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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.8.11)
第125巻 第8号/令和3年8月1日
Vol.125, No.8, August 2021
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原 著 |
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野田 昇宏,他 1147 |
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及川 純子,他 1156 |
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成相 昭吉,他 1162 |
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田中 大貴,他 1170 |
症例報告 |
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宮沢 絢子,他 1176 |
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高見 遥,他 1181 |
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布施田 泰之,他 1188 |
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工藤 絵理子,他 1194 |
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佐々木 夏澄,他 1199 |
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廣嶋 省太,他 1205 |
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菅田 健,他 1209 |
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大坪 善数,他 1214 |
短 報 |
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大西 卓磨,他 1219 |
論 策 |
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是松 聖悟 1222 |
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1227 |
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1243 |
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1244 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻7号目次
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1251 |
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【原著】
■題名
当院で経験した新生児副腎出血と既報78例の臨床像
■著者
市立函館病院小児科1),札幌医科大学医学部小児科学講座2) 野田 昇宏1) 酒井 好幸1) 工藤 芳優1) 中村 慧1) 若林 知宏1) 川嶋 雄平1) 川崎 幸彦2)
■キーワード
新生児仮死, heavy for dates児, 分娩外傷, 腹部超音波検査
■要旨
新生児副腎出血(neonatal adrenal hemorrhage:以下NAH)は無症状で経過するものから,ショックをきたし死亡する症例まである.これまでに本邦でNAHの臨床像についてまとめた報告は少ない.今回,本邦で報告されたNAH79例の臨床像を明らかにした.過体重(heavy for dates:以下HFD)児が全体の半数を占め,その理由としてHFD児では経腟分娩時に副腎がより強い機械的圧迫を受けることが考えられた.NAHが経腟分娩に伴う分娩外傷により生じることを裏付ける結果だった.交換輸血を必要としたのは16例,赤血球輸血を必要としたのは6例であること,さらに16例が死亡の転帰を辿っていることから,NAHを早期に発見することの臨床的意義は高い.自験例を提示し,NAHの臨床像について概説した.
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【原著】
■題名
食物アレルギー児のビタミンD充足状態
■著者
手稲渓仁会病院小児科1),すぎはら小児科・アレルギー科2),北海道大学大学院医学研究院社会医学分野公衆衛生学教室3) 及川 純子1)3) 齋 秀二1) 大谷 杏奈1) 南雲 淳1) 杉原 暁美2) 玉腰 暁子3)
■キーワード
ビタミンD, ビタミンD欠乏症, 25(OH)D, 食物アレルギー, 高緯度地域在住
■要旨
【背景】食物アレルギーを有する高緯度地域在住の小児の,ビタミンD充足状態を明らかにするために調査を行った.
【方法】2017年4月から2年間,北海道札幌市にある当院を,食物アレルギーを主訴に受診する3歳未満の子どもを対象とした.保護者による調査票の回答より食事や生活習慣を調査し,血液検査でビタミンDの充足状態を評価した.
【結果】71例が対象となった.48人(67.6%)が25(OH)D ≤ 20 ng/mL(ビタミンD不足)だった.ビタミンD不足群では,母乳栄養児が有意に多かった(p < 0.01).1例でビタミンD欠乏性くる病の診断に至った.ビタミンD欠乏性くる病の1例を除いた解析でもビタミンD不足群では,intact PTH値が有意に高かった.食事制限の有無は,25(OH)D不足と関連を認めなかった.どの季節も約半数以上の児でビタミンD不足の状態にあった.
【結語】高緯度地域在住の乳幼児は,制限食材の有無に関わらずビタミンD欠乏状態が一年を通じて続くため,通年でビタミンDの補充が推奨される.
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【原著】
■題名
国内遠隔2地域の乳幼児上咽頭から検出された肺炎球菌の血清型の比較
■著者
松江赤十字病院感染症科1),横浜医療センター小児科2),島根県立中央病院小児科3),松江赤十字病院小児科4),横浜南共済病院小児科5) 成相 昭吉1)3) 矢内 貴憲2) 平出 智裕3) 堀江 昭好3)4) 西澤 崇5)
■キーワード
肺炎球菌, 血清型, 上咽頭定着, 13価肺炎球菌蛋白結合型ワクチン, 23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン
■要旨
肺炎球菌感染症は,上咽頭への無症候性定着が発症の契機となる.7価肺炎球菌蛋白結合型ワクチンが国内に導入された2010年以降,横浜市金沢区にある横浜南共済病院小児科(以下,金沢区)において6歳以下下気道感染症乳幼児の上咽頭から検出された同菌の血清型を調べて来た.今回,2018年の結果を同年に出雲市にある島根県立中央病院小児科(以下,出雲市)において同様の方法で得た同菌の血清型と比較した.血清型は莢膜膨化法により特定した.
金沢区,出雲市の順に結果を示す.上咽頭培養を提出した症例は323例と415例,同菌が検出されたのは66例と108例で検出率は20%と26%,検出例の月齢中央値はいずれも1歳であった.血清型が確認できた65株と108株における血清型の種類は22種類と18種類で,13価肺炎球菌蛋白結合型ワクチン(PCV13)血清型は出雲市で3例から血清型3が検出されたが他はすべて非PCV13血清型であった.両地域で血清型が一致したのは14種類で,それぞれの64%と78%を占めた.検出率がもっとも高かったのは金沢区では11A/Eと35B(10.8%),出雲市では23A(19.4%)であった.
乳幼児の上咽頭に定着する肺炎球菌の血清型においてPCV13血清型はほぼ排除されたこととともに,種類は大きくは変わらないが血清型には地域による特性のあることも示唆された.
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【原著】
■題名
乳幼児突発性危急事態に対するBrief Resolved Unexplained Eventの患者分布
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部救急診療科1),同 教育研修センター2),同 総合診療部3),同 集中治療科4) 田中 大貴1) 天笠 俊介1) 菊池 奈々絵2) 佐々木 隆司1) 植松 悟子1) 辻 聡1) 窪田 満3) 中川 聡2)4)
■キーワード
乳幼児突発性危急事態, ALTE, BRUE, 小児, 救急外来
■要旨
2016年に乳幼児突発性危急事態(apparent life threatening events:ALTE)に代わる概念としてBrief resolved unexplained events(BRUE),並びにHigherもしくはLower-riskのリスク分類が提唱された.本邦においてALTE症例をBRUE分類でマネジメントすることの有用性を検討するpilot studyとして,当院での1年間の症例を報告する.
2019年1月から12月まで国立成育医療研究センター救急外来で,1歳未満のALTE症例を後方視的に検討した.Higher-riskおよびLower-risk BRUEへの該当があるかにより分類し,その他の患者をBRUEに該当しないALTEとしてALTE not BRUEと定義し分類した.
11症例が対象となり,Higher-risk BRUEが3例,Lower-risk BRUEが4例,ALTE not BRUEが4例で,診断がついたのはALTE not BRUEの硬膜下血種1例,Higher-risk BRUEの憤怒痙攣1例であった.
ALTEからBRUEへの完全置換は困難で定義が重なり合わない症例も存在するが,Lower risk BRUEに分類された本検討の4症例に緊急性の高い疾患は認めず,反復も認めなかった.日本の小児救急医療の現場で,BRUE分類の概念,リスク分類が適切かさらなる検討が必要である.
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【症例報告】
■題名
化膿性股関節炎治療中に深部静脈血栓症を合併した10歳児
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 感染症科2) 宮沢 絢子1) 小川 優一1) 荒木 孝太郎2) 幡谷 浩史1)
■キーワード
深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症, 血栓後症候群, 化膿性股関節炎, methicillin-resistant Staphylococcus aureus
■要旨
小児の深部静脈血栓症(Deep Venous Thrombosis:以下DVT)は近年増加傾向にあるが,リスク評価や予防策の推奨,治療は統一されておらず,予後については明らかではない.今回,化膿性股関節炎を発症した10歳男児に,膝窩から総腸骨静脈に及ぶDVTを合併した症例を経験した.遺伝性血栓性素因はなかったが感染や肥満,長期臥床などの血栓リスクがあった.しかし,当院のDVT予防プロトコルの対象年齢外であったため,それらの因子について十分な検討が行われず予防を実施していなかった.
DVTには肺塞栓症の合併のリスクがあり,長期的にも血栓後症候群の合併によって日常生活の質が低下することが少なくない.しかし,慢性期の治療や長期予後については定まった方針がないため予防が肝要である.新生児期と思春期以降が好発年齢ではあるが,前思春期であっても年齢に応じてリスク評価を行い,早期発見と早期介入を行うことが必要である.
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【症例報告】
■題名
軽症熱傷後の毒素性ショック症候群に重篤な急性脳症様病態を併発した乳児例
■著者
東京慈恵会医科大学小児科1),東京大学医学部付属病院小児科・新生児治療部2) 高見 遥1) 日暮 憲道1) 関口 由利子1) 伊藤 研1) 高橋 尚人2)
■キーワード
高サイトカイン血症, 出血性ショック脳症症候群, 熱傷性脳症
■要旨
小児熱傷では,その重症度に関わらず毒素性ショック症候群(TSS)の合併が知られている.一方,TSSと急性脳症様の病態を併発した症例報告は稀である.
軽症熱傷後にTSS,重篤な急性脳症様病態を呈した11か月男児例を経験した.入院5日前に頸部・前腕に面積約10%のII度一部III度熱傷を受傷した.専門診療科を受診せず解熱鎮痛剤のみで経過観察されたが,入院前日に発熱,その後けいれん重積が出現した.前医へ搬送後けいれんは約3時間持続し,ショック状態を呈したため当院に転院した.血液,髄液培養陰性で皮膚紅斑も認めなかったが,意識障害,発熱,血圧低下,下痢,肝逸脱酵素上昇など多臓器障害を認め熱傷創部よりMRSA,TSST-1が検出され,入院3週目に手指落屑を認めたためTSSと診断した.また入院時脳波でびまん性高振幅徐波,頭部MRIで白質の拡散制限とその後の大脳萎縮を認め,臨床症状と併せ急性脳症と診断した.後に重度の痙性四肢麻痺・知的障害が残存し,入院時の血液・髄液でサイトカイン値の上昇を確認した.
TSSに伴う中枢神経症状は一過性のものが多いと報告されているが,急性脳症様病態を呈する可能性があることは臨床的に重要である.小児の軽症熱傷ではTSSのみならず,急性脳症により重篤な後遺症を残すリスクがあることを認識し,経過観察とともに家族への注意喚起,発熱時の早期対応が重要である.
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【症例報告】
■題名
偏食と服薬アドヒアランス不良により発症した巨赤芽球性貧血
■著者
国立成育医療研究センター小児がんセンター1),同 教育研修センター2),同 内分泌・代謝科3) 布施田 泰之1)2) 一色 恭平1) 大隅 朋生1) 石黒 精2) 堀川 玲子3) 松本 公一1) 富澤 大輔1) 加藤 元博1)
■キーワード
巨赤芽球性貧血, 自閉症スペクトラム, 偏食, 服薬アドヒアランス
■要旨
症例は,自閉症スペクトラムとビタミンD欠乏性くる病のある9歳男児.活気不良を主訴に受診した前医によって汎血球減少を指摘され,当院に紹介された.病歴の詳細な聴取により,極端な偏食が明らかになり,処方されていたビタミンB複合体とビタミンDのアドヒアランスの不良も判明した.骨髄穿刺では芽球の増加はみられなかったものの,巨赤芽球性変化を認めた.また,ビタミンB12と葉酸の欠乏を認めたことから,巨赤芽球性貧血と診断した.ビタミンB12と葉酸を静脈注射により補充したところ,すみやかに汎血球減少は改善した.治療抵抗性であったビタミンD欠乏性くる病に関しても,栄養指導と内服薬の工夫をしていくこととなった.
自閉症スペクトラムの児では偏食の頻度は高く,経過が長いためビタミン欠乏を起こしうる.栄養素の処方がなされていても服薬アドヒアランスに一層の注意を払う必要がある.また,巨赤芽球性貧血は汎血球減少をきたすことから血液疾患の鑑別として念頭に置いて問診・検査を行うべきである.
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【症例報告】
■題名
豚・牛肉摂取後に消化器症状を反復した3歳発症のpork-cat syndrome
■著者
市立札幌病院小児科1),北海道大学病院小児科2) 工藤 絵理子1) 竹崎 俊一郎2) 山崎 健史1) 伊藤 智城1) 畠山 欣也1) 川村 信明1) 佐野 仁美1)
■キーワード
pork-cat syndrome, 獣肉アレルギー, 消化器症状, 血清アルブミン, galactose-α-1,3-galactose
■要旨
Pork-cat syndrome(PCS)は,ネコ血清アルブミンで感作された後に,交差反応によって豚肉摂取時にアレルギー症状を呈する疾患である.我々は3歳から豚・牛肉摂取後に消化器症状を反復した6歳男児例を経験した.食事摂取歴と臨床症状,ネコ飼育歴,ネコ血清アルブミン・ブタ血清アルブミン特異的IgE陽性,さらに豚・牛・羊の生肉を用いた皮膚プリックテスト陽性,加熱肉を用いた皮膚プリックテストが陰性であったことから,PCSと診断した.本症例は,既報の中では最年少例であった.PCS患者では十分に加熱した肉は摂取可能なことが多いため,獣肉アレルギーの診療ではPCSも考慮すべきである.
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【症例報告】
■題名
低身長と精神運動発達遅滞を呈し,全エクソーム解析で診断されたAlazami症候群
■著者
広島大学病院小児科1),東広島医療センター小児科2),横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学教室3) 佐々木 夏澄1) 石川 暢恒1) 下田 浩子2) 福田 裕美3) 水口 剛3) 松本 直通3) 岡田 賢1)
■キーワード
Alazami症候群, 全エクソーム解析, LARP7遺伝子, 低身長, 発達遅滞
■要旨
Alazami症候群はLa ribonucleoprotein domain family member 7遺伝子(LARP7)が原因遺伝子であり,常染色体劣性遺伝形式をとる.重度の成長障害や精神運動発達遅滞,特異的顔貌を特徴とし,これまでに世界で13家系,26例の報告しかない稀な疾患である.今回われわれは低身長,精神運動発達遅滞で経過観察していた児に全エクソーム解析を行ったところ,LARP7の複合ヘテロ接合体変異を同定し,Alazami症候群の診断に至った.本症例とこれまでの症例を比較検討し,Alazami症候群の臨床的特徴について明らかにした.
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【症例報告】
■題名
ヘパリン入り微量採血管によりTSH受容体抗体偽高値を呈した先天性甲状腺機能低下症
■著者
新潟大学医歯学総合病院小児科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科新潟地域医療学講座2) 廣嶋 省太1) 林 雅子1) 澤野 堅太郎1) 入月 浩美1) 小川 洋平2) 長崎 啓祐1)
■キーワード
偽高値, ヘパリンリチウム血漿検体, 先天性甲状腺機能低下症, 甲状腺形成異常, TSH受容体抗体
■要旨
内分泌検査の多くは抗原抗体反応を測定原理としており,臨床像と検査結果の乖離時は非特異反応を疑う必要がある.先天性甲状腺機能低下症(以下CH)に対するレボチロキシンNa(以下LT4)治療過程で,甲状腺関連検査の非特異反応を疑った症例を報告する.4p-症候群の診断でNICU管理中の女児.新生児スクリーニングでTSH高値を指摘された.日齢15,TSH 2,467 μIU/mL,遊離T4 0.20 ng/dL,エコ―で甲状腺を認めず,最重症CHと診断し,LT4 10 μg/kg/日を開始した.初診時より児のTSH受容体抗体(以下TRAb,第三世代)弱陽性が続いたが,母体TRAb陰性であった.LT4を増量し遊離T4が正常上限以上でもTSH値は正常化せず,TSHとTRAbの非特異反応を疑った.TSHは希釈直線性が確認され,2STEP法によるキットも同様の結果であった.TRAbは分離剤ポリスピッツ血清検体では感度以下であり,NICU採血時はヘパリンリチウム血漿検体による偽高値と判明した.LT4を増量し,TSH値は正常化した.NICUで使用されるヘパリンリチウム入り微量採血管の血漿を用いたTRAb値は,血清を用いた値より高値になると報告されている.ヘパリン血漿検体によるTRAb(第三世代)測定は偽高値になることを広く啓蒙すべきである.
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【症例報告】
■題名
コロナウイルス感染症2019入院患児から同室付添いの母親に感染しなかった家族例
■著者
三重病院小児科1),三重中央医療センター呼吸器内科2) 菅田 健1) 杉浦 勝美1) 長尾 みづほ1) 篠木 敏彦1) 菅 秀1) 谷口 清州1) 井端 英憲2) 藤澤 隆夫1)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 小児, 家族内感染, 21トリソミー, 基礎疾患
■要旨
父親から2人の姉妹への重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)家族内感染が疑われた症例を経験した.姉妹はそれぞれ,アナフィラキシーの既往を持つ食物アレルギー,21トリソミーといった基礎疾患や先天性疾患を有していたが,コロナウイルス感染症2019の症状は軽症であり,入院後は無治療で経過観察した.母親には明らかな症状は無く,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription polymerase chain reaction;RT-PCR)検査で陰性が確認されていたが,姉妹の入院に付き添いを希望されたため,同室で過ごすことになった.姉妹の入院期間中,母親へも定期的にRT-PCR検査が施行されたが,いずれも陰性であった.姉妹2人のウイルス量をRT-PCR法により定量したところ,2人ともに2回目以降の検査でウイルス量は減少し,2回連続陰性を確認した後,第19病日に退院した.このような家族内でのSARS-CoV-2感染伝播について今後症例を集積し,小児から成人への感染リスクを検討する必要がある.
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【症例報告】
■題名
診断に16年を要したインターフェロン関連自己炎症性疾患
■著者
佐世保市総合医療センター小児科 大坪 善数 橋本 恵子 上玉利 彰
■キーワード
I型インターフェロノパシー, インターフェロン関連自己炎症性疾患, IFN signature, 大脳基底核石灰化, JAK阻害薬
■要旨
I型インターフェロン(IFN)はウイルス感染に対する防御反応の中心を担うサイトカインである.その過剰産生を主要病態とする自己炎症性疾患はIFN関連自己炎症性疾患と呼ばれる.症例は16歳女性.生後3か月時に凍瘡様皮疹で発症し,発熱,結節性紅斑を繰り返し,CRPは陰性化することなく経過した.生後7か月時の皮膚生検で脂肪織炎の所見を認めWeber-Christian病と診断した.2歳5か月時よりプレドニゾロン内服を開始したが,ぶどう膜炎,膝関節炎,弛張熱などの全身症状を認めた.自己抗体は陰性で,自己炎症性疾患関連の遺伝子変異は認めなかった.5歳以降は免疫抑制剤,生物学的製剤(抗TNF-α製剤,抗IL-6製剤)を導入し,関節症状,眼症状は抑制できたが,間欠熱,結節性紅斑は持続しCRPは弱陽性で推移した.16歳時に頭部CTで両側基底核に石灰化を認め,IFN signatureの亢進が判明した.PSMB8遺伝子変異は認めず,中條―西村症候群は否定的で,全エクソーム解析でも有意な変異を認めなかった.しかし,不明熱,凍瘡様皮疹,脂肪織炎に加え,大脳基底核の石灰化,IFN signatureの亢進から,臨床的にIFN関連自己炎症性疾患と診断した.臨床症状からIFN関連自己炎症性疾患を疑った場合,頭部CT検査で基底核石灰化の有無およびIFN signatureの評価が重要となる.
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【短報】
■題名
当院受診患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型抗体保有率調査
■著者
埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科1),同 検査技術部2) 大西 卓磨1) 戸田 有美2) 伊村 浩良2) 佐藤 智1)
■キーワード
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型, SARS-CoV-2, コロナウイルス感染症2019, COVID-19, 抗体保有率
■要旨
2020年,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)による感染症が日本を含む世界各地でパンデミックを起こしている.一般住民を対象としたコロナウイルス感染症2019罹患率の推定は抗体価測定によって行われているが,小児においては検討されていない.本研究は2020年9月に埼玉県立小児医療センターを受診した患者の残血清から無作為に500例を抽出し抗体価の解析を行った.陽性は4例(0.8%)でIgG陽性が1例,IgM陽性が3例であった.ほとんどの小児がSARS-CoV-2抗体を保有していなかった.今後更なる感染拡大が危惧され,一般の診療においても感染対策を継続する必要性が示唆された.
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【論策】
■題名
多職種連携で構築した小児医療過疎地域支援
■著者
大分大学,中津市立中津市民病院 是松 聖悟
■キーワード
地域医療, 多職種連携, 卒前卒後教育, 感染症予防, アレルギー対策
■要旨
2008年度に大分県は「おおいた地域医療支援システム構築事業」を大分大学医学部に委託した.担当教授が小児医療過疎地域を巡回し,その地域の医療,保健,教育,福祉と連携して,その地域を「子育てしやすい地域,笑顔の子どもを育む地域」とするための活動である.
その主な活動は,感染症予防,アレルギー対策,発達障害児支援,医療的ケア児支援,救急医療体制整備,生活習慣病予防,虐待予防・貧困対策,病児保育,災害対応,地域病院に勤務する医師の卒後研修で,それぞれの分野の体制整備に努め,いくつかの成果を論文として公表してきた.
今後の小児医療が目指すべき小児医療過疎地域支援の1例として報告する.
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