 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:23.4.18)
第127巻 第4号/令和5年4月1日
Vol.127, No.4, April 2023
バックナンバーはこちら
|
 |
|
日本小児精神神経学会推薦総説 |
|
遠藤 太郎,他 549 |
日本小児血液・がん学会推薦総説 |
|
服部 浩佳 557 |
原 著 |
|
溝口 達弘,他 567 |
|
盛一 享徳,他 577 |
症例報告 |
|
西山 真未,他 586 |
|
近野 かおり,他 592 |
|
坂川 由里歌,他 599 |
|
西橋 祐樹,他 605 |
論 策 |
|
田村 正徳,他 611 |
|
|
618 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
|
No. 126 ナツメグ入りポプリの誤食による中毒
|
|
666 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 主催 |
|
669 |
|
|
670 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2023年65巻2月掲載分目次
|
|
675 |
|
677 |
|
678 |
【原著】
■題名
学童期における発達障害とアレルギー疾患の関連性
■著者
国立病院機構嬉野医療センター小児科1),佐賀大学医学部小児科2),みぞぐち小児科医院3) 溝口 達弘1)2)3) 森田 駿1)2) 川崎 祥平1)2) 稲田 由紀子1)2) 在津 正文1)2)
■キーワード
アレルギー疾患, 学童期, 自閉スペクトラム症, 注意欠如多動症, 発達障害
■要旨
【背景】学童期において自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの発達障害とアレルギー疾患との関連は明らかでない.両疾患の関連を理解し両疾患を有する児の特性を把握することは,両疾患の診療の向上に繋がると考えられる.
【目的】学童期における発達障害とアレルギー疾患との関連を検討する.
【対象と方法】2018年1月1日から12月31日の間に当院外来を受診した6歳以上12歳未満の外来患者1,136名を対象とし,発達障害を有する児と有さない児におけるアレルギー疾患有病率を診療報酬情報の診断名を用いて検討した.
【結果】発達障害を有する児のアレルギー疾患有病率(59.9%(82/137))は,発達障害を有さない児(31.9%(319/999))より有意に高かった.また,発達障害を有する男児において,注意欠如多動症を有する児のアレルギー疾患有病率は注意欠如多動症を有さない児より有意に高かった.多重ロジスティック回帰分析で,注意欠如多動症はアレルギー疾患全般(調整オッズ比3.73),気管支喘息(2.99),アレルギー性鼻炎(3.05),アトピー性皮膚炎(2.42),アレルギー性結膜炎(5.28)と関連性を認め,自閉スペクトラム症はアトピー性皮膚炎(2.24)と関連性を認めた.
【結論】学童期における発達障害を有する児はアレルギー疾患の有病率が高く,特に注意欠如多動症とアレルギー疾患との関連性を認めた.
|
|
【原著】
■題名
過去50年間におけるわが国の小児期慢性疾患の死亡率の推移
■著者
国立成育医療研究センター研究所小児慢性特定疾病情報室 盛一 享徳 桑原 絵里加 茂木 成美
■キーワード
暦時効果, ベイズ型年齢―時代―コホート分析, コホート分析, 小児慢性特定疾病
■要旨
【背景】近年子どもの主たる疾病負担は急性期疾患から慢性疾患へ変化してきている.慢性疾患の予後が改善してきていると言われているが,わが国の実情に関する報告は少ない.本研究は,わが国の過去50年間の慢性疾患を原因とする死亡率の変化を明らかにすることを目的とした.
【方法】小児期の慢性疾患をほぼ網羅していると考えられる小児慢性特定疾病を基準とし,人口動態調査にて「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」コードで報告された20歳未満の死因の中から,小児期の慢性疾患に該当すると考えられる死因を過去50年間分抽出し,死亡率の年次推移に対する年齢効果,時代効果,コホート効果についてベイズ型年齢―時代―コホート(Age-Period-Cohort,APC)分析を用いて検討した.
【結果】検討対象とした慢性疾患全体では,20歳未満の全ての年齢階層で一貫した死亡率の低下を示しており,死亡率は50年前の約1/5まで減少していた.またAPC分析の結果,時代効果が大きく死亡率の低下に影響しており,医学的知見の集積や医療技術の進歩による治療法等の向上により,死亡率の低下が生じていることが示唆された.
【結論】過去50年間にわが国の小児期慢性疾患の生命予後が大きく向上していることが明らかとなった.生命予後の改善は疾患を抱えて成人を迎える症例の増加を意味しており,彼らの社会参加を支えるための適切な支援が重要になると思われた.
|
|
【症例報告】
■題名
肺動脈絞扼術後に合併したCorynebacterium属による感染性肺動脈瘤
■著者
富山大学附属病院周産母子センター1),富山大学医学部小児科2),同 第1外科3),同 臨床分子病態検査学4) 西山 真未1)2) 田村 賢太郎1) 長岡 貢秀1) 猪又 智実1) 川崎 裕香子1) 伊吹 圭二郎2) 小澤 綾佳2) 廣野 恵一2) 東田 昭彦3) 青木 正哉3) 芳村 直樹3) 仁井見 英樹4) 吉田 丈俊1)
■キーワード
肺動脈絞扼術, 動脈管結紮術, 感染性肺動脈瘤, 感染性心内膜炎, Corynebacterium
■要旨
肺動脈絞扼術は,先天性心疾患に対する一般的な姑息術である.稀な合併症として肺動脈瘤があるが,その成因やリスク因子は明らかでない.また,体循環と比較して低圧である肺動脈瘤の治療指針は確立されていない.今回,肺動脈絞扼術後にCorynebacterium属による感染性肺動脈瘤を発症し,外科治療を要した乳児を経験した.症例は21トリソミーの女児.両大血右室起始症,動脈管開存症のため日齢12に肺動脈絞扼術および動脈管結紮術を施行した.術後経過は良好だったが,日齢27より発熱し炎症反応が上昇した.複数回の血液培養でCorynebacterium属を検出し,心臓超音波検査で肺動脈絞扼部遠位側の動脈管起始部に疣腫を伴う血管拡張があり,感染性肺動脈瘤と診断した.Vancomycin,Rifampicinで8週間治療し,血液培養は陰性化し疣腫は消失した.一方で瘤はさらに拡大したために日齢102(動脈瘤診断後10週)に肺動脈瘤切除術および心内修復術を施行した.
肺動脈絞扼術後の肺動脈瘤は,感染やジェット血流により瘤の増大をきたしやすい可能性があり,手術介入を念頭に置いて慎重なフォローアップが必要である.また,肺動脈絞扼術後患者に感染徴候があるときは,定期的な心臓超音波検査で見落としがちな右心系の異常に注意し,血液培養や細菌PCR検査などの敗血症診断検査を行うことが肝要である.
|
|
【症例報告】
■題名
CLCN1とSCN4Aバリアントを持つ非ジストロフィー性ミオトニー症候群
■著者
多摩北部医療センター小児科 近野 かおり 福田 憲太郎 大澤 由記子 小保内 俊雅
■キーワード
ミオトニー症候群, CLCN1, SCN4A, 精神運動発達遅滞, 横隔膜ヘルニア
■要旨
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は,骨格筋の筋強直を主徴とし筋の変性を伴わない遺伝性疾患で,骨格筋型塩化物イオンチャネル(CLCN1)と骨格筋型ナトリウムチャネルαサブユニット(SCN4A)の遺伝子に病的バリアントが同定されている.最近SCN4Aの病的バリアントによる新生児期発症の報告があるが,発達遅滞の報告は稀である.今回CLCN1複合ヘテロ接合性ミスセンスバリアントと,SCN4Aヘテロ接合性ミスセンスバリアントを認め,発達遅滞と複数の合併症を呈した男児を経験したので臨床像について報告する.
本症例は父親が同症候群と診断されており,乳児期より臨床診断のもと薬物療法を開始された.しかし新生児期から著明な筋強直により成長障害を来たし,一時期哺乳不良のため経管栄養を併用し,続発性有嚢性横隔膜ヘルニア根治術を施行された.2歳6か月時に歩行獲得なく発語が乏しいため原因検索を行ったが,発達を妨げる疾患の併存は否定された.父親より早期発症し症状は多彩かつ重症で,発達遅滞と複数のヘルニア合併症を呈した極めて稀な症例である.遺伝学的検査から父由来のバリアントに加え,無症状と思われた母由来のバリアントの重複が重症化に関与したと推察された.
診断基準を満たしても適切な遺伝学的検索を行うことで,詳細な病態把握に繋がる重要な知見が得られることが示唆された.
|
|
【症例報告】
■題名
造血細胞移植後に生じた選択的低IgG2血症の2例
■著者
東京医科歯科大学発生発達病態学分野1),同 小児地域成育医療学講座2),同 茨城県小児・周産期地域医療学講座3) 坂川 由里歌1) 友田 昂宏1) 森下 あおい1) 井上 健斗1) 岡野 翼1) 山下 基1) 神谷 尚宏1) 水野 朋子1) 磯田 健志1) 柳町 昌克1) 高木 正稔1) 金兼 弘和2) 今井 耕輔3) 森尾 友宏1)
■キーワード
原発性免疫不全症, 造血細胞移植, リツキシマブ, 侵襲性肺炎球菌感染症, 選択的低IgG2血症
■要旨
原発性免疫不全症に対する骨髄移植後に血清免疫グロブリン値が正常化し免疫グロブリン定期補充療法が不要になったにも関わらず,選択的低免疫グロブリン(Ig)G2血症をきたした2例を経験した.症例1は1歳11か月男児で,生後7か月時にWiskott-Aldrich症候群に対して同種骨髄移植を受けた.免疫抑制薬や免疫グロブリン定期補充療法が不要となりワクチン接種も開始していたが,ワクチン非含有血清型侵襲性肺炎球菌感染症に罹患し選択的低IgG2血症が判明した.症例2は5歳8か月女児であり,重症先天性好中球減少症に対する2回目の同種骨髄移植後,免疫抑制薬や免疫グロブリン定期補充療法が不要となったが,定期外来で選択的低IgG2血症に気づかれた.免疫グロブリン定期補充療法を再開し重症感染症の罹患はなかった.いずれも移植後合併症のためリツキシマブ投与がなされていた.
IgG2は肺炎球菌などの莢膜を有する細菌に対する抗体を含むため,低IgG2血症では侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高い.過去にリツキシマブ投与歴のある造血細胞移植症例では,IgG値が基準値内であっても選択的低IgG血症となりうることに注意が必要である.造血細胞移植後に選択的低IgG2血症を認める際は免疫グロブリン定期補充療法の継続や抗菌薬の予防投与などを検討すべきである.
|
|
【症例報告】
■題名
子守帯からの墜落により両側頭頂骨骨折をきたした乳児例
■著者
富山大学医学部小児科1),同 脳神経外科2) 西橋 祐樹1) 種市 尋宙1) 寺下 新太郎1) 堀江 貞志1) 高崎 麻美1) 山本 修輔2) 赤井 卓也2) 足立 雄一1)
■キーワード
小児頭部外傷, 多発頭蓋骨骨折, 虐待, 墜落外傷, 子守帯
■要旨
多発頭蓋骨骨折は虐待を疑うべき所見とされる一方,事故でも起こり,稀に単発外傷によっても生じる.今回われわれは,子守帯(いわゆる抱っこ紐)からの墜落で両側頭頂骨骨折をきたした乳児例を経験したため報告する.症例は生後1か月男児.子守帯使用中,高さ約1.0 mからコンクリートの地面へ墜落した.受傷直後に強い啼泣があり,嘔吐・けいれんは見られなかった.子守帯は新生児対応製品であったが,頸定前乳児が使用する際に必要な安全ベルトは着用されていなかった.病着時,意識清明で四肢運動は活発であった.頭頂部中心に1か所の擦過傷,頭頂部両側に皮下血腫があり,頭部CTで両側頭頂骨骨折を認めた.事故と虐待の両面を考慮し,院内児童安全保護委員会の介入を行った.母親からの問診と,理学所見・画像所見から推定された事故状況に矛盾はなく,不慮の事故と判断した.乳児の頭蓋骨は柔軟性に富み,低所からの墜落でも受傷部周辺の頭蓋骨変形および骨折をきたすことが指摘されているため,本症例では頭頂部への単発外傷により両側頭頂骨骨折に至ったと考えられた.児は外科的介入を要さず,神経学的後遺症なく経過した.乳児の多発頭蓋骨骨折では偶発的な単発外傷の可能性も考慮する必要がある.
|
|
【論策】
■題名
動く医療的ケア児の見守りを重視した障害福祉制度の改定に資する判定スコアの提言
■著者
埼玉医科大学総合医療センター1),はるたか会2),心身障害児総合医療療育センターむらさき愛育園3),埼玉県立小児医療センター4),エバラこどもクリニック5),医療型障害児入所施設カルガモの家6),日本看護協会7),TOMO Lab合同会社8),大阪大学9) 田村 正徳1) 前田 浩利2) 北住 映二3) 奈倉 道明1) 岡 明4) 江原 伯陽5) 星 順6) 荒木 暁子7) 飯倉 いずみ2) 猪狩 雅博2) 友松 郁子8)9) 森脇 浩一1)
■キーワード
医療的ケア, 医療的ケア判定スコア, 見守り, 障害福祉制度, 在宅医療
■要旨
我が国では近年,在宅環境において人工呼吸器をはじめとした高度な医療ケアを日常的に必要とするものの,知的障害は軽度で,運動機能も高い医療的ケア児(以下,医ケア児)の数が急増している.こうした新しいタイプの医ケア児は運動能力が高いために医療的ケア実施の負担が増え,リスクが高くなるにも関わらず,従来の障害福祉制度では障害の程度が軽いと判定され,十分な支援を受けられなかった.そこで彼らの成長を支えるために,障害・福祉制度の再考が重ねられ,平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定における,障害児通所支援事業所を対象とした看護職員加配加算が創設された.しかし,そこで示された基準が現実に合わなかったため,医ケア児を受け入れる通所事業の拡充には至らず,我々が,厚生労働省から令和3年の障害福祉サービス等報酬改定に向け,「医ケア児の判定基準確立のための研究」の委託を受けた.
本研究では重症心身障害児ではない医ケア児に対する通所支援や短期入所などの支援体制,及び在宅療養中の医ケア児についての現状と課題を明らかにした.その上で,医ケア児の家族の負担を軽減するために,日常生活において医療的ケアを常時必要とする児の安全性を担保しながら,通所支援や短期入所等の適切な障害・福祉サービスが受けられる判定基準を作成した.その一環として,これまでスコア化が困難とされていた動く医ケア児の「見守り」を評価する指標も開発した.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|