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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:20.1.15)
第124巻 第1号/令和2年1月1日
Vol.124, No.1, January 2020
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第122回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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大学病院医育機関における小児集中治療室の役割:Academic pediatric critical care
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渡部 真裕,他 1 |
日本小児アレルギー学会推薦総説 |
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保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)と生活管理指導表
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今井 孝成 10 |
日本小児精神神経学会推薦総説 |
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氏家 武 20 |
原 著 |
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三上 直朗,他 31 |
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福原 康之,他 38 |
症例報告 |
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森岡 圭太,他 45 |
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山本 和宏,他 50 |
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巻 和佳奈,他 55 |
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福井 美保,他 63 |
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古宮 圭,他 70 |
論 策 |
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和田 浩,他 75 |
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地方会抄録(島根・福島・滋賀・鹿児島・北陸・福井・千葉・宮城・香川・佐賀・長崎・山口)
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82 |
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日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会報告 |
日本小児科学会・米国小児科学会合同予防接種教育プロジェクト |
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日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方―私の場合29 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻12号目次
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【原著】
■題名
低形成・異形成腎における尿路感染急性期の腎臓超音波診断の限界と遠隔期評価
■著者
東京都立小児総合医療センター腎臓内科1),同 総合診療科2),二子新地ひかりこどもクリニック3),東京都立府中療育センター小児科4) 三上 直朗1) 濱田 陸1) 久保田 亘1)3) 寺野 千香子1) 原田 涼子1) 榊原 裕史2) 寺川 敏郎4) 幡谷 浩史1)2) 本田 雅敬1)
■キーワード
小児, 尿路感染症, 腎臓超音波検査, 低形成・異形成腎, 先天性腎尿路異常
■要旨
低形成・異形成腎(HDK)は小児における末期腎不全の主因のひとつで,またHDKは有熱性尿路感染症(fUTI)の合併が多い.fUTI患者に対する腎臓超音波検査(RUS)は,外科的治療の要否判断に有用で,さらにはHDKなど先天性腎尿路異常(CAKUT)のスクリーニングに有用とされる.しかしfUTI急性期には腎実質の腫大を来しうるため,形態評価が不十分となる可能性がある.fUTI患者に対するRUSについて,適切なHDKスクリーニングという観点で検討した既存研究はなく,今回我々は自験症例を後方視的に検討した.対象は当院で加療した初発fUTI患者のうち,急性期RUS(入院後7日以内)と遠隔期核医学検査(NM;治療後6か月以降)をともにおこなった患者とした.HDKは遠隔期NMと遠隔期RUS(治療後1か月以降)で診断し,HDK例と非HDK例を比較し検討した.対象28例中HDKは4例で,診断契機は遠隔期NMが3例,遠隔期RUSが4例(重複あり)であった.急性期RUSでの左右差は5例に認めたが,うち実際のHDKは2例のみで,急性期RUSのHDK検出感度は50%と低かった.一方で遠隔期RUSは遠隔期NMとの相関性は高く,スクリーニングとしては急性期RUSよりも有用と考えられた.NMよりも低侵襲であることを考慮すると,fUTI患者でのHDKスクリーニングには遠隔期RUSが最も有用と考えられた.
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【原著】
■題名
ムコリピドーシス9症例の検討
■著者
国立成育医療研究センター遺伝診療科1),同 手術・集中治療部2),同 臨床検査部3) 福原 康之1) 山崎 成敏1) 蘇 哲民2) 小須賀 基通1)3) 奥山 虎之3)
■キーワード
ムコリピドーシス, GNPTAB, 多発性骨形成不全, 遺伝子型と表現型の相関
■要旨
Mucolipidosis II alpha/beta,III alpha/beta(以下,ML II,ML III)はGNPTAB変異による常染色体劣性遺伝性のライソゾーム病である.当院で遺伝子解析を行ったML患者(ML II 3人,ML III 6人)9人の遺伝子変異・臨床経過を分析した.初発症状はML IIは体重増加不良,IUGR各1人.ML IIIは発達遅滞が最多.ML IIは経過中全例立位・独歩不可,有意語なし.関節拘縮と心合併症はML IIとML III全例で認めた.その他,角膜混濁(ML III(2/6)),骨粗鬆症(ML II(2/2),ML III(2/5))等を認めた.10種の遺伝子変異(新規変異3種)が同定され,ミスセンス33%,ナンセンス33%,フレームシフト22%,スプライシング異常6%と過去の報告と異なりミスセンス変異の割合が高かった.また,p. Q104*,p.F374 L,p.R1189*の頻度(各16.7%)が最も高かった.ML IIは2例で両アレル,残る1例は片アレルにナンセンス変異を認めた(1アレルは未同定).ML IIIは少なくとも一方がミスセンス変異であり,遺伝子型と臨床型の間に一定の相関を認めた.MLの確定診断やML IIとML IIIの鑑別・臨床経過の予測に,遺伝子検査の結果が有用であった.
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【症例報告】
■題名
先天性肺気道奇形0型例
■著者
母恋天使病院周産期母子センター 森岡 圭太 金子 直哉 後藤 健 高橋 伸浩 外木 秀文
■キーワード
先天性囊胞状腺腫様奇形, 先天性肺気道奇形, 肺低形成
■要旨
先天性肺気道奇形(congenital pulmonary airway malformation:CPAM)0型は組織学的には肺胞構造が認められない稀な病変である.これまで少数の症例報告を認めるのみだが本邦からの報告はない.今回我々は出生直後の呼吸障害で発症し,集中治療で改善がなく,剖検でCPAM 0型と診断された症例を経験した.症例は在胎36週1日に経腟分娩で出生した体重2,161 gの女児である.出生直後から啼泣が続かず,蘇生で改善がなく気管挿管され当院へ新生児搬送となった.人工肺サーファクタントを補充後に人工換気を開始し,肺高血圧および代謝性アシドーシスの治療を行ったが酸素化障害は改善されなかった.生後3時間より一酸化窒素吸入療法も併用したが改善なく,生後6時間に死亡した.剖検では肉眼的に両側肺は低形成で,組織学的には肺胞構造が認められずCPAM 0型の診断となった.これまでの報告例では女児が多く,家族内発症の例も散見されるが遺伝様式は明らかにはされていない.人工換気を含めた集中治療によっても,その多くが新生児期に死亡している.現時点では極めて救命が困難な先天異常であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
食道異物を契機に発見された右鎖骨下動脈起始異常
■著者
兵庫県立こども病院小児集中治療科1),同 心臓血管外科2) 山本 和宏1) 長谷川 智巳1)2) 長井 勇樹1) 制野 勇介1) 青木 一憲1) 黒澤 寛史1)
■キーワード
食道異物, dysphagia lusoria, 右鎖骨下動脈起始異常, 血管移植術
■要旨
鎖骨下動脈起始異常が食道を圧迫して生じる嚥下障害をdysphagia lusoriaと呼称するが,食塊による食道異物の精査加療中にdysphagia lusoriaの診断に至り,右鎖骨下動脈起始異常に対する外科的治療を施した稀な症例を経験したので報告する.
症例は1歳3か月男児.夕食時にリンゴを摂取した後から呼吸困難,流涎,嘔吐を認めて救急外来受診となった.胸部単純CT検査で食道異物を認めたため,緊急内視鏡検査を施行したところ食道内にリンゴ片が陥頓していた.リンゴ片を摘出して観察すると,食道後壁に動脈性拍動を伴う狭窄所見を認めたため,dysphagia lusoriaを疑った.胸部造影CT検査で食道背側を走行して食道を圧排する異型右鎖骨下動脈を確認し,dysphagia lusoriaと診断して異型右鎖骨下動脈の血管移植術を施行して食道圧迫を解除した.術後は合併症なく順調に経過して,その後1年の経過観察において嚥下障害を認めていない.
小児救急医療において食道異物に遭遇する機会はしばしばあるが,右鎖骨下動脈起始異常による器質的な食道圧迫が嚥下障害の原因となることがある.小児の食道異物の診療にあたっては,食道通過障害をきたす病変として右鎖骨下動脈起始異常を鑑別疾患の一つとして考慮する必要があると考える.
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【症例報告】
■題名
多彩な高次脳機能障害をきたした重症マイコプラズマ脳炎
■著者
東京大学医学部附属病院小児科1),東京都医学総合研究所脳発達・神経再生研究分野こどもの脳プロジェクト2),東京大学大学院医学系研究科発達医科学分野3) 巻 和佳奈1) 森 貴幸1) 柿本 優1) 竹中 暁1) 葛西 真梨子1) 下田 木の実1) 佐藤 敦志1) 岡 明1) 佐久間 啓2) 水口 雅3)
■キーワード
マイコプラズマ脳炎, 高次脳機能障害, 髄液interleukin-6
■要旨
マイコプラズマ脳炎に関する報告は少ないが,本邦では画像変化や後遺症のない軽症例の報告が多い.我々は,マイコプラズマ肺炎罹患10日後に意識障害で発症した15歳の重症例を経験した.脳梁膨大部と後頭葉白質を中心に病変を有し,当初は意識障害が前景に立っていたが,意識状態回復後より視覚失認・拮抗失行など複数の病巣特異的な多彩な高次脳機能障害が顕在化した.抗galactocerebroside抗体をはじめとした髄液中の自己抗体はすべて陰性であった.メチルプレドニゾロンパルス療法3コースと免疫グロブリン大量静注療法1コースを施行したが,高次脳機能障害は残存した.全般的な認知機能低下のため評価が難しい側面はあったが,多彩な高次脳機能障害の可能性を把握することができ,それに即したリハビリテーションにつなげることができた.また,従来軽症例が多いとされるマイコプラズマ脳炎でも重症例が存在する.本症例では髄液interleukin-6の高値があり,重症化と関連性している可能性がある.
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【症例報告】
■題名
頭部外傷後の高次脳機能障害から漢字書字困難感を呈した児童への対応
■著者
大阪医科大学小児科1),北海道大学大学院保健科学研究院2),藍野大学医療保健学部看護科3),大阪医科大学小児高次脳機能研究所4) 福井 美保1)4) 島川 修一1) 利川 マリ1) 大槻 美佳2) 若宮 英司3) 玉井 浩1)4)
■キーワード
頭部外傷, 学習困難, 小児の高次脳機能障害, Das-Naglieri cognitive assessment system(DN-CAS)
■要旨
外傷性脳損傷後の小児において,学校はリハビリテーションの場であり,復学の重要性と復学支援の必要性が報告されているが,未だ十分に行えているとはいえない.今回,交通外傷で脳損傷後の男児が,復学後に「漢字が書けない」と訴え学習困難をきたした.原因を検討し,復学支援を行ったので報告する.症例は9歳男児.6歳時に受傷し,後遺症として右前頭〜頭頂葉および左前頭葉の一部欠損,右眼球陥凹,左片麻痺と右眼の視力喪失を認めた.約1年後に前籍校の支援学級に復学したが漢字書字ができず学習困難をきたした.知能検査では平均域であり,読み書き能力の評価結果からは書字障害が否定されたが,視知覚・視覚認知検査やDas-Naglieri cognitive assessment system(DN-CAS)の結果から,書字困難は視覚情報処理の問題が関与したと診断しえた.診断とその対応法や学習法が医療から学校に提案され,本症例の学習困難感は改善している.小児外傷性脳損傷後の復学支援において,改めて高次脳機能障害の診断が重要であることが確認された.
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【症例報告】
■題名
睡眠関連呼吸障害に在宅CPAP療法を実施したPrader-Willi症候群の3例
■著者
日本赤十字社和歌山医療センター小児科部 古宮 圭 百井 亨 水野 真介 横山 宏司 原 茂登 儘田 光和 濱畑 啓悟 吉田 晃
■キーワード
Prader-Willi症候群, 肥満低換気症候群, 睡眠時無呼吸症候群, 持続陽圧呼吸療法, 成長ホルモン療法
■要旨
睡眠関連呼吸障害を有する小児と成人のPrader-Willi症候群(PWS)の3名に対して在宅持続陽圧呼吸(continuous positive airway pressure:CPAP)を3〜9年実施し呼吸障害の改善が認められた.症例(1) は3歳7か月男児,3歳時から成長ホルモン(Growth hormone:GH)療法を実施しているが,夜間睡眠中に頻回に覚醒して排尿し,日中にしばしば強い眠気を認めるようになった.終夜睡眠ポリグラフィ(polysomnography:PSG)で失調性無呼吸による中枢性睡眠時無呼吸症と診断した.CPAPにより夜間の無呼吸,頻回の覚醒と排尿が改善した.症例(2)は15歳女児,身長146 cm 体重126 kgの高度肥満を合併し仰臥位で睡眠出来ない.PSGで重症の閉塞性睡眠時無呼吸症と診断した.CPAP開始により仰臥位で眠れるようになり昼間の眠気が改善したが,体重は140 kgとなり高度肥満は持続している.症例(3)は30歳女性,身長152 cm 体重120 kgの高度肥満,糖尿病,全身性の浮腫を認め右心不全のためICUに入院した.閉塞性睡眠時無呼吸症に対してCPAPを開始し,熟睡感が得られるようになり,7年の経過で利尿剤を中止できた.39歳時の体重は90 kg前後で推移している.
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【論策】
■題名
大阪市の重症心身障がい児者の医療コーディネート事業による急病時の受診支援
■著者
愛徳福祉会大阪発達総合療育センター小児科 和田 浩 船戸 正久 竹本 潔 飯島 禎貴 藤原 真須美 森 有加
■キーワード
重症心身障がい児者, 救急医療, 医療コーディネート, 医療的ケア, 移行期医療
■要旨
医療技術の急速な発展に伴い増加している医療的ケアが必要な重症児者や,成人医療が必要となった重症心身障がい児者の急病時対応が,大きな問題となってきた.重症心身障がい児者の急病時の受診支援のため,大阪市は2014年より重症心身障がい児者のための「医療コーディネート事業」を開始した.
本事業を,市の委託事業として当センターが受託した.医師と看護師を配置し,急病時の一次対応に加え,二次対応としての登録病院への紹介即ち医療コーディネートを行っている.対象は大阪市在住の重症心身障がい児者であるが,登録制で,2018年9月現在大阪市内の対象者2,024名中1,248名(62%)が登録されている.そのうち18歳以上は898名(72%),医療的ケアが必要であったのは340名(27%)であった.
相談対応件数は2,779件であったが,実際の急病コーディネート対応の累計は43件で,当センターでの一次対応は20件,協力医療機関に紹介し,二次対応を依頼したのは23件であった.年齢は5歳から55歳にわたっており,主な症状は発熱,腫脹・痛み,嘔吐等であった.6例が入院となったが,いずれも障がい「者」であった.
実際の対応例数は当初の想定に比して多くはなかったが,本事業はこれまで障がいのために受入れが困難とされてきた,特に成人医療が必要となった重症心身障がい児者の方々の安心に繋がっていると考えられる.
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