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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:22.1.19)
第126巻 第1号/令和4年1月1日
Vol.126, No.1, January 2022
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第124回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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加藤 元博 1 |
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野澤 正寛 6 |
日本新生児成育医学会推薦総説 |
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難波 文彦 15 |
日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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新規疾患の新生児マススクリーニングに関する海外と我が国の現状と課題
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但馬 剛,他 25 |
総 説 |
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本多 貴実子,他 35 |
原 著 |
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佐々木 亜希子,他 46 |
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今井 健太,他 53 |
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齋藤 康,他 64 |
症例報告 |
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磯部 あいこ,他 71 |
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坂口 真弓,他 76 |
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高尾 浩之,他 83 |
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谷河 翠,他 89 |
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滝口 僚也,他 95 |
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三浦 義一,他 99 |
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105 |
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107 |
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116 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報)類似事例 |
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パンの誤嚥による窒息(No. 49 ブドウの誤嚥による窒息の類似事例5)
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117 |
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新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言
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120 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の現状調査についての補足
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122 |
日本小児科学会社会保険委員会・情報管理委員会報告 |
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新型コロナウイルス感染症に伴う小児医療機関の保険診療上の課題に関する調査二次調査報告
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123 |
日本小児科学会災害対策委員会報告 |
第124回日本小児科学会学術集会 |
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134 |
日本小児科学会小児医療委員会報告 |
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140 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方―私の場合39 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻12号目次
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【総説】
■題名
本邦小児を対象とした医療経済評価の概要と傾向
■著者
東京大学医学系研究科公共健康医学専攻保健医療科学講座1),国立保健医療科学院保健医療経済評価研究センター2) 本多 貴実子1) 福田 敬1)2)
■キーワード
医療経済評価, 費用効果分析, 費用効用分析, Quality-adjusted life year, 小児
■要旨
医療経済評価は多くの国で医療資源の適正配分のために活用されており,日本でも2019年から医薬品等の価格制度に導入された.今後研究手法や政策応用についての議論が進むと思われるが,小児においてその機運が高まっているとは言えない.本研究の目的は,国内の小児領域において医療経済評価がどのように行われてきたかを概観し,今後の実施,活用における課題を明らかにすることである.PubMed,医中誌Web,Pediatric Economic Database Evaluation database,National Health Service Economic Evaluation Databaseを使用し,日本の保健医療制度下で18歳以下を対象に行われた完全な経済評価を検索,検討項目を抽出して概要をまとめた.対象となった文献は56編で,うち半数以上はワクチンに関する評価であった.アウトカムを質調整生存年とする費用効用分析が41.1%を占めたが,このうち選好に基づく尺度によって日本人小児のQuality of life値を実際に測定した研究はなかった.国内では小児医療経済評価はまだ少なく,疾患カテゴリーにも偏りが見られた.方法論的課題も多いが,子供たちの健康を守るための医療資源を確実に確保するためにも医療経済評価を積極的に実施し,小児医療の価値を社会に示していく必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
胆汁うっ滞性疾患による二次性ビタミンK欠乏性頭蓋内出血の臨床的特徴
■著者
国立成育医療研究センター神経内科1),東京都立小児総合医療センター総合診療科2),国立成育医療研究センター教育研修センター3),同 血液内科4) 佐々木 亜希子1) 山本 啓央2) 早川 格1) 幡谷 浩史2) 石黒 精3)4) 阿部 裕一1)
■キーワード
乳児ビタミンK欠乏性出血, 頭蓋内出血, 胆道閉鎖症, 胆汁うっ滞性疾患
■要旨
乳児ビタミンK欠乏性出血症(VKDB)の予防方法は時代,国,地域によって異なる.わが国では1983年以来すべての新生児へのビタミンK2製剤(VK)の経口投与が推奨され,頭蓋内出血を含むVKDBが減少するという,大きな成果を挙げてきた.一方で,胆汁うっ滞性疾患を有する患者ではVKの経口投与を行っていたにもかかわらず頭蓋内出血をきたす症例が存在し,近年の報告ではVKDB全体に占める胆汁うっ滞性疾患を有する患者の割合が上昇している.しかし,VKDB発症前に胆汁うっ滞性疾患が診断可能であるかは十分検討されていない.
今回,2010年から2020年までの間に頭蓋内出血で発症し小児専門病院2施設で診療したVKDBを後方視的に集積した.該当症例は7例で,全例に胆汁うっ滞性疾患を認めた.発症日齢,初発症状,頭部CT所見,神経学的予後および生命予後は既報と変わりなかった.7例中4例VK経口投与(うち3例は3回法,1例は不明)が行われ,3例はVKDB予防方法が電子診療録上不明であった.頭蓋内出血発症前の臨床症状を後方視的に検討したところ,7例中4例は胆汁うっ滞性疾患を頭蓋内出血発症前に発見することは不可能であった.胆汁うっ滞性疾患を有する患者の頭蓋内出血を十分に予防するためには,胆汁うっ滞性疾患の早期発見の啓発のみならず,すべての新生児へのVK製剤の投与量・投与経路に関する継続的な検討が必要である.
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【原著】
■題名
緊急事態宣言下における子どもの受診控えと保護者の心理社会的因子の関連
■著者
国立成育医療研究センター教育研修センター1),同 研究所社会医学研究部2),東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野3),東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻4),国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター5),順天堂大学医学部小児科6),国立成育医療研究センターこころの診療部リエゾン診療科7),東京大学医学部小児科8) 今井 健太1)2) 三瓶 舞紀子2) Aurelie Piedvache2) 大久保 祐輔2)4) 澤田 なおみ2)4) 細澤 麻里子5)6) 山岡 祐衣3) 田中 恭子7) 石黒 精1) 半谷 まゆみ2)8) 森崎 菜穂2)
■キーワード
受診行動, 受診控え, 心理社会的因子, 保護者, コロナウイルス感染症2019
■要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の世界的大流行に伴い実施された緊急事態宣言下での子どもの受診控えおよび関連する保護者の心理社会的因子について,17歳以下の子どもをもつ保護者を対象に2020年4~5月にWeb全国調査を実施した.心理的苦痛,主観的なCOVID-19に関する知識,主観的経済観,一緒に住む大人の人数,兄弟数について調べた.過去1か月間に子どもの受診予定があったと回答した保護者の30%が受診を控えたことがあったと回答した.また,過去1か月間に子どもに普段なら受診するような症状があったと回答した保護者のうち45%が受診を控えたことがあったと回答した.未就学児において,予定受診では,心理的苦痛が中程度の者は1.33倍,高度の者は1.54倍,保護者が1人である家庭は2.48倍受診を控えており,予定外受診では,心理的苦痛が中程度の者は1.79倍,高度の者は1.71倍,極高度の者は2.05倍,保護者が1人である家庭は2.52倍受診を控えていた.就学児において,予定外受診では,心理的苦痛が中程度の者は1.73倍,主観的経済観で「やや苦しい」と回答した者が1.50倍受診を控えていた.受診控えには,未就学児,就学児いずれも保護者の心理的苦痛が,未就学児ではCOVID-19に関する知識,一緒に住む大人の人数が,就学児では主観的経済観が関連していた.
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【原著】
■題名
地方圏における重篤小児患者の施設間搬送の実態と課題
■著者
福島県立医科大学小児科学講座1),同 ふくしま子ども・女性医療支援センター2),東京都立小児総合医療センター救急・集中治療部集中治療科3),埼玉県立小児医療センター集中治療科4),聖マリアンナ医科大学小児科学教室5) 齋藤 康1) 渡部 真裕1) 柳沼 和史1) 齊藤 修2)3) 新津 健裕2)4) 清水 直樹2)3)5) 陶山 和秀1) 細矢 光亮1)
■キーワード
地方圏, 重篤小児患者, 集約化, 施設間搬送, 有害事象
■要旨
【背景と目的】全国でPICUに重篤小児患者の集約化が進む中,搬送の安全性が課題となっているが,搬送に関連する有害事象をまとめた報告は少ない.本研究の目的は,福島県における重篤小児患者の施設間搬送の実態と問題点を明らかにし,地方圏の搬送システム構築の基礎とすることである.
【対象と方法】2017年4月から2020年3月までに福島県内の医療機関から当院へ搬送された重篤小児患者120例を対象とした.搬送中もしくは搬送直後に至急の介入を要したものを有害事象と定義した.対象を有害事象群と非有害事象群に分類し,搬送方法などの因子について比較検討を行った.
【結果】対象の患者背景は,月齢の中央値13,男児75例であった.搬送方法は救急車109例,ヘリコプター11例であった.気道管理は自然気道96例,人工気道24例であった.有害事象群は24例で,このうち気道管理が人工気道だったのは13例と非有害事象群と比較して有意に高かった.有害事象の発生件数は延べ32件で,内容は低換気が8件と最多で,それらはカプノメータが装着されていなかった.
【結語】安全で円滑な搬送には,搬送前に病態の安定化を行った上で,モニタリングやデバイスについて事前に施設間で情報共有することが不可欠である.また,各地域で搬送に関するトレーニングや知識共有の場を設けるとともに,施設間で相互理解を深める必要がある.
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【症例報告】
■題名
小児期から中等度大動脈弁狭窄症を認め,双胎妊娠後の周産期管理に成功した成人女性
■著者
慶應義塾大学医学部小児科1),同 産婦人科2) 磯部 あいこ1) 小柳 喬幸1) 妹尾 祥平1) 山本 一希1) 住友 直文1) 古道 一樹1) 飛彈 麻里子1) 山岸 敬幸1) 高橋 孝雄1) 落合 大吾2) 田中 守2)
■キーワード
心不全, 大動脈弁狭窄症, 妊娠, 双胎, 分娩
■要旨
高度の大動脈弁狭窄症(aortic stenosis;AS)を有する母体では,妊娠継続により母体死亡や子宮内胎児発育遅延のリスクが高まる.多胎妊娠の場合,単胎妊娠よりさらにリスクが高まると考えられるが,明確な管理指針はない.
症例は24歳女性.中等度ASで経過観察中,双胎を妊娠し5週に当院に受診した.妊娠10週までは中等度ASと評価されたが,20週に心エコー図上AS最大圧較差85 mmHgに悪化し高度ASと診断され,23週から管理入院となった.母体心不全が悪化するリスク,早産低出生双胎児の急速遂娩のリスクを回避し,双生児のintact survivalを望むことができる分娩週数として判断した28週に,予定帝王切開により娩出した.母児ともに重篤な合併症を認めず,良好な経過で退院した.本症例を通じて小児期からの疾病を抱える患者の移行期医療は小児科医にとって重要な課題であり,成人期に達した患者について,患者教育とともに地域や他診療科との連携が肝要であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
筋炎を合併し発熱を繰り返したVici症候群
■著者
鳥取県立中央病院小児科1),国立精神・神経医療研究センター神経研究所2) 坂口 真弓1) 森脇 千咲1) 宇山 祥1) 土江 宏和1) 萩元 慎二1) 倉信 裕樹1) 戸川 雅美1) 堂本 友恒1) 田村 明子1) 宇都宮 靖1) 大久保 真理子2) 西野 一三2)
■キーワード
Vici症候群, 先天性白皮症, 不明熱, 筋生検, 炎症性筋疾患
■要旨
Vici症候群とは特異的顔貌と多臓器異常を呈する稀な疾患である.平均寿命は42か月とされており,死因は,感染症およびそれに伴う呼吸状態の悪化,心筋症による心不全の頻度が高いとされている.今回我々は,出生後に先天性白皮症,脳梁低形成を指摘し,哺乳障害,拡張型心筋症を合併したVici症候群の1例を経験した.生後2か月より感染症による発熱もしくは熱源不明の発熱を繰り返した.生後3か月に行った筋生検と,造影MRI検査の結果から,繰り返す熱源不明の発熱の原因として炎症性筋疾患の可能性を考えた.1歳7か月時に嘔吐をきっかけに呼吸状態が急変し永眠した.
Vici症候群では感染症以外の発熱を繰り返し認めたとする報告は稀であるが,本症例では不明熱を繰り返し,炎症性筋疾患の関与が考えられた.治療を決定する上で筋生検の所見が有用な可能性があり,本疾患に筋炎を疑う症状が出現した際には筋生検を検討するべきである.
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【症例報告】
■題名
肝性脳症との鑑別を要した小児集中治療後症候群
■著者
国立成育医療研究センター教育研修センター1),同 総合診療部2),同 神経内科3),同 こころの診療部4) 高尾 浩之1)2) 中尾 寛1)2) 藤村 友美1)2) 佐々木 亜希子3) 田中 恭子4) 伊藤 玲子2) 窪田 満2) 石黒 精1)
■キーワード
集中治療後症候群, 肝性脳症, ICU関連筋力低下
■要旨
近年,集中治療室(ICU)退室後の問題として集中治療後症候群(post intensive care syndrome, PICS)が提唱されている.PICSはICUの在室中や退室後に生じる身体,認知,精神機能の障害を総括した概念である.集中治療後の重要課題とされ,退院後も長期に渡る機能障害や生活の質の低下を認めることがある.肝性脳症との鑑別を要した小児PICS例を報告する.
症例は7歳女児.劇症肝炎を発症し,高アンモニア(NH3)血症と昏睡度II度の肝性脳症,徐波化脳波を認めたためICUで血漿交換療法を行った.血中NH3値と肝機能は回復したが,一般病棟へ転棟後も遷延する見当識障害,遂行機能障害,せん妄および左右対称性の筋力低下を認めた.経過から肝性脳症とPICSの鑑別に苦慮した.血中NH3値と総ビリルビン値は低値を維持し,脳波の徐波も改善したため肝性脳症は否定的と考えPICSと診断した.PICSの身体障害に特徴的なICU関連筋力低下の基準も満たした.発症早期から理学療法および作業療法を行い1週間で歩行可能になった.多職種による包括的サポートで経時的に認知,精神機能は回復し,認知機能は6歳相当から8~11歳相当まで改善した.小児PICSは集中治療後の神経精神症状の鑑別として重要で,早期のリハビリ介入と多職種によるケアが機能障害の回復と社会復帰に有用なことが示唆された.
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【症例報告】
■題名
不活化インフルエンザワクチン接種後に生じたコンパートメント症候群
■著者
宮城県立こども病院総合診療科・リウマチ・感染症科1),同 形成外科2) 谷河 翠1) 桜井 博毅1) 津久井 英威2) 浅野 裕香2) 真田 武彦2) 梅林 宏明1)
■キーワード
不活化インフルエンザワクチン, 副反応, コンパートメント症候群, 予防接種, 有害事象
■要旨
2歳男児に生じた,2020/2021年シーズン向けインフルエンザワクチン接種後のコンパートメント症候群を経験した.患児はアレルギー素因を含め特記すべき既往なく,前年度にも同一メーカーのインフルエンザワクチンを問題なく接種していた.右上腕伸側にインフルエンザワクチンの接種を受けた同日夜から発熱を認め,接種部位周囲の発赤・腫脹は経時的に拡大し,胸壁にまで及んだ.末梢神経障害を示唆する所見も伴ったため,第2病日に広範な減張切開を行った.接種部位直下の脂肪織・上腕三頭筋に肉眼的変性を認めたため切除し,病理組織では軽度の壊死性変化と好酸球の集簇を認めた.病変部位からの各種培養は全て陰性であり,細菌感染症の関与は否定的であった.
ワクチン接種後から同部位を中心に生じた発赤・腫脹であった臨床経過と,肉眼的な組織変性が接種部直下で最も著しかった局在から,一連の事象はインフルエンザワクチンによるものであった可能性が強く疑われた.インフルエンザワクチンの接種は感染予防および重症化予防のために強く推奨されるが,稀に重大な局所反応を引き起こす可能性があり,注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
母体のCOVID-19ワクチン接種後,臍帯血中に特異的IgG抗体が検出された児
■著者
富良野病院小児科1),同 産婦人科2),同 薬剤科3),同 臨床検査科4) 滝口 僚也1) 角谷 不二雄1) 佐々木 勇気1) 大久保 仁史1) 藤保 洋明1) 石川 雅嗣2) 堀 保彦2) 近藤 提3) 杵渕 貴洋4)
■キーワード
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型, コロナウイルス感染症2019, ワクチン, 抗体, 胎盤移行
■要旨
新生児は,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)感染症の重症化リスクが年長児と比較して高いといわれ,母体からの移行抗体による罹患予防が期待される.今回,妊娠36週6日に1回目のCOVID-19 mRNAワクチンBNT162b2を投与された母体から,在胎39週6日で健常女児が出生した.出産のタイミングと重なったため,母体の2回目のワクチン接種は出産後となった.抗SARS-CoV-2 IgG抗体価は,母体血で6.66 U/mL,臍帯血で1.33 U/mLとともに陽性であり,抗体移行率は20%であった.母体は医療従事者であるがSARS-CoV-2感染者との接触はなく,分娩当日のSARS-CoV-2 PCR検査は陰性であったことから,抗体はワクチンにより獲得されたものと考えられた.本症例では,母体へのCOVID-19ワクチン接種による抗体胎盤移行が示された.
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【症例報告】
■題名
消化器症状が先行し,超早期発症型炎症性腸疾患の精査により診断に至った慢性肉芽腫症
■著者
大阪府立病院機構大阪母子医療センター消化器・内分泌科1),同 遺伝診療科2),同 血液・腫瘍科3),金沢大学医薬保健研究域医学系小児科4) 三浦 義一1) 萩原 真一郎1) 松田 裕介4) 長谷川 結子2) 後藤 公寿3) 樋口 紘平3) 和田 珠希1) 前山 隆智1) 井上 雅美3) 岡本 伸彦2) 和田 泰三4) 惠谷 ゆり1)
■キーワード
原発性免疫不全症候群, 造血幹細胞移植, 超早期発症型炎症性腸疾患, 肉芽腫性腸炎, 慢性肉芽腫症
■要旨
慢性肉芽腫症(CGD)は乳幼児期から反復する感染症が特徴とされるが,一部の症例で腸炎症状が先行する.今回,先行感染の既往がない超早期発症型炎症性腸疾患(VEO-IBD)のスクリーニングで診断に至ったCGDを報告する.
症例は2歳男児.4か月頃から成長障害と下痢を認め,2歳時に精査目的で入院となった.大腸内視鏡検査で大腸粘膜に血管透過性低下,白苔を伴う不整形のびらん,多量の膿性分泌物を認めた.VEO-IBDの原因検索のため,原発性免疫不全症候群(PID)のスクリーニングを行ったところ,好中球殺菌能の著明な低下を認め,gp91phox欠損とCYBB遺伝子欠損が判明し,CGDと診断した.5-アミノサリチル酸,プレドニゾロンの投与にて腸炎症状は改善し,根治療法として臍帯血移植を施行した.移植後の大腸内視鏡では大腸の粘膜治癒を確認でき,その後は腸炎症状の再燃なく経過している.
VEO-IBDは一般的に難治性とされるが,造血幹細胞移植にて治癒可能なPIDが原因となることもあり,速やかにPIDのスクリーニングを行い,診断することで予後が改善することが期待できる.
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