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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:16.12.16)

第120巻 第12号/平成28年12月1日
Vol.120, No.12, December 2016

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第119回日本小児科学会学術集会
  教育講演

小児がん経験者のフォローアップ

三善 陽子  1733
日本小児神経学会推薦総説

ナルコレプシーの診断と治療

宮田 理英  1739
総  説
1.

小児における発熱と血清ナトリウムの関係

草刈 章,他  1748
原  著
1.

乳児特発性僧帽弁腱索断裂の10例

新田 恩,他  1758
2.

小児循環器領域における携帯型酸素濃縮装置の使用経験

岡田 清吾,他  1765
3.

低または無ガンマグロブリン血症50例に対する皮下注用人免疫グロブリン製剤導入

足洗 美穂,他  1772
4.

侵襲性肺炎球菌感染症の発症背景と臨床的特徴

船木 孝則,他  1782
症例報告
1.

難治性ネフローゼ症候群の経過中にシュウ酸カルシウムと酸性尿酸アンモニウムの混合結石を形成した1例

春日 晃子,他  1792
2.

ケトン性低血糖症を呈したピボキシル基含有抗菌薬関連低カルニチン血症例

林 貴大,他  1797
3.

柿による食餌性イレウスの幼児例

森 夕起子,他  1802
短  報

食道誘導電極を利用した心拍監視モニターによる新生児不整脈の新規診断法

大淵 典子,他  1808
論  策
1.

二次医療圏を超えた小児入院患者の流入と流出

江原 朗  1812
2.

小児における在宅医療の継時的変化―訪問看護ステーションの視点を中心として―

吉野 真弓,他  1818

地方会抄録(群馬・佐賀・愛媛・静岡・鹿児島・東海)

  1823
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告

将来の小児科医への提言2016

  1848

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻11号11月号目次

  1852

日本医学会だより

  1854

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 338

  1855


【総説】
■題名
小児における発熱と血清ナトリウムの関係
■著者
医療法人社団章仁会くさかり小児科1),にしむら小児科(大阪府柏原市)2)
草刈 章1)  西村 龍夫2)

■キーワード
低ナトリウム血症, 発熱, バゾプレシン(AVP), TRPV1, 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
■要旨
 発熱している小児は不感蒸泄の増加で脱水症になり易いと広く信じられている.この場合,高張性脱水症になると考えられるが,肺炎や細菌性髄膜炎などの熱性疾患ではしばしば低Na血症が臨床上の重要な問題となる.実際に入院患者についてみると,低Na血症は明らかに発熱患者に多く,白血球数や好中球数,CRP値と正の相関が認められ,また血漿AVPの高値も確認され,SIADHが発現していると考えられている.外来患者についての報告では検査当日の体温と血清Naは負の相関をすることが確認された.
 近年,発熱,炎症性疾患における二つのAVP分泌神経細胞の興奮の機序が明らかになった.一つは炎症性サイトカインのIL6などに直接に刺激されること,もう一つはTRPV1を通じて体温の上昇を感知し,その高さに応じてAVP分泌増加を起こすことである.後者の機序は疾患の種類,重症度に関係なく,発熱している患者はAVP分泌亢進状態にあり,低Na血症になり易いことを意味する.患者にとっては不利と思えるが,衛生的な水や医療の供給が十分でないときには,この仕組みは脱水症の発現を予防し,感染症などの熱性疾患からの回復,生存の機会を多くすると考えられ,適合的と言える.逆に過剰な水分摂取や低張性輸液は低Na血症の増悪を起こすため,治癒の阻害要因となる.医療者は発熱患者を診療するときは,このことに充分注意する必要がある.


【原著】
■題名
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の10例
■著者
宮城県立こども病院循環器科1),同 心臓血管外科2),仙台市立病院救命救急センター3),同 小児科4)
新田 恩1)  崔 禎浩2)  田中 高志1)  小西 章敦2)  小澤 晃1)  村田 祐二3)  大浦 敏博4)

■キーワード
僧帽弁腱索断裂, 僧帽弁逆流, 乳児, 人工腱索
■要旨
 乳児特発性僧帽弁腱索断裂は生来健康な乳児に突然僧帽弁の腱索断裂が発症し急速な呼吸循環不全を来たす疾患であり,早期に外科的治療が必要になる.今回我々は2004年から2013年までの10年間で10例の症例を経験したので,月齢,主訴,僧帽弁逆流(Mitral regurgitation:MR)の程度,検査所見を報告する.診断のポイントとして,心不全であるにも関わらず発症が急激であるため心拡大がないこと,左心不全による呼吸障害のため心雑音を聴取しにくいこともあることが重要であると思われた.さらに,手術時期,腱索断裂部位,手術方法,術後MRについても報告する.手術方法は弁輪縫縮術に加え最近の8例は人工腱索による弁形成術を施行しており,その術後中期経過はいずれも良好で,死亡例はなかった.成長による障害が懸念される人工腱索による弁形成術について検討するため正常コントロール群と比較検討した結果,乳頭筋の成長が補う形で成長に適応していることが示唆され,本疾患に対する適切な手術法であると考えられた.


【原著】
■題名
小児循環器領域における携帯型酸素濃縮装置の使用経験
■著者
広島市立広島市民病院循環器小児科1),山口大学大学院医学系研究科小児科学分野2)
岡田 清吾1)2)  鎌田 政博1)  中川 直美1)  石口 由希子1)  森藤 祐次1)  松扉 真祐子1)  岡本 健吾1)

■キーワード
小児, 循環器, 在宅酸素療法, 携帯型酸素濃縮装置
■要旨
 【背景】携帯型酸素濃縮装置(portable oxygen concentrator;POC)は,近年成人領域で普及してきているが,小児領域でのまとまった報告はない.
 【目的】POCの導入が,小児循環器領域患者のquality of life向上に寄与するか検討すること.
 【対象および方法】携帯型酸素濃縮装置ハイサンソポータブルα®(POCα)を試験導入した患者7名およびその家族に対し,(1)携帯性および操作性,(2)発生音,(3)バッテリー機能,(4)夜間連続流使用下での経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)などについてアンケート調査を施行した.
 【結果】(1)携帯性および操作性:3名(43%)が従来の酸素ボンベに比し重いと感じていた一方で,4名(57%)は外出しやすくなったと回答した.機器の操作は小学校就学前の小児でも使用でき簡便であった.(2)発生音:室内,特に夜間では,4名(57%)が据え置き型濃縮装置に比し発生音が大きいと感じていた.(3)バッテリー機能:5名(72%)が必要な予備バッテリー数は2個と回答した.学校でPOCαの使用許可が得られなかった理由は,すべてバッテリー関連の問題であった.(4)最低SpO2:POCα導入前後で有意差を認めなかった.
 【考察】POCαは従来の酸素濃縮装置や酸素ボンベに比し優れた点を有するものの,両者の長所を併せ持つとまでは言い難く,依然改善の余地がある.


【原著】
■題名
低または無ガンマグロブリン血症50例に対する皮下注用人免疫グロブリン製剤導入
■著者
東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野1),同 茨城県小児・周産期地域医療学講座2),東京医科歯科大学医学部附属病院看護部3)
足洗 美穂1)  金兼 弘和1)  今井 耕輔2)  木村 菜美子3)  陳 菜穂3)  岡野 翼1)  小野 真太郎1)  田中(久保田) 真理1)  宮本 智史1)  小林 千佳1)  満生 紀子1)  青木 由貴1)  田中 絵里子1)  高木 正稔2)  森尾 友宏1)

■キーワード
免疫グロブリン補充療法, 皮下注用人免疫グロブリン, 自己注射, 在宅治療, 免疫不全症
■要旨
 免疫グロブリン補充療法は免疫不全症の患者の感染予防においてきわめて重要である.補充方法として静注用免疫グロブリン製剤(intravenous immunoglobulin:IVIG)が主流であったが,欧米では近年皮下注用免疫グロブリン製剤(subcutaneous immunoglobulin:SCIG)が普及し,その有用性が報告されている.わが国でも2014年1月にSCIGが初めて販売開始となり,当科では2014年4月から2015年12月に50例に対してSCIGを導入した.年齢は0歳から55歳(中央値22歳)で,原発性免疫不全症45例,続発性低ガンマグロブリン血症5例であった.IVIGからの移行は36例(72%)であった.SCIGの有害事象としては局所反応を21例(42%)で認めたが,それ以外の重篤なものはなく,IVIGでアナフィラキシーを含む有害事象の既往がある6例でも安全に移行できた.導入後離脱したものが3例あったが,直接的な理由はSCIGの副反応ではなかった.また,導入後半年以上経過した30症例において重症感染症の罹患は認めなかった.SCIGは緩徐に吸収されることから,重篤な副反応が起こりにくく血中濃度が安定しやすい特性をもっている.また,適切な指導を行うことによって在宅投与が可能となる.当科での経験をもとに,SCIGの導入の実際,利点,問題点について報告する.


【原著】
■題名
侵襲性肺炎球菌感染症の発症背景と臨床的特徴
■著者
国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科1),慶應義塾大学医学部感染症学教室2)
船木 孝則1)  生方 公子2)  岩田 敏2)  宮入 烈1)

■キーワード
侵襲性肺炎球菌感染症, 菌血症, 基礎疾患, 年齢, 肺炎球菌結合型ワクチン
■要旨
 【背景】肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の定期接種化に伴い,侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は減少傾向だが,ハイリスク児におけるIPDの相対的な重要性が増すと考えられる.わが国でIPD発症のリスク因子に着目し,臨床的特徴を検討した報告はない.
 【方法】2008年6月〜2014年8月の間,当院で血液培養から肺炎球菌が検出された18歳未満例を対象とした.血液培養結果は細菌検査システムから,患者情報は電子診療録から抽出した.リスク因子の定義は,米国疾病予防管理センターがPCVおよび23価肺炎球菌多糖体ワクチン接種を推奨する疾患とした.IPD発症のリスク因子がある群とない群にわけ,両群間での臨床的特徴を統計学的に検討した.
 【結果】対象期間中に血液培養から肺炎球菌が検出された112例(全107名,男児57名)の月齢の中央値は19か月で,リスク因子は21例で認めた.発症月齢の中央値は,リスクあり群の54か月に対してリスクなし群は18か月であった(p=0.001).多変量解析では,リスクあり群の方が,発症月齢が高く(p=0.005),入院時の体重が比較的低く(p=0.022),発症時白血球数も有意に低かった(p=0.002).
 【結論】基礎疾患のある児では,PCVが推奨される幼児期以降でもIPDを発症する可能性があり,積極的なワクチン接種計画の検討が必要である.


【症例報告】
■題名
難治性ネフローゼ症候群の経過中にシュウ酸カルシウムと酸性尿酸アンモニウムの混合結石を形成した1例
■著者
東京医科大学小児科
春日 晃子  柏木 保代  加藤 幸子  堤 範音  赤松 信子  呉 宗憲  河島 尚志

■キーワード
ネフローゼ症候群, シュウ酸カルシウム結石, 酸性尿酸アンモニウム結石, ロタウイルス感染症
■要旨
 難治性のネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome:NS)ではステロイドや免疫抑制剤を中心とした薬物療法と並行して,浮腫の管理・食事療法・運動制限・感染予防・ステロイドの副作用に対する管理を行う.経過中に結石を形成することはあるが,シュウ酸カルシウム(calcium oxalatecalculus:CaOx)と酸性尿酸アンモニウム(ammonium acid urate:AAU)による混合結石形成の報告はない.症例は2歳男児,NSのためプレドニゾロン(prednisolone:PSL)加療中にロタウイルス感染症に罹患した.その後下腹部痛と肉眼的血尿をきたし,CaOxとAAUによる混合結石を認めた.尿検査での尿細管上皮や硝子円柱・結晶の出現の確認,尿中Na排泄分画(fractional excretion of sodium:FENa)や尿中尿酸排泄率(fractional excretion of uric acid:FEUA)測定,腹部超音波検査などを継時的に行うことで,結石の早期発見・早期予防に努めるべきだと思われた.


【症例報告】
■題名
ケトン性低血糖症を呈したピボキシル基含有抗菌薬関連低カルニチン血症例
■著者
津山中央病院小児科
林 貴大  岡山 良樹  小野 将太  片山 威  杉本 守治  梶 俊策  藤本 佳夫

■キーワード
低カルニチン血症, ピボキシル基含有抗菌薬, ケトン性低血糖
■要旨
 ピボキシル基含有抗菌薬関連低カルニチン血症による低血糖症は,一般的には尿ケトン陰性とされている.我々は,ケトン性低血糖症だったが低カルニチン血症も伴っていた症例を経験した.症例は2歳女児.痙攣重積症で来院し,来院時の血糖は18 mg/dlと著明に低下していた.頭部MRIでは異常所見なく,血糖を補正後,意識は回復した.尿ケトン強陽性で血中総ケトン体6,215 μmol/lであった.前日夜から食事摂取は不良であったが,中耳炎へのピボキシル基含有抗菌薬の計22日間の間歇的投与歴もあり,カルニチン測定を行ったところ総カルニチン10.5 μmol/l,遊離カルニチン5.5 μmol/lと高度な低カルニチン血症を見出した.低血糖の補正に加えカルニチンの補充を行い,後遺症なく退院となった.退院後は通院先の耳鼻咽喉科医院へ情報を提供し低血糖の再発予防として対策を行った.本症例では,尿ケトン陽性でも問診から低カルニチン血症を疑うことが肝要であった.抗菌薬内服中の児は発熱などにより食事摂取不良のことが多い.尿ケトン陽性でも低カルニチン血症の可能性があり,抗菌薬の内服期間などを聴取し,必要に応じてカルニチンの補充を行うべきと考える.


【症例報告】
■題名
柿による食餌性イレウスの幼児例
■著者
福井赤十字病院小児科
森 夕起子  田中 奈々絵  玉村 宗一  渡辺 康宏  谷口 義弘

■キーワード
食餌性イレウス, 腸閉塞, 柿胃石, 乳幼児
■要旨
 柿により食餌性イレウスをきたした幼児例を経験した.11月下旬に突然,食欲不振と嘔吐,活気不良で発症した.腸閉塞を疑い,レントゲン,腹部エコー検査,computed tomography(CT)検査を施行した結果,横行結腸での糞便イレウスを疑った.症状や検査所見から単純性イレウスが疑われた為,大腸内視鏡を施行したところ,横行結腸で硬便が嵌頓していた.鉗子で粉砕すると茶褐色の繊維状の物質が充満していた.発症の1週間前から毎日甘柿を半分ほど摂取していたことが判明し,柿胃石による糞便イレウスと考えた.
 柿は本邦や東アジアでは好まれて食される果物であるが,植物胃石となり,しばしば消化管閉塞の原因となる.柿胃石は小腸閉塞が多く,保存的治療が困難で手術が必要となることが多いと報告されているが,本例では閉塞部位が横行結腸であったため大腸内視鏡により診断と同時に治療を行うことが可能であった.腸閉塞の原因として食餌性イレウスは稀ではあるが,植物胃石になりえる食物(柿,昆布,餅など)の過剰摂取がなかったかどうかを確認する必要があると考えた.


【短報】
■題名
食道誘導電極を利用した心拍監視モニターによる新生児不整脈の新規診断法
■著者
綜合病院山口赤十字病院小児科1),JCHO九州病院小児科2),山口大学小児科3)
大淵 典子1)  西郷 謙二郎1)  太田 陽香1)3)  寺地 真一1)  野瀬 善夫1)  門屋 亮1)  渡邉 まみ江2)  城尾 邦隆2)  大賀 正一3)

■キーワード
頻拍性不整脈, 食道誘導心電図, 心拍監視モニター, 多源性心房頻拍, 双極誘導
■要旨
 新生児および乳幼児期の頻拍性不整脈は,P波の検出がしばしば困難なため診断に苦慮する.食道誘導心電図は心房の背面から電位を記録することにより,鮮明なP波を記録することができる.しかし,これを12誘導心電図の一部として装着する場合には,非持続性頻拍の異常波を検出することが難しい.食道誘導電極を心拍監視モニターに装着すると,発生頻度の低い不整脈を自動検出することができる.この方法は食道と胸部の双極誘導となるため,基線の安定した異所性P波の形態が明瞭な心電図が得られ,心房興奮伝播過程の微妙な変化をとらえやすい.本法はどの施設でも簡単に行うことが可能であり,不整脈の診断に有用である.


【論策】
■題名
二次医療圏を超えた小児入院患者の流入と流出
■著者
広島国際大学医療経営学部
江原 朗

■キーワード
二次医療圏, 小児, 入院, 患者調査, 医療資源
■要旨
 【背景】病院小児科は平成22年の2,737施設から平成27年の2,678施設へと減少したが,各二次医療圏における小児入院医療資源の多寡については十分な知見がない.
 【方法】厚生労働省の「患者調査」を用い,圏域内の医療施設に入院する小児患者数と圏域内に住所地を有する小児の入院患者数との差から,二次医療圏を超えた小児入院患者の流入・流出を明らかにする.また,流入超過や流出超過の二次医療圏の特性を,人口,小児科医師数等の指標から明らかにする.
 【結果】全国344二次医療圏のうち,50医療圏は流入超過,37医療圏は流出超過,残り257医療圏は差を認めなかった.流入超過は,県庁所在地を含む二次医療圏,小児入院医療管理料1および2(常勤小児科医20人および9人以上)の病院が所在する二次医療圏,人口当たりの小児科医が多い二次医療圏に多くみられた.流出超過は,関東,中部,近畿の流入超過の二次医療圏の近傍の医療圏に見られたが,他の地方ではごくわずかであった.
 【結論】高次医療機関所在地,人口当たりの小児科医師数が多い二次医療圏で流入超過となっており,小児入院医療資源は充足していると考えられた.一方,流出超過となった二次医療圏は,主に三大都市圏の流入超過となる医療圏の周辺部に存在しており,それらの地域では小児入院医療資源が不足している可能性が考えられた.


【論策】
■題名
小児における在宅医療の継時的変化―訪問看護ステーションの視点を中心として―
■著者
育英短期大学保育学科1),群馬大学教育学部障害児教育学講座2),あしかがの森病院3)
吉野 真弓1)  吉野 浩之2)3)

■キーワード
小児在宅医療, 訪問看護ステーション, レスパイトケア
■要旨
 小児医療の進歩に伴い,重度の障害を持ち医療的ケアを必要としながら成長する小児が増加している.本研究では,関東地方の栃木県における小児在宅医療について,2005年から2010年に3回の調査を行った.本研究の目的は,在宅小児患者数,訪問看護ステーション数,小児在宅医療の状況につき,訪問看護師の視点から明らかにし,小児在宅医療の基礎的資料とし,小児在宅医療の課題を明らかにすることを目的とした.
 2005年の在宅患児数は33人,2007年は57人,2010年は72人と急激に増加していた.小児の在宅医療を行っている訪問看護ステーション数は,2005年は16か所,2007年は23か所,2010年は26か所あった.2010年までに栃木県では,全体の訪問看護ステーションの半数が小児患者を受け入れていた.
 また調査の年数を重ねるにつれて,在宅医療を受ける患児の疾病,障害の重症度,医療依存度は高くなっていった.今後,在宅小児患児数の増加,重症化が進行することが予想され,より積極的な家族への在宅支援が求められる.

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