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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:18.1.16)

第122巻 第1号/平成30年1月1日
Vol.122, No.1, January 2018

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第120回日本小児科学会学術集会
  教育講演

子どもの機能性消化管障害〜小児心身医学的解釈〜

奥見 裕邦  1
日本小児神経学会推薦総説

結節性硬化症に合併するてんかん

岡西 徹,他  8
原  著
1.

重症心身障害児(者)施設における短期入所の課題

新井 奈津子,他  19
2.

基質拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌による尿路感染症の増加

堀江 昭好,他  27
3.

子どもの外傷予防に対する小児医療従事者の意識

岸部 峻,他  35
4.

小児入院患者に対する漢方薬治療

道端 伸明  44
症例報告
1.

完全皮下植込み型除細動器を使用したQT延長症候群

有山 雄太,他  49
2.

自己免疫性溶血性貧血を契機に診断されたCTLA-4異常症

岩脇 史郎,他  55
3.

ヘモグロビンC症を合併した1型糖尿病

木下 典子,他  62
4.

著明な肝・膵脂肪変性を呈し,呼吸器症状のない囊胞性線維症

星 雄介,他  67
5.

洗濯用パック型液体洗剤誤飲による咽頭・喉頭浮腫

島 俊介,他  74

地方会抄録(高知・滋賀・福島・宮城・東海・群馬・佐賀・長崎・中部)

  80
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 73 エタノールを含有する洗口液を誤飲したことによる急性アルコール中毒

  121

No. 74 ビーズ型芳香消臭脱臭剤による気管支閉塞

  123
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 主催

第8回園医・看護職・保育士のための研修会 報告

  126
日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会・日本小児期外科系関連学会協議会 共催
  第2回乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会Part III

〜一歩進んだ乳幼児健診をめざして〜報告

  127

お知らせ 専門医試験結果

  128
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方─私の場合17

目標は“細くとも長く続けること”

  130

日本小児科学会理事会議事要録

  131

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2017年59巻12号目次

  137

平成30年度日本小児科学会分科会開催予定

  139

日本小児保健協会のご案内

  140

雑報

  141


【原著】
■題名
重症心身障害児(者)施設における短期入所の課題
■著者
社会福祉法人三篠会重症児・者福祉医療施設ソレイユ川崎1),聖マリアンナ医科大学小児科学講座2)
新井 奈津子1)2)  柏井 恭子1)  金 義孝1)  中田 幸之介1)  江川 文誠1)  宇田川 紀子2)  山本 仁2)

■キーワード
重症心身障害児(者), 短期入所, 超重症児(者), 追加医療処置, 医療ケア
■要旨
 背景:近年,在宅重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))の増加に伴い短期入所の需要は高まっている.しかし超重症児(者)と準超重症児(者)の短期入所は,緊急医療を必要とする問題を生じやすく,対応が困難な場合もある.今回,当施設における短期入所の実態を調査し,安全性を高めるための対策を考案した.
 対象と方法:2012年4月から2016年12月の期間に短期入所を利用した重症児(者)169名を対象に,基礎疾患,重症度,年齢,利用状況,追加医療処置の実施状況を調査した.
 結果 (1)短期入所の延べ利用件数は624件で,それらは年次毎に急増し,また超重症児(者)と準超重症児(者)の利用率も上昇していた.(2)624件中16件が追加医療処置を要する合併症を発症したが,多くは18歳以下の超重症児と準超重症児の初回利用例であった.合併症は急性呼吸障害が最多であり,それらの70%に1週間以上の入院治療を要した.
 考察:当施設の現状では,増加する重症児(者)に対して,詳細な情報収集や看護及び介護の知識の向上を図ることなどの質的向上が,即時性の有る医療安全対策である.また“小児”,“超重症児(者)と準超重症児(者)”の,“初回利用時”に病状が悪化する可能性があり,特に注意を払うべき対象であると考えた.加えて入所児(者)の急変時に迅速対応を可能とする関連病院の存在はきわめて重要である.


【原著】
■題名
基質拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌による尿路感染症の増加
■著者
島根県立中央病院小児科1),同 新生児科2)
堀江 昭好1)  小池 大輔1)  平出 智裕1)  末光 香恵1)  成相 昭吉1)  北村 律子2)  加藤 文英2)

■キーワード
上部尿路感染症, Extended spectrum β-lactamase産生大腸菌, アンチバイオグラム, flomoxef, 多文化共生時代
■要旨
 島根県出雲地域では2016年に入り,初発の上部尿路感染症(上部UTI)による入院患者数の急激な増加を認めた.初発にも関わらず起因菌はExtended spectrum β-lactamase(ESBL)産生大腸菌が68%を占めていた.
 ESBL産生大腸菌に対して薬剤感受性で耐性を示す抗菌薬で治療を開始した場合,治療開始から解熱までの時間が50.78±37.78時間と有意に長かった.対策としてflomoxef(FMOX)による初期治療を開始したところ,解熱までの時間が18.78±14.62時間と有意差をもって短縮された.
 今後,ESBL産生菌による感染症が更に増加することも予想され,初発の上部UTIでもESBL産生菌による感染症を念頭に診療にあたる必要がある.その際には各施設のアンチバイオグラムを参考に適切な抗菌薬を選択することで,更なる耐性菌の増加を防ぐことも重要である.


【原著】
■題名
子どもの外傷予防に対する小児医療従事者の意識
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科1),同 臨床研究支援センター2),東京小児臨床研究ネットワーク3),国立国際医療研究センター国際医療協力局4)
岸部 峻1)  森川 和彦2)3)  友常 雅子2)  井上 信明1)4)

■キーワード
小児, 外傷予防, 意識調査, アドボカシー, 研修医教育
■要旨
 【緒言】子どもの外傷予防は重要な問題である.小児科医自身の,子どもの外傷予防に関する知識や意識を明らかにするため,調査を行った.【方法】2014年8月,国内外の健診時などで使用されているチェックリストをもとに,子どもの外傷予防に関するアンケートを作成し,調査を行った.都立病院に勤務している医師歴3年目以上の小児医療に関わる医師を対象とし,そのうち内科系医師の回答結果を解析した.【結果】該当医師139人から回答を得た.知識を問う15項目のうち10項目で浸透率は半分以下であり,その中でも特に“ブドウの丸飲みを注意する年齢”,“設定するべき蛇口の湯温”,“ヘルメット着用努力義務年齢”,“火災探知機の検査頻度”の4項目は浸透率が2割以下であった.浸透率や指導実施可能性に関連する,回答者の背景因子の検討では,統計学的有意差を認めた項目は少なかった.外傷予防に対して93%が前向きな姿勢であったが,一方で“情報を入手・教育を受ける機会・場所は無い”と77%が回答した.適切な教育を受ける機会として“後期研修”と回答する人が多かった.【結論】小児科医は,子どもの外傷予防に対する知識が不十分であった.外傷予防に対する意識は高いが,情報を入手する機会が不足していると感じていた.小児科医に求められるアドボカシーの一つとして,外傷予防活動は重要である.今後,後期研修を中心とする外傷予防教育システムの構築が必要である.


【原著】
■題名
小児入院患者に対する漢方薬治療
■著者
東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座
道端 伸明

■キーワード
漢方薬, 大建中湯, 六君子湯, 五苓散, 疫学
■要旨
 漢方薬は小児にも広く使用されているが,小児入院患者での使用実態は十分には明らかになっていない.本研究はDiagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて20歳未満の小児入院患者に使用された漢方薬の使用状況を明らかにすることを目的とした.対象は2014年度一年間にDPC病院に入院した20歳未満の全小児患者とした.患者の属性別漢方薬の処方割合,処方数の多い漢方薬,漢方薬が処方された患者にはどの診断名が多く記録されたかを調べた.また,漢方薬が多く処方されていた診断名・状態について調べた.調査期間にのべ744,917人の小児入院があり,そのうち1.6%が何らかの漢方薬を使用していた.年齢が上がる毎に有意に処方割合が増加していた(p<0.001).新生児では,出生直後からも漢方薬が使用されていた.大建中湯,六君子湯,五苓散の順に処方数が多かった.気管切開などデバイスがある患児と先行研究で漢方薬の有効性が示されている疾患により多く漢方薬が処方されていた.本研究により,小児入院患者にも広く漢方薬が処方されていることが分かった.成人同様に小児でも大建中湯,六君子湯,五苓散といった消化器症状に効果のある漢方薬が多く処方されていた.デバイスがある児は寝たきりであることが多く消化器症状を合併しやすいため漢方薬が多く処方されている可能性が示唆される.


【症例報告】
■題名
完全皮下植込み型除細動器を使用したQT延長症候群
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 循環器科2),東京都立多摩総合医療センター循環器内科3)
有山 雄太1)  三浦 大2)  加藤 賢3)  宮田 功一2)  永峯 宏樹2)  大木 寛生2)

■キーワード
完全皮下植込み型除細動器(S-ICD), 小児, QT延長症候群, 致死性不整脈
■要旨
 完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)は皮下に植え込んだジェネレーターと皮下トンネル内のリードにより,直接心臓に触れずに除細動を行う新しい装置である.本邦では2016年に販売開始以降,成人での使用例は増えているが小児例の報告はない.我々は11歳男児にS-ICDを植え込んだので報告する.QT延長症候群1型の診断で運動制限とプロプラノロール内服で管理中に,走った際にtorsade de pointesから心室細動を呈し,電気的除細動後に自己心拍再開し搬送された.神経的後遺症はなく回復したため植込み型除細動器を植込む方針とし,小児例での利点を考慮しS-ICDを選択した.活動時の洞頻脈による誤作動のリスクを下げる目的でトレッドミル検査によるスクリーニングを行い,成長によるリードの位置異常や牽引による疼痛予防目的に,固定に吸収糸を用いてS-ICDを植込んだ.植込み後8か月間は疼痛や除細動なく経過しており,吸収糸でのリード固定でリード牽引による疼痛を軽減できることが示唆された.S-ICDは,耐久性が高くリード不全が少なく,感染管理が容易で,カテーテル操作時の被曝が不要な点で小児に適するが,成長に伴うジェネレーターやリードの位置異常,体格に比してジェネレーターが大きく疼痛や血腫をきたしやすいという問題点がある.今後小児での使用増加が予想され,症例の蓄積により適切な管理法を確立する必要がある.


【症例報告】
■題名
自己免疫性溶血性貧血を契機に診断されたCTLA-4異常症
■著者
群馬大学医学部附属病院小児科1),国立成育医療研究センター血液内科2),同 集中治療科3),東京医科歯科大学小児科4),桐生厚生総合病院小児科5)
岩脇 史郎1)  大和 玄季1)  柴 徳生1)  村松 一洋1)  川島 淳1)  小板橋 実希子1)  奥野 はるな1)  中舘 尚也2)  西村 奈穂3)  星野 顕宏4)  今井 耕輔4)  桑島 信5)  金兼 弘和4)  荒川 浩一1)

■キーワード
CTLA-4異常症, 自己免疫性溶血性貧血, 慢性免疫性血小板減少性紫斑病, 急性脳症
■要旨
 Cytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA-4)は免疫応答における負の制御因子である.CTLA-4異常症はCTLA4遺伝子の変異が原因で発症する原発性免疫不全症である.われわれは自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)を契機に診断に至ったCTLA-4異常症を経験した.症例は15歳男子.慢性免疫性血小板減少性紫斑病,肺炎の既往があり,家族歴は認めなかった.今回,発熱,意識障害,血液検査でHb 3.5 g/dLと高度の貧血を認め当院へ搬送された.身体所見,血液免疫生化学検査の結果からAIHAと診断し,プレドニゾロン投与,血漿交換,免疫グロブリン製剤投与,持続血液濾過透析を行った.しかしながら輸血不応,意識障害,肝機能障害が持続するため,第7病日にPICUのある専門施設へ転院し,ステロイドパルス療法,洗浄赤血球輸血が追加された.以降徐々に症状は改善し,第16病日に当院へ再転院となった.経過から原発性免疫不全症を疑い遺伝子解析を施行した結果,CTLA4遺伝子のヘテロ変異(c.232delG,p.D78TfsX4)とCTLA-4蛋白の発現低下を認め,CTLA-4異常症と診断した.複数の自己免疫疾患を合併し,免疫不全を疑う既往のある症例では,CTLA-4異常症などの原発性免疫不全症を考慮する必要がある.


【症例報告】
■題名
ヘモグロビンC症を合併した1型糖尿病
■著者
東近江総合医療センター小児科
木下 典子  吉田 大輔  田中 政幸

■キーワード
異常ヘモグロビン症, 1型糖尿病, HbC, グリコアルブミン, 高速液体クロマトグラフィー法
■要旨
 症例はブラジル国籍の6歳女児.頻尿を契機に1型糖尿病と診断後,インスリン治療を開始した.高血糖にもかかわらず高速液体クロマトグラフィ法(HPLC:high performance liquid chromatography)によるHbA1c値の上昇なく,劇症1型糖尿病も示唆されたが,経過・検査所見より否定的であった.赤血球が小球性低色素性であり異常ヘモグロビン症を疑い,ヘモグロビン高分離分析,およびヘモグロビンβ鎖遺伝子DNAシークエンシングで異常ヘモグロビン症(HbCヘテロ接合体)と確定診断した.ヘモグロビン異常症の患者では,HPLC法によるHbA1c値は正確に測定できないため異常ヘモグロビン症の影響を受けない酵素法や免疫法によるHbA1c値もしくはグリコアルブミン(GA)値を指標に糖尿病を管理する必要がある.1型糖尿病の初期はインスリン分泌能の低下が変化し,血糖コントロールが不安定となる.悪化・改善した際の早期の判断や,新生児,小児でも有用性が示されているGA値を指標に糖尿病を管理した.外国人の異常ヘモグロビン保有率は日本人よりも高い.近年の国際化に伴い異常ヘモグロビン症合併糖尿病患者を診療する機会は増加する.血糖値とHbA1c値に乖離がある際には,HPLC法による検査の限界を理解し,異常ヘモグロビン症の可能性を念頭におく必要がある.


【症例報告】
■題名
著明な肝・膵脂肪変性を呈し,呼吸器症状のない囊胞性線維症
■著者
宮城県立こども病院総合診療科・消化器科
星 雄介  本間 貴士  角田 文彦  虻川 大樹

■キーワード
嚢胞性線維症, 脂肪肝, 膵脂肪変性, 汗中Cl試験, CFTR遺伝子
■要旨
 呼吸器症状がなく,遺伝子解析で診断した嚢胞性線維症の5歳男児を経験した.家族歴・既往歴に特記事項なし.1歳頃より慢性下痢,3歳で成長障害,4歳で脂肪便を呈し,精査目的に紹介となった.軽度の肝障害と低コレステロール血症,便中脂肪陽性,画像診断で肝と膵の著明な脂肪変性を認め,肝生検で肝細胞に高度の脂肪沈着がみられた.PFD試験でPABA排泄率17.8%と膵外分泌不全を認めた.汗中Cl濃度122 mEq/Lと異常高値だったためCFTR遺伝子解析を行ったところ,両アレルに変異が同定され,嚢胞性線維症と確定診断した.呼吸器症状や画像上の肺病変はなかった.膵酵素補充療法開始後に脂肪便が消失して体重増加が得られ,肝脂肪変性も改善した.著明な肝・膵脂肪変性や脂肪吸収障害を呈する症例では,CFの診断基準に合致しない場合でもCFTR遺伝子解析が必要である.我々が行っている簡便な汗中Cl定量法がCFの鑑別診断に有用であった.


【症例報告】
■題名
洗濯用パック型液体洗剤誤飲による咽頭・喉頭浮腫
■著者
千葉県こども病院内分泌科1),同 集中治療科2)
島 俊介1)  數川 逸郎1)  罅)匯1)  石井 崇浩1)  石田 真稲1)  皆川 真規1)  杉村 洋子2)

■キーワード
誤飲, 洗濯用パック型液体洗剤, 喉頭浮腫, 人工呼吸
■要旨
 症例は8か月男児.洗濯用パック型液体洗剤の誤飲により呼吸困難を呈したため,当院へ転院搬送となった.喉頭ファイバースコープで喉頭蓋と舌根部,周囲粘膜の浮腫が著明であったため,洗濯用パック型液体洗剤による咽頭・喉頭浮腫と診断した.集中治療室(ICU)にて人工呼吸管理を行い,デキサメタゾンや抗菌薬投与による治療を開始した.治療経過は良好であり喉頭ファイバースコープの再検で浮腫の改善も確認できたため,第4病日に抜管した.第11病日に退院し,外来再診時も明らかな後遺症は認めなかった.
 洗濯用パック型液体洗剤は,本邦では2014年4月より発売が開始され使用の簡便さから急速に普及しており,それに伴い暴露事故も増加している.今後本邦でも重症例の増加が懸念されるため報告する.

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