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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:17.1.20)
第121巻 第1号/平成29年1月1日
Vol.121, No.1, January 2017
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斯波 真理子,他 1 |
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位田 忍,他 9 |
第119回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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三谷 義英 14 |
教育講演 |
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慢性糸球体腎炎:IgA腎症と紫斑病性腎炎の発症病態からみた治療戦略
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川崎 幸彦 21 |
教育講演 |
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定期接種化に向けて―なぜ今,すべての子どもにB型肝炎ワクチン接種が必要なのか?―
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乾 あやの 32 |
日本小児神経学会推薦総説 |
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本田 涼子 41 |
日本小児感染症学会推薦総説 |
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小児におけるHBV水平感染の実態とB型肝炎ワクチン定期接種化の意義
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田尻 仁,他 51 |
原 著 |
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田中 龍一,他 60 |
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本田 隆文,他 67 |
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渥美(津島) ゆかり,他 73 |
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冨本 和彦 80 |
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萩原 佑亮,他 88 |
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森川 和彦,他 93 |
症例報告 |
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大西 卓磨,他 101 |
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福岡 かほる,他 106 |
論 策 |
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小宅 泰郎,他 112 |
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119 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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127 |
小児医療委員会報告 |
小児医療委員会活動報告(2014〜15) |
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131 |
男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合11 |
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138 |
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139 |
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144 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻12号12月号目次
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【原著】
■題名
新生児・乳児頭部MRI検査における真空固定具を用いた無鎮静検査
■著者
名古屋第一赤十字病院小児科 田中 龍一 大萱 俊介 中山 淳 神澤 孝洋 奥村 俊彦 濱崎 咲也子 立花 貴史 安田 彩子 大城 誠 鬼頭 修
■キーワード
MRI, 真空固定具, 検査時の鎮静, 鎮静薬, 新生児
■要旨
新生児・乳児のMRI検査時には体動による影響を回避するために鎮静剤が使用されてきたが,鎮静剤の使用は副作用が危惧される.そこで我々は真空固定具を用いた頭部MRI検査を導入し,その有用性と安全性について評価した.2013年1月〜2015年6月に当院NICUに入院し,頭部MRI検査を施行した児について,トリクロホスナトリウムを使用した鎮静群(137例)と2014年2月以降に真空固定具と自然入眠を利用した無鎮静の固定群(118例)の2群に分け,後方視的に比較検討した.両群では在胎週数,出生体重,検査時修正週数・体重,その他の周産期因子に有意差を認めなかった.鎮静群と固定群の検査成功率は97.1%と100%,撮影画像の診断評価可能例は75.6%と83.9%で有意差を認めなかった.有害事象は固定群では皆無であったのに対して,鎮静群で哺乳不良,傾眠,哺乳時SpO2低下,無呼吸・周期性呼吸の悪化,興奮・不機嫌が有意に多かった(p<0.05).検査前後の体温上昇(0.5度以上)は,固定群15.0%(鎮静群1.5%)に多くみられ,逆に体温低下は鎮静群16.2%(固定群0.9%)に多くみられた.新生児・乳児に対する真空固定具を利用した無鎮静の頭部MRI検査は,トリクロホスナトリウムを用いた方法に比べて遜色なく,より安全に行われることが証明された.
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【原著】
■題名
肺高血圧を合併した重症慢性肺疾患の治療と在宅移行
■著者
東京女子医科大学八千代医療センター小児集中治療科1),同 小児科2),同 新生児科3) 本田 隆文1) 白戸 由理2) 浜田 洋通2) 近藤 乾3) 寺井 勝1)2)
■キーワード
慢性肺疾患, 肺高血圧, 高呼気終末陽圧換気, 肺動脈性肺高血圧症治療薬, 在宅移行
■要旨
医療の進歩により在胎24週未満の児でも存命が可能となってきている一方,慢性肺疾患(CLD)に肺高血圧を合併すると長期間呼吸管理を離脱できずに重篤な経過をたどるものも多い.当院で2007年1月から2012年12月までにNICUから診療を継続する中で治療介入の必要な肺高血圧を合併したCLDを3例(在胎23〜27週)経験した.全例気管軟化症も合併しており換気の安定化に高呼気終末陽圧換気の継続を必要とした.肺高血圧に対しては1例でエポプロステノール,2例でシルデナフィルを治療に用い全例で循環動態が正常化した.このように呼吸管理を離脱できない肺高血圧合併重症CLD児に対し,高呼気終末陽圧換気,肺動脈性肺高血圧症治療薬を含めた積極的な治療を導入し,家族や支援機関の協力も得て,3例いずれも安定した状態で在宅移行を達成し,その後も良好な状態で管理し得ている.
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【原著】
■題名
小児のヒトメタニューモウイルス感染症の重症化因子
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 感染症科2) 渥美(津島) ゆかり1) 磯貝 美穂子2) 伊藤 健太2) 寺川 敏郎1) 堀越 裕歩2)
■キーワード
ヒトメタニューモウイルス, 迅速抗原定性検査, 重症化因子, 基礎疾患
■要旨
ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:以下hMPV)は気道感染するウイルスで稀に呼吸不全など重症になる.東京都立小児総合医療センターで2014年7月〜2015年5月のhMPV抗原定性検査陽性例について,重症群は小児集中治療室で治療を要した患者とし,重症化因子の検討を行った.検査は469例提出され,陽性は73例,そのうち重症群は15例(21%)だった.性別は男児42例(58%)で年齢は中央値1.7歳(1か月〜15歳,四分位範囲;interquartile range(IQR)0.7〜3.9歳)だった.発熱期間は中央値6日間(0〜33日間,IQR 3〜7日間)で入院日は中央値で第4病日(1〜16病日,IQR 3〜5病日)だった.重症群で年齢が高い(2.7歳,IQR 1.0〜5.9歳)傾向にあり,基礎疾患を有する例が有意に多かった.有意差を認めた基礎疾患と年齢を補正した多変量解析を行い,呼吸器疾患(オッズ比(OR)11,95%信頼区間(CI)2.5〜46,p<0.001),心疾患(OR 13,95%CI 2.9〜56,p<0.001),先天性奇形症候群(OR 4.6,95%CI 1.1〜19,p=0.013)の3項目で有意差を認めた.これらの基礎疾患はhMPV感染症の重症化のリスクがある.
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【原著】
■題名
腹部超音波断層像による小児直腸径の基準値
■著者
とみもと小児科クリニック 冨本 和彦
■キーワード
小児機能性便秘, 腹部超音波検査, 直腸径, 正常基準値, 巨大結腸
■要旨
目的)小児期慢性機能性便秘症のうち,一般に機能的便貯留型と排便協調運動障害型の便秘では直腸拡大をきたしやすい一方,通過遅延型便秘では直腸拡大をきたさないため,その有無を評価すれば児の便秘病態がある程度推定できる.直腸拡大は直腸径の基準値から定義されるが,この基準値はいまだ確立されていないため,今回,日本人の正常排便児の直腸径基準値を検討した.
対象と方法)予防接種目的で受診した15歳未満の児999例のうち,基礎疾患を有せず排便状態に問題のない733例において腹部超音波断層像で直腸膨大部最大径を計測し,直腸径に関連する因子(性別,年齢,最終排便からの時間,膀胱縦横径比)との関連を評価した.
結果)直腸径に関連したのは,最終排便からの時間と年齢であったが,最終排便からの時間が3時間以上の群については層別化の必要がなかった.年齢については,群間差指数が0.486であり,1歳未満群と1歳以上群で層別化する必要があった.この2群についてBoxCoxべき乗変換を行って正規性を確保した上で正常基準値を算出した.正常基準値の上限は1歳未満では27.9 mm,1歳以上では38.2 mmであった.
結論)小児直腸径正常基準値から直腸拡大の基準は1歳未満では27.9 mm超,1歳以上では38.2 mm超と考えられたが,これらは直腸拡大の基準値であり,「便秘のカットオフ値」とは異なる.
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【原著】
■題名
救急室において小児に痛みを伴う処置を行う際の鎮静・鎮痛に関する前向き観察研究
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科 萩原 佑亮 井上 信明
■キーワード
救急外来, 鎮静, 鎮痛, ケタミン, 合併症
■要旨
目的:小児における鎮静・鎮痛が重要視されるようになってきているが,わが国ではいまだ科学的データの蓄積は少ない.そこで,救急室で痛みを伴う処置時に鎮静を必要とした小児例についての実態を記述統計することを目的とした.
方法:2014年4月から2016年3月までの2年間で,当院の救急室を受診し,疼痛を伴う処置のために経静脈的に鎮静薬を必要とした小児を対象とした.調査項目は,患者背景,適応,使用薬剤,合併症,処置担当医と看護師の満足度などについて標準化シートを用いて前向きにレジストリ登録した.
結果:調査期間の2年間に286人が対象となった.年齢の中央値は6歳,男児が188例(65.7%),すべての症例がASA-PS 2以下であった.最も多い鎮静の適応は骨折・脱臼の整復で157例(54.9%)を占めた.使用薬剤はケタミンが最も多くて281例(98.3%)であった.合併症の発生率は全体で47例(16.4%,95%CI:12.6%〜21.2%)で,90%未満のSpO2低下は18例(6.3%,95%CI:4.0%〜9.7%)であった.処置完遂率は100%で,処置担当医と看護師の満足度の中央値はともに5と高い満足度を得た.
結論:救急室における処置時の鎮静・鎮痛についてまとめた.約16%に何らかの合併症が発生した.幸い,いずれも適切な対応によって重篤な転帰となった症例はいなかった.
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【原著】
■題名
小児科後期研修医に対する臨床研究の教育プログラムの実施とアンケート
■著者
東京都立小児総合医療センター臨床研究支援センター1),同 循環器科2),同 腎臓内科3),同 総合診療科4) 森川 和彦1) 三浦 大1)2) 森川(河口) 恵美1) 友常 雅子1) 石倉 健司1)3) 松島 崇浩4) 寺川 敏郎4) 本田 雅敬3)
■キーワード
臨床研究, 医学教育, 後期研修, 小児科, アンケート調査
■要旨
【背景】本邦では,諸外国に比べ臨床研究が遅れており,特に小児分野では遅れが著しい.臨床研究の重要性が増す中で,若手医師への教育は喫緊の課題である.
【目的】後期研修医に対する臨床研究教育プログラムの実施状況とそのアンケート調査結果につき報告する.
【方法】東京都立小児総合医療センターでは,2011年度より小児科コース後期研修医に対して学年毎に計画・立案,研究実施,解析・発表をする臨床研究教育プログラムを開始している.その実施状況とプログラムについてのアンケート調査(100点満点)を評価した.
【結果】小児科後期研修医を対象とした臨床研究教育プログラムを行い,毎年研究の計画・立案,実施ができた.アンケート調査は計19名のうち13名(2011年度6名,回収率68.4%)から回答が得られた.それぞれの評価点は「学年研究を実施して良かったか」は78.2±15.9点であり,「プログラムの困難さ」は78.2±17.7点,「臨床研究教育プログラムの整備が後期研修先のポイントになるか」は68.9±18.6点だった.
【結論】小児科後期研修医を対象としたon the job trainingを含む実践的な臨床研究教育プログラムを行った.アンケート調査では,実施上の困難さを指摘されたが,高い評価が得られた.今後,臨床研究教育プログラムが臨床研修施設で導入されることが望ましい.
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【症例報告】
■題名
血小板数が正常化するまでに2か月を要した新生児同種免疫性血小板減少症
■著者
慶應義塾大学医学部小児科学教室1),さいたま市立病院小児科2),同 新生児内科3) 大西 卓磨1)2) 古市 宗弘2) 高村 恭子3) 佐藤 清二2)
■キーワード
新生児血小板減少症, 新生児同種免疫性血小板減少症, human leukocyte antigen
■要旨
血小板数が正常化するまでに約2か月を要したhuman leukocyte antigen(HLA)抗体陽性の新生児同種免疫性血小板減少症の1例を経験した.症例は在胎41週4日3,580 gで出生した女児で,日齢1で血性嘔吐を認め,血小板数が4.8万/μLと低下していたために当院NICUに入院した.血小板輸血と免疫グロブリン投与で治療を行ったが,血小板数が正常化するまでに約2か月を要した.母血清および児血清にHLA抗体を認め,父血小板と母血清の交差試験が陽性となり,新生児同種免疫性血小板減少症と診断した.同種免疫性血小板減少症は1〜2週間で血小板数が正常化すると言われているが,本症例のように遷延する例も存在するために注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
区域肺洗浄とGM-CSF吸入で加療を行った自己免疫性肺胞蛋白症の4歳例
■著者
熊本赤十字病院小児科1),同 呼吸器内科2) 福岡 かほる1) 武藤 雄一郎1) 溝部 孝則2) 宮竹 紘子1) 大平 智子1) 西原 卓宏1) 平井 克樹1) 小松 なぎさ1) 右田 昌宏1)
■キーワード
肺胞蛋白症, サーファクタント, 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子, 気管支肺胞洗浄, 区域肺洗浄
■要旨
肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis;PAP)は,肺胞内および呼吸細気管支にサーファクタントに由来する物質が蓄積し呼吸不全が進行する稀な疾患である.今回,小児期に発症した自己免疫性肺胞蛋白症を経験した.症例は既往のない4歳女児.呼吸困難感はなく全身状態良好であったが,半年前からの体重減少と慢性咳嗽および酸素化不良あり,画像所見より肺胞蛋白症が疑われた.全身麻酔下に区域気管支肺胞洗浄を行い,米のとぎ汁状を呈した洗浄液を回収し,洗浄液のサイトスピン標本で大型の割に核が小型の泡沫状マクロファージ・好酸性に染まる無数の無構造物を認めたことから同症の診断に至った.また血清の抗GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)抗体が陽性であり,続発性・先天性肺胞蛋白症が否定的であったことから,自己免疫性肺胞蛋白症と診断した.治療として区域肺洗浄を計4回行ったところ,臨床症状・画像所見共に改善し,現在外来にてGM-CSF吸入療法を行っている.小児期発症の肺胞蛋白症は非常に稀であり,その中でも自己免疫性肺胞蛋白症は極めて少ない.本症例は4歳という若年発症例であり,本邦における報告では最年少例であったため,成人での治療を改変して行うことが必要となった.また成長障害の懸念もあることから,更に慎重な観察が必要である.
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【論策】
■題名
地方における病院小児科集約化―具体例の報告―
■著者
日立製作所日立総合病院小児科 小宅 泰郎 石踊 巧 平木 彰佳 諏訪部 徳芳 星野 寿男 菊地 正広
■キーワード
小児医療供給体制, 集約化, 小児人口, 小児疾患の変化
■要旨
地方における病院小児科集約化の具体例を提示し,その利点と欠点につき報告する.人口27万人,面積606km2の地方都市型二次医療圏内にある2つの病院小児科を,集約化される病院にも日中の小児科外来診療機能は残し,時間外の小児救急医療と入院治療を一方の施設に集約する形で部分的に集約化した.集約化後,集約した病院の小児救急患者数および入院患者数は,2年間は増加したがその後は減少に転じた.小児科入院患者数減少の原因について検討したところ,保健医療圏の小児人口の減少,急性肺炎および気管支喘息発作による入院患者数の減少がその主な要因と考えられた.予防接種の拡充による予防可能な疾患の減少や,気管支喘息長期管理薬による重症喘息発作の減少により,小児人口が減少している地域においては,一施設当たりの小児患者数は減少傾向にある.小児人口と疾患罹患数が減少している地方において病院小児科の集約化は,限られた人的資源を有効に活用し小児科医の労働環境を改善するために有効な手段である.集約化の際,地域住民の理解を得ることは必ずしも容易ではないが,集約化される側の施設にも外来機能は残すなど,地域住民の不便を極力小さくする努力は大切である.
以上より日本小児科学会の地域小児科センター病院構想は,小児人口の減少や疾病構造の変化という観点からも,正当化される政策であると考えられた.
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