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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:24.5.21)
第128巻 第5号/令和6年5月1日
Vol.128, No.5, May 2024
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原 著 |
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小枝 達也,他 685 |
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伴 さとみ,他 692 |
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清和 ちづる,他 700 |
症例報告 |
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竹下 峻希,他 708 |
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西山 優,他 714 |
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福政 宏司,他 721 |
論 策 |
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濱口 陽,他 729 |
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736 |
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739 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 141 洋酒入りゼリーの誤食による急性アルコール中毒の疑い
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755 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
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758 |
日本小児科学会倫理委員会主催 |
第14回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム 報告 |
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重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン改訂に向けて〜改訂案とQ&A集のポイント〜
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763 |
日本小児科学会小児医療委員会報告 |
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小中学校・特別支援学校教職員を対象とした「教育と医療の連携」に関するweb調査
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767 |
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会報告 |
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「データベースを用いた国内発症 小児Coronavirus Disease 2019(COVID-19)症例の臨床経過に関する検討」最終報告
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777 |
日本小児科学会国際渉外委員会報告 |
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小児一般診療における過剰検査・過剰診療に関するEuropean Academy of Paediatricsとの国際共同アンケート調査報告
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784 |
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788 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻3月掲載分目次
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799 |
公益財団法人小児医学研究振興財団 |
令和5年度 研究助成事業・海外留学フェローシップ |
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801 |
【原著】
■題名
5歳で自閉スペクトラム症と診断した幼児の1歳6か月児健診での所見とSCQの有用性
■著者
国立成育医療研究センターこころの診療部1),鳥取大学医学部附属病院ワークライフバランス支援センター2),鳥取大学医学部脳神経小児科3) 小枝 達也1) 大羽 沢子2) 前垣 義弘3)
■キーワード
自閉スペクトラム症, 視線の合いにくさ, 1歳6か月児健診, 5歳児健診, SCQ
■要旨
目的:5歳で自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders;ASD)と診断した幼児の1歳6か月児健診での医師所見およびSocial Communication Questionnaire(SCQ)の有用性の検証を目的とする.
対象と方法:1歳6か月児健診を受診した2,482名の中で,発達上の所見があった幼児のうち116名を5歳まで追跡した.5歳児健診でASDの有無を診断し,1歳6か月児健診時での医師所見を調べた.またSCQを5歳でスクリーニングとして用いた場合のカットオフ値を検討した.
結果:5歳で診察が実施できたのは94名で,そのうち20名(21.3%)がASDと診断された.1歳6か月児健診時の所見では,視線の合いにくさがASD群で非ASD群より有意に多かった(χ2検定,p=0.002).
ASDのスクリーニングとしてSCQのカットオフ値は8点で,感度80.0%,特異度82.2%であった.
考察:1歳6か月児健診における発達上の所見によって,5歳児健診で高率にASDと診断が可能であり,1歳6か月児健診時の視線の合いにくさが重要であった.SCQのカットオフ値は8点であった.
結語:1歳6か月児健診における視線の合いにくさはASDのスクリーニングにとって重要な医師所見である.また5歳児健診でのSCQによるASDのスクリーニングは有用である.
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【原著】
■題名
重症心身障害児(者)施設での経鼻胃管と胃瘻による経管栄養使用状況
■著者
重症児・者福祉医療施設ソレイユ川崎 伴 さとみ 須貝 研司 新井 奈津子 麻生 雅子 江川 文誠
■キーワード
重症心身障害児(者), 重症心身障害児(者)施設, 経管栄養, 胃瘻, 経鼻胃管
■要旨
【背景】重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))では胃瘻造設が円滑ではなく,長期に経鼻胃管を使用する症例も多い.本研究は,重症児(者)施設における重症児(者)の栄養投与方法の現状を把握し,栄養方法の違いによる患者とスタッフへの影響を明らかにする目的で行った.【方法】当院の2022年12月時点の長期入所者で経管栄養を使用中の44名(5歳〜65歳)に診療録から後方視的調査を行った.また,2023年3月に当院医師,看護師に対して,経鼻胃管,胃瘻の経過や,胃瘻の利点・欠点などについてのアンケートを行った.【結果】経鼻胃管使用者は14名で,継続使用年数の中央値は7年1か月,胃瘻造設をしない理由は,経鼻胃管による不利益がない6例,家族が胃瘻造設を希望していない4例などであった.胃瘻使用者は30名で,使用期間中央値は12年2か月,造設に至った理由は,誤嚥性肺炎14例,経鼻胃管挿入困難3例などであった.胃瘻造設の必要性について初回に説明を受けてから胃瘻造設に至るまでの期間の中央値は5か月(最長13年1か月)であった.医療スタッフに対するアンケートでは,経鼻胃管は挿入困難,誤挿入などの問題があるが,胃瘻は患者にとって有益で,介護の負担軽減などの利点が示された.【結論】重症児(者)施設の重症児(者)の胃瘻造設には利点が大きいが,胃瘻が必要な状態になっても,胃瘻造設が円滑に進まない状況が示唆された.
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【原著】
■題名
地域における医療的ケアを必要とする児者の状況
■著者
山形県立こども医療療育センター小児科1),山形大学医学部小児科2) 清和 ちづる1) 白幡 惠美1) 中村 和幸2) 伊東 愛子1)2)
■キーワード
医療的ケア, 小児在宅医療, 重症心身障害児
■要旨
【背景】周産期医療の進歩と共に,医療的ケアを必要とする児者(医療的ケア児者)が増加し,地域における支援の必要性が高まっている.山形県においては,豪雪地帯や交通不便地域もあり,地域事情に応じた支援体制の確立が求められる.【目的】山形県内の医療的ケア児者の状況を分析し,課題を検討するため,山形県立こども医療療育センターにおいて調査を施行した.【方法】平成30年12月の時点で日常的に医療的ケアを必要とする外来(以下在宅)および入所患者について,診療記録から情報を収集した.【結果】対象者数は145人(在宅122人/入所23人)で,県内各地域に分布し,各年代に渡っていた.基礎疾患は,先天異常が約50%,周産期障害が約30%を占め,周産期状況では早産児が30%,低出生体重児が約40%であった.在宅の60%,入所の90%が重症心身障害に相当した.入所は在宅に比較して,有意に重度で複雑な医療的ケアを必要としていた.医療的ケアの導入時期は0〜2歳で有意に多かった.【結語】医療的ケア児者は県内の各地域に分布し,地域事情に応じた支援の充実が必要である.特に在宅への移行時や新たな医療的ケアが導入される頻度が高い2歳以下の児では,病状に合わせた医療および福祉の支援が必要である.医療的ケア児は,基礎疾患の状況から将来も一定数発生し,ケアの多様化も予測され,速やかなシステムの構築が求められる.
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【症例報告】
■題名
自己免疫性好中球減少症,薬剤熱を伴い,診断に難渋したコメによる食物蛋白誘発胃腸症
■著者
京都大学大学院医学研究科発達小児科 竹下 峻希 井澤 和司 仁平 寛士 岩田 直也 荻野 諒 平田 惟子 伊佐 真彦 日衛嶋 栄太郎 滝田 順子 八角 高裕
■キーワード
food protein induced enterocolitis syndrome, 食物蛋白誘発胃腸症, 自己免疫性好中球減少症, コメ, 薬剤熱
■要旨
今回,我々は,自己免疫性好中球減少及び薬剤熱を伴った,コメによる食物蛋白誘発胃腸症の乳児例を経験した.症例は生来健康な6か月の男児である.完全母乳栄養で育ち,生後5か月からコメ,野菜の離乳食を開始した.生後6か月から発熱,嘔吐を繰り返し胃腸炎として経過観察された.その後,全身浮腫,好中球減少,低アルブミン血症,CRP高値を認め入院加療となった.蛋白漏出シンチグラフィーにて蛋白漏出性胃腸症を認め,食物蛋白誘発胃腸症疑いとして成分栄養剤を開始し,全身浮腫,低アルブミン血症は改善した.その後,コメ摂取後に発熱,嘔吐症状を認め,経過と合わせてコメによる食物蛋白誘発胃腸症と診断した.また,抗好中球抗体が陽性であり,自己免疫性好中球減少症と診断し,経過中,好中球減少症に対しての予防投与としてSulfamethoxazole/Trimethoprim(ST)合剤内服後に発熱を反復した経過からST合剤への薬剤熱も合併していると考えられた.食物蛋白誘発胃腸症は特異的な検査法がなく発熱・嘔吐など重症感染症に類似した症状を示す.また,本症例はコメによる食物蛋白誘発胃腸症は比較的まれであること,その上に自己免疫性好中球減少症,薬剤熱も合併したことから,病態把握に難渋した.臨床経過や検査所見を丁寧に評価することが正確な病態評価に肝要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
体重増加不良を契機に診断された視神経膠腫による間脳症候群の乳児
■著者
奈良県立医科大学小児科 西山 優 長谷川 真理 石原 卓 水町 邦義 秋定 博子 渡壁 麻依 越智 聡史 野上 恵嗣
■キーワード
体重増加不良, 間脳症候群, るい痩, 成長ホルモン, 視神経膠腫
■要旨
間脳症候群は,主に3歳未満の乳幼児期に視床下部周囲の脳腫瘍などが原因で発症し,著明なるい痩や多動,眼振,嘔吐などを伴う症候群である.体重増加不良のわりに身長増加率は保たれており,エネルギー摂取量が正常であるにもかかわらず,皮下脂肪の欠如した著明なやせを呈するのが特徴である.詳細な病態生理は不明であるが,過剰なエネルギー消費や腫瘍細胞の成長ホルモン(GH)産生,腫瘍による視床下部―下垂体系のフィードバック機構の破綻等が関与しているのではないかと考えられている.症例は生後6か月の女児.体重増加不良の原因精査として行った頭部MRI検査にて鞍上部に腫瘍性病変を認め,視神経膠腫と診断した.体重増加不良にもかかわらず身長増加率は保たれており,body mass indexは−4.3 SDと著明低値であった.GH基礎値は24.8 ng/mLと高値および負荷試験でGH頂値100 ng/mLと過剰反応を認め,間脳症候群の診断に至った.体重増加改善には経管栄養を併用した上で,100 kcal/kg/dayを超える摂取エネルギーを必要とした.化学療法および経管栄養を開始後,GH基礎値は徐々に低下傾向であるものの,体重増加改善にもかかわらず5〜10 ng/mLと比較的高値が持続した.身長増加率の低下を伴わない著明なるい痩を呈する体重増加不良の乳幼児では,間脳症候群を鑑別に挙げ頭部画像検査を行う必要がある.
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【症例報告】
■題名
交通外傷により鈍的外傷性内頸動脈損傷をきたした1か月児
■著者
北九州市立八幡病院小児総合医療センター1),産業医科大学病院脳神経外科2) 福政 宏司1) 本間 一樹1) 宮岡 亮2) 岡畠 祥憲1) 小林 匡1) 西山 和孝1)
■キーワード
外傷性頸部血管損傷, 脳梗塞, チャイルドシート, child passenger safety, child restraint system
■要旨
鈍的外傷性頸部血管損傷(blunt cerebrovascular injury:BCVI)は,頭頸部の外傷によって血管障害を生じる稀な疾患である.今回我々は交通外傷後にBCVIを発症した症例を経験した.症例は1か月女児で,自家用車の後部座席でチャイルドシート(Child Restraint System:CRS)を着用せず,母親に抱っこされた状態で交通事故に遭った.受傷直後は自宅で過ごしていたが,受傷7時間後に嘔吐したため当院救急外来を受診し,経過観察目的に入院となった.受傷から約24時間後に痙攣し,頭部CT,頭頸部MRI及びMRAで左内頸動脈起始部以遠の途絶と左内頸動脈領域の広範な急性期梗塞所見が認められ,外傷に伴う左内頸動脈の急性閉塞症,つまりBCVIによる脳梗塞と診断した.血管内治療等は行わず,気管挿管・人工呼吸管理の上,脳保護療法を開始した.その後てんかん発作のコントロールに難渋したが,第25病日に抜管し,第60病日に退院した.現在,明らかな右上下肢の片麻痺を認めず外来通院加療中である.事故発生時の状況から頸部の対側への回旋または過剰な前屈による左内頸動脈の損傷によりBCVIを発症したものと推察した.CRSを着用していれば防ぎえた外傷と考えられた.CRSが重要であることを小児医療に関わる全ての医療従事者が認識し,保護者に指導・教育することが重要である.
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【論策】
■題名
Down症候群のある方の言語,嚥下・口腔機能,言語聴覚療法に関する現状調査
■著者
国立病院機構長崎医療センター小児科1),みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家2) 濱口 陽1) 近藤 達郎2)
■キーワード
Down症候群, 言語機能, 嚥下・口腔機能, 言語聴覚療法, アンケート
■要旨
【目的】我が国のDown症候群(DS)のある方の言語,嚥下・口腔機能,言語聴覚療法(ST)に関する現状を明確にするために調査した.【方法】DSのある方およびその保護者を対象にアンケートを実施した.解析可能な104名(成人43名,小児61名)のデータを,成人(19〜40歳)と小児(0〜18歳)の2群に分けて統計解析およびテキストマイニングを行い,結果を比較検討した.【結果】DSのある方は,成人期においても小児期と同程度の言語,嚥下・口腔機能の問題を抱えていることが確認された.STの実施経験は9割に達するものの,成人における現在の実施状況は小児に比べて有意に少ない.特に多くの人が小学校入学時にST実施を終了し,約2割が再開を希望していることが分かった.【結論】DSのある方は,成人期においても言語や嚥下・口腔機能に関する課題を持っている.DSのある成人のST実施の継続や再開は,今後の取り組みとして重要である.
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