 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:20.5.7)
第124巻 第4号/令和2年4月1日
Vol.124, No.4, April 2020
バックナンバーはこちら
|
 |
|
日本外来小児科学会推薦総説 |
|
インフルエンザの流行調査における外来診療医家のインターネットを利用した取り組み
|
|
西藤 成雄 639 |
日本小児感染症学会推薦総説 |
|
エンテロウイルスD68感染症による急性弛緩性麻痺症例に関する臨床的考察
|
|
吉良 龍太郎 654 |
総 説 |
|
杉立 玲,他 668 |
原 著 |
|
真島 久和,他 687 |
症例報告 |
|
三浦 文武,他 692 |
|
岡田 麻理,他 699 |
|
永関 ひかる,他 704 |
論 策 |
|
三平 元,他 709 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
|
715 |
|
No. 88 セパレート式卓球台での頸部絞扼による窒息
|
|
718 |
専門医にゅ〜す No. 18 |
|
小児科医の到達目標─小児科専門医の教育目標─(改訂7版)のお知らせ
|
|
722 |
|
|
723 |
|
771 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
|
2019年度研修開始専攻医プログラムに関するアンケート調査
|
|
806 |
|
|
810 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻3号目次
|
|
814 |
|
817 |
|
818 |
【総説】
■題名
低エネルギー外力性の硬膜下血腫における本邦の重篤/死亡事例の検討
■著者
前橋赤十字病院小児科 杉立 玲 溝口 史剛 松井 敦
■キーワード
硬膜下血腫, 虐待による頭部外傷, 中村I型, 低所転落, 致死的頭部外傷
■要旨
低エネルギー外力によっても硬膜下血腫(SDH)をきたしうるとの理解は,近年欧米でも進んでいるが,そのような受傷機転により重篤後遺障害や死亡に至るのは極めて例外的な事例に限られると欧米では理解されている.
乳幼児の低エネルギー外力によるSDHは,本邦では中村I型として整理され欧米とは異なる評価がされてきた.近年,中村I型を無視した冤罪が多発しているとの批判がなされ,本邦の報告事例をまとめ明確化する必要性が高まっていた.今回,日本の医療施設から報告された医学文献と,インターネット上で入手可能な範囲での行政事故報告の収集を行い,その明確化を試みた.
低エネルギー外力がSDHの原因となった可能性のある医学報告例は144例確認され,うち5例が死亡,10例が重篤な後遺症を残していたが,第三者目撃の確実な事例はなかった.また,より悉皆性が高いと言える行政事故報告では,個別の発生状況についての詳細を得ることはできなかったものの,やはり低エネルギー性の受傷機転と判断しうる,第三者目撃の確実なSDH事例は確認できなかった.
今後,前方視的な悉皆調査を行う等でさらなる明確化を図る必要があるが,「低エネルギー性外力によるSDH事例でも重篤後遺症・死亡の転帰を辿りうる」との主張の支えとなる第三者目撃の明らかな事例は,医学文献とインターネット上で入手可能な行政事故報告においては,その存在を確認しえなかった.
|
|
【原著】
■題名
川崎病に対する血漿交換中の静注免疫グロブリン投与方法に関する後方視的検討
■著者
名古屋第二赤十字病院小児腎臓科1),同 小児科2) 真島 久和1) 笠原 克明1) 犬飼 幸子2) 後藤 芳充1)
■キーワード
川崎病, 血漿交換, 免疫グロブリン, 連日投与, 冠動脈瘤
■要旨
【背景】血漿交換(PE)は難治性川崎病に対する有効な治療であるが,PEにより血清IgG値は低下する.これまで当施設ではPEの全行程終了後に静注免疫グロブリン(IVIG)単回投与を行っていたが,2016年以降はPEにIVIG連日投与を付加する治療方針をとってきたため,その効果を検証した.
【方法】2001年1月から2018年12月までの期間に川崎病に対しPEを行った34例を対象とした.IVIGをPE全行程終了後に単回投与したA群24例と,IVIGを連日投与したB群10例について後方視的に比較検討した.
【結果】A群とB群でPE開始前の状態に有意差はなかった.PE開始から解熱までの日数や退院病日,発症後3か月時点での冠動脈瘤残存に関して,いずれも両群で有意差はなかった.一方,IVIG総投与量はB群で有意に多かった(p=0.017).
【結論】川崎病のPEにおけるIVIG連日投与はIVIG単回投与と比較して,解熱までの期間および冠動脈瘤抑止において優越性を示すことができなかった.IVIG投与に伴い発生しうる有害事象や医療経済面を考慮するとIVIG連日投与を付加することは推奨されない.
|
|
【症例報告】
■題名
危機的産科出血と胎児母体間輸血症候群をきたしたFontan手術後妊娠の分娩
■著者
弘前大学大学院医学研究科小児科学講座1),八戸市立市民病院小児科2),弘前大学大学院保健学研究科3) 三浦 文武1) 藤田 円1) 湯沢 健太郎1) 小山石 隼1) 嶋田 淳1) 北川 陽介1) 大谷 勝記1) 金城 学2) 高橋 徹3) 伊藤 悦朗1)
■キーワード
Fontan, 妊娠, 心疾患合併妊娠, 抗凝固, 胎児母体間輸血症候群
■要旨
Fontan手術後妊娠分娩の報告はまだ少なく母子の臨床経過も不明な点が多い.周産期の抗凝固療法にも一定の見解がない.症例は初産婦.三尖弁閉鎖(IIc)に対して8歳時にFontan循環が確立した.Fontan手術の術後経過中に多発性脳梗塞を合併した.27歳時に自然妊娠したが,胎児貧血と診断され妊娠27週4日に緊急帝王切開で1,050 gの男児を分娩した.児は胎児母体間輸血症候群を発症した.母体は術後約7時間で抗凝固を再開したが急激に腹壁血腫の貯留を認め,危機的産科出血もきたし緊急腹壁血腫除去術を要した.後の胎盤病理で胎盤の慢性的な循環不全を示唆する所見が得られた.Fontan手術後妊娠分娩では,血栓性合併症だけでなく出血性合併症にも注意が必要である.また胎盤の循環不全の可能性を念頭に置いた周産期管理が必要である.
|
|
【症例報告】
■題名
心理的ストレスを契機に尿閉となり,腎後性腎不全をきたしたDown症児
■著者
武蔵野赤十字病院小児科1),同 泌尿器科2),練馬光が丘病院小児科3) 岡田 麻理1) 中谷 久恵1) 恩田 恵子1) 今井 雅子1) 鈴木 奈都子1) 長澤 正之1) 田中 良典2) 大柴 晃洋1) 下田 益弘3)
■キーワード
Down症候群, 排尿障害, 急性腎後性腎不全, 尿閉
■要旨
Down症候群は一般小児科医も診療に携わる機会が多い染色体異常であり,様々な合併症が知られている.その一つに排尿障害があるが,Down症候群に排尿障害の合併率が高いことは周知されていない.今回私たちは,心理的ストレスを契機に尿閉,急性腎後性腎不全となり,幼少期からの排尿障害が明らかになったDown症男児例を経験した.患児は以前よりトイレへのこだわりが強かったが,ウォシュレットⓇの誤作動に驚いた後から徐々に排尿に時間がかかるようになり,約2か月後に近医を受診した.血液検査にて腎機能障害を認め,精査加療目的で当院へ紹介となった.腹部超音波検査にて両側水腎症と高度の膀胱壁肥厚を認め,病歴より心理的ストレスを契機とした排尿障害と腎後性腎不全と診断し,膀胱カテーテルを留置した.カテーテル留置後は水腎症と腎機能の改善を認めた.家族に生活歴を詳細に聴取したところ,排尿障害は急性のものだけではなく,トイレで排泄が可能となって以降,腹圧をかけて排尿していることが判明した.重度の精神発達遅滞があり,間欠的自己導尿は困難であると判断し,膀胱カテーテルを留置した状態で退院とした.排尿習慣は家族が異常かどうかの判断に迷うことも多く,Down症候群の児においては医療者が積極的に排尿障害の有無を確認していく必要がある.
|
|
【症例報告】
■題名
父親の狭心症を契機に家族性高コレステロール血症と診断された1歳児
■著者
東京慈恵会医科大学小児科1),国立循環器病研究センター研究所病態代謝部2) 永関 ひかる1) 秋山 政晴1) 堀 美香2) 斯波 真理子2) 井田 博幸1) 宮田 市郎1)
■キーワード
家族性高コレステロール血症, LDL受容体, ヘテロ重複変異, 産業医, 幼児
■要旨
家族性高コレステロール血症(FH)は,LDL受容体関連遺伝子の変異により起こる遺伝性疾患である.ホモ接合体患者は16〜100万人に1人の頻度に対して,ヘテロ接合体患者は200〜500人に1人と日常診療で遭遇する可能性がある.ホモ接合体患者は黄色腫や早発性冠動脈硬化などの症状を呈するが,ヘテロ接合体患者では小児期には臨床症状を呈するのは稀であるため早期診断は困難である.今回,父親の脂質異常症と狭心症に加えて父方祖父の病歴から,産業医が医療機関受診を勧めたことを契機にFHと診断した1歳男児を報告する.患児は無症状であったが,血液検査で総コレステロールとLDLコレステロールの高値を認めた.遺伝子検査では父子ともに低比重リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子のexon8-10に新規のヘテロ重複変異を認めた.本症例ではヘテロ変異であるが,複数のexonにわたる重複が原因でLDL受容体タンパク構造に異常を来たし,高コレステロール血症を呈したと考えられた.本症例は食事指導でLDL-コレステロール値の改善なく,コレスチラミン製剤の治療を行っている.
|
|
【論策】
■題名
児童虐待防止にむけた小児科医の地方公共団体への協力の実態と課題
■著者
千葉県小児科医会1),ひがしまつど小児科2),東京女子医科大学八千代医療センター小児科3),千葉大学大学院医学研究院小児病態学4),千葉県こども病院5),さとう小児科医院6) 三平 元1)2) 浜田 洋通1)3) 藤井 克則1)4) 中島 弘道1)5) 佐藤 好範1)6)
■キーワード
児童虐待, 通告者の懸念・困惑, 児童虐待対応体制, 児童虐待防止医療ネットワーク事業, 情報共有
■要旨
児童虐待相談の対応件数は年々増加しており,児童虐待防止施策の更なる充実にむけて医療従事者は,児童虐待に係る通告や情報共有における課題を把握して地方公共団体と対策を検討していく必要があるが,そのような課題に関する報告は少ない.そこで千葉県小児科医会が主体となり千葉県小児科医会会員を対象として医療機関における虐待防止の活動実態や意識について質問票調査を行った.調査回答者は90名(回収率26%)であった.うち通告経験者は48名,児童虐待に該当するのか迷い通告を躊躇した経験のある者は48名,他院に対応方法について相談したり他院へ児童を紹介したことがある者は35名であった.市町村長又は児童相談所長から資料又は情報の提供を求められ提供したことがある者は40名であった.通告経験者48名のうち通告後保護者の言動を恐れた経験のある者は20名,市町村や児童相談所から「医療機関からの通告があったと保護者へ明かしてよいか」と尋ねられ困惑した経験がある者は10名,通告後支援方針を教えてほしいと思ったことがある者は35名であった.これらの結果から児童虐待防止施策の更なる充実に向けて「相談体制の充実と周知」,「児童虐待に係る通告をしても医療従事者と家族の信頼関係が崩れないようにする工夫」,「情報共有のタイミングや方法に関する検討」について小児科医は地方公共団体とともに取り組んでいく必要があると考えられる.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|