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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:18.12.19)
第122巻 第12号/平成30年12月1日
Vol.122, No.12, December 2018
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第121回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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その子どもの幸せのために―二足のわらじで二兎を追う―
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廣瀬 伸一 1789 |
教育講演 |
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楠田 聡 1794 |
日本小児感染症学会推薦総説 |
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河島 尚志 1800 |
日本小児リウマチ学会推薦総説 |
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清水 正樹 1808 |
原 著 |
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中嶌 八隅,他 1818 |
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笠原 克明,他 1826 |
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渕元 浩二,他 1833 |
症例報告 |
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中村 浩章,他 1843 |
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丸山 馨,他 1850 |
論 策 |
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西村 悟子,他 1855 |
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1861 |
専門医にゅ〜す No. 17 |
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1880 |
日本小児科学会JPLS委員会主催 |
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1883 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻11号目次
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1884 |
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1886 |
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1887 |
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1888 |
【原著】
■題名
先天性心疾患合併の極低出生体重児の長期的神経発達の現状
■著者
聖隷浜松病院小児循環器科1),同 新生児科2) 中嶌 八隅1) 村上 知隆1) 井上 奈緒1) 金子 幸栄1) 廣瀬 悦子2) 森 善樹1)
■キーワード
極低出生体重児, 先天性心疾患, 神経発達予後
■要旨
目的:先天性心疾患(CHD)を伴う極低出生体重児(VLBWI)の長期的神経発達予後は明らかでないため,当院での現状を調査した.
方法:対象は2000〜2010年に当院NICUに入院したVLBWIのうち6歳まで生存した症例.CHD合併例をCHD群,非合併例を非CHD群に分類し,神経学的合併症(脳性麻痺,知的障害,発達障害),就学状況,WISC検査について後方視的に検討した.
結果:対象は503名(CHD群:n=30,非CHD群:n=473)で,知的障害がCHD群で高率(CHD群56.7%,非CHD群24.5%)だったが,脳性麻痺(CHD群:20% vs. 非CHD群:10.4%),発達障害(CHD群:16.7% vs. 非CHD群:14.6%)は差がなかった.普通学校への進学率(CHD:40% vs. 非CHD:75.5%)はCHD群で低かった.染色体/遺伝子異常を除いた検討(CHD:n=23,非CHD:n=468)でもCHD群は47.8%と知的障害が多く,進学率も低かった.外科的治療有(n=11)と無(n=12)での神経合併症の発生率,普通学校進学率は有意差がなかった.
結語:CHD合併VLBWIは知的障害の発生が高く,普通学校進学率も低い.
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【原著】
■題名
基質拡張型β-ラクタマーゼ産生と非産生の大腸菌による初回尿路感染症の比較
■著者
名古屋第二赤十字病院小児腎臓科 笠原 克明 真島 久和 後藤 芳充
■キーワード
Extended-spectrum β-Lactamase産生大腸菌, Extended-spectrum β-Lactamase非産生大腸菌, セフメタゾール, 初回上部尿路感染症, 腎瘢痕
■要旨
【緒言】近年ESBL(Extended-spectrum β-Lactamase)産生菌の増加が問題となっている.【方法】当院の尿・便培養からのESBL産生菌と,初回上部尿路感染症(upper urinary tract infection:UUTI)の起炎菌としてのESBL産生大腸菌の年次推移を調べ,UUTIにおけるESBL産生大腸菌(A群:16例)とESBL非産生大腸菌(B群:111例)の相違を比較検討した.【結果】小児尿・便培養の大腸菌に占めるESBL産生菌の割合は,2011年から2017年まで5.4%,6.0%,7.8%,10.1%,15.1%,18.0%,18.7%と増加していた.初回UUTIの起炎菌がESBL産生大腸菌は,2011年から2017年まで0%,10%,3%,8%,9%,30%,19%であった.A群とB群で性別,年齢,腎尿路形態異常,膀胱尿管逆流,99TcDMSA腎瘢痕形成,腎機能障害の有無に有意差があるとはいえなく,治療から解熱までの期間はA群がB群より有意に長かった(P=0.03).A群の14例で初回抗菌薬に感受性は無かったが2例は同抗菌薬を継続,12例はその後感受性のあるセフメタゾールに変更しともに治療は奏功した.【結語】ESBL産生大腸菌は近年増加しており,UUTI治療はA群で解熱までの期間が有意に長かったが,腎瘢痕形成は有意差があるとはいえなかった.
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【原著】
■題名
超音波検査と胸部X線の小児肺炎の感度の比較
■著者
大津赤十字志賀病院小児科 渕元 浩二 石田 ゆり
■キーワード
小児肺炎, 超音波検査, 胸部X線, 病変分布, 診断
■要旨
【目的】超音波検査による小児肺炎の病変分布を明らかにする.また,病変の部位や対象の年齢が胸部X線および超音波検査の感度に与える影響を明らかにする.【方法】対象は平成24年11月〜平成29年10月に胸部X線もしくは超音波検査にて病変をみとめ肺炎の診断で当院小児科に入院した全症例.このうち超音波検査により病変が確認された症例を主対象とし,それらの病変存在部位を8分画(右左・前後・上下)に分け年齢別に比較検討した.また,超音波検査と胸部X線の両者を施行した症例を副対象とし,両者の結果を肺野の4分画(右左・上下)ごとに年齢別に集計し,それぞれの感度を求め比較検討した.【結果】全肺炎症例は406名,主対象は200名,副対象は256名であった.超音波検査による病変は右・下に多かった.また0歳では1歳以上に比べ,病変は有意に上・後ろに多かった.0歳では右下を除く3分画において,1歳以上では左下において超音波検査の感度が胸部X線のそれを上回った.【結論】超音波検査による小児肺炎診断において,0歳では上部背側,1歳以上では下部に病変が多い.感度の点から,超音波検査は0歳の肺炎診断に最も有用であり,1歳以上でも左下の肺炎診断に有用性が高い.
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【症例報告】
■題名
肝逸脱酵素の上昇が遷延した新生児―乳児消化管アレルギー
■著者
東邦大学医療センター大橋病院小児科 1),済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科2) 中村 浩章1) 服部 美来1) 十河 剛2) 乾 あやの2) 藤澤 知雄2) 清水 教一1)
■キーワード
肝逸脱酵素上昇の遷延, 新生児―乳児消化管アレルギー, アミノ酸乳, アレルゲン特異的T細胞, サイトカイン
■要旨
新生児―乳児消化管アレルギーは,近年症例報告数が増加しており,多くの患者では診断や治療を円滑に行うことができるようになってきた.しかし,いまだに診断に苦慮する症例や非典型例が存在する.症例は日齢51日の男児.体重増加不良,肝逸脱酵素上昇の精査目的の入院中に,調製粉乳を摂取したことにより,敗血症様症状を呈する新生児―乳児消化管アレルギーを発症した.治療乳としてアミノ酸乳を導入後,アレルギー症状は誘発されず,体重増加も良好であったが肝逸脱酵素の上昇が遷延した.経過中3回の乳製品誤食によるアレルギー症状の出現と,それに一致して緩やかに改善傾向にあった肝逸脱酵素の再上昇を認めた.その後,牛乳を誤飲してもアレルギー症状は誘発されず,肝逸脱酵素も正常化し,新生児―乳児消化管アレルギーの発症から約2年間の経過で牛乳の除去を解除できた.肝逸脱酵素の正常化と牛乳に対する耐性獲得の時期が,偶然重なった可能性も否定できないが,既報にない経過を辿った新生児―乳児消化管アレルギーであり,文献的な考察を加えて報告する.
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【症例報告】
■題名
正常子宮サイズと女性外性器を有する45,X/47,XYY核型のTurner症候群
■著者
新潟大学医歯学総合病院小児科 丸山 馨 入月 浩美 佐々木 直 小川 洋平 長崎 啓祐 齋藤 昭彦
■キーワード
Turner症候群, 45,X/47,XYY, 性腺摘出, 外性器異常, gonadoblastoma
■要旨
Turner症候群は,性染色体異常症の一つで,代表的な核型は45,Xであるが,その他にもX染色体の構造異常やまれながらY染色体を含む核型も存在する.今回,非常に稀な45,X/47,XYY核型を有し,正常な子宮サイズ及び女性外性器を有する症例を報告する.
症例は5歳女児,低身長を主訴に受診した.既往歴に複数回の中耳炎があった.低身長(−2.2 SD)と第5指爪低形成を認め,外性器は正常女性型であった.血液検査ではFSH上昇(49.5 mIU/mL)と染色体検査で45,X[8]/47,XYY[12]であり,Turner症候群による低身長,卵巣機能不全と診断した.腹部超音波及びMRIで子宮サイズは,年齢相当であった.Y成分を有する核型であり,性腺の悪性化の可能性があるため両側性腺摘出術を施行した.両側ともに索状性腺で,悪性化の所見は認めなかった.頬粘膜および性腺の性染色体の構成は,45,Xが優位であった.
45,X/47,XYYの社会的な性は,男性及び女性ともに報告されているが,内外性器の異常を認めること多い.本症例が子宮・外性器ともに正常であったのは,性腺において45,X細胞系列が優位であり,両側の性腺が索状性腺であったためと推測された.
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【論策】
■題名
医学部学生に対する重症心身障がい児(者)医療教育の課題と展望
■著者
岐阜大学大学院医学系研究科障がい児者医療学寄附講座1),豊田市こども発達センター2),愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所3),くまもと芦北療育医療センター4),名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座5),岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学6) 西村 悟子1)6) 三浦 清邦2) 長谷川 桜子3) 松葉佐 正4) 山本 崇裕1)6) 夏目 淳5) 深尾 敏幸6)
■キーワード
医学大学教育, 重症心身障がい児(者), 重症心身障害児施設, 臨床実習, 障がい者医療
■要旨
平成28年に「医学部学生に対する重症心身障がい児(者)(以後重症児(者)と略す)医療教育」についてアンケート調査を行い,平成24年の結果と比較検討した.【結果】重症児(者)医療教育を行っていた大学は,平成24年は51%(37校)で平成28年は55%(37校)と大きな変化はみられなかった.講義を実施している大学は,両年ともに約4割であり,その学年は4年生,単位は1単位,講師は大学の教官であることが多かった.臨床実習を実施している大学は,両年ともに約3分の1であり,実施学年は5年生が多く,対象者は学生全員,実習期間は1日が多かった.平成28年では重症心身障害児施設で実習を行う大学が減少していた.両年とも回答した61大学で比較すると,「平成24年は実施あり→平成28年は実施なし」と回答した大学が9大学あり,その理由として人員不足や授業時間の不足等が挙げられていた.【考察及び結論】近年,小児科医の診療の在り方が急性疾患から慢性疾患へとシフトしつつあり,医療的ケアが必要な重症児(者)を含む小児在宅医療も社会的なニーズとなっている.こうした医療を担う医師の育成が求められているが,医学部学生に対する重症児(者)医療教育は進んでいるとは必ずしも言えず,後退した部分も認められた.今後,小児科医の役割を見据えた教育を行っていくためにも,具体的な対策が必要であると考えられた.
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