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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:17.4.20)
第121巻 第4号/平成29年4月1日
Vol.121, No.4, April 2017
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日本小児腎臓病学会推薦総説 |
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石倉 健司 667 |
原 著 |
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平林 伸一,他 677 |
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高田 亜希子,他 686 |
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西村 直子,他 693 |
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本間 仁,他 698 |
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宮崎 あゆみ,他 706 |
症例報告 |
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益田 瞳,他 714 |
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岩井 謙治,他 719 |
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山口(藤巻) 明日香,他 724 |
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馬場 悠生,他 729 |
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島 貴史,他 734 |
論 策 |
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渡辺 章充,他 739 |
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地方会抄録(東京・山形・滋賀・福島・千葉・香川・山口・栃木・佐賀・長崎・鳥取・中部・石川)
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745 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 67 医薬品の誤飲による意識障害,けいれん
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793 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
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第4回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースの報告
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796 |
日本小児科学会小児救急委員会主催 |
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第1・2回小児診療初期対応コース,第1回JPLS講師養成コース開催報告
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797 |
日本小児医療保健協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会活動報告 |
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NICUや急性期病棟から在宅への移行を支援する中間施設に関する調査
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798 |
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808 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2017年59巻3号3月号目次
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812 |
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815 |
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【原著】
■題名
親へのアンケートからみた広汎性発達障害者の成人期社会適応について
■著者
長野県立こども病院神経小児科1),同 リハビリテーション科2),中川の郷療育センター3) 平林 伸一1) 笛木 昇2) 平野 悟3)
■キーワード
広汎性発達障害, 成人, 社会的予後, 社会適応, 就労
■要旨
目的:小児期に診断を受けて成人期を迎えた広汎性発達障害(PDD)者の,社会適応を明らかにする.
方法:当院にて診断フォローされ,現在18歳以上のPDD者の親に半構造化質問紙を郵送し回答を依頼した.社会適応は,職場・家庭での適応状態と心理的安定の両者で評価される全般的適応度を指標とし,これを目的変数として多重ロジスティック回帰分析を行った.
結果:有効送付数365名中228名の親から回答が得られた.現在の状態は,学生38名(17%),就労131名(57%),未就労57名(25%)であった.全般的適応度は,良好群が145名(65%),不良群が36名(16%)であった.多重ロジスティック回帰分析で,社会適応が良好であったのは,就労しており,現在への影響として家庭養育をあげた者で,一方不良であったのは,薬物治療(特に抗精神病薬を主体とする投与)の既往があり,現在も対人的相互交渉能力の低い者であった.知能レベルや最終学歴は全般的適応度と相関は見られなかった.「最適予後群」と考えられる者が5名存在した.
結論:方法論上の限界を考慮すべきであるが,今回の調査ではPDD者の社会適応は既報告に比べ良好であった.社会適応の改善のためには,家庭養育の適切な指導および二次的不適応症状への有効な介入が重要と考えられた.小児期からの継続的な医療的支援と社会的予後の関連につきさらなる検討が必要である.
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【原著】
■題名
思春期・若年成人世代のがん診療の実態
■著者
京都大学医学部附属病院小児科1),静岡県立こども病院血液腫瘍科2),京都大学大学院医学研究科人間健康科学科3) 高田 亜希子1) 梅田 雄嗣1) 川口 晃司1) 岩井 篤1) 三上 真充1) 納富 誠司郎1) 才田 聡1) 平松 英文1) 渡邉 健一郎1)2) 平家 俊男1) 足立 壯一3)
■キーワード
思春期・若年成人, がん, 実態, 診療連携, 緩和ケア
■要旨
2008年1月から2012年12月の間に当院に入院した思春期・若年成人(adolescents and young adults:AYA)世代のがん症例170例の診療の実態について検討した.患者の年齢は中央値22歳10か月で,疾患群は脳脊髄腫瘍,血液腫瘍,骨軟部腫瘍,生殖器腫瘍,甲状腺および内分泌腺腫瘍,消化器腫瘍が上位を占めた.15〜19歳代では血液腫瘍,脳脊髄腫瘍,骨軟部腫瘍が全体の約7割を占めたが加齢と共にその疾患割合は減少し,20歳以降は消化器腫瘍,甲状腺腫瘍の割合が増加した.170例全例の4年全生存率は79.4%±6.5%であった.手術,放射線治療,化学療法を組み合わせた集学的治療は91例(53.5%)で行われた.15診療科が入院診療に関与し,85例は単一診療科,85例は複数の診療科が担当した.小児科医が主治医として診療したのは7例で,23例には他の診療科に対して治療方針決定や造血幹細胞移植などの支援を行った.170例中35例に対して精神症状・身体症状の緩和を目的にがんサポートチームが支援していた.AYA世代では集学的治療を要するがん症例が占める割合が高く,小児科医は主治医として以外にも重要な役割を担っていることが確認された.今後はさらに他の診療科およびコメディカルとの連携を深め,この世代のがん患者の治療成績および治療の質の向上を目指していく必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
ムンプスワクチン2回接種法の免疫原性
■著者
江南厚生病院こども医療センター 西村 直子 尾崎 隆男 後藤 研誠 小澤 慶 日尾野 宏美 川口 将宏 野口 智靖 藤城 尚純 竹本 康二
■キーワード
ムンプスワクチン, 接種後罹患, 2回接種法, 免疫原性, 副反応
■要旨
わが国においてムンプスワクチンは,1981年に任意接種による1回接種法が導入され,今日までその接種法に変更は無い.今回,ムンプスワクチン2回接種法の有用性を検討した.2008年4月〜2012年3月の4年間に182名の小児が当院でムンプスワクチン初回接種を行った.2013年7月にアンケート用紙を郵送して接種後のムンプス罹患の有無を調査し,接種後罹患が無く保護者の同意が得られた者にムンプスワクチンの追加接種を行った.追加接種直前および4〜6週間後にムンプスウイルスに対するIgG抗体価をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)で測定するとともに,接種後4週間の副反応を調査した.
アンケートの回収率は51%(93/182)で,5名(5.4%)に接種後罹患を認めた.32名に追加接種を実施でき,追加接種時の平均年齢は5.8歳(3.5〜11.6歳),初回接種と追加接種の平均間隔は3.1年(1.4〜5.4年)であった.初回接種後抗体陽性(ELISA価≧400)率は94%(30/32),追加接種前抗体陽性率は75%(24/32)であった.追加接種後に抗体陽性率は100%となり,追加接種後平均抗体価(log10)3.25は初回接種後平均抗体価2.93より有意に高かった(p<0.001).副反応として,発熱(≧37.5℃)を13%,局所反応を6%,耳下腺腫脹を3%に認めた.ムンプスワクチン2回接種法は免疫原性が高く有用と考えられた.
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【原著】
■題名
小児消化管異物27例の検討
■著者
信州大学医学部小児医学教室 本間 仁 草刈 麻衣 花村 真由 加藤 沢子 倉繁 款子 日高 奈緒 中山 佳子
■キーワード
小児消化管異物, 内視鏡的摘出, 食物嵌頓, ボタン電池, 高吸水性ポリマー
■要旨
【背景】消化管異物は小児に多く,日常診療でしばしば遭遇する問題である.内視鏡的摘出の適応は,年齢や症状の有無,異物の種類,停滞部位,停滞時間などによって左右される.当院における小児消化管異物への対応を検討し,海外の小児のガイドラインと比較した.【対象と方法】2005年4月から2015年4月に消化管異物を主訴に当院を受診した15歳未満の患者26例(27件)を対象とし,診療録を後方視的に検討した.【結果】年齢の中央値は1歳11か月,異物の種類はボタン電池6件,硬貨4件,食物塊3件,高吸水性ポリマー2件,その他12件であった.内視鏡適応と判断した17件のうち,内視鏡的に異物を確認出来た11件全てにおいて摘出または処置が成功し,重篤な偶発症も認められなかった.食道内食物嵌頓や硬貨,高吸収性ポリマー等に対する内視鏡適応は,海外のガイドラインとほぼ一致していたが,胃内のボタン電池や磁石,一部の鈍的異物に対する内視鏡適応は一致していなかった.異物誤飲による重篤な合併症として,高吸水性ポリマーによる十二指腸閉塞から電解質異常,けいれん,意識障害をきたした1例を認めた.【結語】当院における小児消化管異物に対する内視鏡適応は一部の症例を除き海外のガイドラインと概ね一致するものであった.高吸収性ポリマーはその特性から消化管閉塞の危険性が高く,誤飲予防に関する社会への注意喚起も必要である.
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【原著】
■題名
小児生活習慣病予防健診における食後血糖測定の有用性
■著者
独立行政法人地域医療機能推進機構高岡ふしき病院小児科1),小栗小児科医院2),しむら小児科クリニック3) 宮崎 あゆみ1) 小栗 絢子2) 市村 昇悦3)
■キーワード
食後血糖, 心血管危険因子, 糖尿病, 小児生活習慣病, 小児メタボリックシンドローム
■要旨
背景:成人では心血管危険因子として空腹時血糖より食後血糖の方が心血管疾患や総死亡をより反映すると判明しているため,小児においても食後血糖を測定してその有用性を検討する.
方法:2013〜2015年に高岡市小児生活習慣病予防健診を受診した全市の小学校4年生,中学校1年生8,119名を対象に給食後2時間以内の血糖を測定し,詳細に検討した.さらに肥満,脂質異常などで二次検診を受診して空腹時血糖等が測定された194名に関し,食後血糖との関連を検討した.
結果:食後血糖平均値の年度間差は有意ながら小さく,3年間全体では小4に比べ中1の特に女子で値がばらつく傾向が認められた.95パーセンタイル値は小4男女,中1男女各々132 mg/dl,138 mg/dl,146 mg/dl,155 mg/dl,健診全体では143 mg/dlとなり,成人の糖負荷2時間値耐糖能異常基準140 mg/dlに近似した.食後血糖と二次検診空腹時血糖とでは,単回帰分析での寄与率は0.056と低値であった.食後血糖200 mg/dl以上の対象中3名が糖尿病と判明し,うち2名は新規診断された非肥満女児例であった.
結論:小児における食後血糖測定は,小児生活習慣病,特に糖尿病のスクリーニングに有用である.
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【症例報告】
■題名
ミトコンドリアDNA枯渇症候群に対する肝移植後に発症した肺高血圧症
■著者
国立成育医療研究センター循環器科1),同 総合診療部2) 益田 瞳1) 小野 博1) 林 泰佑1) 益田 博司2) 阪下 和美2) 賀藤 均1)
■キーワード
肺高血圧症, ミトコンドリアDNA枯渇症候群
■要旨
ミトコンドリアDNA枯渇症候群(mitochondrial DNA depletion syndrome:MTDPS)は,組織特異的にミトコンドリアDNAコピー数が減少することで生じる常染色体劣性疾患の総称である.少なくとも14個の核遺伝子の変異とMTDPSの発症との関連が知られており,肝不全や神経症状,脳症,ミオパチーなどを来すが,肺高血圧症を合併したという報告はない.症例は,生後2か月時の肝生検でMPV17遺伝子変異による脳肝型MTDPSと診断された男児.4か月時に劇症型の肝不全を発症し,生体肝移植を施行され,移植後のグラフト肝の状態には特記すべき異常なく経過した.1歳2か月時に肺高血圧症を発症し,平均肺動脈圧46 mmHg,肺血管抵抗9.54 Wood単位・m2であった.Sildenafil,ambrisentan,epoprostenolを逐次併用し,心臓超音波検査による三尖弁逆流速度から推定した圧較差の低下を認めたが,1歳9か月時に敗血症で永眠した.MPV17遺伝子変異による脳肝型MTDPSの肝移植後の管理では,肺高血圧症の発症に注意する必要がある.MTDPSに肺高血圧症が合併したことは,ミトコンドリアが肺高血圧症の発症に関与している可能性について新しい洞察を与えるかもしれない.
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【症例報告】
■題名
インフルエンザ感染を契機に発症した抗GAD抗体関連小脳失調症
■著者
大阪市立総合医療センター小児救急科1),同 小児代謝・内分泌内科2) 岩井 謙治1) 天羽 清子1) 石川 順一1) 金 聖泰2) 榊原 杏美2) 橋本 有紀子2) 川北 理恵2) 細川 悠紀2) 依藤 亨2) 外川 正生1)
■キーワード
抗GAD抗体, 小脳失調症, 1型糖尿病, clinically mild encephalitis/encephalopathy with reversible splenial lesion(MERS), 免疫グロブリン療法(IVIG)
■要旨
抗Glutamic Acid Decarboxylase(GAD)抗体は1型糖尿病における自己抗体として知られているが,成人領域では抗GAD抗体の関連するstiff-person症候群や小脳失調症などの報告が散見される.今回インフルエンザ感染を契機に1型糖尿病とMERSを発症し,経過中に抗GAD抗体関連小脳失調症を発症した1例を経験した.症例は8歳女児.発熱から2日後にA型インフルエンザの診断で治療を開始したが,強直間代発作を繰り返し,インフルエンザ脳症の疑いで入院加療となった.入院後も不穏状態が持続し,髄液検査では細胞数,蛋白の増加を認めた.頭部MRIの拡散強調画像で脳梁と両側深部白質に高信号域を認めMERSと診断した.同時に高血糖,代謝性アシドーシスを認め,HbA1c高値,血液中抗GAD抗体,抗インスリン抗体陽性であったことから1型糖尿病と診断した.意識レベルは徐々に改善したが座位,歩行時のふらつきは残存したため頭部MRIを施行し,右中小脳脚に拡散強調像で高信号域を認めた.髄液中の抗GAD抗体陽性であり,抗GAD抗体関連小脳失調症と診断し免疫グロブリン療法(IVIG)とステロイドパルス療法を施行した.小脳失調症状は改善し,後遺症,再発なく経過している.抗GAD抗体関連小脳失調症の小児例は稀であり,症例の蓄積と治療法の検討が望まれる.
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【症例報告】
■題名
無形成発作を契機に診断されたグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症の日本人男児
■著者
東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野1),東京北医療センター小児科2),東京医科歯科大学大学院茨城県小児・周産期地域医療学講座3),国立成育医療研究センター総合診療部4) 山口(藤巻) 明日香1)2) 大坂 渓1) 田中(久保田) 真理1) 宮本 智史1) 満生 紀子1) 高木 正稔3) 今井 耕輔3) 窪田 満4) 金兼 弘和1) 森尾 友宏1)
■キーワード
無形成発作, グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症, パルボウイルスB19, 遺伝性球状赤血球症, 新生児マススクリーニング
■要旨
無形成発作とは血球産生不全による急激な貧血を示し,遺伝性溶血性貧血患者において感染症,特にパルボウイルスB19感染を契機に発症することがある.さまざまな遺伝性溶血性貧血患者において起こりうるが,わが国では遺伝性球状赤血球症を基礎疾患とすることがほとんどであり,無形成発作を契機に診断されることも稀ではない.今回,パルボウイルスB19感染による無形成発作を契機に遺伝性溶血性貧血を疑い,その後グルコース-6-リン酸脱水素酵素(glucose-6-phosphate dehydrogenase:G6PD)欠損症と診断した症例を経験した.症例は3歳日本人男児であり,顔色不良,Hb 3.4 g/dLで当院へ入院した.パルボウイルスB19感染,溶血性貧血を認め,無形成発作と診断した.入院後は輸血を行い貧血は改善した.溶血性貧血の家族歴はなく,赤血球形態は正常,赤血球浸透圧脆弱性試験は正常で遺伝性球状赤血球症は否定された.その後,溶血性貧血のスクリーニングを行い,G6PD欠損症と診断した.G6PD欠損症は日本人ではまれな疾患だが,無形成発作をきたす遺伝性溶血性貧血として鑑別すべき疾患であることを銘記したい.ボイトラー法によるガラクトース血症の診断過程でG6PD欠損症が診断可能との報告があるが,自験例では検査結果は正常判定であり,ボイトラー法によるG6PD欠損症の診断は難しいと考えられる.
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【症例報告】
■題名
夏型過敏性肺臓炎を発症した重症心身障害児
■著者
鹿児島大学病院小児科 馬場 悠生 丸山 慎介 宮園 明典 田邊 貴幸 森田 康子 野村 裕一 河野 嘉文
■キーワード
夏型過敏性肺臓炎, 重症心身障がい児, 抗Trichosporon Asahii抗体, 抗原隔離, 環境整備
■要旨
過敏性肺臓炎は真菌胞子や有機塵埃などにより惹起されるびまん性肉芽腫性間質性肺炎である.症状としては発熱や咳嗽,労作時呼吸困難などを認める.気管支喘息などの他の呼吸器疾患と診断される例が少なくないこと,季節性に症状が自然軽快する場合があり診断が見直されることなく終息してしまうことなどから,小児例の報告は少ない.今回われわれは14歳で重症心身障害をもつ女児を夏型過敏性肺臓炎と診断した.3年前から症状を繰り返していたが,過敏性肺臓炎の診断に至るまでに時間を要した.これまでに重症心身障害児で過敏性肺臓炎と診断された報告はなかった.重症心身障害児においても反復する下気道疾患の一つとして過敏性肺臓炎は重要であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
新生児Young-Simpson症候群の臨床像及び内分泌学的検討
■著者
湘南鎌倉総合病院小児科 島 貴史 田苗 綾子
■キーワード
Young-Simpson症候群, 眼瞼裂狭小, 膝蓋骨低形成, 甲状腺機能低下症, 外性器異常
■要旨
Young-Simpson症候群は眼瞼裂狭小,先天性甲状腺機能低下症,停留精巣,膝蓋骨低形成,精神発達遅滞を特徴とする稀な症候群である.1987年に最初に報告され,2011年に責任遺伝子がKAT6Bと同定された.現在まで30例近くが報告されている.今回我々は自院で出生した新生児をYoung-Simpson症候群と診断し,出生早期から内分泌学的検討,眼科及び泌尿器科学的対応を試みたので報告する.本新生児は,出生直後は眼瞼裂狭小のため開眼不可能であったが,生後1か月半でわずかに自発開眼した.眼球・眼底には異常を認めなかった.内分泌学的には先天性甲状腺機能低下症を認め,レボチロキシンNaを投与開始した.TRH負荷試験より病型は原発性甲状腺機能低下症に分類された.1歳9か月からサイログロブリン抗体が出現した.出生時に露出亀頭を呈し,血清テストステロン低値で精巣機能障害が疑われた.しかし,hCG負荷試験では正常反応を示し,潜在的テストステロン分泌能は存在すると考えられた.脳MRIでは脳梁低形成,両側側脳室周囲の囊胞状構造を認めた.発育・発達では,全般的な精神運動発達遅滞に加えて,本症候群特有の経過として,表出言語の減少と理解言語の進歩という乖離を認めた.本症候群は希少疾患のため報告も少ないが,症例報告を積み重ねることにより病態解明,精神・運動発達の支援,健康管理に貢献できると思われる.
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【論策】
■題名
重症心身障害児(者)入所施設・国立病院機構における短期入所の全国実態調査
■著者
総合病院土浦協同病院小児科1),NTT東日本札幌病院小児科2),北海道療育園診療部3),神奈川県立こども医療センター新生児科4),エバラこどもクリニック5),さいわいこどもクリニック6),大阪市立住吉市民病院小児科(小児医療委員会委員長)7) 日本小児科学会小児医療委員会短期入所レスパイト小委員会 渡辺 章充1) 森 俊彦2) 平元 東3) 星野 陸夫4) 江原 伯陽5) 宮田 章子6) 舟本 仁一7)
■キーワード
短期入所, 重症心身障害者, アンケート調査
■要旨
重症心身障害児の在宅医療・生活を支えるためには短期入所の充実が重要であるが,十分な対応ができてないとされている.2013年に一般病院小児科での短期入所(入院)の実態調査を行ったが,今回,全国の医療型障害児入所施設を中心とする重症心身障害児者入所施設に対して,医療ケアを要する短期入所受け入れの実状に関するアンケート調査を行った.回収率は150施設/198施設中(78%)で,146施設(97%)で短期入所が行われていた.医療ケアを要する重症児者を受け入れているのは140施設(93%)で,胃瘻・腸瘻は139施設(93%),気管切開は134施設(89%)で受け入れ可能だった.受け入れ実績では,年間利用実人数50例以上が60施設(40%),延べ人数200例以上が84施設(56%)あった.しかし,人工呼吸器装着症例の受け入れ可能人数は,111施設(76%)が1日あたり2名以下,うち40施設(27%)は0名であった.今後,医療ケアを要する短期入所が広まるために必要なものとしては「施設給付費・療養介護サービス費の増額」が115施設(77%),「看護師・介護士の数」110施設(73%),「医師の数」98施設(65%)と続いた.重症児施設での医療ケアを要する短期入所を拡充するためには,給付費の見直しや重症心身障害医療に従事する医師や看護師などの養成・確保が必要と考えられた.
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