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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.3.22)
第123巻 第3号/平成31年3月1日
Vol.123, No.3, March 2019
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第121回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
1. |
RSウイルス重症化抑制による反復性喘鳴の抑制効果
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岡田 賢司 523 |
2. |
世界へ情報を発信しよう!―英語での学会発表と論文発表―
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齋藤 昭彦 531 |
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望月 博之 538 |
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作田 亮一 548 |
総 説 |
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小野 博,他 558 |
原 著 |
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森 俊彦,他 566 |
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寺内 真理子,他 574 |
症例報告 |
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上田 圭希,他 581 |
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木村 正人,他 587 |
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荒井 勇人,他 591 |
論 策 |
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田中 恭子,他 597 |
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川村 眞智子,他 605 |
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611 |
地方会抄録(兵庫・岩手・島根・香川・山口・宮城・石川)
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612 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方―私の場合24 |
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647 |
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649 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻1号目次
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651 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻2号目次
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652 |
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655 |
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656 |
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659 |
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660 |
【総説】
■題名
パルスオキシメトリーによる重症先天性心疾患の新生児スクリーニング
■著者
国立成育医療研究センター循環器科1),東京大学医学部小児科2) 小野 博1) 林 泰佑1) 賀藤 均1) 岡 明2)
■キーワード
パルスオキシメトリー, 重症先天性心疾患, 胎児心エコー, スクリーニング
■要旨
重症先天性心疾患(CCHD)は予後不良の疾患群で,その早期発見が予後改善に貢献する.パルスオキシメトリーによるCCHDのスクリーニングは全世界で施行され,その有用性が多数報告されている.ところが本邦ではその体系が構築されていないばかりか,報告も少なく,胎児心エコーや診察でCCHDのスクリーニングは行われているが,その効果は十分とはいえない.胎児心エコーのような高い技術を要さず,特異度が高く,cost-effectiveであるパルスオキシメトリーによるスクリーニングプログラムを,小児科や産科のガイドラインに掲載することなどを通じて,普及させることが必要である.
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【原著】
■題名
二次病院小児科におけるロタウイルスワクチン導入効果
■著者
NTT東日本札幌病院小児科1),札幌医科大学医学部小児科2) 森 俊彦1) 矢吹 郁美1) 星野 恵美子1) 平川 賢史1) 櫻井 のどか1) 黒岩 由紀1) 布施 茂登1) 堤 裕幸2)
■キーワード
ロタウイルス胃腸炎, ロタウイルスワクチン, ワクチン導入効果, ワクチン接種率, 外来と入院
■要旨
2006年1月から2017年12月までの当院におけるロタウイルス(RV)胃腸炎症例を対象として,RV迅速陽性率,陽性数(年平均),入院数(年平均)および急性胃腸炎で入院した小児のRV陽性率をRVワクチン導入前(2006〜2011年)と導入後(2012〜2017年)で比較検討した.ワクチン導入後の6年間(2012〜2017年)は2年毎に3期(I期:2012〜2013年,II期:2014〜2015年,III期:2016〜2017年)に分けた.札幌市におけるRVワクチン推定接種率は2012年の34.6%から2017年には68.4%に上昇していた.ワクチン導入後I期からRV迅速陽性率と陽性数はそれぞれ,導入前の67%(p<0.001),65%と減少していた.しかし,RV胃腸炎患者の入院数と急性胃腸炎で入院した小児のRV陽性率には減少は見られなかった.II期,III期になると外来受診数のみならずRV胃腸炎患者の入院数と急性胃腸炎で入院した小児のRV陽性率の減少も見られ,II期ではそれぞれ導入前の69%,69%(p <0.001),III期ではそれぞれ導入前の42%(p<0.05),43%(p <0.001)と減少した.札幌市のワクチン推定接種率は2015年以降では頭打ちになっており,接種率の大幅な向上にはワクチンの定期接種化が必要で,その早期の実現が望まれる.
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【原著】
■題名
小児救急室を受診した医薬品誤飲166例の後方視的研究
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科 寺内 真理子 野村 理 岩田 賢太朗 岸部 峻 竹井 寛和 萩原 佑亮
■キーワード
薬物誤飲, 急性薬物中毒, 小児, 傷害予防
■要旨
【背景】薬物誤飲は小児救急の現場においてよく遭遇する傷害の一つであるが,小児救急室(小児ER)を受診した小児の医薬品の誤飲に関する日本国内からの報告はほとんどない.
【方法】2010年3月1日から2016年6月30日の期間に当院小児ERを受診した15歳以下の医薬品誤飲の患者を対象とし後方視的記述研究を実施した.診療録より313例が抽出され,そのうち自傷目的で薬物を服用した症例(75例),医薬品以外の誤飲例(45例),薬物誤飲が明らかでない症例(27例)を除外し,166例を検討対象とした.
【結果】年齢の中央値は2歳5か月で,4歳以下が152例(92%)を占め,誤飲した場所は自宅が158例(95%)であった.誤飲した医薬品は,感冒薬や鎮咳薬が33例と最も多く,抗不安薬・抗精神病薬(26例),抗ヒスタミン薬(24例)と続いた.10例(6%)に対し胃洗浄が行われた.50例(30%)が入院し,うち26例は神経症状などの症状を認めていたが,いずれも重篤化することなく退院に至った.
【考察】対象の約3割で入院管理を要し,約1割に何らかの除染が施行された.軽症例が多いものの,入院管理を要する症例,除染等の積極的介入を要する例が一定の割合で存することが明らかとなり,誤飲状況の積極的な情報収集により,重症例の見逃しを防ぐこと,重症例への備えが重要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
出生時から全身に膿疱を認めたsterile transient neonatal pustulosis例
■著者
浜の町病院小児科 上田 圭希 内田 理彦 児玉 志保 武本 環美
■キーワード
新生児, 膿疱, 色素沈着, 紅斑
■要旨
新生児にみられる治療を要さない良性の膿疱病変のなかには,一般的によく知られている新生児中毒性紅斑(Erythema toxicum neonatorum,ETN)のほか,本邦では稀な新生児一過性膿疱性メラノーシス(Transient neonatal pustular melanosis,TNPM)が存在する.TNPMは出生時より顎部,頸部,体幹を中心に好発する周囲に紅斑を伴わない1〜10 mm程度の膿疱と,それに続く色素沈着を特徴とする疾患である.1965年にTNPMがはじめて報告されて以降,両者は鑑別がなされてきたが,近年TNPMとETNは同一疾患の異なる時期をみており,sterile transient neonatal pustulosis(STNP)と一括することが提唱されている.
症例は在胎38週,体重2,980 gの男児で出生時より全身に膿疱が多発していた.日齢2にかけて膿疱の増加がみられ,また新たに膿疱部を含め全身に発赤が出現した.膿疱は数日後には自壊し斑状の色素沈着を残した.膿疱部の培養は陰性で,膿疱内容物には多数の好中球を認めたが,生検では好酸球中心であった.膿疱は日齢10にはすべて消失し,生後約3週間には頸部に軽度の色素沈着を残すのみとなった.以上の経過より自験例をSTNPと診断した.出生時より膿疱を認めた場合はSTNPも鑑別に挙げることが重要である.
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【症例報告】
■題名
ゲームセンターで植込み型除細動器が電磁干渉を受けた幼児
■著者
東北大学医学部小児科 木村 正人 川合 英一郎 大田 千晴 呉 繁夫
■キーワード
植込み型デバイス, 電磁干渉, ゲームセンター, ホームモニタリング, RFID機器
■要旨
ゲームセンターで植込み型デバイスが電磁干渉を受けた左室緻密化障害の4歳女児の1例を経験した.患児は生後5か月時に誘引なく自宅で心肺停止となり,7か月時のimplantable cardioverter defibrillator(ICD)植込みを経てcardiac resynchronization therapy implantable cardioverter defibrillator(CRT-D)にアップグレードしてから3年間は除細動の作動なく幼稚園に通園できるほど回復していた.月1回のホームモニタリングシステムの記録で電磁干渉を受けていることに気づき,電磁干渉の発生から1週間で保護者に注意喚起を行うことができた.小児は保護者や支援者の目から外れて自由に動き回る場合があるにも関わらず,電磁波がある危険な環境を判断する能力が高いとは言えない.今後さらに増加することが予想される小児のデバイス症例が安心して社会生活を送るため,医療従事者のみならず保護者や学校関係者などの支援者に対する情報提供も積極的に行うことが重要だと考えられた.
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【症例報告】
■題名
新生児期にショックを呈した両側閉塞性巨大尿管症
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科1),札幌医科大学医学部小児科学講座2) 荒井 勇人1) 長岡 由修2) 名和 智裕1) 高室 基樹1) 横澤 正人1)
■キーワード
嘔吐, 急性腎後性腎不全, 水腎症, 尿管膀胱移行部狭窄, 尿酸結石
■要旨
巨大尿管は胎児エコーや乳児期の尿路感染症で発見され,数年かけて自然に軽快することが多い.新生児期にショックを契機に発見され,一側が非常に短期間に改善した両側閉塞性巨大尿管の1例を経験した.
症例は胎児期に異常指摘なく,頭位経腟分娩で満期出生した日齢15男児.産院入院中から嘔吐が持続し,活気不良と無尿を認めたため,前医を受診した.ショックを呈しており,高カリウム血症,著明なアシドーシス,腎機能障害,左室収縮不全,両側高度水腎症,巨大尿管を認め,当院に緊急入院した.人工呼吸管理,腹膜透析を含む集中治療により救命した.精査の結果,膀胱尿管逆流は無く,尿管膀胱移行部狭窄による両側閉塞性巨大尿管と診断した.右腎瘻は手技に難渋したため断念し,左腎瘻を造設した.腎瘻からの尿排泄は良好で,腎機能は急速に正常化した.一方,右巨大尿管は左腎瘻造設後まもなく自然軽快した.CT検査で両側尿管内に結石を認めた.
閉塞性上部尿路疾患の急性増悪は,多くは尿路感染が要因であると考えられている.しかし,本症例は一時的に狭窄が悪化した要因として,臨床経過から尿路結石陥頓の可能性が示唆された.また,巨大尿管は致死的なショックを呈する恐れがあり,早期発見の必要性も示された.新生児期に頻回嘔吐を認めた際は,尿路異常の可能性を考慮することが重要である.
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【論策】
■題名
小児科医の発達障害診療の実態と意識調査
■著者
熊本大学医学部附属病院神経精神科,熊本県発達障がい医療センター1),同 小児科2) 田中 恭子1) 中村 公俊2)
■キーワード
発達障害, かかりつけ医, 役割, 負担度
■要旨
熊本県における発達障害に関する小児科医の診療の実態や意識について,アンケート調査を実施した.
回答者のうち発達障害の診療をしている医師は約半数で,多数診療している(患者数100人以上/6か月)医師の割合は16.2%であった.一般小児科医の役割として「医学的知識をもっている,発達障害特性に気づく,保護者に気になる点を伝える,専門医へ紹介する」ことを担うべきとし,診断や治療は難しいと考えられていた.疾患別では注意欠如多動症が自閉スペクトラム症や限局性学習症よりも診療の対象と考えられる割合が高かった.診療実績別では,多数診療している群は診療に対する自信が他群より高く,診療のやりがいや楽しさを感じていた.一方,診療なし群や少し診療している群(患者数1〜99人/6か月)は負担感が強く,トレーニングや自信の不足などが主に影響していた.多くの医師が「専門機関の待機期間の長さ,不十分な診療報酬点数」を負担に感じ,早急に解決すべき課題であることが示された.診療していることと関連する要因として「過去二年の発達障害に関するセミナー等の受講,実践的な研修経験,今後の研修意欲の高さ」が認められた.
今後,発達障害児・者の幅広い相談に応えるため,専門医だけでなく多くの小児科医が発達障害の支援に携わることが望まれ,医師の負担要因の改善,スキル向上のための機会を提供することなどが必要であると考えられた.
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【論策】
■題名
高校生がん患者の教育支援状況に関する調査
■著者
埼玉県立がんセンター血液内科1),がん・感染症センター都立駒込病院小児科2),神奈川県立こども医療センター血液・再生医療科3),日本医科大学小児科4),京都大学大学院人間健康科系検査技術科学専攻5) 川村 眞智子1)2) 後藤 晶子3) 前田 美穂4) 足立 壮一5)
■キーワード
高校生, 小児がん, 教育支援, 特別支援教育, 思春期
■要旨
小児科で治療を行う高校生がん患者は増えている.小中学生には入院中も義務教育としての特別支援教育による院内・訪問学級があるが,高校生には対応していないことが多い.思春期のがん患者は最も多くの困難に直面すると言われており,入院中も高校に在籍できることは,精神的支えになり将来への希望になる.高校生がん患者の教育支援の現状と課題を明らかにするためにアンケート調査を行った.
対象は小児がんを治療している日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)に所属する149施設で,アンケートの回収率は66.4%であった.2014年の時点で何らかの支援を行っている施設は19施設で,支援の内容は特別支援学校による院内・訪問学級と原籍校の訪問学級等であった.特別支援学校に移籍した場合は原籍校への復学の保証はなく,休学や退学する生徒も多かった.原籍校の支援を49施設が,復学保証・学籍の継続を48施設が要望していた.
国・公・私立学校,病院と学校との距離,病気の重篤さ等に応じた多様な教育支援が必要である.勉強場所,インターネットの必要性への理解も求められる.小児がん拠点病院制定後,一部で支援が始まったが,高校,病院,自治体には明確な相談窓口病院の設置が必要であり,高校生が原籍校に所属できるよう支援すべきである.
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