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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.7.18)
第123巻 第7号/令和元年7月1日
Vol.123, No.7, July 2019
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原 光彦,他 1101 |
日本小児医療保健協議会栄養委員会 |
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水野 克己,他 1108 |
原 著 |
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星野 雄介,他 1112 |
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小野寺 千夏,他 1117 |
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中田 修二,他 1122 |
症例報告 |
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高橋 昌志,他 1132 |
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松木 琢磨,他 1138 |
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冨野 広通,他 1144 |
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谷 知行,他 1150 |
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浅倉 佑太,他 1156 |
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大竹 正悟,他 1162 |
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澁谷 聖月,他 1167 |
短 報 |
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笹岡 悠太,他 1174 |
論 策 |
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田中 磨衣,他 1178 |
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半田 陽祐,他 1183 |
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1187 |
地方会抄録(滋賀・福島・山形・岡山・岩手・広島・福岡)
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1188 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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1213 |
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No. 81 人工呼吸器の経鼻カニューラによる縊頸
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1216 |
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No. 82 一般用医薬品(外用薬)に含まれているカンフル(樟脳)による中毒
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1220 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方―私の場合26 |
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1222 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
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1224 |
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1225 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻6号目次
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1230 |
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1233 |
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1234 |
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【原著】
■題名
新生児の気胸に対する肺超音波検査の有用性
■著者
茨城県立こども病院新生児科 星野 雄介 新井 順一 雪竹 義也 金井 雄 鎌倉 妙
■キーワード
新生児, 気胸, 肺超音波検査
■要旨
目的:成人救急領域では様々な肺疾患の診断に肺超音波検査が活用されているが,本邦では新生児に肺超音波検査を行った報告はない.新生児の気胸の診断には胸部X線写真やトランスイルミネーションが一般的に用いられるが,本研究では新生児の気胸の診断における肺超音波検査の有用性について検討した.
方法:2017年4月から2018年6月の期間に当院に入院し胸部X線写真から気胸と診断した20例と気胸を除外した20例に,1名の新生児科医が肺超音波検査を行った.記録されたBモードとMモードの画像を無作為に配列し,肺超音波検査を行っていない4名の新生児科医が特徴的な画像所見の有無に基づいて読影した.
結果:気胸の症例では全例で「Lung Point」を認め,空気が存在する部位では「Lung Sliding」は消失していたが,「Stratosphere Sign」は認めない症例もいた.Bモードの画像の診断率は感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率は全て100%という結果であったが,Mモードの画像の診断率は感度 78%,特異度 81%,陽性的中率 83%,陰性的中率 77%という結果であった.
結論:肺超音波検査を行う上で,特徴的な画像所見が得られる仕組みをそれぞれ理解し総合的に判断する事で,新生児の気胸の診断に肺超音波検査は有用と考えた.
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【原著】
■題名
小児急性精巣上体炎における先天性腎尿路異常検索の必要性
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部1),同 教育研修センター2),同 放射線科3) 小野寺 千夏1) 余谷 暢之1)2) 永井 章1) 宮坂 実木子3) 石黒 精1)2)
■キーワード
急性精巣上体炎, 小児, 先天性腎尿路異常, 尿路感染症, 排尿時膀胱尿道造影検査
■要旨
若年小児の急性精巣上体炎には先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)を背景とした病態が含まれている.しかし,本邦では小児急性精巣上体炎についてまとまった報告はなく,CAKUT検査の適応基準がない.2002年4月から2012年11月の10年7か月間に国立成育医療研究センターで,症状,身体所見から急性精巣上体炎が疑われ,放射線科医がカラードプラー超音波検査によって診断した18歳未満の症例について,既往歴,尿検査,尿培養,排尿時膀胱尿道造影などの所見について後方視的に検討した.該当症例は3か月から17歳の105例であり,うち17例にCAKUTが合併していた.再発を認めたのは5例で,うち4例でCAKUTの合併を認めた.尿路感染症を合併した16例では,合併しなかった89例と比較して有意に低年齢であり,CAKUTの合併率が有意に高かった.1歳未満で発症した5例において排尿時膀胱尿道造影を施行したところ,4例に下部尿路狭窄(尿道狭窄)を認め,うち3例に尿道狭窄解除術を施行した.小児の急性精巣上体炎において,低年齢層では尿路感染症の合併が多く,特に既往がない1歳未満の急性精巣上体炎患者では尿道評価のために排尿時膀胱尿道造影を含めたCAKUT精査が必要であると示唆される.
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【原著】
■題名
Vesikariスコアによる外来でのロタウイルスワクチンの有効性評価
■著者
なかた小児科1),札幌医科大学医学部小児科2) 中田 修二1) 津川 毅2) 大野 真由美2)
■キーワード
ロタウイルスワクチン, ロタウイルス胃腸炎, 外来受診減少, Vesikariスコア, 重症化予防
■要旨
ロタウイルス(RV)ワクチンの小児科外来受診例に対する臨床効果を検討するため,ワクチン導入前後の各7シーズン,RV胃腸炎の疫学的変化を札幌市のなかた小児科において検討した.2005年1月から2018年9月まで当院を受診した,主に5歳未満の急性胃腸炎患者1,574例(年間77〜147例)を対象とし,糞便中のRV抗原の検出を行い,陽性検体からG/P/I遺伝子型の解析を行った.2013年シーズンからVesikariスコア(VS)を用いて臨床的重症度を評価した.
ワクチン導入前と比べて,ワクチン接種率が50%を超えた後の2014年シーズン以降に発症数は低下したが,ワクチン接種率が70%前後に上昇してもさらなる患者数の減少はみられなかった.一方,発症者に占めるワクチン接種完了者の割合が15%から65%まで高まった.ワクチン接種完了者の中で入院例はみられず,外来における経静脈輸液率も低かった.VSを用いた分析で,重症者の割合(ワクチン接種群35%,非接種群74%)は統計学的に有意差があり,シーズン毎にVS中央値(ワクチン接種群10,非接種群13)をみてもワクチン接種群の方が軽症であった.ワクチンの集団免疫効果の可能性が示された.検出されたRVのG/P/I遺伝子型は多様性に富んでいた.
RVワクチンはRV胃腸炎患者の外来受診数を抑制し,重症度を低下させる可能性が客観的評価法で示唆された.
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【症例報告】
■題名
高ガラクトース血症を呈した先天性門脈体循環シャントに対する経皮的塞栓術3例
■著者
愛媛大学大学院医学系研究科分子・機能領域小児科学講座 高橋 昌志 檜垣 高史 伊藤 敏恭 岩田 はるか 宮田 豊寿 渡部 竜助 森谷 友造 太田 雅明 高田 秀実 石井 榮一
■キーワード
先天性門脈体循環シャント, 高ガラクトース血症, 静脈管開存, 肺高血圧症, 肝肺症候群
■要旨
先天性門脈体循環シャント(Congenital portosystemic shunt;CPSS)は先天性の異常血管を通じて門脈血が肝臓を通過せずに直接体循環系に流入することにより多彩な合併症を引き起こす血管異常であり,肝臓で代謝されるべきガラクトースがシャント血管を通じて体循環系に流れることで高ガラクトース血症を呈する.CPSSは新生児マススクリーニングにおいてガラクトース高値を示す疾患の中でも,遺伝性酵素欠損症よりも頻度が高いが,多くは無症状で経過するため,診断することは非常に難しい.CPSSは肺高血圧症,肝硬変,肝腫瘍,肝肺症候群,肝性脳症,大脳基底核へのマンガンの蓄積などの重篤な合併症を引き起こすことがあり,できるだけ早期に診断し,治療を行う必要がある.CPSSに対する治療としては外科的結紮術が主流であったが,近年コイルや閉鎖栓による経皮的閉鎖術がより低侵襲に行うことができるようになっており,有用な治療法の1つであると考える.
今回我々は新生児マススクリーニングにおいて高ガラクトース血症を呈し,経皮的閉鎖術によって治療を行ったCPSSの3例を経験した.3症例とも無症状で合併症のないうちに治療を行うことが可能であった.
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【症例報告】
■題名
治療介入時期の違いにより異なる発達経過を辿った腎性尿崩症の兄弟例
■著者
東北大学病院小児科 松木 琢磨 熊谷 直憲 内田 奈生 工藤 宏紀 木越 隆晶 二瓶 真人 曽木 千純 川島 明香 鈴木 大 上村 美季 市野井 那津子 菅野 潤子 呉 繁夫
■キーワード
先天性腎性尿崩症, 早期介入, 中枢神経障害
■要旨
先天性腎性尿崩症(Congenital Nephrogenic Diabetes Insipidus,CNDI)は,多飲多尿の他,乳幼児においては成長障害,精神発達遅滞,間欠的な発熱等の臨床症状を呈する.稀な疾患で根本的な治療法はないが,早期介入により成長障害の改善が見込め,非可逆的な中枢神経障害を予防しうる.遺伝性疾患であり,生活歴に加えて家族歴の聴取も重要である.
当科で診療中の兄弟例について報告する.兄は1歳まで成長障害,運動発達遅滞について精査されていなかった.尿浸透圧65 mOsm/kg,血清バゾプレシン20.0 pg/mLであり先天性腎性尿崩症と診断した.サイアザイド系利尿薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いて尿量減少をはかった.介入により成長障害,運動発達遅滞は改善した.遺伝子解析にてAVPR2に病原性変異が同定された.兄の確定診断後に弟が出生した.同様に早期から体重増加不良を呈し,生後4か月で当科へ紹介となった.兄と同一の遺伝子変異が同定され,サイアザイド系利尿薬,塩分制限を開始した.介入後体重増加不良は改善した.弟は運動発達遅滞を呈することなく経過している.
CNDIでは早期介入のタイミングを見逃さないことにより中枢神経障害を予防しうる.
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【症例報告】
■題名
脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症を合併した急性巣状細菌性腎炎症例の血液・髄液サイトカインプロファイル
■著者
佐賀大学医学部小児科1),国立病院機構嬉野医療センター小児科2),宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野3) 冨野 広通1)2) 岡 政史1)2) 大塚 泰史1) 在津 正文1)2) 布井 博幸3) 松尾 宗明1)
■キーワード
急性巣状細菌性腎炎, 可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎/脳症, サイトカイン
■要旨
急性巣状細菌性腎炎(AFBN)は腎実質の局所感染による腫瘤性病変で,急性腎盂腎炎(APN)と比較し白血球尿が少ない,膀胱尿管逆流症の頻度が高いなどの特徴がある.近年,AFBNに可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎/脳症(MERS)を合併した症例の報告が散見され,さらにAFBNやMERS罹患時のサイトカインによる病態理解が試みられている.我々はMERSを合併したAFBNとAPNにそれぞれ罹患した男児を経験した.血清と髄液のサイトカインを計測し,AFBNとAPNの血清サイトカインを,MERS合併AFBNの血清と髄液サイトカインを検討した.
症例は発熱,痙攣,意識障害を主訴に入院した1歳男児で,腹部造影CTと頭部MRIによりMERS合併AFBNと診断した.起炎菌はEnterococcus faecalisで抗菌薬投与にて軽快した.さらに退院1か月半後,児はAPNに罹患し抗菌薬投与にて軽快した.サイトカインは,MERS合併AFBN罹患時ではAPN罹患時よりも血清IL-8が高値だった.またMERS合併AFBN罹患時は血清よりも髄液でIL-6,IL-10,IFN-γ,TNF-αが高値だった.MERS発症には血清よりも髄液サイトカインが病態を反映している可能性がある.
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【症例報告】
■題名
母体のアンドロゲン産生副腎腫瘍による46,XX性分化疾患
■著者
新潟大学医歯学総合病院小児科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科新潟地域医療学講座2) 谷 知行1) 長崎 啓祐1) 入月 浩美1) 佐々木 直1) 小川 洋平1)2) 齋藤 昭彦1)
■キーワード
46,XX性分化疾患, 外性器異常, 母体副腎腫瘍, 母体男性化
■要旨
性分化疾患(Disorders of sex development:DSD)は染色体構成を元に,性染色体異常に伴うDSD,46,XY DSD,46,XX DSDなどに分類される.46,XX DSDの原因は,性腺分化異常,胎児期アンドロゲン過剰,内外性器発生異常がある.胎児期アンドロゲン過剰は,21-水酸化酵素欠損症など胎児に原因がある場合が多いが,稀に母体由来のアンドロゲン過剰によるものがある.症例は初診時3か月の児.妊娠高血圧進行のため在胎30週で帝王切開で出生した.出生時に外性器異常(陰核肥大,陰唇癒合,共通泌尿生殖洞,性腺非触知)を認めた.染色体は46,XX,SRY陰性で,MRIで骨盤に子宮腟構造,左鼠径部に性腺を認め,社会的性を女性とされた.新生児マススクリーニング異常はなく,DSD精査のため受診した.妊娠中に母の男性化兆候があったため,胎児由来アンドロゲン過剰を疑ったが,児の尿ステロイドプロファイルで否定的となった.母の男性化徴候を再度確認すると,妊娠前から存在し出産後も持続していたことが判明した.その後,母の血清DHEA-S高値と右副腎機能性腫瘍が発見され,腹腔鏡下腫瘍摘出術が行われた.病理学的にホルモン産生副腎腺腫と診断された.46,XX DSDは,母体におけるアンドロゲン過剰が原因となりうることを念頭におき,母への詳細な問診や身体所見の確認が必要である.
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【症例報告】
■題名
アトピー性皮膚炎患児に発症した黄色ブドウ球菌による急性巣状細菌性腎炎
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 浅倉 佑太 北澤 克彦 本多 昭仁 仙田 昌義 小林 宏伸 井口 晃宏 荒川 真梨子 衣斐 恭介
■キーワード
急性巣状細菌性腎炎, 尿路感染症, 黄色ブドウ球菌, アトピー性皮膚炎, 膀胱尿管逆流
■要旨
黄色ブドウ球菌は,小児の有熱性尿路感染症(以下FUTI)の起因菌としては稀である.メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(以下MSSA)による急性巣状細菌性腎炎(以下AFBN)の症例を経験したので報告する.
症例は,アトピー性皮膚炎に対し治療中の8歳男児で,7日間持続する発熱の精査目的で入院した.FUTIの既往はなかった.入院時,全身の皮膚は乾燥し,四肢に搔爬痕を伴う多数の紅斑を認めた.中間尿検査で膿尿とグラム染色でのグラム陽性球菌を認めたためFUTIと診断し,セフォタキシムとアンピシリン投与で治療を開始した.しかし,入院3日目も発熱が持続しており,腹部造影CTを施行したところ左腎に多発性の腫瘤状造影不良域を認めAFBNと診断した.同日,尿培養でMSSAが発育した.薬剤感受性試験を参考に抗菌薬をセファゾリンに変更したところ2日以内に解熱し,計3週間の抗菌薬治療で軽快した.排尿時膀胱尿道造影では,両側膀胱尿管逆流(以下VUR)を認めた.
本症例においては,感染経路は不明であったが,皮膚に定着したMSSAがAFBNの起因菌になったことが推測された.VURなど尿路異常のある患児において,活動性アトピー性皮膚炎を合併している場合には,AFBNを含むFUTIの起因菌として黄色ブドウ球菌を考慮すべきと考えられた.
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【症例報告】
■題名
簡易薬物スクリーニングキット検査偽陰性であった薬物中毒3例
■著者
松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科1),千葉大学大学院医学研究院附属法医学教育研究センター2) 大竹 正悟1) 小橋 孝介1)2) 岡田 広1) 平本 龍吾1)
■キーワード
急性薬物中毒, 意識障害, 簡易薬物スクリーニングキット, 質量分析
■要旨
簡易薬物スクリーニングキットTriageDOAⓇ(シスメックス社,以下トライエージ)は操作が簡便で検出可能な薬物も豊富であり,小児救急医療の現場でもしばしば使用される.原因薬物によって検出感度が異なり,偽陰性を示す要因が報告されているが,小児例の症例集積はない.今回トライエージが偽陰性を示した薬物中毒の3症例を経験した.1例目は7歳女児,2例目は12歳男児で,入院時のトライエージはともに陰性を示したが病歴から急性薬物中毒を強く疑った.質量分析による薬物スクリーニングを行い各々の原因薬物をフルニトラゼパム,エチゾラムと同定した.3例目は14歳女児,意識障害を主訴に受診したがトライエージや各種検査で原因を示唆する所見を認めなかった.母にフルニトラゼパムの内服歴があり,質量分析による薬物スクリーニングを行ったところ,同薬を検出した.今回経験した3症例から,小児においてもトライエージが偽陰性を示すことがあり質量分析スクリーニングによる薬物分析で薬物が検出される場合があること,特にフルニトラゼパムやエチゾラムが偽陰性を示す場合があることが示された.以上から,詳細な病歴や家族の内服歴,社会歴等から薬物内服の可能性が否定できず,確実な診断を得ることが有意義な症例と考えられた場合は,トライエージが陰性でも質量分析による薬物スクリーニング検査を検討すべきである.
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【症例報告】
■題名
高次医療機関から在宅療養後方支援病院を介した在宅移行例
■著者
済生会川口総合病院小児科1),辻川ホームクリニック2) 澁谷 聖月1) 西崎 淑美1) 萩尾 真理1) 岩丸 良子1) 井上 久美子1) 佐藤 大祐1) 五十嵐 麻依子1) 松村 成一1) 内藤 朋巳1) 島 裕子1) 石井 拓磨1) 大山 昇一1) 辻川 昭仁2)
■キーワード
小児在宅医療, 在宅療養後方支援病院, 在宅療養支援診療所, ケアマネージャー
■要旨
医療依存児の在宅移行における問題点や改善策について,当院の症例の分析から検討した.高次医療機関と在宅療養後方支援病院の間には在宅移行についての視点の違いがあることがわかった.これら二者および在宅療養支援診療所間の情報共有の場を複数回設けることにより,良好な連携が得られた.また,行政や地域消防についてもカンファレンスに積極的に参加を依頼することが重要であることがわかった.また,在宅療養後方支援病院の在宅支援室スタッフがケースワークの中心となることで,情報が一か所に集まり各種機関がうまく機能したことから,成人におけるケアマネージャーにかわるものとして適任と考えられた.
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【短報】
■題名
加熱式タバコの誤飲による急性ニコチン中毒の危険性
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科 笹岡 悠太 竹井 寛和 野村 理 萩原 佑亮
■キーワード
加熱式タバコ, 誤飲, 傷害予防, ニコチン中毒
■要旨
【背景】2016年以降,日本では加熱式タバコの誤飲が発生している.加熱式タバコの誤飲に関する学術的報告はまだない.
【方法】2016年4月1日から17か月間で,当院救急外来を受診した加熱式タバコの誤飲症例の情報を抽出した.
【結果】8例が対象で,重篤な急性ニコチン中毒を起こした症例はなかった.吸殻の誤飲が4例あった.
【考察】加熱式タバコのスティック1個には,小児が急性ニコチン中毒を引き起こす可能性のあるニコチン量が含まれる.吸殻に残留する有害物質は不明である.
【結論】加熱式タバコは誤飲によって急性ニコチン中毒をきたす可能性があるが,その摂取量とニコチン溶出に関するデータはない.
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【論策】
■題名
福山型先天性筋ジストロフィーの小児臨床像
■著者
筑波大学附属病院小児科1),筑波大学医学医療系小児科2),茨城県立こども病院3) 田中 磨衣1) 大戸 達之1)2) 榎園 崇1)2) 田中 竜太2)3) 高田 英俊1)2)
■キーワード
福山型先天性筋ジストロフィー, 臨床像
■要旨
茨城県内の小児福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)について県内の8つの病院小児科及び重症心身障害児者施設にアンケート調査を行い,臨床像や遺伝子変異について後方視的調査を行った.症例は13例(男性5例,女性8例)で,年齢は9.2±6.4歳(1歳〜20歳)であった.座位未獲得の症例は5例,座位獲得の症例は8例であった.座位未獲得例のうち3例は重複障害を抱え,喉頭気管分離・人工呼吸器が1例,在宅酸素が1例,経管栄養が3例(うち2例は胃瘻造設)であった.座位獲得例で補助呼吸や経管栄養を要した児はいなかった.座位未獲得5例中2例が追視なしであったのに対し,座位獲得例では全例で有意語表出以上の精神発達が認められ,会話可能な症例は5例(62.5%)であった.座位未獲得5例すべてが創始者変異のヘテロ接合型,座位獲得8例すべてがホモ接合型であり,ヘテロ接合型により重症な症例が多いとされるこれまでの報告と同様であった.FCMDでは,創始者変異のホモ接合型が70〜90%とされているが,本調査ではホモ接合型が62%,ヘテロ接合型が38%とヘテロ接合型の割合が多かった.これは診断技術の進歩による診断率の上昇や,重症例の生存率向上などが関係すると考えられた.1例を除き全例が自宅で生活していたが,比較的軽症な症例でも加齢とともに医療的ケアが必要となるため生涯を通じて患者,家族支援が必要である.
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【論策】
■題名
過疎地域における病児保育の意義と有用性
■著者
杵築市立山香病院1),大分大学医学部地域医療・小児科分野2) 半田 陽祐1) 玉井 資1) 是松 聖悟2)
■キーワード
過疎地域, 病児保育, 費用対効果
■要旨
少子高齢化,過疎化の進む大分県杵築市は,2014年9月に市立山香病院内に病児保育施設を開設した.2014年9月から2015年7月までの利用状況を調査し,さらに費用対効果を検討した.
71%が自家用車で30分以上の遠方からの利用で,市外者44%を含め,ほとんどの利用者が市内に勤務していた.共働き世帯96%,核家族世帯82%であった.2015年度は市の年間出生数222人を上回るのべ320人が利用し,市としての費用対効果は年間3,970,714円であった.
過疎地域での病児保育は,家族の満足だけでなく,市外からの雇用を維持し,地域経済に貢献する可能性を示唆した.
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