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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:23.5.17)
第127巻 第5号/令和5年5月1日
Vol.127, No.5, May 2023
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日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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ガラクトース血症IV型(ガラクトースムタロターゼ欠損症)の発見と疾患概念確立
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和田 陽一 679 |
原 著 |
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矢澤 志織,他 685 |
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井上 佳也,他 692 |
症例報告 |
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徳田 雄亮,他 701 |
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深澤 陽平,他 707 |
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上田 雅章,他 714 |
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伊藤 孝一,他 720 |
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花木 由香,他 725 |
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橘高 恵美,他 731 |
短 報 |
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實川 美緒花,他 737 |
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地方会抄録(埼玉・和歌山・千葉・静岡・甲信・福井・福岡)
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741 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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小児科研修プログラムにおける新生児研修に関するアンケート調査2022
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783 |
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会報告 |
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小児科医に潜在するワクチン忌避(Vaccine Hesitancy)に対する教育プログラム
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787 |
日本小児科学会JPLS委員会報告 |
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「防ぎうる心停止から子どもたちを守る」日本小児科学会小児診療初期対応コース(Japan Pediatric Life Support;JPLS course)の開発経緯と今後の展望
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795 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合42 |
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804 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2023年65巻3月掲載分目次
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805 |
公益財団法人小児医学研究振興財団 |
令和4年度 研究助成事業・海外留学フェローシップ |
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807 |
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809 |
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811 |
【原著】
■題名
レボチロキシン内服量と超音波所見に基づく先天性甲状腺機能低下症の病型診断方法
■著者
信州大学医学部小児医学教室 矢澤 志織 柴崎 拓実 内田 恵理子 原 洋祐 松浦 宏樹 水野 史 中村 千鶴子 中沢 洋三
■キーワード
先天性甲状腺機能低下症, 病型診断, 異所性甲状腺, レボチロキシン, 超音波検査
■要旨
先天性甲状腺機能低下症(Congenital hypothyroidism,CH)の治療は,不可逆的な知能障害を予防するため病型確定前から開始される.病型確定のための病型診断は本邦では主に5〜6歳以降に行われる.CHの病型は甲状腺形成異常が最も多く,その内60%が異所性甲状腺であるが,病型診断において初めて異所性甲状腺が判明する児も多い.
病型診断では123Iシンチグラフィーとパークロレイト放出試験が行われているが手順が煩雑である.異所性甲状腺等の甲状腺形成異常の診断は,幼児期以降の超音波検査や99mTcシンチグラフィーでも可能であり,甲状腺形成異常が疑われる児を事前に判別できれば,診断がより簡便に行える可能性がある.今回,異所性甲状腺診断のためのレボチロキシン内服量のカットオフ値を推定し,超音波検査所見と組み合わせることで異所性甲状腺が疑われる児を抽出できないか検討した.
55例のCH患者を後方視的に解析した.異所性甲状腺の例はその他の病型の例と比較してレボチロキシンの内服量が有意に多く,異所性甲状腺の診断のための最適なレボチロキシン内服量のカットオフ値は2.18 μg/kg/日であった.
レボチロキシンの内服量と幼児期以降の超音波検査の所見から異所性甲状腺等の甲状腺形成異常が疑われる場合は,先に99mTcシンチグラフィーを行うことで,簡便に病型診断が行える可能性がある.
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【原著】
■題名
出生順と突発性発疹発症月齢
■著者
井上こどもクリニック1),たむらこどもクリニック2),いちごこどもクリニック3),パルこどもクリニック4) 井上 佳也1) 田村 一志2) 渡邉 正之3) 友政 剛4)
■キーワード
突発性発疹, 出生順, コロナウイルス感染症2019, 感染経路
■要旨
背景 出生順が突発性発疹(Exanthema Subitum:ES)発症月齢の影響因子であるか検討を行った.
対象および方法 2018年1月〜2021年12月に初めてESと診断した5歳未満の乳幼児を対象とした.電子診療録から後方視的に症例を集計し,性,出産状況,コロナウイルス感染症2019(COVID-19)流行前後の因子も考慮して,出生順がES発症月齢に与える影響について検討を行った.
結果 対象は433例(男児224例,女児209例)であった.第一子174例(17(12〜23)(中央値(四分位範囲))か月)に比較して,第二子以上259例(12(10〜16)か月)のES発症月齢は有意に低かった(P<0.001).因子別(男児と女児,正期産と早産,COVID-19前とCOVID-19後)のサブグループ解析でも同様の結果が得られた.ES発症月齢を目的因子に,出生順,性,出産状況,COVID-19流行前後を説明因子に重回帰分析を行ったところ出生順のみがES発症月齢に影響を与える独立した因子として抽出された(P<0.001).
結語 出生順はES発症月齢の独立した影響因子と思われた.家庭内の年長児からの感染がESの早期発症につながることが示唆された.
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【症例報告】
■題名
抗血小板自己抗体を検出した免疫性血小板減少症の1か月児
■著者
国立成育医療研究センター教育研修センター1),同 血液内科2),日本赤十字社医療センター小児科3),日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター4) 徳田 雄亮1) 井口 晶裕2) 坂本 淳2) 平石 のぞみ1) 今井 庸子3) 宮城 徹4) 柏瀬 貢一4) 石黒 精1)2)
■キーワード
免疫性血小板減少症, ITP, 乳児期早期, 抗血小板自己抗体, GP IIb/IIIa
■要旨
免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia:ITP)は,血小板膜糖蛋白を標的とする自己抗体により発症する.免疫機能が未熟な乳児期早期において,自己免疫性疾患であるITPの報告は極めてまれである.血清学的検査からITPと確定診断した1か月児例を報告する.症例は日齢42から鼻閉が出現した.日齢50に顔部に点状出血が出現し,鼻出血と口腔内粘膜出血を伴った.日齢51に点状出血が全身に拡がり受診した.血液検査で血小板数が1.0万/μLと低下し,頭部画像検査で頭蓋内出血を認めた.濃厚血小板,また母親由来の濃厚血小板の投与を行ったが,血小板数の上昇は乏しかった.母親血清中に抗血小板抗体を認めないことから,母親由来の抗体移行による血小板減少症は否定した.患児の血清学的検査から血小板膜糖蛋白GP IIb/IIIaに対する抗血小板自己抗体を検出し,ITPと診断した.免疫グロブリン静注療法と副腎皮質ステロイド治療を行い,徐々に血小板数の増加が得られた.免疫機能が未熟な乳児期早期においても,同種抗体と自己抗体の徹底した鑑別が診断に重要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による皮下膿瘍の家族例
■著者
大阪はびきの医療センター小児科1),大阪健康安全基盤研究所微生物部細菌課2),大阪はびきの医療センター皮膚科3) 深澤 陽平1) 安楽 正輝2) 広瀬 晴奈3) 山口 智裕1) 上野 瑠美1) 釣永 雄希1) 重川 周1) 高岡 有理1) 吉田 之範1) 河原 隆二2) 片岡 葉子3) 亀田 誠1)
■キーワード
市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌, 白血球溶解毒素, USA300, 家族内感染, 皮下膿瘍
■要旨
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA)による皮下膿瘍を発症した家族内の3例を経験した.9歳男児が皮下膿瘍を発症し,その後に再発を繰り返した.その3か月後に1歳女児と37歳男性が発症した.1歳女児は一旦改善後再発した.膿汁から同一株のMRSAが検出され,感受性のあったST合剤の内服を行い,その後再発なく経過した.抗菌薬内服後も鼻腔内にMRSAが残存した37歳男性については,医療関係者であり易感染性を有する患者と関わることからムピロシン軟膏で除菌を行った.
検出されたMRSAの菌株は白血球溶解毒素であるPVL(Panton-Valentine leukocidin)が陽性であり,入院歴もないことから市中型MRSAによる感染症と診断した.PVL陽性の市中型MRSAは,健康な小児や成人に感染し,皮膚軟部組織感染症,特に膿瘍形成を来すことが多い.皮下膿瘍を繰り返す場合,PVL陽性の市中MRSA感染症を鑑別に挙げることが重要である.さらに,同菌による感染症を疑う場合は,家族内への感染拡大にも注意し,自壊した膿瘍や膿汁への接触回避や,手指や環境の消毒などの感染対策を指導すべきと考える.PVL陽性の市中型MRSA感染症は本邦でも近年,増加傾向となっており,同様の症例が増加することが懸念される.
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【症例報告】
■題名
診断に難渋した新生児疥癬
■著者
公立豊岡病院組合立豊岡病院小児科1),神戸市立医療センター中央市民病院皮膚科2),兵庫県立こども病院総合診療科3),同 アレルギー科4),同 感染症科5) 上田 雅章1) 港 敏則1) 小倉 香奈子2) 合田 由香利3) 田中 裕也4) 笠井 正志5)
■キーワード
疥癬, 角化型疥癬, 新生児, 湿疹, ランゲルハンス細胞組織球症
■要旨
疥癬はヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生することによって生じる感染症で,臨床症状により通常疥癬と角化型疥癬に分類される.日本では高齢者施設や病院などを中心に流行し,主に高齢者の疾患と考えられているが,接触感染であるために小児を含めたどの年齢層においても感染する.しかし,小児科医にとっては日常的に経験する疾患ではないため鑑別疾患としてあがりにくく,診断が遅れることも少なくない.今回我々は,新生児期に発症した通常疥癬に対しステロイド外用を継続し,角化型疥癬に移行した症例を経験した.
症例は1か月女児.生後2週頃から全身の湿疹が増悪し,ステロイド外用で症状の改善を得られなかった.リンパ節腫脹を呈しランゲルハンス細胞組織球症も疑われたが,皮膚およびリンパ節生検で悪性所見は認めず皮膚病性リンパ節症と診断した.アレルギー症状と考え高用量のステロイド外用を継続し一旦症状は改善したが,後に角化型疥癬に移行した.
ステロイド外用に抵抗性の湿疹では,新生児であっても鑑別診断のひとつとして疥癬を考え,皮膚科医と連携をとり早期に診断・治療を行うことが重要である.
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【症例報告】
■題名
B型肝炎ワクチン接種後の一過性HBs抗原血症
■著者
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野1),杉浦こどもクリニック2) 伊藤 孝一1) 武田 理沙1) 戸川 貴夫1) 杉浦 時雄2) 齋藤 伸治1)
■キーワード
B型肝炎, B型肝炎ウイルス, ワクチン, HBs抗原, 小児
■要旨
B型肝炎ウイルス外被抗原(HBs抗原)検査は,低頻度ながら偽陽性が存在することに留意が必要である.HBワクチン接種後の一過性HBs抗原血症の乳児3例を経験した.症例1:2か月女児.多発血管腫精査のための皮膚生検前のスクリーニング検査でHBs抗原0.12 IU/mL(基準値:< 0.03)だった.検査前日にHBワクチン(ビームゲン®)初回接種を受けていた.症例2:3か月男児.新生児集中治療室入院中の早産児.輸血後ウイルス感染症スクリーニング検査でHBs抗原0.04 IU/mLだった.検査2日前にHBワクチン(ビームゲン®)初回接種を受けていた.症例3:2か月女児.肝障害の原因検索を目的とする検査でHBs抗原0.23 IU/mLだった.検査前日にHBワクチン(ヘプタバックス-II®)初回接種を受けていた.3例はその後の精査により,HBV感染が否定され,HBワクチン接種後の一過性HBs抗原血症と判断された.海外のHBワクチン製剤において,接種後の一過性HBs抗原血症の報告は多いが,本邦からの報告は少ない.HBs抗原低値陽性例では直近のHBワクチン接種状況を確認するべきである.HBワクチン接種直後はHBs抗原検査を避けることが望ましい.
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【症例報告】
■題名
初期におむつ皮膚炎と思われていた遅発型GBS感染症の早産児
■著者
国家公務員共済組合連合会浜の町病院小児科1),九州大学病院総合周産期母子医療センター新生児内科部門2) 花木 由香1) 井上 雅崇1) 西村 真直1) 藤吉 順子2) 武本 環美1)
■キーワード
遅発型B群連鎖球菌感染症, 蜂窩織炎, おむつ皮膚炎, 敗血症, 早産児
■要旨
B群連鎖球菌(group B streptococcus:GBS)感染症はその表現型として,おむつ部分に蜂窩織炎を呈することがある.症例は生後1か月男児.在胎33週の双胎第2子であり,日齢27に他院NICUを退院した.日齢40に陰嚢〜鼠径部に発赤・腫脹が出現し,‘おむつかぶれ’として自宅で様子をみられていた.3日後,発赤・腫脹が時間単位で急速に拡大し,下腹部,背部,臀部および大腿へ及んだが,活気よく哺乳は良好であった.炎症反応高値であり,蜂窩織炎として速やかに抗菌薬投与を開始し,全身状態の悪化なく経過した.GBS菌血症と判明し,14日間の経静脈的抗菌薬治療の後,合併症なく退院した.その後の発達は修正週数相当であり,遠隔期の後遺症は認めない.
GBS感染症は高率に菌血症あるいは髄膜炎を合併するが,本症例のようにおむつ部分の蜂窩織炎で発症する場合,病初期に全身症状を欠き,おむつ皮膚炎と区別し難いことがある.また,全身症状出現と同時またはその直前に,病変部位が急に拡大することがあり,診断の契機となりうる.地域の一般小児科に初診する可能性があり,疾患の臨床像について認識が必要である.急速に拡大するおむつ皮膚炎は,全身状態良好であっても,遅発型GBS感染症を念頭に早急に精査および治療開始することが望ましい.
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【症例報告】
■題名
侵襲的気道管理に対し,両親への意思決定支援に苦慮した重症心身障害児
■著者
富士市立中央病院小児科1),兵庫県立尼崎総合医療センター小児総合診療科2),トータルファミリーケア北西医院3) 橘高 恵美1) 日馬 由貴1)2) 北西 史直3) 藤多 慧1) 秋山 直枝1)
■キーワード
侵襲的気道管理, 重症心身障害児, 意思決定支援, 医療的ケア児, 両親
■要旨
重症心身障害児はしばしば綿密な医療的介入やケアを要し,保護者は多くの意思決定を求められる.今回,われわれは感冒を契機にアデノイド肥大が増悪して窒息したために人工呼吸管理を要し,最終的に気管切開に至った水無脳症の男児例を経験した.患児は以前から現病とアデノイド肥大による閉塞性無呼吸を呈していたため,医師から保護者に対して気管切開などの侵襲的な介入の必要性について,複数回にわたり情報提供を行っていた.しかし,保護者の抱いていた気管切開に対するネガティブなイメージから,同意は得られなかった.その後の経過から,気管切開を行ったことで呼吸障害による入院頻度が明らかに減少したため,もっと早期に介入できていれば,児の呼吸障害はより早く安定し,窒息が回避できた可能性がある.本症例のように,医療的ケアを日常的に必要とするような症例においては,保護者が意思決定を行うにあたって,様々な視点や立場から意思決定を支援することが重要である.日本では医療的ケアを必要とする児が年々増加傾向にあり,周産期医療の進歩に伴って,今後も増加することが予想される.一方で,小児領域における意思決定支援の仕組みは十分とは言えない.今後,小児領域における意思決定支援体制を充実させていく必要がある.
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【短報】
■題名
COVID-19ワクチン接種後に発症した急性心筋炎の7歳男児例
■著者
手稲渓仁会病院小児科1),岩内協会病院小児科2) 實川 美緒花1) 上野 倫彦1) 長谷山 圭司1) 奥村 遼1) 荻原 重俊1) 和田 宗一郎1) 及川 純子1) 田村 卓也1) 齋 秀二1) 浜崎 和朗2) 南雲 淳1)
■キーワード
小児, コロナウイルス感染症2019, COVID-19ワクチン, 急性心筋炎
■要旨
COVID-19ワクチン接種後の急性心筋炎は,一般に頻度は低くかつ軽症とされている.症例は7歳男児,コミナティ®接種翌日に発熱と嘔吐を認め,4日後より非常に強い倦怠感と胸痛を訴え,5日後に当院に搬送された.心電図異常,心機能低下や心嚢液貯留,血中トロポニンIやB型ナトリウム利尿ペプチドの上昇を認め急性心筋炎と診断された.入院後は集中治療室に入室したが,循環破綻を来すことなく症状と検査所見は改善し,入院11日目に退院した.本邦において11歳以下のCOVID-19ワクチン接種後心筋炎例の詳細な報告はなく,今後の症例の蓄積が必要である.
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