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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.9.16)
第125巻 第9号/令和3年9月1日
Vol.125, No.9, September 2021
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日本新生児成育医学会推薦総説 |
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奥村 彰久 1267 |
原 著 |
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徳田 雄亮,他 1278 |
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小山 朝美,他 1286 |
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野村 直宏,他 1294 |
症例報告 |
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片山 慈之,他 1301 |
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牧野 理沙,他 1306 |
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上村 美季,他 1311 |
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山本 拓也,他 1316 |
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赤塚 祐介,他 1323 |
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木村 菜央,他 1328 |
短 報 |
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田中 敏博,他 1334 |
論 策 |
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幾島 裕介,他 1338 |
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地方会抄録(滋賀・長崎・福岡・佐賀・鳥取・島根・長野)
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1344 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 106 アロマディフューザーの液を誤嚥したことによる化学性肺炎
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1367 |
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No. 107 珪藻土バスマットの関与が疑われた右母趾足底側皮膚欠損創
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1371 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
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第12回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)オンラインコースの報告
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1374 |
日本小児科学会小児医療委員会主催 |
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1375 |
日本小児科学会社会保険委員会報告 |
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新型コロナウイルス感染症に伴う小児医療機関の保険診療上の課題に関する調査一次調査報告
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1376 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合37 |
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1384 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻8号目次
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1386 |
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1389 |
【原著】
■題名
川崎病急性期の免疫グロブリン製剤による血清ナトリウム濃度への影響
■著者
国立成育医療研究センター教育研修センター1),同 総合診療科2),同 循環器科3),同 集中治療科4),同 臨床研究センターデータサイエンス部門5) 徳田 雄亮1) 石黒 精1) 益田 博司2) 鈴木 孝典3) 蘇 哲民4) 小林 徹5)
■キーワード
川崎病, 免疫グロブリン, 低ナトリウム血症
■要旨
川崎病は小児期に発症する原因不明の血管炎症候群である.標準的治療として投与される免疫グロブリン(IVIG)製剤間で,ナトリウム(Na)含有量は大きく異なる.しかし,IVIG製剤のNa含有量の違いが病態に及ぼす影響については十分検討されていない.本後方視的観察研究では,IVIG製剤を低Na含有製剤群と高Na含有製剤群に分類して比較検討した.対象は2014年5月から2016年12月の期間で国立成育医療研究センターに川崎病の診断で入院した患者337名(低Na含有製剤群314名,高Na含有製剤群23名)とした.IVIG製剤投与前後で血清Na濃度は両群共に有意に上昇したが(P<0.001),低Na含有製剤群と比較し,高Na含有製剤群の血清Na濃度上昇量は大きかった(2.5±3.2 mEq/L vs 5.4±3.1 mEq/L,P<0.001).一方で川崎病診断時の血清Na濃度別に分類したサブグループ解析では,IVIG製剤投与前後の血清Na濃度上昇量は同等であった.低Na血症に起因する痙攣や意識障害,神経学的後遺症を残す重篤な有害事象は両群共に認めなかった.急性期川崎病において,IVIG製剤のNa含有量の違いは血清Na濃度の変化に与える影響は限定的であり,安全性においても明らかな差異を認めないと考えられた.
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【原著】
■題名
マスサイトメトリーを用いた小児骨髄の免疫環境解析基盤の構築
■著者
京都大学大学院医学研究科人間健康科学科1),同 発達小児科学2),大阪大学免疫学フロンティア研究センターヒト免疫学3),同志社大学生命医科学部医生命システム学科4),大阪大学免疫学フロンティア研究センター実験免疫学5) 小山 朝美1) 三上 貴司2) 加藤 格2) James Badger Wing3) 神鳥 達哉2) 田中 邦昭2) 才田 聡2) 梅田 雄嗣2) 平松 英文2) 足立 壯一1) 祝迫 惠子4) 坂口 志文5) 滝田 順子2)
■キーワード
マスサイトメトリー, 小児, 白血病, 腫瘍免疫環境
■要旨
【緒言】近年,免疫微小環境は造血器腫瘍の病態と密接な関係にあることが明らかになりつつあり,免疫療法の効果的な活用のためにも高度な免疫環境解析技術基盤の構築が必要とされている.マスサイトメトリー(Helios™,a CyTOFⓇ System)は同時に約40種類のバイオマーカーをシングルセルレベルで検出可能な技術であり,複雑な免疫環境の解析に適している.小児造血器腫瘍における免疫環境の解析は,検体の希少性もあって,これまでは末梢血を用いた解析が主であり,骨髄検体を用いた解析の報告は少ない.【方法】小児の造血器疾患と免疫応答に関わるバイオマーカー探索基盤を構築するため,白血病発症時および寛解期に凍結保存された小児骨髄検体を,フローサイトメトリーとマスサイトメトリーを用いて解析した.【結果・考察】フローサイトメトリーとマスサイトメトリーの比較で細胞の染色性に大きな差は認めなかった.さらにマスサイトメトリーを用いることで,骨髄の腫瘍細胞・免疫細胞のそれぞれにおいて,細胞の活性化状態を含めて詳細に分類することに成功した.また,シスプラチンを用いた生細胞のバーコードシステムを構築し,複数検体の同時染色が可能になった.今後は本技術を腫瘍免疫環境の解析に応用する予定である.
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【原著】
■題名
血清型16Fによる新生児肺炎球菌感染症の症例報告と既報例のレビュー
■著者
大阪府済生会野江病院小児科1),関西医科大学医学部小児科学講座2) 野村 直宏1)2) 野田 幸弘1)2) 見浪 実紀2) 平林 雅人2) 金子 一成2)
■キーワード
侵襲性肺炎球菌感染症, 新生児肺炎球菌感染症, 血清型16F, 血清型置換, 産褥期敗血症
■要旨
血清型16F肺炎球菌はワクチン非含有血清型で,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)を起こすことは少ない.今回,血清型16Fによる絨毛膜羊膜炎からの垂直感染でIPDをきたした新生児例を経験したので既報例のレビューとともに報告する.患者は日齢0の男児で,在胎36週2日に経腟分娩にて出生した.Apgar scoreは1分値5点/5分値7点で,呼吸障害が持続するため新生児集中治療室に入院となった.臨床所見から早発型敗血症を疑い抗菌薬治療を開始した.起因菌と感染経路については,患児の咽頭,鼻腔,皮膚,尿および糞便の培養と母親の血液培養から同一の血清型(16F)のペニシリン感受性肺炎球菌が検出されたこと,そして胎盤の病理組織検査で絨毛膜羊膜炎が認められたことから,垂直感染による血清型16FのIPDと診断した.
文献上検索し得た本邦の新生児期のIPD既報例38例を検討したところ,生後72時間以内発症の早発型が97%と圧倒的に多かった.また生命予後については,死亡率44.1%と不良だった.したがって新生児期の早発型細菌感染症の起因菌として肺炎球菌は常に念頭におくべきであると思われた.また約35%がペニシリン耐性であったことから,耐性菌の可能性を考慮したempiric therapyを行うべきであると思われた.
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【症例報告】
■題名
Duchenne型筋ジストロフィーにおける生後早期の血清クレアチンキナーゼ値の推移
■著者
兵庫医科大学小児科学1),兵庫医科大学ささやま医療センター小児科2),ベリタス病院小児科3),千船病院小児科4) 片山 慈之1) 李 知子1) 徳永 沙知1) 谷口 直子1) 下村 英毅1) 柴田 暁男1) 峰 淳史1)2) 石井 良樹3) 藤坂 方葉4) 吉井 勝彦4) 奥田 真珠美1)2) 竹島 泰弘1)
■キーワード
Duchenne型筋ジストロフィー, 血清クレアチンキナーゼ, 新生児
■要旨
高クレアチンキナーゼ(CK)血症はDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)の主要所見であり,幼児期では通常10,000 IU/L以上の高値となる.一方,DMD児の生後早期のCK値の推移に関する報告は少ない.今回,新生児期の高CK血症を機にDMDと診断された症例において生後早期のCK値を検討した.新生児期に持続する高CK血症を指摘され,当科でジストロフィン遺伝子解析によりDMDと診断した男児3例を対象とした.在胎週数は38〜40週,出生体重は2,330〜3,566 g,いずれも仮死なく出生した.CK値(IU/L)の推移は,症例1:19,171(日齢0),3,118(5),7,340(37),6,655(42),症例2:53,077(日齢0),7,999(4),11,771(8),4,909(33),14,847(66),症例3:9,649(日齢2),2,230(7),1,520(19),2,315(33),7,897(75)であった.生後早期のCK値は変動が大きく,測定のタイミングによっては1,000〜4,000台とDMDとしては比較的低値を示した.DMDに対する新規治療の開発とともにCK値による新生児スクリーニングなどの早期診断法が検討されているが未だ確立していない.生後早期のCK値に関してさらなる症例の蓄積が必要である.
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【症例報告】
■題名
サイトメガロウイルス初感染を契機に重篤な貧血をきたした遺伝性球状赤血球症
■著者
静岡県立こども病院血液腫瘍科 牧野 理沙 小松 和幸 川口 晃司 高地 貴行 小倉 妙美 堀越 泰雄 渡邉 健一郎
■キーワード
遺伝性球状赤血球症, CMV感染, 無形成発作, 溶血発作
■要旨
遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis;HS)では赤血球造血が阻害されると急激に貧血が進行する.ヒトパルボウイルスB19(PVB19)による無形成発作がよく知られているが,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)とHSの関連については報告がない.今回,われわれはCMV初感染を契機に重篤な貧血を起こしたHSを経験した.症例は1歳0か月女児で,父,姉がHSと診断されており,本児も出生後にHSと診断された.出生後明らかな貧血のエピソードなく,Hb 10 g/dL台で推移していた.入院1週間前から発熱を認め,口唇が蒼白となり易疲労感も出現したため受診,Hb 5.6 g/dLと重度の貧血を認め,活動性は高度に低下していたため,赤血球輸血を行った.PVB19 IgMは陰性であった.異型リンパ球の増加と肝逸脱酵素値の上昇を認めたことからCMV感染を疑った.入院時CMV IgM,IgGは陽性であったが,3か月後にはCMV IgMは陰性化し,CMV IgG抗体価の上昇が認められ,CMV初感染と考えられた.HSでは,CMV感染に伴い急激に貧血が進行する可能性があることが示唆された.
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【症例報告】
■題名
周期性四肢麻痺で発症したBasedow病の13歳女子例
■著者
東北大学病院小児科1),仙台医療センター小児科2),仙台市立病院小児科3) 上村 美季1)2) 菅野 潤子1) 梅木 郁美1) 守谷 充司3) 鈴木 大1) 藤原 幾磨1)3) 呉 繁夫1)
■キーワード
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺, Basedow病, Na-K-ATPase, 高インスリン血症, カテコラミン
■要旨
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(Thyrotoxic periodic paralysis,以下TPP)は突然発症する四肢近位筋優位の弛緩性麻痺が特徴的で,甲状腺中毒症により骨格筋細胞膜のNa-K-ATPase活性が高まり,細胞内へのK流入が増加することによって起こる低K血症が主因とされる.また,インスリン,カテコラミン,アンドロゲンもNa-K-ATPase活性を高め,TPP発症に関与している.TPPはアジア人男性に多く,小児例は稀である.症例は13歳女児.炭水化物中心の夕食を摂取後に四肢麻痺を発症した.来院時の低K血症(K 2.1 mEq/L)を契機に甲状腺腫と眼球突出に気付かれ,甲状腺機能検査にて,fT3 11.2 pg/mL,fT4 2.8 ng/dL,TSH <0.01 μIU/mL,TSHレセプター抗体292.4 IU/L,超音波検査でびまん性の甲状腺腫大と血流増加を認め,Basedow病に伴うTPPと診断した.K補充とチアマゾール内服を開始し,麻痺は第2病日までに改善した.経口ブドウ糖負荷試験では,軽度のインスリン抵抗性とインスリンの過剰分泌を認め,インスリン分泌に伴い血清K値は低下したため,炭水化物の過食に伴う高インスリン血症が本症例のTPP発症の一因と考えられた.小児でも四肢麻痺を認めた場合には,TPPを念頭に置き,血清K値の確認と甲状腺機能検査を行う必要がある.
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【症例報告】
■題名
思春期早発症が先行した松果体胚細胞腫瘍
■著者
浜松医科大学小児科1),磐田市立総合病院小児科2) 山本 拓也1) 村松 真由美1) 小野 裕之1) 大高 幸之助2) 坂口 公祥1) 緒方 勤1) 藤澤 泰子1)
■キーワード
思春期早発症, ゴナドトロピン非依存性, 松果体腫瘍, 胚細胞腫瘍
■要旨
男児の思春期早発症は器質的疾患に起因する割合が高い.症例は7歳男児.頭部MRIおよび内分泌学的評価における異常所見の出現に先行して,思春期早発症を発症した.急激な身長増加と陰毛発育を主訴に受診.Tanner分類 外陰部III度,陰毛III度,精巣容積 両側3 mL,テストステロンおよびHCG-βは測定感度以下,GnRH負荷試験ではLHは正常反応,FSHは低反応であった.頭部MRIでは異常を認めなかった.思春期早発症の原因の同定には至らず慎重に経過を観察され,6か月後の頭部MRI再評価にて松果体腫瘍が判明した.LHおよびFSHは測定感度以下に抑制されており,HCG-βが検出され(1.0 ng/mL)テストステロンは上昇していた(13.9 ng/mL).腫瘍摘出術が施行され,病理診断は混合性胚細胞腫瘍[未熟奇形腫+ジャーミノーマ(mixed germ cell tumor(immature teratoma+germinoma)]であった.以上より本症例はHCG産生性松果体胚細胞腫によるゴナドトロピン非依存性思春期早発症と診断された.胚細胞腫瘍の一部はHCGを産生するためゴナドトロピン非依存性思春期早発症をきたすが,まれに思春期早発症が先行する.特に男児における思春期早発症は器質的疾患が存在する可能性を念頭において慎重に診療する必要がある.
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【症例報告】
■題名
反復感染時に化膿性膝関節炎を発症した侵襲性B群連鎖球菌感染症の乳児例
■著者
順天堂大学医学部小児科1),順天堂大学医学部附属練馬病院総合小児科2),同 整形外科3) 赤塚 祐介1) 幾瀬 圭1) 関口 早紀1) 室田 直紀1) 西山 樹1) 塚田 いぶき1) 丘 逸宏2) 佐藤 真教1) 吉田 登2) 谷口 明徳1) 辻脇 篤志2) 小松 充孝1) 坂本 優子3) 大友 義之2) 新島 新一2) 清水 俊明1)
■キーワード
B群連鎖球菌, 遅発型GBS感染症, 反復感染, 化膿性関節炎
■要旨
症例は日齢46の女児.日齢11にB群連鎖球菌(Group B Streptococcus:GBS)による髄膜炎,菌血症を発症し日齢32までの3週間にわたって抗菌薬投与が行われていた.日齢45に発熱を伴わない右膝の伸展不良が出現し翌日に当院救急外来を受診,臨床所見と各種結果からGBSによる化膿性右膝関節炎および菌血症の診断に至った.検出されたGBSの莢膜型は初発時と同一のIII型であったが,初発時に十分な抗菌薬治療がされており,血液/髄液培養の陰性化も確認されていた.また,児の免疫不全を疑う所見はみられなかった.母体の腟培養や母乳培養は陰性であったが,反復感染時に膝関節炎以外の明らかな感染巣を認めず,水平感染による菌血症から化膿性関節炎を発症した可能性が考えられた.侵襲性GBS感染症治療後の約1%に反復感染が生じると報告されているが,化膿性関節炎として感染を反復した症例はこれまで報告されていない.新生児の化膿性関節炎は所見が非典型的となることがあり診断が困難である.侵襲性GBS感染症の治療後は反復感染に注意して経過観察を行うべきであるが,反復感染時にも菌血症による多彩な発症様式を起こしうることに留意して,丁寧に診察を行う必要がある.
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【症例報告】
■題名
皮膚と共に舌からの出血を認めた血汗症
■著者
福島県立医科大学小児科学講座1),公立相馬総合病院小児科2) 木村 菜央1) 小野 敦史1) 陶山 和秀1) 伊藤 正樹2) 細矢 光亮1)
■キーワード
血汗症, 汗腺, β遮断薬, エブネル腺
■要旨
血汗症は創傷のない皮膚から汗と共に血液が滲出するとされる希少疾患である.詳細な病態は不明だが,汗腺を栄養する毛細血管から赤血球が漏出し,汗管を通して皮膚表面に滲出すると考えられている.我々は,前額部や四肢といった汗腺を持つ皮膚からだけでなく,汗腺のない舌からも出血を認めた6歳女児例を経験した.皮膚に創傷はなく,血液検査で凝固障害を認めず,皮膚生検所見も正常であることから血汗症と診断し,β遮断薬の投与を行い皮膚からの出血は抑制された.本例に加え,これまでの報告例をまとめ,血汗症の病理と病態について考察した.
皮膚からの出血は,交感神経の過活動により汗腺を栄養する毛細血管の血管透過性が亢進し,赤血球が血管外へ漏出し,汗管を通って皮膚表面へ汗のように滲出すると推測した.一方,汗腺のない舌から出血する機序については,舌に開口する小唾液腺であるエブネル腺とそれを栄養する毛細血管の構造が皮膚の汗腺及びその栄養血管の構造と類似していることから,皮膚と同様の機序で舌から出血すると推測した.また,出血直後の皮膚生検で血管や汗腺に器質的異常を認めないこと,精神的ストレスや疲労が誘因と思われる出血のエピソードがあること,β遮断薬が奏功することから,交感神経の過活動が血管に機能的な障害をもたらし発症すると考えた.血汗症は稀少疾患であり大規模な研究報告もないため,症例の集積による病態の解明が期待される.
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【短報】
■題名
コロナウイルス感染症2019の患児に対する電話診療
■著者
静岡厚生病院小児科1),静岡市保健所2) 田中 敏博1) 加治 正行2)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 小児, 自宅療養, 遠隔診療, 電話診療
■要旨
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上の指定感染症であるコロナウイルス感染症2019(coronavirus disease 2019,COVID-19)は,小児では多くが軽症または無症状である.静岡市では軽症の患児は自宅/宿泊施設療養を原則とし,医師が遠隔診療で対応している(静岡市方式).2020年12月末までに患児21名とその家族33名(18世帯,患者:成人16名,濃厚接触者:小児4名/成人13名)に適用された.経過中に健康状態の悪化や入院への切り替えはなかった.COVID-19の患児とその家族に最適な療養環境を提供し,地域の医療資源を守るために,静岡市方式は有用である.
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【論策】
■題名
コロナウイルス感染症2019流行初期における周産期・小児領域の患者動向
■著者
淀川キリスト教病院小児科1),同 救急科2),同 産婦人科3) 幾島 裕介1) 小西 恵理1) 大野 由梨1) 夏川 麻依2) 川北 かおり3) 豊 奈々絵1) 西原 正人1) 丸尾 伸之3) 鍋谷 まこと1)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 周産期・小児, 患者数, 健診, 予防接種
■要旨
【背景・目的】わが国では2020年4月からコロナウイルス感染症2019(COVID-19)の流行が拡大し,大きな社会的影響がもたらされた.医療機関では流行に伴い外来および入院患者数の減少が見られた.本研究ではCOVID-19流行初期の周産期・小児領域の患者動向を調査した.【方法】大阪府大阪市に位置する淀川キリスト教病院における2020年4〜6月の産科,小児科の外来,救急外来,入院患者数を電子カルテから後方視的に集計し,過去5年間と比較した.【結果】2020年は全科で外来,救急外来,入院患者数の減少を認めた.特に小児科の外来,救急外来,新規入院患者数は減少が著明で,それぞれ前年の47.3%,24.0%,44.0%であった.産科病棟,新生児病床,こどもホスピスの患者数はそれぞれ前年の97.0%,99.5%,91.0%と減少が限定的であった.外来のうち妊婦健診,乳児健診,予防接種を目的とした受診者数も大きな減少はなかった.【考察】小児科患者の減少は,小児の行動様式の変化や感染予防によりCOVID-19以外の感染症が激減したことが主因と考えられた.妊婦健診や乳児健診,予防接種受診者数の減少は少なく,その重要性は妊婦や保護者に認識されていた.また,重症心身障害児のレスパイトケアの需要の高さも示された.医療機関はこれらの需要に応えるため,最大限の感染予防対策を行い患者に明示すべきと考える.
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