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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:18.8.21)
第122巻 第8号/平成30年8月1日
Vol.122, No.8, August 2018
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総 説 |
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川口 敦,他 1287 |
原 著 |
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後藤 智紀,他 1295 |
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板倉 隆太,他 1303 |
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増田 卓哉,他 1310 |
症例報告 |
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小野寺 幸子,他 1315 |
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永尾 宏之,他 1320 |
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中村 拓自,他 1326 |
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竹森 千晃,他 1333 |
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野田 俊輔,他 1341 |
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吉年 俊文,他 1348 |
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花見 洋太朗,他 1353 |
論 策 |
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武 純也,他 1357 |
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地方会抄録(大分・新潟・東京・香川・千葉・東海・北陸・富山)
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1365 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻7号目次
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1406 |
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【総説】
■題名
小児の経鼻高流量療法の潜在的利点と欠点
■著者
アルバータ大学小児集中治療科1),大阪府立病院機構大阪母子医療センター集中治療科2) 川口 敦1) 竹内 宗之2)
■キーワード
経鼻, 高流量, 酸素, 生理学的作用
■要旨
Heated Humidified High Flow Nasal Cannula(HH-HFNC:加温加湿 高流量 経鼻カニュラ酸素療法)は小児医療において欠かすことのできない診療選択肢となっている.海外では2010年ごろから新生児医療,小児集中治療の現場で広く使用されるようになってきている.本邦でもその保険使用が認められ,使用増加が見込まれる.近年になり質の高い比較対照研究も散見されるようになってきたが,他の非侵襲的人工呼吸療法との使い分け,あるいは侵襲的人工呼吸療法を含む治療エスカレーションの必要性やタイミングについては依然医療従事者の判断によるところが大きい.また装着の簡便さや単純なパラメター設定から,適応外の使用,合併症等への理解が不十分なままの安易な使用が懸念される.本稿では小児患者におけるHFNCの使用適応をその生理学的メカニズムをもとに,最新の臨床エビデンスを交えて説明を加える.
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【原著】
■題名
単腎症例における超音波断層法による腎長径と腎機能予後の関連
■著者
市立四日市病院小児科1),名古屋第二赤十字病院腎臓病総合医療センター小児腎臓科2),日本赤十字豊田看護大学臨床医学3) 後藤 智紀1) 後藤 芳充2) 上村 治3)
■キーワード
単腎症, 腎長径, 超音波断層法, 多囊胞性異形成腎, 代償性肥大
■要旨
目的:国内で健常児の腎長径についての報告はあるものの,小児単腎症の腎長径についての報告はない.そこで,超音波検査で測定した腎長径と,腎機能との関連性を検討した.
方法:2施設で経過観察中の小児単腎症45例を対象に,診療録を用いて後方視的に調査した.
結果:腎長径は年齢及び身長と良く相関した(相関係数:年齢0.87,身長0.91).身長から推定される腎長径の回帰式は,0.0529×身長(cm)+2.67だった.腎長径が,身長から推定される腎長径より大きい群(N群)と小さい群(S群)に分けて,腎機能について評価した.推算糸球体濾過量(eGFR)の中央値は,N群で96.0 mL/min/1.73 m2,S群で83.6 mL/min/1.73 m2と,S群で有意に低かった(p<0.01).最終観察時点でCKD stage 2の群と,CKD stage 1の群に分けて検討すると,CKD stage 2の群の多くの症例で,腎長径は推定より小さく推移した.
結論:腎長径が推定より小さい単腎症例ではeGFRが低かったことから,間接的に腎機能を評価できる可能性が示唆された.よって,単腎症の経過観察の際に腎長径を測定することは,その後の注意深い経過観察の必要性や,侵襲的な検査を減らす検討ができる点で,有用と考えられた.
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【原著】
■題名
小児集中治療室が重症患者の集約化および予後の改善に果たす意義
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児救命救急センター1),同 小児科2) 板倉 隆太1) 櫻井 淑男1) 宮本 和1) 小林 信吾1) 長田 浩平1) 菅本 健司1) 足立 智子1) 北岡 照一郎1) 阪井 裕一1)2) 田村 正徳1)2)
■キーワード
小児救急医療, 小児集中治療, 搬送, 集約化, PICU
■要旨
【背景と目的】埼玉県では,今まで小児重症患者を集約化する受け皿がなく,重症例が県内の小規模施設へ分散していた.この状況を改善すべく,2016年3月に埼玉医科大学総合医療センター小児集中治療室(PICU)を開設し,埼玉県地域医療再生計画の1つの柱である小児救命救急センターとして運用開始した.当院PICUの運用実績から埼玉県の小児重症患者集約化の現状を把握し,その意義につき検討する.
【対象と方法】2016年3月から2017年2月までの当施設への入院症例に関して後方視的検討を行った.
【結果】対象症例は402例であった.入院症例の87.6%が緊急入院で,入院経路は76.7%が院外からであった.施設間搬送による入院症例151例のうち,97例(64.2%)で当院の医師による迎え搬送を実施し,埼玉県全ての二次保健医療圏から転院搬送を行った.ドクターヘリ搬送例は25例(直送17例,転送8例)であった.PIM2(Pediatric Index of Mortality 2)による平均予測死亡率は5.8%,実死亡率は2.6%であった.
【結語】当院PICUは小児重症患者を県内全域から受け入れ,予測死亡率に比べ低い実死亡率を得られた.小児重症患者の予後改善のため,搬送システムを確立し小児重症患者を集約することが埼玉県においても有効であると考えられた.
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【原著】
■題名
MRI検査時の鎮静前絶飲食ルール導入の影響
■著者
芳賀赤十字病院小児科1),自治医科大学小児科2) 増田 卓哉1) 齋藤 真理1) 菊池 豊1) 黒崎 雅典1)2) 福井 沙織1) 下澤 弘憲1)2) 保科 優1)
■キーワード
乳幼児, MRI, 鎮静, 共同提言, 2-4-6ルール
■要旨
目的:日本小児科学会を含む3学会から「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」が発表され,鎮静前の絶飲食,すなわち2-4-6ルールが推奨されたが,検査成功率低下が危惧され,2017年の日本小児科学会医療安全委員会からの報告では,ルール導入施設は半数に満たない.そこで,2-4-6ルール導入による鎮静下MRI検査成効率の変化を解析した.
方法:当院で2-4-6ルールを導入した前後9か月間に該当する2016年4月から2017年11月に,当院で鎮静下MRI検査を施行した6歳未満の全乳幼児を対象とし,ルール導入前後の検査成功率を後方視的に比較した.鎮静薬はトリクロホスナトリウムシロップを使用し,十分な鎮静が得られない場合は抱水クロラールを追加した.
結果:対象はルール導入前59例と導入後50例.検査成功率は,導入前が83%で,導入後は98%に有意に上昇した(p=0.0098).年齢別の検査成功率は,3歳代が71%で最も低かったが,導入後は100%に上昇した.2-4-6ルール導入前後で対象者の性別や外来検査率,検査目的,追加薬剤使用率に差はなく,有害事象の発生頻度も差がなかった.
結語:2-4-6ルール導入により鎮静下MRI検査成功率は有意に上昇した.
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【症例報告】
■題名
縦隔神経芽腫に合併した先天性乳び胸
■著者
宮城県立こども病院新生児科1),同 血液腫瘍科2) 小野寺 幸子1) 堅田 有宇1) 小林 昌枝1) 三浦 雄一郎1) 内田 俊彦1) 渡邉 達也1) 齋藤 潤子1) 鈴木 信2) 佐藤 篤2) 今泉 益栄2)
■キーワード
先天性乳び胸, 縦隔神経芽腫, 新生児
■要旨
リンパ管や胸管の先天異常による先天性乳び胸の原因は,染色体異常などが特定されることもあるが,不明なことが多い.胎児期の神経芽腫は妊娠30〜36週に発生するとされており,羊水過多や胎児水腫を引き起こすことがある.今回,我々は縦隔神経芽腫との関連が強く疑われた先天性乳び胸を経験した.症例は妊娠33週6日で出生した女児である.妊娠31週に胎児胸水を指摘され,胎児水腫となったため緊急帝王切開で出生した.両側乳び胸に対して,胸腔穿刺,絶食,完全静脈栄養を行ったが改善せず,日齢5からステロイドなどの薬物療法を行い,日齢15に乳び胸は消失した.乳び胸水消失後の胸部単純X線写真で縦隔の右方偏位と左上肺野の腫瘤状陰影の残存を認めた.胸部単純CTでは,左後縦隔に石灰化を伴う3 cm大の腫瘤を認め,123I-MIBGシンチグラフィーでは同部位への集積を認めた.さらに,血清NSE,尿中VMAおよび尿中HVAが上昇しており,神経芽腫と診断した.腹部・脳MRI検査および骨髄検査から腫瘍の転移は否定的であり,血清MYCN遺伝子の増幅はみられなかったため,低リスク群と診断し経過観察とした.今回の腫瘤は胸管や鎖骨下静脈を圧迫しうる部位に発生したものであり,先天性乳び胸の原因として縦隔神経芽腫が関与した可能性が高い.特に基礎疾患のない児における先天性乳び胸の診察では,胸腔内腫瘍も原因として検討すべきである.
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【症例報告】
■題名
当院で経験したScimitar症候群
■著者
兵庫県立こども病院循環器内科 永尾 宏之 田中 敏克 亀井 直哉 松岡 道生 小川 禎治 富永 健太 城戸 佐知子
■キーワード
Scimitar症候群, 肺分画症, 部分肺静脈還流異常, 肺高血圧, 心臓カテーテル検査
■要旨
Scimitar症候群は,右肺静脈の全てまたは一部が下大静脈に流入する部分肺静脈還流異常があり,Scimitar signを認めるものと定義され,肺分画症や肺高血圧を高頻度に伴う.経過の異なる3例を経験したので報告する.症例1は4歳男児,腹腔内精巣の術前検査の胸部単純X線検査でScimitar症候群を疑われ,心臓超音波検査で診断された.症状はなく,16歳時に心臓カテーテル検査を行ったが手術適応はなく経過観察となった.症例2は7か月女児で人工肛門閉鎖術の術後に呼吸不全を認めた.心臓超音波検査で肺高血圧,部分肺静脈還流異常を認め,造影CT検査でScimitar症候群と診断した.心臓カテーテル検査で,合流部下大静脈に狭窄を認めた.生後10か月に部分肺静脈還流異常の修復術と下大静脈の狭窄解除術を行った.術後9か月に肺静脈狭窄を認め,右肺静脈閉塞解除術を施行したが完全閉塞した.症例3は胎児超音波検査で部分肺静脈還流異常,右肺低形成,Scimitar症候群を疑われていた.生後6か月時に心臓カテーテル検査を行った.右肺静脈は下大静脈に還流しており,右肺動脈は低形成であった.腹部大動脈から右下肺への栄養血管を認め,右下葉の肺葉内肺分画症と診断した.肺分画症に対してコイル塞栓術のみを行い経過観察中である.Scimitar症候群の合併疾患や重症度は様々であり.循環動態を考えて介入方法を検討すべきである.
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【症例報告】
■題名
尿閉を主訴とした辺縁系脳炎
■著者
嬉野医療センター小児科1),佐賀大学医学部小児科2) 中村 拓自1)2) 松尾 宗明2) 在津 正文1)2)
■キーワード
尿閉, 視覚失認, 辺縁系脳炎
■要旨
尿閉を主訴とした辺縁系脳炎の13歳例を報告する.頭痛,嘔吐を伴う発熱があり解熱後に,尿閉,視覚失認が出現し,その後,意識障害が出現し増悪した.頭部MRIにて右頭頂葉・側頭葉・島皮質に,T2強調像・FLAIR画像・拡散強調画像で高信号病変を認め,髄液検査で細胞数増多,脳波で右大脳半球優位の高振幅徐波を認めた.臨床経過からは,急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が疑われたが,頭部MRIでは白質の散在性病変は認めず,脊髄造影MRIでも馬尾の造影効果を含め明らかな異常は認めなかった.急性脳炎と診断し,ステロイドパルス療法,大量γグロブリン療法,アシクロビル静注を実施した.尿閉症状に加えて,経過中に不穏,興奮などの精神症状や,自律神経症状と思われる徐脈を呈し,辺縁系脳炎と診断した.辺縁系脳炎の症状として,呼吸,心拍,排泄などの自律神経症状を来すことが知られているが,尿閉を主訴とした辺縁系脳炎の小児例の報告は稀である.尿閉を呈した児の診療に際しては,急性脳炎も鑑別診断に挙げる必要がある.
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【症例報告】
■題名
シロリムスが奏功した脊柱管浸潤を合併した治療抵抗性Kaposi型血管内皮腫
■著者
静岡県立こども病院血液腫瘍科 竹森 千晃 川口 晃司 高橋 郁子 小倉 妙美 堀越 泰雄 渡邉 健一郎
■キーワード
Kaposi型血管内皮腫, カザバッハメリット現象, シロリムス, mTOR阻害剤, 脊柱管浸潤
■要旨
Kaposi型血管内皮腫(Kaposiform hemangioendothelioma;KHE)に対しては,ステロイド・ビンクリスチン併用療法が第一選択とされているが,治療抵抗・再燃例が多い.近年,KHEに対しmTOR阻害剤の有効性を示す報告がみられる.今回,カザバッハメリット現象(Kasabach-Merritt phenomenon;KMP)に脊柱管浸潤と骨病変を伴ったKHEに対しmTOR阻害剤であるシロリムスが奏功した症例を経験した.症例は日齢25の女児で体表血管腫,皮下出血で受診.血小板減少,D-dimer高値,フィブリノゲン低下があり,MRIで左腎下の後腹膜に腫瘤を認め,KHEと診断した.プレドニン,プロプラノロール及びビンクリスチン併用療法を行ったが血小板輸血から離脱できなかった.さらに,腫瘍と接した骨の溶骨性変化,脊柱管への浸潤の進行から骨折や脊髄麻痺となる危険性があった.日齢93に生検を行い,病理学的にKHEであることを確認し,日齢108よりシロリムスを開始した.開始後8日で血小板輸血から離脱し,6か月後,腫瘍は著明に縮小し,溶骨性変化も改善した.本症例では,シロリムスによりKMPが改善しただけでなく骨病変が縮小し,骨折や脊柱管浸潤による神経障害を防ぐことが可能であった.重篤な合併症が危惧される浸潤性の病変を伴うKHEでは,早期のシロリムスの投与を検討すべきであると考えられた.
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【症例報告】
■題名
治療抵抗性を示し,多剤併用療法にて寛解した紫斑病性腎炎VI型
■著者
長野赤十字病院小児科1),信州大学小児科学講座2) 野田 俊輔1) 松岡 大輔2)
■キーワード
紫斑病性腎炎, IgA血管炎, ミコフェノール酸モフェチル, 扁桃腺摘出術
■要旨
IgA血管炎は,2012年Chapel Hill分類(CHCC2012)でHenoch-Schönlein紫斑病から名称が変更になった免疫複合体性血管炎である.合併症である紫斑病性腎炎は,重症例では末期腎不全に至る可能性がある.
症例は8歳男児.IgA血管炎を発症し,プレドニゾロン(Predonisolone:PSL)を内服し腹痛は改善したが,蛋白尿,血尿を認め,第37病日に腎生検を施行.ISKDC分類VI型であり,PSL,ミゾリビン(Mizoribin:MZB),ジピリダモール,ワーファリンによる多剤併用療法を行った.しかし治療効果は乏しく,ステロイドパルス療法でも改善せず,シクロスポリン(Cyclosporin A:CYA)を併用後,蛋白尿が減少した.しかし,感染罹患毎に,蛋白尿の増加を繰り返し,ネフローゼ状態からの離脱が困難であったためミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil:MMF)を併用した.3剤併用後寛解し,感染予防目的に第145病日に扁桃腺摘出術を施行した.初回から1年後の腎生検ではII型に改善し,3剤を中止したが再燃は認めていない.重症例にCYAや,MMFの有効性が報告されているが,大規模臨床試験はない.血漿交換療法も試みられているが,発症早期に有効であることや,侵襲が大きいことが問題である.今回の治療では侵襲が少なく,かつ治療効果が十分に得られた.
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【症例報告】
■題名
5日間の抗菌薬内服で発症した小児Clostridium difficile感染症
■著者
沖縄県立中部病院小児科1),埼玉県立小児医療センター消化器・肝臓科2),国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター3) 吉年 俊文1) 岩間 達2) 日馬 由貴3) 岸田 みずえ1) 又吉 慶1) 辻 泰輔1) 金城 さおり1) 小濱 守安1)
■キーワード
Clostridium difficile感染症, 抗菌薬起因性腸炎, Antimicrobial Stewardship Program, 腹部超音波検査
■要旨
Clostridium difficile感染症(以下CDI)は高齢者や入院患者において致死的になりうる抗菌薬起因性腸炎の1つであるが,小児外来患者における発症の報告は少ない.我々は数日間の抗菌薬内服後に発症した健康小児のCDIを経験した.症例は5歳女児で,発熱と軟便を主訴に前医を受診し,腸炎の診断で経口抗菌薬を処方された.経口抗菌薬を内服数日後に,腹痛と下痢が増悪したため当院を受診した.入院時は細菌性腸炎と診断し,抗菌薬を中止したが,発熱や軟便は改善しなかった.便中ノロウイルス抗原,ロタウイルス抗原は陰性で,便培養で常在菌のみが検出された.腹部超音波検査で左側結腸優位の腸管壁肥厚を認めたため,Clostridium difficileトキシン検査を提出し,CDIと診断し得た.メトロニダゾール投薬で速やかに解熱し消化器症状は改善した.CDIの発症予防のため小児の腸炎には基本的には抗菌薬を処方しないことが重要である.また小児におけるCDIは稀な疾患であるが,腸炎症例の病歴聴取の際には過去60日以内の抗菌薬内服歴も聴取し,CDIを疑う際には腹部超音波検査で左半結腸優位に腸管壁肥厚を伴うことが診断の補助となりうる.
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【症例報告】
■題名
下肢痛,歩行困難で発症した偏食による壊血病の2歳例
■著者
田附興風会医学研究所北野病院小児科 花見 洋太朗 阿部 純也 荒井 篤 米田 徳子 緒方 瑛人 山下 純英 秦 大資
■キーワード
壊血病, ビタミンC, 偏食, 野菜, 果物
■要旨
ビタミンCの欠乏症である壊血病は食事環境が改善された現代では稀である.今回,過度の偏食により壊血病となった小児の1例を経験した.下肢痛・歩行障害を主訴とし,画像所見から骨髄炎・悪性疾患を疑ったため,PET-CT・骨シンチ・骨髄検査などの精査を追加したが有意な所見を得られなかった.追加の病歴聴取で,児には野菜・果物を全く摂取しない極度の偏食があることが分かり,また歯肉出血や顕微鏡的血尿など出血傾向を伴っていたため壊血病を疑った.血中のビタミンC濃度が検出感度以下であり,ビタミンC補充後に臨床症状の著明な改善を認めたことから壊血病の診断に至った.近年では壊血病は稀な疾患であり,また本疾患の臨床像が認識されていないことから,過剰な検査や誤診に繋がっている.食事歴を含めた壊血病の特徴を把握しスムーズに診断・治療に繋げることが重要である.
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【論策】
■題名
小児周産期医療と自衛隊による災害時医療支援活動の連携
■著者
陸上自衛隊西部方面衛生隊 武 純也 大川 貴司
■キーワード
熊本地震, 自衛隊, 災害医療, 小児仮設救護所, 防災訓練
■要旨
平成28年熊本地震における自衛隊の医療支援活動から,小児周産期医療との連携の在り方について考察した.自衛隊は,陸海空自衛隊を一元化して運用する統合任務部隊(JTF)を編成して災害派遣活動を実施した.急性期には省庁間協力によりDMAT等の医療スタッフを広域輸送し,プッシュ型支援として,避難所における入浴・給水支援と連接した救護所診療を速やかに実施した.亜急性期以降はJTF医務官が医療支援全般を統制し,熊本県災害対策本部と連携したニーズに基づくプル型支援へと移行した.その中で小児仮設救護所での診療は,自衛隊の野外医療施設と民間の小児医療スタッフが共同して医療を提供した初めての取り組みであり,災害時小児周産期リエゾンが大きな役割を果たした.また,病院避難においては自衛隊救急車及び航空機の機動力を活用して九州各県へ患者を搬送することができた.
このように自衛隊の野外施設や航空機を含めた輸送機材は,大規模災害時の小児・周産期医療においても大きな戦力であり,今後は災害時小児周産期リエゾンを中心とした実効的な医療連携要領を確立させることが求められる.そのためには,地域において防災訓練等の医療連携の場を活用して積極的に顔の見える関係を構築する努力が必要であり,民間の災害支援組織と自衛隊衛生科組織の双方がカウンターパートを明確にしておくことが,即応性が求められる状況において重要である.
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