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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.12.15)
第125巻 第12号/令和3年12月1日
Vol.125, No.12, December 2021
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第124回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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森貞 直哉 1633 |
日本小児神経学会推薦総説 |
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子どもと医療者を守る小児神経領域の医療安全に関する3つの提言
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是松 聖悟,他 1640 |
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塩浜 直 1644 |
総 説 |
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川崎 幸彦 1655 |
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柳沼 和史,他 1666 |
原 著 |
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藤戸 祥太,他 1674 |
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吉村 加代,他 1680 |
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濱本 希,他 1686 |
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福政 宏司,他 1693 |
症例報告 |
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上田 優果,他 1702 |
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池本 裕実子,他 1708 |
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金城 由佳里,他 1713 |
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1719 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻11号目次
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1724 |
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1727 |
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【総説】
■題名
ループス腎炎の発症病態を考慮した最新治療戦略
■著者
福島県総合療育センター小児科 川崎 幸彦
■キーワード
ループス腎炎, 免疫複合体, ミコフェノール酸モフェチル, ベリムマブ, リツキシマブ
■要旨
全身性エリテマトーデスは,血管および結合組織の全身性慢性炎症性疾患である.発症機序としては,遺伝的素因に環境因子が加わることで免疫応答異常が生じ免疫複合体が形成され組織に沈着することで臓器障害が惹起される.最も頻度の高い臓器病変としてループス腎炎が挙げられており,成人と比較して疾患活動性も高く,予後を決定する因子の一つとなる.
治療としては,これらの病態を制御するために重症度による層別化した治療戦略が選択されており,重症例ではステロイド薬に自然免疫の活性化抑制薬や免疫抑制剤を加えた多剤併用療法が施行され,生存率の改善が得られている.本稿では,2018年に作成された小児SLE診療の手引きの内容も含めた最新の治療戦略とベリムマブを主とした新規分子標的薬の有効性について言及した.本症の治療には,治療効果のみでなく長期的な副作用とのバランスを考慮した治療選択が重要である.
本論文は日児誌第126巻12号P1678に論文撤回を掲載
http://www.jpeds.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=71
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【総説】
■題名
改訂ガイドライン発行後の新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の発症状況
■著者
福島県立医科大学小児科学講座 柳沼 和史 桃井 伸緒 宗像 未来 八重樫 未来 中澤 満美子 齋藤 康 陶山 和秀 細矢 光亮
■キーワード
新生児, 乳児, ビタミンK, 出血
■要旨
新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症(VKDB)は,ビタミンK製剤の内服予防投与が普及するに伴い減少傾向にあるが,近年においてもVKDB発症例の報告が散見される.今回,ビタミンK製剤を生後3回内服(3回内服法)した後に,乳児VKDBを発症した2例を経験した.症例1は生後3か月の女児で特発性VKDB,症例2は生後1か月の男児で胆道閉鎖症に伴う二次性VKDBと診断した.本邦における新生児・乳児VKDB発症の現状を把握するため,2011年以降に報告された同症例について収集し検討した.自験例を含め60例の報告があった.9例が特発性,48例が二次性,3例が不明であった.特発性VKDBの9例中4例,二次性VKDBの48例中13例が,3回内服法の完遂後にVKDBを発症していた.59例(98%)で頭蓋内出血を認め,予後について記載のあった32例中,8例(25%)が死亡し,13例(41%)が神経後遺症を残した.生後3か月まで週1回の予防内服(週1回内服法)を行った後にVKDBを発症した報告はなかった.これらのことから,3回内服法では予防として不十分であること,頭蓋内出血を発症した児の予後は不良であること,週1回内服法を完遂した後のVKDBの発症報告はないこと,が分かった.合併症を持たない全ての正期産の新生児・乳児に対し,ビタミンK製剤の週1回内服法の導入を検討すべきである.
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【原著】
■題名
初発の小児上部尿路感染症に対するセフメタゾールの使用経験
■著者
熊本赤十字病院小児科1),東京女子医科大学腎臓小児科2) 藤戸 祥太1) 伴 英樹1)2) 永芳 真理子1) 佛淵 尚人1) 古瀬 昭夫1) 平井 克樹1) 右田 昌宏1)
■キーワード
小児, 上部尿路感染症, 基質特異拡張型ベータラクタマーゼ産生菌, セフメタゾール
■要旨
【緒言】
昨今,小児上部尿路感染症(upper urinary tract infection:UUTI)の起因菌として基質特異拡張型ベータラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌の割合が増加している.当院では,小児UUTI症例に対してセフメタゾール(CMZ)を第一選択薬としており,その使用経験について報告する.
【方法】
2015年4月1日から2019年3月31日の間に当科に入院した初発の小児UUTI症例の中で,入院時の尿グラム染色でグラム陰性桿菌を単一で認め,初回抗菌薬にCMZを選択した症例について診療録を用いて後方視的に検討した.
【結果】
対象症例は63例であり,ESBL産生菌によるUUTIは17例/63例(27%)で,ESBL非産生菌によるUUTIは46例/63例(73%)であった.対象症例の起因菌はすべてCMZに感受性を示した.抗菌薬感受性の同定前にメロペネムへの抗菌薬変更を要した症例は4例/63例(6%)であった.治療期間の中央値は13日で,治療終了後4週間以内の再燃例は認めなかった.CMZ使用による副作用は認めなかった.
【結語】
児の年齢や尿グラム染色の結果,地域のアンチバイオグラムを考慮した上で,初発の小児UUTIに対して,CMZを初回抗菌薬に選択することは,治療開始時から感受性のある抗菌薬による治療を可能にする.
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【原著】
■題名
小児COVID-19ワクチン治験に対する両親の参加諾否判断因子
■著者
聖マリアンナ医科大学小児科1),University of British Columbia,BC Children's Hospital2) 吉村 加代1) 立浪 忍1) Ran D Goldman2) 中村 幸嗣1) 品川 文乃1) 小林 茉保1) 文元 礼1) 森内 巧1) 新谷 亮1) 勝田 友博1) 清水 直樹1)
■キーワード
小児, 治験, ワクチン開発, coronavirus disease 2019, COVID-19ワクチン
■要旨
コロナウイルス感染症2019の世界的流行によりCOVID-19ワクチン開発が急がれているが,小児に対するワクチンの安全性や有効性を評価するためには小児を対象とした治験が必須である.一方で,ワクチンの治験は,健常な小児の参加が必須であり,治験参加の承諾取得が困難となることが予測される.本調査は両親が子どもの治験参加を承諾する要因について検討した.
2020年5月22日から2020年7月31日までに聖マリアンナ医科大学病院,川崎市立多摩病院の救急外来もしくは小児外来を受診した小児患者の両親に対しアンケートを行い,子どもの治験参加を承諾する要因を統計学的に検証した.計219名の親が調査に参加し,そのうち214名から子どもの治験参加の諾否についての回答を得た.計20人(9.3%)のみが子どもの治験参加を承諾した.参加を承諾する要因として,親自身も治験参加を承諾した場合,子どもの治験参加に承諾する傾向を示した(p<0.001).治験参加承諾率は,本調査で9.3%と国外調査の18.4%と比べ有意に低い結果(p=0.0012)となった.国内外で治験参加承諾率に差を認めた原因に関する追加評価が必要と考える.
国内における小児を対象とした予防接種に関連する治験承諾は,両親が自身の治験参加を積極的に承諾するかに依存していた.
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【原著】
■題名
オンラインサーベイランスシステムを用いた小児細菌性髄膜炎症例調査
■著者
静岡小児感染症サーベイランス研究会1),聖隷浜松病院小児科2),静岡厚生病院小児科3) 濱本 希1)2) 松林 正1)2) 田中 敏博1)3)
■キーワード
小児, 細菌性髄膜炎, インフルエンザ菌b型ワクチン, 肺炎球菌結合型ワクチン, オンラインサーベイランスシステム
■要旨
2013年4月にインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b;Hib)ワクチン,肺炎球菌結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine;PCV)が定期接種となった.今回オンラインサーベイランスシステムを用いて静岡県内30医療施設の小児細菌性髄膜炎症例を登録し,Hibワクチン,PCV導入前後の小児細菌性髄膜炎発生動向を調査した.本システムを稼働した2013年9月以前は後方視的に,稼働後は2019年12月まで前方視的に登録を行い,2006年1月から2019年12月までの14年間を解析対象期間とした.期間中188症例(男児102例,女児86例)が登録された.2012年以降,インフルエンザ菌性髄膜炎,肺炎球菌性髄膜炎患者数は大きく減少した.一方,有効なワクチンがないB群溶血性レンサ球菌(Group B Streptococcus;GBS),大腸菌による髄膜炎患者数は変化なかった.今回の調査よりHibワクチン,PCVの導入は,インフルエンザ菌性髄膜炎,肺炎球菌性髄膜炎患者数の減少に寄与していることが示唆された.本システムの利用により,簡便かつ迅速に市中感染症に関わる情報を共有して臨床にフィードバックすることが可能で,感染症診療に貢献することが期待された.
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【原著】
■題名
COVID-19流行中の公衆衛生対策が小児科受診者数と呼吸器感染症の発生に与えた影響
■著者
北九州市立八幡病院小児総合医療センター 福政 宏司 西山 和孝
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 緊急事態宣言, 学校閉鎖, 受診控え, 感染予防策
■要旨
【緒言】本邦ではコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に対して学校閉鎖や緊急事態宣言などの対策が講じられ,社会全体で自粛ムードが広がり,医療機関の受診控えが社会問題化した.【目的】COVID-19流行中における北九州市立八幡病院小児救急・小児総合医療センター(以下当院)での小児科患者数の現状を把握する.【方法】2020年第1週から第52週までの当院小児科外来患者数を診療録を用いて調査した観察研究.また同期間のInfluenza virus(Flu),respiratory syncytial virus(RSV),及びhuman metapneumovirus(hMPV)の感染症発生動向も調査した.それらを2018年,2019年の同期間と比較検討した.【結果】調査期間中の外来患者数は72.1%(前2年平均比)で,緊急事態宣言期間中に44.7%と最も減少していた.緊急事態宣言解除後の外来患者数は69.7%であり,その内救急外来患者数が56.6%と著明に減少していた.前2年と比較してFlu,hMPVは流行が早期に収束し,RSVは流行が認められなかった.【結語】COVID-19流行中において小児科外来患者数は減少し,緊急事態宣言解除後もその状況が続いていた.それは,受診控えのみでなく,学校閉鎖や衛生対策などの公衆衛生上の対策によるCOVID-19以外の感染症の伝搬抑制が要因の一つとして考えられた.
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【症例報告】
■題名
ビリルビン脳症に至ったUGT1A1遺伝子多型を有する乳児濃縮赤血球症
■著者
岐阜県総合医療センター小児科1),東京女子医科大学医学部輸血・細胞プロセシング部2),滋賀医科大学小児科学講座3) 上田 優果1) 松波 邦洋1) 桑原 秀次1) 小倉 浩美2) 菅野 仁2) 柳 貴英3) 今村 淳1)
■キーワード
乳児濃縮赤血球症(infantile pyknocytosis), ビリルビン脳症, 溶血性貧血, UGT1A1遺伝子多型, 新生児黄疸
■要旨
乳児濃縮赤血球症(infantile pyknocytosis:IP)は主に新生児期に一過性の溶血性貧血と黄疸を引き起こす稀な疾患である.自然軽快することが多いとされるが,我々は交換輸血を要する重症黄疸を呈し,ビリルビン脳症に至ったIPの症例を経験した.
症例は日齢15の女児で,黄疸と意識障害を主訴に受診した.血液検査で高度の非抱合型高ビリルビン血症を呈し,その後に溶血性貧血を認めた.1回の交換輸血を含む集学的治療を行い黄疸は改善したが,日齢25に撮影した頭部MRIでビリルビン脳症に特徴的な所見を認めた.溶血性貧血の原因精査を行ったところ,浸透圧抵抗は亢進しており末梢血塗抹標本でpyknocyteを多数認めた.他の赤血球形態異常や酵素異常の存在を否定し,溶血性貧血の再燃を認めていないことから,最終的にIPと診断した.本症例ではグルクロン酸抱合に関与するUDP-glucuronosyltransferase1A1(UGT1A1)遺伝子多型(c.211G>A,p.G71R;UGT1A1*6)をヘテロ接合性に認め,UGT1A1*6が黄疸の重症化に関与したと考えられた.
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【症例報告】
■題名
起立性調節障害を発症した先天性コルチコステロイド結合蛋白欠損症
■著者
姫路聖マリア病院小児科1),弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学講座2) 池本 裕実子1) 木寺 えり子1) 蔭山 和則2)
■キーワード
起立性調節障害, 低コルチゾール血症, コルチコステロイド結合蛋白
■要旨
症例は13歳女児.起立性調節障害の症状が強く,血清コルチゾールの低下を認めたので精査した.血漿ACTHおよび尿中遊離コルチゾールは正常範囲であった.他の下垂体前葉ホルモンと甲状腺機能も正常であった.血清コルチゾールの日内変動は保たれていた.迅速ACTH負荷試験ではコルチゾールの正常の反応がみられ,CRH負荷試験ではACTH,コルチゾールはともに正常に反応していた.血中コルチゾールの80〜90%がコルチコステロイド結合蛋白(CBG)と10〜15%がアルブミンと結合し,約5%が遊離型で生理活性をもつ.そこでCBG低下による血清コルチゾールの低下を疑い患児のCBGを測定したところ著明な低下を認めた.CBGをコードする遺伝子変異によりCBG合成能やコルチゾール結合能が低下することが知られている.患児の家族の血清コルチゾール,CBG濃度も低値であり先天性CBG欠損症と考えられた.本疾患では血中遊離コルチゾールの低下がないにもかかわらず低血圧や全身倦怠感などの慢性疲労症候群に類似の症状を呈することがある.低CBG血症が起立性調節障害の症状に影響を与えている可能性がある.
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【症例報告】
■題名
左海綿静脈洞内血栓性静脈炎と敗血症性肺塞栓症を合併した左眼窩蜂窩織炎
■著者
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児総合診療科1),同 小児感染症内科2) 金城 由佳里1) 張 慶哲2) 河原 智樹1) 大川 哲平1) 高山 朝匡1) 利根川 尚也1) 松岡 孝1)
■キーワード
眼窩蜂窩織炎, 海綿静脈洞内血栓性静脈炎, 敗血症性肺塞栓症, MRSA菌血症
■要旨
眼窩蜂窩織炎の74〜85%は副鼻腔炎を契機として発症し,肺炎球菌,インフルエンザ桿菌などが原因となることが多いが,近年黄色ブドウ球菌が原因となることが増えている.黄色ブドウ球菌は,起因菌の28%を占め,さらにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が全体の6.5%を占めたとの報告もある.今回私たちはMRSAを起因菌とした眼窩蜂窩織炎に,海綿静脈洞血栓性静脈炎と敗血症性肺塞栓症を合併したが,後遺症なく治癒した1例を経験した.
症例は気管支喘息の既往がある6歳男児で,受診2日前からの左眼周囲の発赤と前日からの38℃を超える発熱を主訴に当院を受診し,左眼窩蜂窩織炎の診断で入院となった.MRSA菌血症,無症候性の敗血症性肺塞栓症を合併しており,また入院中に左海綿静脈洞内血栓性静脈炎の合併などにより,寛解と増悪を繰り返し治療に難渋した.約30日間の入院加療で,抗菌薬の経静脈投与と抗凝固療法を行い,その後外来で内服抗菌薬投与を継続し,視力低下などを合併することなく治癒に至った.
眼窩蜂窩織炎は副鼻腔炎や口腔内感染症,外傷などを契機として発症し,視力予後に大きく関与する疾患である.重大な後遺症のリスクを考慮し,複数セットの血液培養や膿瘍からの培養など,適切な培養検体を確保した後に,初期治療から抗MRSA薬の投与を検討すべきである.
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