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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:21.1.27)
第125巻 第1号/令和3年1月1日
Vol.125, No.1, January 2021
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日本小児神経学会推薦総説 |
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けいれん重積型(二相性)急性脳症up-to-date
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高梨 潤一 1 |
日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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先天性副腎過形成症の新生児マススクリーニングの現状とその課題
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鹿島田 健一 11 |
原 著 |
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村上 楽,他 24 |
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是松 聖悟,他 32 |
症例報告 |
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平井 宏子,他 37 |
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長澤 武,他 42 |
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野崎 章仁,他 48 |
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江口 詩織,他 52 |
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土田 晃輔,他 59 |
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原木 悠,他 65 |
短 報 |
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加藤 宏樹,他 70 |
論 策 |
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和田 浩,他 73 |
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78 |
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日本小児科学会新生児委員会報告 |
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新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の現状調査
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99 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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102 |
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No. 98 食器洗い機専用粉末洗剤の誤嚥による喉頭びらん
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104 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合33 |
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やりたいことの芽は温めつづけよう─夫婦そろっての小児救急─
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107 |
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109 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻12号目次
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115 |
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【原著】
■題名
RSウイルス感染症流行疫学とパリビズマブ投与期間決定への課題
■著者
亀田メディカルセンター小児科 村上 楽 伊東 宏明
■キーワード
RSウイルス, 感染症発生動向調査, 流行早期化, 地域性, パリビズマブ投与期間
■要旨
【背景】近年のRSウイルス(以下RSV)感染症流行時期の変動に伴いコンセンサスガイドラインではパリビズマブ投与至適時期について,感染症発症動向調査などから流行を予測し実施期間を定めること,各都道府県および年度ごとに投与開始月を統一することを推奨している.しかし,県全体と県内地域ごとのRSV感染症流行の差異についての検討はこれまで報告されていないため,今回解析することとした.
【方法】本研究では,千葉県内を4地域に分類し,2012年〜2019年までの千葉県結核・感染症発生動向調査週報をもとに,後方視的に千葉県全体と各地域のRSV感染症流行疫学を比較検討した.流行評価については,インフルエンザ等の感染症流行評価手法であるWHO methodを参考にした.
【結果】RSV感染症の流行開始及び終了について,地域ごとに県全体と比較すると,最大の小児人口を擁する北西部では概ね一致しているが,その他の3地域は必ずしも一致しないことが確認された.特に千葉市を含む中部地区では,県全体の流行開始,終了から4週以上のずれを半数の機会で認めた.
【結語】千葉県では,パリビズマブ至適投与期間について,各施設において,地域の感染症発生動向調査を参考にすること,さらに入院サーベイラインス等の施設・地域独自の流行指標を併用するなどして,流行をより正確に把握しながら決定すべきである.
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【原著】
■題名
多職種を対象とした小児在宅医療支援の課題についてのアンケート
■著者
中津市立中津市民病院小児科1),大分大学医学部小児科学2),坂ノ市病院小児科3),大分県立病院新生児科4),恵の聖母の家5) 是松 聖悟1)2) 長濱 明日香3) 赤石 睦美4) 佐藤 圭右5) 飯田 浩一4)
■キーワード
小児在宅医療, 多職種, アンケート, 小児在宅医療実技講習会
■要旨
医療的ケアを必要とする児の支援が推進されており,各地で医療関係者等を対象とした小児在宅医療実技講習会などが実施されている.われわれは受講者のニーズを職種別に知るため調査を実施した.
平成27年度〜令和元年度に大分県小児在宅医療講習会/実技講習会を受講した180人(小児科医16人,成人在宅医12人,歯科医4人,薬剤師6人,小児科看護師10人,訪問看護師を含む成人科看護師34人,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士33人,相談支援専門員6人,教員35人,保育士3人,保健師を含む行政関係者10人,保護者11人)に対して,医療的ケアを必要とする児の支援についての自身の課題を選択するアンケートを実施した.
小児科医は「診療報酬等の知識」,「福祉サービスの知識」を,成人在宅医は「診療報酬等の知識」を,小児科看護師は「重症心身障害児者の知識」を,成人科看護師は「重症心身障害児者の知識」,「福祉サービスの知識」を,療法士は「重症心身障害児者の知識」,「医療機関との連携」を,教員は「急変時の対応」を,保護者は「他職種との連携」を多く回答した.
職種により自身の課題ととらえている分野は様々であるため,この結果を参考に対象職種に応じた講習会を実施する必要がある.
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【症例報告】
■題名
RASA1遺伝子の新規変異が見いだされた遺伝性出血性毛細血管拡張症
■著者
富山大学小児科1),同 呼吸循環総合外科2),富山市民病院小児科3),岡部こども医院4),国際医療福祉大学小児科5),国立成育医療研究センターゲノム医療研究部6) 平井 宏子1) 仲岡 英幸1) 伊吹 圭二郎1) 小澤 綾佳1) 本間 崇浩2) 橋本 郁夫3) 岡部 敬4) 市田 蕗子5) 要 匡6) 廣野 恵一1)
■キーワード
肺動静脈瘻, 遺伝性出血性毛細血管拡張症, ばち指, チアノーゼ, RASA1遺伝子
■要旨
肺動静脈瘻の原因の多くは先天性であり,胎生期の毛細血管形成不全に起因する.シャント量によっては無症状で経過し検診などで偶然発見される例もあるが,多くは成人期に低酸素血症を伴い労作時呼吸困難,チアノーゼ,ばち指を呈することで気づかれる.今回,低身長で近医を受診した際にチアノーゼとばち指に気付かれ,画像検査から肺動静脈瘻が発見された7歳女児例を経験した.肺動静脈瘻は右下肺に広範囲に広がっており,経皮的カテーテル治療を試みたが塞栓困難であり,胸腔鏡下右肺下葉切除術を施行した.術後の経過は良好で,チアノーゼは消失し易疲労感は改善した.肺動静脈瘻に加えて皮膚の多発血管腫,繰り返す鼻出血,眼球結膜充血を伴うことから,遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)を疑い,網羅的ゲノム解析の結果,RASA1遺伝子 exon 10に新規の病的バリアント(c.810delA)が見いだされた.本症例では,家族歴を認めず,肺動静脈瘻がびまん性病変でないこと,若年で肺動静脈瘻の治療を要したことなどが典型的なHHTの経過と異なっており,それらの特徴はRASA1遺伝子変異によるHHTの特徴的な表現型である可能性が考えられた.
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【症例報告】
■題名
片側固有腎摘出と腹膜透析を経て腎移植を行ったフィンランド型先天性ネフローゼ症候群
■著者
東京女子医科大学腎臓小児科1),埼玉県立小児医療センター腎臓科2) 長澤 武1) 三浦 健一郎1) 金子 直人1) 薮内 智朗1) 石塚 喜世伸1) 近本 裕子1) 秋岡 祐子1) 富井 祐治2) 藤永 周一郎2) 大友 義之2) 服部 元史1)
■キーワード
先天性ネフローゼ症候群, 腹膜透析, 腎移植, 固有腎摘出
■要旨
フィンランド型先天性ネフローゼ症候群(CNF)において,NPHS1遺伝子のFin-major/minor変異によるCNFでは蛋白尿が極めて多量であるため,乳児期早期に一期的両側固有腎摘出(両腎摘),腹膜透析(PD)の導入が行われる.一方で,Fin-major/minor以外のCNFでは蛋白尿が比較的少ないことから,乳児期早期の片側固有腎摘出(片腎摘),乳幼児期のPDの導入,二期的両腎摘が行われる.いずれの場合も両腎摘が行われ,その後の腎移植まで無尿の状態でのPD管理が必要になる.今回,片腎摘のみを行い,両腎摘を経ずに腎移植を行ったCNFの2例を報告する.
2例ともにFin-major/minor以外のCNFと診断され,可能な限り残腎機能を温存する目的で症例1では1歳3か月に,症例2では11か月時に片腎摘が行われた.腎機能低下の進行により片腎摘後約1年でPDの導入が行われ,PD開始後約2年で無尿に至った.症例2では片腎摘後も感染症を反復し,高度の成長障害を認めた.2例とも5歳前後で腎移植が行われた.移植腎機能は良好に経過し,2例とも成長の改善を認めた.CNFにおいて,片腎摘とPD導入を行い,無尿となった後に腎移植を行う方法は一つの治療戦略になりうるが,成長障害が顕著な場合は早期の二期的両腎摘と腎移植を検討する必要があると考えられた.
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【症例報告】
■題名
インフルエンザワクチン接種後に皮膚色素脱失を認めた2例
■著者
滋賀県立小児保健医療センター小児科 野崎 章仁 佐々木 彩恵子 柴田 実 森 未央子 石原 万里子 森 篤志 井上 賢治 加藤 竹雄 楠 隆
■キーワード
予防接種, インフルエンザワクチン, 皮膚色素脱失, 副反応, インフルエンザ
■要旨
インフルエンザワクチンは重要なワクチンの一つである.インフルエンザワクチン接種後の皮膚色素脱失の2例を報告する.症例1は4歳女児.症例2は5歳女児.両症例ともインフルエンザワクチン接種後に炎症性の局所反応を認めた.局所反応改善後,接種部位に皮膚色素脱失を呈した.上肢の機能異常は共になかった.症例1は無治療でワクチン接種後9か月に改善し,2年の観察で再燃は認めていない.症例2は無治療経過観察中である.2症例ともに皮膚生検の同意が得られず,評価はできなかった.炎症性の局所反応後に皮膚色素脱失を認めたため,炎症後の色素脱失を推察している.検索し得た限りでは,自験例がインフルエンザワクチン接種後の皮膚色素脱失に関する初めての報告である.またインフルエンザワクチンの添付文書に,皮膚色素脱失の記載はない.稀な副反応として,インフルエンザワクチン接種後に皮膚色素脱失が起こりえる.
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【症例報告】
■題名
原発性線毛機能不全症同胞例に対する高張食塩水吸入療法
■著者
東京医科歯科大学小児科1),同 小児地域成育医療学講座2),草加市立病院小児科3),東京医科歯科大学茨城県小児・周産期地域医療学講座4) 江口 詩織1) 磯田 健志1) 金田 朋也1) 井上 健斗1) 星野 顕宏1) 森下 あおい1) 山下 基2) 滝島 茂3) 柳町 昌克1) 高木 正稔1) 金兼 弘和2) 今井 耕輔4) 森尾 友宏1)
■キーワード
原発性線毛機能不全症, 高張食塩水吸入療法, DNAH5
■要旨
原発性線毛機能不全症(primary ciliary dyskinesia:PCD)は,線毛の超微細構造の異常によって慢性的に気道感染をきたす稀な疾患であり,治療法は確立されていない.
症例は紹介初診時7歳と3歳の兄弟例.ともに幼少期より上・下気道感染を反復した.兄弟ともに鼻粘膜電子顕微鏡写真にて線毛のダイニン外腕の欠損,遺伝子解析にてDNAH5遺伝子に複合ヘテロの変異を認め,PCDと診断された.呼吸理学療法や気管支拡張薬・ステロイド薬の吸入,去痰薬や抗菌薬の投与を行ったが,気道感染を反復した.兄弟がそれぞれ12歳と8歳の時に10%高張食塩水の1日2回吸入を導入したところ,その後2年間の観察期間中,弟では38℃以上の発熱の頻度が有意に減少し(1.042 vs 0.292回/月,p=0.018),兄では有意差はないが,発熱の頻度が減少した(1.000 vs 0.375回/月,p=0.096).
粘液線毛輸送機能が障害される点が類似する囊胞性線維症においては高張食塩水吸入の有効性が報告されているが,PCDにおける報告は成人患者を対象とした1報のみである.小児PCD患者において,高張食塩水吸入が気道感染の予防と生活の質の改善に寄与するか,さらなる研究が必要である.
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【症例報告】
■題名
MR enterographyによる評価を行った8歳Crohn病
■著者
市立函館病院小児科1),札幌厚生病院小児科2),札幌医科大学小児科3) 土田 晃輔1) 前田 昂大1) 笹岡 悠太1) 川嶋 雄平1) 酒井 好幸1) 戸板 成昭2) 川崎 幸彦3)
■キーワード
MR enterography, Crohn病, 小児, 炎症性腸疾患, MRI
■要旨
Crohn病は小腸病変を伴うことが多く,小腸における画像評価が必要である.欧米ではMRIを用いて消化管の評価を可能としたMR enterography(MRE)が,被曝がなく繰り返し検査可能なモダリティとして推奨されている.本邦でも成人領域において近年注目されているが,小児におけるMREの検査プロトコルは決まったものがなく,積極的には行われていない.今回我々は,小児MREの検査プロトコルを作成し,小児Crohn病の8歳男児に無鎮静でのMRE検査を行った.被曝のないMRE検査は,繰り返し検査を要する疾患活動性の評価や治療効果判定において有用である.また,低年齢児であってもプレパレーションと検査方法次第で,消化管造影剤の経口投与と無鎮静でのMRE検査が可能である.しかし,検査法は確立していないため,今後症例を蓄積しながら,最適な検査プロトコルについての検討が必要である.
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【症例報告】
■題名
小児科医による眼窩底骨折患者診察時の緊急手術の適応
■著者
千葉市立海浜病院小児科1),同 耳鼻咽喉科2),同 形成外科3),同 眼科4) 原木 悠1) 加藤 いづみ1) 中島 聡1) 原 真由美1) 阿部 克昭1) 金澤 正樹1) 大塚 雄一郎2) 久保 麻衣子3) 窪田 真理子4) 寺井 勝1)
■キーワード
眼窩底骨折, 外眼筋絞扼, 緊急手術, 小児, 眼球心臓反射
■要旨
眼窩底骨折は,眼窩部に前方から鈍的外力が加わった際に生じる眼窩壁の骨折である.特に外眼筋絞扼を伴う場合には速やかな観血的整復術が必要で,治療が遅れると眼球運動障害や複視などの後遺症を残す可能性がある.また,小児では外眼筋絞扼を伴う症例が多く,治療のタイミングを適切に判断することが大切である.
今回我々は,眼窩底骨折の小児5症例を経験した.そのうち3症例は緊急手術が必要であった.3症例はいずれも眼を打撲した直後から開瞼困難や眼痛,嘔吐などの症状を示し,当院へ救急搬送となった.診察時,全例で明らかな眼球運動障害と眼球心臓反射症状を呈し,外眼筋絞扼が疑われた.一方,同期間に当院で待機的治療を行った2症例では,明らかな眼球運動障害は認めず,眼球心臓反射症状はなかった.先行研究において,外眼筋絞扼に伴う症状として,嘔吐や徐脈といった眼球心臓反射症状が挙げられている.今回我々が経験した緊急手術を要した3症例でも,眼球運動障害,眼球心臓反射症状を認めており,これらの症状は緊急手術の適応を判断するうえで参考にすべきと考えられた.
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【短報】
■題名
小児集中治療室におけるカテーテル関連血流感染症の診断の問題点
■著者
国立成育医療研究センター集中治療科1),あいち小児保健医療総合センター集中治療科2),国立成育医療研究センター感染症科3) 加藤 宏樹1) 喜久山 和貴2) 船木 孝則3) 井手 健太郎1) 西村 奈穂1) 中川 聡1)
■キーワード
カテーテル関連血流感染症, 血液培養, 小児集中治療室
■要旨
小児集中治療室では臨床的にカテーテル関連血流感染症として治療している症例の中にカテーテル関連血流感染症の診断基準を満たさない症例が散見される.2012年5月から2015年5月に当院小児集中治療室に入室,かつカテーテル関連血流感染症として診断した38例のうち,17例は診断基準を満たさなかった.3例は診断に必要な検体が提出できず,9例は検体が提出されていたが診断基準を満たさなかった.小児集中治療室におけるカテーテル関連血流感染症の診断の問題点は,中心静脈カテーテルからの血液培養の採取が困難なことが多いこと,診断確定前にカテーテルを抜去して先端培養を提出するのが困難なことであると考えられた.
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【論策】
■題名
大阪市の重症心身障がい児者の医療コーディネート事業による地域かかりつけ医紹介支援
■著者
愛徳福祉会大阪発達総合療育センター小児科 和田 浩 船戸 正久 竹本 潔 飯島 禎貴 藤原 真須美 柏木 淳子
■キーワード
重症心身障がい児者, 医療コーディネート, 地域かかりつけ医, 紹介支援, 移行期医療
■要旨
大阪市は2014年より重症心身障がい児者のための「医療コーディネート事業」を開始した.その主な目的は急病時の受診支援であるが,2015年から新たに地域かかりつけ医紹介支援を開始し同時に遂行している.今回,この紹介支援を中心に現状を報告する.
対象は大阪市在住の重症心身障がい児者である.家族から平素より受診しやすい地域のかかりつけ医紹介の希望がある場合,急病時の受診支援と同様の情報登録書を利用し,登録された地域の診療所に連絡,紹介支援を行っている.
2019年12月現在大阪市(人口約270万人)内の対象者2,090名中1,312名(63%)が登録されている.そのうち18歳以上が962名(73%),医療的ケアが必要であるのは373名(28%)である.一方協力かかりつけ医として,市内の277医療機関から登録を得た.紹介希望があった場合,まず住居に近い登録診療所に医師から電話連絡にて対応を依頼,診療情報提供書とともに情報登録書を郵送,診療所の了承を得られれば家族にも連絡,適切な受診の機会を得るシステムとしている.これまで紹介依頼は累計92例,うち54例に紹介が可能であった.そのうち38例(70%)は18歳以上であった.本取り組みは,急病時の受診支援と同様に,将来の重症心身障がい者の移行期医療から地域包括ケアシステムに繋がる有用な施策の一つとして機能する可能性があると考えられる.
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