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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:18.6.18)
第122巻 第6号/平成30年6月1日
Vol.122, No.6, June 2018
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日本小児感染症学会推薦総説 |
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長谷川 俊史,他 999 |
原 著 |
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吉田 丈俊,他 1010 |
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布施 茂登,他 1018 |
症例報告 |
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藤野 修平,他 1024 |
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玉井 資,他 1031 |
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本間 あおい,他 1036 |
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岡崎 咲栄,他 1043 |
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梶 恵美里,他 1047 |
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竹原 広基,他 1053 |
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西田 圭吾,他 1057 |
論 策 |
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大山 昇一,他 1064 |
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竹本 康二,他 1070 |
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江原 朗,他 1075 |
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地方会抄録(和歌山・山形・滋賀・山梨・甲信・宮城・群馬・愛媛・広島・山口・鹿児島・福岡)
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1082 |
専門医にゅ~す No. 16 |
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1134 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻5号目次
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1142 |
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1145 |
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1146 |
【原著】
■題名
3歳児Bayley発達検査による先天性心疾患児と極低出生体重児の発達予後
■著者
富山大学附属病院周産母子センター新生児部門1),富山大学小児科2) 吉田 丈俊1) 平岩 明子2) 伊吹 圭二郎1) 牧本 優美1) 猪又 智実1) 田村 賢太郎1) 川崎 裕香子1) 小澤 綾佳2) 廣野 恵一2) 市田 蕗子2)
■キーワード
Bayley発達検査, 先天性心疾患児, 極低出生体重児, 発達予後, 手術
■要旨
【目的】当院NICUに入院した心臓手術を施行した先天性心疾患児と極低出生体重児における,3歳での発達の特徴を明らかにする.
【対象と方法】2005年から2013年までに当院NICUへ入院して3歳時にBayley乳幼児発達検査―第3版(Bayley検査)を受けた先天性心疾患(CHD)児67名,極低出生体重(VLBW)児67名とコントロール群として健常児81名を対象として各群を比較検討した.CHD児は最終心室形態で単心室群と二心室群に分け,VLBW群は出生体重1,000 g未満群と1,000~1,499 g群の2群に分けて発達スコアを比較した.
【結果】Bayley検査結果は,認知,言語,運動すべての尺度においてCHD児とVLBW児の発達スコアは健常児よりも有意に低値であった.正常下限スコアを85とすると,CHD児の80%,VLBW児の75%が正常範囲内であった.CHD児とVLBW児の発達スコアはほぼ同じであった.CHD児では,単心室群が言語と粗大運動において有意に低スコアであった.VLBW群の出生体重による比較では両群に有意差は無かった.
【結論】手術を受けたCHD児とVLBW児は3歳時に同程度の発達遅延を認めた.特に,単心室群が言語と粗大運動において発達遅延が著明であった.CHD児,VLBW児共に神経発達遅延のハイリスク児であるため,わが国でも統一された発達評価や介入プログラムの導入が望まれる.
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【原著】
■題名
川崎病治療前の冠動脈拡大と冠動脈瘤形成の危険因子
■著者
NTT東日本札幌病院小児科 布施 茂登 森 俊彦 黒岩 由紀 平川 賢史 實川 友美 西野 瑛理
■キーワード
川崎病, 冠動脈後遺症, ステロイド治療, 冠動脈径, Zスコア
■要旨
背景)川崎病の冠動脈後遺症の危険因子は,免疫グロブリン不応が重要であるが,川崎病治療前に冠動脈拡大を認めることがある.川崎病治療前の冠動脈拡大が冠動脈後遺症の危険因子か否かを検討した.対象・方法)2005年1月から2016年12月まで当院に入院した川崎病患者436名を対象とした.心エコーにより右冠動脈,左冠動脈主幹部,前下行枝,回旋枝の冠動脈径を計測し,これらのZスコアを算出し,その最大値をZmax,治療前のZmaxをpreZmax,治療後のZmaxをpoZmaxとした.Zmax 2.0以上を冠動脈拡大とした.preZmax 2.0以上の症例とpoZmax 2.0以上の症例を比較し,poZmax 2.0以上の症例の危険因子を検討した.結果)冠動脈径はpreZmaxが-1.6~8.3(中央値1.1)poZmaxは-2.1~7.0(中央値0.3)に低下した.poZmaxが2.0以上の危険因子をpreZmax 2.0以上にて検討し,男児,群馬スコア8点以上,preZmax 2.0以上が候補となった.性別,群馬スコアにて補正し,preZmax2.0以上がpoZmax2.0以上の危険因子と考えられた.(オッズ比18.8,95%信頼区間4.07~86.9,p=0.00017)結語)川崎病治療前にすでに冠動脈が拡大している症例では,治療後の冠動脈後遺症の危険性が高いと思われる.
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【症例報告】
■題名
腹部コンパートメント症候群を来した新生児・乳児消化管アレルギー
■著者
国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター新生児科1),同 教育研修部2),同 生体防御系内科部アレルギー科3) 藤野 修平1) 丸山 秀彦1) 甘利 昭一郎1) 藤永 英志1) 和田 友香1) 長澤 純子1) 塚本 桂子1) 有里 裕生1)2) 宮地 裕美子3) 野村 伊知郎3) 伊藤 裕司1)
■キーワード
新生児・乳児消化管アレルギー, Clostridium感染症, 腸管気腫症, 腹部コンパートメント症候群, 腸管拡張期血流の逆転
■要旨
緒言:新生児・乳児消化管アレルギー(消化管アレルギー)が背景にありClostridium感染による腸管気腫症と腹部コンパートメント症候群(ACS)を来した女児例を経験した.
症例:在胎32週,1,068 gで出生した生後3か月の女児.キアリ奇形II型,総肺静脈還流異常症の術後で,Segmental dilatation of intestineに対し人工肛門造設術後であった.
日齢111に胆汁性嘔吐,腹部膨満,粘血便が出現した.CRP上昇,腸管気腫,血液・腹水培養からのClostridium属検出より,同菌による腹膜炎,敗血症と診断した.その翌日に腹部膨満,呼吸障害,乏尿を認め,膀胱内圧上昇15 mmHg(基準値:10 mmHg以下)からACSと診断した.超音波検査で腸管拡張期血流の逆転を認めた.サイロ造設術により症状と腸管血流の逆転は改善した.後日ACS発症以前の小腸粘膜病理で好酸球浸潤が判明し,消化管アレルギーが背景にあったと診断した.以後はアミノ酸乳のみを使用して症状の再燃なく経過した.
考察:消化管アレルギーによる腸管粘膜障害を背景として,Clostridium感染が加わり,ACSを発症したと考えられた.乳児の重篤な腸管感染症に遭遇した際,背景に消化管アレルギーを考えることが重要である.また腹部超音波検査での腸管拡張期血流の逆転はACS診断の手がかりとなる可能性がある.
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【症例報告】
■題名
心室中隔欠損症閉鎖術後14年経過し歯列矯正中に発症した感染性心内膜炎
■著者
杵築市立山香病院小児科1),大分大学医学部小児科学講座2),同 心臓血管外科学講座3) 玉井 資1) 武口 真広2) 半田 陽祐2) 宮原 弘明2) 久我 修二2) 首藤 敬史3) 井原 健二2)
■キーワード
心室中隔欠損症, 感染性心内膜炎, 歯列矯正, 人工パッチ閉鎖術, 黄色ブドウ球菌
■要旨
【緒言】残存短絡のない心室中隔欠損症(以下VSD)の術後遠隔期に感染性心内膜炎(以下IE)を発症するリスクは健常人と同程度とされており,国内外の診療ガイドライン上は予防的処置の範囲外である.今回,VSD術後14年目で歯列矯正中にIEを発症した症例を経験した.
【症例】15歳男児.1歳6か月時に漏斗部VSDに対して人工パッチ閉鎖術を施行され,以後は3年に1度の定期観察中であった.13歳6か月から歯科矯正のため矯正装具の装着が開始された.15歳時に急性経過でIEを発症し,外科的疣贅除去術と抗菌剤投与が行われた.疣贅からはペニシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出された.VSD根治術後14年目にIEを発症した原因としては,歯科矯正による口腔内衛生の悪化による菌血症状態,術後の軽度肺動脈弁逆流に伴い微少乱流が潜在していた可能性,乱流に伴う心内皮損傷部位に人工パッチが使用されておりブドウ球菌が付着し易かったことが推察された.
【結論】残存短絡がないと判断されるVSD閉鎖術後の長期経過観察中であっても,重症細菌感染を疑う場合はIEを鑑別に挙げる必要がある.歯列矯正装具の装着を含めた歯科処置や乱流を生じうる術後心臓内の血流変化に特に注意し,丁寧に病態を把握し経過観察する必要性が示唆された.
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【症例報告】
■題名
IgAおよびIgGサブクラス欠損症としてフォローされていたICF症候群の姉妹例
■著者
総合病院土浦協同病院小児科1),東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野2),同 茨城県小児・周産期地域医療学3) 本間 あおい1) 金兼 弘和2) 廣木 遥2) 岡野 翼2) 谷田 けい2) 今井 耕輔3) 高木 正稔3) 渡辺 章充1) 渡部 誠一1) 森尾 友宏2)
■キーワード
ICF症候群, IgA欠損症, IgGサブクラス欠損症, 顔貌異常, 染色体検査
■要旨
ICF(immunodeficiency-centromeric instability-facial anomalies:免疫不全―動原体不安定性―顔面奇形)症候群は,免疫不全,動原体不安定性,顔貌異常を3主徴とする稀な原発性免疫不全症であり,常染色体劣性遺伝形式をとる.一方,IgAおよびIgGサブクラス欠損症は抗体産生不全症の一つであるが,責任遺伝子として明確に定義されておらず,詳細な原因は不明である.今回長期間にわたりIgAおよびIgGサブクラス欠損症としてフォローされていた姉妹例を,新たにICF症候群と診断した.反復感染を認める姉妹で,両者とも血清IgAおよびIgG2の低下を認め,幼児期から20年以上免疫グロブリン補充療法を受けていた.姉妹例であることから何らかの遺伝子変異を疑い,全エクソーム解析を行ったところ,二人ともDNMT3B遺伝子のホモ接合性変異が認められた.そこで染色体検査を行ったところ,動原体不安定性が確認され,ICF1と診断した.姉妹とも顔貌異常は軽微であった.ICF症候群は顔貌異常が軽微なことがあり,臨床診断が困難な場合が少なくない.易感染を伴うIgAおよびIgGサブクラス欠損症では,ICF症候群も考慮し染色体検査を行うべきである.顔貌異常が軽微なICF症候群の診断においては全エクソーム解析による診断が有用と考えられる.
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【症例報告】
■題名
性腺モザイク発生によると考えられるOTC欠損症の女児例
■著者
地域医療機能推進機構徳山中央病院小児科1),国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター小児科2),国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室3) 岡崎 咲栄1) 立石 浩1) 原 圭一2) 但馬 剛3) 内田 正志1)
■キーワード
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症, 性腺モザイク, 女性患者, X連鎖劣性遺伝病, 遺伝カウンセリング
■要旨
症例は嘔吐,不機嫌を主訴に受診し,トランスアミナーゼの上昇を認めた3歳の女児である.第1子がオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症で死亡している家族歴があったことから,本症例もOTC欠損症を疑った.母と第2子(男児)に遺伝子変異はなかったので第1子は新生突然変異と考え,本症例(第3子)に遺伝子検査をしていなかった.今回のエピソード後に実施した検査で第1子と同じOTC遺伝子変異(c.140 A>T(p.N471))が判明し,OTC欠損症と診断した.母にOTC遺伝子変異を認めないことから母の胚細胞のモザイク発生と推察した.OTC欠損症の女児の症状はX染色体の不活性化の程度により様々である.本家系例のような可能性も考慮して積極的に確定診断を行い,治療が必要な罹患者を見逃さないことが重要である.
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【症例報告】
■題名
難治性下痢を呈し,大腸多発憩室を合併した多発性内分泌腫瘍症2B型
■著者
大阪医科大学小児科1),市立ひらかた病院小児科2) 梶 恵美里1) 余田 篤1) 赤松 正野1) 奥平 尊1) 井上 敬介2) 青松 友槻1) 玉井 浩1)
■キーワード
MEN2B, 慢性下痢, 甲状腺髄様癌, 大腸多発憩室, Marfan症候群
■要旨
本報告例は,7歳時にクローン病として他院より紹介された慢性下痢の女児である.クローン病治療に抵抗し,12歳時に甲状腺超音波検査を機に多発性内分泌腫瘍症2B型(multiple endocrine neoplasia type 2B:MEN2B)と診断した.小児の慢性下痢の原因は過敏性腸症候群や乳糖不耐,炎症性腸疾患などが良く知られている.本症例では慢性下痢と多発憩室があり,しかも特徴的な容姿を伴っていた.慢性下痢と多発憩室,特異な容姿の鑑別疾患にMEN2Bを認識していれば診断は容易であったと反省される.小児科領域では難治性下痢の鑑別疾患としてMEN2Bはほとんどの成書に記載がなく,結果的に確定診断までに時間を要した.MEN2Bは希少疾患だが発症は小児期で,診断が遅れると癌転移により死亡する疾患であり,小児科領域での本疾患の周知と啓発が必要と考え報告する.
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【症例報告】
■題名
妊娠初期の梅毒血清反応陰性母体から出生した先天梅毒
■著者
太田西ノ内病院小児科 竹原 広基 絹巻 暁子 平野 瑤子 生井 良幸
■キーワード
先天梅毒, 梅毒血清反応陰性母体, Parrot仮性麻痺, Jarisch-Herxheimer反応, 母体梅毒スクリーニング検査
■要旨
今回,Parrot仮性麻痺等の典型的な先天梅毒の臨床症状を呈したものの,妊娠初期の母体梅毒反応が陰性であったがために先天梅毒の診断に時間を要した1例を経験した.症例は,日齢30,女児.母体は27歳,1経妊1経産.在胎13週の時点で,Rapid Plasma Reagin(RPR)陰性,Treponema pallidum(TP)抗体陰性であった.児は在胎36週6日,2,120 gで出生した.1か月健診で体重増加不良と活気不良を認め,四肢の動きはほぼなく筋緊張は低下していた.何らかの重症感染症を否定出来ず,ABPCとCTXの投与を開始した.入院8日目と13日目の母児の血清梅毒抗体検査の結果から先天梅毒と診断し,PCGを計14日間投与した.本邦では妊娠初期に梅毒スクリーニング検査を行っているが,初期のスクリーニング検査が陰性でその後に感染した母体は,現状では治療されない可能性が大いにある.今後先天梅毒の児に遭遇する機会が増える可能性が高く,先天梅毒の症状や治療経過等について知識を十分に持っておくことが必要である.また,長期予後について明らかにしていくことも今後の課題である.
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【症例報告】
■題名
ロタウィルス胃腸炎に急性膵炎を合併した2歳例
■著者
富山県立中央病院小児科 西田 圭吾 藤田 修平 二谷 武 五十嵐 登 畑崎 喜芳
■キーワード
ロタウィルス, 急性胃腸炎, 急性膵炎
■要旨
発熱,下痢・嘔吐,活気不良で来院した2歳男児.便迅速検査でロタウィルス陽性でありロタウィルス胃腸炎と診断し補液を行った.第5病日には活気改善し経口摂取も良好となったが,第6病日に腹痛,腹部膨満,腸蠕動減弱が出現した.第7病日に胃腸炎に伴う麻痺性イレウスと診断し絶食の上,スルバクタム/アンピシリン,パントテン酸投与を開始したが,症状は改善しなかった.第9病日,アミラーゼ291 U/L(P:92%,S:8%),リパーゼ507 U/L,エラスターゼ5,433 U/Lを認め,造影CTを施行したところ急性膵炎CT Grade 1であった.腹部症状が強く,急性膵炎に対してナファモスタット,ウリナスタチンの投与を開始し,麻痺性イレウスに対し第13病日よりプロスタグランジンF2αの投与を開始した.その後,自然排便,排ガスを認め腹部症状は改善,アミラーゼ低下も認めた.経口摂取開始後も腹部症状の再燃はなく第23病日に退院とした.第33病日の血液検査,腹部超音波検査では異常を認めず膵炎の再発も認めていない.
ロタウィルス胃腸炎経過中に強い腹痛・腹部膨満を認める場合,急性膵炎合併を考慮し検査治療を進める必要がある.
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【論策】
■題名
2016年秋のMRワクチン供給不足についての考察
■著者
彩の国予防接種推進協議会1),同 代表幹事2) 大山 昇一1) 小林 敏宏1) 小林 憲昭1) 川野 豊1) 水口 淳一1) 田中 秀朋1) 桃木 俊郎1) 草刈 章1) 原 朋邦1) 峯 真人2)
■キーワード
MRワクチン, 予防接種法, ワクチン供給, 流通在庫
■要旨
埼玉県において2016年9月ころから定期接種に用いるMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)の供給が滞った.その原因につき県内の小児科医,行政等の動きを分析するとともに,日本におけるワクチン供給体制について考察した.埼玉県内では過去数年間,MRワクチンはI期・II期ともにそれぞれ95%,92%前後の高い接種率で推移していた.ワクチンの安定供給のため,県内の行政,医師会,ワクチンメーカー,薬剤卸業者などが協調して対応していたが,9月以降にはMRワクチンが不足した.埼玉県医師会や県内の自治体等から埼玉県を通して厚生労働省に,また日本小児科医会から厚生労働省に対して対応を要望したが効果的な対策は取られなかった.日本のワクチン提供体制が脆弱であり,2016年夏に発生した他県での麻疹のアウトブレイクを契機にその問題点が表面化したものと推測された.定期接種以外の突発的なワクチン需要に対応できるよう,全国規模で強い拘束力を持つ協議会を作りワクチンの偏在を速やかに解消できるような緩衝システムの構築が必要である.また,MRワクチンに限らずワクチン行政全体に見直すべき問題点があると考えられ,国民全てを対象とした国家戦略としてのワクチン政策を見直すべき時期にあると思われる.
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【論策】
■題名
病院内で行う地域連携小児休日診療の取り組み
■著者
江南厚生病院こども医療センター 竹本 康二 西村 直子 尾崎 隆男
■キーワード
地域連携, 小児救急, 休日時間外診療, 小児科勤務医
■要旨
日本小児科学会は2004年に「わが国の小児医療提供体制の構想」を提言し,病院小児科の集約化と,小児救急体制は24時間365日をすべての地域小児科医で担当するという方針を掲げた.しかし,集約化された多くの病院で,学会が目指す小児科医数には未だ足りないのが現状である.江南厚生病院小児科(こども医療センター)は救急医療の充実と勤務医の負担軽減をめざし,2008年6月から当地域の小児科開業医の協力を得て,病院内で行う地域連携小児休日診療を開始した.
業務内容の骨子は(1)小児科開業医は当院内で休日日勤帯(9:00~17:00)の小児一次救急医療を行う.(2)小児科勤務医は365日の当直体制をとり,業務中の疑義に応じる.(3)二次救急医療は当直勤務医が行うとした.課題として(1)各地域の休日診療システムへの影響と他科開業医の負担増,(2)開業医への手当などの経費,(3)開業医の病院内での身分と医師賠償保険,(4)病院電子カルテへの対応などが挙げられたが,地域自治体および医師会の協力を得て解決することができた.
本制度は現在9年を経過し,参加小児科開業医8~9名,年度別1日平均受診者数は24.8~41.6人で安定して運用できている.当院小児科勤務医は休日時間外の一次救急医療から解放され,二次救急医療に専念できている.
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【論策】
■題名
市区町村の中心から20 km圏内の利用可能な小児科病床数
■著者
広島国際大学医療経営学部1),独立行政法人広島市立病院機構2) 江原 朗1) 松井 隆志2)
■キーワード
小児科, 病床機能, 診療科, 2ステップフローティングキャッチメントエリア法, 地理情報システム
■要旨
【背景】病院小児科は平成22年の2,737施設から平成27年の2,678施設へと減少したが,各市区町村から一定の距離圏内に存在する小児科病床数は不明である.一方,平成26年6月25日に医療介護総合確保推進法が公布され,病床機能報告制度が開始され,病棟ごとに診療科がわかるようになった.
【方法】平成26年度の病床機能報告に示された全国の小児科病床(単科病床および混合病床)の所在地と各市区町村の中心(人口重心:住民の居住地の緯度経度の平均値)の資料から,各市区町村の中心から20キロ圏内に存在する小児科病床数を地理情報システムで計算し,小児人口あたりの小児科病床数を求めた.混合病棟における小児科病床数は不明であるため,混合病床の100%,50%,10%が小児科病床であると仮定した.
【結果】混合病棟のうち,100%,50%および10%が小児科病床であると仮定した場合,20キロ圏内に存在する小児科病床数(単科病棟と混合病棟の合計)の全国値は4.15床/小児千人,2.85床/小児千人,1.81床/小児千人であった.関東や近畿では,北海道,東北,四国,九州沖縄よりも低い値であった.また,人口5千人未満の町村では他の人口規模の市区町村より低い値を示した.
【結論】各市区町村の中心から20キロ圏内の小児人口あたりの小児科病床数は関東,近畿といった地方,人口5千人未満の町村で少なかった.
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