工呼吸器を使用している医療的ケア児(者)とその家族を対象とした.アンケートは外来で配布し,回収時には災害対策マニュアルを配布した.【結果】85名に用紙を配布し,内75名で回収できた(回収率88%).呼吸器の使用状況は31名(41%)が終日装着,3時間以内の離脱可能者が11名(15%)であった.発災時の避難場所について,“事前に検討している”は30名(40%)であったのに対し,“検討していない”が45名(60%)であった.また災害時の電源確保については,“検討している”が39名(52%)にとどまり,半数近くが“検討していない”と回答した.【まとめ】今回のアンケートを通して災害に対する準備が不十分な例が多いことが明らかとなった.今後も災害対策の啓発指導を継続して行うと同時に,行動変容が生じているか,確認を行う必要がある.
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