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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:22.8.26)
第126巻 第8号/令和4年8月1日
Vol.126, No.8, August 2022
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原 著 |
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後藤 盾信,他 1127 |
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里村 茂子,他 1136 |
症例報告 |
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大森 希望,他 1142 |
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須藤 湧太,他 1147 |
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吉田 愛梨,他 1153 |
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森本 愛海,他 1160 |
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小澄 将士,他 1167 |
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江崎 裕幸,他 1172 |
短 報 |
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田邉 裕子,他 1177 |
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地方会抄録(秋田・宮崎・群馬・栃木・青森・鹿児島)
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1181 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 114 新型コロナウイルス抗原検査キット抽出液の誤飲
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1208 |
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1211 |
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No. 112 棒つきキャンディの誤飲 記載内容に関する追記・修正
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1214 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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2015年に出生した超低出生体重児の死亡率および合併症罹患率
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1215 |
日本小児科学会情報管理委員会報告 |
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2020年度診療報酬改定に伴う病院小児科および全体の影響調査報告書
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1223 |
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1232 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻6月掲載分目次
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1236 |
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1238 |
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1239 |
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1251 |
【原著】
■題名
全自動型ランセットと23ゲージ針穿刺の疼痛反応の差
■著者
市立四日市病院小児科1),愛知医科大学病院周産期母子医療センター新生集中治療部門2) 後藤 盾信1) 井上 武1) 花井 知奈美1) 谷村 知繁1) 河邊 宏幸1) 周山 めぐみ1) 後藤 智紀1) 小出 若登1) 牧 兼正1) 牛嶌 克実1) 坂 京子1) 山田 恭聖2)
■キーワード
足底採血, 全自動型ランセット, 新生児, 疼痛ケア
■要旨
【目的】臨床経験年数における全自動型ランセットと針穿刺の疼痛反応を比較する.
【方法】出生体重1,500 g以上,在胎週数30週以上でNICUに入院した児と対象とし,針穿刺採血と全自動型ランセット採血における啼泣時間・絞り回数・Neonatal Infant Pain Scale(NIPS)スコア・採血時間・再穿刺回数を検討した.
【結果】対象は全自動型ランセット群53例(臨床経験3年以下16例,臨床経験4年以上37例),針穿刺群52例(臨床経験3年以下17例,臨床経験4年以上35例)で採血時間,絞り回数,再穿刺回数に差は認めなかった.啼泣時間は臨床経験3年以下群では差を認めなかったが臨床経験4年以上では(全自動型ランセット中央値0秒,[四分位範囲0〜11秒])vs針穿刺中央値28.5秒,[四分位範囲4〜55.75秒].(p<0.001)と有意差を認めた.穿刺時NIPSスコアは臨床経験3年以下群では差を認めなかったが臨床経験4年以上では(全自動型ランセット中央値3,[四分位範囲0〜5])vs針穿刺中央値6,[四分位範囲4〜7].(p<0.001)と全自動型ランセットでNIPSスコアが低値であった.
【結論】臨床経験が4年以上では足底採血において全自動型ランセットは針穿刺と比較して疼痛軽減に有効であったが臨床経験3年以下では疼痛軽減は認められなかった.
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【原著】
■題名
カヘキシアを呈する重症心身障がい児者におけるビタミンDの関与
■著者
徳島赤十字ひのみね総合療育センター小児科1),専門学校健祥会学園2) 里村 茂子1) 橋本 俊顕1) 中津 忠則1) 園木 夏江2) 山地 貴子2) 坂口 陽子2) 宮城 祐太郎2) 武田 英二2)
■キーワード
重症心身障がい児者, 体組成, ビタミンD欠乏, サルコペニア, カヘキシア
■要旨
重症心身障がい児者4例の体格,血液生化学,体組成,骨格筋機能,尿中窒素及び電解質の排泄率を測定し栄養状態について評価した.体格は小柄でやせ,体組成では骨格筋肉量(kg,kg/m2)および体脂肪量(kg)は低値を示し,サルコペニアあるいはカヘキシアを示した.個別の栄養摂取量は必要なエネルギー量を充足していたが,ビタミンD欠乏を示し,尿中カルシウムおよびリン排泄率の低下を示した.健常人の加齢に伴うサルコペニアに対してビタミンDの摂取や運動刺激の有効性は報告されている.運動刺激については実施していないため評価は不可能であるが重症心身障がい児者に対してもビタミンDの摂取が栄養状態の改善に必要であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
胎児超音波検査で一過性の高輝度腫瘤性病変を頭蓋内に認めたCOL4A1関連疾患
■著者
多摩北部医療センター小児科 大森 希望 本間 丈博 大澤 由記子 小保内 俊雅
■キーワード
COL4A1/A2関連疾患, 胎児期頭蓋内出血, 孔脳症
■要旨
COL4A1は全身の血管の基底膜を構成するIV型コラーゲンα1鎖をコードし,その変異により小血管の脆弱性をもたらす.同一遺伝子変異でも世代間で表現型が大きく異なり,COL4A1関連疾患の臨床像は多彩で,遺伝子型との相関は明らかではない.
今回,我々は新規のCOL4A1ヘテロ接合性ミスセンス変異(c.2450G>T p.(Gly817Val))を認めた2か月男児の症例を経験した.周産期および1か月健診で特段の異常は指摘されていなかった.2か月より認めた発作性の無呼吸にチアノーゼが遷延し,けいれん重積と判断した.その際頭部CTで側脳室拡大と側脳室周囲の石灰化を認めたが,微生物学的検査で先天感染は否定された.妊娠31週の超音波検査で,一過性の高輝度の頭蓋内腫瘤性病変が指摘された病歴から,胎児期の出血を疑った.遺伝学的検査を実施し,COL4A1関連疾患と診断した.
近年COL4A1関連疾患の報告は急増しており,胎児期出血による孔脳症例も多数確認されている.胎児超音波検査の脳室拡大を契機に診断に至る例が多く,詳細な周産期歴の確認を行い,胎児期の頭蓋内出血が疑われる場合は,本疾患を想起することが重要と考えた.
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【症例報告】
■題名
脳梗塞を繰り返したBow hunter症候群
■著者
藤田医科大学小児科1),刈谷豊田総合病院小児科2),あいち小児保健医療総合センター神経科3),藤田医科大学脳卒中科4) 須藤 湧太1)2) 鈴木 孝典1) 跡部 真人3) 平井 雅之2) 鈴木 大次郎1) 小島 有紗1) 内田 英利1) 齋藤 和由1) 畑 忠善1) 石原 尚子1) 中原 一郎4) 吉川 哲史1)
■キーワード
Bow hunter症候群, 脳梗塞, 椎骨動脈解離
■要旨
小児の脳梗塞の原因としては,血液疾患,循環器疾患,代謝疾患,脳血管構造異常の神経疾患などがある.今回,脳梗塞の原因がBow hunter症候群であった7歳男児例を経験したため,報告する.
症例は生来健康な7歳男児.体育授業中に転倒し,その2時間後からめまい,頭痛,嘔吐が出現し,近医を受診.頭部MRIを施行したところ,左小脳半球に脳梗塞を認めた.発症3か月後,フォローのMRIを施行したところ,右頭頂葉と右小脳半球に微細な脳梗塞を認めた.精査加療目的に前医を受診,内科的な精査を行ったが,原因はわからなかった.発症4か月後,めまい,嘔吐があり,前医を再診,頭部MRIを施行し,左小脳半球に再度脳梗塞を認めた.計3回の脳梗塞のエピソードがあり,脳血管造影を含めたさらなる精査のために,当院を紹介受診した.当院脳卒中科の血管造影で,頸部の右捻転により,左椎骨動脈が狭窄する所見及び内膜の解離所見を認め,Bow hunter症候群による椎骨動脈解離,多発性脳梗塞と診断し,血管内治療が行われた.
本症例のような原因不明の椎骨脳底動脈系の脳梗塞を診断した場合は,Bow Hunter症候群を鑑別に挙げて精査する必要がある.
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【症例報告】
■題名
トイレットトレーニングによる心理的要因から機能性尿閉と急性腎不全を認めた小児
■著者
久留米大学医学部小児科 吉田 愛梨 田中 征治 日吉 祐介 津村 直弥 久保 雄太郎 荒木 潤一郎 西小森 隆太 山下 裕史朗
■キーワード
トイレットトレーニング, 機能性尿閉, 急性腎不全
■要旨
小児の尿閉は稀であり,下腹部痛が主訴となるため初期の診断は難しい.尿閉の原因は感染性,機械的,神経因性,外傷性,機能性,特発性があり,問診や画像検査,尿流動態検査(urodynamic study:UDS)などで原因の精査を行う.小児では症状の表現が上手くできず診断が遅れ,腎後性腎不全が生じることもあり注意が必要である.
症例は3歳女児.トイレットトレーニング開始後からの下腹痛と陰部の疼痛を訴え,その後尿閉と腎機能障害を認めた.MRIでは膀胱の壁肥厚や不整のない巨大膀胱とUDSでは膀胱機能の異常を認めた.導尿により腎機能障害は速やかに改善し,次第に尿閉は軽快し自己排尿可能となった.問診と検査から厳しいトイレットトレーニングの心理的要因による機能性尿閉になったと考えられた.小児の下腹部と陰部痛では急性尿閉を考慮し診察せねばならない.また尿閉の原因に関わらず早期に導尿を開始することは膀胱機能や腎機能保護にも重要である.保護者へのトイレットトレーニングの指導は,知る(我が子の排尿間隔や排尿直前の姿勢の特徴を知る),促す(定期的にトイレに促す),ほめる(排尿がうまくいった時はほめる).うまく行かなくても焦らず怒らずトイレが嫌いにならないようにすることが重要である.
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【症例報告】
■題名
両側副腎石灰化を認め本邦で初めて酵素補充療法を行ったWolman病
■著者
国保中央病院小児科1),奈良県立医科大学附属病院小児科2),和歌山県立医科大学小児科3),大阪公立大学発達小児医学4),大阪市立総合医療センター小児代謝・内分泌内科5) 森本 愛海1)2) 橋本 直樹1) 飯田 陽子1) 中農 昌子1) 高川 健1) 徳原 大介3)4) 山田 勇気5) 依藤 亨5) 阪井 利幸1)
■キーワード
Wolman病, ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症, 両側副腎石灰化, 腹部膨満, 遺伝子組み換えヒトライソゾーム酸性リパーゼ
■要旨
ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(Lysosomal acid lipase deficiency:LAL-D)は細胞内に取り込まれたコレステロールエステル(CE)や中性脂肪(TG)を加水分解するLALが先天的に欠損する常染色体潜性(劣性)遺伝疾患である.Wolman病(WD)はLAL活性が高度に欠損し,全身臓器にCEやTGが蓄積する乳児期発症のLAL-Dで,未治療では生後6か月までに多くが死亡する非常に予後不良な疾患であるが,近年遺伝子組み換えヒトLAL(Sebelipase Alfa)による酵素補充療法が可能になり生存率が改善している.
症例は1か月20日の女児.発熱,哺乳不良,嘔吐のため紹介受診となり,腹部単純CTで両側副腎の石灰化と著明な肝脾腫を認めた.また腹部膨満,成長障害,肝機能障害,脂質異常も認めLAL-Dを疑った.乾燥ろ紙血法でLAL活性値が極めて低値のためWDと診断した.酵素補充療法を開始し肝機能障害や脂質異常は改善傾向で体重増加も認めている.本症例は本邦で17年ぶり15例目のWD症例で,本邦でWDに酵素補充療法を行った初めての症例である.50万人に1人とされる海外のWD発症率に比べ本邦の報告数は非常に少なく見逃されていた症例があると危惧される.LAL活性値は簡便に測定できWDは酵素補充療法により救命し得るため,疑えばためらわずに測定すべきである.
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【症例報告】
■題名
新生児期の消化管切除術後10年以上経過して発症したビタミンB12欠乏症
■著者
熊本大学病院小児科 小澄 将士 坂本 理恵子 片山 太輔 三渕 浩 中村 公俊
■キーワード
ビタミンB12欠乏, 消化管切除後, 歩行障害, 亜急性脊髄連合変性症
■要旨
ビタミンB12(VB12)欠乏症は,小児においては身体の成長発育だけでなく精神発達的な予後への影響があるため,早期診断が重要である.今回,我々は小腸切除を施行され,10年を経過した後にVB12欠乏症を発症した女児を経験したので報告する.
症例は11歳女児.歩行障害を主訴に当科受診.出生時,小腸穿孔のため前医で回腸回盲部切除を施行された.生後3か月で当院紹介となったが,経過良好で小学校入学時に終診となった.10歳時,嫌忌的な経験により肉や魚の摂取が減った.11歳時,歩行時に躓くことが多くなり,当院へ紹介受診となった.舌乳頭の萎縮,遠位筋優位の筋萎縮,下肢腱反射の消失を認めた.検査にてVB12は感度以下であり,ホモシステインは高値を示していた.消化管切除の既往やMCVが高値であったこと,神経症状,舌の状態からVB12欠乏による亜急性脊髄連合変性症および末梢神経障害と診断し,経口VB12製剤1,000 μg/日を開始した.治療開始2週間後には下肢の腱反射が出現し,治療開始8か月の時点で腱反射は亢進しているが,日常生活を制限なく過ごせるまでに回復した.
回腸回盲部切除後,十数年が経過している場合であってもVB12欠乏症を念頭に,繰り返し患者教育を行い,定期的な血中VB12およびホモシステイン濃度の測定を行う必要がある.
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【症例報告】
■題名
圧迫療法に伴う臍部褥瘡が誘因となった臍ヘルニア穿孔
■著者
佐世保市総合医療センター小児科1),長崎大学病院小児外科2) 江崎 裕幸1) 松尾 友里子1) 大坪 善数1) 山根 裕介2)
■キーワード
圧迫療法, 皮膚トラブル, 褥瘡, 臍ヘルニア, 腹部膨満
■要旨
臍ヘルニアは小児で頻度の高い疾患で,2000年以降は圧迫療法を積極的に行う施設が増加している.圧迫療法は皮膚トラブルが多いが,その他の合併症は稀である.今回我々は,圧迫療法の合併症として臍ヘルニア嚢の一部に穿孔を起こした症例を経験した.症例は在胎35週0日,1,559 gで出生したSGA(Small for gestational age)児で暦年齢2か月16日(修正1か月9日)に発熱を主訴に外来を受診して入院した.腹部膨満が著明で臍ヘルニアがあり,家族が入院の5日前から市販の専用機材(ニチバンの乳児用へそ圧迫材,ポリウレタン発泡体)で圧迫療法を行っていた.入院時に臍の観察を行ったところ,臍の中央下側に褥瘡が生じていた.褥瘡は2日目に改善傾向となっていたが,3日目には褥瘡部位で皮膚穿孔を起こしており,視診で虫垂と考えられる臓器が脱出していたため緊急手術となった.圧迫療法によって血流障害を起こした皮膚が壊死および褥瘡で脆弱化し,そこに腹圧がかかったことが穿孔の原因と考えられた.圧迫療法は皮膚トラブルの頻度が高いため,圧迫療法を行う児,特に固めの器材を用いる場合には褥瘡やそれに伴う臍ヘルニア穿孔に注意が必要であると考えられた.重篤な合併症は稀だが,家族に十分な説明と指導を行う必要があり,予防と早期発見のために,医師は定期的に圧迫を解除して直接皮膚の観察を行うべきであることが示唆された.
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【短報】
■題名
1型糖尿病患児の保護者へのグルカゴン点鼻粉末剤に対する意識調査
■著者
関西医科大学小児科学講座1),東野医院2),河内総合病院3) 田邉 裕子1) 野村 直宏1) 見浪 実紀1) 東野 博彦2) 高屋 淳二3) 金子 一成1)
■キーワード
1型糖尿病, 点鼻グルカゴン, 重症低血糖
■要旨
これまでわが国では医療機関外での1型糖尿病(本症)の重症低血糖の治療は介護者によるグルカゴン注射に限定されていたが,2020年10月からグルカゴン点鼻粉末剤(本剤)の処方が可能となった.そこで本剤の処方による重症低血糖への保護者の意識変化を明らかにするため,高校生以下の本症患児を持つ保護者17名にアンケートを実施した.結果,88%の保護者は「重症低血糖に対する不安が減った」と回答し,「グルカゴン製剤の投与は難しい」という意識も注射製剤の76%から6%に軽減した.本剤の処方により重症低血糖に対する保護者の不安は軽減していた.患児が長時間過ごす学校の教職員なども本剤を使用可能となることが望まれる.
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