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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.1.16)
第123巻 第1号/平成31年1月1日
Vol.123, No.1, January 2019
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位田 忍,他 1 |
小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診療と管理ガイドライン2018(改訂2版)について
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加藤 晴一,他 7 |
第121回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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及川 沙耶佳 8 |
日本マススクリーニング学会推薦総説 |
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田島 敏広 14 |
原 著 |
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熊谷 健,他 23 |
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長谷川 智巳,他 28 |
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岡田 あゆみ,他 36 |
症例報告 |
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井福 俊允,他 47 |
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上島 洋二,他 53 |
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水谷 優子,他 61 |
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笠井 慎,他 67 |
短 報 |
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中河 秀憲,他 75 |
論 策 |
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鈴木 保宏,他 79 |
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88 |
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90 |
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110 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合23 |
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Special Kids-Special Care
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻12号目次
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【原著】
■題名
胎児心臓エコー外来が周産期医療に与えた変化
■著者
和歌山県立医科大学総合周産期母子医療センターNICU1),和歌山県立医科大学小児科2) 熊谷 健1) 垣本 信幸1) 鈴木 崇之1) 利光 充彦1) 津野 嘉伸1) 杉本 卓也1) 上田 美奈1) 末永 智浩2) 武内 崇2) 鈴木 啓之2)
■キーワード
fetal echocardiography, outpatient clinic, congenital heart disease
■要旨
目的:和歌山県立医科大学産婦人科外来に胎児心臓エコー外来を開設し5年が経過した.胎児心エコー認証医と小児循環器医が診療に当たっている.和歌山県の周産期医療への効果を検討し,今後の課題を抽出する.
対象・方法:2012年6月から当院胎児心エコー外来を受診した母体とその胎児.診療録から後方視的に検討した.院外出生した症例は出生後の心疾患の有無をアンケートで問い合わせた.
結果:5年間に207人の胎児心エコーを実施した.受検した母体数は経年的に増加し,当院に新生児期に入院した危急性先天性心疾患症例の胎児診断率も70%台に上昇した.新生児搬送に占める先天性心疾患症例の割合も有意に減少した.胎児診断される危急性心疾患症例は増加したが,胎児診断されずに入院してくる症例も毎年3例ずつ存在した.これらは流出路断面や特殊断面の観察が不十分なために見逃されたと考えられた.胎児診断が生後診断と異なり,外科的治療が必要になった症例が3例あった.
結論:胎児心エコー外来の開設で,和歌山県では先天性心疾患を有する新生児を救急車に乗せない周産期医療が実現してきている.胎児診断の精度の向上と,実地医家への胎児心エコーの更なる普及,遠隔外来の充実が今後の課題と考えられた.
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【原著】
■題名
18トリソミー患児に対する肺動脈絞扼術
■著者
兵庫県立こども病院小児集中治療科1),同 心臓血管外科2),同 循環器内科3) 長谷川 智巳1)2) 佐藤 有美3) 田中 敏克3)
■キーワード
18トリソミー, 先天性心疾患, 肺動脈絞扼術
■要旨
18トリソミーは先天性心疾患を合併することが多い重篤な染色体異常であるが,近年外科的治療によりその生命予後が改善するという報告が散見され,手術介入後の入院管理や在宅医療において18トリソミー児と関わる機会が増えてきた.今回,先天性心疾患に対して肺動脈絞扼術(PAB)を施行した18トリソミー症例の経過や予後を明確にすることを目的として後方視的研究を行った.2006年6月から2015年8月までに当院でPABを施行した18トリソミー児21例を対象とし,同時期にPABを施行した21トリソミー児25例と比較検討した.手術時体重は18トリソミー症例が有意に小さかったが,年齢,手術時間,術式,PAB外周長・最大血流速度において両群間に有意差はなかった.18トリソミー症例では術後の挿管期間,ICU滞在期間,入院期間が有意に長く,気管切開,人工呼吸管理,経管栄養を要する症例が多かった.また,体重増加が得難く,初回退院後の再入院が多かった.18トリソミー症例の早期死亡は1例,遠隔期死亡10例,1,2年生存率はそれぞれ74.5%,50.9%,心内修復術到達率は18.8%であった.18トリソミー児に対するPABの中長期予後はまだ満足し得るものではなく,現状での外科的治療後の経過や予後に関する情報を家族に的確に説明提示し,家族の希望や価値観に応じた最善の治療方針を検討していくことが肝要である.
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【原著】
■題名
小児科で診療を行った摂食障害112例の特徴
■著者
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学1),岡山大学病院小児医療センター小児科子どものこころ診療部2) 岡田 あゆみ1) 藤井 智香子2) 重安 良恵2) 椙原 彰子2) 鶴丸 靖子2) 赤木 朋子2) 島内 彩2) 細木 瑞穂2) 宗盛 絵里子2) 塚原 宏一1)
■キーワード
摂食障害, 回避/制限性食物摂取障害, 機能的嚥下障害, 自閉症スペクトラム障害, 転帰
■要旨
目的:神経性やせ症(AN)をはじめとする摂食障害患者の増加と若年化が問題となっている.本研究の目的は,小児科で診療する摂食障害の特徴を検討し,小児科医が行うべき対応を明らかにすることである.
方法:対象は,岡山大学病院小児科を受診した摂食障害患者の中で,18歳未満に発症した112症例である.診断や臨床経過を後方視的に検討した.
結果:回避/制限性食物摂取障害(ARFID)が52例(46.4%)と多く,ANや神経性過食症(BN)と比較して,発症時年齢が低い,男児が多い,初診時の体重減少が少ないなどの特徴を認めた.ARFIDの中でも機能的嚥下障害(FD)は,感染症に伴う嘔吐など発症の契機が明確なことが多かった.治療開始した102症例中,69例(67.6%)が寛解または軽快,不変・悪化1例(0.98%),中断2例(2.0%),悪化や不変による精神科転科17例(16.7%),その他の転医10例(9.8%),身体的相談3例(2.9%)であった.治療終了後の再診13例(12.7%)を認めた.
考察:小児の摂食障害診療においては,病型に合わせた対応が必要で,小児科での治療に一定の効果を認めた.特にFDは小児科医が早期発見しやすいと考えられた.しかし,思春期症例では小児科診療の限界を踏まえ,精神科との連携を図ることが重要であった.
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【症例報告】
■題名
サックス演奏を契機に奇異性脳塞栓を発症した小児例
■著者
宮崎県立宮崎病院小児科 井福 俊允 西口 俊裕 弓削 昭彦 中谷 圭吾
■キーワード
奇異性脳塞栓症, 卵円孔開存, 小児脳梗塞, バルサルバ負荷
■要旨
小児期脳梗塞の発症要因は多様で,しばしば原因を特定できないこともある.今回,われわれは卵円孔開存(PFO)を合併し,サックス演奏を契機に奇異性脳塞栓症を発症した小児例を経験したので報告する.
症例は14歳女性.自宅でサックスを吹いていたところ,右眼の羞明と頭痛が出現した.数か月前にもサックスを吹いた際,同様の症状が出現したことがあった.近医脳神経外科を受診し,頭部MRIで左後頭葉に急性期脳梗塞の所見を認めたため同日当科紹介入院となった.エダラボン,ヘパリン投与を開始したところ,入院5病日の頭部MRIでは,拡散強調画像で左後頭葉の高信号域は消失していた.経胸壁心エコー検査でPFOを認め,経食道心エコー検査でバルサルバ負荷およびコントラスト剤注入を行ったところ,1〜2拍後に左房内へバブルが出現した.12誘導心電図で不整脈の所見はなく,胸腹部・下肢・冠動脈造影CT,下肢静脈エコー検査では,明らかな深部静脈血栓症や動静脈瘻の所見は認めなかった.PFOによる奇異性脳塞栓症と診断し,抗血小板療法を開始した.既往歴から症状の反復が疑われ,PFO閉鎖術を施行した.以後,無症状で経過している.
本症例では,サックス演奏によるバルサルバ負荷が心房内の右左シャントを誘発し,奇異性脳塞栓症を発症したと考えられた.PFOを伴う小児でも,特殊な環境下では奇異性脳塞栓症を発症する可能性がある.
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【症例報告】
■題名
迅速診断と早期からの治療介入により救命できた侵襲性髄膜炎菌感染症
■著者
埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科1),同 臨床研究室2),同 総合診療科3),同 腎臓科4),富山大学臨床分子病態検査学講座5) 上島 洋二1) 樋渡 えりか3) 櫻谷 浩志4) 南部 隆亮3) 佐藤 智1) 菅沼 栄介1) 高野 忠将1) 藤永 周一郎4) 荒井 孝2) 仁井見 英樹5) 北島 勲5) 大石 勉1) 川野 豊1)
■キーワード
侵襲性髄膜炎菌感染症, 電撃性紫斑病, 敗血症, multiplex PCR, Tm mapping法
■要旨
侵襲性髄膜炎菌感染症は急速に全身状態が不良となることが多く,臨床の現場では迅速かつ慎重な対応が望まれる.症例は生来健康な6か月女児.前日から発熱が出現し入院当日に嘔吐,淡い紫斑を認め急速に全身状態不良となったため入院した.melting temperature mapping method(以下,Tm mapping法)により菌血症であることを確認し,multiplex PCRにより血液からNeisseria meningitidisを同定し侵襲性髄膜炎菌感染症による電撃性紫斑病,敗血症性ショックと診断した.急速輸液や抗DIC治療,カテコラミンへの反応には乏しかったが,抗菌薬の投与を継続し持続的血液透析,ポリミキシンB固定化線維カラムを用いた直接血液灌流法を行い,呼吸・循環動態は安定し救命することができた.入院時,抗菌薬を先行して投与した直後に採取した血液培養は陰性であった.起炎菌を迅速に同定したことにより早期から適切な治療の介入が可能となり,大きな合併症,後遺症はなく治癒した.また接触者に対して予防投与を行うことができ,二次感染は認められなかった.
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【症例報告】
■題名
喘鳴を契機に発見された気管内腫瘍の中学生
■著者
名古屋第二赤十字病院小児科1),名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野2) 水谷 優子1)2) 神田 康司1) 石井 睦夫1) 齋藤 伸治2)
■キーワード
気管支喘息, 気管内腫瘍, Angiomatoid Fibrous Histiocytoma(AFH), 喘鳴
■要旨
気管内腫瘍は稀な疾患であり,初診時に診断することは困難であるが,窒息の危険性を有し,迅速な診断・対応を要する.気管支喘息(以下,喘息)の急性増悪(発作)の症状で来院し,気管内腫瘍と診断した1例を経験したので報告する.
症例は14歳女子.入院9か月前に持続する咳嗽,血痰を認め,内服薬にて消失した.入院1か月前より喘鳴が出現し内服薬や吸入薬にて治療を行うも症状は消失せず,その後再度血痰が出現した.喘鳴の悪化に対してステロイド点滴を開始し,症状の改善を認めた.入院当日の朝より呼吸困難感が出現したため救急外来を受診し,喘息の急性増悪(発作)の診断で入院となった.入院時の胸部単純X線や血液検査で異常を認めなかった.ステロイド点滴,気管支拡張剤の内服・吸入を開始し,喘鳴の改善を認めた.呼吸機能検査の異常や血痰を認めたこと,胸部違和感を訴えたため,胸部CTを撮影したところ,下部気管右側壁から内腔に突出する腫瘤を認めた.気管内腫瘍の診断で硬性気管支鏡にて内科的切除を行い,病理検査にてAngiomatoid Fibrous Histiocytoma(AFH)であったため二期的気管形成術を施行した.
好発年齢から外れた初発の喘息の急性増悪(発作)や,喘息のみでは説明できない経過や症状を認める場合は,胸部単純X線が正常であっても早期に呼吸機能検査を施行し,胸部CTで精査することが重要と考えた.
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【症例報告】
■題名
小児頸椎椎間板石灰化症の予後
■著者
山梨赤十字病院小児科 笠井 慎 古市 嘉行 糸山 綾 亀井 さやか 西嶋 敏恵 佐野 友昭
■キーワード
椎間板石灰化, 小児, 頸部痛, 頸部運動制限, 神経障害
■要旨
小児頸椎椎間板石灰化症は激しい頸部痛と頸部運動制限を主訴とし,一般的には保存的治療により治癒する予後良好な疾患とされている.我々は,頸部痛,頸部運動制限,発熱を主訴とし,画像検査により頸椎椎間板石灰化症の診断に至った4歳女児の1例を経験し,1年9か月の経過で石灰化病変が自然に消失したことを確認した.経過から,急性期における頸部痛及び頸部運動制限は椎前部軟部組織の浮腫性変化による可能性が示唆された.
本疾患に関する文献的考察により,発症前後の感染や外傷などの有無,石灰化病変を有する椎間板数に関しては,石灰化消失までの経過に差を認めないことが推測された.これまで小児頸椎椎間板石灰化症と診断された症例は,保存的治療で治癒するものと考えられていたが,一部に石灰化の残存や手術を要する症例が存在することが判明した.予後の予測にあたり,(1)10歳以上,(2)石灰化病変が下部頸椎から始まる症例,(3)神経障害や嚥下障害を有する症例は保存的治療では治癒しない可能性があるため注意が必要である.またH2 blockerの長期投与により,石灰化消失までの期間が短縮できる可能性が示唆された.
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【短報】
■題名
小児三次医療施設における手術前感染症スクリーニング検査の陽性率と費用
■著者
国立成育医療研究センター感染防御対策室1),同 生体防御系内科部感染症科2) 中河 秀憲1) 宮入 烈1)2)
■キーワード
術前検査, スクリーニング, B型肝炎, C型肝炎, 梅毒
■要旨
本邦の小児における手術前感染症スクリーニング検査の陽性率と検査費用は不明である.国立成育医療研究センターで2008年4月から2015年3月に18歳未満の患者に対して手術前スクリーニングとして施行されたHBs抗原,HCV抗体,TP抗体の検査において,それぞれ15/16,106件(0.09%),208/16,038件(1.3%),29/13,672件(0.21%)が検査陽性となったが新規に診断された感染例はなく,合計172件の再検査が施行された.検査費用は年間約1,300万円,検査陽性に対する確認検査の費用は年間約40万円と算出された.事前確率の低い集団に対するスクリーニング検査はデメリットが多いと考えられた.
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【論策】
■題名
小児病院における小児期発症慢性疾患を有する成人患者の実態調査
■著者
大阪母子医療センター移行期医療支援委員会 鈴木 保宏 井上 雅美 山本 勝輔 恵谷 ゆり 小杉 恵 望月 成隆 青木 寿明 位田 忍
■キーワード
小児病院, 移行期医療, 小児期発症疾患, トランジション
■要旨
当センター(小児病院)に受診中の小児期発症の慢性疾患を有する成人患者の実態調査を行った.2014年中に受診歴のある成人(20歳以上)患者は1,024名(男466名,年齢中央値23歳)で,日常生活が自立しているのは約半数(511名)のみで,約4割(423名)の患者は複数の診療科を受診していた.各診療科別に(1)現在の診療状況,(2)地域の成人医療機関側の受け入れ体制,(3)成人期以後も小児科で診る医学的な意義,の3項目を評価し,患者を成人診療科に完全な転科が可能であるかの視点から5群に分類した.その結果,転科できない患者(I群)10%,転科困難な患者(II群)54%,診療を終了あるいは転科できるが,成人期以後も小児診療科で診る医学的意義が大きい患者(III群)7%,診療の終了あるいは転科可能な患者(IV群)28%,判定保留(V群)1%であった.継続的な診療が必要であるが,地域内に成人の専門医師は十分でない患者(I+II群)の占める割合は複数科受診,日常生活の援助が必要なほど増加する傾向を示した.その後の追跡調査では死亡が12名,2016年受診歴がない患者は238名であったが,I+II群の患者では転科が進んでいなかった.小児病院で経験する小児期発症の慢性疾患を有する成人患者すべてを成人診療科に転科するのは困難であり,我々はこれらの成人患者に対しても適切な移行期医療を確立する必要がある.
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