 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.10.17)
第123巻 第10号/令和元年10月1日
Vol.123, No.10, October 2019
バックナンバーはこちら
|
 |
|
第122回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
|
谷内江 昭宏 1479 |
教育講演 |
|
ネオウイルス学とは:病原微生物ではなく共生するウイルスの役割解明
|
|
吉川 哲史 1491 |
原 著 |
|
大坪 善数,他 1497 |
|
橋本 圭司,他 1505 |
|
増田 卓哉,他 1511 |
症例報告 |
|
土田 晃輔,他 1519 |
|
植月 元一,他 1523 |
|
立岡 美穂,他 1530 |
|
森田 秀行,他 1538 |
|
村本 健翔,他 1544 |
|
東 礼次郎,他 1549 |
|
武田 摂子,他 1555 |
短 報 |
|
吉井 祥子,他 1561 |
論 策 |
|
森脇 浩一,他 1565 |
|
野澤 正寛,他 1571 |
|
|
1577 |
地方会抄録(大分・宮崎・群馬・栃木・福岡・青森・愛媛)
|
|
1579 |
|
1609 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻9号目次
|
|
1611 |
令和元年度公益財団法人小児医学研究振興財団研究助成事業のお知らせ
|
|
1613 |
|
1614 |
|
1615 |
【原著】
■題名
極低出生体重児の三尖弁輪収縮期移動距離による右心機能評価
■著者
佐世保市総合医療センター小児科 大坪 善数 尾曲 久美 庄司 寛章 横川 真理 角 至一郎
■キーワード
三尖弁輪収縮期移動距離, 右心機能, 極低出生体重児, 組織ドップラー法, Tei index
■要旨
【はじめに】極低出生体重(VLBW)児は右心不全の治療に難渋することがあり,右心機能評価が治療選択や予後予測に寄与することが期待される.
【目的】VLBW児において,心臓超音波検査で組織ドップラー法(TDI),パルスドップラー法(PDI),Mモードによる三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)を用いた右心機能評価の有用性を検討する.
【対象と方法】2017年5月から2018年11月に当院NICUに入院したVLBW児で,出生時より経時的に心臓超音波検査で右心機能を評価した30例を対象とした.出生日,生後1,2,4,6,8週に三尖弁輪s',e',TAPSE,三尖弁E/A,E/e',またPDIで右室のTei indexを測定した.
【結果】出生時に比し,TDIのs',e'は生後2週以降に有意に増加し,Tei indexは生後1週以降に有意に低下した.TAPSEは生後2週以降に有意に増加した.VLBW児を出生体重1,000 g未満の児と1,500 g未満の児に分けて比較すると,総心横径で補正したTAPSEは,出生時から生後8週まで両群間に有意差なく推移した.
【結論】VLBW児の右心機能は生後2週までに収縮能,拡張能ともに改善し,以降は安定していた.TAPSEはMモードで評価可能な簡便な指標であり,VLBW児の右室収縮能を評価しうることが示唆された.
|
|
【原著】
■題名
家族記入式乳幼児発達スケールの妥当性
■著者
国立成育医療研究センターリハビリテーション科/発達評価支援室1),同 研究所エコチル調査研究部2),同 アレルギー科3),はしもとクリニック経堂4) 橋本 圭司1)4) 目澤 秀俊1)2)3) 竹厚 誠1) 玉井 智1) 加藤 佳子1)4) 上久保 毅1)
■キーワード
発達遅滞, 新版K式発達検査, 乳幼児発達スケール, 妥当性, 発達指数
■要旨
目的:本研究の目的は,家族記入式の乳幼児発達スケール(KIDS)の基準関連妥当性を検討することである.
方法:対象は国立成育医療研究センターを受診した0から5歳の児404名であり,心理士や言語聴覚士が新版K式発達検査2001(新版K式)を実施し,KIDSタイプTを家族が記入した.
結果:KIDSの総合発達指数(DQ)と運動DQは,新版K式の全領域DQ,運動・姿勢DQとそれぞれ高い相関(r=0.756,0.774)を示した.回帰分析による予測式は,新版K式全領域DQ=22.901+0.652×KIDS総合DQ(R=0.756,決定係数R2=0.571)と比較的高い精度であった.また,新版K式総合領域,言語・社会領域のDQ70未満の発達遅滞を検出する特異度は,KIDS総合,理解言語DQカットオフ値を70とした時に,それぞれ感度が62.6,52.3%,特異度は94.0,95.3%であった.
結論:家族記入式のKIDSを用いることで,児の大まかな発達状況を予測できることがわかった.一方でKIDSの発達遅滞検出の感度は低く,スクリーニングツールとしては偽陰性が多いため,注意を要する.
|
|
【原著】
■題名
医療機関と地域行政の連携強化による特定妊婦支援の成果
■著者
芳賀赤十字病院小児科1),自治医科大学小児科2) 増田 卓哉1) 齋藤 真理1) 菊池 豊1) 吉成 裕紀1)2) 相樂 昌志1) 下澤 弘憲1)2) 保科 優1)
■キーワード
乳児虐待, 特定妊婦, 養育支援, 多職種連携, 貧困
■要旨
目的:乳児虐待予防には周産期支援や情報共有が重要で,2016年7月から,小児科医が特定妊婦支援に出産前から参加し,地域行政と連携を強化した「小児科参加型」支援を構築した.その問題点と成果について明らかにする.
方法:「小児科参加型」支援をした特定妊婦と出生児について地域行政にアンケートを行い,診療録の情報と合わせて問題点を検討した.虐待一次予防効果として支援依頼数と合同会議数を,二次予防効果として一時保護数を,三次予防効果として乳児虐待の可能性がある原因不明の来院時心肺停止例数を比較した.
結果:特定妊婦63例を検討し,妊婦には精神疾患,未婚,支援者不足などの背景リスクがあり,出生児の転帰は死亡2例,一時保護4例だった.医療機関と地域行政で特定妊婦母児の評価に相違があり,評価項目や時期,回数の違いが影響していると考えられた.経済状況の把握には関係機関内の情報共有が必要だった.「小児科参加型」支援後は支援依頼が2倍,合同会議が10倍,一時保護数が5例から7例に増加し,原因不明心肺停止例は3例から1例に減少したが,調査対象外に「虐待死疑い」が1例あった.
結語:特定妊婦支援に小児科医が参加し,地域行政と連携強化した支援を行うことは,地域行政には養育状況の把握に,特定妊婦母児には虐待発生の予防に有効と考えられたが,三次予防効果を得るには,さらなる改善が必要と考えられた.
|
|
【症例報告】
■題名
若年発症の心房粗動後に診断された筋強直性ジストロフィー
■著者
札幌医科大学小児科1),北海道立子ども総合医療・療育センター2),苫小牧市立病院小児科3) 土田 晃輔1) 福村 忍1) 山本 晃代1) 加藤 辰輔1) 川村 健太郎1) 横澤 正人2) 小原 敏生3)
■キーワード
筋強直性ジストロフィー, 心房粗動, 不整脈, 若年性
■要旨
筋強直性ジストロフィー1型(myotonic dystrophy type1:DM1)は,ミオトニアや進行性の筋力低下のほか,多彩な全身症状を呈する遺伝性筋疾患である.心病変は合併頻度が高く,突然死のリスクであることから重要であるが,若年発症の初発症状としての心房粗動の報告は少ない.我々は学童期に心房粗動を呈し,その後,DM1と診断した2例を経験したので報告する.第1例は14歳時に心房粗動を発症し,カテーテルアブレーションにて改善した.出産した児のDM1診断を契機に,本人も24歳時にDM1と診断した.第2例は幼少時から軽度の筋力低下と精神遅滞で経過観察されていた.15歳時に学校検診で心房粗動を指摘され,カテーテルアブレーションにより心房粗動は改善したが,その後心房細動が頻発した.19歳時にミオトニアが顕在化し,DM1の診断に至った.若年発症の心房粗動がDM1の初発症状である場合があり,突然死の危険因子および治療法の選択の観点から重要であり,基礎疾患の鑑別上念頭に置く必要がある.
|
|
【症例報告】
■題名
小児原発性Sjögren's症候群に合併した肺粘膜関連リンパ組織リンパ腫
■著者
香川大学医学部附属病院小児科1),同 小児外科2) 植月 元一1) 西庄 佐恵1) 岡田 仁1) 福家 典子1) 岩瀬 孝志1) 田中 彩2) 下野 隆一2) 日下 隆1)
■キーワード
原発性Sjögren's症候群, 肺MALTリンパ腫, 胸腔鏡下肺生検, IgH遺伝子再編成検査, リツキシマブ
■要旨
MALTリンパ腫(Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma:MALTリンパ腫)は,粘膜関連リンパ組織に発生する低悪性度B細胞リンパ腫である.成人ではSjögren's症候群(Sjögren syndrome:SS)にMALTリンパ腫を合併する頻度が高いが,小児ではMALTリンパ腫自体が稀である.今回われわれは13歳の原発性Sjögren's症候群(primary Sjögren syndrome:pSS)の女児に合併した肺MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する.患者は13歳時pSSと診断され無症状であったがKL-6の上昇および胸部CT検査では両側下肺優位に多発する微細な粒状影および小斑状影を散在性に認め,18F-FDG-PETでは同部位に一致して集積がみられた.無症状のため経過観察としたが約半年後に咳嗽の増悪,呼吸機能検査で拡散能低下を来したため胸腔鏡下肺生検(video-assisted thoracic surgery:VATS)を実施した.病理組織およびIgH遺伝子再構成検査の結果より肺原発MALTリンパ腫と診断し,rituximab単剤による治療を行い,病変部の縮小を認めた.小児pSSに合併したMALTリンパ腫はこれまでほとんど報告がなく,その予後は明らかでない.今後も再燃や高悪性度のリンパ腫の発生が懸念されるため長期に渡って経過観察する必要があると考えられた.
|
|
【症例報告】
■題名
Sydenham's舞踏病を契機に診断したリウマチ熱
■著者
さいたま市民医療センター小児科 立岡 美穂 椎橋 文子 桃井 貴裕 小島 あきら 古山 晶子 古谷 憲孝 谷口 留美 野田 あんず 西本 創 高見澤 勝
■キーワード
リウマチ熱, Sydenham's舞踏病, A群β溶連菌, 不随意運動
■要旨
リウマチ熱はA群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎の2〜3週間後に発症する非化膿性炎症性疾患である.日本や欧米での発症は激減しており,小児科専門医であっても経験することは稀となっている.今回,心合併症がなく,Sydenham's舞踏病をきっかけに診断した10歳男児のリウマチ熱を経験した.
溶連菌陽性で抗菌薬内服後も発熱が遷延していた.活気不良が持続し,特に理由のないしかめ面,途絶え途絶えの話し方,上肢挙上時の回内運動や指先のそり,舌挺出が維持できずもぞもぞ動いてしまう様子,把握時に不規則に力が入る様子,不随意運動を認め,溶連菌迅速検査陽性,ASO・ASK高値,炎症反応高値と併せてSydenham's舞踏病を主症状としたリウマチ熱と診断した.当初,抗菌薬投与のみで経過観察したが,多関節炎症状も出現し,アスピリン(以下ASA),プレドニゾロン(以下PSL)を短期間併用した.心炎症状は認めなかった.
本症例のような,Sydenham's舞踏病を主症状に診断されるリウマチ熱の本邦における報告は少ない.Sydenham's舞踏病の症状は,上肢挙上や舌挺出,把握などいくつかの誘発条件を知らないと発見困難なものも多い.Sydenham's舞踏病は自然緩解が期待できる合併症であるが,症状を熟知することで適切な診断・治療そして再発による重症化予防につながると思われる.
|
|
【症例報告】
■題名
胎児期から疑われた頭蓋骨硬化を伴う骨線状症
■著者
国立病院機構長良医療センター小児科1),中濃厚生病院小児科2) 森田 秀行1)2) 舘林 宏治1) 内田 靖2) 金子 英雄1)
■キーワード
頭蓋骨硬化を伴う骨線状症(OSCS), 大頭, 腓骨欠損, AMER1遺伝子, X連鎖優性遺伝
■要旨
頭蓋骨硬化を伴う骨線状症(osteopathia striata with cranial sclerosis:以下OSCS)は長管骨の骨端・骨幹端部の縦方向の線状骨硬化像と,長管骨・頭蓋骨の硬化を主症状とするX連鎖優性遺伝疾患で責任遺伝子はAMER1である.OSCSは極めて稀な疾患であり,ほとんどの患者が女性で,男性は通常致死であるため,男児の報告は限られている.
筆者らは,胎児期に羊水過多・大頭・脳室拡大・口蓋裂・両側腓骨欠損を指摘された症例において,出生前よりOSCSの可能性を疑った.出生前に行った3DCT像は診断に有用であったが,出生時の骨X線では本症に特徴的な長管骨の線状骨硬化像ははっきりしなかった.出生後は舌根沈下やアデノイドによる上気道の閉塞所見を認め,気管切開を余儀なくされた.1歳時にAMER1遺伝子解析を行い,2塩基の欠失(c.867-868del:p.Lys292Glyfs*31)を確認した.この変異は既知変異であった.母は同じ変異のヘテロ接合体であった.患児は現在3歳になり,上気道の閉塞所見は改善がみられないものの,気管切開下においては感染時を除き呼吸循環は安定している.その一方で腹部膨満や便秘のコントロールには難渋している.両内反足や腓骨欠損のため歩行の獲得は難しいが寝返りまでは可能である.言語に対する理解は良好である.
|
|
【症例報告】
■題名
インフリキシマブ治療中の若年性特発性関節炎に合併した肺炎球菌菌血症再発例
■著者
総合病院山口赤十字病院小児科1),九州大学病院グローバル感染症センター2),九州大学大学院医学研究院成長発達医学3) 村本 健翔1) 神野 俊介2) 名西 悦郎3) 石村 匡崇3) 大賀 正一3)
■キーワード
侵襲性肺炎球菌感染症, インフリキシマブ, 若年性特発性関節炎, 非ワクチン血清型
■要旨
症例は若年性特発性関節炎に対しインフリキシマブとメトトレキサート投与中の3歳女児.13価肺炎球菌結合型ワクチンを4回接種していたが,ワクチンに含有されない莢膜血清型24Fによる菌血症をきたした.Multilocus sequence typing解析では,分離株はシークエンスタイプ5496であった.この株はペニシリン感受性で,抗菌薬を計12日間投与後終了としていた.治療終了から約1か月後に再発熱し,血液培養からは初回と同じシークエンスタイプ5496の肺炎球菌が検出された.免疫スクリーニング検査には異常なく,投与中の免疫抑制薬,とくに抗ヒトTNFα抗体の投与がリスク因子のひとつと考えられた.異なる血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症を予防するため,患児には23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチンを追加接種した.近年,ワクチンの普及に伴い,非ワクチン型の肺炎球菌による侵襲性感染症が増加しており,肺炎球菌共通抗原ワクチンなど新たな予防法の実用化が待たれる.
|
|
【症例報告】
■題名
マイコプラズマ肺炎後に合併した薬剤性肝障害による胆管消失症候群
■著者
三重県立総合医療センター小児科1),済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科2) 東 礼次郎1) 杉山 謙二1) 牛田 英里1) 乙部 裕1) 櫻井 直人1) 大森 雄介1) 小川 昌宏1) 西森 久史1) 太田 穂高1) 乾 あやの2)
■キーワード
胆管消失症候群, 薬剤性肝障害, Stevens-Johnson症候群, L-カルボシステイン, マイコプラズマ
■要旨
マイコプラズマ肺炎後にStevens-Johnson症候群(SJS)を発症し,その後胆管消失症候群(VBDS)に至った4歳男児を経験した.マイコプラズマ肺炎に伴うSJSの診断より前医で免疫グロブリン療法がおこなわれたが,症状の改善を認めないため第9病日で当院へ紹介入院となった.ステロイドパルス療法でSJSの皮膚所見は軽快するも,進行性の閉塞性黄疸を認めた.閉塞性黄疸についてステロイドは効果がなく,肝生検を施行してVBDSと診断できた.また,薬剤性肝障害スコアリング・薬剤リンパ球刺激試験の結果からL-カルボシステインによる薬剤性肝障害が疑われた.血漿交換により黄疸の進行は抑制され,VBDSは黄疸改善まで時間を要するためウルソデオキシコール酸内服で経過観察とした.マイコプラズマ肺炎後にSJSを発症しVBDSに至ったが,薬剤性肝障害の関与も否定できない症例と考えられた.
|
|
【症例報告】
■題名
一次性免疫性血小板減少性紫斑病と鑑別を要した全身性エリテマトーデス
■著者
大阪医科大学小児科1),むらた小児科2),豊橋市民病院小児科3) 武田 摂子1) 岡本 奈美1) 謝花 幸祐1) 杉田 侑子1) 進藤 圭介1) 村田 卓士1)2) 玉井 浩1) 伊藤 剛3)
■キーワード
全身性エリテマトーデス, 免疫性血小板減少症, 出血, 自己抗体検査
■要旨
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は多彩な症状で発症する.今回我々は蝶形紅斑などの特徴的な身体症状を認めず,免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura:ITP)による出血症状で発症した小児SLEの1例を経験したため報告する.症例は13歳女子.大量の鼻出血および不正性器出血が出現し,血液検査で汎血球減少を認め前医紹介となった.ITPの診断で免疫グロブリン療法にて,一旦血小板数は増加したが再度低下した.治療前の血液検査で補体低下,抗核抗体・抗dsDNA抗体・抗リン脂質抗体の陽性が判明しSLEの疑いで当科紹介となった.小児SLE分類基準の5項目を満たし,SLEに伴うITPと診断した.ループス腎炎合併を認めたが,その他の重篤な臓器障害の合併はなかった.プレドニゾロン及びミコフェノール酸モフェチルで寛解導入を行い,速やかに症状及び検査所見は改善した.本症例はSLEに特徴的な身体所見は認めなかった.しかし,白血球減少,リンパ球数減少,凝固異常の検査異常を認めたことからSLEによる二次性ITPが疑われ,免疫グロブリン投与の開始前に補体検査や各種自己抗体検査が行われたことが,正確かつ迅速な診断と早期治療につながった.汎血球減少を伴うITPの症例ではSLEを含めた二次性ITPの鑑別が重要である.
|
|
【短報】
■題名
B型肝炎ワクチン接種による高感度定量HBs抗原の陽性化
■著者
国立成育医療研究センター教育研修センター1),同 感染症科2) 吉井 祥子1) 小川 英輝2) 庄司 健介2) 石黒 精1) 宮入 烈2)
■キーワード
HBsAg(HQ), HBs抗原, B型肝炎ワクチン
■要旨
B型肝炎(HB)ワクチンは有効成分としてHBs抗原を含み,ワクチン抗原によるHBs抗原検査の陽性化が知られている.近年HBs抗原検査に定量検査(HBsAg(HQ))が導入された.2017年1月から2018年6月まで,1歳未満児を対象にHBs抗原検査の変更に伴う陽性率の変化を検討した.従来の定性検査では945例のうち陽性例はなかったが,HBsAg(HQ)では198例中3例が陽性だった.陽性例はHBワクチン接種後4日以内に検査が提出されていた.後日,HBs抗原は全例で陰性化したが,1例はHBc抗体が陽性だった.HBワクチン接種後早期にHBs抗原検査を提出すると陽性化する可能性がある.
|
|
【論策】
■題名
気管切開をしている在宅医療児の地域中核病院における緊急受入れに関する調査
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科1),同 総合周産期母子医療センター2) 森脇 浩一1) 奈倉 道明1) 田村 正徳1)2)
■キーワード
在宅医療, 呼吸管理, 小児救急, 医療体制
■要旨
呼吸管理を必要とするような乳幼児の在宅医療を推進するために必要な体制整備の一つに緊急時の入院の保障があるが,地域中核病院小児科がどの程度対応できているか,日本小児科学会専門医研修施設525施設を対象として2013年にアンケートを施行した.結果は回答した420施設(回答率80%)のうち,気管切開をしている在宅医療児の急性増悪時の緊急受入れについて可能と回答した施設は158(回答施設の38%),条件付可能の施設は211(同50%),不可能な施設が50(同12%)であった.条件付き可能の条件として多かったものは,親の付添い,自施設フォロー中,人工呼吸器が不要の順であった.また,緊急入院の条件として挙げられたものは,親の付添い,自施設フォロー中,看護師の増員,医師の増員,他施設が空いていない,入院期間の限定,間欠的陽圧人工呼吸器が不要,の順であった.今回の調査を2008年のものと比較すると,在宅医療児が急変した時に条件付きも含めて受入れが可能と回答したのは369施設で前回調査時の342施設よりも増加し,不可能とした施設は80施設から50施設に減少し,人口100万人当たりの受入れ施設数が1.5未満だった県は5県から3県に減少していた.一方15府県で条件付きも含めて受入れが可能とした施設が減少したように地域格差はまだ残っており,在宅医療児の緊急対応体制を更に充実させる必要があると考えられた.
|
|
【論策】
■題名
滋賀県内の保育施設におけるジアゼパム坐剤挿入に関する現状
■著者
済生会滋賀県病院救命救急センター小児救命救急科1),滋賀医科大学小児科学講座2) 野澤 正寛1) 丸尾 良浩2)
■キーワード
保育施設, ジアゼパム坐剤, てんかん発作, 熱性けいれん, 予防投与
■要旨
【はじめに】平成29年8月22日に内閣府,文部科学省,厚生労働省より教育・保育施設等において「てんかん発作時(以下:発作時)」におけるジアゼパム(Diazepam:DZP)坐剤の使用を求める通知が出された.「発熱時の予防投与(以下:予防投与)」については言及されなかった.【目的】滋賀県内保育施設での発作時と予防投与のDZP坐剤の使用方針について通知がもたらした変化を調査する.【対象と方法】滋賀県内の認可保育所と認定こども園302施設に質問紙調査を実施した.通知前後でのDZP坐剤を使用する施設割合,通知後の看護職配置の有無や市町別でのDZP坐剤を使用する施設割合を発作時と予防投与で比較した.【結果】発作時に使用する施設が50.1%から63.2%へ増加する一方で,予防投与の方針が決まらない施設は6.0%から15.7%へと増加した.看護職配置のある施設は配置のない施設と比べて発作時の使用施設割合が高く(78.5% vs 56.9%),予防投与の方針が決まらない施設割合は低かった(6.3% vs 19.7%).市町での看護職配置率の高さと発作時に使用する施設割合には正の相関を認めた(r=0.627).【考察】通知で言及されず,方針が決まらない施設が増加した予防投与については法的解釈の整理と発信が求められる.またDZP坐剤の使用方針を浸透させるためには看護職員の配置が効果的と考えられた.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|