 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:18.9.19)
第122巻 第9号/平成30年9月1日
Vol.122, No.9, September 2018
バックナンバーはこちら
|
 |
|
原 著 |
|
森藤 祐次,他 1423 |
|
池田 裕一,他 1429 |
|
天笠 俊介,他 1441 |
症例報告 |
|
鈴木 亮平,他 1450 |
|
野田 俊輔,他 1456 |
|
石田 航平,他 1462 |
|
種瀬 秀一,他 1467 |
|
宮竹 紘子,他 1474 |
論 策 |
|
江原 朗 1481 |
|
|
1486 |
|
1501 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会主催 |
|
1502 |
日本小児科学会小児医療委員会主催 |
|
1503 |
日本小児科学会JPLS委員会主催 |
|
1504 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
|
第7回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)
コースの報告
|
|
1505 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
|
将来の小児科医への提言2018(2016年版改訂)
|
|
1506 |
日本小児科学会災害対策委員会報告 |
平成28年熊本地震で日本小児科学会から派遣された医師へのアンケート調査結果 |
|
報告および,今後の日本小児科学会による被災地診療支援への取り組み
|
|
1510 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合21 |
|
1516 |
日本小児医療保健協議会健康診査委員会主催 |
|
第3回乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会Part III〜一歩進んだ乳幼児健診をめざして〜報告
|
|
1518 |
日本小児医療保健協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会報告 |
|
1519 |
医療的ケアを必要とする重症心身障害児および主たる介護者の実態調査 |
|
第1報:家庭での医療的ケア・社会資源の利用・介護の実態
|
|
1527 |
医療的ケアを必要とする重症心身障害児および主たる介護者の実態調査 |
|
第2報:医療的ケアを必要とする在宅重症心身障害児の主たる介護者の精神的健康状態
|
|
1533 |
|
|
1538 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻8号目次
|
|
1541 |
|
1543 |
|
1544 |
|
1545 |
【原著】
■題名
学校心臓検診における心房中隔欠損の抽出精度向上のために有用な心電図所見
■著者
広島市立広島市民病院 循環器小児科 森藤 祐次 鎌田 政博 中川 直美 石口 由希子 岡本 健吾 松本 祥美
■キーワード
心房中隔欠損, 学校心臓検診, 心電図, Crochetageパターン, 省略4誘導心電図
■要旨
【背景】心房中隔欠損(ASD)の心電図(ECG)所見として,(1)V1 rSR'型(rSR'),(2)孤立性陰性T波(IT),(3)下方誘導のQRS notchパターン(Crochetage)があるが,学校心臓検診でASDと診断されずに見逃されている症例は少なくない.【目的】学校心臓検診でASDをより確実に抽出するためのECG判読方法,ASDを疑うECG所見と年齢,肺体血流比(Qp/Qs)との関連を明らかにする.【対象/方法】2010〜2016年に当院でカテーテル検査を行った18歳未満のASD124例を対象とし,そのECGを前記(1)〜(3)に加え,(4)V6の幅広いS波(SV6),(5)異常なし,に分類した.対照群100例とあわせ,ECG所見組み合わせ別のASD診断における感度,特異度を算出した.【結果】rSR'陽性率は対象で39%,Qp/Qs≥1.5でも42%に過ぎなかった.2項目,3項目判定ではそれぞれCrochetage or SV6,IT or Crochetage or SV6が最も陽性率が高かった.省略4誘導ECGに限定しても,Crochetage or SV6はASD診断感度81%,特異度88%と高い値を示した.【結論】小児ASDをECGでより確実に抽出するためには,Crochetage,SV6のチェックが重要である.
|
|
【原著】
■題名
昼間尿失禁児童の心理・社会的QOL
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科1),東京成徳大学応用心理学部2) 池田 裕一1) 田村 節子2)
■キーワード
昼間尿失禁, 小児, QOL, Pediatric Quality of Life(PedsQL), 保護者代理評価
■要旨
昼間尿失禁(DI)はセルフイメージや自尊心の低下,心理社会的な生活の質(QOL)に影響することが報告されている.しかし,児童の日中の生活の基盤である学校生活や友人関係などの社会的な影響については十分調査されていない.今回,日本語版Pediatric Quality of Life Inventory 4.0(PedsQL)を用いて,DI児童のQOLについて調査した.対象は週1回以上のDIを主訴に来院した223名の児童とその保護者.初診時に本人と保護者にPedsQLを記入させ,999名の一般児童から取得した得点と比較した.DI児童では総合得点と心理社会的サマリー得点が本人評価,保護者代理評価ともに一般児童に比較して有意に低下していた.性別,DI頻度とPedsQLの得点には有意な関係はみられなかった.学年別の調査では,小学校1年生で社会的機能が本人評価で有意に低下していた.幼少期から続くDIが小学校入学時点において,心理社会的QOLに影響を及ぼしている可能性があり,DIに対する早期対応とDI児童の心理面に十分留意した診療が必要である.
|
|
【原著】
■題名
地方における集約化による小児重症患者診療体制の確立
■著者
長野県立こども病院小児集中治療科 天笠 俊介 北村 真友 佐藤 公則 黒坂 了正 松井 彦郎
■キーワード
小児, 集約化, 集中治療, 搬送, 地域連携
■要旨
小児重症患者の集約化がその転帰改善に重要であることから多くの地方自治体が小児医療体制についての計画を定めている.しかし,その実現は容易ではない.
我々は,2011年以降,地方の小児重症患者の集約化において重要な三要素として(1)搬送体制,(2)二次・三次医療機関間の連携,(3)三次医療機関間の連携をあげ,これらの充実と整備を行った.(1)は搬送時間を短縮し搬送手段を多様化した.(2)の強化として,搬送症例検討会議を組織し定期的に開催した.重症患者の早期発見・閾値の低い連絡体制・初期治療について個々の搬送症例を検証し改善点等の共有を行った.(3)は小児専門病院と大学病院間で患者の搬送と収容についての役割を明確にし,病院間協定を締結した.
搬送件数と小児集中治療室入室者数は(1),(2)の活動開始時期に一致し増加し,両者は有意に正の相関(R2=0.86,P<0.01)を示した.2011〜2014年の間に小児集中治療室入室者の予測死亡率(Pediatric Index of Mortality 2)は6.4%から8.5%に上昇したが,Standardized Mortality Ratioは0.68から0.52へ改善した.
搬送と病院間連携の整備により,小児重症患者が三次医療機関へ集約され,長野県の小児救急医療の質が改善された.小児重症診療体制の確立が,地方においても実現可能であることが示唆された.
|
|
【症例報告】
■題名
Ureaplasma感染に伴う肺炎にアジスロマイシンが奏功した新生児2例
■著者
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科1),大阪母子医療センター研究所免疫部門2) 鈴木 亮平1) 小西 愛里1) 関 真澄1) 関口 由利子1) 斎藤 遥子1) 相良 長俊1) 本木 隆規1) 赤司 賢一1) 柳原 格2) 勝沼 俊雄1)
■キーワード
Ureaplasma, 肺炎, 新生児, アジスロマイシン, 母子感染
■要旨
Ureaplasma属細菌(Ureaplasma spp.)は正常な腟細菌叢の一つで,新生児では垂直感染により肺炎や髄膜炎等の原因となる.今回,Ureaplasma感染による肺炎と診断され,人工呼吸器管理を要した後期早産児2例を経験した.2例ともに出生直後から呼吸障害を呈したため,人工呼吸器管理を開始したが,気道分泌が顕著であり呼吸管理に難渋した.気道分泌物の培養とPolymerase chain reaction(PCR)法でUreaplasma spp. が検出された.臨床経過からUreaplasma感染による肺炎と診断しアジスロマイシンの経口投与により呼吸状態は著明に改善した.その後は2例ともに人工呼吸器管理を離脱し,酸素需要なく退院となった.極低出生体重児でのUreaplasma感染による呼吸障害の報告が多いが,後期早産児においても呼吸管理に難渋する症例ではUreaplasma感染を考慮し,マクロライド系抗菌薬による治療を検討するべきである.
|
|
【症例報告】
■題名
背部痛を契機に診断された鎌状赤血球症
■著者
長野赤十字病院小児科 野田 俊輔 平林 佳奈枝 石田 岳史 高山 雅至 天野 芳郎
■キーワード
鎌状赤血球症, β-サラセミア, 疼痛発作, パルボウイルスB19感染
■要旨
日本では鎌状赤血球症の患者を診療する機会は少ない.父がブラジル人で鎌状赤血球症の保因者である6歳の女児が背部痛を主訴に入院した.入院する4日前から下痢,微熱,全身の痛みがあり,入院前夜の入眠中に強い背部痛を訴えて来院した.高速液体クロマトグラフィー(HLPC)法によるHbA1c値の異常低値,鎌状化試験での鎌状赤血球形成から鎌状赤血球症を疑った.βグロビンの遺伝子シーケンスでコドン6 GAG(Glu)→GTG(Val)(HbS)と−31A→G(β+-thalassemia)が存在し,患児は鎌状赤血球症とβ+-thalassemiaの複合ヘテロ(HbS/β+-thalassemia)と診断された.母はβ+-thalassemiaの保因者だった.胸椎のMRIではSTIR-T2WIで椎体骨に高輝度と低輝度が混在する所見が認められ,微小血栓塞栓症による変化と考えた.輸液と抗菌薬による治療を2週間行い,症状は速やかに改善した.最近の国際化に伴い,外国人や,外国人と日本人の子どもが増加している.急激な背部痛,胸痛,四肢痛を訴える患者の診療に際しては,鎌状赤血球症の疼痛発作も念頭に置いて診療することが必要である.
|
|
【症例報告】
■題名
広範な皮膜下脾梗塞をきたしたEBウイルス初感染例
■著者
苫小牧市立病院 石田 航平 親谷 佳佑 足立 周平 武知 紹美 小杉 陽祐 小杉 未奈 中村 秀勝 大門 祐介 木原 美奈子 小原 敏生 我妻 嘉孝
■キーワード
脾梗塞, EBウイルス
■要旨
症例は11歳女児.入院2週間前に発熱,咽頭痛などの感冒症状があった.一旦解熱したが,入院3日前より再度の発熱と左側腹部痛のため入院精査となった.炎症反応は高値であり,腹痛の原因検索で施行した腹部造影CTにて脾臓皮膜下に広範な不整形の造影不良域を認め,脾梗塞と診断した.脾梗塞の原因検索で,抗体検査とPCR法からEpstein-Barr(EB)ウイルス初感染が判明した.またプロテインS活性,プロテインC活性がやや低下していたが,1週間後の再検査では正常化した.徐々に自覚症状,炎症反応ともに改善し入院後第11病日に退院となった.脾梗塞の原因は多彩であり,診断には造影CTが有用で,典型的には楔型の造影不良域となることが多い.EBウイルス初感染にともなう脾梗塞の報告は稀であり,その機序については明らかではない.摘脾を受けた症例の病理学的検討では,梗塞部位に高度の細胞浸潤とそれに起因する阻血性変化が共通の所見として報告されており,本症例の造影CT検査での広範な不整形の造影不良所見はこの阻血性変化を表すものと考えた.
|
|
【症例報告】
■題名
サルモネラ腸炎後に発症したHLA-B27関連反応性関節炎
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 種瀬 秀一 北澤 克彦 荒畑 幸絵 藤部 ゆり 井口 晃宏 小林 宏伸 仙田 昌義 本多 昭仁
■キーワード
サルモネラ腸炎, 反応性関節炎, HLA-B27, 若年性特発性関節炎, 付着部炎関連関節炎
■要旨
反応性関節炎(reactive arthritis;ReA)は,細菌性腸炎などの関節外感染症に続発する非化膿性関節炎であるが,付着部炎を伴う場合,若年性特発性関節炎の一病型である付着部炎関連関節炎(enthesitis related arthritis;ERA)との鑑別が困難である.サルモネラ腸炎後に発症しHLA-B27関連ReAと診断した11歳女児例を報告する.急性腸炎発症10日目,腫脹と紅斑を伴う右足背部痛が出現したが,その後2週間に,左膝関節痛,右膝関節痛,左足底部痛,後頸部痛が相次いで出現した.右足背部痛と両膝関節痛は関節炎による症状,左足底部痛と後頸部痛は付着部炎による症状と診断した.こわばりはみられず,両膝の関節痛は運動時に増悪した.左膝関節痛以外の局所疼痛は発症後3週以内に自然軽快したが,持続する左膝関節痛に対してはイブプロフェン投与を要した.腸炎発症26日目の便培養でサルモネラ属菌が検出され,後にHLA-B27陽性が判明したため,発症5週目にサルモネラ腸炎後HLA-B27関連ReAと診断した.歩行時の左膝関節痛が消失するまで5か月間を要したが,2年後の時点で左膝関節の機能障害はみられない.本症例では,罹患関節に紅斑を伴っていたこと,こわばりがなかったこと,単相性の臨床経過,そして便培養によるサルモネラ属菌の先行感染の証明がReAとERAとの重要な鑑別点であった.
|
|
【症例報告】
■題名
早産児胆道閉鎖症5例のまとめ
■著者
熊本大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター1),熊本大学生命科学研究部小児科学分野2) 宮竹 紘子1) 坂本 理恵子1) 中村 公俊2)
■キーワード
胆道閉鎖症, 早産児, 葛西術, 生体肝移植術
■要旨
胆道閉鎖症例の中で,早産児での報告が散見される.今回,当院において経験した早産児胆道閉鎖症症例の5例を提示する.症例1は在胎36週0日,出生体重2,100 gの女児で,日齢82に葛西術を施行された.以後の経過は良好である.症例2は在胎34週2日,出生体重2,364 gの男児で,日齢143に葛西術を施行され,一度減黄が得られたものの,黄疸が再燃し肝障害が進行したため,日齢255に生体肝移植術を施行された.症例3は在胎31週5日,出生体重940 gの女児で,日齢101に葛西術,日齢409に生体肝移植が施行されたが,感染症により移植肝は機能不全となり,日齢430に死亡した.症例4は在胎29週4日,出生体重1,200 gの女児で,日齢147に開腹胆道造影を施行された.肝の線維化が進行していたため葛西術は施行されず,日齢219に生体肝移植が施行された.症例5は在胎33週0日,出生体重1,302 gの女児で,日齢70に葛西術,日齢271に生体肝移植が施行された.早産児では直接ビリルビンが高値(2 mg/dL以上)となった際は,異常が顕出化する時期が通常より遅くても胆道閉鎖症を疑うべきである.画像検査より胆道閉鎖症を否定できなければ,速やかに直接胆道造影を行い確定診断を得ることが重要であり,葛西術を施行した後も,肝移植術を視野に入れた厳格な管理が必要である.
|
|
【論策】
■題名
小児科標榜病棟を持たない病院小児科の地理的特性
■著者
広島国際大学医療経営学部 江原 朗
■キーワード
小児科, 病院, 病床機能報告, アクセス, GIS
■要旨
【目的】小児科標榜病院(病院小児科)のリストは存在するが,どの病院が小児の入院医療を提供しているかは不明である.そこで,病院小児科における小児科標榜病棟の有無を特定し,「小児科標榜病棟なし」病院小児科の地理的特性を明らかにする.
【方法】各病院の標榜診療科のリストは各地方厚生局から入手し,病棟ごとの標榜診療科に関する資料は平成26年度病床機能報告から引用した.両者を突合して病院小児科の小児科標榜病棟の有無を特定した.また,病院小児科全体に占める「小児科標榜病棟なし」の比率を地方間,市区町村の人口規模間で比較した.さらに,病院小児科の20キロ圏内外における15歳未満人口を小児科標榜病棟の有無に分けて計算し,地方間で比較した.
【結果】全国の病院小児科の54.7%が「小児科標榜病棟なし」であり,この比率は小規模市町村で高かった.全国の15歳未満の小児384,684人が「小児科標榜病棟あり」病院小児科から20キロ以上離れた場所に居住していたが,うち338,249人(87.9%)は「小児科標榜病棟なし」病院小児科から20キロ圏内の居住者であった.なお,これらの小児の4割強は北海道・東北地方の住民であった.
【結論】「小児科標榜病棟なし」病院小児科の比率が小規模市町村では高かった.遠隔地においては,「小児科標榜病棟なし」病院小児科が小児医療の提供に大きな貢献をしているものと思われた.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|