gakkaizashi


日本小児科学会雑誌 目次

(登録:22.5.17)

第126巻 第5号/令和4年5月1日
Vol.126, No.5, May 2022

バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

日本新生児成育医学会推薦総説

新生児医療体制と医師勤務状況の現状と今後

高橋 尚人  761
日本子ども虐待医学会推薦総説

子ども虐待対応のための基礎知識と医療の役割

古瀬 優太  769
原  著

小児専門医療機関におけるEnterobacter属菌菌血症の臨床像

青木 萌子,他  783
症例報告
1.

胎児心エコーを契機に出生後早期に診断加療できた先天性孤立性左肺動脈近位部欠損症

熊谷 健,他  791
2.

トークンエコノミー法による行動療法を行った作為症/虚偽性障害

西村 洋一,他  796
3.

小児COVID-19関連多系統炎症性症候群の典型例

柴田 雄介,他  802
4.

遷延する発疹と発熱を呈し血液からBrucella canisが分離されたブルセラ症

宮原 雅澄,他  808
5.

膿胸に対するウロキナーゼの胸腔内投与による線維素溶解療法

本間 丈博,他  814
6.

頻回の噯気を主訴とするsupragastric belchingの小児

長柄 俊佑,他  820
短  報
1.

コロナウイルス感染症2019流行下における保育園児へのインフルエンザワクチン集団接種

美里 周吾,他  825
2.

SARS-CoV-2抗原検査偽陽性の小児患者

坂本 慧,他  829

地方会抄録(埼玉・福島・宮城・静岡・愛媛・栃木・島根)

  833
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 112 棒つきキャンディの誤飲

  860

Follow-up 報告 No. 8

  864
日本小児科学会小児医療提供体制委員会報告

小児医療提供体制調査報告2019/2020(小児医療提供体制調査2019と地域振興小児科B調査2020の総括)

  868
日本小児科学会小児救急委員会主催

小児救急市民公開フォーラム(旭川)開催報告

  885
日本小児医療保健協議会栄養委員会主催

「第16回子どもの食育を考えるフォーラム」報告

  886
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方─私の場合41

なりゆきでも次の船に乗れば道は拓ける

  887

日本小児科学会理事会議事要録

  889

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻3月掲載分目次

  894
公益財団法人小児医学研究振興財団

令和3年度 研究助成事業・海外留学フェローシップ優秀論文アワード 選考結果

  897

雑報

  899

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 390

  900


【原著】
■題名
小児専門医療機関におけるEnterobacter属菌菌血症の臨床像
■著者
兵庫県立こども病院血液・腫瘍内科1),同 感染症内科2)
青木 萌子1)  岸本 健治1)  大竹 正悟2)  中村 さやか1)  長谷川 大一郎1)  笠井 正志2)  小阪 嘉之1)

■キーワード
Enterobacter属, 菌血症, 抗菌薬, 耐性菌
■要旨
 小児専門医療機関におけるEnterobacter属菌菌血症に対する症例集積研究を行った.2006年1月から2020年12月に当院で入院加療を受けた患者を対象とした.22例がEnterobacter属菌菌血症と診断され,菌種はEnterobacter cloacaeE. cloacae)が17例(77%),Enterobacter aerogenesE. aerogenes)が5例(23%)であった.患者年齢中央値は2(四分位範囲0〜7)歳で,0歳児が9例(41%)と最も多かった.全患者に基礎疾患があり,血液疾患,消化器疾患がそれぞれ7例(32%)あった.セフォタキシムへの感性割合は73%で,セフェピムへの感性割合は91%であった.菌血症発症後28日以内の全死亡割合は14%(3例/22例)であった.原因菌種による臨床像の差異があり,発症時年齢中央値はE. cloacae群がE. aerogenes群に比して高かった(3(四分位範囲1〜10)歳vs. 0(同0〜0)歳,p=0.016).またE. cloacae群ではE. aerogenes群に比して血液疾患または固形腫瘍を基礎疾患にもつ患者が多かった(71% vs. 0%,p=0.010).Enterobacter属菌菌血症では患者背景により原因菌が異なることが示唆された.


【症例報告】
■題名
胎児心エコーを契機に出生後早期に診断加療できた先天性孤立性左肺動脈近位部欠損症
■著者
和歌山県立医科大学附属病院総合周産期母子医療センターNICU1),和歌山県立医科大学第1外科2)
熊谷 健1)  垣本 信幸1)  佐藤 匡1)  打田 俊司2)  鈴木 啓之1)

■キーワード
肺動脈近位部欠損, 右大動脈弓, 両側動脈管, 新生児
■要旨
 胎児心エコーで右大動脈弓と診断したために実施した出生後の精査にて,右動脈管は大動脈から右肺動脈に接続し,左肺動脈は主肺動脈とは接続せず左腕頭動脈から起始する左動脈管とのみ接続していた.以上から先天性孤立性左肺動脈近位部欠損症と診断した女児例を経験した.診断後すぐにlipo-PGE1持続投与を開始し,動脈管の開存を維持しながら日齢11に左鎖骨下動脈―左肺動脈間のmodified BTシャント術を施行,生後11か月に自己心膜を用いた左肺動脈近位部の再建を行うことができた.現在7歳になるが,左肺血流は良好に保たれており,運動制限なく小学校に通学している.
 孤立性肺動脈欠損症は非常にまれな疾患ではあるが,診断治療が遅れると成人期に喀血や労作性呼吸障害で発見されることがある.
 新生児に関わる医師は本疾患の存在を認識し,胎児心エコーで肺動脈分岐が確認できない場合や,右大動脈弓で出生後チアノーゼやSpO2の上下肢差,呼吸障害を合併する場合は,本疾患を念頭に出生後に小児循環器科医師と精査する必要がある.


【症例報告】
■題名
トークンエコノミー法による行動療法を行った作為症/虚偽性障害
■著者
北斗・北斗病院小児科こども総合センター1),同 臨床心理科2),帯広厚生病院小児科3),ひかり眼科4)
西村 洋一1)  人見 会美子1)  人見 知洋1)  大倉 雄一2)  植竹 公明3)  長南 兼太郎4)

■キーワード
作為症, 虚偽性障害, ミュンヒハウゼン症候群, トークンエコノミー法, 行動療法
■要旨
 作為症/虚偽性障害(以下作為症)とは身体的,心理的な症状が,実はそれに苦しんでいるはずの患者自身により,無意識・意図的に作り出されている状況を示す疾患概念であり,外的誘因がない点で詐病とは区別される.
 小児の作為症の症例報告は少なく,その外的誘因がないこと,多彩な身体・神経所見を呈するなどの要因が重なり,診断が困難となり,過剰な検査・治療がなされることがあり,また診断後も治療に難渋することが多い.
 今回我々は,視力低下,色覚異常を主訴とし,母にペアレントトレーニングを行い,トークンエコノミー法による行動療法を行い軽快した,作為症の1小児例を経験したので報告する.


【症例報告】
■題名
小児COVID-19関連多系統炎症性症候群の典型例
■著者
春日井市民病院小児科
柴田 雄介  田上 和憲  加藤 俊輔  前田 徹  小林 貴江  足達 武憲  河邊 太加志

■キーワード
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2, 小児COVID-19関連多系統炎症性症候群, 川崎病様症状, 心不全, 人免疫グロブリン療法
■要旨
 小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)の12歳 日本人女児を経験した.患児は入院43日前に濃厚接触者として施行された重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)RT-PCRの検査が陽性であったが,無症状だった.入院日,5日間持続する発熱,咳,下痢そして両側眼球結膜の充血が認められ,入院となった.血液検査では,リンパ球数と血小板数の減少,炎症反応の上昇と凝固線溶系の異常が認められた.胸部画像検査では心拡大が見られたが,肺野は軽微な肺炎像のみであった.COVID-19罹患後の川崎病様症状ならびに急性消化器症状からMIS-C/PIMSを疑い,診断基準を参照し,確定診断した.左心不全を併発していたが,免疫グロブリン2 g/kgの静注療法に反応し,心機能低下及び冠動脈病変を残さずに経過している.
 MIS-C/PIMSは本邦ではまだ少ないが,疫学的にはCOVID-19流行に後れて発症数が増加すると報告されており,今後本邦でも患者数が増加する可能性がある.川崎病様症状は重要な所見ではあるが,早期診断,早期治療のためには非特異的症状から本疾患を想起できることが望まれる.小児の診療に関わる全ての医療者はMIS-C/PIMSについて精通することが重要である.


【症例報告】
■題名
遷延する発疹と発熱を呈し血液からBrucella canisが分離されたブルセラ症
■著者
岡波総合病院小児科1),国立感染症研究所獣医科学部2)
宮原 雅澄1)  大崎 慶子1)  今岡 浩一2)

■キーワード
Brucella canis, 小児, 人獣共通感染症, 不明熱, イヌ
■要旨
 Brucella canisB.canis)はイヌを宿主とする人獣共通感染症の病原体である.ヒトのB. canis感染症は報告が稀であり臨床医の認知度は低い.感染しても発症しないことも多く,発症しても非特異的な感冒様症状を主とし,特徴的な理学的所見もないことから,熱源として鑑別診断に挙げることが難しい.今回我々は発疹,発熱で発症したB. canis感染症の小児を経験した.
 症例は8歳男児で,体幹に出現した発疹とそれに続く発熱を主訴に,熱源不明として,第19病日に当科に紹介された.体幹及び大腿部に斑状で硬結を伴った結節性紅斑様発疹がみられたが,他の理学的所見に異常は認めなかった.血液検査上,炎症所見が乏しく,何らかのウイルス感染症と考えたが,血液培養が陽性となり,自宅がブリーダーをしていたため,イヌ関連の人獣共通感染症を疑った.その後B. canis抗体が陽性となり,血液培養で分離された菌が特異的ポリメラーゼ連鎖反応法によりB. canisと同定されたことで確定診断に至った.診断後ただちにドキシサイクリン及びリファンピシンによる抗菌薬治療を行ったところ順調に改善がみられた.
 日本におけるブルセラ症の現状を報告するとともに,本例を通じて不明熱の原因としても重要なB. canis感染症への認識を高めたい.


【症例報告】
■題名
膿胸に対するウロキナーゼの胸腔内投与による線維素溶解療法
■著者
多摩北部医療センター小児科1),相模原療育園2)
本間 丈博1)  武田 憲子1)2)  斎藤 雄弥1)  大澤 由記子1)  小保内 俊雅1)

■キーワード
膿胸, 線維素溶解療法, ウロキナーゼ
■要旨
 小児では膿胸の治療として,抗菌薬やドレナージで軽快しない場合,外科的治療として胸腔鏡下膿胸腔掻爬術または開胸膿胸腔?爬術が選択肢の一つである.一方,外科的侵襲を回避し,それと同等の治療成績をもつ治療として,胸腔ドレーンチューブから胸腔内へ線維素溶解薬を投与する内科的治療を,国内外のガイドラインともに推奨している.しかし,本邦のガイドラインでは薬剤の選択,治療期間などの詳細な記述はない.海外のガイドラインに採用されている線維素溶解療法薬のうち,本邦ではウロキナーゼとアルテプラーゼが使用でき,治療成績に差はなく,合併症もともに少ないものの,双方とも保険適用外である.今回,膿胸に対して胸腔ドレナージとウロキナーゼによる線維素溶解療法が著効した1例を報告する.線維素溶解療法は有益と思われ,本症例を膿胸に対する同療法が本邦で確立するための一助とされたい.


【症例報告】
■題名
頻回の噯気を主訴とするsupragastric belchingの小児
■著者
高山赤十字病院小児科1),信州大学医学部小児医学教室2),久留米大学医学部外科学講座小児外科部門3)
長柄 俊佑1)  反中 絵美1)  臼井 新治1)  川尻 美和1)  佐渡 智光2)  倉沢 伸吾2)  中山 佳子2)  升井 大介3)  山岸 篤至1)

■キーワード
supragastric belching, 噯気, 認知行動療法, 食道インピーダンスpHモニタリング検査
■要旨
 症例は15歳女子である.半年前より頻回の噯気を時々認めていた.睡眠中以外は噯気が常に持続し,噯気が多い時は10秒毎に噯気を認め飲水不良となりアセトン血性嘔吐症を呈した.腹部膨満なく,腹部X線検査ではガス貯留は軽度であり,臨床経過と食道インピーダンスpHモニタリング検査よりsupragastric belchingと診断した.認知行動療法にて噯気頻度が減少した.
 海外では小児を含め成人を中心にsupragastric belchingの報告があるが,本邦では小児の報告はない.今まで報告例がなかった理由として,supragastric belchingの疾患認知度が低い事が挙げられる.
 Supragastric belchingは睡眠時,物事に集中している時に噯気が消失する特徴があり,心理的な要因が頻回の噯気に関与している事が示唆されている.今後さらに食道インピーダンスpHモニタリング検査の臨床導入が加速し,疾患認知度が上がれば,心理的なストレスが増える思春期でのsupragastric belchingの同定が進む可能性がある.


【短報】
■題名
コロナウイルス感染症2019流行下における保育園児へのインフルエンザワクチン集団接種
■著者
亀田総合病院小児科1),地域感染症疫学・予防センター2),亀田クリニック看護室外来3)
美里 周吾1)  伊東 宏明1)  古谷 直子2)  石井 麻由美3)

■キーワード
集団接種, 子育て支援, 接種率向上, インフルエンザワクチン, コロナウイルス感染症2019
■要旨
 コロナウイルス感染症2019(COVID-19)流行が続く状況において,個別接種による保護者負担軽減と医療機関内での3密状態回避を目的に,当院関連保育施設で保護者が同席しない保育中にインフルエンザワクチン集団接種を行った.保護者アンケート調査の解析から,保護者が当院職員/医療者か否かに関わらず,集団接種への利便性・安心感が示された.集団接種は保護者の負担軽減となり,また予防接種率が高くなる可能性が示唆された.これらの結果から,今後他の保育施設への拡大が期待できる.また,本研究がCOVID-19や他の新興感染症流行状況を鑑みた保育中のインフルエンザワクチン集団接種検討の一助となれば幸いである.


【短報】
■題名
SARS-CoV-2抗原検査偽陽性の小児患者
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部1),同 教育研修センター2),同 感染症科3),同 高度先進医療研究室4)
坂本 慧1)2)  飯島 弘之1)  船木 孝則3)  庄司 健介3)  今留 謙一4)  窪田 満1)  石黒 精2)

■キーワード
コロナウイルス感染症2019, COVID-19, SARS-CoV-2, PCR, 抗原検査
■要旨
 本邦のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)のガイドラインによれば,抗原検査は特異度が高く陽性であればCOVID-19の診断確定と判断して良い.今回われわれは,過去1年に当院を受診した18歳未満のCOVID-19患者247例の臨床記録を用いて,他のCOVID-19患者との接触歴がない抗原検査陽性例について後方視的研究を行った.該当した9例中,polymerase chain reaction(PCR)検査を実施された6例は全例PCR陰性であり,総合的判断でCOVID-19の診断は変更された.COVID-19接触歴のない小児の抗原検査陽性例における,PCR検査追加の必要性が示唆された.

バックナンバーに戻る