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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:19.8.9)

第123巻 第8号/令和元年8月1日
Vol.123, No.8, August 2019

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原  著
1.

小児腎疾患に対する腹腔鏡下腎生検の有効性

田口 匠平,他  1237
2.

小児救急室を受診したヘアターニケット症候群の8例

竹井 寛和,他  1243
症例報告
1.

Hirschsprung病類縁疾患を合併した先天性中枢性低換気症候群の新生児例と本邦既報例の比較検討

藤代 定志,他  1248
2.

在宅高流量鼻カニュラで在宅移行した先天性筋無力症候群の乳児例

酒井 慧,他  1255
3.

発症直前に接種したワクチン株による水痘に罹患した急性リンパ性白血病

福岡 正隆,他  1261
4.

尋常性白斑のフォロー中に低血糖けいれんを契機に診断されたAddison病の女児例

島本 太郎,他  1266
5.

壊死性筋膜炎を契機に診断した乳幼児自己免疫性好中球減少症

越智 元春,他  1272
6.

腸チフスの無症候性キャリアの治療中に発症した乳児例

伊藤 卓冬,他  1278
7.

発熱,貧血,歩行障害を主訴に小児壊血病を発症した自閉スペクトラム症

古森 遼太,他  1283
短  報

一総合病院からみた家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の頻度について

大久保 仁史,他  1290
論  策

院内学級でのより良い病弱児教育を目指した愛知県病弱児療育研究会の取り組み

伊藤 剛,他  1293

地方会抄録(秋田・中部・東京・千葉・宮城・鹿児島・東海・北海道)

  1299

日本小児科学会分科会一覧

  1345

日本小児科学会分科会活動状況

  1346

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻7号目次

  1358

雑報

  1360

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 364

  1361


【原著】
■題名
小児腎疾患に対する腹腔鏡下腎生検の有効性
■著者
北九州市立医療センター小児外科1),同 小児科2),一枝クリニック小児科3)
田口 匠平1)  江島 多奉2)3)  河野 雄紀1)  黒木 理恵2)  日高 靖文2)

■キーワード
腹腔鏡下腎生検, 経皮的腎生検, 針生検
■要旨
 小児腎疾患に対する診断や重症度,治療効果判定のため経皮的腎生検が一般的に行われているが,重篤な合併症や生検施行後のベッド上安静,術後疼痛,検査後の運動制限など患者にとって負担の多い検査である.当院では,より確実な止血と術後厳密な安静を必要としない方法として,2013年3月より腹腔鏡下腎生検(以下,本法)を導入している.2013年3月から2018年6月までに本法を行った小児腎疾患患者62例に対して,その有用性を検討した.経皮的腎生検を行った36例と比較すると,平均採取糸球体数(腹腔鏡群:36.1±18.4個 vs経皮群:22.1±18.6個),平均在院日数(腹腔鏡群:4.0±1.19日 vs 経皮群:6.8±1.05日)において腹腔鏡群が有意に優れていた.また腹腔鏡群を初回群と再生検群の2群に分け比較を行ったが,採取糸球体数,出血量,手術時間に関して有意差は認められなかった.本法は,経皮的腎生検と比較して,麻酔や気腹による侵襲を考慮しても病理診断や術後合併症,術後QOLなど総合的に患者満足度が高く,再生検も可能である.今後,小児腎疾患の患児に対して積極的に導入されるべき方法であると考えられた.


【原著】
■題名
小児救急室を受診したヘアターニケット症候群の8例
■著者
東京都立小児総合医療センター救命・集中治療部救命救急科
竹井 寛和  伊原 崇晃  野村 理  萩原 佑亮

■キーワード
ターニケット, 体毛, 絞扼, 足趾, 外陰部
■要旨
 【背景】ヘアターニケット症候群は,体毛や糸が小児の手指や足趾に絡まることで絞扼を呈する病態として知られ,急性虚血により組織の壊死を起こしうる緊急性の高い病態である.救急室(Emergency Room:ER)を受診したヘアターニケット症候群の児の臨床的特徴を記述することを目的とした.
 【方法】症例集積研究を研究デザインとし,2010年3月から2017年12月までに東京都立小児総合医療センターを受診した15歳以下の小児でヘアターニケット症候群と診断された症例を抽出し,年齢,性別,絞扼部位,原因絞扼物,受診までの経緯,発見から受診までの時間,ERでの解除処置,転帰を調査し記述した.
 【結果】8例の症例が対象となった.年齢は1か月から14歳まで幅があり,すべて女児であった.受傷部位としては足趾が5例,陰唇が2例,舌が1例であった.足趾ターニケットはすべて乳児で,陰唇ターニケットは10歳および14歳の女児であった.陰唇ターニケットの2例は外陰部痛を主訴に受診し,ERで絞扼物の解除を実施された.入院した症例はなかった.
 【結語】海外での先行研究と同様,年齢ごとに受傷部位に特徴が見られた.今後より多くの症例数による国内からのヘアターニケット症候群に関する調査実施が待たれる.


【症例報告】
■題名
Hirschsprung病類縁疾患を合併した先天性中枢性低換気症候群の新生児例と本邦既報例の比較検討
■著者
関西医科大学医学部小児科学講座1),同 外科学講座小児外科2),山形大学医学部小児科学講座3)
藤代 定志1)  大橋 敦1)  田中 裕香1)  平林 雅人1)  峰 研治1)  土井 崇2)  佐々木 綾子3)  金子 一成1)

■キーワード
先天性中枢性低換気症候群, Hirschsprung病, Hirschsprung病類縁疾患
■要旨
 先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome:CCHS)は換気反応の先天的な障害により出生直後から睡眠時に低換気や無呼吸を呈する疾患で,PHOX2B遺伝子の変異が原因となり,約20%にHirschsprung病(Hirschsprung disease:HD)を合併する.今回,筆者らはCCHSにHD類縁疾患を合併した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
 患児は在胎40週1日,出生体重3,082 gで出生した.出生直後より呼吸障害と腹部膨隆を認め,遷延する睡眠時の無呼吸発作からCCHSを疑った.日齢27に遺伝子検査を行い,PHOX2B遺伝子に27個のポリアラニン伸長変異を認めCCHSと診断した.また,日齢7に施行した回腸と横行結腸の腸管粘膜全層生検の結果(腸管神経節細胞僅少症)と消化管蠕動不全所見からHD類縁疾患と診断した.これらの結果より,気管切開による人工呼吸器管理と人工肛門造設による栄養管理で在宅医療を行い順調に経過していたが,日齢290に不整脈に起因すると考えられる突然死で不幸な転帰となった.医中誌Webの検索では,本邦でのCCHSとHD類縁疾患の合併は2例のみであった.
 新生児期から睡眠時の無呼吸発作と消化管通過障害を認める場合は,CCHSとHDあるいはHD類縁疾患の合併を考慮しPHOX2B遺伝子の検索と小腸や大腸に亘る広範囲の腸管粘膜生検を速やかに行い,確定診断の上で管理方針を決定することが望ましいと思われた.


【症例報告】
■題名
在宅高流量鼻カニュラで在宅移行した先天性筋無力症候群の乳児例
■著者
長野県立こども病院神経小児科1),同 リハビリテーション科2),信州大学医学部小児環境保健疫学研究センター3),同 小児医学教室4),同 遺伝医学・予防医学教室5),同 附属病院遺伝子医療研究センター6)
酒井 慧1)  稲葉 雄二1)3)4)  斎間 陽子1)  山内 翔子1)  中嶋 英子1)  福山 哲広1)  三澤 由佳2)  塚原 孝典4)  神谷 素子4)  古庄 知己5)6)

■キーワード
先天性筋無力症候群, 高流量鼻カニュラ(High-Flow Nasal Cannula), ラプシン, ピリドスチグミン臭化物, 在宅移行
■要旨
 先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome,CMS)は神経筋接合部の先天的な異常により全身の筋力低下や易疲労性を呈する疾患で,ラプシン遺伝子の変異例ではアセチルコリン受容体機能の障害により発症する.在宅高流量鼻カニュラ(High-Flow Nasal Cannula,HFNC)で在宅移行できた11か月女児を経験したので報告する.出生時に呼吸不全を呈し,3日間の気管挿管下人工呼吸管理後にHFNCを要した.全身の筋力低下,多発関節拘縮,哺乳・嚥下障害,顔面・胸郭・四肢の多発異常を認め,月齢3にラプシン遺伝子のホモ接合体のミスセンス変異を検出し,CMSと診断した.ピリドスチグミン臭化物投与とリハビリテーションにより成長と発達が促された.退院時には夜間のみHFNCを使用し,RSウイルス罹患時に気管挿管を要したが,気管切開は回避できた.CMSはまれな疾患ではあるが,薬物療法,リハビリテーション,栄養管理に加え積極的な呼吸管理により良好な経過が期待できる.同時に,在宅での治療の継続には安全性とともに簡便性も重要である.在宅HFNC療法は神経筋疾患の呼吸管理における選択肢の一つとなると考えられるが,現在保険適用ではなく報告も少ないため,症例を蓄積し安全性および有効性のさらなる検討が必要である.


【症例報告】
■題名
発症直前に接種したワクチン株による水痘に罹患した急性リンパ性白血病
■著者
大阪市立総合医療センター小児医療センター小児血液腫瘍科1),同 小児救急科2),藤田医科大学医学部小児科3)
福岡 正隆1)  藤崎 弘之1)  山崎 夏維1)  仁谷 千賀1)  岡田 恵子1)  天羽 清子2)  外川 正生2)  吉川 哲史3)  原 純一1)

■キーワード
水痘・帯状疱疹ウイルス, 水痘ワクチン, Oka株, 急性リンパ性白血病
■要旨
 急性リンパ性白血病(ALL)発症直前に水痘ワクチン接種歴があり,寛解導入療法中にワクチン株由来の水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染が確認された症例を経験した.症例は生来健康な7歳8か月男児.B前駆細胞型ALLと診断され,寛解導入療法を開始したが,化学療法開始12日目に頭部に搔痒を伴う丘疹が出現した.皮疹に拡大傾向がなく経過観察としていたが,化学療法開始30日目に体幹・四肢に水疱疹が出現し,擦過検体からVZV-DNAが検出された.化学療法開始18日前に水痘ワクチン接種歴があったため,LAMP法およびDNAシークエンス解析を行ったところ,ワクチン株(Oka株)由来と判明し,ワクチン株による水痘と診断した.アシクロビル投与下に化学療法を再開し,以降水痘の再燃はなかった.また,院内二次感染例は認めなかった.
 免疫不全状態の患者における水痘ワクチン接種では,ワクチン株による水痘を発症することがあり,重症化例や二次感染の報告もある.水痘ワクチンの定期接種化に伴い,偶発的に接種後化学療法などで免疫抑制状態になる患者が今後増える可能性があり,注意を要する.


【症例報告】
■題名
尋常性白斑のフォロー中に低血糖けいれんを契機に診断されたAddison病の女児例
■著者
産業医科大学医学部小児科1),同 医学部医学教育担当教員2)
島本 太郎1)  山本 幸代1)2)  多久 葵1)  池上 朋未1)  桑村 真美1)  齋藤 玲子1)  後藤 元秀1)  久保 和泰1)  川越 倫子1)  河田 泰定1)  楠原 浩一1)

■キーワード
けいれん, 原発性副腎不全, 尋常性白斑, 自己免疫性多内分泌腺症候群, 低血糖
■要旨
 Addison病は色素沈着以外の症状が非特異的であり,皮膚所見を見逃すと診断が遅れ急性副腎不全をきたす可能性がある.今回我々は急性副腎不全による低血糖けいれんを契機に診断された,尋常性白斑を伴うAddison病の女児例を経験した.症例は6歳女児.4歳頃より全身に脱色素斑を認め皮膚科で尋常性白斑と診断された.徐々に増強する全身の色素沈着がみられていたが,内分泌検査は行われていなかった.6歳時,全身性強直間代けいれんが出現した.急性副腎不全による低血糖(血糖23 mg/dL,コルチゾール0.4 μg/dL未満,ACTH 1,700 pg/mL超)が判明し,精査目的に当科紹介入院となった.その他の内分泌検査,画像検査からAddison病と診断した.遺伝子検査では原発性副皮質腎機能低下症に関与する既知の遺伝子に異常所見を認めなかった.尋常性白斑の合併から自己免疫性多内分泌腺症候群(autoimmune polyglandular syndrome,以下APS)が疑われた.Autoimmune Regulator(以下AIRE)遺伝子に変異を認めなかった.尋常性白斑を認める症例ではAPSを考慮し,副腎皮質機能評価を含めた内分泌学的評価を行うことが重要である.


【症例報告】
■題名
壊死性筋膜炎を契機に診断した乳幼児自己免疫性好中球減少症
■著者
国立病院機構岡山医療センター小児科1),同 形成外科2),同 小児外科3),こまざわ小児科4)
越智 元春1)  清水 順也1)  篠山 美香2)  片山 修一3)  茂原 研司1)  服部 真理子1)  駒澤 徹4)  久保 俊英1)

■キーワード
乳幼児自己免疫性好中球減少症, 壊死性筋膜炎, 易感染性, Epstein-Barr virus
■要旨
 乳幼児自己免疫性好中球減少症(Autoimmune neutropenia of infancy:AIN)を背景に発症した壊死性筋膜炎(necrotizing fasciitis:NF)の1例を経験した.生来健康な1歳7か月の男児で腹部の右側に皮膚の黒色壊死を伴う暗赤紫色の水疱と周囲の発赤を認めた.血液検査で炎症反応上昇を認め当院に紹介された.来院時,代償性ショックの状態で,LRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)スコアが7点であり,腹部造影CTで筋膜に沿った炎症像を認め臨床的にNFと診断した.形成外科,小児外科と連携し緊急デブリドマン,抗菌薬加療を行い救命した.入院時血液検査で末梢血中に好中球を認めず,抗human neutrophil antigen-1a(HNA-1a)自己抗体が検出され,AINと診断した.またEpstein-Barr virus(EBV)の抗体価は初感染急性期パターンを示し,AIN発症へのEBV感染の関与が示唆された.今回,ショックへの迅速な対応と並行して鑑別診断をすすめ,外科系診療科と密な連携を取って診療することが児の救命につながったと考えられた.軟部組織感染の診療にあたる際にはNFを考慮する必要がある.また,重症感染症を契機に未診断の免疫不全症候群の診断に至る場合がある.


【症例報告】
■題名
腸チフスの無症候性キャリアの治療中に発症した乳児例
■著者
愛知県厚生農業協同組合連合会豊田厚生病院小児科
伊藤 卓冬  梶田 光春  鈴木 大路  辻 元基  西田 大恭  生駒 雅信

■キーワード
腸チフス, 乳児
■要旨
 症例は6か月女児で,母が腸チフスと診断され,保健所の家族内感染調査で児の便からSalmonella typhiが分離されたため,無症候性感染への治療としてセフカペンピボキシルを内服中であった.しかし,内服9日目に発熱と水様便を生じたため当院を再診し,その後解熱せず,血液培養からSalmonella typhiを検出したため発熱5日目に入院加療を開始した.セフォタキシム14日間の静注で治癒し退院したが,退院2週間後に再び発熱と下痢を生じて腸チフス再発の疑いで入院し,便培養および血液培養からSalmonella typhiが分離された.薬剤感受性試験は初回入院時と一致したため,セフォタキシム静注で治療を開始したが,胆道および腸管移行性を考慮して入院第3病日からセフトリアキソン静注に変更した.計14日間の抗菌薬投与の後に退院した.退院後は保健所で便検査をおこない,現在は除菌完了となっている.わが国における乳児の腸チフス例は極めて稀であり,その抗菌薬投与中の発病と,治療後の再発を経験したので報告する.


【症例報告】
■題名
発熱,貧血,歩行障害を主訴に小児壊血病を発症した自閉スペクトラム症
■著者
広島大学病院小児科
古森 遼太  土居 岳彦  野間 康輔  岡田 賢  小林 正夫

■キーワード
小児壊血病, ビタミンC, 葉酸欠乏症, 自閉スペクトラム症
■要旨
 壊血病はビタミンC(L-アスコルビン酸)欠乏により生じる血管性紫斑病で,乳幼児期の発症例では骨成長不全を伴うことがある.現在の先進国においても発達障害に関連する偏食から発症することがある.
 症例は3歳10か月男児.2歳時に自閉スペクトラム症と診断された.当科入院2か月前から発熱,歩行障害が出現し前医を受診.悪性腫瘍や膠原病などが疑われ当科に紹介入院した.生活歴では極度の偏食があり,白米と餡のみ摂取していた.血液検査で貧血,急性期蛋白上昇あり,下肢単純X線写真で骨端の透亮像と骨幹端の硬化像,下肢造影CT検査で両側大腿筋群の腫脹と両側大腿骨骨皮質周囲に血腫を認めた.画像所見と偏食による低栄養状態から小児壊血病を疑いアスコルビン酸投与を開始した.治療開始前の血清ビタミンCの低値から,小児壊血病と診断した.また貧血は原因として慢性炎症と葉酸欠乏によるものが考えられた.栄養状態の改善に伴い解熱し,大腿の腫脹と歩行障害は改善した.
 壊血病では出血症状のみならず,炎症反応の上昇を認めることがあり,悪性腫瘍や膠原病と鑑別を要することがある.さらにビタミンCは他の栄養素の吸収にも関与しており,発達障害児で偏食を伴う場合には他の栄養性疾患の合併にも注意を要する.


【短報】
■題名
一総合病院からみた家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の頻度について
■著者
北海道社会事業協会富良野病院
大久保 仁史  黒田 真美  松尾 公美浩  角谷 不二雄

■キーワード
家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体, 小児脂質異常症, 高LDLコレステロール血症, 虚血性心疾患, 高脂血症
■要旨
 家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体(HeFH)の頻度は200〜500人に1人とされており,遺伝性疾患において最多である.若年性冠動脈疾患のリスクが極めて高いが,本邦における診断率が低いことも指摘されている.今回私たちは,1年間の当院入院患者を対象として,富良野一総合病院におけるHeFHの頻度を調査した.総数704人の内,確定例は1名,家族歴が不明で判定保留例が1名いた.正確な家族歴の聴取が難しい場合があった.小児期から積極的に本疾患のスクリーニングを行い,早期発見,早期介入を行う事が重要である.


【論策】
■題名
院内学級でのより良い病弱児教育を目指した愛知県病弱児療育研究会の取り組み
■著者
豊橋市民病院小児科1),江南厚生病院こども医療センター2)
伊藤 剛1)  尾崎 隆男2)

■キーワード
院内学級, 特別支援学級, 病弱児教育
■要旨
 院内学級(病院内に設置された特別支援学級,または病院内での訪問学級)は病気で入院を余儀なくされる子どもたちに学習を保障するばかりではなく,交友や社会性を養い,自分を押し殺しがちな病室の環境から開放されることで自己を取り戻し,治療に立ち向かう勇気を与えうるという点で,入院治療の重要な柱の一つとなる.愛知県では1988年(昭和63年),院内学級環境の向上を図ることを趣旨に小児科医師,学校教師らの有志により愛知県病弱児療育研究会が立ち上がり,2017年に30年の節目を迎えた.これまでの活動を振り返り,院内学級に関わる教育関係者,医療従事者,患児とその家族たちに今後とも役立つ情報を提供するために,当研究会の30年間の活動内容をまとめ,今後の課題と展望について考察した.院内学級を取り巻く関係者の理解や社会制度は決して十分とは言えず,まずは現場の横の繋がりを確立することで問題点やそれぞれの工夫や取り組みについての情報を共有し,社会に発信をしていくことが必要である.

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