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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:23.7.19)
第127巻 第7号/令和5年7月1日
Vol.127, No.7, July 2023
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日本小児感染症学会推薦総説 |
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RSウイルス感染症の疫学や予防方法の変化と将来の展望
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伊藤 健太,他 931 |
原 著 |
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松本 泰右,他 944 |
症例報告 |
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横畑 宏樹,他 949 |
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下村 育史,他 954 |
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鈴木 景,他 960 |
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船田 桂子,他 968 |
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大平 智子,他 973 |
論 策 |
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鈴木 修一,他 979 |
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985 |
地方会抄録(奈良・大分・香川・山形・群馬・東海・鹿児島・熊本・千葉・山梨・福岡・北陸・富山・山陰)
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986 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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1024 |
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1027 |
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1028 |
日本小児科学会倫理委員会主催 |
第13回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム 報告 |
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日本小児科学会に求められる倫理とは何か?〜小児医療において今求められる生命倫理・臨床倫理〜
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1029 |
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会報告 |
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原因不明の小児急性肝炎に関する実態調査(一次調査)報告書
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1033 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合43 |
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1039 |
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1040 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2023年65巻5月掲載分目次
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1044 |
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1046 |
【原著】
■題名
小児における適切な逆行性門脈造影法
■著者
兵庫県立こども病院循環器内科 松本 泰右 田中 敏克 近藤 亜耶 永尾 宏之 三木 康暢 松岡 道生
■キーワード
逆行性門脈造影, 門脈圧亢進症, 肝内門脈, ウェッジプレッシャーカテーテル, 造影カテーテル
■要旨
【背景】門脈圧亢進症や門脈体循環シャントのある疾患において肝内門脈の形態を評価することは重要である.しかし,逆行性門脈造影法についての適切な検査方法はまだ確立していない.【目的】逆行性門脈造影の適切な検査方法を確立する.【対象と方法】2015年から2020年までに当院で施行した計7回の逆行性門脈造影についてその検査方法を診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】シース挿入部位は大腿静脈2回,内頸静脈5回で造影剤使用量は0.2〜0.7(中央値0.4)mL/kg/回,注入時間は1.9〜3.3(中央値2.7)秒であった.大腿静脈穿刺による1回で造影中にカテーテルが肝静脈から外れ造影が不完全となった.また初期のウェッジプレッシャーカテーテルを用いた1回でバルーン閉鎖の有無にかかわらず造影不良となったが,別セッションの血管造影用カテーテル造影では良好な画像が得られた.【考察】大腿静脈アプローチでは肝静脈の解剖学的特徴からカテーテルが造影剤の注入圧により外れやすいと考えた.またウェッジプレッシャーカテーテルは細い径のカテーテルを使用すると閉塞すべき血管径に対し注入できる造影剤量が限られるため造影不良になりうると考えた.【結語】逆行性門脈造影法では内頸静脈からのアプローチで造影カテーテルを使用し0.4 mL/kg/回前後,注入速度2.7秒前後の造影剤を使用することが適切な検査方法と考えた.
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【症例報告】
■題名
Gaucher病診断における家族歴の重要性
■著者
広島市立舟入市民病院小児科1),鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科2) 横畑 宏樹1) 谷本 綾子1) 藤井 裕士1) 大野 綾香1) 佐藤 友紀1) 佐々木 夏澄1) 岡野 里香1) 成田 綾2)
■キーワード
Gaucher病, GBA遺伝子変異, Parkinson病, 薬理学的シャペロン療法, アンブロキソール
■要旨
Gaucher病の原因であるGBA遺伝子変異は,保因者であってもパーキンソニズム発症のリスクがあることが知られている.今回我々は,若年発症したParkinson病の家族歴を有するGaucher病の症例を経験した.症例は2歳4か月の男児で,6か月頃より徐々に発達遅滞が出現し,1歳1か月時に慢性下痢,発達遅滞,吸気性喘鳴,肝脾腫を認め,母方祖父の若年発症のParkinson病の家族歴も傍証となりGaucher病を疑い,リンパ球のグルコセレブロシダーゼ活性検査にて単独欠損を認め,神経型Gaucher病と診断した.ベラグルセラーゼアルファ投与による酵素補充療法を開始し,慢性下痢,吸気性喘鳴,肝脾腫が改善した.GBA遺伝子解析にて,アンブロキソールによる薬理学的シャペロンの有効性が期待される複合ヘテロ変異(D409H/R120W)を認め,アンブロキソール投与により発達の向上がみられた.両親は遺伝子解析にてGBA遺伝子変異保因者と診断され,パーキンソニズム発症リスクがあると判明した.薬理学的シャペロン療法は一部のGBA遺伝子変異を有するパーキンソニズムに対しても有効である可能性があり,今後の研究開発に期待されている.Gaucher病患者の家族歴は診断に寄与するともに保因者のリスク,治療の可能性を予測する因子となり得るため重要性が増すと考えた.
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【症例報告】
■題名
早期診断と治療が奏効した梨状窩瘻の新生児例
■著者
鹿児島大学病院小児科1),同 小児外科2) 下村 育史1) 中江 広治1) 棈松 貴成1) 上野 健太郎1) 大西 峻2) 岡本 康裕1)
■キーワード
梨状窩瘻, 新生児, 抗菌薬治療, ドレナージ, 頸部腫瘤
■要旨
症例は日齢4の新生児.出生時から左頸部に50 mm大の弾性軟の腫瘤を指摘され,当科へ紹介入院した.呼吸困難はなく全身状態は良好だった.頸部超音波検査および頸部造影検査で新生児梨状窩瘻と診断し,嚢胞の持続的ドレナージとセフォタキシムナトリウム(CTX)およびスルバクタムナトリウム・アンピシリン(SBT/ABPC)による抗菌薬治療を行った.日齢14に内視鏡ガイド下で口腔側から梨状窩瘻にガイドワイヤーを挿入し,嚢胞直上を皮膚切開して嚢胞切除術を行った.術後経過は良好で合併症もなく,日齢36に退院した.梨状窩瘻は稀な疾患で特に新生児例の報告はほとんどないが,感染による炎症の拡大や膿瘍の形成により呼吸器症状が急激に重篤化する危険性があるため抗菌薬治療を検討する必要がある.本症例は再発を考慮し,ガイドワイヤーを用いて瘻孔を確認する手法を用い,手術により瘻孔を閉鎖することで合併症なく完治することができた.新生児期の梨状窩瘻では,重度の呼吸困難を伴うことがあるため,頸部腫瘤を発見した際には本疾患を鑑別に挙げ,早期に治療介入を行うことが重要である.
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【症例報告】
■題名
乳児期から酵素補充療法を行った周産期良性型低ホスファターゼ症
■著者
和歌山県立医科大学小児科1),大阪大学小児科2) 鈴木 景1) 利光 充彦1) 篠崎 浩平1) 平山 健太郎1) 村山 友梨1) 土橋 智弥1) 鈴木 崇之1) 杉本 卓也1) 熊谷 健1) 徳原 大介1) 大幡 泰久2) 大薗 恵一2)
■キーワード
周産期良性型低ホスファターゼ症, 酵素補充療法, アスホターゼアルファ, 胎児超音波検査, 運動発達
■要旨
症例は在胎40週1日で出生した女児.胎児期より四肢の短縮や長管骨の変形が指摘されており,出生直後からNICUで管理を行った.出生体重は3,345 g(1.0 SD),身長は48 cm(0.8 SD)と標準的であり,呼吸障害や神経学的な異常所見もなかったが,四肢の著明な短縮や骨の彎曲,血清ALP低値,尿中PEA高値から周産期良性型低ホスファターゼ症を強く疑った.遺伝子検査による確定診断後,生後2か月でアスホターゼアルファによる酵素補充療法を導入した.生後12か月時点で標準的な発育,月齢相当の運動発達およびレントゲン所見の改善を認めた.低ホスファターゼ症に対する酵素補充療法は致命率の高い重症型の病型の生命予後改善に有効とされているが,本症例では生命予後が良好とされる周産期良性型低ホスファターゼ症に対して早期より酵素補充療法を導入したことにより,酵素補充療法が発育や運動発達において重要な予後改善効果をもたらす可能性が示された.
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【症例報告】
■題名
間質性肺炎の難治性咳嗽発作に対し,モルヒネ持続投与で症状緩和を得られた小児
■著者
国立成育医療研究センター病院呼吸器科1),同 緩和ケア科2),大阪発達総合療育センター小児科3) 船田 桂子1) 余谷 暢之2) 玉井 直敬1) 冬木 真規子3) 肥沼 悟郎1)
■キーワード
間質性肺炎, 小児慢性呼吸器疾患, 呼吸困難, モルヒネ持続投与, 緩和ケア
■要旨
慢性呼吸器疾患患者の呼吸困難に対するモルヒネの有効性については,成人では報告があるが,小児では神経疾患患者の少数の症例報告があるのみである.今回,間質性肺炎の呼吸困難を伴う難治性咳嗽に対し,モルヒネ持続投与が苦痛緩和に有効と考えられた小児例を経験した.
症例は周産期歴に問題ない女児で,日齢12に嘔吐し前医に緊急搬送.陥没呼吸と低酸素血症を認め,画像検査や遺伝子検査からSFTPC遺伝子異常による遺伝性間質性肺炎と診断された.薬物療法に対する治療抵抗性が高く,咳嗽発作に伴うSpO2低下と頻脈の頻度が増加し,鎮静薬による管理が困難で,生後3か月時に咳嗽発作の緩和目的でモルヒネの持続静脈内投与を2 μg/kg/hrで開始した.投与後,咳嗽発作時のSpO2低下頻度や持続時間,脈拍数と呼吸数の変動が軽減しモルヒネは有効と判断した.SpO2値の低下頻度,脈拍数,呼吸数の変化を指標としモルヒネを適宜増量(2〜20 μg/kg/hrずつ)した.1歳3か月で永眠時には140 μg/kg/hrまで増量したが,尿閉以外の大きな副作用を認めずに使用できた.
本症例では,咳嗽発作時のSpO2値の低下頻度,脈拍数,呼吸数の変化を評価項目としモルヒネ投与量の調整を行い,良好なコントロールが得られた.今後症例を集積して,小児慢性呼吸器疾患患者の難治性咳嗽発作に対するモルヒネの有効性や適切な投与法を検討していきたい.
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【症例報告】
■題名
COVID-19流行中において心原性ショックの乳児におきた診断エラー
■著者
宮崎県立宮崎病院小児科 大平 智子 大富 滉平 石井 茂樹 中谷 圭吾
■キーワード
診断エラー, 認知バイアス, コロナウイルス感染症2019, ショック
■要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)はわたしたちの日常生活を大きく変化させ,小児医療提供体制にも甚大な影響を及ぼした.わたしたちは今回COVID-19対策を行っている中で,診断エラーにより蘇生を必要とした心原性ショックの乳児例を経験した.
症例は5か月女児.来院当日昼から嘔吐と顔色不良がみられ救急車にて来院した.COVID-19第6波が始まったばかりの頃で,本児の父が症状のある濃厚接触者のため,本児をCOVID-19のハイリスク患者として対応した.到着後,救急外来陰圧室で小児科専攻医と看護師の2名で対応し,指導医は陰圧室外からガラス越しに診療現場を見ていた.到着した1時間後に突然心肺停止となった.胸部X線写真にて著明な心拡大,および心臓超音波検査にて左室拡大と心収縮不良を認め,心原性ショックが考えられた.後に,到着時より顔色不良・末梢冷感などショックの徴候がみられていたことが分かった.しかし指導医は,状態が良い,胃腸炎だろうと考え(診断の早期閉鎖),肝腫大の情報を得た後も診断を修正することができず(アンカリングバイアス),ショックに気づかなかった(診断エラー).
COVID-19流行中の救急外来では配慮すべきことが多く,診断エラーによる弊害が発生してしまう可能性がある.わたしたちは診療するうえで,認知バイアスを回避し,診断エラーを減らす努力を怠ってはならない.
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【論策】
■題名
受動喫煙防止関連法令・条例に対する中学生の認知度
■著者
国立病院機構下志津病院小児科1),千葉県医師会2) 鈴木 修一1)2) 中村 健吾1) 鈴木 由美1) 冨板 美奈子1) 重田 みどり1) 西牟田 敏之2)
■キーワード
中学生, 受動喫煙防止, 法令, 条例, 認知度
■要旨
【背景】健康増進法が改正され,一部自治体で子どもを受動喫煙から守るよう義務づけられるなど,受動喫煙の規制が強化されている.しかし,これらの法令や条例の認知度は不明である.【方法】千葉県5市内の公立中学校3年生を対象とした受動喫煙防止に関するプリント学習の追跡調査において,改正健康増進法に基づく喫煙者の周囲への配慮義務(法令1),および,公共施設で敷地内禁煙(法令2),一部の自治体で施行された条例として,未成年者を受動喫煙から守る保護者の義務(条例)についての認知度を3段階で評価した.回答を性別,地域別,家族喫煙者数別に比較検討した.【結果】2,333名(回答率89.4%)より回答を得た.法令1を「知っている」と回答した割合は46%だった.同様に,法令2は52%,条例は23%だった.法令1では女子の認知度が高く,全ての項目で地域差が認められた.さらに,条例では家族喫煙者数が多いと認知度が高い傾向があった.【結論】千葉県内の中学3年生において,子どもの受動喫煙防止に関する法令については約半数が,保護者に子どもを受動喫煙から守る義務があると定める条例については約1/4が認知していると推定された.この調査結果は,子どもを受動喫煙から守る法規制の周知啓発や遵守において有用な資料となると考えられる.
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