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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:18.4.16)

第122巻 第4号/平成30年4月1日
Vol.122, No.4, April 2018

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日本外来小児科学会推薦総説

外来小児科学会と共に歩んだ歴史を振り返り,社会小児科学の新たな地平の開拓を願う

武内 一  709
日本小児呼吸器学会推薦総説

小児の遷延性咳嗽,慢性咳嗽に対する客観的評価の試み

平井 康太  720
日本小児栄養消化器肝臓学会推薦総説

小児領域におけるNST活動

惠谷 ゆり  728
原  著
1.

頭蓋骨縫合早期癒合症の早期診断における小児科医の役割

大門 尚子,他  742
2.

小児専門医療施設に入院した早発型・遅発型大腸菌菌血症の特徴

川上 沙織,他  748
症例報告
1.

左房粘液腫による多発性脳梗塞

赤羽 裕一,他  754
2.

全身の皮疹を呈しLangerhans細胞組織球症と疥癬の鑑別が困難であった乳児例

白山 理恵,他  760
3.

小児気管支喘息の急性増悪3例の肺音に関する検討

坂間 隆,他  767
4.

尿蛋白消失後に全身性エリテマトーデスと診断された抗核抗体陽性の特発性膜性腎症

大澤 一郎,他  774
5.

腟子宮留血症の4例

島田 綾,他  780
6.

腎尿路結石の自然排石を契機に診断に至った原発性高シュウ酸尿症2型

杉本 健悟,他  786
論  策
1.

愛媛県東予東部地区における医療圏域を越えた広域小児二次救急輪番体制の構築

西村 幸士,他  793
2.

海外の重症心身障害児(者)に対する医療的ケアの状況

曽根 翠,他  800

編集委員会への手紙

  806

地方会抄録(兵庫・東京・山口・青森・栃木・岡山)

  807
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告

大学病院及び関連病院における出産・育児中の勤務配慮の実態から見えるもの

  844

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2018年60巻3号目次

  849

雑報

  852

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 351

  854


【原著】
■題名
頭蓋骨縫合早期癒合症の早期診断における小児科医の役割
■著者
慶應義塾大学医学部周産期・小児医療センター1),同 小児科2),同 臨床遺伝学センター3),同 形成外科4),同 脳神経外科5)
大門 尚子1)2)  坂口 友理1)3)  武内 俊樹1)2)  松村 和哉1)2)  坂本 好昭1)4)  三輪 点1)5)  小 健次郎1)3)  高橋 孝雄1)2)

■キーワード
頭蓋骨縫合早期癒合症, 乳児健診, 早期発見, チーム医療
■要旨
 【目的】頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis;以下CS)の早期診断のために,一般小児科医が健診等で注意すべき点を明らかにする.
 【方法】対象は2012年1月1日から2015年8月31日の間に慶應義塾大学病院に受診したCS患者.診断の契機について診療録を用いて後方視的検討を行った.
 【結果】対象45名のうち,頭蓋骨縫合早期癒合のみを呈したCS(非症候群性CS)は28名,特異顔貌,多発奇形などを伴うCS(症候群性CS)は17名であった.両群間で,診断時年齢,男女比に有意差を認めなかった.最初に頭蓋形態異常に気づいた者は,症候群性CSでは全例(17例)で医師であったが,非症候群性CSでは57%(28例中16例)で親であった(p=0.005).すなわち,親が先に気づいた症例は全て非症候群性CSであった.
 【考察】頭蓋変形以外の診察所見(多発奇形,神経学的異常など)は,症候群性CSを疑う根拠として一般小児科医にも広く認知されている.一方,非症候群性CSの頭蓋変形の半数以上を,健診時に医師が見落としていた.CSの早期診断のためには,CSに特徴的な頭蓋変形パターンを一般小児科医に広く周知することが必要である.


【原著】
■題名
小児専門医療施設に入院した早発型・遅発型大腸菌菌血症の特徴
■著者
国立成育医療研究センター教育研修部1),同 感染症科2)
川上 沙織1)  庄司 健介2)  石黒 精1)  宮入 烈2)

■キーワード
早発型感染症, 遅発型感染症, 大腸菌感染症, 尿路感染症, 無脾症
■要旨
 大腸菌は新生児期や乳児期早期の重症細菌感染症の主要な原因菌であるが,発症時期による臨床像の違いや,菌血症をきたしやすい基礎疾患などの患者背景については不明な点が多い.今回,当院で経験した3か月未満の大腸菌による菌血症の症例を後方視的に検討した.2002年1月から2016年6月の期間中に血液培養あるいは髄液培養から大腸菌が検出された症例は24例認められ,アンピシリン耐性菌は全体の58%であった.生後1週間未満に発症した早発型が5例(21%),それ以降に発症した遅発型が19例(79%)であった.早発型では母体における前期破水を背景に出生した早産,低出生体重児の割合が多く(各40%),また,初期に明確な症状を認めるものは少なく,感染巣の明らかでない敗血症が多かった(60%).一方,遅発型では,尿路性敗血症(74%)が多く,膀胱尿管逆流症を含む腎尿路奇形を背景とする傾向がみられた.全症例のうち4例に心疾患を認めた.うち3例は無脾症や多脾症といった臨床的無脾症を合併し,発症時期に関わらず感染巣不明の敗血症を呈した.大腸菌菌血症により死亡したと考えられた症例は3例(13%)であった.後遺症を残した生存例は調べ得た範囲では認めなかった.乳児期早期の大腸菌菌血症は早発型と遅発型で異なる臨床像を呈し,背景となる基礎疾患に対する配慮が必要と考えられた.


【症例報告】
■題名
左房粘液腫による多発性脳梗塞
■著者
旭川医科大学小児科学講座
赤羽 裕一  中右 弘一  岡 秀治  梶濱 あや  東 寛

■キーワード
片麻痺, 脳梗塞, 心臓腫瘍, 左房粘液腫, 心臓超音波検査
■要旨
 患者は7歳男児.1年前より間欠的な下肢のしびれや脱力を自覚していた.その後で突然発症した左片麻痺のため近医に救急搬送後,当科に紹介された.当科初診時も左片麻痺のために立位不能であり,心臓超音波検査で左房内に巨大な腫瘤性病変を認めた.頭部MRIでは右視床と右後頭葉及び右前頭葉に拡散強調画像で高信号域を認め,MRAでは右後大脳動脈に高度狭窄を認めた.心臓腫瘍の一部,もしくは腫瘍に付着する壁在血栓が塞栓子となった急性期多発性脳梗塞と判断し,緊急腫瘍摘出術を行った.病理検査の結果は粘液腫であった.術後は継続的なリハビリテーションにより麻痺症状は改善し,新たな病変の出現もなく経過は良好である.
 小児の左房粘液腫による脳梗塞は非常に稀であるが,発症時に診断できなければその後の再梗塞や突然死を来し得る.しかしながら心不全症状や心雑音を認めないこともあるため診断に苦慮する例も少なくない.血清トロポニンの上昇は脳梗塞の原因が心原性であること示す可能性があり測定の意義がある.原因不明の小児の脳梗塞では鑑別として心臓腫瘍も念頭に置き,血清トロポニンの測定や心臓超音波検査を施行することが重要である.


【症例報告】
■題名
全身の皮疹を呈しLangerhans細胞組織球症と疥癬の鑑別が困難であった乳児例
■著者
産業医科大学小児科
白山 理恵  五十嵐 亮太  本田 裕子  吉田 卓矢  押田 康一  樋口 尚子  守田 弘美  佐藤 哲司  楠原 浩一

■キーワード
皮疹, Langerhans組織球症, LCH, 疥癬
■要旨
 Langerhans細胞組織球症(LCH)の皮膚病変と疥癬は臨床症状,皮膚組織診でよく似た所見を呈する.今回,皮疹と咳嗽を主訴に入院し,皮膚組織診の結果と全身精査の結果からLCHを強く疑い化学療法を開始したが,のちに乳児疥癬があったと判明した1か月女児を経験した.LCHを疑った際には疥癬を念頭に置き,ダーモスコピーや角質層の直接鏡検を積極的に行うことが必要である.本児の場合は,皮膚型LCHと誤診された疥癬の過去の症例とは異なり,肺病変や肝機能障害を合併していたことから全身型LCHを疑い治療を先行した.しかし,電顕でBirbeck顆粒は確認できておらず確定診断には至らなかった.疥癬増悪のため化学療法は中止したが,肺病変,肝機能障害は改善し,2年間LCHの再燃なく無治療外来経過観察を継続している.今後も慎重なフォローアップが必要であると考える.


【症例報告】
■題名
小児気管支喘息の急性増悪3例の肺音に関する検討
■著者
東海大学医学部八王子病院小児科1),東海大学医学部専門診療学系小児科学2),秦野赤十字病院小児科3)
坂間 隆1)  額賀 真理子2)  兵頭 裕美3)  煙石 真弓2)  田端 秀之2)  平井 康太1)  加藤 政彦2)  望月 博之2)

■キーワード
小児, 気管支喘息, 急性増悪, 喘鳴, 肺音解析
■要旨
 近年の肺音解析法の進歩から,臨床的応用についての報告が注目される.我々は,小児の気道収縮の存在が評価できる肺音解析法を確立することを目的に,独自の解析法により3年間の研究を行った.この研究において,少数ではあるが喘息の急性増悪時におけるβ2刺激薬の吸入前後の肺音の変化が観察できた.対象は自覚症状はないが喘鳴の確認された喘息の3症例で,これまでの肺音解析の報告同様,サウンドグラムによる喘鳴の確認と,吸気における肺音スペクトラムのパラメータにおけるβ2刺激薬の吸入前後の変化を,肺機能検査の変化とともに検討した.3症例とも,呼気性喘鳴は周波数バンドとしてサウンドグラムに描出され,β2刺激薬吸入後に著しい消退が認められた.一方,β2刺激薬吸入前後での肺音スペクトラムの変化も確認された.すなわち,A3/ATやB4/AT,RPF50,RPF75において,全症例で上昇が認められたが,これはいずれも高周波数帯域が減少したことを示すものである.この変化は,小児の気道可逆性を評価する上で興味深い結果と思われた.


【症例報告】
■題名
尿蛋白消失後に全身性エリテマトーデスと診断された抗核抗体陽性の特発性膜性腎症
■著者
埼玉県立小児医療センター腎臓科1),同 病理診断科2)
大澤 一郎1)  齊藤 真人1)  西野 智彦1)  掛川 大輔1)  櫻谷 浩志1)  櫻井 俊輔1)  村上 仁彦2)  藤永 周一郎1)

■キーワード
膜性腎症, 全身性エリテマトーデス, 抗核抗体
■要旨
 初回腎生検時は抗核抗体陽性のみ認め特発性膜性腎症(idiopathic membranous nephropathy:IMN)と診断したが,尿蛋白消失後4年後に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)と診断した女児例を報告する.14歳時の学校検尿で尿蛋白を認めた.抗核抗体陽性であったが他にSLEを示唆する所見は認めず,腎生検の結果からIMNと診断した.アンジオテンシンII受容体拮抗薬を開始し,尿蛋白は8か月後に消失した.しかし,尿蛋白消失から4年後に発熱,蝶形紅斑,関節痛を認め,検査所見からSLEと診断した.ステロイドパルス療法で初期治療後,プレドニゾロン内服で寛解を維持している.SLEの中には腎症のみが先行する例があり,特に女児のIMNでは長期の経過観察が重要である.


【症例報告】
■題名
腟子宮留血症の4例
■著者
神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科1),東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科2)
島田 綾1)2)  室谷 浩二1)  花川 純子1)  朝倉 由美1)  後藤 正博2)  長谷川 行洋2)  安達 昌功1)

■キーワード
腟子宮留血症, 原発性性腺機能低下症, 移植片対宿主病, 性分化疾患
■要旨
 腟子宮留血症は,腟や子宮腔内に血液貯留が生じる状態を指す.女児における腹痛や急性腹症の原因となるが,小児科領域では広く認知されておらず,診断の遅れが問題となる.今回,われわれは小児期から若年成人期における腟子宮留血症の4例を経験した.基礎疾患は3例が広義の性分化疾患(DSD),1例が骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)による陰唇癒着であった.腟子宮留血症の発症時期は2例が月経発来前,1例が自然月経発来2か月後,1例が女性ホルモン投与による初回の消退出血から3か月後であった.DSDやGVHDにより,先天的あるいは後天的に,腟や子宮の狭窄や陰唇癒着がおき,血液貯留が生じたと考えられる.腟や子宮狭窄の原因となりうるような基礎疾患をもつ児では,思春期開始後や女性ホルモン補充療法開始後に腟子宮留血症のリスクが高まるため,定期的な血中エストラジオール値測定,超音波検査による子宮形態や内膜成熟の評価を行うことが重要である.また,リスクを有する女児が腹痛を訴えた際には,腟子宮留血症を鑑別に挙げ,早期診断し適切な処置を行うことが大切である.


【症例報告】
■題名
腎尿路結石の自然排石を契機に診断に至った原発性高シュウ酸尿症2型
■著者
野洲病院小児科1),滋賀医科大学小児科2),日本疾患メタボローム解析研究所3)
杉本 健悟1)  濱中 佳奈1)  平野 有加1)  坂井 智行2)  久原 とみ子3)  丸尾 良浩2)

■キーワード
グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素, 尿中グリセリン酸, 多発性腎尿路結石, 尿メタボローム解析, 遺伝子検査
■要旨
 血尿や尿路感染症を伴わずに腎尿路結石の自然排石を契機に診断された原発性高シュウ酸尿症2型の1男児例を経験した.原発性高シュウ酸尿症2型の本邦における報告例は5例のみである.いずれも乳幼児期に初発症状がみられ,その内訳は,4例が血尿,残りの1例が尿路感染症であった.本症例はこれらの臨床症状を認めず,腎尿路結石のオムツ内への自然排石が初発症状であった.初診時に行った腹部超音波検査で両側の腎結石を認め,結石分析ではシュウ酸カルシウムが主成分であった.また,尿生化学検査で尿中シュウ酸の異常増加を認め,尿メタボローム解析では尿中グリセリン酸の異常増加が確認された.更に遺伝子検査では,グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素(glyoxylate reductase/hydroxypyruvate reductase,以下,GRHPR)遺伝子(GRHPR)のホモ接合性変異(c.904C>T)を認めたため,原発性高シュウ酸尿症2型と診断した.本疾患は非常に稀な疾患であるが,本症例のように乳幼児期に多発性の腎尿路結石を認めた場合,本疾患を念頭に置いた検査を行い,早期診断することが重要である.


【論策】
■題名
愛媛県東予東部地区における医療圏域を越えた広域小児二次救急輪番体制の構築
■著者
四国中央病院小児科1),住友別子病院小児科2),西条中央病院小児科3),愛媛県立新居浜病院小児科4),愛媛大学大学院医学系研究科地域小児・周産期学5),同 医学系研究科小児科学6)
西村 幸士1)4)6)  日野 ひとみ1)  竹本 幸司2)  大藤 佳子3)  楠目 和代4)6)  檜垣 高史5)  石井 榮一6)

■キーワード
小児二次救急, 地域医療, 医師不足, 勤務医, 集約化
■要旨
 【背景】愛媛県東予東部地区は3市(新居浜市・西条市・四国中央市)で構成されるが,医師不足および,各市独自の小児救急医療体制の維持のため何らかの対策が必要であった.そこで平成25年8月より東予東部地区において広域小児二次救急輪番体制が開始された.今回1年経過後の結果と意義について考察した.【方法】愛媛県立新居浜病院(新居浜市),住友別子病院(同市),西条中央病院(西条市),四国中央病院(四国中央市)の4病院が3班に分かれ交代制で小児二次救急輪番を担当する.また小児一次救急は各市での対応とする.【結果・考察】行政区分を越えた体制構築は愛媛県において初めての試みであったが,各市の医師会や行政・消防の協力により導入できた.開始後は救急搬送病院の決定がスムーズになり重症患者の診察が迅速になった.また医師の拘束時間(オンコールや当直の回数など)は減少した.今後の課題として,統一した一次救急医療の整備,外科疾患への対応,患者教育などを行う必要がある.【結論】医療圏域を超えた小児二次救急輪番体制の構築は医師不足の地域において有用なモデルになりうる.


【論策】
■題名
海外の重症心身障害児(者)に対する医療的ケアの状況
■著者
東京都立東大和療育センター1),くまもと芦北療育医療センター2)
曽根 翠1)  松葉佐 正2)

■キーワード
重症心身障害児(者), 医療的ケア, 海外
■要旨
 【はじめに】重症心身障害児(者)に対する海外の医療的ケアの状況を調査した.
 【対象と方法】2014年,国際知的・発達障害学術協会 重度重複障害特別研究グループに所属する研究者にアンケート調査を実施した.また,アメリカ合衆国,カナダ,イギリスにおいて介護職による医療的ケアの実施状況をウェブサイトから調査した.
 【結果】8か国から返答を得た.口・鼻腔吸引は両親・他の家族・保育士・介護士・教師,経管栄養は両親・他の家族・保育士・介護士・教師,吸入・ネブライザーは両親・他の家族・保育士・介護士・教師で,気管内吸引は両親・保育士・介護士・教師が実施していた.家族以外の非医療職が医療的ケアを実施するためにライセンス取得を要する国は3か国で,医療的ケア実施者の確保は3か国で容易,2か国で困難であった.アメリカ合衆国,カナダ,イギリスの3か国とも,介護職による医療的ケア実施のために,看護師による介護職の指導・監督継続が必須条件であった.実施されている医療的ケアの種類はどの国も日本より多く,個別に設定されていた.
 【考察】重症心身障害児(者)に対する非医療職による医療的ケアについて単純な国際比較は困難と考えられた.日本における介護職の医療的ケアをさらに充実させるには,看護師が継続的に指導・監督できる制度と看護師の負担軽減策を同時に策定・実施することが重要と考えられた.

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