 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.4.13)
第125巻 第4号/令和3年4月1日
Vol.125, No.4, April 2021
バックナンバーはこちら
|
 |
|
日本小児神経学会推薦総説 |
|
てんかん重積状態(けいれん重積状態)の治療―最近の変化―
|
|
菊池 健二郎,他 557 |
日本小児感染症学会推薦総説 |
|
大竹 正悟,他 569 |
総 説 |
|
川崎 幸彦 579 |
原 著 |
|
勝沼 俊雄,他 588 |
|
山元 佳,他 599 |
|
山川 祐輝,他 607 |
症例報告 |
|
大野 綾香,他 612 |
|
家村 綾子,他 619 |
|
藤山 菜摘,他 625 |
|
佐藤 琢郎,他 631 |
|
神川 愛純,他 638 |
|
別所 晶子,他 645 |
論 策 |
|
松浦 潤,他 651 |
|
|
660 |
|
661 |
|
686 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
|
No. 103 エスカレーターと壁に挟まれて受傷した体幹外傷
|
|
687 |
|
No. 104 おむつ交換台からの墜落による前額部打撲
|
|
691 |
日本小児科学会小児医療提供体制委員会報告 |
|
694 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
|
小児科研修プログラムにおける新生児研修に関するアンケート調査
|
|
709 |
日本小児医療保健協議会栄養委員会主催 |
|
712 |
|
|
713 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2021年63巻3号目次
|
|
718 |
|
721 |
|
722 |
【総説】
■題名
IgA血管炎における発症病態からみた新規バイオマーカー
■著者
札幌医科大学医学部小児科学講座 川崎 幸彦
■キーワード
IgA血管炎, IgA血管炎・腎炎, 小児, 発症病態, 予後予測因子
■要旨
IgA血管炎は,関節炎,紫斑や腹痛などを主症状とする小児期発症の代表的な血管炎である.約30〜60%の頻度で腎炎を合併し,腎炎の程度がIgA血管炎自体の予後を左右する.IgA血管炎の疾患活動性を評価するためのバイオマーカーとして,CD4+ T細胞のサブセットに関する指標,糖鎖不全IgA1抗体,抗内皮細胞IgA抗体やE-セレクチン,トロンボモジュリン,補体やマクロファージなどの自然免疫活性因子,腎生検組織における組織障害度に加えメサンギウム形質転換やマクロファージ浸潤度,血管炎の指標である凝固異常などがある.これらのバイオマーカーを適正に用いることで,IgA血管炎の疾患活動性を早期に評価し,重症例に対してより的確な早期治療を行いIgA血管炎・腎炎の予後改善に努める必要がある.
本論文は日児誌第126巻12号P1678に論文撤回を掲載
http://www.jpeds.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=71
|
|
【原著】
■題名
小児喘息長期管理薬フルチカゾン/ホルモテロール配合剤の無作為化比較試験
■著者
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科1),杏林製薬株式会社臨床開発センター2) 勝沼 俊雄1) 北村 尚也2) 釜田 美保2) 石川 恭行2)
■キーワード
フルチカゾン, ホルモテロール, 吸入ステロイド, 長時間作用性β2刺激薬, 小児気管支喘息
■要旨
本邦で小児喘息適応を有する吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激薬配合剤はフルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロール(FP/SM)のみである.フルチカゾンプロピオン酸エステル/ホルモテロール配合剤(FP/FM)が,新たな治療選択肢になり得るかを検討すべくクロスオーバー比較試験及び長期試験を実施した.本稿では,FP/SMを対照としたクロスオーバー比較試験について報告する.
5歳以上16歳未満の日本人喘息患者を対象にFP/FM(200/20 μg/日)及びFP/SM(200/100 μg/日)を各2週間投与する多施設共同無作為化非盲検実薬対照2群2期クロスオーバー比較試験を実施した.各治療期終了日の直前7日間で得られた朝のピークフロー(mPEF)値のベースラインからの変化量を主要評価項目とし,その他,夜のピークフロー値,症状スコア,有害事象,臨床検査及び12誘導心電図等を評価した.
mPEF値のベースラインからの変化量において,FP/SM群に対するFP/FM群の非劣性を確認した(群間差LS Mean 0.93 L/min,95%信頼区間−4.57〜6.43 L/min,非劣性マージン−15 L/min).その他,両群間に有効性及び安全性評価で大きな違いは認められなかった.
FP/FMは,小児喘息の新たな治療選択肢になり得ると考える.(JapicCTI登録番号:173632)
|
|
【原著】
■題名
渡航関連疾患リファレンスセンターを海外渡航後に受診した小児例の診療実績
■著者
国立国際医療研究センター国際感染症センター1),東京ビジネスクリニック2) 山元 佳1) 竹下 望1) 大曲 貴夫1) 金川 修造1)2)
■キーワード
海外渡航後保険診療, 輸入感染症, 海外渡航後の体調不良, インバウンド, アウトバウンド
■要旨
【背景】海外渡航者と訪日外客の増加により海外渡航後の小児を診療する機会は今後も増加が予想されるが,日本での診療の実態は明らかではない.
【方法】2005年1月から2016年12月に海外渡航後保険診療で来院した18歳未満の国際感染症センター受診者を対象とした.診療録より年齢,性別,渡航国,渡航様式(観光,移住,親の帰省,留学,訪日外客:一時的な滞在を目的とした外国からの渡航など),主訴,最終診断,転帰を抽出した.難民健康診断症例は対象から除外した.
【結果】269例が検討の対象となった.0〜5歳が101例,6〜11歳が83例,12〜17歳が85例であった.渡航地域はアジアが180例(67%)と最多でインドネシア,フィリピンが多かった.目的は,観光が最多であったが,0〜5歳で移住,6〜11歳で帰郷,12〜17歳で留学やスタディツアーの割合が高かった.呼吸器感染症,消化器感染症が多く,熱帯地域特有の疾患はデング熱10例,腸チフス・パラチフス3例,マラリア1例と5.9%のみであった.長期渡航,VFR目的の渡航,訪日外客では観光目的の短期渡航者と比べて有意に熱帯地域関連感染症が多かった(p=0.04).22例が入院したが,死亡例はなかった.
【結語】海外渡航後の小児患者における熱帯地域特有の感染症は6%弱と少なかったが,長期滞在者,親の帰省などの渡航者においては注意が必要である.
|
|
【原著】
■題名
小児炎症性腸疾患におけるメサラジン不耐症
■著者
久留米大学医学部小児科学講座 山川 祐輝 水落 建輝 坂口 廣高 石原 潤 山下 裕史朗
■キーワード
炎症性腸疾患, 小児, メサラジン, 不耐症
■要旨
【背景】小児の炎症性腸疾患(IBD)患者は増加傾向にある.メサラジンはIBDのキードラッグであるが,一定頻度で不耐症を発症する.その症状はIBDと類似しているため,IBDを診療する医師を悩ます問題となっているが,小児の報告は少ない.本研究の目的は,当院の小児IBDにおけるメサラジン不耐症の臨床像を明らかにすることである.
【方法】対象は,2010年1月から2019年12月の間に久留米大学病院小児科で新規診断した16歳未満の潰瘍性大腸炎(UC)とCrohn病(CD)のうち,メサラジン製剤の内服歴がある症例.診療録から不耐症を起こした症例を抽出し,臨床像を後方視的に検討した.
【結果】対象は85例(UC51例,CD34例)で,そのうちメサラジン不耐症は9例(11%)であった.年齢は中央値13歳(5〜15歳),男女比は4:5で,UC4例(8%),CD5例(15%)であった.内服開始から不耐症状出現までの期間は中央値26日(6〜837日)で,4週未満が半数(56%)を占めていた.不耐所見は,CRP上昇78%,腹痛67%,下痢56%,発熱44%,血便0%で,DLST陽性率は57%(4/7)であった.
【結論】当院の小児IBDにおけるメサラジン不耐症の発症率は11%で,半数が開始4週未満に発症していた.
|
|
【症例報告】
■題名
ATP1A3変異を認める発達性てんかん性脳症
■著者
広島市立舟入市民病院小児科1),昭和大学医学部小児科2) 大野 綾香1) 藤井 裕士1) 佐藤 友紀1) 谷本 綾子1) 山根 侑子1) 二神 良治1) 吉野 修司1) 下薗 広行1) 松原 啓太1) 岡野 里香1) 浅井 秀幸2) 日隈 のどか2) 加藤 光広2)
■キーワード
ATP1A3遺伝子, 乳児てんかん, 難治性てんかん, 無呼吸発作
■要旨
ATP1A3は2004年に急性発症ジストニア・パーキンソン症の原因遺伝子と同定されて以来,小児交互性片麻痺(Alternating Hemiplegia of Childhood:AHC)など多様な表現型が報告されている.近年,乳児期早期から無呼吸発作,難治性てんかん,不随意運動,眼球運動異常,精神運動発達遅滞を特徴とする表現型を呈する症例が報告され始めた.今回,我々はATP1A3変異(c.2116G>A,p.G706R,de novo)を認める乳児期早期発症の発達性てんかん性脳症の1例を経験した.この変異はAHCで報告されている変異であるが,発達性てんかん性脳症としての報告はない.症例は生後1か月から無呼吸,偏視を伴うけいれん発作の他,眼球運動異常を繰り返し,中等度の精神運動発達遅滞を呈している2歳男児.各種抗てんかん薬に治療抵抗性を示したが,臭化カリウム(potassium bromide:KBr)を導入後けいれん発作の頻度,程度が著しく改善した.これまでにATP1A3変異例にKBrを使用した報告はないが,本疾患に有効である可能性がある.乳児期早期から無呼吸発作や難治性てんかん,眼球運動異常を認める症例ではATP1A3変異による乳児期早期発症の発達性てんかん性脳症も考慮する必要がある.
|
|
【症例報告】
■題名
出生時から開口障害を認めたデスモイド型線維腫症
■著者
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野1),同 医学部附属病院頭頸部外科2),同 医学部附属病院病理部3),同 大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野4),九州大学大学院医学研究院形態機能病理学5) 家村 綾子1) 柳町 昌克1) 田崎 彰久2) 廣田 由佳3) 大西 威一郎3) 神谷 尚宏1) 津島 文彦4) 原田 浩之4) 木下 伊寿美5) 孝橋 賢一5) 小田 義直5) 高木 正稔1) 明石 巧3) 朝蔭 孝宏2) 森尾 友宏1)
■キーワード
開口障害, デスモイド型線維腫症, 頭頸部, 腫瘍性病変, β-catenin
■要旨
開口障害は,顎関節そのものの障害,顎関節の動きを支配する神経や筋の障害,隣接臓器の障害などを引き起こす様々な疾患の一症状である.そのため開口障害の鑑別疾患は多岐に及び,中でも腫瘍性病変は致死的となる場合もあるため,稀ではあるが重要な鑑別疾患のひとつである.今回,生後から開口障害を認めていたが乳幼児健康診査では経過観察を指示されていた3歳男児が,画像検査や病理組織学的検査の結果,右側頭下窩のデスモイド型線維腫症と診断され,慎重な経過観察を行い腫瘍の退縮と開口障害の改善を認めた症例を経験した.デスモイド型線維腫症は年間100万人中2〜4人に発症する希少疾患で,腫瘍増大を示す症例が多い中,腫瘍の自然消退を認める場合もあり臨床経過の予測が難しい.また,外科的腫瘍摘出後の局所再発例の報告も多く治療方針が確立していない.さらに小児では腫瘍の増大速度が速く浸潤傾向も強い特徴があることから,正確な診断や慎重な治療選択が必要となる.
乳幼児健康診査など日常診療の場では,開口障害の鑑別疾患として腫瘍性病変の可能性も念頭に置いた診療が必要である.
|
|
【症例報告】
■題名
Mycobacterium fortuitum感染による小児下顎骨骨髄炎
■著者
熊本赤十字病院小児科1),熊本大学大学院生命科学研究部歯科口腔外科学講座2),熊本赤十字病院歯科・歯科口腔外科3),同 病理診断科4) 藤山 菜摘1) 余湖 直紀1) 片岡 菜摘1) 西原 卓宏1) 川原 健太2)3) 廣末 晃之2)3) 長峯 理子4) 武藤 雄一郎1) 平井 克樹1) 右田 昌宏1)
■キーワード
小児, 下顎骨骨髄炎, 非結核性抗酸菌, Mycobacterium fortuitum
■要旨
小児の非結核性抗酸菌症の報告は稀である.成人においては肺感染症が問題となるのに対し,小児では皮膚感染症やリンパ節炎といった肺外感染症の報告が多いが,骨髄炎は稀であり,その中でも下顎骨骨髄炎はさらに稀である.我々は,歯科治療後に生じたMycobacterium fortuitumによる下顎骨骨髄炎を経験した.症例は12歳の女児.歯科治療後より右下顎腫脹,発熱と疼痛が出現し,近医で抗菌薬加療,切開排膿を受けていた.改善がみられないため当院紹介となり,造影MRIを施行し,下顎骨骨髄炎と診断した.右側下顎第一臼歯の抜歯および下顎骨皮質骨除去術を行い,同部位の肉芽組織から類上皮細胞を含む肉芽腫を認め,膿培養からMycobacterium fortuitumが検出された.アミカシン・イミペネム・シプロフロキサシンの抗菌薬投与を6週間施行し,その後ファロペネム・シプロフロキサシンの内服で抗菌薬加療を継続し,治療を完遂した.
|
|
【症例報告】
■題名
小児期発症好酸球性食道炎5症例の臨床像
■著者
国立成育医療研究センター消化器科1),同 アレルギーセンター2),同 病理診断部3) 佐藤 琢郎1) 竹内 一朗1) 清水 泰岳1) 伊藤 夏希1) 宇佐美 雅章1) 荻田 博也2) 福家 辰樹2) 野村 伊知郎2) 大矢 幸弘2) 義岡 孝子3) 新井 勝大1)2)
■キーワード
好酸球性食道炎(EoE), 好酸球性消化管疾患(EGID), PPI反応性食道好酸球増多(PPI-REE), 上部消化管内視鏡検査
■要旨
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)は,好酸球浸潤を伴う食道粘膜の炎症によって食道機能障害を生じ,重篤な場合には成長障害や食道狭窄を合併し得る疾患である.本邦では稀な疾患であったが,近年,成人患者の増加が報告されており,小児患者も増加する可能性があるが,本邦の小児EoEの実態は明らかでない.当院で2年半の間に診断した5例の小児EoE患者の臨床像を,欧州の報告と比較して検討した.
5例の男女比は4/1で,発症時年齢は中央値4歳0か月,診断時年齢は中央値9歳1か月で,4例は他のアレルギー疾患を合併し,1例はCrohn病の治療中に発症した.初発症状は4例が嘔吐,胸やけ,心窩部痛や食後の咳嗽などの胃食道逆流症状で,嚥下困難や体重増加不良を呈した症例も確認された.診断時の内視鏡検査で縦走溝と輪状溝が全例に認められ,病理所見における最大食道好酸球数は35〜83/HPFであった.治療にはプロトンポンプ阻害薬が全例に使用され1例で寛解し,他の4例中2例は局所ステロイドを追加して寛解した.欧州の小児EoE患者の臨床像と比較して,患者背景や臨床症状に明らかな差異は認められなかった.
本邦の小児EoE患者は,欧州と同様の臨床像を呈する可能性が示唆された.本邦におけるEoEの実態を明らかにするとともに,早期診断と治療介入のための取り組みが求められている.
|
|
【症例報告】
■題名
川崎病に合併したマクロファージ活性化症候群の早期診断に対する臨床指標
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科1),富山県立中央病院小児科2) 神川 愛純1) 清水 正樹1) 坂井 勇太1) 西田 圭吾1) 伊川 泰広1) 高桑 麻衣子2) 藤田 修平2) 畑崎 喜芳2) 和田 泰三1) 谷内江 昭宏1)
■キーワード
マクロファージ活性化症候群, 川崎病, 血小板数, サイトカイン
■要旨
マクロファージ活性化症候群(MAS)は,リウマチ性疾患に認められる致死的な合併症の一つであり,川崎病(KD)の経過中にも発症することがある.症例は5歳女児.発熱5病日にKDと診断し,免疫グロブリン療法を施行した.症状は一旦改善したが,13病日に再発熱,発疹を認め,3系統の血球低下,凝固異常,肝逸脱酵素,LDH値,フェリチン値の上昇を認めた.MASと診断し,デキサメタゾンパルミチン酸エステル,シクロスポリンによる治療を開始したところ,症状は速やかに改善した.KDにおけるMAS合併例では,冠動脈病変合併率や死亡率は高く,発症早期からの積極的な免疫抑制治療を行うことが重要である.早期診断には血小板数やLDH値の経時的観察が有用であり,KDの治療経過中に血小板減少を認めた場合はMASへの移行を念頭に,LDH値やフェリチン値を慎重にモニタリングすることが重要である.
|
|
【症例報告】
■題名
小児の脳死下臓器提供における臨床心理士の役割
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児救命救急センター1),同 高度救命救急センター2),同 小児科3) 別所 晶子1) 荒木 尚2) 櫻井 淑男1) 森脇 浩一3)
■キーワード
小児の脳死下臓器提供, 臨床心理士, 家族ケア, 医療スタッフへのケア
■要旨
子どもの脳死下で臓器提供を決断する家族の心理的葛藤は計り知れないが,日本国内において小児の脳死下臓器提供に臨床心理士(心理士)が関わった報告は見当たらない.今回小児の脳死下臓器提供に心理士が関わったので,現場で果たした役割を報告する.
患児は交通事故で搬送され,小児救命救急センターに入院してから第5病日までに大脳皮質,脳幹を含む広範囲な不可逆的脳損傷と診断された.心理士は患児が小児救命救急センターに入院した直後から家族に関わり始めた.家族に対し,医療スタッフと心理士が内容を検討しながら頻回に病状説明を行った.心理士は,家族と医療スタッフとの間を繋ぐことを目的として,家族の理解力・判断力を評価し,医療スタッフに伝えた.入院6日目に家族から臓器提供の申し出があり,プロセスが進む間,心理士が一貫して家族に付き添った.早期からの心理士の介入と,心理士が家族のみだけでなく,辛い仕事をする医療スタッフの気持ちにも配慮しながら動いたことが,多職種/家族との話し合いに有用であり,今回の臓器提供の円滑な進行に寄与したのではないかと考える.
|
|
【論策】
■題名
院外小児心肺停止例に対する家族ケア指針の作成と運用
■著者
済生会滋賀県病院救命救急センター小児救命救急科1),同 看護部2),同 小児科3),同 救急集中治療科4) 松浦 潤1) 野澤 正寛1) 尾島 由美2) 岩田 賢太朗1) 中島 亮3) 伊藤 英介3) 塩見 直人4)
■キーワード
小児心肺停止, 家族ケア, グリーフケア, 指針, 病院前救急診療
■要旨
小児心肺停止例に対する家族ケアは非常に重要であるが,その一方で重症小児例は稀であり医療スタッフが十分に経験を積むことが難しい.今回我々は,病院前救急診療の現場から救命救急センター,そして患児が死亡した後までの家族ケアに関する行動指針を作成した.指針は救命救急センターで小児の心肺停止例に対応する医師,看護師,救急救命士でシミュレーションとK-J法(1枚の紙に1つずつアイデアを書き,全体を俯瞰しつつ類型化し整理する方法)を用いた議論を重ねて作成した.指針は「病院前救急診療」,「病院内(蘇生中)」,「病院内(死亡確認後)」の3つの場面に構成し,それぞれ職種別の行動例とともに「適切な会話例」や「不適切な会話例」等を記載した.指針作成後は実症例ごとに振り返り,改訂を重ねた.
指針が存在することで,家族ケアの質を標準化でき,医療者の不安も軽減できると考える.今後は指針作成に関わった医療スタッフ以外にもシミュレーションを行うなどして,共通の理念で小児心肺停止例に対する家族ケアに臨めるように工夫していきたいと考えている.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|