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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.12.17)
第123巻 第12号/令和元年12月1日
Vol.123, No.12, December 2019
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原 著 |
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九島 令子,他 1757 |
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九鬼 一郎,他 1765 |
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鈴木 このみ,他 1775 |
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衣斐 恭介,他 1780 |
症例報告 |
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親谷 佳佑,他 1788 |
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池邉 記士,他 1793 |
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久米 庸平,他 1800 |
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島崎 俊介,他 1806 |
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吉田 阿寿美,他 1812 |
短 報 |
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村社 歩美,他 1819 |
論 策 |
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永光 信一郎,他 1822 |
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佐々木 満ちる,他 1828 |
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1834 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
はじめの一本2 |
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1847 |
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1849 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻11号目次
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1855 |
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1857 |
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1858 |
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1859 |
【原著】
■題名
極低出生体重児の9歳時の腎機能
■著者
東京都立墨東病院新生児科1),同 小児科2) 九島 令子1) 大森 多恵2)
■キーワード
極低出生体重児, 学齢期, 腎機能, 血清クレアチニン, 血清シスタチンC
■要旨
超低出生体重児を含む極低出生体重児302例において,9歳健診時に血清クレアチニンとシスタチンC値を測定し,腎機能を検討した.血清シスタチンC値は出生体重が500 g未満児で高値であり,クレアチニン-eGFR(Cr-eGFR),シスタチンC-eGFR(CysC-eGFR)ともに出生体重が小さいほど低値であった.極低出生体重児全体ではCr-eGFR90未満を17%に,CysC-eGFR90未満を2%に認めた.出生体重が小さいほど異常率は高く,出生体重500 g未満児ではCr-eGFR90未満が約4割と高率であった.SGA児はAGA児と比較して両eGFRともに低値であり,在胎週数に比較して出生体重がより腎機能に影響する可能性が示唆された.
精査を施行した14例においては,腎エコー検査で9歳時点およびその後の経過観察時点で全体の約半数弱で腎臓サイズが小さく,低異形成腎が疑われた.
極低出生体重児,特に超低出生体重児,出生体重500 g未満の児は,将来の慢性腎臓病のハイリスクとして定期的な腎機能のフォローアップが必要である.
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【原著】
■題名
後天性脳損傷を認める学童・生徒の生活実態と高次脳機能障害に関する調査
■著者
大阪小児科医会病診連携部会障害児問題検討委員会 九鬼 一郎 荒井 洋 宇野 里砂 柏木 充 島川 修一 田川 哲三 田邊 卓也 鳥邊 泰久 永井 利三郎 最上 友紀子
■キーワード
高次脳機能障害, 後天性脳損傷, 頭部外傷, 急性脳症, てんかん
■要旨
後天性脳損傷に伴い,しばしば高次脳機能障害が認められるが,障害程度が軽度の学童・生徒について実態や患者・家族のニーズを調査した報告は少ない.(1)生後6か月以降の脳損傷,(2)受傷まで発育・発達正常,(3)知的発達は正常から軽度の遅れまで,(4)独歩可能,(5)半年以上経過,の全て満たした小中高校生の養育者を対象として患者背景や生活実態,高次脳機能障害に関する日常生活についてアンケート形式で調査した.
38例から回答を得た(回収率79%).発症時年齢は8か月〜13歳(平均5歳4か月),調査時年齢は6〜17歳(平均10歳10か月).原因は脳炎・脳症が18例,頭部外傷11例で,14例でてんかんを合併していた.学校生活では23例(60%)が通常クラスに在籍し,28例(74%)で学校や日常生活で困難感を示し,26例(68%)で学習補助や配慮などに関する要望が出された.日常生活調査に関して対象となった31例のうち,視覚認知障害19例(61%)が最も多く該当し,視覚認知障害と運動能力の低さ(p<0.001),記憶障害とてんかんがあること(p=0.009)が関連した.
障害程度が軽度であっても後天性脳損傷をきたした小児においては,学校生活や日常生活で困難さを示し,支援体制の強化や合理的配慮を望まれる傾向があった.
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【原著】
■題名
Down症児における1ステップ競合法で計測したFT3の偽性高値
■著者
安城更生病院小児科 鈴木 このみ 深沢 達也 服部 哲夫 久保田 哲夫 加藤 有一 宮島 雄二
■キーワード
2ステップ競合法, Down症, 甲状腺ホルモン
■要旨
甲状腺ホルモンの測定において,多くの病院で行われている1ステップ競合法では検査系に対する干渉物質が測定結果に影響を及ぼすことがあるが,2ステップ競合法では干渉物質の影響を受けにくい.
Down症児は甲状腺機能異常を認める頻度が高く,定期的な甲状腺機能の評価が推奨されている.
2014年から2015年に当院でTSH,FT3,FT4を1ステップ競合法で測定した15歳以下の小児1,292例を,Down症児71例と,非Down症児1,221例の2群に分け測定結果を後方視的に解析したところ,TSHの低下を伴わない高FT3血症を呈していた(FT3≥7 pg/mLかつ,TSH≥0.5 μU/mL)のはDown症児9例,非Down症児3例であった.そのうちのDown症児5例と非Down症児2例で2ステップ競合法による再検査が行われ,Down症児は5例中5例,非Down症児は2例中1例が基準値内の結果を示した.1ステップ競合法においてFT3≥7 pg/mLかつ,TSH≥0.5 μU/mLを示した例はDown症児で有意に多かった.また,2ステップ競合法で正常値を示した例は,Down症児が非Down症児より多い傾向にあり,全例で甲状腺中毒症症状を認めなかった.
1ステップ競合法でTSHの低下を伴わないFT3の上昇を認め,甲状腺中毒症症状がない場合,特にDown症児においては2ステップ競合法による再検査を行うべきと考えた.
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【原著】
■題名
小児市中発症大腸菌菌血症の臨床的特徴
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 衣斐 恭介 北澤 克彦 荒川 真梨子 浅倉 佑太 井口 晃宏 小林 宏伸 仙田 昌義 本多 昭仁
■キーワード
大腸菌, 菌血症, 敗血症, 尿路感染症, 基質拡張型β-ラクタマーゼ
■要旨
【目的】小児市中発症大腸菌菌血症の発生頻度の推移と臨床像の特徴を明らかにする.
【方法】対象は1989〜2018年(30年間)に当科で診療した15歳以下の市中発症大腸菌菌血症31例.発生頻度を10年毎3期(前・中・後)に分け比較した.臨床像は,診療録より,患者背景,臨床診断,分離菌の薬剤感受性および転帰を調査した.
【結果】3半期ごとの症例数と発生頻度(症例数/1,000入院症例数)は,前期8例(0.80),中期7例(0.45),後期16例(1.24)と最近10年間で増加していた.年齢は,3か月未満が14例(45%),3か月以上が17例(55%)であった.23例(74%)が尿路感染症(UTI)症例で,うち8例(35%)に膀胱尿管逆流(VUR)を認め,全例がIV度以上の高度VUR症例であった.非UTI症例では,様々な基礎疾患,急性疾患に合併した症例がみられた.後期16例から分離された大腸菌のうち,6株(38%)はアンピシリン耐性,うち2株(13%)は基質拡張型β-ラクタマーゼ産生株であった.死亡例は心肺停止で受診した1例のみであった.
【結論】今回の研究では,小児市中発症大腸菌菌血症は最近10年間で増加傾向にあり,過半数は生後3か月以降に発症していた.全症例の74%を占めたUTI症例では,高度VURが菌血症発症の一因と考えられたが,非UTI症例では,様々な併存病態がみられた.
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【症例報告】
■題名
十二指腸穿孔を合併した川崎病
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター小児循環器内科1),NTT東日本札幌病院小児科2) 親谷 佳佑1) 名和 智裕1) 澤田 まどか1) 高室 基樹1) 布施 茂登2)
■キーワード
川崎病, 急性腹症, 消化管穿孔, 十二指腸穿孔
■要旨
川崎病には稀ながら消化管穿孔を合併し,その場合には冠動脈瘤を合併するリスクが高く,正確で迅速な診断のもと,外科的治療および川崎病の治療のどちらも遅れることなく対応する必要がある.
症例は1歳の生来健康な男児.発熱および全身の多形紅斑が出現し,第2病日に前医受診し,手足の硬性浮腫,頸部リンパ節腫脹,心臓超音波検査で右冠動脈の拡大を認めたことから不全型川崎病と診断された.前医入院後,免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)が開始されたが,投与開始30分後から嘔吐を繰り返し,投与開始6時間後から意識障害および腹部膨満をきたしたため,IVIGの副反応の可能性から開始7時間で投与は中止された.翌日,腹部単純写真でfree airを認め,消化管穿孔が疑われたため当院へ搬送となり,緊急手術施行となった.術中所見より十二指腸穿孔と診断された.術後はPICU管理となり,集中治療を要したが,川崎病治療の中断を最小限にすべきと考えられ,溢水に注意しつつ第4病日よりIVIGを再開し,第5病日には解熱した.第7病日には外科医と相談の上,経口アスピリン内服を開始した.消化管および冠動脈に明らかな後遺症なく第27病日に退院した.
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【症例報告】
■題名
小脳腫脹が急速に進行し救命できなかった急性小脳炎
■著者
茨城県立こども病院小児科1),筑波大学医学医療系小児科2),茨城県立こども病院放射線科3),東京都立小児総合医療センター放射線科4),国立静岡てんかん・神経医療センター小児科5) 池邉 記士1) 塙 淳美1) 田中 竜太1)2) 福島 富士子1) 京戸 玲子1) 河野 達夫3)4) 高橋 幸利5) 泉 維昌1)
■キーワード
急性小脳炎, 水頭症, 脳ヘルニア, マイコプラズマ感染症, 抗グルタミン酸受容体抗体
■要旨
小児の急性小脳炎は,時に急激な小脳腫脹をきたし致死的な経過を辿るため,早期診断と急変への備えが必要である.我々は,小脳腫脹が発症から遅れて出現した後,急速に進行し,救命できなかった症例を経験した.
症例は12歳,男児.上気道感染後,構音障害・失調性歩行(第1病日),痙攣(第2病日)をきたし入院した.第2病日と第3病日の頭部MRIは異常なかったが,意識障害が遷延した.第5病日の頭部MRIで小脳に異常信号が出現したため,急性小脳炎と確定診断した.ステロイドパルス療法を開始したが,第7病日に心拍数の著しい変動をきたし,昏睡・呼吸停止に陥った.頭部MRIでは小脳腫脹に伴う脳幹圧迫・閉塞性水頭症・大孔ヘルニアが判明し,臨床的脳死状態となり第30病日に死亡した.マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の血清抗体価(PA法)が2,560倍と高値で,咽頭拭い液のLAMP法も陽性であったが,髄液のLAMP法は陰性であった.一方,抗グルタミン酸受容体抗体が髄液で陽性であった.
本例では,マイコプラズマ感染症に伴う免疫反応が病態や症状に関与した可能性が考えられた.急性小脳症状を呈した小児では,発症時の頭部MRIが正常であっても,痙攣や意識障害の遷延をきたした場合には急性小脳炎を念頭に置きMRIを再検する必要がある.小脳腫脹が出現した時には,脳神経外科への早期の相談が推奨される.
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【症例報告】
■題名
不均衡転座を有する一絨毛膜性異性双胎
■著者
竹田綜合病院小児科1),福島県立医科大学小児科2) 久米 庸平1)2) 有賀 裕道1) 小野 貴志1) 柳沼 和史1) 澁川 靖子1) 福田 豊1) 藤木 伴男1) 長澤 克俊1)
■キーワード
胎児水腫, 一絨毛膜性双胎, モザイク胚, 異性双胎, 不均衡転座
■要旨
一絨毛膜性双胎のほとんどは一卵性であるが,受精胚がモザイク胚であった場合,まれに性別が異なる異性双胎が発生する可能性があり,その多くが45,X/46,XYモザイクである.今回,母体妊娠初期の膜性診断で一絨毛膜性二羊膜性双胎と確認,I児が在胎15週に頸部リンパ管腫を発症し羊水染色体検査で45,Xと診断され,在胎24週すぎに子宮内胎児死亡,II児は出生後の染色体検査でmos 46,X,der(Y)t(Y;12)[8]/45,X[2]であり,array CGHでY染色体への付加部分が12q24.23-33,Y染色体の欠失部分がYq11.223-qterと診断した.自験例は自然妊娠であり妊娠初期に胎囊が1個であることを確認していたこと,双胎の染色体核型で45,Xを共有していたことから,45,Xを共有するモザイク胚からの一絨毛膜性異性双胎と推測した.II児は12qトリソミーに類似の症状を呈し,軽度発達遅滞,右水腎症,苺状血管腫を合併しており,2歳9か月現在,療育訓練を継続している.今後,性染色体モザイクとY染色体の部分欠損を有するため,精子形成不全などの合併症にも留意していく必要がある.
一絨毛膜性双胎においては,まれに異性双胎が起こりうること,I児にTurner症候群を認めた場合に他児には性染色体モザイクなどの染色体異常を有している可能性があることを念頭に置くべきである.
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【症例報告】
■題名
糖尿病に対しflash glucose monitoringを用いた重症心身障害児
■著者
千葉県こども病院内分泌科1),同 アレルギー・膠原病科2) 島崎 俊介1) 數川 逸郎1) 森 香子1) 木原 牧子1) 皆川 真規1) 山出 晶子2) 冨板 美奈子2) 星岡 明2)
■キーワード
2型糖尿病, 経腸栄養, 持続皮下インスリン注入療法(CSII), flash glucose monitoring(FGM)
■要旨
症例は10歳女児.重症心身障害児でありアレルギー性腸炎のため経腸栄養としてペプチーノ®を使用していた.低体温を主訴に当院外来を臨時受診した際に高血糖に気づかれ,その後2型糖尿病の診断に至った.インスリン持続静注で初期治療を行い,インスリン頻回注射療法(MDI)を導入したうえで退院とした.しかし経腸栄養による高血糖を是正することができなかったため,その後外来で持続皮下インスリン注入療法(CSII)とflash glucose monitoring(FGM)を導入した.
経腸栄養の合併症として高血糖をきたすことがあることは知られているが,本症例では使用されていた経腸栄養が高糖質かつ低脂質という特徴的な組成であったことが糖尿病の発症に寄与したと考えた.またCSII導入により介護者の医療的ケアに対する負担が軽減されFGMを併用することで注入栄養による急激な血糖上昇を抑えることができ,良好な血糖コントロールを得ることができた.
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【症例報告】
■題名
乳汁分泌不全による栄養障害性脂肪肝
■著者
加古川中央市民病院小児科1),高槻病院小児科2),神戸大学大学院内科系講座小児科学3) 吉田 阿寿美1) 石森 真吾1)2) 坊 亮輔3) 阪田 美穂1) 粟野 宏之3) 親里 嘉展1) 西山 敦史1) 米谷 昌彦1)
■キーワード
栄養障害性脂肪肝, 乳汁分泌不全, 先天代謝異常症
■要旨
症例は10か月女児.正期産で妊娠分娩経過に異常なく,生後8か月まで体重増加は良好で運動発達も問題なかった.生後8か月に母が妊娠6週であることが発覚した.同時期から母の乳汁分泌の低下に伴い児の急激な体重減少と,あやし笑いやつかまり立ちができなくなるといった退行も認めたために受診に至った.肝逸脱酵素上昇,脂肪肝,血糖低下,血中乳酸値上昇を認めたため精査を行ったが,ウイルス感染症や先天代謝異常症は否定的であった.経管栄養により体重は増加し,活気も改善した.退行していた各種症状も改善し経口摂取可能となったため経管栄養から離脱することが可能であった.栄養状態が改善したのちには肝逸脱酵素上昇,脂肪肝,血糖低下,血中乳酸値上昇はすべて消失し,最終的に栄養障害性脂肪肝と診断した.先進国で栄養障害性脂肪肝が問題になることは稀であるが,本症例では母の妊娠が契機となった乳汁分泌不全が,栄養障害性脂肪肝の背景にあると考えられた.乳児の脂肪肝の原因は先天代謝異常症が多数であるが,栄養障害性脂肪肝も鑑別に挙げて精査をすすめる必要がある.
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【短報】
■題名
小児科診療所を受診した患児の母親の喫煙率
■著者
トレポンテこどもクリニック1),東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科2) 村社 歩美1) 板井 麻衣2) 佐々木 明子2)
■キーワード
小児科診療所, 小児, 母親, 喫煙率, 禁煙活動
■要旨
当院を受診した患児の母親の喫煙状況を調査した.2018年3月から5月に来院した母親688人に対し無記名自記式質問紙を配布し,全員から回答を得た.妊娠前喫煙者は133人(19.3%),妊娠中喫煙者は18人(2.6%)であった.妊娠中禁煙者の出産後再喫煙率は28.7%であり,6歳以上の患児の母親では6歳未満の母親に比し有意に高かった(P<0.05).妊娠中喫煙者では,子どもの健康に対する関心の低さが懸念されるため,養育環境や親子関係などに留意すべきであると思われた.再喫煙の要因の一つとして,出産後の時間経過による禁煙意欲の低下が考えられるため,小児科医による継続的な介入が効果的であると思われた.
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【論策】
■題名
小児特定疾患カウンセリング料の適応拡大に向けた実態調査
■著者
久留米大学小児科1),堺咲花病院心身診療科2) 永光 信一郎1) 村上 佳津美2)
■キーワード
子どもの心, 心身症, 思春期, 小児特定疾患カウンセリング料
■要旨
小児特定疾患カウンセリング料は,小児科医,心療内科医が不登校や発達/情緒の障害を主訴に受診した18歳未満の患者にカウンセリングを行った場合に算定できる.家族に対してカウンセリングを行った場合は患者を伴った場合にしか算定できない.心の問題では子どもが受診しない事も少なくない.保護者のみのカウンセリングの実態,必要性,効果,時間,算定料について調査し,小児特定疾患カウンセリング料の適応拡大について考察した.対象は日本小児心身医学会の医師会員928名と心の問題をもつ患者の保護者.医師は回収数237名(回収率25.6%),保護者の回収数は521名であった.保護者のみのカウンセリングを実施したことのある医師は93%で,保護者のみのカウンセリングを必要と思う割合は医師98%,保護者95%であった.期待される効果は,医師は親の不安に関する相談であったが,保護者は子どもの精神面に関する相談であった.算定料としては3割負担で医師は1,500円から2,000円未満,保護者では1,000円から1,500円未満が最も多かった.希望カウンセリング時間は約20分であった.回答した保護者の子どもの年齢は13歳〜15歳が多く,受診病名は不登校または発達障害が多かった.子どもが受診しない場合の保護者カウンセリングが診療報酬に反映されることが望まれる一方,保護者カウンセリングによる臨床効果の検証も重要である.
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【論策】
■題名
電子診療録のテンプレートを用いた医療的ケア児の院内情報共有システム
■著者
淀川キリスト教病院小児科1),同 小児看護課2),同 医療社会事業課3) 佐々木 満ちる1) 中河 秀憲1) 平山 五月2) 下田 公子3) 三橋 由希子3) 西原 正人1) 佐野 博之1) 鍋谷 まこと1)
■キーワード
医療的ケア, 重症心身障害児, 情報共有システム, 電子診療録
■要旨
【はじめに】淀川キリスト教病院は,新生児集中治療室での周産期管理に始まり,外来通院による定期的なフォロー,小児病棟での入院管理,こどもホスピスでのレスパイトケアなど,多部門・多職種で医療的ケア児に対する支援を行ってきたが,情報の共有体制は不十分であった.【目的】医療的ケア児の多部門・多職種にわたる幅広い情報を院内で適切に共有すること.【対象】2017年5月から2018年2月までに淀川キリスト教病院小児科で在宅療養指導管理料を算定した医療的ケア児とした.【方法】電子診療録上で職種毎に「医学」「看護」「社会」の3つのテンプレートを作成し,入力者,入力場所,入力するタイミング,内容を明確化して,情報をリレー形式でつなぐ情報共有システムを構築した.また,テンプレート利用の対象となったスタッフにアンケート調査を行い有用性を検討した.【結果】利用者の85%が情報共有システムを有用と答え,その理由としては「情報の所在の明瞭化」が73%ともっとも多く,「情報収集までの時間の短縮化」,「他職種との連携」,「他部門との連携」と続いた.【考察】今後は情報の信頼性を高めるために対象となる医療的ケア児や入力者,入力するタイミングが自動的に通知されるなどシステムに改善を加え,情報の内容についても医療的ケア児自身や家族の声なども含めたより包括的なものにしていく必要がある.
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