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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:17.10.18)

第121巻 第10号/平成29年10月1日
Vol.121, No.10, October 2017

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日本小児神経学会推薦総説

小児の閉塞性睡眠時無呼吸

加藤 久美  1637
日本小児内分泌学会推薦総説

小児骨粗鬆症の診断と治療

道上 敏美  1645
日本小児感染症学会推薦総説

感染症と原発性免疫不全症

高田 英俊  1654
原  著
1.

学校心臓検診における標準12誘導心電図スクリーニングの有効性

大日方 春香,他  1662
2.

副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン負荷試験の簡易化

後藤 正博,他  1671
3.

小児科外来におけるロタウイルスワクチンの臨床効果

中田 修二,他  1675
4.

沖縄県の河川でのレジャー活動で集団発生した小児レプトスピラ症

崎原 徹裕,他  1685
5.

小児期B型肝炎ウイルス感染者における母子感染予防措置と臨床経過

高野 智子,他  1695
症例報告
1.

新生児ヘモクロマトーシス発症予防に免疫グロブリン胎児治療を施行した2例

三谷 裕介,他  1702
2.

明らかな誘因なく中心性頸髄損傷を呈したChiari奇形I型の1歳児

塩田 惠,他  1708
3.

自家末梢血幹細胞移植後の血栓性微小血管障害にエクリズマブが著効した神経芽腫症例

山田 愛,他  1712
4.

予防接種後髄膜炎菌菌血症に罹患したエクリズマブ投与中の非典型溶血性尿毒症症候群

喜瀬 智郎,他  1719
5.

重症百日咳2乳児例における交換輸血療法有無の比較検討

江崎 裕幸,他  1724
6.

栄養サポートチームと箱庭療法が有用であった回避・制限性食物摂取症

島 真央,他  1731

地方会抄録(宮崎・群馬・島根・千葉・山梨・静岡・福岡・青森・佐賀・長崎・愛媛)

  1738
日本小児科学会小児医療委員会主催

第11回小児在宅医療実技講習会報告

  1780
日本小児科学会医療安全委員会主催

第5回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースの報告

  1781

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2017年59巻9号目次

  1782

平成29年度公益財団法人小児医学研究振興財団研究助成事業等のお知らせ

  1784

日本小児保健協会のご案内

  1785

お知らせ

  1786

雑報

  1786

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 346

  1787


【原著】
■題名
学校心臓検診における標準12誘導心電図スクリーニングの有効性
■著者
信州大学医学部小児医学教室
大日方 春香  元木 倫子  山崎 聖子  蜂谷 明  赤澤 陽平  松崎 聡  小池 健一

■キーワード
学校心臓検診, 標準12誘導心電図, 心臓突然死, 費用対効果
■要旨
 【背景】学校心臓検診の目的は心疾患を検出し,学校生活における適切な管理・指導を行い,心臓突然死を予防することである.松本市では12誘導心電図を用いており,心電図判読から循環器医が関わっている.
 【目的】過去5年間の松本市学校心臓検診において12誘導心電図スクリーニングを契機に診断された心疾患の検出率を算出する.
 【方法】対象は平成21〜25年に松本市学校心臓検診を受けた小学1,4年生,中学1年生の計33,625人.1次検診で異常と判断された心電図は,循環器医により再判読され,要精検例は専門医による市の2次検診を受診.要管理と診断された例は医療機関受診とした.診断を管理が必要な心電図異常,先天性心疾患,心筋症,その他に分類し検出率を算出した.
 【結果】2次検診受診者は352人(1.0%),要管理者は124人(0.37%).管理が必要な心電図異常は105例(心室期外収縮58例,WPW症候群23例,QT延長8例など)であった.先天性心疾患は7例(心房中隔欠損症5例など)で,うち5例が外科治療を要した.心筋症は2例(肥大型心筋症1例,左室緻密化障害1例),その他は10例であった.心臓突然死は認めなかったが,前述の肥大型心筋症例が院外心肺停止となった.
 【考察と結論】松本市は他の自治体と比較し要管理者の検出率が低く,専門医による再判読や2次検診で偽陽性例を減じている可能性が考えられた.


【原著】
■題名
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン負荷試験の簡易化
■著者
東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科
後藤 正博  柴田 奈央  長谷川 行洋

■キーワード
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン負荷試験, 簡易化, コルチゾール, 医原性副腎不全
■要旨
 副腎皮質機能評価に用いられるCRH負荷試験は安全に行える検査法であるが,120分間を要する.本研究では当院でおこなわれたCRH負荷試験の検査結果をもとに,検査時間を60分間に短縮した場合の評価の可能性を後方視的に検討した.対象は2010年3月〜2014年10月に当院でCRH負荷試験が行われた377名である.回数としては648回(男子404回,女子244回)であり,検査時年齢は0.1〜22.4歳,中央値5.8歳であった.血中ACTH,コルチゾール(F)の検査データをもとに,負荷前,負荷後15分値,30分値,60分値の4回を採用する簡易法と120分値までのすべての値を採用する従来法のそれぞれの頂値を比較した.簡易法のACTH,F頂値はそれぞれ,全試験回数の96%,93%で従来法と一致した.ACTH頂値については,全試験回数の0.6%でのみ簡易法/従来法比が0.4未満となった.F頂値<15 μg/dLをもとに副腎皮質機能低下ありと診断される割合は,簡易法では従来法より0.6%,4回のみ増加した.CRH負荷試験の検査時間を60分間に短縮することはスクリーニングとして有効な手段である.


【原著】
■題名
小児科外来におけるロタウイルスワクチンの臨床効果
■著者
なかた小児科1),札幌医科大学医学部小児科2),小樽協会病院小児科3)
中田 修二1)  津川 毅2)  大野 真由美2)  辰巳 正純3)

■キーワード
ロタウイルスワクチン, ロタウイルス胃腸炎, 外来受診減少
■要旨
 2種類のロタウイルス(RV)ワクチンが定期接種化された国々では,ワクチン導入後にRV胃腸炎による入院数が減少している.これらワクチンの小児科外来受診抑制効果を検討するため,ワクチン導入前7年間と導入後4年間,RV胃腸炎の外来受診数の変化を札幌市の1小児科診療所において検討した.2005年1月から2015年9月までの間に札幌市のなかた小児科を受診した,生後2か月から12歳までの急性胃腸炎患者1,289例(年間98〜147例)を対象とし,糞便中のRV抗原の検出を行った.また,札幌市および当院におけるRVワクチンの推定接種率を算定した.ワクチン導入前7年間の年間RV陽性数の中央値59(46〜68/年間)と比較して,RVワクチンの接種率が50%を超えた後の2014年,2015年シーズンはそれぞれ25,34と低下し,減少率はそれぞれ58%,42%であった.その発症年齢をみると,主に生後7か月から2歳未満児で減少していた.ワクチン導入前後でRV胃腸炎の流行時期とピークに変化は見られなかった.2014年,2015年シーズンのRV胃腸炎患者の中で,RVワクチン接種完了者の割合は15〜24%であり,入院例はみられなかった.外来における経静脈輸液率も52%から25%に減少していた.RVワクチンの接種率が50%を超えると,RV胃腸炎患者の外来受診数を抑制し,胃腸炎の重症度を低下させる可能性が示唆された.


【原著】
■題名
沖縄県の河川でのレジャー活動で集団発生した小児レプトスピラ症
■著者
社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院小児科1),沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児総合診療科2)
崎原 徹裕1)  川満 豊1)  泊 弘毅2)  中馬 卓也2)  松茂良 力2)  国島 知子1)

■キーワード
レプトスピラ, レプトスピラ症, 小児, 集団発生
■要旨
 沖縄県北部地域の河川でのレジャー後,集団発生した小児レプトスピラ症について臨床的特徴を検討した.次に非罹患児も含めたレジャー参加者へのアンケート調査,降水量や台風上陸数の調査を行い,発症リスク因子を検討した.
 全11症例で発熱を認め,結膜充血と腓腹筋痛という本症に特徴的な所見を80%以上に認めた.全例で殺菌性抗菌薬を使用し,Jarisch-Herxheimer反応を10例(90.9%)に認めた.全例で治療開始後24時間以内に解熱し,重症型のワイル病を呈した症例を認めなかった.1例で免疫期の無菌性髄膜炎を認めた.
 レジャー参加者60例中アンケートを回収できた58例では,性別,年齢,同河川でのレジャーの既往,アトピー性皮膚炎,下肢の傷,遊泳,眼への淡水の接触,淡水の誤飲についてレプトスピラ症の発症との関連を認めなかった.沖縄県のレプトスピラ症患者の報告数は降水量と相関を認めず,台風上陸数と負の相関を認めた.
 小児レプトスピラ症は成人例と比較し非特異的な症状が多いとされるが,本検討では成人例と同様に結膜充血や腓腹筋痛などの所見の出現率も高く診断の一助になると考えられた.発症リスクについては今後更なる検討が必要である.


【原著】
■題名
小児期B型肝炎ウイルス感染者における母子感染予防措置と臨床経過
■著者
大阪急性期・総合医療センター小児科1),宮城県立こども病院総合診療科2),済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科3),久留米大学医療センター小児科4),大阪母子医療センター消化器内分泌科5),順天堂大学医学部小児科・思春期科6),大阪大学大学院医学系研究科小児科学7),鳥取大学医学部小児科8)
高野 智子1)  田尻 仁1)  虻川 大樹2)  乾 あやの3)  牛島 高介4)  惠谷 ゆり5)  鈴木 光幸6)  三善 陽子7)  村上 潤8)

■キーワード
B型肝炎ウイルス感染, B型肝炎母子感染予防
■要旨
 1986年から施行されたB型肝炎ウイルス(HBV)母子感染予防措置はHBVキャリア妊婦から出生した児のキャリア率を著明に減少させたが,予防措置を行っても母子感染する例が認められる.全国134施設から小児期HBV感染776症例を収集し,1986〜2013年出生の母子感染症392例における母子感染予防措置の実態と臨床経過について検討した.1986〜1990年出生例では完全予防措置例(HBIG,HBワクチンともにスケジュール通り施行例)がなかったが,1991年出生以降徐々に増加し2011〜2013年出生例では40%を占めるようになった.予防措置不適切と推測される例(スケジュール通り予防措置がされず生後6か月以降に診断された例と予防措置なしで生後1か月以降に診断された例)は,予防措置の報告のあった349例中83例(24%)であった.一方,完全予防措置群,および予防措置開始前や措置中にHBV感染と診断された予防不可能例は,1991年出生以降53〜68%を占めた.完全予防措置群に比べ不完全予防措置群(スケジュール通り予防措置がされなかった例)で診断時年齢が低く,予防措置なし群でゲノタイプAやBの比率が高かった.ゲノタイプCの完全予防措置群及び不完全予防措置群は予防措置なし群より15歳までのHBe抗原抗体セロコンバージョン率が高かった(各p=0.057,0.038).


【症例報告】
■題名
新生児ヘモクロマトーシス発症予防に免疫グロブリン胎児治療を施行した2例
■著者
金沢大学小児科1),香川大学小児科2),国立成育医療研究センター病理診断部3)
三谷 裕介1)  朝倉 有香1)  岩崎 秀紀1)  小幡 美智1)  谷内江 昭宏1)  中村 信嗣2)  日下 隆2)  中澤 温子3)

■キーワード
新生児ヘモクロマトーシス, 免疫グロブリン療法, 胎児治療
■要旨
 新生児ヘモクロマトーシスは,胎児期に肝臓を中心とした諸臓器に鉄が沈着し,出生直後より肝不全を呈する予後不良の疾患である.2004年に免疫グロブリン胎児治療の有効性が報告されて以来,本邦でも治療報告が散見されるが,まとまった報告が少ない.当院では2011年より出生前免疫グロブリン治療を施行しており,出生後経過を詳細に観察しえた新生児2例について今回報告する.免疫グロブリンは妊娠17〜18週より開始し,週1回,50 gを点滴静注にて出生まで投与を継続した.両児とも妊娠36週にて帝王切開で出生,1例は新生児一過性多呼吸に対する加療を要した.身体所見でいずれの症例も肝腫大・出血傾向を認めなかった.腹部超音波検査では1例で一過性の肝エコー輝度上昇を認めた.血清ALT値,血清フェリチン値は2例ともに正常であった.血清GGT値,血清AFP値は,両児とも高値を認めたが,生後1か月の時点で改善を認めた.血糖値・凝固機能はいずれも正常であった.以上より,新生児ヘモクロマトーシス発症予防に対する免疫グロブリン胎児治療は極めて有効性の高い治療であった.しかし,発症病態や免疫グロブリン治療の最適なレジメンについては未解明な部分が多く,さらなる検討が必要である.


【症例報告】
■題名
明らかな誘因なく中心性頸髄損傷を呈したChiari奇形I型の1歳児
■著者
松戸市立病院小児医療センター小児科1),心身障害児総合医療療育センター小児科2)
塩田 惠1)2)  森 雅人1)  津留 智彦1)

■キーワード
中心性頸髄損傷, Chiari奇形, presyrinx state
■要旨
 無症候性のChiari奇形I型の児に中心性頸髄損傷を合併した1例を経験した.
 症例は1歳女児.成長,発達は正常で,先行感染や直前の予防接種歴はなかった.遊園地へ行った日の夜に一時的に左足が痺れたような歩き方をしていたのに引き続いて,翌朝に両上肢の弛緩性麻痺が出現した.単純MRIで異常信号を伴う頸髄腫脹と小脳扁桃の下垂を認め,presyrinx stateにより中心性頸髄損傷を呈したChiari奇形I型と考えた.症状は無治療で軽快し,1か月後にはほぼ消失した.乳幼児の中心性頸髄損傷は稀ではあるが,日常生活での些細な受傷が原因となることが多く,無症候性Chiari奇形のように頸髄損傷のハイリスクとされる先天奇形に注意が必要である.


【症例報告】
■題名
自家末梢血幹細胞移植後の血栓性微小血管障害にエクリズマブが著効した神経芽腫症例
■著者
宮崎大学医学部小児科
山田 愛  盛武 浩  木下 真理子  澤 大介  今村 秀明  上村 幸代  此元 隆雄  布井 博幸

■キーワード
移植関連血栓性微小血管障害, エクリズマブ, 可溶性膜侵襲複合体, 進行神経芽腫, 自家末梢血幹細胞移植
■要旨
 移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)は造血幹細胞移植後の致死的合併症であり,まだ有効な治療法は確立されていない.近年,TA-TMAの病態の一因として補体制御機構の異常が示唆され,補体活性を示す可溶性膜侵襲複合体(sMAC)高値例において抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブが有効であったとする報告が散見される.今回,我々は病期IVの神経芽腫に対し自家末梢血幹細胞移植を施行し移植後23日目にTA-TMAと診断した2歳男児を経験した.著明な貧血,血小板数低下,高度蛋白尿,高血圧に加えてびまん性肺胞出血,網膜脈絡膜下出血を合併したが,出血傾向,呼吸不全,循環不全があるため血漿交換による治療は危険性が高いと判断した.自施設で測定した急性期の血漿sMACが高値であったことから,当院医の倫理委員会承認を経て代諾者の同意取得後にエクリズマブを投与した.直後から輸血後の血小板減少幅の劇的な改善,輸血間隔延長に加え,出血傾向の是正により呼吸状態が改善し救命し得た.エクリズマブは計3回の投与後に中止したが,その後もTA-TMAの再燃はみられなかった.エクリズマブの適正使用は重要な課題であり,現在TA-TMAに対しては適応外であるが,今後sMACを含む補体関連精査の一般化によるエクリズマブの有効性が期待できる症例の層別化が可能となり,極めて予後不良なTA-TMA症例への適応拡大が望まれる.


【症例報告】
■題名
予防接種後髄膜炎菌菌血症に罹患したエクリズマブ投与中の非典型溶血性尿毒症症候群
■著者
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児腎臓科
喜瀬 智郎  吉村 仁志  譜久山 滋  上原 正嗣

■キーワード
非典型溶血性尿毒症症候群, エクリズマブ, 侵襲性髄膜炎菌感染症, 髄膜炎菌ワクチン
■要旨
 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は予後不良である.エクリズマブが有効であるが,侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)のリスクを増大させる.髄膜炎菌ワクチン接種後エクリズマブ治療中にIMDを発症したが,迅速な治療で後遺症なく治癒した例を経験した.症例は5歳男児.貧血,血小板減少,急性腎不全を発症,aHUSと診断した.4価髄膜炎菌ワクチン(血清型A,C,Y及びW-135)接種後エクリズマブを開始した.エクリズマブ定期投与で症状再燃なく8か月経過した.39.2度の発熱と嘔吐があり当院受診,細菌感染を疑い受診後2時間でセフォタキシムを開始した.一旦解熱したが第2病日午後再び発熱し,さらに入院時の血液培養からNeisseria meningitidisが検出され,採血と腰椎穿刺を行った.髄液検査は正常,培養は陰性であった.検査後セフォタキシムを180 mg/kg/dayから240 mg/kg/dayに増量した.以後発熱なく10日間抗菌薬投与し退院した.3か月経過し後遺症はない.髄膜炎菌血清型はB型であった.IMDは本邦では比較的稀だが重篤な疾患で,迅速な抗菌薬投与が重要である.aHUSへのエクリズマブ使用前に髄膜炎菌ワクチン接種が義務だが,B型はカバーできていない.髄膜炎菌ワクチン接種後もIMD発症の可能性があるため,エクリズマブ治療中の発熱はIMDを疑って迅速な治療介入を考慮すべきである.


【症例報告】
■題名
重症百日咳2乳児例における交換輸血療法有無の比較検討
■著者
長崎大学病院小児科
江崎 裕幸  橋本 邦生  横川 真理  佐々木 理代  蓮把 朋之  本村 秀樹  森内 浩幸

■キーワード
百日咳, 交換輸血, 呼吸不全, 肺高血圧症
■要旨
 新生児や乳児の百日咳は,難治性の呼吸不全や肺高血圧症を合併し重症化することがあり,治療として交換輸血の有効性が近年報告されている.早期の交換輸血の有無が予後に影響した可能性がある乳児重症百日咳の2例を経験したので報告する.
 症例1は急性呼吸不全の為に搬送された2か月女児.白血球数82,000/μLで,気管挿管後直ちにアジスロマイシン(AZM),ガンマグロブリン点滴静注(IVIG),プレドニゾロンの治療に加え,3日間の交換輸血を行った.肺高血圧症を合併したがミルリノンとフロセミドでコントロールされ,25日目に後遺症なく退院した.
 症例2はけいれんと急性呼吸不全の為に搬送された2か月女児.白血球数66,000/μLで,AZM,IVIG,メチルプレドニゾロンパルス療法で病勢が落ち着かず,シクロスポリンAとデキサメタゾンの追加でようやく改善した.124日目に退行と発達遅滞を残して退院し,8年経過後もリハビリテーションを継続している.
 2例は同一月齢でともに著明な白血球増加,呼吸不全,高サイトカイン血症を伴う重症例で,交換輸血以外の初期治療内容も概ね同様であった.しかし,症例1の方が強い肺高血圧症も合併したが,明らかに病勢鎮静化までの経過が良く後遺症を残さなかった.交換輸血の有無が予後因子であった可能性があり,著明な白血球増加を伴う重症百日咳に対して考慮すべき治療法と考えた.


【症例報告】
■題名
栄養サポートチームと箱庭療法が有用であった回避・制限性食物摂取症
■著者
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学1),大阪市立大学医学部附属病院栄養部2),大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学3)
島 真央1)  徳原 大介1)  相本 理恵1)  藤本 浩毅2)  趙 有季1)  宮脇 大3)  新宅 治夫1)

■キーワード
回避・制限性食物摂取症, 食行動障害, 摂食障害, 栄養サポートチーム, 箱庭療法
■要旨
 症例は8歳女児.児の食事作法に対する家族の叱責を契機に嚥下困難が出現した.水分の摂取は可能であり,やせ願望はなく器質的疾患がみられないことから,嚥下時の不快感への恐怖による回避・制限性食物摂取症と診断した.第7病日に入院の上,栄養サポートチーム(NST)の介入による栄養補助飲料を用いた栄養投与や,味・食感・粘性の異なる様々な固形物の経口摂取チャレンジを開始し,箱庭療法を用いた自己表出の支援も行った.第15病日にゼリーが摂取できたのを契機に徐々に固形物の摂取が可能になり,箱庭では積極的な取り組みによる自己の表出が見られるようになり,第42病日に退院とした.退院5か月後まで症状の再燃はない.本症例のような摂食制限を呈する例では,栄養評価や栄養投与だけでなく,様々な食形態の提案による摂食行動の支援もNSTの役割として重要であり,箱庭を用いた自己表出の支援も摂食行動の改善・維持に効果的であったと考えられた.

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