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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.6.11)
第125巻 第6号/令和3年6月1日
Vol.125, No.6, June 2021
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日本新生児成育医学会推薦総説 |
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新生児の痛みの評価とケア―痛み経験がもたらす影響を改善させるために―
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福原 里恵 863 |
日本小児神経学会推薦総説 |
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夏目 淳 873 |
総 説 |
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坂口 裕紀,他 878 |
原 著 |
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井上 佳也,他 883 |
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宮島 雄二,他 892 |
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後藤 研誠,他 898 |
症例報告 |
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殿園 晃平,他 904 |
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楠木 翔一朗,他 911 |
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大森 教雄,他 918 |
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山本 晶子,他 925 |
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伊藤 卓冬,他 930 |
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横山 浩子,他 936 |
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衣斐 恭介,他 942 |
論 策 |
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斎藤 雄弥,他 949 |
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地方会抄録(東京・鹿児島・広島・北海道・青森・香川・群馬・北陸・石川・福岡・佐賀・京都・山口・島根)
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957 |
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992 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻5号目次
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996 |
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999 |
【総説】
■題名
当院の腸重積症診療から見た非観血的整復術中止のタイミング
■著者
秋田赤十字病院小児科 坂口 裕紀 土田 聡子 田村 真通
■キーワード
腸重積症, 小児, 整復時間
■要旨
【目的】腸重積症は小児急性腹症の代表的疾患である.最近10年間に経験した20症例の診療状況について,日本小児救急医学会編ガイドライン及び文献との比較検討を行った.
【方法】2008年8月から2018年9月の10年間に,秋田赤十字病院小児科で経験した腸重積症例について,整復時間を中心に後方視的に検討した.
【結果】男児14例(64%),女児8例(36%),年齢は2歳未満が18例(81.8%)だった.このうち観血的整復術の適応と思われた2例を除く20例で,X線透視下非観血的整復術を施行した.整復に成功した症例は15例(A群,75.0%),整復を中止し小児外科に紹介した症例は5例(B群,25.0%)であった.年齢,発症から受診までの時間,整復圧(初圧・終圧),鎮静剤の使用率に関していずれも両群間に有意差を認めなかった.一方整復に費やした時間は,A群の2〜52.5分(中央値11.2分)に対しB群は6〜68分(中央値53分)と,B群の方が有意に長かった.さらに,A群の15例中14例(93.3%)が30分未満で整復されたのに対し,B群では5例中4例(80.0%)で手技時間に30分以上要していたが,結局整復に至らなかった.
【結語】非観血的整復に要する時間は概ね30分以内であった.それを超える場合は,観血的整復術の適応も考慮して,早期に小児外科医(外科医)と連携する必要があると考えた.
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【原著】
■題名
突発性発疹を対象とした熱性けいれんと鉄欠乏性貧血の関連性の分析
■著者
井上こどもクリニック1),たむらこどもクリニック2),パルこどもクリニック3) 井上 佳也1) 田村 一志2) 友政 剛3)
■キーワード
突発性発疹, 熱性けいれん, 鉄欠乏性貧血, 毛細管採血検査, 赤血球平均容積
■要旨
熱性けいれん(FS)の病態に鉄欠乏性貧血(IDA)が関連すると報告されている.本研究ではその関連性を評価すべく,FSを合併しやすい突発性発疹(ES)の乳幼児407例(男児199例,女児208例)を対象に,FS合併に関連する因子についてIDAも含めて検討した.末梢血検査は,全例発熱期に毛細管採血を用いて施行した.単変量解析では,FS合併群33例と非合併群374例の2群に分け,臨床像とFS合併の要因について分析した.その結果,FS合併群は非合併群に比較してFSの家族歴を有する例が多く(54.5% vs. 13.1%;P=0.000),月齢が高かったが(中央値:16か月 vs. 13か月;P=0.003),検査上はヘモグロビン(Hb)や赤血球平均容積(MCV)には全く差異を認めなかった.IDA診断(Hb<11 g/dL,ヘマトクリット<33%かつMCV<70 fL)の割合も0:26とFS合併群にIDA診断例はなかった.目的変数にFS合併を,説明変数に家族歴,月齢,MCV,Hbを選択して多重ロジスティック分析を行ったところ,家族歴がFSと強く関連した(P≒0;オッズ比11.2,95%信頼区間5.2〜24.9)が,MCVは有意な要因ではなかった.以上より,ES乳幼児におけるFSの合併に,FSの家族歴が明瞭な関連因子となるが,FSにIDAが関与する可能性は否定的と判断された.
本論文は日児誌第125巻8号P1243に著者訂正を掲載
http://www.jpeds.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=71
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【原著】
■題名
小児期に発症した血小板減少症の臨床経過と最終診断
■著者
安城更生病院小児科 宮島 雄二 植田 智希 畑下 直 安福 千香 鈴木 このみ 楢原 翔 大森 大輔 深沢 達也 久保田 哲夫
■キーワード
血小板減少症, 小児, 特発性血小板減少性紫斑病, 遺伝性血小板減少症, 診断
■要旨
当院で経験した小児期に発症した血小板減少症172例の臨床経過と最終診断について検討をした.血小板減少症の全患者172例では,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が158例(91.9%),遺伝性血小板減少症が10例(5.8%),ITPと診断後に他の疾患(骨髄異形成症候群2例,膠原病2例)へ診断が変更した症例が4例(2.3%)であった.ITP以外の患者の割合は,血小板減少が1年以上持続した41例では34.1%,最終確認時点でも血小板減少が持続していた33例では42.4%と上昇していた.初発時の血小板数別でITP以外の症例の割合をみると,2.0×104/μL未満では123例中1例(0.8%)であったが,2.0×104/μL以上では49例中13例(26.6%)であった.年齢別でITP以外の症例の割合をみると,9歳以下では156例中8例(5.1%)であったが,10歳以上では16例中6例(37.5%)であった.小児の血小板減少症の8.1%はITP以外の症例であった.10歳以上の症例や血小板数2.0×104/μL以上の症例でITP以外の症例が多く,家族歴と血小板形態の確認による遺伝性血小板減少症の鑑別や,ITPと診断されていても経過中に他の疾患へ進展する可能性に注意が必要である.
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【原著】
■題名
ムンプスワクチン接種歴のある唾液腺腫脹例の病原診断におけるRT-LAMP法
■著者
江南厚生病院こども医療センター 後藤 研誠 西村 直子 村瀬 有香 山田 眞子 安藤 拓摩 赤野 琢也 伊藤 卓冬 武内 俊 鈴木 喬悟 竹本 康二 尾崎 隆男
■キーワード
ムンプス, ムンプスワクチン, 二次性ワクチン不全, 病原診断, RT-LAMP法
■要旨
ムンプスワクチン既接種例でのムンプスの臨床診断は困難であり,正確な病原診断には実験室診断法が必要であるが,その検討は十分ではない.2013年9月から2017年4月に,唾液腺腫脹/疼痛を主訴に当院を受診して臨床的にムンプスが疑われた小児110例を対象とした.初診時に唾液を採取しRT-LAMP法によるRNA検出を行うとともに,ムンプスIgG/IgM血清抗体価(EIA法)を測定した.RNA陽性,IgM抗体陽性のいずれかを満たした症例をムンプスと病原診断した.110例のうち,ムンプスワクチン接種歴のある59例(年齢中央値:6.0歳,範囲:2.1〜14.1歳)を中心に患者背景や臨床像について後方視的に検討した.全例が1回接種で,ワクチン接種から罹患までの期間の中央値は3.1年(範囲:0.2〜9.3年)であった.59例中19例(32%)がムンプスと病原診断された.全例がRNA陽性で,IgM抗体陽性は3例(16%)のみであり,ワクチン接種後罹患例ではRT-LAMP法による病原診断が必要であった.IgG抗体は全例陽性で,全例が二次性ワクチン不全と考えられた.多変量解析で,非ムンプス例と比較して病原診断例では,周囲のムンプス流行あり(オッズ比9.4),顎下腺腫脹/疼痛あり(オッズ比5.1)の割合が有意に高かった.RT-LAMP法はムンプスワクチン接種歴のある唾液腺腫脹例の病原診断法として有用である.
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【症例報告】
■題名
尿管炎と尿路結石とを合併したIgA血管炎
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 殿園 晃平 北澤 克彦 本多 昭仁 仙田 昌義 小林 宏伸 井口 晃宏 内山 知佳 荒川 真梨子 山本 康之 馬 敏宰 佐藤 名帆子
■キーワード
IgA血管炎, 尿管炎, 尿路結石, 重複腎盂, 腹痛
■要旨
IgA血管炎では腎炎以外の泌尿器科的症候を呈することは稀である.片側の尿管炎と尿路結石を合併したIgA血管炎の7歳女児例を報告する.患児は,腹痛,両側下腿の点状出血,右膝関節痛を主訴に入院し,IgA血管炎と診断した(第1病日).入院時,右肋骨脊柱角の叩打痛と非糸球体性血尿も認めた.腹部超音波検査(AUS)では,右腎の重複腎盂,軽度の腎盂拡張,腎盂尿管移行部の粘膜肥厚所見を認めた.入院後,プレドニゾロンを開始したところ,皮疹と関節炎は1週間以内に軽快したが,間欠的な腹痛が持続していた.細菌学的検査で腎盂腎炎が否定され,第12病日のAUSでの腎盂拡張の増悪所見などからIgA血管炎に合併する尿管炎と診断した.第20病日より右側腹部痛が増悪し,AUSで右上部尿管内に結石像が確認された.高次医療機関に転院し,5週後に経尿道的結石破砕術を施行された.本症例では,IgA血管炎に合併した尿管炎が,潜在した重複腎盂やステロイド剤による高カルシウム尿症などとともに結石形成の病態に関与したものと推察された.尿管炎を合併したIgA血管炎患児に対しては,特にステロイド剤を使用している場合,続発する尿路結石にも注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
肝病変の発見と精査を契機に診断に至った囊胞性線維症
■著者
熊本大学病院小児科1),名古屋市立大学病院小児科2) 楠木 翔一朗1) 坂本 理恵子1) 渡邊 優1) 伊藤 彰悟2) 戸川 貴夫2) 中村 公俊1)
■キーワード
囊胞性線維症, 気管支喘息, 馬鈴薯肝, 胆汁うっ滞性肝硬変, アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
■要旨
囊胞性線維症(Cystic Fibrosis,以下CF)は本邦では罹患率が極めて低く,十分に認知されていないため,慢性的な咳嗽や呼吸障害の症状から難治性の気管支喘息と診断されることがある.また,本邦ではCF関連肝病変に関する報告は少ない.今回,気管支喘息と診断されていたが,肝病変の偶然の発見と精査を契機にCFの診断に至った症例を経験した.症例は7歳男児.幼児期から気管支喘息と診断され,急性増悪を反復していた.7歳時の急性増悪の際に,肺炎を疑われ撮影された胸部CTで馬鈴薯肝が偶然発見され紹介となった.肝病変以外に,副鼻腔炎,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,膵囊胞性病変などの複数の病変を認めた.肝臓病理検査で粘液栓による胆管閉塞が原因の胆汁うっ滞を認め,臨床経過と併せてCFが強く疑われ,遺伝学的検査により診断を確定した.
難治性の気管支喘息と診断されている小児の中にCFが潜在している可能性がある.また,CF関連肝病変の発見はCFの診断につながる可能性がある.CF関連肝病変は進行しても臨床症状や生化学検査は異常が乏しいため,画像検査や病理検査が発見診断に有用である.CFを見逃さないためには,難治性の経過,成長障害,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などを認める気管支喘息患者では,CFを念頭に置き,肝病変の精査と併せて,汗試験や遺伝学的検査などの精査を検討することが重要である.
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【症例報告】
■題名
遠心分離法による血漿交換療法を実施した乳児の難治性川崎病
■著者
長野県立こども病院小児集中治療科1),同 臨床工学科2),同 循環器小児科3) 大森 教雄1) 北村 真友1) 野田 俊輔1) 岡本 剛1) 稲村 憲一1) 箕浦 啓宣1) 齊間 貴大1) 黒坂 了正1) 児野 徹2) 佐藤 直己2) 中川 翔太2) 峯村 奈津希2) 大日方 春香3) 赤澤 陽平3)
■キーワード
血漿交換, 遠心分離法, バスキュラーアクセス, 難治性川崎病, 乳児
■要旨
本邦では膜分離法による血漿交換療法が主流であるが,欧米では遠心分離法が一般的である.体格の小さい小児や乳児に対する血漿交換は適切なバスキュラーアクセス,鎮静が重要となる.今回,免疫グロブリン静注療法(IVIG)に抵抗性であった乳児の難治性川崎病に対して膜分離法と遠心分離法による血漿交換療法を実施した症例を経験した.症例は3か月男児.IVIGに抵抗性で第7病日に右冠動脈拡張を認めたため,第9病日から血漿交換療法を合計5回実施した.治療により冠動脈病変は退縮傾向となった.5回の血漿交換のうち3回を膜分離法,2回を遠心分離法で実施した.IgG除去率,フィブリノゲン除去率は両者で同等であり,血小板減少率も変わりなかった.一方で,遠心分離法ではより少ない血液流量で,且つ短時間で実施することができた.また,膜分離法では脱血不良や血栓形成に伴う分離膜の閉塞を認めたが,遠心分離法ではトラブルなく実施することができた.遠心分離法による血漿交換は膜分離法と比較してより少ない血液流量,短い治療時間で同等の効率を得ることができ,治療中のトラブル頻度も少なかった.バスキュラーアクセスや鎮静管理が重要である乳幼児に対する血漿交換では遠心分離法が従来の膜分離法よりも有用であると考えた.
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【症例報告】
■題名
2型糖尿病を発症しインスリン補充を要した相撲部の12歳男児
■著者
熊本中央病院小児科 山本 晶子 小松 なぎさ
■キーワード
2型糖尿病, 小児肥満, 重量級競技者
■要旨
相撲などの重量級競技者では競技力向上を目指し体重の増量に励み,その弊害として内臓脂肪蓄積や高インスリン血症等の健康被害が報告されている.成長期の重量級競技者においても脂肪肝や高脂血症の報告があるが,今回2型糖尿病を発症した相撲部の12歳男児を経験したので報告する.
症例男児は相撲部に所属し優秀な成績を収めていた.3歳頃より肥満傾向あり,小学校4年生の肥満健診で指摘されていたが精査していなかった.口渇・多飲・多尿,倦怠感を認め,2週間で体重が10 kg減少したため医療機関を受診.尿糖(3+),尿ケトン体(2+),空腹時血糖333 mg/dL,HbA1c 15.2%であり糖尿病が疑われ当院紹介となった.初診時身長170 cm,体重92.3 kg,肥満度51.0%,BMI 31.9,黒色表皮腫あり.血液ガスは正常範囲内,自己抗体はいずれも陰性で,家族歴から2型糖尿病と診断した.入院後はインスリン治療を開始.徐々に自己分泌が回復しインスリン減量,メトホルミン内服開始し退院とした.入院中に本人,母に栄養指導を実施,外来でも継続的に指導している.
スポーツ競技者における健康問題は,陸上や新体操などのスポーツ競技に伴う痩せの問題は以前より重要視されるようになってきた.一方,相撲などの重量級競技者の健康問題,特に小児の競技者に対する報告は少なく,現状の把握及び定期的かつ継続的な健康管理が必要と考える.
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【症例報告】
■題名
クラリスロマイシン投与後に症状再燃と菌再分離を認めた百日咳の乳児
■著者
江南厚生病院こども医療センター 伊藤 卓冬 西村 直子 山田 眞子 安藤 拓摩 赤野 琢也 後藤 研誠 竹本 康二 尾崎 隆男
■キーワード
百日咳, 百日咳菌, 低月齢乳児, クラリスロマイシン, PT-IgG抗体
■要旨
症例は日齢31の女児.3日前からのチアノーゼを伴う痙咳と無呼吸発作を認め入院し,百日咳菌のDNA検出と分離により百日咳と病原診断された.クラリスロマイシン(clarithromycin,CAM)15 mg/kg/日を8日間投与し,痙咳の軽減と無呼吸発作消失をみて退院とした.しかし,治療終了から7日目に痙咳と無呼吸発作の再燃を認めて再入院となり,百日咳菌のDNA検出と分離が再度認められた.再入院後にエリスロマイシン(erythromycin,EM)30 mg/kg/日を14日間投与し,症状の改善と,DNA検出および菌分離の陰性化を確認した.初回および再入院時に分離された2株についてE-testによる抗菌薬感受性試験を施行し,CAMとEMに対して共に感性であった.感染源はDPTワクチン4回既接種の父と考えられ,初回入院翌日にCAMが投与された.児の初回入院中のPT-IgG抗体価は10 EU/mL未満で推移し,再入院時には27 EU/mLに上昇していた.初回と再入院時に分離された百日咳菌は,遺伝子解析により同一株と考えられた.低月齢乳児の百日咳においては,ガイドラインで推奨されているCAM投与期間の7日間は不十分である可能性が示された.
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【症例報告】
■題名
Cronobacter sakazakiiによる菌血症を伴う肺炎を発症した乳児
■著者
鹿児島大学病院小児科1),鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野2) 横山 浩子1) 児玉 祐一1) 高橋 宜宏1) 岡田 聡司1) 久保田 知洋1) 上野 健太郎1) 藺牟田 直子2) 西 順一郎2) 河野 嘉文1)
■キーワード
Cronobacter sakazakii, 肺炎, 菌血症, 先天性心疾患, 極低出生体重児
■要旨
Cronobacter sakazakiiは自然環境下に広く分布するグラム陰性桿菌である.新生児において調製粉乳を介して髄膜炎,敗血症などの起炎菌になることが海外では知られるが,本邦における本菌による感染症の報告は稀である.今回我々は,先天性心疾患を持つ極低出生体重児で本菌による菌血症を伴う人工呼吸器関連肺炎を発症した症例を経験した.症例は1か月の男児.在胎32週1日,体重1,154 gで出生した.大動脈弓離断複合B型の管理のため,人工呼吸器,末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテル(PIカテ)および動脈ラインを使用していた.日齢33に人工呼吸器関連肺炎を発症し,アンピシリンとセフタジジムを開始した.吸引痰培養,血液培養からC. sakazakiiが検出され,セフォゾプランへ変更した.第3病日に肺炎は改善したが,菌血症は持続した.さらに血小板減少を認め,第5病日の血液培養でも同菌の検出を認めたことから,同日にPIカテと動脈ラインの入れ替え,第6病日にアミカシンの追加を行った.その後血小板数の増加を認め,血液培養も陰性化した.抗菌薬を2週間使用し,治療終了した.調製粉乳からは本菌の検出はなかった.持続菌血症となったことから,人工呼吸器関連肺炎からの菌血症で血管確保が困難な症例であっても,起炎菌がC. sakazakiiの場合は特に,速やかな血管内留置カテーテル抜去が望ましいと考えられる.
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【症例報告】
■題名
頭髪牽引による帽状腱膜下血腫の3例
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 衣斐 恭介 北澤 克彦 殿園 晃平 荒川 真梨子 内山 知佳 山本 康之 井口 晃宏 小林 宏伸 仙田 昌義 本多 昭仁
■キーワード
帽状腱膜下血腫, 頭部外傷, 児童虐待, 頭髪牽引, 子ども虐待対応院内組織
■要旨
新生児期を過ぎた小児の帽状腱膜下血腫(subgaleal hematoma:SGH)症例の報告は少ない.頭髪牽引が原因と考えられた帽状腱膜下血腫の学童女児3症例を報告する.年齢は,6歳2例,11歳1例であった.3例とも頭部の腫脹を主訴に救急外来を受診したが,頭部の打撲痕や脱毛,神経学的異常を認めなかった.頭部CTでは頭蓋内の異常所見を認めなかった.3例全例に,基礎疾患,凝固系検査の明らかな異常所見,凝固異常を来す服薬歴はなかった.1例は友人による,2例は母による頭髪牽引がSGHの発症原因と考えられた.入院後SGHが増大した1例では外科的に血腫除去を行ったが,2例では自然退縮した.輸血を要するほど貧血が進行した症例はなかった.母による頭髪牽引が原因と判断した2例では,複雑な家庭環境が判明した.このうち1例は,自治体保健師と外来担当医による経過観察を行った.もう1例では,両親による繰り返す身体的虐待の既往が判明したため,退院と同時に児童相談所に一時保護となった.小児のSGHは通常予後良好であるが,身体的虐待による発症である可能性がある.小児のSGHを診断した際には,積極的な社会的介入を考慮すべきである.
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【論策】
■題名
コロナウイルス感染症2019に伴う長期休校がもたらした中学生への影響
■著者
多摩北部医療センター小児科1),清瀬市教育委員会2) 斎藤 雄弥1) 犬丸 淑樹1) 中村 春野1) 大森 希望1) 徐 アレキサンダー1) 林 泰志1) 一瀬 真美1) 本間 丈博1) 赤星 祥伍1) 仁科 範子1) 大澤 由記子1) 坂田 篤2) 小保内 俊雅1)
■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 長期休校, 清瀬市, 中学生, アンケート
■要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の拡大予防のために実施された長期的な休校措置は,子どもたちへ心理的,身体的に影響を及ぼした可能性があるが,その実態は調査されていない.今回,我々は清瀬市教育委員会とともに清瀬市の公立中学校に在籍する生徒に対して,休校期間中の心情,体調,日中の活動,睡眠に関するアンケートを行った.
結果は,1,688人から回答を得た(回収率96.8%).学校再開がいつになるかわからない不安を感じた者は46.5%,休校中に登校したいと思った者は60.1%,休みが続いてほしいと思った者は25.0%であり,2年生は1年生,3年生に比べ,不安が少なかった(p<0.001).何らかの体調不良があると回答した者は全体で55.8%であり,1年生と比較し2年生で多かった(p=0.015).日中の活動で最も時間を割いていることは,各学年ともゲーム(28.4%),ネット利用(25.9%),TV・動画視聴(29.4%)が多く,運動をしていない者は高学年ほど多かった(9.7%).学校再開前2週間の起床時刻は,1年生(中央値7時30分)と比較し,2,3年生(中央値8時00分)の一部で後退していた(p<0.001).
心情,体調,睡眠に関する設問の回答において学年間で差異を認めた.長期休校は一部の生徒に不安をもたらし,子どもの健康に悪影響を及ぼした可能性がある.
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