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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:22.6.16)
第126巻 第6号/令和4年6月1日
Vol.126, No.6, June 2022
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原 著 |
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古賀 大貴,他 901 |
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山田 克彦,他 909 |
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大津 生利衣,他 917 |
症例報告 |
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森山 剣光,他 922 |
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山村 悠,他 928 |
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由木 晴香,他 934 |
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余湖 直紀,他 942 |
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堀川 翔伍,他 946 |
論 策 |
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高清水 奈央,他 952 |
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地方会抄録(佐賀・長崎・中部・東海・京都・香川・山形・福岡・岩手・群馬・広島)
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959 |
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999 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻4月掲載分目次
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1004 |
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1008 |
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【原著】
■題名
在宅医療ケアを必要とする先天性心疾患患者の現状
■著者
地域医療推進機構九州病院小児科 古賀 大貴 宗内 淳 渡邉 まみ江 杉谷 雄一郎 川口 直樹 松岡 良平 岩屋 悠生 足立 俊一 高橋 保彦
■キーワード
先天性心疾患, 在宅医療ケア, Body Mass Index, 血漿ナトリウム利尿ペプチド, 心不全重症度
■要旨
在宅医療ケアを必要とする先天性心疾患(CHD)症例が増加しつつあるが,急変・死亡リスクを抱える症例もある.2011〜2018年に当院で在宅医療ケア(在宅酸素・人工呼吸管理・気管切開・経管栄養・訪問看護・寝たきり処置)のうち2項目以上を要したCHD児57例を対象とし,臨床像を後方視的に検討した.在宅医療ケア導入時年齢は中央値8(0〜188)か月.観察期間66(16〜405)か月において死亡7例,予定外入院は平均1.0(0〜6.2)回/年.生存群と死亡群の2群間比較では体容量指数(BMI)[14.5(9.2〜21.7)vs. 11.9(8.2〜15.3)kg/cm2,P=0.022],血漿ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値[30.8(4.0〜682.7)vs. 227.0(16.5〜883.6)pg/dL,P=0.014]および心疾患の機能的重症度(P=0.038)に有意差があった.死亡および入院回数を目的変数としたロジスティクス回帰分析ではいずれも有意なリスク因子とはならなかった.在宅医療ケアを要するCHD児のリスク評価の上でBMI,BNP値,心疾患の機能的重症度は重要な指標になる可能性がある.
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【原著】
■題名
小児肥満症の行動療法へのコーチングの導入
■著者
佐世保中央病院小児科 山田 克彦 犬塚 幹
■キーワード
小児肥満症, 行動療法, コーチング
■要旨
小児肥満症の行動療法にコーチングを取り入れる事が肥満度と通院継続に与える影響を分析した.2010年8月から2016年12月までに当科を受診した34例(年齢中央値10歳,男女比1.6)を対象に,従来の指導に加えて患児や保護者が自主的に発言できるコーチングの場を提供した.初診から3年間を治療・観察期間とし,診療録から対象者の背景,肥満度,通院期間,環境因子と面接記録についてデータを取得した.初期肥満度に比べて最終肥満度は有意に低下した(p<0.0001).通院継続率は3か月後100%,6か月後88%,1年後68%,2年後38%,3年後15%で,通院期間と肥満度低下の間に有意な順相関が認められた(Rs=0.352,p=0.0447).環境因子と肥満度変化の間に統計学的に有意な関連は検出できなかった.不登校例は症例数が少なく,統計的な検定をおこなわなかったが,不登校症例の通院期間の中央値(6か月)は登校例(同22か月)よりも短かった.行動変容に向けた患児の自発的発言が記録された次回の肥満度は低下幅が大きく(p=0.0010),患児の自主性を損なう言動が記録された次回の肥満度は低下幅が小さく(p=0.0111),しばしば通院中断の契機となった.コーチングを用いた小児肥満症の行動療法は,通院の脱落が少なく中期的な肥満度低下に有効だった可能性がある.
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【原著】
■題名
小児炎症性腸疾患におけるチオプリン製剤による薬剤性膵炎の臨床像
■著者
久留米大学医学部小児科学講座 大津 生利衣 水落 建輝 安田 亮輔 加藤 健 白濱 裕子 坂口 廣高 山下 裕史朗
■キーワード
炎症性腸疾患, 小児, チオプリン, 膵炎
■要旨
【背景】炎症性腸疾患(IBD)の寛解維持薬として使用されるチオプリン製剤は,用量依存性の副作用として血球減少,脱毛,肝障害などがある.NUDT15遺伝子多型検査が保険適用となり血球減少や脱毛の発症リスクを事前に予測することが可能となったが,用量非依存性の副作用である発熱,発疹,関節痛,膵炎の問題は残っている.本研究の目的は,小児IBDにおけるチオプリンの用量非依存性副作用の臨床像を明らかにすることである.【方法】対象は2011〜20年の10年間に久留米大学病院小児科で潰瘍性大腸炎(UC)もしくはCrohn病(CD)と新規診断した16歳未満の症例.チオプリンの内服歴があり開始後6か月以上観察できた症例を診療録から後方視的に検討した.【結果】対象は56例(UC 35例,CD 21例)で全例がアザチオプリンであった.薬剤性膵炎を起こしたのは4例(7%)で,UC 3例(9%),CD 1例(5%)であった.年齢は中央値8.5歳で,全例で腹痛,2例で発熱を認めた.全例が急性膵炎の診断基準を満たしCRP上昇(中央値10.6 mg/dL)を伴っていた.発症までの期間は2〜4週間(中央値21.5日)で,発症時のアザチオプリンの用量は中央値0.9 mg/kg/日であった.【結論】当院の小児IBDにおけるチオプリン製剤による薬剤性膵炎の発症率は7%,発症時期は開始後2〜4週で,CRP上昇や発熱を伴っていた.
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【症例報告】
■題名
造血細胞移植12年後の感染症により増悪したアントラサイクリン誘発性心機能障害
■著者
茨城県立こども病院小児血液腫瘍科1),同 小児総合診療科2),同 小児循環器科3),水戸済生会総合病院循環器内科4),東京医科歯科大学医学部附属病院小児科5),筑波大学付属病院小児科6) 森山 剣光1)5) 吉見 愛1) 加藤 啓輔1) 小林 千恵2)6) 塩野 淳子3) 村上 卓3)6) 小池 和俊1) 堀米 仁志3)6) 千葉 義郎4) 村田 実4) 土田 昌宏1)
■キーワード
アントラサイクリン誘発性心機能障害, 晩期合併症, 多臓器不全, 集中治療, 心臓再同期療法
■要旨
小児がん治療の晩期合併症であるアントラサイクリン誘発性心機能障害は累積総投与量に応じて発症の危険性が増加し慢性的に進行する.我々は感染症を契機に心不全が悪化した症例を経験した.症例は29歳女性である.13歳時に当時リンパ腫白血病症候群と診断され,成熟B細胞型の化学療法で寛解となった.診断22か月後に骨髄に再発した.その際に初めてB前駆細胞型急性リンパ性白血病の再発と診断された.16歳時の第2再発の際に非寛解のまま,総計12グレイの全身放射線照射を含む前処置及び自家骨髄移植と同種骨髄移植からなる計画的複数回移植を受け,寛解を維持していた.アントラサイクリン系薬剤の総投与量はドキソルビシン換算で516 mg/m2であった.最終移植から12年後にインフルエンザ菌による気管支肺炎で当院に入院し,入院2日後にショックを呈し多臓器不全となった.敗血症性ショックの診断基準は満たすものの,アントラサイクリン誘発性心機能障害が感染症を契機に増悪したことが主要な要因であると考えられた.人工呼吸管理,腹膜透析を含む集中治療を要し,回復後も慢性的な心機能低下が続き,腹膜透析から離脱できなかった.そのため心室再同期療法を要した.アントラサイクリン誘発性心機能障害については長期間の観察が必要である.
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【症例報告】
■題名
アシクロビル投与による重度の薬剤性腎障害を認めた小児
■著者
武蔵野赤十字病院小児科 山村 悠 岡田 麻理 木島 英美 一木 洋祐 中谷 久恵 横山 はるな 今井 雅子 鈴木 奈都子 長澤 正之 大柴 晃洋
■キーワード
薬剤性腎障害, 尿細管間質性腎炎, アシクロビル, ステロイド
■要旨
アシクロビルは日常診療においてしばしば用いる薬剤であり,副作用として腎機能障害が知られている.小児において重篤な腎機能障害が生じることは高齢者に比べると稀である.今回私たちは意識障害で来院した9歳女児に対しアシクロビルの投与を行ったところ,腹痛,乾性咳嗽,発熱,浮腫,皮疹を認め,急性腎障害に至った症例を経験した.アシクロビルによる腎機能障害の機序としては尿細管での結晶析出による腎障害が広く知られているが,急性尿細管間質性腎炎の発症にも留意する必要があり,本症例でも合併が疑われた.薬剤性間質性腎炎の治療としてステロイドの使用は論争中であるものの,本症例では過去の報告を参考に長期的な腎予後改善を期待しメチルプレドニゾロン15 mg/kg/回を用いたステロイドパルス療法を施行した.小児においても,腎機能障害を生じる可能性があることを念頭におきアシクロビルの投与を行い,腹痛や発熱が出現した場合には速やかに血液検査や尿検査を行い確認することが重要と考える.
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【症例報告】
■題名
髄液の16SリボソームRNA遺伝子解析により原因菌の推定が可能であった脳膿瘍の幼児
■著者
松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科1),千葉県衛生研究所細菌研究室2) 由木 晴香1) 小橋 孝介1) 菊池 俊2) 堀本 佳彦1) 篠塚 俊介1) 岡田 広1) 鈴木 一広1) 森 雅人1) 平本 龍吾1)
■キーワード
脳膿瘍, 齲歯, Fusobacterium nucleatum, リボソームRNA
■要旨
直接穿刺が困難な脳膿瘍で,16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子解析により髄液検体からFusobacterium nucleatumが検出され診断に至った幼児例を経験した.
生来健康な1歳8か月男児.1歳健診でエナメル質形成不全症を指摘され,進行した齲歯があったが,歯科治療はされていなかった.1週間持続する発熱と嘔吐が出現し,前医入院し,細菌性髄膜炎の診断で抗菌薬加療が開始された.2日後から左外転神経麻痺と斜頸が出現し,頭部CT検査で左線条体に腫瘤性病変を認めたため当院に転院した.頭部造影MRI検査で腫瘤性病変はリング状に増強された.髄液検査で細胞数上昇と糖低下を認めた.血液培養・髄液培養は陰性であった.脳膿瘍の可能性が高いと考えたが,深部の病変であり外科的処置は行わず,抗菌薬加療を継続した.第16病日に解熱し,腫瘤性病変は経時的に縮小し,計8週間の抗菌薬投与を行った.治療終了後,入院時の髄液検体の16S rRNA遺伝子解析によりFusobacterium nucleatumが検出され,脳膿瘍の診断に至った.同菌は口腔内常在菌であり,エナメル質形成不全症に伴う齲歯からの血行性感染と考えられた.
膿瘍の直接検体が採取できない場合,髄液の16S rRNA遺伝子解析は原因菌の推定に有用と考えられた.
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【症例報告】
■題名
COVID-19ワクチン接種後の心筋心膜炎
■著者
熊本赤十字病院小児科1),熊本地域医療センター小児科2) 余湖 直紀1) 野中 俊彦1) 本田 啓1) 那須 望美2) 武藤 雄一郎1) 平井 克樹1)
■キーワード
小児, COVID-19, SARS-CoV-2, 心筋炎, 心膜炎
■要旨
コロナウイルス感染症2019に対するmRNAワクチン接種が進み,心筋炎・心膜炎の報告が増えている.若年男性に多いとされているが,国内で小児における具体的な報告はない.我々は12歳男児が2回目のComirnaty®接種後に心筋心膜炎を発症した症例を経験した.接種後2日目に胸部違和感が出現,心電図で広範囲のST上昇を認め前医入院となった.3日目に強い胸痛が出現,トロポニン値が上昇し心筋炎・心膜炎の疑いで転院となった.検査所見から心筋心膜炎と診断したが入院後は胸痛なく,症状は改善した.心電図所見の改善を確認した接種後7日目に退院とした.mRNAワクチン接種後の胸痛のある患者は,心筋炎・心膜炎を考慮した対応が必要である.
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【症例報告】
■題名
Crohn病の経過中に脳静脈洞血栓症を発症した小児例
■著者
北九州市立八幡病院小児救急・小児総合医療センター1),同 小児血液・腫瘍内科2) 堀川 翔伍1) 稲垣 二郎2) 小野 友輔1) 佐藤 哲司2) 高野 健一1) 神薗 淳司1)2) 天本 正乃1)
■キーワード
小児, Crohn病, 炎症性腸疾患, 脳静脈洞血栓症
■要旨
炎症性腸疾患(IBD)では静脈血栓塞栓症の発症リスクが高いことが知られているが,下肢深部静脈血栓症,肺塞栓症,門脈及び腸間膜静脈血栓症での発症が多く,脳静脈洞血栓症を発症することは稀である.今回,Crohn病(CD)の経過中に脳静脈洞血栓症を発症した小児例を経験したので報告する.腹痛や慢性下痢,著明な体重減少を主訴に当科を受診した14歳男子が精査の結果,小腸・大腸型のCDと診断された.プレドニゾロン,メサラジンの内服と成分栄養剤による経腸栄養療法を開始し,症状は順調に改善し寛解となった.28病日より拍動性の頭痛を訴え,頭部CT,MRIで右横静脈洞からS状静脈洞に静脈血栓症を示唆する所見を認め,脳静脈洞血栓症と診断した.直ちにヘパリン持続投与を開始し,7日後からリバーロキサバンの経口投与を開始した.抗凝固療法開始後,頭痛は徐々に消失し,1か月後のMRIでは右横静脈洞からS状静脈洞の再開通を確認した.その後リバーロキサバンを継続し,神経学的後遺症なく経過している.小児CDにおいても脳静脈洞血栓症を発症する可能性があり,早期の診断と治療介入が重要である.
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【論策】
■題名
障害児通所支援事業所の実態調査
■著者
岩手医科大学医学部障がい児者医療学講座 高清水 奈央 浅見 麻耶 亀井 淳
■キーワード
児童発達支援, 放課後等デイサービス, 保育所等訪問支援, 神経発達症児, 医療的ケア児
■要旨
岩手県内の障害児通所支援事業所における療育の現状をアンケートし,結果を医療・療育機関・行政で共有することで,障害児支援の向上を目指すことを目的とした.2020年10月時点で障害児通所支援事業所は146か所あり,120事業所(回収率83.6%)から回答が得られた.児童発達支援は50事業所,放課後等デイサービスは105事業所,保育所等訪問は14事業所,居宅訪問は4事業所で行われていた(重複あり).神経発達症児は115事業所(95.8%),医療的ケア児は41事業所(34.2%)で受け入れられていた.支援計画書作成のためのアセスメント方法として,保護者からの情報や行動観察が多く,発達検査や知能検査などの客観的評価の利用は48.3%と半数以下であった.支援における課題として,スタッフの知識・経験,専門的指導ができるスタッフ数,専門性を学ぶ機会の不足,看護師不足のために医療的ケア児の受け入れ数が増やせないことや,運営費や給与・待遇,看護師確保のための資金不足があげられた.支援を充実させ,質を高め維持するために,専門的知識に関する講習,事業所間の経験の共有を自治体が主導的立場で行う必要があり,支援を必要とする児が地域で包括的に支援を受けられるように多職種が連携し,事業所を支えていくシステム構築が求められる.
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