gakkaizashi


日本小児科学会雑誌 最新号目次

(登録:22.7.21)

第126巻 第7号/令和4年7月1日
Vol.126, No.7, July 2022

バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

原  著
1.

2週間健診時に評価した母親の産後うつ傾向リスク因子

岩丸 良子,他  1011
2.

重症心身障がい児者の腕頭動脈気管圧排に対する予防的腕頭動脈離断術

長谷川 智巳  1018
症例報告
1.

乳児期に心原性ショックで発症した左室心筋緻密化障害の11年の経過

大坪 善数,他  1024
2.

ホスフェニトインにより意識障害をきたしたCYP2C19遺伝子多型を有する女児

栗林 文佳,他  1031
3.

神経性食思不振症に伴う便秘に合併した腸管気腫症

川上 優太朗,他  1036
4.

Down症候群に合併した萎縮性甲状腺炎

矢内 里紗,他  1042
5.

コロナウイルス感染症2019による新生児重症肺炎

阿見 祐規,他  1049
6.

化膿性リンパ節炎から急速にフルニエ壊疽に進展し緊急デブリードメントを要した乳児

青山 里穂,他  1055
論  策
1.

救急外来の軽症小児患者における養育者の不安要因

中尾 槙吾,他  1062
2.

インフォームド・アセントと中学生の自己決定に関する小児専門病院医師の意識調査

辻 恵,他  1071

地方会抄録(大分・鹿児島・和歌山・福岡・北陸・富山・山梨・佐賀・京都)

  1078
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 113 フッ素入り子ども用歯磨剤の誤食による急性フッ素中毒疑い

  1098
日本小児科学会医療安全委員会主催
  第13回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)

オンラインコースの報告

  1102
日本小児科学会学術委員会研究活性化小委員会主催

「網羅的遺伝子解析Webセミナー」報告

  1103

「EZRによる生物統計ハンズオンWebinar:初級コース」報告

  1104
日本小児科学会災害対策委員会報告

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期の災害時小児周産期リエゾンの活動に関するWEBアンケート調査

  1105

日本小児科学会雑誌第126巻4号掲載の日本小児科学会社会保険委員会報告の訂正について

  1113

公益社団法人日本小児科学会通常総会議事要録

  1114

日本小児科学会理事会議事要録

  1118

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻5月掲載分目次

  1123


【原著】
■題名
2週間健診時に評価した母親の産後うつ傾向リスク因子
■著者
済生会川口総合病院小児科
岩丸 良子  中村 明雄  西崎 淑美  萩尾 真理  井上 久美子  大山 昇一

■キーワード
2週間健診, EPDS, 養育支援連絡票, 産後うつ
■要旨
 出生した児とその母親全例を対象とした2週間健診を実施し,小児科医の視点から2週間健診で発見される産後うつについて検討した.2016年6月〜2020年3月までに当院で出産し,2週間健診でエジンバラ産後うつ質問票(EPDS;Edinburgh Postnatal Depression Scale)を施行した母親とその児を対象とした.育児不安のリスクがあると判断した母親にEPDSを施行し,9点以上をうつ傾向と判断した.EPDSを施行した母体は2週間健診受診者の4人に1人の割合(24.7%)であり,その約半数(47.8%)が9点以上であった.うつ傾向と各因子の関連性をχ2検定を用いて検討したところ,うつ傾向に関連があるとされたのは分娩歴と養育支援連絡票提出の有無であった.育児経験が多いほどうつ傾向になりにくく,養育支援連絡票が提出され産前・産後早期から医療機関や地域福祉機関が介入することが産婦のうつ傾向を低下させると考えられた.本研究では分娩後新たにうつ傾向となる母体が多くいることが示唆されており,2週間健診の対象を絞ることは難しいと思われた.また,経産婦であっても兄弟がいる中での育児に困難を抱え初産婦と異なる介入を要するケースが多くみられるため,全出生を対象とした2週間健診の実施をするべきであると考える.


【原著】
■題名
重症心身障がい児者の腕頭動脈気管圧排に対する予防的腕頭動脈離断術
■著者
兵庫県立こども病院小児集中治療科
長谷川 智巳

■キーワード
重症心身障がい児者, 腕頭動脈気管圧排, 気管腕頭動脈瘻, 腕頭動脈離断術, 予防的外科治療
■要旨
 重症心身障がい児者(重症児者)の生命予後は呼吸管理の進歩により近年向上してきたが,胸郭・脊椎変形や気管切開に伴って生じる腕頭動脈気管圧排は,致死的な気管腕頭動脈瘻の発症リスクを増大させる.今回,重症児者の腕頭動脈気管圧排に対する予防的腕頭動脈離断術の有用性と安全性を明確にするために後方視的研究を行った.
 2002年11月から2018年2月までに当院で腕頭動脈離断術を施行した重症児者34例を対象とし,予防的待機手術(予防群)26例と緊急手術(緊急群)8例を比較検討した.予防群では術前に手術リスク評価として頭部血管画像検査を全例に実施したが,緊急群では1例のみであった.緊急群と比較して,予防群では胸骨切開を要しない皮膚小切開アプローチが多く,出血量の減少や輸血の回避,手術時間や入院期間の短縮を有意に認めた.術後に腕頭動脈離断に関連した脳合併症や右上肢血行障害は認めなかった.予防的腕頭動脈離断術は致死的な気管腕頭動脈瘻の発症を未然に防いで緊急手術を回避し,十分な術前精査に基づく低侵襲手術によって術後早期回復が期待できる.予防的外科治療に関するリスクマネジメントを適切かつ十分に行うならば,予防的腕頭動脈離断術は重症児者の腕頭動脈気管圧排に対する有用な治療法であると考える.


【症例報告】
■題名
乳児期に心原性ショックで発症した左室心筋緻密化障害の11年の経過
■著者
佐世保市総合医療センター小児科1),同 放射線科2),佐世保中央病院小児科3)
大坪 善数1)  松山 匡治2)  城戸 康男2)  横川 真理1)  山田 克彦3)

■キーワード
心筋緻密化障害, 心筋線維化, 心臓MRI, T1 mapping, TPM1遺伝子
■要旨
 左室心筋緻密化障害(LVNC)は,左室心筋が緻密化層と非緻密化層が2層構造を呈し,過剰な肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする心筋症である.胎生初期にみられる心筋の緻密化が何らかの原因で中断されることによって起こる.無症状から高度の心機能障害まで臨床像は幅広く,診断時期も新生児から成人まで様々であるが,1歳未満に重度の心不全で発症し,LVNC関連遺伝子変異,心筋線維化を認める症例は予後不良とされる.
 症例は11歳男児.生後3か月時に心原性ショックで発症し拡張型心筋症(DCM)様の心筋形態を呈するLVNCと診断,現在までβ遮断薬等の内服治療で心事象なく経過している.左室駆出率(EF)は35〜40%であるが,発症から10年でNT pro-BNPは正常化した.心臓MRI(CMR)による遅延ガドリニウム造影(LGE)は陰性であったが,T1 mappingでNative T1の延長,細胞外容積分画(ECV)の増加を認め心筋線維化が示された.遺伝子検査ではTropomyosin 1(TPM1)遺伝子のヘテロ接合ミスセンス変異を認めた.
 乳児期発症のLVNCで発症から11年間安定した経過をとるが,LVNC関連遺伝子変異を有し,CMRで心筋線維化を認めるため,長期的には予後不良例として管理していく必要がある.


【症例報告】
■題名
ホスフェニトインにより意識障害をきたしたCYP2C19遺伝子多型を有する女児
■著者
長野赤十字病院小児科1),同 脳神経外科2)
栗林 文佳1)  小林 法元1)  平林 佳奈枝1)  川崎 洋一郎1)  石田 岳史1)  天野 芳郎1)  藤原 秀元2)

■キーワード
ホスフェニトイン, フェニトイン中毒, CYP2C19, CYP遺伝子多型, 意識障害
■要旨
 ホスフェニトイン(fos-PHT)は,フェニトイン(PHT)のプロドラッグであり,けいれん発作時の第2選択薬として使用されている.従来のPHT注射薬では,血中濃度上昇による意識障害などの重篤な中枢神経系症状の副作用を来した症例が多数報告されているが,fos-PHTにより意識障害をきたした小児例の報告は稀である.症例は3歳女児.左側頭部急性硬膜外血腫に対して左開頭血腫除去術を施行され,脳外科手術後のてんかん発作予防として,推奨用法用量によりfos-PHTが投与された.2回目の維持投与2時間後に,回転性めまいを訴え,嘔吐が頻回にあり不穏となった.血中PHT濃度は51 μg/mLと中毒域にまで上昇しており,血中濃度の低下とともにそれらの症状は改善した.PHTの代謝酵素であるCYP2C9,CYP2C19には薬物代謝活性が低下する変異型が存在しており,本児はCYP2C19遺伝子多型を有していた.本邦の推奨量では,有効血中濃度が維持できないことが報告されているため,PHT中毒量まで上昇する可能性は低いと考えられる.しかし,日本人ではCYP2C19遺伝子多型が少なくないことを考慮すると,fos-PHT使用時には,血中濃度をモニタリングし,中枢神経系副作用に十分注意して診療を行う必要がある.


【症例報告】
■題名
神経性食思不振症に伴う便秘に合併した腸管気腫症
■著者
東京都立墨東病院小児科
川上 優太朗  山下 匠  吉橋 知邦  大森 多恵  三澤 正弘

■キーワード
神経性食思不振症, 腸管気腫症, 便秘, 小児, 酸素療法
■要旨
 神経性食思不振症(Anorexia nervosa:AN)は長期間の低栄養により様々な身体的症状を来し,便秘による腹痛を伴うことも多い.しかし,ANの治療経過中に腹痛が持続する場合には,他疾患の合併も考慮する必要がある.ANに伴う便秘の治療中に腹痛を契機として,腸管気腫症(Pneumatosis intestinalis:PI)と診断した症例を経験した.
 症例は11歳女児.ANに伴う便秘に対し,経管栄養や浣腸,緩下剤で加療を開始した.持続する腹痛の経過観察のため,腹部エックス線検査を実施したところ,経過中にPIを認めた.絶食による腸管安静や浣腸の中止,緩下剤の休薬に加えて低流量酸素療法を実施したところ,腹痛は著明に改善し,保存療法のみでPIも改善した.
 ANは便秘を高頻度に併発するが,治療経過中に腹痛が持続する例では,外科的介入を要するPIを合併する可能性があり,定期的な画像検査を行う意義があると考えた.また,PIに対し低流量酸素療法が症状改善のために有効であった.


【症例報告】
■題名
Down症候群に合併した萎縮性甲状腺炎
■著者
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
矢内 里紗  圓若 かおり  後藤 芳充

■キーワード
萎縮性甲状腺炎, Down症候群, 成長率
■要旨
 萎縮性甲状腺炎とは,甲状腺腫大を認めず,甲状腺機能低下に陥った自己免疫性甲状腺炎である.発症後,時間が経過してから発見されることが多く,多臓器不全を合併し,粘液水腫にまで至っている症例もまれではない.
 本症例は6歳のDown症候群女児.一年ほど前から成長率低下が認められていたが,甲状腺の定期的なスクリーニング検査は施行されておらず,全身の浮腫と肝機能および,腎機能低下を合併しての受診となった.臨床症状と検査結果から甲状腺機能低下症と診断し,レボチロキシンナトリウムによる治療を開始後,甲状腺機能とその他合併症の改善が得られた.
 Down症候群と甲状腺機能低下症は便秘や肥満,食欲低下などの症状が類似することからDown症候群児に合併した場合は発見が難しい.萎縮性甲状腺炎の発見には,非Down症候群児同様,成長率に着目することが推奨される.また,甲状腺機能低下症の合併は学童期以降に起こることもあり,幼児期に問題なく経過している症例でも,経過観察を終了することなく,定期的なスクリーニング検査が重要であると再認識した.


【症例報告】
■題名
コロナウイルス感染症2019による新生児重症肺炎
■著者
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児集中治療科1),同 小児感染症内科2),沖縄県立宮古病院小児科3)
阿見 祐規1)  吉野 佳佑3)  神納 幸治1)  張 慶哲2)  藤原 直樹1)

■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 重症肺炎, 新生児, レムデシビル, 急患空輸
■要旨
 生来健康な日齢16の女児が家庭内感染で発症したコロナウイルス感染症2019(coronavirus disease 2019:COVID-19)による重症肺炎を沖縄の離島で経験した.
 発症当初は発熱と哺乳や睡眠時に極短時間の低酸素を認めるのみで全身状態は安定しており酸素投与は行わなかった.数日後発熱は改善し,1週間後に一旦退院できるまでに低酸素は改善したが,間も無く急速に重症化した.特異的治療としてのレムデシビルとデキサメタゾンによる治療に加え,人工呼吸管理を行った.人工呼吸を開始してすぐに,離島から高次医療機関へ自衛隊機による急患空輸を行った.空輸中,診察やモニタリング,トラブル対応,医療者の感染対策には難渋したが無事に搬送することができ,後遺症や抗ウイルス薬の副作用もなく,発症42日で高次医療機関を退院した.
 これまで,成人のCOVID-19症例では,軽症例が発症から1週間後に重症化しうると報告されている.新生児のCOVID-19でも同様に,一時的に症状が軽快しても,急激に悪化することがあるため,慎重な経過観察が必要である.呼吸努力の出現や低酸素の進行など,症状の増悪を認める症例においては早期に高次医療機関に搬送する必要がある.特に,離島などの環境においては迅速な搬送の判断が必要である.


【症例報告】
■題名
化膿性リンパ節炎から急速にフルニエ壊疽に進展し緊急デブリードメントを要した乳児
■著者
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院小児科1),同 小児外科2),同 病理部3)
青山 里穂1)  三井 さやか1)  水谷 謙介1)  西門 優一1)  秋田 直洋1)  福見 大地1)  村瀬 成彦2)  藤野 雅彦3)

■キーワード
乳児, フルニエ壊疽, デブリードメント, 急速進行性, 鼠径部化膿性リンパ節炎
■要旨
 フルニエ壊疽は糖尿病等基礎疾患のある50歳代の男性に好発し時に致死的であるが小児では稀である.今回,鼠径部化膿性リンパ節炎から急速にフルニエ壊疽に進展し,緊急デブリードメントにて救命しえた,基礎疾患のない乳児例を経験した.
 症例:2か月男児.左鼠径部膨隆に母が気づき前医受診.鼠径ヘルニア嵌頓が疑われ徒手整復を試みられるも整復できず当院へ転院された.エコー上鼠径ヘルニアは否定的で造影CT所見より鼠径部化膿性リンパ節炎と診断し,抗菌薬静注及び左鼠径部外ドレナージを施行した.しかし解熱は得られず局所所見も急速に悪化したため,発症後24時間で緊急デブリードメント術を行った.術中所見では広範囲の皮下組織の壊死を認めたが筋膜には至っていなかった.外ドレナージの創部及び術中壊死組織培養からはMSSAが検出された.術後は速やかに解熱し,創部洗浄及び抗生剤静注にて創部も著明に改善した.免疫能の精査では異常は認められなかった.創部陰圧閉鎖療法を行い第39病日に自宅退院された.
 小児のフルニエ壊疽は稀で外傷,割礼等の誘因や免疫不全等基礎疾患を有する例が多く生後3か月未満では死亡率9〜30%である.本症例では,鼠径部化膿性リンパ節炎から急速にフルニエ壊疽に進展したが,迅速な処置にて救命でき,良好な転帰を得た.鼠径部化膿性リンパ節炎は基礎疾患のない乳児においてフルニエ壊疽も念頭に置いた対応が必要である.


【論策】
■題名
救急外来の軽症小児患者における養育者の不安要因
■著者
小倉医療センター小児科
中尾 槙吾  中嶋 敏紀  山口 賢一郎  酒見 好弘  渡辺 恭子  山下 博徳

■キーワード
不安要因, 救急外来, 小児, 養育者
■要旨
 救急外来を受診する小児患者の養育者は,児の症状が軽症であっても病状に強い不安を感じていることが多い.適切な情報提供で養育者の不安を軽減することは小児初期救急医療の負担軽減に繋がると思われるが,軽症患者の不安要因について検討した報告は少ない.2016年9月から2017年8月の1年間に当院救急外来を時間外受診した児8,404例のうち,救急搬送例,他院からの紹介例,研究同意の得られない例を除外した7,301例を対象とし調査研究を行った.児の養育者へ問診票に付随するアンケート用紙を配布し,医師による診察後に回収した.診察医が軽症(全身状態良好で緊急性なし)と判断した児において不安有無で2群に分け,養育者の不安要因を調査した.対象のうち約半数の3,613例が軽症と判断され,そのうち不安有群は3,342例(92%),不安無群は271例(8%)であった.多変量解析にて発熱,嘔吐が不安リスクを高める症状であり,同胞ありは不安リスクを下げる因子であった.不安有群は,不安無群と比較し他病院への受診歴や処方歴のある児が多かったが,電話相談の利用率は1割程度であった.救急受診が必要なタイミングを養育者が逸することなく,児の重症度を的確に判断でき,軽症の際は不安が軽減されるような情報ツールの提供が望まれる.


【論策】
■題名
インフォームド・アセントと中学生の自己決定に関する小児専門病院医師の意識調査
■著者
神奈川県立こども医療センター倫理コンサルテーションチーム1),同 神経内科2),同 重症心身障害児施設3),同 小児がん相談支援室4),同 児童思春期精神科5),同 集中治療科6)
辻 恵1)2)3)  竹之内 直子1)4)  庄 紀子1)5)  永渕 弘之1)6)

■キーワード
自己決定, 中学生, インフォームド・アセント, 意識調査, 医師
■要旨
 【緒言】当センターにて2018年に「中学生の初診患者を対象とした病名・病状告知と治療の自己決定に関する意識調査」を実施した結果,15歳以下でも病名告知や病状説明を希望している割合が高く,自己の健康問題に関心があることが明らかとなった.本調査では小児専門病院である当センターの医師に対し,日常臨床における中学生への告知や治療の自己決定支援の現状とインフォームド・アセントの認知度,中学生患者への意思決定に関する問診票の必要性について問うことを目的とした.【対象と方法】当センターに勤務する,非常勤医師を含む全医師・歯科医師が登録されたメーリングリストを利用して自記式質問票にて調査した.【結果】対象162名のうち50.6%から有効回答を得た.51.2%の医師がインフォームド・アセントの意味を知っていると回答し,認知度は精神科医師が最も高く,内科系,外科系医師の順に低下した.子どもと親の意向が異なった場合76.8%が「子どもの意思を重要視するべき」と回答したが,実際に重要視しているのは「親の意見」であると76.8%が回答した.中学生を対象にした「病名・病状告知の希望や治療の自己決定に関する希望を問う問診票」の導入に72.0%が賛成した.【考察】小児病院においてインフォームド・アセントや意思決定支援体制が定着しているとはいえず,医療者のさらなる努力が必要である.問診票等を用いて事前に中学生の意向を確認することが意思決定支援に有用である可能性がある.

バックナンバーに戻る