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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:20.11.13)

第124巻 第11号/令和2年11月1日
Vol.124, No.11, November 2020

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原  著
1.

川崎病診断の手引き改訂に伴う不全型川崎病の診断数の減少と診断早期化の可能性

古賀 健史,他  1587
2.

医療型障害児入所施設における終末期ケアとそのプランニング

船戸 正久,他  1594
症例報告
1.

周術期の遷延した低アルブミン血症が誘因となった超早産児の慢性ビリルビン脳症

出口 拓磨,他  1602
2.

覚せい剤使用母体から出生し非対称性中隔肥厚を認めた新生児

宮本 学,他  1609
3.

細菌性髄膜炎を合併したメチシリン感性黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎

浅見 雄司,他  1614
4.

中枢神経症状を伴ったアデノウイルス7型肺炎

女川 裕馬,他  1621
5.

MRIの再検で確定診断し得たA群β溶血性レンサ球菌による胸椎棘突起骨髄炎の小児例

所 陽香,他  1627
6.

経鼻胃管からのベースライス法ミキサー食注入が奏効した胃食道逆流症の女児

中村 祐輔,他  1633
7.

青色の舌所見から診断に至ったフルニトラゼパム誤飲の2例

黒田 駿,他  1640
短  報

コロナウイルス感染症2019小児10例の臨床的特徴

武 純也,他  1645
論  策

千葉県における医療的ケア児者および重症心身障害児者の実態調査

石井 光子  1649

地方会抄録(徳島・長崎・東京)

  1657
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 94 カプセル型スポンジ玩具による腟内異物

  1676

No. 95 家庭用手動薪割り機による手指圧挫創

  1679

No. 96 ストロー様異物による乳歯への嵌入

  1682

ビオチン大量内服による検査値異常に係る注意喚起

  1686

日本小児科学会理事会議事要録

  1687

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻10号目次

  1692

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 376

  1695


【原著】
■題名
川崎病診断の手引き改訂に伴う不全型川崎病の診断数の減少と診断早期化の可能性
■著者
埼玉医科大学病院小児科
古賀 健史  池田 のぞみ  大滝 里美  吉村 萌  田端 克彦  秋岡 祐子  大竹 明  徳山 研一

■キーワード
川崎病, 川崎病診断の手引き改訂6版, 不全型, 冠動脈病変, IVIG不応例予測スコア
■要旨
 2019年5月に川崎病診断の手引きが改訂された(改訂6版).発熱の日数を問わなくなったこと,BCG接種痕の発赤などの扱いの変更,不全型の診断方法が明確化されたことで診断病日や治療選択に影響を及ぼすことが推測される.本研究は改訂によって生じると推測される不全型の減少や診断の早期化の評価を目的とし,改訂5版で診療された患児を改訂6版で再区分し比較した.対象は291名,発症時年齢は2.6±2.2歳.入院時の主要症状陽性項目数は再区分によって4.4±1.3個から4.9±1.2個に増加,再区分により40名が入院時に確定診断に至ることができた.増加に寄与した症状は40例全例が発熱の日数で,うち2名はBCG接種痕の発赤も寄与していた.確定診断時の不全型の頻度は51名(17.5%)から39名(13.4%)に減少した.治療開始病日は5.5±1.7病日から4.7±1.4病日に短縮することが推測された.免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)不応例予測スコア(小林スコア)は3.4±2.4点から3.9±2.7点と上昇し,5点以上の患児は95名(32.6%)から109名(37.5%)と増加した.今回の診断の手引き改訂により不全型減少と診断の早期化の可能性が示唆された.一方で診断の早期化による小林スコアの加点により治療内容に影響が及ぶ可能性がある.


【原著】
■題名
医療型障害児入所施設における終末期ケアとそのプランニング
■著者
大阪発達総合療育センター小児科
船戸 正久  竹本 潔  和田 浩  飯島 禎貴  羽多野 わか  藤原 真須美  片山 珠美

■キーワード
事前ケアプラン, 終末期ケア, 協働意思決定, 医療型障害児入所施設, 在宅医療
■要旨
 目的:現在医療型障害児入所施設においても利用者の高齢化・重症化が進み,本人の尊厳のためにどこまで侵襲的な治療介入を行うかが大きな倫理的課題となっている.本人の最善の利益を中心に話し合い,Advance care planning(ACP)を作成した症例について,その後の経過と対応を検討した.
 対象および方法:対象は,法定代理人と話し合い,協働意思決定してACPを作成した10例である.最終的に家族の希望を入れてACPを修正し,署名をもらった文章を倫理委員会に提出し承認を受けた.
 結果:ACP作成時の年齢は20歳未満4例,20歳以上6例であった.ACP作成後8例が召天した.意思決定は,法定代理人と医療ケアチームの協働:5例,さらに基幹病院や地域診療所とも協働:3例,医療ケアチームの協働:2例であった.話し合いの切っ掛けは,主に重度脳損傷,臨床的脳死,腸管通過不全などであった.家族が希望しない侵襲的治療介入は,心肺蘇生:10例,高カロリー輸液:5例などであった.具体的な生活・看取り・グリーフケア支援の内容は,日中活動・イベント参加が最も多く,家族での看取り・お別れ会・正面玄関からの見送りなどであった.
 結語:療育の役割は,医療ケアチームで本人の人権と尊厳を大切にし,最善の利益を個別に支援することにある.ACPの作成は,重度で意思表示ができない本人の最善のトータルケアを法定代理人である家族と共に考える良い機会となる.


【症例報告】
■題名
周術期の遷延した低アルブミン血症が誘因となった超早産児の慢性ビリルビン脳症
■著者
筑波大学附属病院小児科1),筑波大学医学医療系小児科2)
出口 拓磨1)  日高 大介1)  宮園 弥生1)2)  永藤 元道1)  竹内 秀輔1)  金井 雄1)  佐伯 紗希1)  榎園 崇1)  高田 英俊1)2)

■キーワード
慢性ビリルビン脳症, 超早産児, 消化管手術, アルブミン, アンバウンドビリルビン
■要旨
 超低出生体重児の生存率が上昇する一方で,早産児の慢性ビリルビン脳症の報告が2000年以降に増加している.今回われわれは日齢10に消化管穿孔に対して開腹術が行われ,周術期から遷延する低アルブミン血症が誘因と考えられる,血清総ビリルビン(total bilirubin,TB)値の著明な上昇を伴わない慢性ビリルビン脳症の超低出生体重児を経験した.
 症例は在胎24週1日,630 gの二絨毛膜二羊膜性双胎児.出生後早期は黄疸に対して光線療法を断続的に要したが,TBの頂値は日齢8の9.8 mg/dL,血清総ビリルビン/アルブミン比の頂値は日齢7の3.8(mg/g)で交換輸血の基準を超えることはなかった.日齢10に消化管穿孔に対して開腹術が行われた.術後の低アルブミン血症に対し,アルブミン製剤の投与を繰り返したが,血清アルブミン値は1.5 mg/dLから2.5 mg/dLと低値で推移した.経過中,アンバウンドビリルビンは測定していなかった.修正2か月の聴性脳幹反応(ABR)で高度感音性難聴を認め,修正10か月からアテトーゼが出現した.同時期の頭部MRI T2強調画像で両側淡蒼球に高信号が確認され,慢性ビリルビン脳症と臨床診断された.超早産児において,消化管手術後の遷延する低アルブミン血症は慢性ビリルビン脳症のハイリスクであることを十分に認識して診療にあたる必要がある.


【症例報告】
■題名
覚せい剤使用母体から出生し非対称性中隔肥厚を認めた新生児
■著者
那須赤十字病院小児科1),獨協医科大学医学部小児科学2)
宮本 学1)  大坪 勇人1)  小森 慈海1)  高岩 由哉1)  小川 美織1)  市川 剛1)  吉原 重美2)

■キーワード
新生児, 心筋肥厚, 覚せい剤, アンフェタミン, メタンフェタミン
■要旨
 覚せい剤使用母体から出生した新生児の合併症に関する報告は,海外に限らず本邦からも散見される.内容は周産期異常や離脱症状を呈したとする報告が主で,器質的合併症の報告は少ない.我々は,覚せい剤使用母体から出生し,心筋肥厚を認めた児を経験した.症例は在胎39週2日.出生体重3,612 g.経腟分娩で出生した女児.母は,妊娠初期から覚せい剤を液体タイプのタバコに溶解し吸引していた.児の日齢0の尿検査でメタンフェタミンが陽性であった.離脱症状は軽症のため治療は行わなかった.入院時の心臓超音波検査で心筋の非対称性中隔肥厚を認めた.中隔肥厚に伴う血流動態や心機能の異常を認めず,離脱症状と共に慎重に経過観察を行った.児は日齢44に軽快退院し,乳児院へ入所した.母体の覚せい剤使用により心筋病変を生じた新生児の報告はこれまでになく,症例の蓄積が望まれる.


【症例報告】
■題名
細菌性髄膜炎を合併したメチシリン感性黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎
■著者
群馬県立小児医療センター循環器科1),同 アレルギー・感染免疫・呼吸器科2),同 心臓血管外科3)
浅見 雄司1)  清水 彰彦2)  新井 修平1)  田中 健佑1)  池田 健太郎1)  下山 伸哉1)  林 秀憲3)  友保 貴博3)  岡 徳彦3)  山田 佳之2)  小林 富男1)

■キーワード
感染性心内膜炎, 細菌性髄膜炎, メチシリン感性黄色ブドウ球菌, ブドウ球菌用ペニシリン, 僧帽弁逸脱症
■要旨
 黄色ブドウ球菌は近年,感染性心内膜炎(IE)の最も多い原因の一つである.ブドウ球菌用ペニシリン(ASP)が使用できない本邦では,黄色ブドウ球菌のIEの治療には通常セファゾリンが用いられる.しかし,セファゾリンは髄液移行性が低く,髄膜炎を合併したIEに対する使用は不適切である.我々は,細菌性髄膜炎を合併したメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)によるIEの症例を経験した.
 症例はアトピー性皮膚炎で治療中の12歳男児で,発熱と意識障害を主訴に前医を受診した.髄液穿刺で多核球優位の細胞数増加を認め,血液培養からMSSAが検出され,心臓超音波検査で僧帽弁に付着する疣腫と僧帽弁逸脱を認めた.髄膜炎を合併したIEと診断され当院に転院し,翌日,疣腫除去術と僧帽弁形成術を施行した.ASPの代替薬としてセフォタキシムとバンコマイシンを併用した.6週間抗菌薬で治療を行い,後遺症なく退院した.
 本症例は,僧帽弁逸脱症とアトピー性皮膚炎がIE発症の原因となった可能性がある.ASPが使用されるべき症例であったが,本邦ではASPが未承認のため治療薬の選択肢が少なく,代替薬を使用した.国内でのASPの早期発売と抗菌薬供給の安定化は,ブドウ球菌による心内膜炎と髄膜炎の治療の質を改善するために重要である.


【症例報告】
■題名
中枢神経症状を伴ったアデノウイルス7型肺炎
■著者
福岡大学筑紫病院小児科1),福岡大学医学部小児科2)
女川 裕馬1)  堤 信1)  塩手 仁也1)  村松 知佳1)  吉兼 由佳子1)  鶴澤 礼実1)  橋本 淳一1)  廣瀬 伸一2)  小川 厚1)

■キーワード
再興感染症, 急性脳症, ステロイドパルス療法, 炎症性サイトカイン, 非けいれん性てんかん重積
■要旨
 アデノウイルス7型感染症は,1995年から本邦で流行し,多数の重症肺炎例や死亡例が報告された.2000年代に入り流行は終息したが,アジア各国では2010年代に流行が報告されている.高サイトカイン血症が重症化の原因と考えられており,重症例にはステロイド投与が有効とされている.
 今回我々は,中枢神経症状を伴ったアデノウイルス7型肺炎の生来健康な1歳女児例を経験した.高サイトカイン血症をきたし,発熱からかなり遅れてけいれん重積状態となった.脳波検査,頭部単純磁気共鳴画像検査で異常を呈し,急性脳症と診断した.髄液検査は異常なかったが,髄液からポリメラーゼ連鎖反応でアデノウイルスが検出された.通常量のステロイド投与には反応せず,ステロイドパルス療法が著効し,神経学的後遺症なく退院となった.脳波所見,頭部画像所見で異常を呈し,髄液からアデノウイルスが検出されたことから,アデノウイルス7型の中枢神経系への侵入が強く示唆された.今後も本邦で再流行する可能性があり,注意が必要である.


【症例報告】
■題名
MRIの再検で確定診断し得たA群β溶血性レンサ球菌による胸椎棘突起骨髄炎の小児例
■著者
西埼玉中央病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2),国立成育医療研究センター感染症科3)
所 陽香1)2)  高科 珠子1)  徳永 愛1)2)  田村 奈津子1)2)  小澤 綾子1)2)  瀧沢 裕司1)  田村 喜久子1)  庄司 健介3)  小穴 愼二1)2)

■キーワード
胸椎棘突起骨髄炎, A群β溶血性レンサ球菌, 核磁気共鳴画像(MRI), ガリウムシンチグラフィー
■要旨
 病初期のMRIでは骨髄炎所見を認めず,MRI再検で確定診断し得た生来健康な5歳男児の,A群β溶血性レンサ球菌(以下GAS)による胸椎棘突起骨髄炎例を経験した.
 4日間持続する経口抗菌薬無効の発熱,右側腹部痛と,吸気時の非特異的な疼痛を主訴に紹介医を受診,炎症反応高値を認め当院紹介となった.急性巣状細菌性腎炎や腹腔内膿瘍,虫垂炎などの腹腔内感染を疑い造影CTを撮影したが感染巣は認められなかった.しかし,入院時採取した血液培養でGASが陽性となり,感染巣検索目的に第8病日にガリウムシンチグラフィーを施行したところ右胸椎(Th)6〜8に異常集積を認めた.臨床経過および画像検査より,胸椎の骨髄炎を疑い第11病日に全胸椎MRIを施行したが,異常所見を認めなかった.第25病日に同部位のMRIを再検したところ,Th7の棘突起に異常信号を認め,胸椎棘突起骨髄炎と診断し,アンピシリン6週間に加えアモキシシリン2週間投与を行った.以降再燃,合併症なく経過している.
 小児の場合,痛み部位が特定しにくいことがあり,診断には画像評価が有用である.特にMRI検査は病巣の広がりを把握して,診断および治療方針を確定することができるため,初回検査が陰性でも,臨床的に疑われる場合には間隔をあけて再検することが有用であると考えられた.


【症例報告】
■題名
経鼻胃管からのベースライス法ミキサー食注入が奏効した胃食道逆流症の女児
■著者
富士市立中央病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2)
中村 祐輔1)2)  松岡 諒1)2)  竹内 博一1)2)  秋山 直枝1)2)

■キーワード
胃食道逆流症, ミキサー食, ベースライス法, 経鼻胃管
■要旨
 乳幼児の胃食道逆流症例の中には内科的治療への反応に乏しく,成長障害を伴い,外科的介入が必要となる場合もある.今回我々は,胃食道逆流症に対して外科的介入を検討したが,経鼻胃管からのベースライス法ミキサー食の導入により回避できた1例を経験した.
 症例は1歳7か月女児.生後早期より嘔吐を繰り返し,回避/制限性食物摂取障害が認められたため,4か月時より経鼻胃管によるミルク注入が導入された.摂取障害と頻回な嘔吐は改善なく,感染を契機に嘔吐が増悪するため,入院加療を繰り返した.生後12か月から体重増加が緩慢となり,胃食道逆流症と診断された.
 1歳7か月時に感染を契機に入院した際にも嘔吐を繰り返し,増粘剤添加や制酸薬などの治療介入を行ったが改善せず,噴門形成や胃瘻造設が検討された.その前に,栄養形態を経鼻胃管からのベースライス法ミキサー食の注入に変更したところ,嘔吐頻度は減少し,以降体重増加も得られるようになった.
 ベースライス法ミキサー食は,栄養価も高く,高粘度であり,従来は主に重症心身障害児(者)への胃瘻栄養管理に用いられている.胃食道逆流症の児においては,嘔吐回数の減少や便性の改善なども期待できる.細径の経鼻胃管からの投与が可能であり,ベースライス法ミキサー食は,噴門形成術や胃瘻造設術などの外科的介入前に導入する価値がある治療と思われた.


【症例報告】
■題名
青色の舌所見から診断に至ったフルニトラゼパム誤飲の2例
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科1),弘前大学大学院医学科研究科救急・災害医学講座2),千葉大学大学院医学研究院付属法医学研究教育センター法医学教室3),松戸市立総合医療センター小児科4)
黒田 駿1)  伊原 崇晃1)  野村 理1)2)  猪口 剛3)  山岸 由和3)  小橋 孝介3)4)

■キーワード
薬物誤飲, 急性薬物中毒, フルニトラゼパム
■要旨
 誤飲による小児の薬物中毒は問診による情報収集が困難なことがあり,尿中簡易薬物スクリーニングキットが偽陰性となる薬物もあるため薬物推定に難渋することが多い.今回,特徴的な身体所見がきっかけとなりフルニトラゼパム中毒の診断に至った2例を経験した.症例1:4歳男児.意識障害を主訴に搬送された.来院時にGCS13であり,尿中簡易薬物スクリーニングキットTriageDOA(シスメックス社)は陰性であった.青色の口腔内と舌を認め,母親の薬物服用歴と管理方法から誤飲によるフルニトラゼパム中毒を疑い,活性炭投与を実施した.入院後は新規症状の出現はなく,第3病日に退院となった.症例2:2歳男児.薬物誤飲を患児が自己申告したため来院した.来院時は無症状で尿検体のTriageDOAは陰性であった.青色の口腔内と舌を認め,母親の服用歴と管理方法からフルニトラゼパム誤飲を疑った.経過観察目的の入院となり,症状の出現なく第2病日独歩退院となった.上記2症例において,来院時の血清などを用いて液体クロマトグラフ―タンデム質量分析計を用いた質量分析を施行し,フルニトラゼパムやその代謝物が検出された.小児のフルニトラゼパム誤飲・中毒では尿検体によるTriageDOAが陰性となる場合があり,問診による薬物推定が困難な場合でも特徴的な鮮青色の口腔内・舌の所見が薬物の推定に有用である.


【短報】
■題名
コロナウイルス感染症2019小児10例の臨床的特徴
■著者
自衛隊中央病院小児科
武 純也  本田 護  佐藤 朋子  廣瀬 文  小國 裕和  釜江 智佳子  中川 紀子  佐藤 賢吾  黒木 康富

■キーワード
COVID-19, SARS-CoV-2, 下痢, トロポニンT, CK-MB
■要旨
 当院で管理したコロナウイルス感染症2019(COVID-19)小児10例の臨床的特徴を報告する.年齢中央値は3歳(1〜13歳)であり,幼児が8例だった.性別は男性6例・女性4例であった.9例が家族内感染であった.全経過中に出現した症状は発熱(7例),下痢(5例),咳嗽(3例),鼻汁(3例),頭痛(2例),腹痛(1例),倦怠感(1例)の順で多かった.血液検査では,5例でトロポニンTもしくはCK-MBが上昇し,心筋障害が否定できなかった.胸部単純エックス線検査で異常陰影を認めるものはいなかった.全例軽症であり,治療的介入を要するものはいなかった.PCR検査陽性から陰性を確認するまでの期間の中央値7日(4〜11日)と時間を要した.


【論策】
■題名
千葉県における医療的ケア児者および重症心身障害児者の実態調査
■著者
千葉県千葉リハビリテーションセンター小児神経科
石井 光子

■キーワード
重症心身障害児, 医療的ケア児, 実態調査, 在宅サービス, 災害対策
■要旨
 千葉県では,医療的ケア児者および重症心身障害児者の氏名,生年月日,住所,運動機能と知的発達の段階,医療的ケアの内容など,個人情報を含む詳細な名簿調査を平成30年度に行った.その結果3歳以上の重症心身障害者1,495名(18歳未満621名/有病率0.000772,18歳以上874名),1〜18歳の医療的ケア児は533名であった.重症心身障害児と医療的ケア児の関係は,医療的ケア児の64%に重症心身障害があり,重症心身障害児の55%が医療的ケア児であった.重症心身障害児者は低年齢ほど数が多く,加齢に伴って数も有病率も減少していく傾向にあった.18歳未満の重症心身障害児では,医療的ケアがない群の90.3%が在宅であるが,医療的ケアがある群は77.3%であった.重症心身障害児者は成人期以降に施設入所に移行していく傾向にあり,33歳以降は在宅よりも施設入所者が多かった.重症心身障害のない医療的ケア児者は87.7%が在宅であった.
 利用希望があるが利用できていない在宅サービスの項目は,「施設での短期入所」が最も多く,次いで「施設入所」,「医療施設でのレスパイト入院」が多かった.重症心身障害でない医療的ケア児は低年齢児に多く,保育園や幼稚園での障害児保育や単独通園の利用を希望しているなど,他の群とは異なる特徴があった.市町村小中学校における医療的ケア児の受け入れ体制も含め,これまでの障害児支援の枠を越えた充実した支援体制の構築が望まれる.

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