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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:19.5.16)

第123巻 第5号/令和元年5月1日
Vol.123, No.5, May 2019

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日本におけるパリビズマブの使用に関するコンセンサスガイドライン

  807
日本小児神経学会推薦総説

可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎脳症―up-to-date

多田 弘子,他  814
日本小児心身医学会推薦総説

逆境的小児期体験が子どものこころの健康に及ぼす影響

山崎 知克  824
原  著
1.

乳児期早期の包茎に対するステロイド軟膏療法の有効性

平岡 政弘  834
2.

保護者の自転車に子守帯を用いて同乗した乳児の外傷

野村 理,他  839
症例報告
1.

胎児脳構造異常を契機に診断したピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症の女児

楊井 瑛美,他  849
2.

若年期に心筋梗塞を発症した進行性筋ジストロフィーの2例

熊本 愛子,他  855
3.

遺伝性メトヘモグロビン血症I型の兄妹例

羽賀 洋一,他  861
4.

尿中マルベリー小体が診断に有用だったFabry病3例

福田 隆文,他  866
5.

チャイルドシートの不適切なベルト使用により生じたと推測される陰圧性肺水腫の乳児

古河 賢太郎,他  873
6.

市販薬の大量内服によるジフェンヒドラミン中毒の小児2例

石丸 雅矩,他  879
短  報

地方都市の休日夜間急患センターにおける15歳未満の小児への経口抗菌薬処方状況

明神 翔太,他  886
論  策

2000年度以降にみられる学齢期の子どもの身長と体重の変動

村田 光範,他  891

地方会抄録(和歌山・青森・東海・甲信・福井・静岡・愛媛・栃木・北海道)

  899
日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会

第2回小児死亡時対応講習会開催報告

  940
日本小児科学会医療安全委員会主催

第9回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースの報告

  941
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方─私の場合25

夢に向かって

  942

日本小児科学会理事会議事要録

  943

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻4号目次

  949

平成30年度研究助成・優秀論文アワード 海外留学フェローシップ 選考結果

  951

日本小児保健協会のご案内

  954

雑報

  955


【原著】
■題名
乳児期早期の包茎に対するステロイド軟膏療法の有効性
■著者
愛育小児科
平岡 政弘

■キーワード
包茎, ステロイド軟膏, 尿路感染症, 乳児
■要旨
 背景:乳児期早期は尿路感染症を起こしやすく,とくに包茎のある男児で多い.包茎治療の第一選択であるステロイド軟膏療法の有効性を乳児期早期に検討した.
 方法:生後2か月時に予防接種で来院した男児を対象として,無理な力を加えずに包皮を翻転できる程度により包茎なし〜包茎4度に分類した.包茎のある児に対しては,児を泣かさない範囲で力を加えて包皮を完全に翻転できるものをA,完全には翻転できないものをBとさらに分類した.包茎Bの児にはベタメタゾン・ゲンタマイシン軟膏を,包茎Aの児にはヒドロコルチゾン軟膏を,それぞれ1日2回翻転後に包皮の発赤がなくなるまで塗布するよう指示した.
 結果:2か月児187人を対象とし,包茎Bは19人(10.7%)でみられた.包茎Bは1〜3度の包茎の95人中4人(4.2%)に対し,4度の包茎84人中15人(17.9%)でみられ,頻度に有意差を認めた.包茎Bでは包茎Aに比して4週間以上の軟膏塗布を要した児が有意に多かった.包皮の翻転とステロイド軟膏療法により,1か月後には受診児の79.9%で,1歳時には受診児の91.6%で包茎は消失していた.1歳時に包茎の消失した割合は1度から3度までの包茎児の97.6%であり,4度の包茎児の84.7%よりも有意に多かった.
 結語:乳児期早期の包茎に対して,ステロイド軟膏治療は簡便で負担が少なく有用と考えられ,高度な包茎でより長期の治療を要した.


【原著】
■題名
保護者の自転車に子守帯を用いて同乗した乳児の外傷
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科1),東京工業大学工学院システム制御系2),産業技術総合研究所人工知能研究センター3),緑園こどもクリニック4)
野村 理1)3)  宮崎 祐介2)  竹井 寛和1)  寺内 真理子1)  岸部 峻1)  萩原 佑亮1)  北村 光司3)  西田 佳史3)  山中 龍宏3)4)

■キーワード
傷害予防, 自転車同乗, 乳児, 頭部外傷, 法整備
■要旨
 【背景】保護者が子守帯により乳児を前抱き,あるいは背負った状態で自転車を運転し,転倒することによる乳児の外傷例が経験される.この受傷機転による外傷の報告は十分ではないため,臨床的特徴の記述と力学的検証を行った.
 【方法】1.症例集積研究.2014年4月から2016年3月に東京都立小児総合医療センターを受診した自転車の運転者に前抱きされた,もしくは背負われたことに関連する1歳未満の頭部・顔面外傷症例を同定し,その臨床的特徴を記述した.
 2.転倒実験.成人女性ダミーが子守帯を用いて乳児6か月児ダミーを前抱き,あるいは背負った状態で自転車に乗車,実験者が自転車を転倒させる実験を行い,頭部傷害基準値および最大衝撃荷重を計測した.
 【結果】1.症例集積研究.同定された8例中2例が入院管理を要し,そのうち1例は急性硬膜外血腫,頭頂骨骨折を受傷し3日間の経過観察後に退院した.他方1例は急性硬膜下血腫,脳挫傷,頭頂骨骨折により6日間の集中治療管理を要し,上肢の不全麻痺を残し退院となった.
 2.転倒実験.乳児頭部荷重は頭蓋骨骨折発生リスク95%の6か月児換算値の2.3〜3.5倍であった.一方,頭部傷害基準値は6か月児基準の7.7〜17.0倍であった.
 【結語】この受傷機転により高い衝撃が児の頭部に加わり,重症な外傷を及ぼす可能性が示された.予防策構築についての議論が必要である.


【症例報告】
■題名
胎児脳構造異常を契機に診断したピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症の女児
■著者
葛飾赤十字産院新生児科1),日本医科大学武蔵小杉病院新生児内科2),徳島赤十字ひのみね総合療育センター小児科3)
楊井 瑛美1)  熊坂 栄1)  寺田 有佑1)  赤羽 洋祐1)  来住 修1)  島 義雄2)  内藤 悦雄3)

■キーワード
ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症, 脳構造異常, 乳酸アシドーシス, E1α欠損, 新生児
■要旨
 症例は,在胎37週6日,出生体重1,828 g,帝王切開で出生した女児.妊娠24週より脳室拡大,脳梁欠損を指摘された.出生後の適応は良好であったが口蓋裂,小顎症,耳介低位,両足第二趾の折り重なり,両側の揺り椅子状足底等の多発奇形を認め,経腸栄養を開始したところ乳酸アシドーシスと呼吸の悪化を認めた.血液・髄液ともにL/P比正常の乳酸・ピルビン酸の上昇(血中 乳酸/ピルビン酸10.3/0.84 mmol/L,髄液中 乳酸/ピルビン酸16.8/2.03 mmol/L)を認めた.遺伝子解析を行ったところ,PDHA1遺伝子のエクソン10においてフレームシフト変異c.968_989dup(p.S331DfsX16)が判明し,PDHC欠損症と確定診断した.代替エネルギーの供給のためケトンフォーミュラの投与を開始後呼吸状態,乳酸アシドーシスは改善したが,日齢35に突然無呼吸発作が頻発し,日齢112にヒプサリスミアを認めた.PDHC欠損症のE1αサブユニットをコードするPDHA1遺伝子変異の女児例では新生児期より重度の乳酸アシドーシスや様々な脳構造異常を示し,West症候群を発症する頻度が高いことが指摘されているが,胎児期に脳構造異常を指摘された例は比較的少ない.胎児期より脳構造異常を認め,診断の一助となったPDHC欠損症の女児例を経験した.


【症例報告】
■題名
若年期に心筋梗塞を発症した進行性筋ジストロフィーの2例
■著者
佐賀大学小児科
熊本 愛子  熊本 崇  田代 克弥  松尾 宗明

■キーワード
筋ジストロフィー, 心筋症, 心筋梗塞, 冠攣縮性狭心症, 血管内皮機能
■要旨
 筋ジストロフィー(MD)の心筋障害は,左室下側壁から始まり多くは拡張型心筋症に移行するが機序は不明である.今回,左室下壁の心筋梗塞に冠攣縮の関与が示唆される若年MDの2例を経験した.
 (1)Becker型MD,12歳男児.8歳時,起床後に胸痛と胸部不快感が出現した.心電図のII,III,aVF,V5-6誘導でSTが上昇し,左室下壁がhypokinesisで心筋梗塞と診断した.冠動脈造影(CAG)で狭窄はなく,心筋シンチグラムで左室下壁の集積の低下があり冠攣縮の関与が示唆された.12歳時,同様の胸痛発作と心電図変化があり,MRIで左室下側壁の菲薄化と遅延造影を認め,CAGで左冠動脈が全体的に狭小化し特に回旋枝の所見が著しく,同部の攣縮が原因の心筋梗塞と考えCa拮抗薬を開始した.
 (2)Duchenne型MD,14歳男児.就寝時に左側腹部痛と呼吸苦,胸痛が出現した.心電図のII,III,aVF,V5-6誘導でSTが上昇し,左室側壁から後壁がhypokinesisで心筋梗塞と診断した.CAGで狭窄はなく心筋シンチグラムで下側壁の集積低下,MRIで同部位の遅延造影を認めた.回復期のアセチルコリン負荷試験で右冠動脈に攣縮を認め,冠攣縮性狭心症と診断してCa拮抗薬を開始した.
 MDが心筋梗塞を示した場合血管内皮機能の評価も考慮すべきである.


【症例報告】
■題名
遺伝性メトヘモグロビン血症I型の兄妹例
■著者
東邦大学医療センター大森病院小児科1),昭和大学小児科2),東京女子医科大学輸血・細胞プロセシング部3),済生会山口総合病院検査部4)
羽賀 洋一1)  高橋 浩之1)  三井 一賢1)  中村 俊紀2)  松岡 正樹1)  小嶋 靖子1)  小倉 浩美3)  菅野 仁3)  服部 幸夫4)  小原 明1)

■キーワード
遺伝性メトヘモグロビン血症, NADH-cytochrome b5還元酵素欠損症, アスコルビン酸, リボフラビン
■要旨
 遺伝性メトヘモグロビン(methemoglobin:Met Hb)血症には,異常ヘモグロビン症であるHb M症とMet Hb還元酵素異常症の2つがある.後者は,NADH-cytochrome(Cyt)b5還元酵素の活性低下または欠損により,Met HbをHbに還元できずにMet Hbが増加する疾患である.常染色体劣性遺伝であり,酵素欠損の分布によりI〜IV型に分類される.今回私たちは,兄妹が同時期に熱性痙攣と肺炎を発症し,共にMet Hb血症I型と診断した例を経験したので報告する.兄7歳男児.新生児期に低酸素血症が持続しNICUに入院歴があった.3歳に熱性痙攣を発症し,痙攣頓挫後も低酸素血症が持続した.Met Hb 14.0%とMet Hb血症を認めた.妹5歳女児.定頸9か月,floppy infantであった.1歳時に兄の熱性痙攣発症と同時期に肺炎を発症.Met Hb 12.0%と高値で,Met Hb血症の兄妹例と判明した.両親のMet Hbは父0.5%,母2.3%であった.NADH-Met Hb還元酵素活性は兄妹母と,3.35,3.38,12.2 IU/gHbと兄妹に低下を認め,遺伝子解析でCyt b5還元酵素遺伝子CYB5R3の点突然変異を認めたことより,遺伝性Met Hb血症I型と診断した.アスコルビン酸とリボフラビンによる治療でMet Hb値は7%前後で推移している.


【症例報告】
■題名
尿中マルベリー小体が診断に有用だったFabry病3例
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
福田 隆文  伊川 泰広  三村 卓矢  中川 亮  高倉 麻衣子  山田 真平  白橋 徹志郎  清水 正樹  岡島 道子  谷内江 昭宏

■キーワード
Fabry病, 四肢末端痛, 尿沈渣, マルベリー小体, 酵素補充療法
■要旨
 Fabry病は青年期以降に不可逆的な致死的臓器合併症を呈するライソゾーム病の一つであり,早期からの酵素補充療法が生命予後の改善に寄与する.本症は小児期より四肢末端痛などの初期症状を認めるため,早期診断に小児科医の果たす役割は大きい.しかし,これらの初期症状だけでFabry病を想起するのは容易でない.今回,尿沈渣中のマルベリー小体がFabry病の診断に有用だった3症例を経験した.いかに初期症状からFabry病の診断に結びつけるかを考察したため報告する.
 症例1:3年間にわたり原因不明の下肢痛を認めた13歳男児.尿沈渣でマルベリー小体を認めたためFabry病が強く疑われた.α-galactosidase A酵素活性が低値であり診断に至った.症例2:症例1の母.数年前より原因不明の蛋白尿と心電図異常,心筋肥大を認めた.息子がFabry病と診断された事を契機に診断に至った.尿沈渣でマルベリー小体を認めた.症例3:近視の進行を主訴に眼科を受診し,渦巻き状角膜混濁を指摘された13歳女児.特徴的な眼所見からFabry病が疑われ尿沈渣を行ったところマルベリー小体を認めた.
 症例ごとに主訴は異なるが尿中マルベリー小体を認め,Fabry病の診断に至った.尿沈渣は施設を問わず施行できる簡便な検査である.Fabry病を疑った際は,積極的な尿検査が診断に有効だと考えられた.


【症例報告】
■題名
チャイルドシートの不適切なベルト使用により生じたと推測される陰圧性肺水腫の乳児
■著者
埼玉県立小児医療センター総合診療科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2)
古河 賢太郎1)2)  松岡 諒1)2)  吉田 賢司1)2)  原 朋子1)  利根澤 慧1)  南部 隆亮1)  萩原 真一郎1)  鍵本 聖一1)2)  井田 博幸2)

■キーワード
乳児, チャイルドシート, 上気道閉塞, 窒息, 陰圧性肺水腫
■要旨
 陰圧性肺水腫(NPPE)は上気道閉塞を契機として胸腔内に過大な吸気陰圧がかかり発症し,若年成人で起こりやすく,主に周術期での発症が多い.NPPEが乳児,周術期以外で発症する例は少なく,チャイルドシートの誤使用で生じたとする報告は今までにない.
 症例は周産期歴に問題ない,生来健康な生後1か月男児で,チャイルドシートを使用中の車内で突然チアノーゼが出現した.胸部単純X線検査で肺区域に一致しない両側の浸潤影を認めたが,心臓超音波検査で異常を認めなかった.また血性泡沫状喀痰が吸引され,気管支鏡で左主気管支に発赤を認めた.人工呼吸器管理により呼吸状態と浸潤影は速やかに改善し,経過良好で第9病日に退院した.上気道閉塞を疑う病歴があり,急激な経過での発症,血性泡沫状喀痰の吸引,治療介入により速やかな改善を認めたことからNPPEと診断し,チャイルドシートの誤使用が原因と推測された.両親へチャイルドシートの正しい使用法を指導し,以後再発を認めていない.
 日常生活でNPPEが発症することは少なく,小児科医にとって鑑別疾患としてあげにくいと思われる.適切な呼吸管理で症状は速やかに改善することが多いため,診断と原因検索が疎かになることが懸念され,本疾患の周知がNPPEの再発防止に寄与すると考えられる.またチャイルドシートの誤使用でも本疾患を発症する可能性があるため,正しい使用法を啓蒙する必要がある.


【症例報告】
■題名
市販薬の大量内服によるジフェンヒドラミン中毒の小児2例
■著者
東海大学医学部専門診療学系小児科学1),同 付属八王子病院小児科2),東京都立小児総合医療センター3)
石丸 雅矩1)  平井 康太1)2)  高砂 聡志2)3)  池上 真理子2)  田端 秀之1)  松田 晋一1)  加藤 政彦1)  望月 博之1)

■キーワード
小児, 意識障害, 薬物中毒, ジフェンヒドラミン, 市販薬
■要旨
 ジフェンヒドラミン(DPH)は第一世代抗ヒスタミン薬であり,市販薬として容易に入手できる.我々は市販薬の大量内服によるDPH中毒の小児2症例を経験したので報告する.症例1は13歳の女児で意識障害を主訴に来院された.当初は脳炎・脳症を疑い治療を開始したが,後日トラベルミン®の大量内服が判明,抗コリン作用症状やQT延長などの所見からDPH中毒と診断した.症例2は14歳の女児で意識障害,痙攣を主訴に来院された.その他の所見としてQT延長,VTなどの不整脈が出現し中毒症を疑った.後日ドリエル®の大量の空き箱が見つかり血中濃度から診断に至った.DPH中毒では多彩な症状を呈するが,心電図上のQTc延長やトライエージの偽陽性が診断の一助になりえる.病歴聴取が十分でないままにけいれん,意識障害が先行した場合には薬物中毒と認識できず,診断が遅れる場合があり注意すべきである.これらの市販薬は現在自殺サイトなどで服薬自殺可能な市販薬として紹介されており,今後中毒症例が増加する可能性があり注意が必要である.


【短報】
■題名
地方都市の休日夜間急患センターにおける15歳未満の小児への経口抗菌薬処方状況
■著者
姫路赤十字病院小児科1),本郷小児科医院2),兵庫県立こども病院感染症内科3)
明神 翔太1)  神吉 直宙1)  久呉 真章1)  本郷 彰裕2)  笠井 正志3)

■キーワード
抗菌薬適正使用, 薬剤耐性, 急性気道感染症, 急病センター
■要旨
 姫路市休日・夜間急病センターは兵庫県中・西播磨地域の一次救急の拠点である.当施設での抗菌薬処方状況は地域の抗菌薬処方状況を反映していると考えられ,抗菌薬適正使用の観点から改善点の抽出を目的とした.2014年9月1日〜2018年3月31日に受診した15歳未満の患者への抗菌薬処方に関する情報を抽出した.抗菌薬使用の比較はDays of Therapy/1,000 patient visits(DOTs)を用いた.13%の患者に抗菌薬処方があり,急性気道感染症の17%に処方されていた.経口第3世代セフェム系薬のDOTsは全ての年齢・疾患で高かった.この結果を基礎データとして,地域レベルで抗菌薬適正使用に取り組む.


【論策】
■題名
2000年度以降にみられる学齢期の子どもの身長と体重の変動
■著者
和洋女子大学保健センター1),同 生活科学系2)
村田 光範1)  杉浦 令子2)

■キーワード
乳幼児身体発育調査, 学校保健統計調査, 年齢別身長平均値, 年齢別体重平均値, 身長と体重の経年変化
■要旨
 現在,2000年度の「乳幼児身体発育調査」と「学校保健統計調査」の身体発育値が日本人小児の体格基準値である.近年男女ともに出生時の身長と体重の平均値が減少傾向にあり,学齢期小児の身長と体重にも変動がみられている.そこで2000年度の学校保健統計調査における性別,年齢(6〜17歳)別の身長と体重の平均値を基準として,2000年度から2017年度までの身長と体重の平均値の変動を検討した.その結果,2000年度の身長平均値と比較して,2001年度以降にみられた身長平均値の変動幅はすべての年齢で身長測定誤差範囲であった.体重平均値については2000年度のそれと比較して2001年度以降において男女ともに6歳から8歳ごろまでは2000年度のそれとほぼ変わらないが,9歳ごろから体重平均値が小さくなり,男子では13歳,女子では12歳でこの差が最も大きくなり,その後この差が次第に小さくなって,15歳を過ぎるころから2000年度の体重平均値に戻る傾向があった.したがって男女ともに2001年度以降にみられる年齢別体重平均値の変動は「単に近年の学齢期小児は体重減少傾向を示している」としては捉えることができない.結論として,当面は現在の学齢期小児の体格評価基準を見直す必要はなく,この基準を踏まえて2018年度以降も2001年度以降の学齢期小児にみられている特異的な体重変動を十分に観察することが重要である.

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