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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:23.11.17)
第127巻 第11号/令和5年11月1日
Vol.127, No.11, November 2023
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日本小児血液・がん学会推薦総説 |
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野上 恵嗣 1365 |
日本小児栄養消化器肝臓学会推薦総説 |
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DOHaDの視点で考える胎児発育不全の現状と問題点
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東海林 宏道,他 1375 |
原 著 |
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三善 陽子,他 1384 |
症例報告 |
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上野 靖史,他 1395 |
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津山 美穂,他 1399 |
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石丸 真璃子,他 1407 |
論 策 |
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古市 美穂子,他 1413 |
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江原 朗 1420 |
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地方会抄録(滋賀・群馬・香川・宮城・富山・東海・鳥取・栃木)
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1425 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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1450 |
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No. 131 網戸からの墜落による頭部・顔面外傷,上肢骨折
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1453 |
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1455 |
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No. 133 新型コロナウイルス抗原検査キットによる鼻腔異物
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1459 |
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No. 134 トイレ消臭剤(LPG含有スプレー缶)への引火による全身熱傷
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1462 |
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No. 135 収納付きソファの蓋で頸部が挟まったことによる窒息疑い
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1465 |
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No. 136 ペン型注入器用ディスポーザブル注射針の誤廃棄による手掌刺傷
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1469 |
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No. 137 ヒロへリアオイラガ終齢幼虫死骸の毒針毛による口腔内刺創
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1472 |
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1476 |
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1478 |
日本小児科学会医療安全委員会報告 |
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1479 |
日本小児科学会ダイバーシティ・キャリア形成委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合45 |
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委員になっていいの?自分でLimitをつくらないで!
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1485 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2023年65巻9月掲載分目次
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1486 |
【原著】
■題名
小児・思春期若年成人がん患者の晩期合併症対策のための食生活に関するweb調査
■著者
大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科臨床栄養発育学研究室1),大阪大学大学院医学系研究科小児科学2),大阪大学医学部附属病院栄養マネジメント部3),大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科栄養疫学研究室4),同 健康栄養学部健康栄養学科給食経営管理学第一研究室5),昭和女子大学食健康科学部健康デザイン学科6),日本医科大学付属病院小児科7),国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科8) 三善 陽子1)2) 橘 真紀子2) 長井 直子3) 岡本 尚子4) 赤尾 正5) 黒谷 佳代6) 前田 美穂7) 清水 千佳子8)
■キーワード
小児・思春期若年成人, がん患者, 晩期合併症, 食生活, web調査
■要旨
がんの治療成績向上に伴い,晩期合併症が問題になっている.小児・思春期若年成人(adolescent and young adult:AYA)がん経験者は糖尿病・脂質異常症・高血圧などの内分泌代謝異常や心血管疾患などの発症リスクがあり,食生活を含む健康管理が重要である.そこでがん患者の食生活の現状とニーズを調査する目的で,がんの治療経験がある15~39歳の男女200名にweb調査を実施した.がん治療後の健康問題として,やせ,肥満,高血圧が多く,約2割は健康診断を受けていなかった.食生活の改善に約4割が取り組み,3割が改善への意欲を示した.外来治療中や治療後も食生活に問題を抱える患者がいた.コロナウイルス感染症2019の流行により,手洗いやうがい,インターネットやスマホの利用,家族との食事が増加した一方で,外出頻度,外食,飲酒量は減少した.栄養補助食品を約2割が自己判断で利用していた.がんになった後に約7割は食生活が変化し,病状・治療,長生きしたいから,がんに良い良くないという情報,友人や家族の勧めなどがその理由だった.食生活に関する情報は医療・行政機関からだけでなく,様々なソーシャルメデイアからも入手していた.栄養指導は個人指導の希望が多かった.小児・AYA世代がん患者の晩期合併症対策として,がんの治療後も患者ニーズに応じた食生活を含む健康管理に関する情報提供と相談支援が重要である.
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【症例報告】
■題名
川崎病の低用量アスピリン療法を誘因とした小麦アナフィラキシー
■著者
熊本地域医療センター小児科 上野 靖史 西 奈津子 那須 望美 下村 祥子 柳井 雅明
■キーワード
アナフィラキシー, 小麦, グリアジン, アスピリン, 川崎病
■要旨
食物アレルギーの一部において,食物摂取だけでは症状が誘発されず,何らかの負荷が加わって初めてアレルギー症状が出現する症例が存在する.今回,川崎病の低用量アスピリン療法中に食物摂取してアナフィラキシーを発症した1例を経験した.
症例は8か月男児.小麦摂取歴あり.発熱3日目に入院し,栄養は離乳食を中止してミルクのみ摂取していた.発熱6日目に川崎病の診断で大量免疫グロブリン療法およびアスピリン内服を開始し,速やかに解熱した.第11病日に退院し,低用量アスピリン療法を継続した.第12病日に小麦を含有した離乳食を再開したところ,全身の蕁麻疹や喘鳴などアナフィラキシー症状が出現した.特異的IgE抗体検査では小麦およびω-5グリアジンが陽性,他の食物はいずれも陰性で,アスピリンが誘因となり小麦摂取によるアナフィラキシーを発症したと判断した.以後は小麦のみ食事制限してアスピリン内服を3か月間続けたが,アレルギー症状は出現していない.1歳2か月で小麦の食物経口負荷試験を行い,搔痒を伴う膨疹が体幹に出現したため陽性と判定した.
アスピリン療法中に食事摂取してアナフィラキシーが起こった時は,直近の摂取歴があっても小麦など食物アレルギーを鑑別する必要がある.
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【症例報告】
■題名
インスリン強化療法を行った治療前低血糖を呈した1型糖尿病発症早期の幼児
■著者
ベルランド総合病院小児科 津山 美穂 端 里香 末廣 友里 雨皿 千鶴 田中 俊光 竹原 歩 鳥越 史子 山内 淳 甲斐 昌彦 沖永 剛志
■キーワード
1型糖尿病, 持続グルコース測定, 低血糖, インスリン強化療法
■要旨
初期の1型糖尿病症例では内因性インスリン分泌が残存しており,治療開始前に低血糖をきたすことがある.そのような症例にどのように治療を行うべきか明らかにされていない.今回,幼稚園検尿での尿糖陽性を主訴に1型糖尿病と診断された2歳8か月の男児で,インスリン治療開始前に間歇スキャン式持続グルコースモニタリングを行ったところ,夜間の低血糖が明らかになった(time in target glucose range:TIR 34%,time below target glucose range:TBR 13%).本症例は治療開始前の血液検査で空腹時血糖49 mg/dL・血中C-ペプチド0.16 ng/mL,食後2時間の血糖248 mg/dL・血中C-ペプチド1.54 ng/mLとインスリン分泌能は残存していた.本症例に対し,強化インスリン療法を開始したところ,TIR 46%,TBR 4%と低血糖領域が減少し,血糖コントロールが改善した.発症初期の1型糖尿病でインスリン分泌能が残存している患者に対し,早期に強化インスリン治療を開始することは,自己のインスリンの過分泌を抑制し,低血糖を防ぐことができる可能性がある.また,持続グルコース測定により安全に治療の評価が行える.
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【症例報告】
■題名
インフルエンザ菌a型が分離された細菌性髄膜炎
■著者
市立福知山市民病院小児科1),同 臨床検査部2),国立感染症研究所細菌第二部3) 石丸 真璃子1) 新田 義宏1) 藤原 早苗1) 奥村 能城1) 吉金 礼三郎2) 久保田 眞由美3) 諸戸 雅治1)
■キーワード
Haemophilus influenzae type a, 細菌性髄膜炎, 侵襲性インフルエンザ菌感染症, 莢膜型, Multilocus sequence typing
■要旨
本邦では2013年にHaemophilus influenzae type b(以下Hib)ワクチンが定期接種となり,Hibによる侵襲性インフルエンザ菌感染症(invasive Haemophilus influenzae disease,以下IHD)が激減した.一方,北米においてはHaemophilus influenzae type a(以下Hia)によるIHDが増加傾向にある.今回我々は,渡航歴のない小児におけるHiaによる細菌性髄膜炎の症例を本邦で初めて報告する.
生来健康な2歳女児が,前日からの発熱と受診数時間前からの意識障害を主訴に救急受診した(第2病日).脳脊髄液検査から細菌性髄膜炎を疑い,デキサメタゾン先行投与の後,メロペネムとセフトリアキソンで治療を開始した.入院翌日に解熱し,同日脳脊髄液検査で菌体消失を確認した.治療開始前の脳脊髄液・血液培養よりHiaが分離された.第4病日にアンピシリンへ変更し,計14日間抗菌薬治療を行った.合併症なく第18病日に退院し,現在まで後遺症は認めていない.
Hiaは,Hibと同様の臨床症状を示し,細菌性髄膜炎を起こしやすい.現在本邦では無莢膜型によるIHDが主であるが,今後Hiaを含めた非b莢膜型株が増加する可能性もあり注意が必要である.
今後の疫学動向の把握のため,IHDに遭遇した際は積極的な莢膜型解析が望まれる.
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【論策】
■題名
幼稚園・保育園と医療従事者へのアンケートから考える感染対策の優先度
■著者
埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科1),国立成育医療研究センター感染症科2),日本小児総合医療施設協議会小児感染管理ネットワーク3),埼玉県立小児医療センター4) 古市 美穂子1) 菅沼 栄介1) 大宜見 力2)3) 岡 明4)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 感染対策, 保育園, 幼稚園
■要旨
コロナウイルス感染症2019の流行後,幼稚園・保育園では感染対策が強化されたが,流行が長期にわたり,子どもたちの心身への影響が危惧されている.感染対策の実施状況やその問題点を把握し,集団生活における子どもたちの心身の健全な発達を育みながら今後も継続すべき感染対策について検討することを目的とし,埼玉県さいたま市の幼稚園・保育園と日本小児総合医療施設協議会小児感染管理ネットワークへ感染対策31項目についてアンケートを実施した.
幼稚園・保育園374施設のうち半数以上の施設が22項目(74%)の感染対策を現在も実施する一方で,18項目(58%)の対策を「子どもへの影響がある」と回答した.幼稚園・保育園は29項目(94%)を「対策として有効である」と回答したが,医療従事者はそのうち20項目(68%)の対策について有効性を低く見積もった.子どもたちへの影響を考慮し,医療従事者が今後も継続を推奨する対策は,換気,体調確認,手洗い,大人のマスク着用(特に室内や人と近い距離で声を発する室外で)であった.一般的に推奨される感染対策であっても子どもを対象とした場合は有効性の確保が難しいものや心身への影響が懸念されるものがある.集団保育における感染対策の強化に検討が必要な際は,小児の感染対策に精通している者や現場を知る保育士も含めて早期より検討することが保育現場にとって有用な可能性がある.
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【論策】
■題名
「子ども食堂」から1 km,2 km圏内に居住する小児人口の特定
■著者
広島国際大学健康科学部医療経営学科 江原 朗
■キーワード
子ども食堂, 居場所, 社会的介入, 地理情報システム, 小児人口
■要旨
【背景】虐待の防止やその早期発見など,子どもたちに対する地域の見守りの拠点として「子ども食堂」が注目されている.「子ども食堂」とは民間の有志が公民館等を利用して地域の子どもたちに食事や居場所の提供をする活動であるが,小児の地理的なアクセスに関しては十分な知見が存在しない.
【方法】内閣府政策統括官子どもの貧困対策担当のホームページにリンクのある「子ども食堂」の所在地と全国それぞれの「500 mメッシュ(国土を500 m四方に分割した区画)」との間の距離を計算し,いずれかの「子ども食堂」から1 kmおよび2 km圏内の「500 mメッシュ」に居住する小児(0~14歳)人口を特定した.
【結果】全国4,705か所の「子ども食堂」と全国471,025の「500 mメッシュ」との距離を計算し,一定距離圏に居住する小児人口を特定したところ,いずれかの「子ども食堂」から1 km,2 km圏内に居住する小児人口は547万人および925万人,全国の小児人口の36%および61%に相当することが判明した.
【結論】少なくとも全国の小児の約6割はいずれかの「子ども食堂」から2 km圏内に居住していた.
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